以下、図面を参照しながら第1実施形態について説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
(第1実施形態)
第1実施形態は、本発明を多関節ロボットアーム機構に適用した場合に対応する。以下、図面を参照しながら、第1実施形態に係る多関節ロボットアーム機構について説明する。
図1は、第1実施形態に係る多関節ロボットアーム機構の内部構造を示す図である。多関節ロボットアーム機構は、基部101とロボットアーム102とを有する。基部101は接地面等に固定される。ロボットアーム102の先端にはエンドエフェクタと呼ばれる手先効果器が取り付けられる。図1では手先効果器として対象物を把持可能なハンド部116を図示している。手先効果器としてはハンド部116に限定されず、他のツール、センサ、カメラ又はディスプレイであってもよい。ロボットアーム102の先端には任意の種類の手先効果器に交換することができるアダプタが設けられていてもよい。
ロボットアーム102は、複数の回転関節部J1−J4と複数のアーム部103、105、107、109とを有する。複数の回転関節部J1−J4と複数のアーム部103、105、107、109とは、基部101から交互に直列に接続される。第1回転関節部J1は第1回転軸RA1を中心とした曲げ回転間接である。第1回転関節部J1は、基部101に対してアーム部103を第1回転軸RA1回りに回転自在に支持する。第2回転関節部J2、第3回転関節部J4および第4回転関節部J4は、第2回転軸RA2、第3回転軸RA3および第4回転軸RA4を中心とした曲げ回転関節である。第2回転軸RA2、第3回転軸RA3および第4回転軸RA4は、それぞれ第1回転軸RA1と平行な軸を有する。第2回転関節部J2は、アーム部103に対してアーム部105を第2回転軸RA2回りに回転自在に支持する。第3回転関節部J3は、アーム部105に対してアーム部107を第3回転軸RA3回りに回転自在に支持する。第4回転関節部J4は、アーム部107に対してアーム部108を第4回転軸RA4回りに回転自在に支持する。第1乃至第4回転関節部J1−J4の曲げ回転動作により、ハンド部116を基部101の固定座標系におけるYZ平面の任意の位置に配置することが可能である。伸縮ケーブル30は、基部101に対して任意の位置に配置されるハンド部116に対して、電力と信号との少なくとも一方を供給する。以下、伸縮ケーブル30の配線機構について説明する。
図1に示すように、伸縮ケーブル30の配線機構は、伸縮ケーブル30と、複数のケーブルガイド51と、経路延長部40と、ハンド部側ケーブル固定部133aと、基部側ケーブル固定部133bとで構成される。
伸縮ケーブル30は、伸縮性を有する複数種類の伝送線により構成される。例えば、伝送線には、電流を伝送する電力伝送線、電気信号を伝送する電気信号伝送線、光を伝送する光伝送線、および光信号を伝送する光信号伝送線等がある。伸縮ケーブル30は、その用途等に応じて、これらの伝送線を組み合わせて構成される。第1実施形態に係る伸縮ケーブル30は、電流を伝送する電力伝送線と電気信号を伝送する電気信号伝送線により構成される。伸縮性を有する電力伝送線は、例えば、弾性体の周囲に銅線やアルミ線をらせん状に捲回させたものである。伸縮性を有する電気信号伝送線は、例えば、2本以上の導体線を弾性体の周囲に同一方向に捲回させたものである。なお、伸縮性を有する電気信号伝送線は、2本以上の導体線を弾性体の周囲に交差して捲回させたものであってもよい。
伸縮ケーブル30の一端は、ハンド部116を開閉するためのアクチュエータとしてのモータを制御するモータドライバ131に接続される。他端は、電力を発生する外部電源のコネクタと制御信号を発生する外部制御装置のコネクタとに接続される。モータドライバ131は、制御装置からの制御信号に従って、電源から伸縮ケーブル30を介して入力された電力を用いてモータを駆動するための駆動パルスを発生する。モータは、モータドライバ131から供給された駆動パルスに従って回転する。モータが順方向に回転するとき、モータのドライブシャフトの動力は、図示しないギア等を介してハンド部116に伝達される。それによりハンド部116が開き、逆方向に回転するとき閉じる。
伸縮ケーブル30の一端部分は、ハンド部116内のモータドライバ131の近傍に設けられたケーブル固定部133a(以下、ハンド部側ケーブル固定部133aと称する。)に固定される。伸縮ケーブル30の他端部分は、基部101内の底の位置に設けられたケーブル固定部133b(以下、基部側ケーブル固定部133bと称する。)に固定される。これにより、伸縮ケーブル30に張力がかけられた状態であっても、伸縮ケーブル30がコネクタから抜けてしまう等の不通リスクを低減することができる。伸縮ケーブル30はハンド部側ケーブル固定部133aと基部側ケーブル固定部133bとの間にわたって、複数のケーブルガイド51によりガイドされる。複数のケーブルガイド51は、基部101、ロボットアーム102に沿って分散設置される。複数のケーブルガイド51の設置により、伸縮ケーブル30の配線経路が形成される。ケーブルガイド51は、例えば、断面が円弧状のリング構造を有する。ケーブルガイド51は、伸縮ケーブル30を複数のリング各々に挿通させることで配線経路を形成し、伸縮ケーブル30を伸縮自在に保持する。
経路延長部40は、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路を延長するために、伸縮ケーブル30の配線経路上に介在する。経路延長部40の構造について図2を参照して説明する。
図2は、図1の経路延長部40の構造の一例を示す図である。経路延長部40は、同一の半径rを有する複数のプーリー、ここでは第1プーリー141、第2プーリー142および第3プーリー143を有する。これらのプーリー141,142,143各々は、基部101の軸線(Z軸)と略平行な方向に関して分散配置される。例えばプーリー141,142はZ軸に関して同位置に配置される。プーリー143はプーリー141,142の下方に所定距離隔てた位置に配置される。ここでは、プーリー141はその回転軸Rx1が、各回転関節部の回転軸(X軸)に平行になるよう配置される。プーリー142、143はそれぞれの回転軸Rx2、Rx3がプーリー141の回転軸Rx1と平行になるよう配置される。プーリー142はプーリー141に対してX軸とZ軸とに直交するY軸に沿って半径rよりも短い距離を隔てて配置される。プーリー143は、Y軸方向に関して、プーリー141とプーリー142との中央位置に配置される。伸縮ケーブル30は、プーリー141、プーリー143、プーリー142の順に掛け渡される。これにより複数のプーリー141,142,143は、伸縮ケーブル30を基部101の軸方向に沿って往復配線経路を形成する。往復配線経路は、ハンド部側ケーブル固定部133a、基部側ケーブル133bの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路の延長を実現する。それにより、必要とされる伸縮ケーブル30の全長は、経路延長部40が介在せず、複数のケーブルガイド51のみにより誘導される伸縮ケーブル30の全長よりも延長される。
経路延長部40には、補助プーリー144が設けられる。補助プーリー144はその回転軸Ryがプーリー142の回転軸Rx2と基部101の中心軸とに垂直になるよう配置される。プーリー144の配置は伸縮ケーブル30を基部101の中心軸付近からその半径方向に沿ってプーリー142に引き出すことを可能にする。補助プーリー144の半径は、引き出し量により決定されている。
具体的には、図2に示すようにプーリー144の回転軸Ryは、他のプーリー141,142,143の回転軸Rx1、Rx2、Rx3に垂直に配置される。プーリー144は、他のプーリー141,142,143が配置されたYZ平面に対して、X軸方向にオフセットして配置される。これによりプーリー144は、他のプーリー141,142,143が配置されたYZ平面からX軸方向にオフセットしてガイドされた伸縮ケーブル30を、他のプーリー141,142,143が配置されたYZ平面にガイドするための配線経路部分を確保することができる。
次に、伸縮ケーブル30の全長の決定方法について、図3を参照して説明する。
図3は、第1実施形態の多関節ロボットアーム機構で用いられる伸縮ケーブル30の全長の決定方法を説明するための補足説明図である。
第1実施形態に係る多関節ロボットアーム機構は、複数の回転関節部J1―J4各々の曲げ回転により、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路の長さが変化する。
図3に示すように、ロボットアーム102の第1姿勢時における、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路を、複数のケーブルガイド51のみで形成した場合の最短の配線経路を最短経路長Lc1とする。最短経路長Lc1が決まるロボットアーム102の姿勢はケーブルガイド51の設置位置により決まる。例えば、第1姿勢とは、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路が最短となるように、ロボットアーム102がケーブル配線経路側に折りたたまれた姿勢に、複数の回転関節部J1−J4各々が回転された状態を指す。例えば、第1姿勢は、多関節ロボットアーム機構の電源投入時の基準姿勢である。
ロボットアーム102の第2姿勢時における、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路を、複数のケーブルガイド51のみで形成した場合の最短の配線経路を最長経路長Lc2とする。第2姿勢とは、ハンド部側ケーブル固定部133aから基部側ケーブル固定部133bまでの配線経路が最長となるように、ロボットアーム102がケーブル配線経路と反対側に折りたたまれた姿勢に、複数の回転関節部J1−J4各々が回転された状態を指す。例えば、第2姿勢は、複数の回転関節部J1−J4各々が、第1姿勢時の位置から、最も回転された状態に対応する。
収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、経路差Δdc1以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。具体的には、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、以下のように決定されればよい。伸縮ケーブル30の伸縮率を伸縮率αとすると、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1と伸縮率αと経路差Δdc1との間には、以下の式(1)が成立する。つまり、経路差Δdc1は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1に伸縮率αを乗算した長さ以下でなくてはならない。
Δdc1≦Lw1×α…(1)
したがって、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、以下の式(2)を満たす必要がある。
Lw1≧Δdc1/α…(2)
また、第1実施形態に係る多関節ロボットアーム機構の経路延長部40は往復配線経路を形成するため、d1>0である。経路延長部40により延長される配線経路の延長部分の長さ(延長ケーブル長)d1は、最短経路長Lc1と、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1との差に略等価である。すなわち、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、以下の式(3)を満たす必要がある。式(3)は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、最短経路長Lc1よりも長くなければならないことを表している。
Lw1>Lc1…(3)
また、伸縮ケーブル30は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1が、最長経路長Lc2よりも短いのが好適である。つまり、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、以下の式(5)を満たす必要がある。
Lw1<Lc2…(4)
式(2)と式(3)と式(4)とから、収縮時の伸縮ケーブル30は、式(5)を満たす伸縮率αを有するとき、収縮時の伸縮ケーブル30全長Lw1を、最長経路長Lc2よりも短くすることができる。なお、収縮時の伸縮ケーブル30のケーブル長が、α×Lw1=Δdc1により決まるLw1に設定されるのが好適である。
(Δdc1/Lc2)<α<(Δdc1/Lc1)…(5)
したがって、第1実施形態に係る伸縮ケーブル30は、伸縮率αが式(5)を満たし、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1が式(3)と式(4)とを満たすように決定すればよい。これにより、伸長時の伸縮ケーブル30の全長Lw1´と収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1との差分を経路差Δdc1以上にできる。つまり、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、経路差Δdc1以上の伸縮長を確保することができる。また、従来、伸縮性を有さないケーブルを使用した場合において、ケーブルの全長は最長経路長Lc2以上である必要があった。一方、第1実施形態では、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1を最長経路長Lc2よりも短くすることができる。その結果、経路延長部40での伸縮ケーブル30の収容スペースを縮小化することができる。
なお、第1実施形態は式(5)の範囲の下限伸縮率(Δdc1/Lc2)以下の伸縮率αを有する伸縮ケーブル30の使用を否定するものではない。この場合、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、最長経路長Lc2より長くなることは避けられないかもしれない。しかし、伸縮ケーブル30の選択肢を拡大できる。例えば、より多くの電線が編みこまれた種類の伸縮ケーブル、または、防水機能を有する伸縮ケーブル等を選択することができるかもしれない。
また、上述の説明では伸縮ケーブル30の収縮時の長さLw1は、最長経路長Lc2を越えないことが好適であると説明した。しかし第1実施形態は伸縮ケーブル30の収縮時の長さLw1が、最長経路長Lc2を越えるほど長いことを否定するものではない。伸縮ケーブル30の保有する伸縮率(固有伸縮率)とその全長Lw1とにより決まる最大の伸縮長の一部を使って、構造上要求される経路差Δdc1を確保することができる。この場合の使用上の収縮率(実用伸縮率)は固有伸縮率よりも低く抑えることができる。このように実装上、伸縮ケーブル30を固有収縮率より低い実用伸縮率で伸縮させることは伸縮ケーブル30の耐久性を向上させる効果を奏する可能性を示唆している。さらに、実装上、伸縮ケーブル30を固有収縮率より低い実用伸縮率で伸縮させて、構造上要求される経路差Δdc1を確保するときに伸縮ケーブル30にかかる張力を、伸縮ケーブル30の固有収縮率を最大限使って、構造上要求される経路差Δdc1を確保するときに伸縮ケーブル30にかかる張力より低く抑えることを可能とし、それにより多関節ロボットアーム機構の伸縮に際してかかる構造上及び駆動上の負荷を低減させる効果を奏する可能性を示唆している。
次に、経路延長部40により延長される配線経路の全長について、図4を参照して説明する。
図4は、図2の経路延長部40により延長される配線経路長を説明するための補足説明図である。第1姿勢時における、経路延長部40により延長される配線経路の全長は、図3で説明したように、Δdc1以上の伸縮長を確保するために必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1に略等価である。実際には、経路延長部40により延長される配線経路の全長が、Δdc1以上の伸縮長を確保するために必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1よりもわずかに短いのが好適である。これにより、第1姿勢時においても、経路延長部40を構成する複数のプーリー141−144に掛け渡された伸縮ケーブル30にわずかなテンションがかかるため、伸縮ケーブル30のたるみを防止することができる。第1実施形態で用いられる伸縮ケーブル30の全長Lw1は、最短経路長Lc1よりも長さd1分長い。したがって、配線経路上に介在される経路延長部40は、伸縮ケーブル30の余長d1分の配線経路を確保するために、例えば、図2で説明した往復配線経路を構成する。これにより、経路延長部40は、配線経路の全長を最短経路長Lc1からLw1(Lc1+d1)に延長する。経路延長部40により延長された配線経路に沿って、式(4)を満たす伸縮ケーブル30を配線することにより、伸長時の伸縮ケーブル30の全長がLw1´以上となり、経路差Δdc1を確保できる。
以下、図5と図6とを参照して、経路延長部40の他の構成例について説明する。
図5は、図2の経路延長部40の他の第1例を示す図である。図5(a)は正面図、図5(b)は側面図をそれぞれ示している。図5(a)に示すように、第1例に係る経路延長部40は、伸縮ケーブル30を巻き付けるためのスプール155を有する。当該スプール155に対して伸縮ケーブル30が巻き付けられることにより、第1例の経路延長部40は、配線経路を延長することができる。図5(b)に示すように、当該スプール155に巻き付けられている伸縮ケーブル30の巻き数は、第1姿勢時と第2姿勢時とで同一である。図5(b)に示すように、スプール155は、当該スプール155に巻きつけられた伸縮ケーブル30同士が接触しないための機構を有する。例えば、当該スプール155には、伸縮ケーブル30同士を接触させないためのガイド溝157がらせん状に形成されている。ガイド溝157に沿って伸縮ケーブル30が巻き付けられることにより、隣り合う伸縮ケーブル部分同士が接触しないため、伸縮により逆方向に伸び縮みする伸縮ケーブル部分同士の摩擦を抑えることができる。スプール155は、基部101に対して軸回転可能に支持される。これにより、伸縮ケーブル30の伸縮に併せて当該スプール155が自由回転するため、当該スプール155と伸縮ケーブル30との間の摩擦を小さくすることができる。これらにより、伸縮ケーブル30の不通リスクは低減される。これらの効果により、伸縮ケーブル30の破断のリスクを小さくできる。
以上説明した第1例の経路延長部40は、図2で示した経路延長部40の複数のプーリーの代替として、スプール155を用いることにより、図2で示した経路延長部40と同様の効果を得られる。
図6は、図2の経路延長部40の他の第2例の正面図である。図6(a)は第1姿勢時に対応し、図6(b)は第2姿勢時に対応する。第2例に係る経路延長部40は、図2で示した第1実施形態に係る経路延長部40と同じように複数のプーリーにより構成される。図2で示した経路延長部40との差異は、第2例に係る経路延長部40が、実質的な伸縮ケーブル30の伸縮長を確保する機能を有する点にある。
経路延長部40は、同一の半径を有する複数のプーリー、ここでは第1プーリー159と第2プーリー161とを有する。これらのプーリー159、161は、それぞれ付勢機構163、165により、基部101の軸線(Z軸)と略平行な方向に付勢される。図6に示すように、例えば、付勢機構には付勢バネが使用される。なお、付勢機構は、付勢可能であれば他の機構であってもよい。例えば、付勢機構は、入れ子型、蛇腹型およびゴム型等であってもよい。これらのプーリー159,161各々は、基部101の軸線(Z軸)と略平行な方向に関して分散配置される。プーリー159はプーリー161の下方に所定距離隔てた位置に配置される。プーリー159、161はそれぞれの回転軸が第2回転関節部J2の第2回転軸RA2(X軸)に平行になるよう配置される。これにより複数のプーリー159、161は、伸縮ケーブル30を基部101の軸方向に沿って往復配線経路を形成する。往復配線経路は、ハンド部側ケーブル固定部133a、基部側ケーブル133bの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を延長する。それにより伸縮ケーブル30の全長は、複数のケーブルガイド51のみにより誘導される伸縮ケーブル30の全長よりも延長される。
第2例に係る経路延長部40は、実質的なケーブルの伸縮長を確保する機能を有する。具体的には、経路延長部40により延長される延長部分の長さが、伸縮ケーブル30の伸長前後で異なる。図6(a)に示すように、第1姿勢時において、付勢バネは収縮した状態である。一方、図6(b)に示すように、第2姿勢時において、伸縮ケーブル30には、基部101の軸方向への張力が発生し、付勢バネは基部101の軸方向に伸長される。このときの、付勢バネの伸びをΔd11とする。すると、第2姿勢時の、経路延長部40で延長される延長部分の長さは、第1姿勢時に比べて2×Δd11分短くなる。第2姿勢時における経路延長部40の付勢バネの伸長分(2×Δd11)は、経路差Δdc1に充当される。つまり、第1実施形態では、伸縮ケーブル30の伸縮だけで、経路差Δdc1を確保する必要があったが、第2例では、伸縮ケーブル30の伸縮と経路延長部40の配線経路の延長部分の伸縮とで、経路差Δdc1を確保することができる。これにより、第2例に係るロボットアーム機構は、第1実施形態の効果に加えて、第1実施形態のロボットアーム機構に比べて、使用する伸縮ケーブル30の全長を、付勢バネの伸長分短くすることができる。また、第2例に係るロボットアーム機構は、伸縮ケーブル30に基部101の軸方向への張力が発生したときに、付勢バネでその張力を吸収することができる。したがって、第2例に係る経路延長部40は、図2で示した経路延長部40に比べて、伸縮ケーブル30にかかる負担を小さくすることができる。
なお、図6で示した経路延長部40の構造は、ハンド部側ケーブル固定部133aと、基部側ケーブル固定部133bとの間を、伸縮性のないケーブルで配線した場合においても適用できる。例えば、2つの付勢バネの伸びの合計が、経路差Δdc1以上であればよい。これにより、伸縮ケーブル30を用いなくても、経路差Δdc1を付勢バネの伸びだけで確保することができる。
また、図2と図6とで説明した経路延長部40は、それぞれ図2と図6とに図示した機構に限定されない。プーリー数、各プーリー間の距離および各プーリーの向きは、伸縮ケーブル30の全長、経路延長部40として占有可能な体積、および基部側ケーブル固定部133bとケーブルガイド51との間の位置関係等に応じて適宜変更が可能である。例えば、複数のプーリーは、伸縮ケーブル30を基部101の軸方向に直交する方向に沿って往復させるために必要な配線経路を形成するための位置関係に配置されてもよい。例えば、プーリー141,142,143は、それぞれの回転軸が、基部101の軸を中心とした半径方向に略平行となるように配置されてもよい。これにより、プーリー141,142,143各々を基部101の軸を中心とした円周上に配置することができるため、円筒形を有する基部101の場合などにおいて、基部101内への経路延長部40の配置自由度を向上させることができる。
以上述べた、第1実施形態に係る多関節ロボットアーム機構によれば、以下の効果を得られる。第1実施形態に係る収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、経路差Δdc1を伸縮長で確保するために必要な長さを有する。収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1は、最短経路長Lc1よりも長い。そのため、第1実施形態に係る経路延長部40は、配線経路を延長する機能と伸縮ケーブル30を収容する機能とを有する。経路延長部40は、第1姿勢時において、経路延長部40により延長される配線経路の全長が、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1に略等価になるように構成される。これにより、経路延長部40により延長された配線経路の全長は、複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路に比べて、長さd1分延長される。これにより、第1姿勢時においても、伸縮ケーブル30がたるむことなく経路延長部40に収容されるため、ロボットアーム102の伸縮動作等で、伸縮ケーブル30が周囲の部品等と干渉しない。その結果、部品の破損や伸縮ケーブル30の破断等を解消することができる。なお、第1姿勢時において、経路延長部40により延長される配線経路の全長は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長Lw1よりもわずかに短いのが好適である。これにより、第1姿勢時においても、経路延長部40を構成する複数のプーリーに引き渡された伸縮ケーブル30にわずかなテンションがかかるため、伸縮ケーブル30が経路延長部40でたるむのを防止することができる。
経路延長部40は、伸縮ケーブル30を基部101の軸方向に沿って往復配線経路を形成するように複数のプーリー141,142、143を配置した機構を有する。しかしながら、プーリー数、各プーリー間の距離および各プーリーの向きは、伸縮ケーブル30の全長、経路延長部40として占有可能な体積、および基部側ケーブル固定部133bとケーブルガイド51との間の位置関係等に応じて構成されればよい。したがって、第1実施形態に係る経路延長部40は、伸縮ケーブル30の収容スペースを縮小化することができる。また、経路延長部40に、回転自在なプーリーを使用することで、プーリーが伸縮ケーブル30の伸長分の送り出し、また、収縮分の巻き取りとして機能するため、伸縮ケーブル30の伸縮時における経路延長部40と伸縮ケーブル30との間に発生する摩擦を低減することができる。
(変形例1)
第1変形例では、複数の電力等の供給先(モータドライバ)がロボットアーム102にある場合の経路延長部40の構成例について説明する。以下、第1実施形態との差異を中心に、第1変形例に係る多関節ロボットアーム機構について図7を参照して説明する。
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る多関節ロボットアーム機構の内部構造を示す図である。第1変形例に係る多関節ロボットアーム機構は、伸縮性を有さないケーブル30aと、複数の伸縮ケーブル30b−30eと、複数のケーブル固定部135a−135jと、複数のドライバセット140a−140eと、複数の経路延長部40b1−40e1とを有する。ドライバセット140aは、モータドライバ137aとモータ139aとを有する。他のドライバセット140b−140eもモータとモータドライバとのセット(モータドライバ137bとモータ139b、モータドライバ137cとモータ139c、モータドライバ137dとモータ139d、モータドライバ137eとモータ139e)をそれぞれ有する。複数のドライバセット140a−140dは、それぞれ対応する複数の回転関節部J1−J4を回転するための動力を発生する。ドライバセット140eは、ハンド部116を開閉するための動力を発生する。
ケーブル30aの一端は、モータドライバ137aのコネクタに接続され、他端は、電源回路のコネクタと制御装置のコネクタとに接続される。伸縮ケーブル30aの一端部分は、モータドライバ137aの近傍に設けられたケーブル固定部135bで固定され、他端部分は、基部101内の底の位置に設けられたケーブル固定部135aで固定される。
ケーブル固定部135aとケーブル固定部135bとの間に回転関節部が介在していないため、ロボットアーム102の回転動作で、モータドライバ137aと電源回路等との間の距離に変化は生じない。したがって、ケーブル30aは伸縮性を有さなくてもよい。
伸縮ケーブル30bの一端はモータドライバ137aのコネクタに接続され、他端は、モータドライバ137bのコネクタに接続される。伸縮ケーブル30bの一端部分は、モータドライバ137aの近傍に設けられたケーブル固定部135cで固定され、他端部分は、モータドライバ137bの近傍に設けられたケーブル固定部135dで固定される。経路延長部40b1は、ケーブル固定部135cとケーブル固定部135dとの間の配線経路上に介在される。回転関節部J1の回転位置によって、ケーブル固定部135cとケーブル固定部135dとの間に経路差が生じる。収縮時の伸縮ケーブル30bの全長は、回転関節部J1で発生する最大の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40b1は、収縮時の伸縮ケーブル30bの全長と、第1姿勢時における、ケーブル固定部135cからケーブル固定部135dまでを複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路長との間の差分を延長する。これにより、伸縮ケーブル30bは、回転関節部J1がどの位置に回転しても、モータドライバ137aとモータドライバ137bとの間の電気的な接続を維持させることができる。
伸縮ケーブル30cの一端はモータドライバ137bのコネクタに接続され、他端は、モータドライバ137cのコネクタに接続される。伸縮ケーブル30cの一端部分は、モータドライバ137bの近傍に設けられたケーブル固定部135eで固定され、他端部分は、モータドライバ137cの近傍に設けられたケーブル固定部135fで固定される。経路延長部40c1は、ケーブル固定部135eとケーブル固定部135fとの間の配線経路上に介在される。回転関節部J2の回転位置によって、ケーブル固定部135eとケーブル固定部135fとの間に経路差が生じる。収縮時の伸縮ケーブル30cの全長は、回転関節部J2で発生する最大の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40c1は、収縮時の伸縮ケーブル30cの全長と、第1姿勢時における、ケーブル固定部135eからケーブル固定部135fまでを複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路長との間の差分を延長する。これにより、伸縮ケーブル30cは、回転関節部J2がどの位置まで回転しても、モータドライバ137bとモータドライバ137cとの間の電気的な接続を維持させることができる。
伸縮ケーブル30dの一端はモータドライバ137cのコネクタに接続され、他端は、モータドライバ137dのコネクタに接続される。伸縮ケーブル30dの一端部分は、モータドライバ137cの近傍に設けられたケーブル固定部135gで固定され、他端部分は、モータドライバ137dの近傍に設けられたケーブル固定部135hで固定される。経路延長部40d1は、ケーブル固定部135gとケーブル固定部135hとの間の配線経路上に介在される。回転関節部J3の回転位置によって、ケーブル固定部135gとケーブル固定部135hとの間に経路差が生じる。収縮時の伸縮ケーブル30dの全長は、回転関節部J3で発生する最大の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40d1は、収縮時の伸縮ケーブル30dの全長と、第1姿勢時における、ケーブル固定部135gからケーブル固定部135hまでを複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路長との間の差分を延長する。これにより、伸縮ケーブル30dは、回転関節部J3がどの位置まで回転しても、モータドライバ137cとモータドライバ137dとの間の電気的な接続を維持させることができる。
伸縮ケーブル30eの一端はモータドライバ137dのコネクタに接続され、他端は、モータドライバ137eのコネクタに接続される。伸縮ケーブル30eの一端部分は、モータドライバ137dの近傍に設けられたケーブル固定部135iで固定され、他端部分は、モータドライバ137eの近傍に設けられたケーブル固定部135jで固定される。経路延長部40e1は、ケーブル固定部135iとケーブル固定部135jとの間の配線経路上に介在される。回転関節部J4の回転位置によって、ケーブル固定部135iとケーブル固定部135jとの間に経路差が生じる。収縮時の伸縮ケーブル30eの全長は、回転関節部J4で発生する最大の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40e1は、収縮時の伸縮ケーブル30eの全長と、第1姿勢時における、ケーブル固定部135iからケーブル固定部135jまでを複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路長との間の差分を延長する。これにより、伸縮ケーブル30eは、回転関節部J4がどの位置まで回転しても、モータドライバ137dとモータドライバ137eとの間の電気的な接続を維持させることができる。
複数の経路延長部40b1−40e1各々には、第1実施形態の図2、図5および図6で説明した経路延長部40の構造を適用することができる。以上説明した第1実施形態の第1変形例に係る多関節ロボットアーム機構によれば、ロボットアーム102に電力等の供給先が複数ある場合においても、回転関節部を跨ぐ配線経路上に経路延長部40を設けることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、伸縮ケーブル30bは、モータドライバ137aとモータドライバ137bとを接続する。モータドライバ137aとモータドライバ137bとの間の配線経路上には回転関節部J1が介在される。収縮時の伸縮ケーブル30bの全長は、回転関節部J1で発生される最大の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40b1により延長される配線経路の全長は、収縮時の伸縮ケーブル30bの全長に略等価である。すなわち、経路延長部40b1は、回転関節部J1の回転に依らず、伸縮ケーブル30bをたるませずに収容することができる。また、伸縮ケーブル30bは、回転関節部J1の回転に依らず、モータドライバ137aとモータドライバ137bとの間の電気的な接続を維持させることができる。
なお、ロボットアーム102に電力等の供給先が複数ある場合における伸縮ケーブル30の配線方法は、図7で示した構成に限定されない。例えば、複数のモータドライバ137b−137e各々が電力等の供給元に独立に伸縮ケーブル30で接続されてもよい。このとき、経路延長部40は、複数の伸縮ケーブル30の配線経路毎に設けられればよい。
(変形例2)
第2変形例では、回転関節部を用いた経路延長部40の構成例について説明する。以下、第1実施形態と第1実施形態の変形例1との差異を中心に、第2変形例に係る多関節ロボットアーム機構について図8を参照して説明する。
図8は、第1実施形態の第2変形例に係る多関節ロボットアーム機構の内部構造を示す図である。図8は図7に対応する。図7で説明したように、第1変形例に係る複数の経路延長部40b1−40e1は、回転関節部J1−J4の隣り合うペアの間に設けられる。一方、第2変形例に係る経路延長部40b2−40e2各々は、回転関節部の内部に構成される。例えば、経路延長部40c2は、回転関節部J2の回転軸体を用いて構成される。
図9は、第1実施形態の第2変形例に係り、回転関節部J2の回転軸体を用いて構成される経路延長部40c2の内部構造を示す図である。図9(a)は、側面の断面図、図9(b)は正面の断面図をそれぞれ示す。経路延長部40c2は、回転関節部J2の回転軸体170を回転に構成される。回転軸体170は、アーム部105とアーム部103とを回転自在に連結する。回転軸体170には、伸縮ケーブル30c同士を接触させないためのガイド溝172がらせん状に形成されている。ガイド溝172に沿って、伸縮ケーブル30cが巻き付けられることにより、経路延長部40c2は、配線経路を延長することができる。経路延長部40c2により延長される配線経路の全長は、収縮時の伸縮ケーブル30cの全長に略等価である。収縮時の伸縮ケーブル30cの全長は、回転関節部J2で発生する配線経路の経路差以上の伸縮長を確保するために必要とされる長さを有する。経路延長部40c2は、収縮時の伸縮ケーブル30cの全長と、第1姿勢時における、ケーブル固定部135eからケーブル固定部135fまでを複数のケーブルガイド51のみで形成した配線経路長との間の差分を延長する。経路延長部40c2で延長する配線経路長は、回転軸体170への伸縮ケーブル30cの巻き数、回転軸体170の径等で適宜変更することができる。ガイド溝172に沿って伸縮ケーブル30cが巻き付けられることにより、隣り合う伸縮ケーブル部分同士が接触しないため、伸縮により逆方向に伸び縮みする伸縮ケーブル部分同士の摩擦を抑えることができる。また、伸縮ケーブル30cは、巻き付けられた回転軸体170の回転により伸縮する。そのため、回転軸体170と伸縮ケーブル30cとの間の摩擦を小さくすることができる。これらの効果により、伸縮ケーブル30の破断のリスクを小さくできる。また、元々存在する部品の回転軸体170を利用して経路延長部40c2を構成することができるため、経路延長部40c2としての占有体積を極小化することができる。さらに、第1実施形態のように、経路延長部40c2としての追加部品が不要であるため、コストを削減することができる。
図10は、第1実施形態の第2変形例に係り、回転関節部J2の回転軸体を用いて構成される経路延長部40c2の内部構造を示す図である。図10(a)は、側面から見た断面図、図10(b)は正面から見た断面図をそれぞれ示す。図10に示す経路延長部40c2は、回転関節部J2の回転軸体174に構成される。回転軸体174は、アーム部105とアーム部103とを回転自在に連結する。回転軸体174は、筒状形状を有する。筒状の中空部分に伸縮ケーブル30cが挿通されることにより、経路延長部40c2は、配線経路を延長することができる。このとき、延長される配線経路長は、回転軸体174の軸方向(図中X方向)の挿通部分の長さに対応する。経路延長部40c2で延長する必要のある配線経路長が長い場合、伸縮ケーブル30cは回転軸体174の軸方向に沿って巻き付けられてもよい。図10に示す経路延長部40c2は、元々存在する部品の筒状の回転軸体174を利用して構成される。そのため、経路延長部40としての占有体積を極小化することができる。また、第1実施形態のように、経路延長部40としての追加部品が不要であるため、コストを削減することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、本発明をインクジェットプリンタに適用した場合に対応する。以下、図面を参照しながら、第2実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。
図11は、第2実施形態に係るインクジェットプリンタ2の概略構成図である。図11に示すように、第2実施形態に係るインクジェットプリンタ2は、キャリッジ202と、インクジェットプリンタ用のヘッド203(以下、単にヘッド203と称する。)と、プリンタフレーム204と、キャリッジ軸205と、排紙ローラ206とを有する。
図12は、第2実施形態に係るインクジェットプリンタの伸縮ケーブルの配線機構の一例を示す図である。図12(a)は、キャリッジ202の基準位置を示し、図12(b)は、キャリッジ202の最大移動位置を示している。基準位置は、ヘッド側ケーブル固定部220aが本体側ケーブル固定部220bに最も近づく位置に対応する。最大移動位置は、ヘッド側ケーブル固定部220aが本体側ケーブル固定部220bから最も遠ざかる位置に対応する。
キャリッジ202は、複数のインクカートリッジ202a,202b,202cおよび202dを内部に搭載する。キャリッジ202は、その下面にヘッド203を備える。ヘッド203は、インクジェットノズル(図示せず)からインクを吐出することにより記録用紙(記録媒体)Pに所定の画像等を出力する。インクジェットノズルから吐出されるインクの種類および量は、本体部(図示せず)により制御される。本体部は、電源回路と制御装置とを有する。キャリッジ202は、本体部からの電力および信号の供給を受けるための受信部207を有する。本体部と受信部207との間は、伸縮ケーブル30により接続される。伸縮ケーブル30の配線機構については後述する。キャリッジ202は、プリンタフレーム204内のキャリッジ軸205により移動可能に支持される。キャリッジ軸205は、記録用紙Pの搬送方向A(Z軸方向)と直交し、記録用紙Pの搬送面と平行な軸(X軸)Bを有する。排紙ローラ206は、記録用紙Pを排紙する。
インクジェットプリンタ2の動作は、以下の通りである。まず、給紙部(図示せず)から給紙された記録用紙Pが、搬送部(図示せず)により搬送方向Aに沿って、プラテンローラ(図示せず)とヘッド203との間に搬送される。そして、本体部により、キャリッジ202の移動、ヘッド203によるインクの吐出、及び記録用紙Pの搬送が連動するように制御されることにより、記録用紙Pに所定の画像などが出力される。その後、記録後の記録用紙Pが排紙ローラ206により排紙される。図12に示すように、伸縮ケーブル30の配線機構は、伸縮ケーブル30と、複数のケーブルガイド51と、経路延長部40と、ヘッド側ケーブル固定部220aと、本体側ケーブル固定部220bとで構成される。
伸縮ケーブル30の一端は、キャリッジ202内の受信部207のコネクタに接続される。他端は、本体部のコネクタ(電力を発生する電源回路のコネクタと制御信号を発生する制御装置のコネクタと)に接続される。インクジェット制御部208は、受信部207を介して入力された電力と制御信号とに基づいて、インクジェットノズルを制御する。
伸縮ケーブル30の一端部分は、キャリッジ202内の受信部207の近傍に設けられたケーブル固定部220a(ヘッド側ケーブル固定部220aと称する。)に固定される。伸縮ケーブル30の他端部分は、本体部内に設けられたケーブル固定部220b(本体側ケーブル固定部220bと称する。)に固定される。これにより、伸縮ケーブル30に張力がかけられた状態であっても、伸縮ケーブル30がコネクタから抜けてしまう等の不通リスクを低減することができる。伸縮ケーブル30のヘッド側ケーブル固定部220aと本体側ケーブル固定部220bとの間の部分は、複数のケーブルガイド51によりガイドされる。複数のケーブルガイド51は、伸縮ケーブル30の配線経路を形成する。複数のケーブルガイド51によりガイドされた伸縮ケーブル30は、キャリッジ軸205内を通る。
経路延長部40は、ヘッド側ケーブル固定部220aから本体側ケーブル固定部220bまでの配線経路を延長するために、伸縮ケーブル30の配線経路上に介在する。図12に示すように、例えば、経路延長部40は、キャリッジ軸205内に設けられる。経路延長部40は、同一の半径を有する複数のプーリー、ここでは第1のプーリー241と第2プーリー242とを有する。これらのプーリー241と242とは、キャリッジ軸205の軸方向(X軸)と略平行な方向に関して分散配置される。例えば、第1プーリー241は、第2プーリー242の上方(Y軸方向に)に所定距離隔てた位置に配置される。伸縮ケーブル30が、ヘッド側ケーブル固定部220aから第1プーリー241、第2プーリー242の順に掛け渡される。これにより複数のプーリー241,242は、伸縮ケーブル30をキャリッジ軸205の軸方向に沿った往復配線経路を形成する。
キャリッジ202が基準位置に配置されているとき、ヘッド側ケーブル固定部220aから本体側ケーブル固定部220bまでの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を最短経路と称する。収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、基準位置に配置されたときのキャリッジ202の位置と最大移動時のキャリッジ202の位置との間の距離(移動長)Δd21により決定される。具体的には、収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、移動長Δd21以上の伸縮長を確保するための長さを有する。このように決定された収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40の往復配線経路は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
以上述べた、第2実施形態に係るインクジェットプリンタ2によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態は、本発明を3軸移動機構に適用した場合に対応する。当該3軸移動機構は、例えば、クレーン式のゲーム機器、3Dプリンタ、工作用のXYステージ等に装備されることができる。以下、図面を参照しながら、第3実施形態に係る3軸移動機構について説明する。
図13は、第3実施形態に係る3軸移動機構3の外観斜視図である。図13に示すように、3軸移動機構3は、一対のコラム301と、クロスレール303と、クロスレール移動部305と、主軸装置307と、主軸装置移動部309と、作用部311と、作用部移動部313と、を有する。
一対のコラム301は、X軸方向に所定距離隔てた位置に配置される。一対のコラム301は、クロスレール303をY軸方向に移動可能に支持する。クロスレール303は、クロスレール移動部305により、Y軸方向に移動される。クロスレール移動部305は、本体部(図示せず)の制御に従って動作する。クロスレール303は、主軸装置307をX軸方向に移動可能に支持する。主軸装置307は、主軸装置移動部309により、X軸方向に移動される。主軸装置移動部309は、本体部の制御に従って動作する。主軸装置307は、その先端部分に、作用部311をZ軸方向に移動可能に支持する。作用部311は、本体部の制御に従って動作する。ここでは、作用部311を切削用のドリル311とする。主軸装置307は、ドリル311を回転自在に保持する。主軸装置307は、Z軸に平行な回転軸を有する。なお、作用部311は、他のものに代替が可能である。例えば、主軸装置307には、作用部311を取り付けるための回転継手等の取り付け部が装備されてもよい。
本体部は、電源回路と制御装置とを有する。本体部とドリル311は伸縮ケーブル30により接続される。伸縮ケーブル30の配線機構については後述する。ドリル311は、本体部の電源回路から電力供給を受け、本体部の制御装置からの制御信号に応じた動作を行う。本体部とドリル311との間は、伸縮ケーブル30により接続される。ドリル311は、クロスレール303がY軸方向、主軸装置307がX軸方向、及びドリル311がZ軸方向にそれぞれ移動されることにより、その位置が決定される。
図14は、第3実施形態に係る3軸移動機構3の伸縮ケーブル30の配線機構の一例を示す図である。図14に示すように、伸縮ケーブル30の配線機構は、伸縮ケーブル30と、複数のケーブルガイド51と、複数、ここでは3つの経路延長部40a3、40c3、40d3と、複数のケーブル固定部320a−320dとで構成される。
伸縮ケーブル30の一端は、ドリル311のコネクタに接続される。他端は、本体部のコネクタに接続される。伸縮ケーブル30の一端部分は、主軸装置307内のドリル311のコネクタ近傍に設けられたケーブル固定部320a(以下、ドリル側ケーブル固定部320aと称する。)に固定される。伸縮ケーブル30の他端部分は、コラム301内の本体部の近傍に設けられたケーブル固定部320b(以下、コラム側ケーブル固定部320bと称する。)に固定される。これにより、伸縮ケーブル30に張力がかけられた状態であっても、伸縮ケーブル30がコネクタから抜けてしまう等の不通リスクを低減することができる。また、伸縮ケーブル30の途中部分は、主軸装置307内のクロスレール303の近傍に設けられたケーブル固定部320c(以下、主軸側ケーブル固定部320cと称する。)と、クロスレール303内のコラム301の近傍に設けられたケーブル固定部320d(以下、クロスレール側ケーブル固定部320dと称する。)に固定される。
伸縮ケーブル30の配線経路は、複数のケーブル固定部320a、320b、320c及び320dにより3つの配線区間に分けられる。配線経路のうち、コラム配線区間は、コラム側ケーブル固定部320bとクロスレール側ケーブル固定部320dとで区切られた区間である。伸縮ケーブル30のコラム配線区間に対応する部分は、クロスレール303のY軸方向の移動に伴って収縮される。配線経路のうち、クロスレール配線区間は、クロスレール側ケーブル固定部320dと主軸側ケーブル固定部320cとで区切られた区間である。伸縮ケーブル30のクロスレール配線区間に対応する部分は、主軸装置307のX軸方向の移動に伴って収縮される。主軸配線区間は、配線経路のうち、主軸側ケーブル固定部320cとドリル側ケーブル固定部320aとで区切られた区間である。伸縮ケーブル30の主軸配線区間に対応する部分は、ドリル311のZ軸方向の移動に伴って収縮される。クロスレール303がコラム301上を移動するとき、コラム側ケーブル固定部320bは固定点となり、クロスレール側ケーブル固定部320dはクロスレール303と共に移動する移動点となる。主軸装置307がクロスレール303に沿って移動するとき、クロスレール側ケーブル固定部320dは固定点となり、主軸側ケーブル固定部320cは主軸装置307と共に移動する移動点となる。ドリル311が主軸装置307に対して移動するとき、主軸側ケーブル固定部320cは固定点となり、ドリル側ケーブル固定部320aはドリル311と共に移動する移動点となる。このように、3つの配線区間にそれぞれ対応する伸縮ケーブル30の3つのケーブル部分はそれぞれ独立に伸縮される。
なお、ドリル側ケーブル固定部320aとコラム側ケーブル固定部320bとの間は、複数、ここでは3本の伸縮ケーブル301,302、303を用いて接続されてもよい。このとき、第1の伸縮ケーブル301は、コラム配線区間に対応し、一端が本体部のコネクタ、他端がクロスレール側ケーブル固定部320dのコネクタに接続される。第2の伸縮ケーブル302は、クロスレール配線区間に対応し、一端がクロスレール側ケーブル固定部320dのコネクタ、他端が主軸側ケーブル固定部320cのコネクタに接続される。第3の伸縮ケーブル303は、主軸配線区間に対応し、一端が主軸側ケーブル固定部320cのコネクタ、他端がドリル311のコネクタに接続される。複数の伸縮ケーブル301、302、及び303は、それぞれY軸方向、X軸方向およびZ軸方向に配線される。したがって、複数の伸縮ケーブル301、302、及び303各々は、ケーブル固定部により途中で固定される必要はない。また、複数の伸縮ケーブル301、302、及び303各々には、一方向の張力しか働かない。一方、1本の伸縮ケーブル30を配線する場合、伸縮ケーブル30は複数ケーブル固定部により固定される。伸縮ケーブル30が固定された部分には、直交する2つの方向からの張力が発生する。例えば、クロスレール側ケーブル固定部320dで固定されている伸縮ケーブル30には、X軸方向からの張力とY軸方向からの張力とが働く。そのため、そのため、複数の伸縮ケーブル301、302、及び303を用いた配線方法は、1本の伸縮ケーブル30を配線する場合に比べて、耐久性を向上させることができる。また、1本の伸縮ケーブル30を用いて配線した場合において、不通部分があれば、伸縮ケーブル30を丸々交換する必要がある。一方、複数の伸縮ケーブル301、302、及び303を用いて配線した場合において、不通部分があれば、その部分を含む伸縮ケーブルだけを交換すればよい。そのため、複数の伸縮ケーブル301、302、及び303を用いた配線方法は、1本の伸縮ケーブル30を配線する場合に比べて、メンテナンス時の伸縮ケーブルの交換が容易であり、伸縮ケーブルの交換のコストを低減することができる。
経路延長部40は、各配線区間(固定点と移動点との間)に設けられる。経路延長部40a3は、主軸配線区間に設けられ、例えば、主軸装置307内に形成される。経路延長部40c3は、クロスレール配線区間に設けられ、例えば、クロスレール303内に形成される。経路延長部40d3は、コラム配線区間に設けられ、例えば、コラム301内に形成される。
複数の経路延長部40a3、40c3、40d3は、それぞれ複数のプーリー、ここでは2つのプーリーを有する。2つのプーリーは、対応する配線区間の配線方向に分散配置され、配線方向に沿った往復配線経路を形成する。例えば、経路延長部40c3は、第1プーリー341cと第2プーリー342cとを有する。第1プーリー341cと第2プーリー341cとは、X軸方向に分散配置される。第1プーリー341cは、第2プーリー342cのZ軸の上方に所定距離隔てた位置に配置される。伸縮ケーブル30は、主軸側ケーブル固定部320cから第1プーリー341c、第2プーリー342cの順に掛け渡される。これにより複数のプーリー341c,342cは、伸縮ケーブル30をX軸方向に沿った往復配線経路を形成する。経路延長部40c3は、伸縮ケーブル30を、クロスレール側ケーブル固定部320dから第2プーリー342cにガイドするための第3プーリー343cを有する。
経路延長部40c3の往復配線経路は、クロスレール配線区間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を延長する。具体的には、クロスレール配線区間で必要とされる、収縮時の伸縮ケーブル30の長さは、伸縮長Δd32により決定される。経路差Δd32は、主軸装置307の基準位置と主軸装置307の最大移動位置との間の距離に対応する。主軸装置307の基準位置は、主軸装置307がクロスレール側ケーブル固定部320dに最も近づく位置に対応する。このときの、主軸側ケーブル固定部320cの位置を、図中の点線で示す。一方、主軸装置307の最大移動位置は、主軸装置307がクロスレール側ケーブル固定部320dから最も遠い位置に対応する。このときの、主軸側ケーブル固定部320cの位置を、図中の実線で示す。主軸装置307が基準位置に配置されているときの、クロスレール側ケーブル固定部320dから主軸側ケーブル固定部320cまでの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を最短経路と称する。
クロスレール配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30は、ケーブル収縮時において、伸縮長Δd32をケーブルの伸縮長で確保するために必要な全長を有する。具体的には、伸縮ケーブル30のクロスレール配線区間に対応する部分が、収縮前後の長さの差分がΔd32以上となるように、全長が決定される。クロスレール配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40c3の往復配線経路は、クロスレール配線区間で必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
同様に、コラム配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30は、ケーブル収縮時において、伸縮長Δd33をケーブルの伸縮長で確保するために必要な全長を有する。具体的には、伸縮ケーブル30のコラム配線区間に対応する部分が、収縮前後の長さの差分がΔd33以上となるように、全長が決定される。経路差Δd33は、クロスレール303の基準位置とクロスレール303の最大移動位置との間の距離に対応する。クロスレール303の基準位置は、クロスレール303がコラム側ケーブル固定部320bに最も近づく位置に対応する。このときの、クロスレール側ケーブル固定部320dの位置を、図中の点線で示す。一方、クロスレール303の最大移動位置は、クロスレール303がコラム側ケーブル固定部320bから最も遠い位置に対応する。このときの、クロスレール側ケーブル固定部320dの位置を、図中の実線で示す。クロスレール303が基準位置に配置されているときの、コラム側ケーブル固定部320bからクロスレール側ケーブル固定部320dまでの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を最短経路と称する。コラム配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40d3の往復配線経路は、コラム配線区間で必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
主軸配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30は、ケーブル収縮時において、伸縮長Δd31をケーブルの伸縮長で確保するために必要な全長を有する。具体的には、伸縮ケーブル30の主軸配線区間に対応する部分が、収縮前後の長さの差分がΔd31以上となるように、全長が決定される。経路差Δd31は、ドリル311の基準位置とドリル311の最大移動位置との間の距離に対応する。ドリル311の基準位置は、ドリル311が主軸側ケーブル固定部320cに最も近づく位置に対応する。このときの、ドリル側ケーブル固定部320aの位置を、図中の点線で示す。一方、ドリル311の最大移動位置は、ドリル311が主軸側ケーブル固定部320cから最も遠い位置に対応する。このときの、ドリル側ケーブル固定部320aの位置を、図中の実線で示す。ドリル311が基準位置に配置されているときの、主軸側ケーブル固定部320cからドリル側ケーブル固定部320aまでの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を最短経路と称する。主軸配線区間で必要とされる伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40a3の往復配線経路は、主軸配線区間で必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
以上まとめると、収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、各配線区間で必要とされる収縮時の伸縮ケーブル30の長さの和で決定される。
以上述べた、第3実施形態に係る3軸移動機構3によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。また、第3実施形態において、本体部からドリル311までの配線経路は、複数のケーブル固定部320a−320dにより、3つの配線区間に区分けされる。3つの配線区間は、それぞれX軸方向の配線区間、Y軸方向の配線区間、及びZ軸方向の配線方向に対応する。X軸方向の配線区間に経路延長部40c3が設けられ、Y軸方向の配線区間に経路延長部40d3が設けられ、Z軸方向の配線方向に経路延長部40a3が設けられる。経路延長部40a3はドリル311のZ軸方向の移動に伴う伸縮ケーブル30のZ軸方向の収縮に対応するように構成される。これにより、伸縮ケーブル30の経路延長部40a3に掛け渡されいる部分には、Z軸方向の張力しか発生しない。経路延長部40c3はドリル311のX軸方向の移動に伴う伸縮ケーブル30のX軸方向の収縮に対応するように構成される。これにより、伸縮ケーブル30の経路延長部40c3に掛け渡されいる部分には、X軸方向の張力しか発生しない。経路延長部40d3はドリル311のY軸方向の移動に伴う伸縮ケーブル30のY軸方向の収縮に対応するように構成される。これにより、伸縮ケーブル30の経路延長部40d3に掛け渡されいる部分には、Y軸方向の張力しか発生しない。したがって、ドリル311がどのような位置に動いても、3つの配線区間各々に対応する伸縮ケーブル30の3つの部分には、常に同じ方向の張力しか発生しない。複数の経路延長部40a3、40c3および40d3は、それぞれの配線区間で発生する張力に応じて伸縮ケーブル30がスムーズに伸縮するようにプーリー等を構成することができる。すなわち、伸縮ケーブル30の伸縮に伴って、伸縮ケーブル30と他の部品(ケーブルガイドおよびプーリー等)との間に発生する摩擦を小さくでき、ひいては、伸縮ケーブル30の断線等のリスクを低減することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態は、本発明を油圧機構に適用した場合に対応する。以下、図面を参照しながら、第4実施形態に係る油圧機構を搭載した高所作業車について説明する。
図15は、第4実施形態に係る油圧機構を搭載した高所作業車の外観図である。図15に示すように、高所作業車4は、車台411と、旋回台412と、アーム413と、作用部414と、起伏アクチュエータ415とを有する。車台411は、旋回台412を旋回自在に支持する。旋回台412はZ軸に平行な旋回軸を有する。旋回台412は、アーム413を起伏自在に支持する。起伏アクチュエータ415は、旋回台412とアーム413とを固定する。起伏アクチュエータ415は、油圧シリンダーを有する。油圧シリンダーの伸縮に応じて、アーム413が起伏する。アーム413は、例えば、円筒形状を有するアーム部413aとアーム部413bとの入れ子構造により構成される。アーム413の内部には、油圧シリンダーが設けられる。アーム413は、内部油圧シリンダーの伸縮によって、内側のアーム部413bが外側のアーム部413aから送り出されることにより伸長し、挿入されることにより収縮する。
アーム413の先端部分には作用部414が取り付けられる。操作者は、図示しない操作盤を用いて、旋回台412の旋回動作、起伏アクチュエータ415のアーム413の起伏動作、アーム413の伸縮動作を指示することにより、作用部414を任意の位置に移動させることができる。ここでは、作用部414を照明414とする。照明414には、伸縮ケーブル30を介して外部電源から電力が供給される。なお、図15において、点線はアーム413の基準姿勢を示し、実線はアーム413が最大に伸長されたときの起伏姿勢を示す。
図16は、第4実施形態に係る油圧機構を搭載した高所作業車4の経路延長部40の構造の一例を示す図である。図16において、アーム413の基準姿勢を点線で、起伏姿勢を実線で示す。図16に示すように、伸縮ケーブル30の配線機構は、伸縮ケーブル30と、複数のケーブルガイド51と、経路延長部40と、作用部側ケーブル固定部420aと、旋回台側ケーブル固定部420bとで構成される。
伸縮ケーブル30の一端は、照明414のコネクタに接続される。他端は、旋回台412に設けられた外部コネクタに接続される。外部コネクタには、外部電源が接続される。
伸縮ケーブル30の一端部分は、照明414の近傍に設けられたケーブル固定部420a(以下、作用部側ケーブル固定部420aと称する。)に固定される。伸縮ケーブル30の他端部分は、旋回台412内の外部コネクタの近傍に設けられたケーブル固定部420b(以下、旋回台側ケーブル固定部420bと称する。)に固定される。これにより、伸縮ケーブル30に張力がかけられた状態であっても、伸縮ケーブル30がコネクタから抜けてしまう等の不通リスクを低減することができる。伸縮ケーブル30の作用部側ケーブル固定部420aと旋回台側ケーブル固定部420bとの間の部分は、複数のケーブルガイド51によりガイドされる。複数のケーブルガイド51は、伸縮ケーブル30の配線経路をアーム413に沿って外部に形成する。なお、複数のケーブルガイド51は、伸縮ケーブル30の配線経路がアーム413内に形成されるように配置されてもよい。また、複数のケーブルガイド51は、配線経路の一部分がアーム413内に形成されるように配置されてもよい。
経路延長部40は、作用部側ケーブル固定部420aから旋回台側ケーブル固定部420bまでの配線経路を延長するために、伸縮ケーブル30の配線経路上に介在する。図16に示すように、経路延長部40は、旋回台412内に形成される。経路延長部40は、同一の半径を有する第1プーリー441と第2プーリー442とを有する。これらのプーリー441,442は、設置面Gに直交する方向(Z軸方向)に関して分散配置される。伸縮ケーブル30が、旋回台側ケーブル固定部420b、第1プーリー441、第2プーリー442の順に掛け渡される。これにより第1プーリー441と第2プーリー442は、伸縮ケーブル30をZ軸方向に沿って往復配線経路を形成する。第3プーリー443は、アーム413に沿って配線された伸縮ケーブル30を第2プーリー442に掛け渡す。アーム413は、設置面Gに対して、任意の角度に起伏される。そのため、第3プーリー443は、アーム413がどのように起伏されても、第3プーリー443から伸縮ケーブル30が外れない位置に配置される。
基準姿勢時において、作用部側ケーブル固定部420aから旋回台側ケーブル固定部420bまでの間に配列される複数のケーブルガイド51のみによる配線経路を最短経路と称する。収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、基準姿勢時の照明414の位置と起伏姿勢時の照明414の位置との間の距離(伸縮長)Δd41により決定される。このとき、収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40の往復配線経路は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
以上述べた、第4実施形態に係る高所作業車4によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
本実施形態は、固定部と移動部とを有する装置(機構)における、固定部と移動部との間の伸縮ケーブル30の配線機構に関する。第1−第4実施形態のように、固定部には、例えば外部電源装置と外部制御装置等が装備されている。例えば、移動部は、第1実施形態では複数の回転関節部J1−J4を有するロボットアーム102に装備されたハンド部116に相当する。第2実施形態では、キャリッジ軸205に沿って往復移動するキャリッジに相当する。第3実施形態では、3軸移動機構によって、3軸方向に移動可能に保持されるドリル311に相当する。第4実施形態では、油圧機構によって伸縮可能なアーム413に装備された作用部414に相当する。
本実施形態に係る配線機構の適用先は、第1−第4実施形態で説明した各装置に限定されない。固定部から移動部に対して電力および制御信号の少なくとも一方を供給する必要があれば、固定部と移動部との間の配線機構として、本実施形態の適用が可能である。具体的には、本実施形態に係る伸縮ケーブル30の配線機構は、従来、ケーブルベヤ(登録商標)を用いた装置に適用することができる。ケーブルベヤは、固定部と移動部との間に接続されたケーブルを保護し、予め決まった配線経路に案内するための装置である。したがって、固定部と移動部とを接続するケーブルに余長分が発生した場合においても、余長分が予め決まった配線経路に誘導される。そのため、ケーブルの余長分が周辺部品等に干渉することを防ぐことができる。ケーブルベヤを用いた装置には、例えば、チップマウンタ、検査装置、X線検査機、ワークの搬送台車、電動式の扉の開閉装置(車等のパワースライドドア)、天井クレーン等がある。また、人の動きをサポートするための外骨格ロボット等のケーブル配線機構に適用することができる。以下、伸縮ケーブル30の配線機構について組立工場のラインへの適用を例に説明する。
図17は、第5実施形態に係る配線機構を組み込んだ組立ラインの構成を示す外観斜視図である。図17に示すように、組立ラインは、コンベア61と、工具台車線路65と、工具台車67とを有する。ここでは、固定部は図示しない外部電源とし、移動部は工具台車67に装備されているコンセント671とする。
コンベア61は、作業対象物63を連続的または断続的に運搬するための帯状の機械装置である。コンベア61は、例えば、ベルト式及び鎖式の構造を有する。工具台車線路65は、コンベア61に並走するように設けられる。工具台車67は下部に車輪を有し、コンベア61に並設された工具台車線路65上を移動する。工具台車67は、電動式の工作機械、例えば電動ドリル等のプラグを差し込むためのコンセント(電気的接続部)671を装備する。コンセント(電気的接続部)671と外部電源との間は、伸縮ケーブル30により接続される。伸縮ケーブル30の配線機構については後述する。例えば、作業者はコンベア61上に立ち、工具台車67に取り付けられている工作機械を使用して、作業対象物63に対する作業を行う。工具台車67に取り付けられている工作機械で作業を行う作業エリアは組立ライン上で限定されている。作業者は、作業エリア毎に、対応する工具台車67を移動させながら、作業対象物63に対する作業を行う。
図18は、第5実施形態に係り、工具台車67と外部電源との間の伸縮ケーブル30の配線機構の一例を示す図である。図18(a)は、工具台車67の基準位置を示し、図18(b)は、工具台車67の最大移動位置を示している。基準位置は、工具台車67の移動範囲の中心位置に対応する。最大移動位置は、工具台車67が基準位置から最も遠ざかる位置である。第5実施形態において、工具台車67はZ軸方向に移動可能であり、基準位置を移動範囲の中央に配置したため、最大移動位置は、工具台車67が基準位置から+Z方向に最も遠ざかった場合の位置Bと、−Z方向に最も遠ざかった場合の位置Aとの2つの位置がある。
図18に示すように、伸縮ケーブル30の配線機構は、伸縮ケーブル30と、複数のガイドプーリー625、626a、626bと、経路延長部40と、台車側ケーブル固定部620aと、電源側ケーブル固定部620bとで構成される。
伸縮ケーブル30の一端は、工具台車67のコンセント671に接続される。伸縮ケーブル30の他端は、外部電源に接続される。伸縮ケーブル30は、例えば、工具台車線路65の線路間に配線される。伸縮ケーブル30の一端部分は、工具台車67のコンセント671の近傍に設けられたケーブル固定部620a(以下、台車側ケーブル固定部620aと称す。)により固定される。伸縮ケーブル30の他端部分は、外部電源の近傍に設けられたケーブル固定部620b(以下、電源側ケーブル固定部620bと称す。)により固定される。これにより、伸縮ケーブル30に張力がかけられた状態であっても、伸縮ケーブル30がコネクタから抜けてしまう等の不通リスクを低減することができる。
経路延長部40は、台車側ケーブル固定部620aから電源側ケーブル固定部620bまでの伸縮ケーブル30の配線経路を延長するために、伸縮ケーブル30の配線経路上に介在する。経路延長部40は、工具台車67の基準位置の近傍に設けられるのが好適である。これにより、伸縮ケーブル30の必要な長さを短くすることができる。図18に示すように、例えば、経路延長部40は、同一の半径を有する複数のプーリー、ここでは第1のプーリー621、第2プーリー622、第3プーリー623及び第4プーリー624を有する。これらのプーリー621,622,623,624は、工具台車67の移動方向(Z軸方向)に略平行な方向に関して分散配置される。例えば、第1プーリー621と第3プーリー623とは、Z軸に関して同位置に配置される。第2プーリー622と第4プーリー624とは、Z軸に関して同位置に配置される。第2プーリー622と第4プーリー624とは、第1プーリー621と第3プーリー623とからZ軸方向に所定距離隔てた位置に配置される。伸縮ケーブル30が、電源側ケーブル固定部620bから第1プーリー621、第2プーリー622、第3プーリー623、第4プーリー624の順に掛け渡される。これにより複数のプーリー621,622,623,624は、伸縮ケーブル30を工具台車67の移動方向に沿った往復配線経路を形成する。
複数のガイドプーリー、ここでは第1ガイドプーリー625、第2ガイドプーリー626a、第3ガイドプーリー626bは、伸縮ケーブル30を台車側ケーブル固定部620aから経路延長部40の第4プーリー624に誘導するためのケーブルガイドとして機能する。具体的には、第2ガイドプーリー626aは、工具台車67が基準位置から−Z方向に移動された場合に、伸縮ケーブル30を第1ガイドプーリー625に誘導する。第3ガイドプーリー626bは、工具台車67が基準位置から+Z方向に移動された場合に、伸縮ケーブル30を第1ガイドプーリー625に誘導する。第1ガイドプーリー625は、第2ガイドプーリー626aまたは第3ガイドプーリー626bにより誘導された伸縮ケーブル30を、経路延長部40の第4プーリー624に誘導する。
工具台車67が基準位置に配置されているとき、台車側ケーブル固定部620aから電源側ケーブル固定部620bまでの間に配設された複数のガイドプーリー625,626のみによる配線経路を最短経路と称する。収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、工具台車67の基準位置と最大移動位置との間の距離(移動長)Δd61により決定される。具体的には、収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、移動長Δd61以上の伸縮長を確保するために必要な長さに決定される。このように決定された収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、最短経路の全長よりも長い。経路延長部40の往復配線経路は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長と最短経路の全長との間の差分を延長する。
以上述べた、第5実施形態に係る伸縮ケーブル30の配線機構によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、ここでは、移動部としての工具台車67と固定部としての電源との間の伸縮ケーブル30の配線機構について説明したが、他の適用例においても、経路延長部40は固定部と移動部との間の配線経路上に設けられればよい。このとき、収縮時の伸縮ケーブル30の全長は、固定部と移動部との間の最大の配線経路差を、伸縮ケーブル30の伸縮長で確保するための長さを有する。経路延長部40は、収縮時の伸縮ケーブル30の全長と、固定部と移動部との間の最小の配線経路長との間の差分を延長するように構成されればよい。
なお、第2−第5実施形態で説明した経路延長部40の構造は、各実施形態で説明した構造に限定されない。第1実施形態と同様に、これらの実施形態に係る経路延長部40を構成するプーリーの数、各プーリー間の距離、各プーリーの向き、及びケーブル固定部各々の位置は適宜変更が可能である。また、これらの実施形態に係る経路延長部40は、第1実施形態で説明したいずれの構造を適用することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や趣旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものある。