JP6507808B2 - 口腔内崩壊錠 - Google Patents

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Description

本発明は、口腔内崩壊錠に関し、より詳細には、光安定性が向上した口腔内崩壊錠に関する。
スタチン類は、HMG−CoA還元酵素の作用を阻害することによって、血液中のコレステロール値を低下させる薬剤であり、例えば、ピタバスタチンは、HMG−CoA還元酵素阻害作用を有する高脂血症用剤として公知である(非特許文献1)。さらに、スタチン類に属する他の薬剤(例えば、ロスバスタチンやアトルバスタチン)についても、現在多くの市販製品が提供されている。
近年、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上させる観点から、高齢者、小児などの嚥下困難な患者でも水なしで服用することが可能な口腔内崩壊錠が求められている。ここで、スタチン類は非常に強い苦味を有するため、スタチン類自体の薬剤溶出性を保持しつつ、錠剤コーティングによって当該苦味をマスキングにより軽減することが所望されていた。
このような苦味マスキングと薬剤溶出性とを両立し得る口腔内崩壊錠として、例えば、ピタバスタチンを含む口腔内崩壊錠が提案されている(特許文献1)。
しかし、上記スタチン類はまた、光、熱、湿度などへの安定性に欠けるため、当該スタチン類を含む口腔内崩壊錠については保存期間中の類縁物質の発生を低減させることも所望されている。
特開2013−237651号公報
「リバロ(登録商標)錠」添付文書
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、スタチン類を含有する口腔内崩壊錠であって、光、熱、湿度などへの安定性が向上した口腔内崩壊錠を提供することにある。
本発明は、スタチン類および安定化剤を含有するコア粒子を被覆層で被覆して構成される口腔内崩壊錠であって、
該安定化剤が、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し;
該安定化剤の含有量が、スタチン類の含有量100重量部に対して15重量部から80重量部であり;そして
該被覆層がアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを含有する、口腔内崩壊錠である。
1つの実施形態では、上記安定化剤の含有量は、上記スタチン類の含有量100重量部に対して25重量部から60重量部である。
1つの実施形態では、上記スタチン類は、ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチンおよびメバスタチン、ならびにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である。
1つの実施形態では、上記スタチン類はロスバスタチンである。
1つの実施形態では、上記コア粒子は、上記スタチン類および上記安定化剤を含有する粉体を少なくとも1種の結合剤を存在下で湿式造粒して得られたものである。
本発明はまた、口腔内崩壊錠の製造方法であって、
スタチン類および安定化剤を含有する粉体を湿式造粒してコア粒子を得る工程;
該コア粒子を被覆層で被覆して被覆粒子を得る工程;ならびに
該被覆粒子を打錠する工程;
を包含し、ここで:
該安定化剤が、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し;
該安定化剤の含有量が、該スタチン類の含有量100重量部に対して15重量部から80重量部であり;そして
該被覆層がアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを含有する、方法である。
1つの実施形態では、上記安定化剤の含有量は、上記スタチン類の含有量100重量部に対して25重量部から60重量部である。
1つの実施形態では、上記スタチン類は、ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチンおよびメバスタチン、ならびにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である。
1つの実施形態では、上記スタチン類はロスバスタチンである。
1つの実施形態では、上記湿式造粒する工程は、少なくとも1種の結合剤の存在下で行われる。
本発明によれば、光、熱、湿度などの種々の条件に対してスタチン類の類縁物質の発生が抑制されるため、口腔内崩壊錠自体の品質を長期間にわたって維持することができる。これにより、口腔内崩壊錠は比較的簡易な工程を経て製造することができ、長期保管と大量生産との両立が可能である。
以下、本発明について詳述する。
(口腔内崩壊錠)
本発明の口腔内崩壊錠は、スタチン類および安定化剤を含有するコア粒子を被覆層で被覆して構成される。
ここで、本明細書中に用いられる用語「口腔内崩壊錠」とは、服用時に水なしまたは少量の水によって口腔内で崩壊するように調製された錠剤をいい、錠剤とは、圧縮形成などの方法により一定の形に成型した固形の製剤をいう。また、本明細書中に用いられる用語「コア粒子」とは、口腔内崩壊錠において被覆層の内部に配置される1つまたはそれ以上の粒子をいう。
本発明を構成するスタチン類の例としては、ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、メバスタチンなどのスタチン、およびそれらの塩、ならびにそれらの組合せが挙げられる。スタチンの塩は、薬学的に許容される塩である。スタチンの薬学的に許容される塩としては、特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、および低級アルキルアミン塩が挙げられる。本発明においては、ロスバスタチンおよびその塩(例えば、ロスバスタチンカルシウム)が好ましい。本発明の口腔内崩壊錠において、上記スタチン類の含有量は、必ずしも限定されないが、口腔内崩壊錠の重量に対して、好ましくは0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
さらに、本発明を構成する安定化剤は、薬学的に受容され得るアルカリ金属の炭酸塩であり、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびそれらの組合せが挙げられる。
安定化剤の含有量は、上記スタチン類の含有量100重量部に対して15重量部〜80重量部、好ましくは25重量部〜60重量部である。スタチン類の含有量100重量部に対して、安定化剤の含有量が15重量部を下回ると、得られる口腔内崩壊錠の光安定性が低下し、光曝露下での保管の間に類縁物質が生成され易くなる。スタチン類の含有量100重量部に対して安定化剤の含有量が80重量部を超えても、光安定性など効果がそれ以上変動しない傾向にある。
本発明において、コア粒子は、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤の例としては、賦形剤、崩壊剤、第2の安定化剤、流動化剤、着色剤、矯味剤、滑沢剤、および香料、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
賦形剤としては、特に限定されず、例えば、セルロース類(結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)など)およびその誘導体、デンプン(トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチなど)およびその誘導体、糖(ブドウ糖、乳糖、白糖(精製白糖含む)、粉糖、トレハロース、デキストラン、デキストリンなど)、糖アルコール(D−マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなど)、グリセリン脂肪酸エステル、無機粉体(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト)、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましい賦形剤の例としては、D−マンニトール、乳糖、結晶セルロース、およびデンプン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
崩壊剤として、特に限定されず、例えば、クロスポビドン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、部分α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましい崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、およびクロスポビドン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
第2の安定化剤は、本発明の口腔内崩壊錠における上記安定化剤の効果を阻害しない程度の量においてコア粒子に含有されていてもよい。第2の安定化剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、L−アルギニン、L−リジン、メグルミン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
流動化剤としては、特に限定されず、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルク、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましい流動化剤の例としては、タルク、含水二酸化ケイ素、および軽質無水ケイ酸、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
着色剤としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用黄色4号、および食用黄色5号、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
矯味剤としては、特に限定されず、例えば、アルパルテーム、ステビア、糖アルコール、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、およびスクラロース、ならびにその組合せが挙げられる。好ましい矯味剤としては、アルパルテーム、ソーマチン、およびアセスルファムカリウム、ならびにそれらの組合せである。
滑沢剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、およびタルク、それらの組合せが挙げられる。好ましい滑沢剤としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステル、ならびにそれらの組合せである。
香料としては、特に限定されず、ミント、レモン香料、オレンジコートン、パイナップルフレーバー、およびl−メントール、それらの組合せが挙げられる。
本発明において、コア粒子に含まれ得る上記他の添加剤の含有量は特に限定されず、上記スタチン類および安定化剤が有する効果を阻害しない程度の量が当業者によって適宜選択され得る。
本発明の1つの実施形態では、上記コア粒子は、上記スタチン類および安定化剤、ならびに必要に応じて添加され得る上記他の添加剤を含有する粉体を、少なくとも1種の結合剤の存在下で湿式造粒して得られた造粒物(湿式造粒物)である。
このような湿式造粒物を構成する結合剤としては、特に限定されず、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、プルラン、部分α化デンプン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましい結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、およびポリビニルピロリドン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
本発明を構成する被覆層は、主としてアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを含有する。被覆層に含まれるアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの数平均分子量は、必ずしも限定されないが、好ましくは40万〜120万、より好ましくは70万〜90万である。当該コポリマーを構成するアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとの質量比は、特に限定されないが、好ましくは1.5:1〜2.5:1、より好ましくは1.9:1〜2.1:1である。
アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーは、例えば、水分散体として入手することができる。アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの水分散体としては、特に限定されず、例えば、エボニックデグサ社のオイドラギット(登録商標)NE30Dが挙げられる。
本発明の口腔内崩壊錠において、被覆層を構成するアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの含有量は、特に限定されないが、上記コア粒子と被覆層とで構成される粒子(被覆粒子ともいう)の全重量に対して好ましくは6重量%〜20重量%である。アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの含有量が6重量%を下回ると、スタチン類自体が有する苦味を被覆層として充分にマスキングすることが困難となる場合がある。アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの含有量が20重量%を上回ると、口腔内崩壊錠として、例えば、水なしで服用した場合において、上述したような所定時間での口腔内崩壊が困難となり、スタチン類の溶出が遅延する場合がある。
本発明の口腔内崩壊錠を構成する被覆層はまた、上記アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー以外に、他のコーティング剤を含有していてもよい。他のコーティング剤としては、特に限定されず、例えば、糖、糖アルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、クエン酸トリエチル、トリアセチン、マクロゴールなどのポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート類、タルク、および酸化チタン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。糖としては、特に限定されず、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、還元麦芽糖、およびトレハロースならびにそれらの組合せが挙げられる。糖アルコールとしては、特に限定されず、例えば、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、およびラクチトール、ならびにそれらの組合せが挙げられる。本発明の口腔内崩壊錠における他のコーティング剤の含有量は特に限定されず、当業者によって適宜選択され得る。さらに、本発明の口腔内崩壊錠を構成する被覆層は、上記他の添加剤(例えば、賦形剤、崩壊剤、第2の安定化剤、流動化剤、着色剤、矯味剤、滑沢剤、および香料、ならびにそれらの組合せ)を含有していてもよい。被覆層に含まれ得る上記他のコーティング剤および/または上記他の添加剤の含有量は特に限定されず、上記コア粒子に含まれるスタチン類および安定化剤が有する効果を阻害しない程度の量が当業者によって適宜選択され得る。
本発明において、被覆層はコア粒子の全面を覆っていることが好ましい。また、被覆層の厚みはコア粒子の全面にわたってほぼ均等であることが好ましい。本発明を構成する被覆層の厚みは特に限定されず、当業者によって適切な厚みが設定され得る。
本発明の口腔内崩壊錠はまた、上記被覆層の外部にも、必要に応じて上記他の添加剤が存在していてもよい。
本発明において、被覆層の外部に存在し得る上記他の添加剤の含有量は特に限定されず、上記スタチン類および安定化剤が有する効果を阻害しない程度の量が当業者によって適宜選択され得る。
本発明の口腔内崩壊錠の形状としては、特に限定されず、例えば、円盤状、ドーナツ状、多角形板状、球状、楕円状、およびキャプレット状が挙げられる。大きさは、小型である方が好ましく、直径は、例えば5mm〜12mm程度であり、厚みは、例えば2mm〜5mm程度である。質量は、例えば50mg〜500mg程度である。硬度は、特に限定されないが、例えば、20N〜100N程度である。崩壊に要する時間は、特に限定されず、例えば、水なしで服用した場合、口腔内において10秒〜60秒程度で崩壊するような時間である。
(口腔内崩壊錠の製造方法)
本発明の口腔内崩壊錠は、例えば以下のようにして製造され得る。
まず、スタチン類および安定化剤を含有する粉体から湿式造粒によりコア粒子が作製される。
コア粒子の作製において、上記スタチン類および安定化剤に、必要に応じて上記他の添加剤が混合される。この混合には、例えば、粉末で混合する方法、水などの溶媒に溶解した上で混合し、溶媒を蒸発させる方法などが採用され得る。混合した粉体には、所定の方法による湿式造粒が行われる。採用可能な湿式造粒法には、例えば、流動層造粒乾燥機、攪拌造粒機、円筒押出造粒機、転動流動層造粒コーティング機、スプレードライヤーなどを用いる方法が挙げられる。この段階においてコア粒子は、適宜整粒されてもよい。整粒方法としては、特に限定されず、例えば、整粒機、分級機を用いる方法が挙げられる。
このようにしてコア粒子を得ることができる。
次いで、コア粒子が被覆層で被覆される。
コア粒子への被覆層の被覆に採用され得るコーティング方法としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ならびに必要に応じて添加され得る他のコーティング剤および/または他の添加剤を水などの溶媒に溶解または分散させてコーティング液を調製し、上記で得られたコア粒子に当該コーティング液を噴霧するスプレーコーティング法が挙げられる。あるいは、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法などが採用されてもよい。
さらに、本発明において、上記被覆層は、コア粒子に対し同一または複数のコーティング液で順次コーティングすることによって形成されたものであってもよい。この場合、当該コーティング液の少なくとも1つに上記アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーが含有されていればよく、必要に応じて上記他のコーティング剤および/または他の添加剤が含有されていてもよい。一方、その他のコーティング剤には、例えば、上記他のコーティング剤および/または他の添加剤が含有されている。
このようにしてコア粒子の外周が被覆層で覆われた被覆粒子が形成される。
次いで、被覆粒子が打錠される。
被覆粒子の打錠にあたり、上記で得られた被覆粒子に、必要に応じ、さらに上記他の添加剤が添加され、適宜混合される。混合方法は特に限定されない。打錠にあたり採用され得る方法としては、特に限定されず、例えば、打錠用臼、打錠用上杵および下杵を用いて、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機などにより行う方法が挙げられる。打錠は、得られる錠剤が、適度な硬度を有し、口腔内崩壊錠として速やかに崩壊することができるように調節して行うことが好ましい。打錠圧は、打錠方法、打錠に用いる機器、錠剤の大きさなどに応じて適宜調整され得る。打錠圧は、好ましくは20kg/cm〜2000kg/cm、好ましくは100kg/cm〜1000kg/cmである。
このようにして本発明の口腔内崩壊錠が製造される。
得られた口腔内崩壊錠は、当該分野において公知の手段を用いて容器に封入される。容器に封入した後、本発明の口腔内崩壊錠は、使用まで適切な保存条件にて保存される。
本発明の口腔内崩壊錠は、スタチン類を含有するコア粒子が被覆層で被覆されていることにより、服用時に口腔内で崩壊しても、スタチン類が直接舌に触れることなく容易に嚥下することができる。そして、消化管では適切な崩壊時間でスタチン類を被覆する被覆層が溶解し、スタチンが従来の普通錠と同等に溶出して優れた薬効を発揮し得る。
なお、上記のようにして口腔内崩壊錠を得ることにより、本発明においては、上記スタチン類の溶出性と苦味のマスキングとの両立に加え、口腔内崩壊錠自体の光安定性を向上させることができる。その結果、保存期間中の光曝露を介したスタチン類の分解による、類縁物質の発生を抑制することができる。本発明の口腔内崩壊錠はまた、上記のような光安定性に加え、例えば、遮光、高温、および/または高湿下での保管による類縁物質の発生も抑制することができる。このため、本発明の口腔内崩壊錠は、光、熱、湿度などの種々の条件に対する安定性に優れている。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1:ロスバスタチンOD錠の製造)
まず、メチルセルロース12gを精製水100gに溶解させた水溶液と、酸化チタン60g、黄色三二酸化鉄3.6gを精製水77gに分散させた分散液とを混合し、第1のコーティング液を得た。
次に、メチルセルロース12gを精製水300gに溶解させた水溶液と、タルク12、酸化チタン60gおよび黄色三二酸化鉄3.6gを精製水110gに分散させた分散液とを混合した。さらに、得られた混合液に、オイドラギット(登録商標)NE30D(エボニックデグサ社製;アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液)120gを添加し混合して、第2のコーティング液を得た。
さらに、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12gを精製水136gに分散させた分散液を調製し、第3のコーティング液を得た。
一方、ロスバスタチンカルシウム32.1g、D−マンニトール81.6g、クロスカルメロースナトリウム12gおよび炭酸カリウム24gを流動層造粒機(株式会社パウレック社製:MP−01)に投入して造粒を開始した。造粒開始直後、上記第1のコーティング液を造粒機内に噴霧することによって第1の中間微粒子を得た。また、当該第1の中間微粒子に対し、上記第2のコーティング液を造粒機内に噴霧することによって第2の中間微粒子を得た。さらに、当該第2の中間微粒子に対し、上記第3のコーティング液を造粒機内に噴霧することによってロスバスタチンの被覆粒子を得た。
次いで、ロスバスタチンのコーティング微粒子60gに、D−マンニトール93g、結晶セルロース40g、クロスポピドン6gおよびステアリン酸マグネシウム1gを混合し、得られた混合物をロータリー打錠機(株式会社菊水製作所製:VGRGO)に投入して打錠し、錠剤径約8.5mm、質量約200mg、硬度40N以上のロスバスタチンOD錠(口腔内崩壊錠)を得た。ここで、得られたロスバスタチンOD錠の有効成分(ロスバスタチンカルシウム)の含有量は2.6mg/錠であり、炭酸カリウムの含有量は2.0mg/錠であった。
(比較例1)
炭酸カリウムの代わりに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE24gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。
(比較例2)
炭酸カリウムの代わりに、炭酸マグネシウム24gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。
(比較例3)
炭酸カリウムの代わりに、酸化マグネシウム24gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。
(試験例1:類縁物質の増加量の測定)
実施例1、および比較例1〜3で得られたロスバスタチンOD錠について、以下の各条件でのロスバスタチン由来の類縁物質の増加率を測定した。
(条件1−1)
実施例1および比較例1〜3で得られた各ロスバスタチンOD錠について、製造直後の当該OD錠中に含まれるロスバスタチンに由来するケト体およびラクトン体、ならびに全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、各OD錠の液体クロマトグラフィーの検出結果から、ロスバスタチンのピーク面積に対する各類縁物質のピーク面積の割合(%)として算出した。得られた結果を表1に示す。
(条件1−2)
実施例1および比較例1〜3で得られた各ロスバスタチンOD錠について、それぞれ個別にアルミニウム袋で包装して完全に遮光し、得られた包装体を60℃の温度条件にて1週間保管した。保管終了後、直ちに当該OD錠に含まれるロスバスタチンに由来するケト体およびラクトン体、ならびに全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、上記条件1−1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
(条件1−3)
実施例1および比較例1〜3で得られた各ロスバスタチンOD錠について、それぞれ個別にアルミニウム袋で包装して完全に遮光し、得られた包装体を40℃の温度条件にて1カ月間保管した。保管終了後、直ちに当該OD錠に含まれるロスバスタチンに由来するケト体およびラクトン体、ならびに全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、上記条件1−1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
(条件1−4)
実施例1および比較例1〜3で得られた各ロスバスタチンOD錠について、いずれも個別に包装することなく、そのまま2000lx・時間の強度でD65ランプの白色光を連続して1週間照射した。照射終了後、直ちに当該OD錠に含まれるロスバスタチンに由来するケト体およびラクトン体、ならびに全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、上記条件1−1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
(条件1−5)
実施例1および比較例1〜3で得られた各ロスバスタチンOD錠について、いずれも個別に包装することなく、そのまま2000lx・時間の強度でD65ランプの白色光を連続して25日間照射した。照射終了後、直ちに当該OD錠に含まれるロスバスタチンに由来するケト体およびラクトン体、ならびに全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、上記条件1−1と同様にして測定した。得られた結果を表1に示す。
Figure 0006507808
表1に示すように、実施例1で得られたロスバスタチンOD錠は、条件1−4(1週間;累積約34万lxの光曝露)および条件1−5(25日間;約120万lxの光曝露)のいずれにおいても、ケト体、ラクトン体および総類縁物質の増加がほとんど観察されず、上記比較例1〜3の結果と比較して優れた光安定性を有していることがわかる。これに対し、比較例1〜3で得られたロスバスタチンOD錠は、条件1−4および条件1−5のいずれの光曝露においても、ケト体、ラクトン体および総類縁物質の著しい増加が観察され、光安定性に欠けるものであった。
さらに、表1に示すように、実施例1で得られたロスバスタチンOD錠は、条件1−2および条件1−3に示すような高温遮光下においても、ケト体、ラクトン体および総類縁物質の増加がほとんど観察されず、上記比較例1〜3の結果と比較して優れた経時安定性を有していることがわかる。これに対し、比較例1〜3で得られたロスバスタチンOD錠は、条件1−2および条件1−3のいずれにおいても、ケト体、ラクトン体および総類縁物質の著しい増加が観察され、保管期間の安定性に欠けるものであった。
(実施例2:ロスバスタチンOD錠の製造)
炭酸カリウムの添加量を18gに変更し、かつD−マンニトールの添加量を84gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。ここで、得られたロスバスタチンOD錠の有効成分(ロスバスタチンカルシウム)の含有量は2.6mg/錠であり、炭酸カリウムの含有量は1.5mg/錠(ロスバスタチンカルシウム100重量部に対し、約57.7重量部に相当)であった。
(実施例3:ロスバスタチンOD錠の製造)
炭酸カリウムの添加量を8.4gに変更し、かつD−マンニトールの添加量を75.6gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。ここで、得られたロスバスタチンOD錠の有効成分(ロスバスタチンカルシウム)の含有量は2.6mg/錠であり、炭酸カリウムの含有量は0.7mg/錠(ロスバスタチンカルシウム100重量部に対し、約26.9重量部に相当)であった。
(実施例4:ロスバスタチンOD錠の製造)
炭酸カリウムの添加量を6gに変更し、かつD−マンニトールの添加量を96gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。ここで、得られたロスバスタチンOD錠の有効成分(ロスバスタチンカルシウム)の含有量は2.6mg/錠であり、炭酸カリウムの含有量は0.5mg/錠(ロスバスタチンカルシウム100重量部に対し、約19.2重量部に相当)であった。
(実施例5:ロスバスタチンOD錠の製造)
炭酸カリウムの代わりに炭酸ナトリウム18gを添加し、かつD−マンニトールの添加量を84gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてロスバスタチンOD錠を得た。ここで、得られたロスバスタチンOD錠の有効成分(ロスバスタチンカルシウム)の含有量は2.6mg/錠であり、炭酸ナトリウムの含有量は1.5mg/錠(ロスバスタチンカルシウム100重量部に対し、約57.7重量部に相当)であった。
(試験例2:類縁物質の増加量の測定)
実施例2〜5で得られたロスバスタチンOD錠および先発品「クレストール(登録商標)錠」(塩野義製薬株式会社製;ロスバスタチンカルシウムの含有量は2.6mgであり、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムは含有せず)(参考例1)について、上記試験例1の条件1−1〜1−5に記載の条件下に配置し、それぞれの全ての類縁物質(総類縁物質)の含有量を、上記条件1−1と同様にして測定した。得られた結果を、実施例1で得られた結果をともに表2に示す。
Figure 0006507808
表2に示すように、実施例1〜5で得られたロスバスタチンOD錠は、参考例1の先発品と比較して、条件1−1〜1−5のいずれの条件に対しても総類縁物質の含有量が低く、光曝露下(条件1−4および条件1−5)、ならびに高温遮光下(条件1−2および条件1−3)の両方において優れた安定性を示していた。また、その中でも特に実施例2、3および5で得られたロスバスタチンOD錠は、一層優れた安定性を示していたことがわかる。
本発明によれば、例えば、光に対する安定性に優れ、長期間の保管に対しても類縁物質の発生を抑えることができる。このため、薬効成分として含有されるスタチン類の薬効を充分に保持したまま、所望する患者への服用を一層容易にすることができる製剤として有用である。

Claims (6)

  1. スタチン類および安定化剤を含有するコア粒子を被覆層で被覆して構成される口腔内崩壊錠であって、
    該安定化剤が、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し;
    該安定化剤の含有量が、スタチン類の含有量100重量部に対して15重量部から80重量部であり
    該被覆層がアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを含有し;そして
    該スタチン類がロスバスタチンである、口腔内崩壊錠。
  2. 前記安定化剤の含有量が、前記スタチン類の含有量100重量部に対して25重量部から60重量部である、請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
  3. 前記コア粒子が、前記スタチン類および前記安定化剤を含有する粉体を少なくとも1種の結合剤存在下で湿式造粒して得られたものである、請求項1または2に記載の口腔内崩壊錠。
  4. 口腔内崩壊錠の製造方法であって、
    スタチン類および安定化剤を含有する粉体を湿式造粒してコア粒子を得る工程;
    該コア粒子を被覆層で被覆して被覆粒子を得る工程;ならびに
    該被覆粒子を打錠する工程;
    を包含し、ここで:
    該安定化剤が、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し;
    該安定化剤の含有量が、該スタチン類の含有量100重量部に対して15重量部から80重量部であり
    該被覆層がアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを含有し;そして
    該スタチン類がロスバスタチンである、方法。
  5. 前記安定化剤の含有量が、前記スタチン類の含有量100重量部に対して25重量部から60重量部である、請求項に記載の方法。
  6. 前記湿式造粒する工程が、少なくとも1種の結合剤の存在下で行われる、請求項4または5に記載の方法。
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