JP6507769B2 - R−t−b系焼結磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、R−T−B系焼結磁石に関する。
14B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハイブリッド自動車用、電気自動車用や家電製品用の各種モータ等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特にハイブリッド自動車用や電気自動車用モータに使用される場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。そして高温下での不可逆熱減磁を抑制するため、すなわち高温下でも高いHcJを維持するために、室温においてより高いHcJを得ることが求められている。
従来、HcJ向上のために、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素(主としてDy)が多量に添加されていたが、残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)が低下するという問題があった。そのため、近年、R−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素を拡散させて主相結晶粒の外殻部に重希土類元素を濃化してBの低下を抑制しつつ、高いHcJを得る方法が採られている。
しかし、Dyは、産出地が限定されている等の理由から、供給が不安定である、または価格が変動するなどの問題を有している。そのため、Dyなどの重希土類元素をできるだけ使用せず(使用量をできるだけ少なくして)にR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させる技術が求められている。
特許文献1には、通常のR−T−B系合金よりもB量を少なくするとともに、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属元素Mを含有させることによりR17相を生成させ、該R17相を原料として生成させた遷移金属リッチ相(R13M)の体積率を充分に確保することにより、Dyの含有量を抑制しつつ、保磁力の高いR−T−B系希土類焼結磁石が得られることが記載されている。
特許文献2には、通常のR−T−B系合金よりもB量を少なくするとともに、B、Al、Cu、Co、Ga、C、Oの量を所定の範囲にし、さらにBに対するNd及びPr、並びにGaおよびCの原子比がそれぞれ特定の関係を満たすことによって高い残留磁束密度および保磁力が得られることが示されている。
国際公開第2013/008756号 国際公開第2013/191276号
しかし、特許文献1、2に記載されているような、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なく(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なく)し、Ga等を添加した組成の焼結磁石は、B量が少し変化しただけで大きくHcJが変化してしまうという問題があることを本発明者らは見いだした。
例えば、B量が0.01質量%変化しただけでHcJが100kA/m変化することがある。これに対し、一般的なR−T−B系焼結磁石(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも多くのBを含む)は、B量が0.1質量%変わってもHcJは、ほとんど変化しない。
このため、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なくし、Ga等を添加した組成の焼結磁石は、HcJの変化を抑制するためにB量を0.01質量%の高い精度で管理する必要がある。しかし、量産設備において、原料合金を溶解、鋳造する際にB量を例えば0.01質量%の精度で管理するのは非常に困難である。
本発明は、このような、問題を解決するためになされたものであり、B量の変化に対するHcJの変化が少なく、かつ高いBと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供することを目的とする。
本発明の1つの態様は、下記式(1)で示される組成が、下記式(2)〜(9)を満足し、

uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)

29.0≦u≦32.0 (2)
(ただし、重希土類元素RHはR−T−B系焼結磁石の10質量%以下)
0.93≦w≦1.00 (3)
0.3≦x≦0.8 (4)
0.05≦z≦0.5 (5)
0≦v≦3.0 (6)
0.15≦q≦0.28 (7)
60.42≦g≦69.57(8)
0≦j≦2.0 (9)

gをFeの原子量で割った値をg’、vをCoの原子量で割った値をv’、zをAlの原子量で割った値をz’、wをBの原子量で割った値をw’、qをTiの原子量で割った値をq’としたときに下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする、R−T−B系焼結磁石である。

0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
本発明の態様2は、0.18≦q≦0.28である、態様1に記載のR−T−B系焼結磁石である。
本発明の態様3は、R14B化合物(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)と、
13A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、Cuおよび Siのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と、
Tiの硼化物と、
が共存する組織を有することを特徴とする態様1または2に記載のR−T−B系焼結磁石である。
本発明の態様4は、R−T−B系焼結磁石の任意の断面におけるR13A化合物の面積比率が2%以上であることを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石である。
B量の変化に対するHcJの変化が少なく、かつ高いBと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供できる。
試料No.25のFE−SEMによる反射電子像の写真である。 分析位置3におけるEDXのスペクトルデータを示す説明図である。 FIBを用いて図1の点線の位置で奥行き方向に抜き出し、FE−SEMを用いて観察した写真である。 粒状結晶を電子線回折により結晶構造の解析を行った結果を示す説明図である。 針状結晶を電子線回折により結晶構造の解析を行った結果を示す説明図である。 試料No.20のFE−SEMによる反射電子像の写真である。 試料No.21のFE−SEMによる反射電子像の写真である。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
本発明者らは検討の結果、特定の範囲内の含有量となるようにチタンを添加して製造工程の中でチタンの硼化物を生成させることにより、R−T−B系焼結磁石全体のB量から、製造工程の中でTiと結合することにより消費されたB量を差し引いたB量(以下、Tiと硼化物を形成していない残りのB量を有効B量として「Beff量」と記載することがある)を一般的なR−T−B系焼結磁石全体のB量より少なく(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なく)するとともに、Ga等を添加した組成の焼結磁石は、B量の変化に対するHcJの変化が抑制されること見いだした。そして、本発明者らは、このようなTiの添加を行ったとき、R14B型化合物の化学量論比よりもB量を少なくし、Gaを添加した焼結磁石で見られる効果と同様に、高いBと高いHcJが得られることも確認した。
1.Ti添加について
本発明者らは、本発明に係るR−T−B系焼結磁石において、Tiの硼化物(TiBおよび/またはTiB)が形成されることを確認している。そして、本発明は、前記Beff量が一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくなるよう、Tiの硼化物を生成させている。これらを踏まえて本発明者らが考える、所定の含有量のTiを含むことにより、B量が変動してもHcJの変化が抑制されるメカニズムは以下の通りである。ただし、以下に示すメカニズムは本発明の技術的範囲を制限することを意図するものではないことに留意されたい。
上述したように、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なく(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なく)し、さらに、Ga等を添加した組成を採用した焼結磁石は、高いHcJを得ることができる。
これは、B量がR14B型化合物の化学量論比を下回ると、RおよびTが余剰となってR17相が生成され、通常は、B量の低下とともに急激に磁気特性が低下するが、磁石組成にGaが含有されていると、R17相の代わりにR−T−Ga相(代表的にはR13A化合物)が生成され、これにより高いHcJが得られるものと考えられる。
ここで、本明細書における「R−T−Ga相」とは、R20原子%以上35原子%以下、T55原子%以上75原子%以下、Ga3原子%以上15原子%以下を含むものであって、典型的にはR13Ga化合物が挙げられる。なお、R−T−Ga相は、不可避不純物としてAl、Si、Cu等が混入する場合があるため、R13A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、CuおよびSiのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と規定することができる。例えば、R13(Ga1−i−y−s AlSiCu)化合物になっている場合がある。
しかし、上述したように、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なくし、さらに、Ga等を添加した組成の焼結磁石は、B量が変化するとHcJが大きく変化する。これは、B量がR14B型化合物の化学量論比よりもどのくらい少なくなるか(R、Tがどのくらい余剰となるか)によりR−T−Ga相の生成量が大きく変化するため、HcJのB量依存性が大きくなっているものと考えられる。
これに対し、本発明者が鋭意検討した結果、Tiを添加して硼化物(TiBおよび/またはTiB)を形成することによって前記Beff量をR14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なくした場合には、HcJの磁石全体のB量に対する依存性を小さくできることが分かった。
これは、本発明のように、R14B型化合物の化学量論比から求まるB量よりもB量が多き組成のR−T−B系焼結磁石中にTiの硼化物を形成することによってBeff量を一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくした場合、Gaの添加によりR17相などの生成が抑制されてR−T−Ga相が生成され、結果、HcJが向上するが、このとき、磁石全体組成のB量がR14B型化合物の化学量論比のB量に対して変わると、TiBとTiBの生成比が変わる、すなわち、磁石全体組成のB量とR14B型化合物の化学量論比から求まるB量との差が小さい(すなわち、含有しているB量がより少ない)場合は、TiBよりもTiBが多く生成され、逆に、磁石全体組成のB量とR14B型化合物の化学量論比から求まるB量との差が大きい場合(すなわち、含有しているB量がより多い場合)は、TiBよりもTiBが多く生成されると考えられる。このようにBが多いほどBリッチなTi硼化物(TiB)が生成され、Bが少ないほどBプアなTi硼化物(TiB)が生成されることで、磁石全体のB量が変動しても、磁石中でTiと化合物を生成していないB量(Beff量)の変化を小さくすることができ、この結果、B量の変化に対するR−T−Ga相の生成量の変化を小さくすることができ、HcJの変化を抑制することができたと考えられる。
これらを踏まえて、さらに、検討した結果、Ti量とB量が式(A)と式(B)を満足することにより、R−T−Ga相の生成量を適切な範囲にすることができるため、B量の変化に対するHcJの変化を抑制しつつ高いBと高いHcJを得ることができることを見いだした。

0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
ここで、g’は、gをFeの原子量(55.845)で割った値であり、v’は、vをCoの原子量(58.933)で割った値であり、z’は、zをAlの原子量(26.982)で割った値であり、w’は、wをB(10.811)の原子量で割った値であり、q’は、qをTiの原子量(47.867)で割った値である。
式(A)および式(B)について説明する。
前記Beff量がR14B型化合物の化学量論比を下回ると、Feと、主相のFeサイトを容易に置換することができるCo、Alが余剰となる(すなわち、FeとCoとAlの合計がR14B型化合物の化学量論比のT量よりも余剰となる)。よって、全てのTiがTiBになった場合(つまりTiが最も多くのBと結合した場合)、前記Beff量をR14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なくするためには、[(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))](主相を形成しないFe、Co、Alの合計)が0よりも大きい(FeとCoとAlが余剰になる)必要がある。そして、さらにこの主相を形成していないFe、Co、Alの合計が、0.06以上であることを規定しているのが式(A)である。0.06以上とすることにより、R−T−Ga相を適切に生成させることができる。また、式(A)は、Fe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値にそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)を用いて計算することにより求めることができる。後述する式Bも同様である。
主相を形成していないFe、Co、Alの合計が0.06未満だと、R−T−Ga相の相比率が少なすぎるために高いHcJを得ることができない恐れがあるからである。
さらに、本発明は、全てのTiがTiBになった場合(つまりTiが最も少ないBと結合した場合)、[(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’))](主相を形成しないFe、Co、Alの合計)が0.10以下であることを(式)Bで規定する。 主相を形成していないFe、Co、Alの合計が0.10を超えると、R−T−Ga相の比率が高くなり過ぎて主相比率が低下して高いBを得ることができない恐れがあるからである。
上述したように、本発明のR−T−B系焼結磁石は、R14B化合物と、R13A化合物と、Tiの硼化物(TiB又はTiBおよびTiB)と、が共存する組織を有する。また、本発明のR−T−B系焼結磁石には、その任意の断面においてR13A化合物が面積比率で2%以上含まれている。なお、R13A化合物の面積比率は、後述する実施例に示す通り、R−T−B系焼結磁石の任意の断面のFE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)による反射電子像(BSE像)の画像を市販の画像解析ソフトにより解析することにより求めることができる。なお、本明細書において「任意の断面」とは、例えば、中心部を含む断面のように本発明に係るR−T−B系焼結磁石の典型的な特徴が示されるという合理的期待の基に選択される任意の断面を意味し、本発明の特徴が示されないように恣意的に選択した断面を含むものではない。
2.組成
次に本発明に係るR−T−B系焼結磁石の組成の詳細を説明する。
上述したように、本発明はTiを添加して、Tiの硼化物を生成させることで、前記Beff量を一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくするとともに、Ga等を含有させている。これにより、粒界にR−T−Ga相が生成し、喩え、Dyなどの重希土類元素の含有量を抑制しても、高いHcJを得ることができる。
本発明に係るR−T−B系焼結磁石の組成は式(1)により示すことができる。

uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)

以下に個々の元素の組成範囲、すなわちu、w、x、z、v、q、g、jの数値範囲について説明する。
1)希土類元素(R)
本発明のR−T−B系焼結磁石におけるRは、希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む。本発明に係るR−T−B系焼結磁石は重希土類元素RHを使用しなくても高いBと高いHcJを得ることができるため、より高いHcJを求められる場合でもRHの添加量を削減でき、典型的にはRHは10質量%以下、好ましくは5質量%以下とすることができる。
Rの含有量は、式(2)に示すように29.0質量%〜32.0質量%である。

29.0≦u≦32.0 (2)

Rが、29.0質量%未満では、十分な量のR−T−Ga相を生成するのに必要なRが確保できず高いHcJを得ることができない恐れがあり、32.0質量%を超えると主相比率が低下して高いBを得ることができない。
2)ボロン(B)
Bの含有量は、式(3)に示すように0.93質量%〜1.00質量%である。

0.93≦w≦1.00 (3)

Bが、0.93質量%未満では前記Beff量が少なくなりすぎて、R17相が析出して高いHcJが得られない、または主相比率が低下して高いBを得ることができず、1.00質量%を超えるとR−T−Ga相が十分に生成されずに高いHcJが得られない恐れがある。
3)ガリウム(Ga)
Gaの含有量は、式(4)に示すように0.3質量%〜0.8質量%である。

0.3≦x≦0.8 (4)

Gaが、0.3質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができない恐れがあり、0.8質量%を超えると、不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBが低下する恐れがある。
5)アルミニウム(Al)
Alの含有量は、式(5)に示すように0.05質量%〜0.5質量%である。

0.05≦z≦0.5 (5)

Alを含有することにより、HcJを向上させることができる。Alは不可避的不純物として含有されてもよいし、積極的に添加して含有させてもよい。Alが0.5質量%を超えるとBが低下する恐れがある。不可避的不純物で含有される量と積極的に添加した量の合計で0.05質量%以上0.5質量%以下含有させる。
6)コバルト(Co)
Coの含有量は、式(6)に示すように、3.0質量%以下である。

0≦v≦3.0 (6)

Coは、3.0質量%以下まで含有してもよい。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効であるが、Coの含有量が3.0質量%を超えると高いBを得ることができない恐れがある。
7)チタン(Ti)
Tiの含有量は、式(7)に示すように0.15質量%〜0.28質量%である。

0.15≦q≦0.28 (7)

Tiは、0.15質量%未満では、B量の変化によるHcJの変化を抑制できない恐れがあり、0.28質量%を超えると、主相比率が低下して高いBを得ることができない恐れがある。好ましくは、下記の式(10)に示すように0.18質量%以上0.28質量%以下である。よりB量の変化によるHcJの変化を抑制することができる。

0.18≦q≦0.28 (10)
8)鉄(Fe)
Feの含有量は、式(8)に示すように60.42質量%〜69.57質量%である。
60.42≦g≦69.57(8)

Feは、60.42質量%未満では、主相比率が低下して高いBが得ることが出来ない恐れがあり、69.57質量%を超えると、R−T−Ga相などが必要以上に生成することにより主相比率が低下して高いBが得られない恐れがある。
9)元素M
Mは、R、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素である。
式(9)に示すように、R、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素Mを合計で2.0質量%以下含んでもよい。

0≦g≦2.0 (9)

すなわち、式(9)は、得られるR−T−B系焼結磁石の特性の改善等を目的に、任意の元素(複数の種類の元素であってもよい)と不可避的不純物(Alが不可避的不純物の場合はAlを除く)とを合計で2.0質量%まで含んでよいことを示している。
R−T−B系焼結磁石の特性を改善する元素として、例えば、Cu、Ni、Ag、Au、Mo等を0質量%〜2.0質量%含んでよい。特にCuを含有することが好ましい。Cuを含有することにより高いHcJを得ることができる。Cuのより好ましい含有量は、0.05質量%以上1.0質量%以下である。
なお、Mの好ましい実施形態の1つは、Mは不可避的不純物から成る(但し、上述したようにCuは含有することが好ましい)。本発明のR−T−B系焼結磁石が含む不可避的不純物として、ジジム合金(Nd−Pr合金)、電解鉄、フェロボロンなど工業的に用いられる原料に通常含有される不可避的不純物を例示できる。このような不可避的不純物としてCr、Mn、Siなどを例示できる。さらに、製造工程中の不可避的不純物として、O(酸素)、N(窒素)、C(炭素)などを例示できる。好ましくは、Oは、600〜8000ppm、Nは、800ppm以下、Cは、1000ppm以下である。
なお、式(1)に示されるR、B、Ga、Al、Co、Ti、FeおよびMのそれぞれの含有量(質量%)であるu、w、x、z、v、q、gおよびjの評価には、例えば高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法、ICP−OES)を採用することができる。また酸素量の評価には例えば、ガス融解−赤外線吸収法、窒素量の評価には例えば、ガス融解−熱伝導法、炭素量の評価には例えば、燃焼−赤外線吸収法によるガス分析装置を採用することが出来る。
3.R−T−B系焼結磁石の製造方法
本発明のR−T−B系焼結磁石の製造方法の一例を説明する。R−T−B系焼結磁石の製造方法は、合金粉末を得る工程、成形工程、焼結工程および熱処理工程を含む。以下、各工程について説明する。
(1)合金粉末を得る工程
所定の組成となるようにそれぞれの元素の金属または合金を準備し、溶解、鋳造を行った所定の組成の合金を得る。典型的には、ストリップキャスティング法等を用いて、フレーク状の合金を製造する。得られたフレーク状の原料合金を水素粉砕し、粗粉砕粉のサイズを例えば1.0mm以下とする。次に、粗粉砕粉をジェットミル等により微粉砕することで、例えば粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られた体積基準メジアン径)が3〜7μmの微粉砕粉(合金粉末)を得る。合金粉末は、1種類の合金粉末(単合金粉末)を用いてもよいし、2種類以上の合金粉末を混合して粉砕することにより合金粉末(混合合金粉末)を得る、いわゆる2合金法を用いてもよく、公知の方法などを用いて本発明の組成となるように合金粉末を作製すればよい。ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として既知の潤滑剤を使用してもよい。
なお、Tiの添加については、ストリップキャスティング法等を用いた原料合金の作製において、鋳造を行うための溶融金属を得る際にTiメタル、Ti合金またはTi含有化合物等の形態で添加し、Tiを含む溶融金属を得た後、これを凝固させることで得てもよい。また、これに代えて、原料合金を作製してから成形するまでの間に、Tiメタル、Ti合金またはTi含有化合物等の形態で添加してもよく、例えば、水素粉砕前後やジェットミル粉砕後の合金粉末にTiの水素化物(TiH等)を添加する方法が挙げられる。
(2)成形工程
得られた合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内に、合金粉末を分散させたスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら磁界中で成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
(3)焼結工程
成形体を焼結することにより焼結磁石を得る。成形体の焼結は公知の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
(4)熱処理工程
得られた焼結磁石に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などは公知の条件を採用することができる。最終的な製品形状にするなどの目的で、得られた焼結磁石に研削などの機械加工を施してもよい。その場合、熱処理は機械加工前でも機械加工後でもよい。さらに、得られた焼結磁石に、表面処理を施してもよい。表面処理は、公知の表面処理であってよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗装などの表面処理を行うことができる。
<実験例1>
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を、水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。
次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。成形装置は、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1070℃〜1090℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、表1において、Nd、Prの量を合計した値がR量(u)であり、ICP−OESで測定されたR、B、Ga、Al、Co、Ti、Fe以外の元素である、Cu、Cr、Mn、Si、O、N、Cの量を合計した値がM量(j)である。後述する表3、5および7においても同じである。また、表1に示すFe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値をそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)と、その値を用いて式(A)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))および式(B)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’))を計算し、本発明の範囲内である場合は「○」、本発明の範囲外の場合は「×」と、表1の「式A」および「式B」の欄に記載した。以下に示す表3、5および7においても同様である。なお、表1に示す様に、試料No.1〜3、4〜6、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17は、それぞれ、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
得られた焼結磁石に対し、900〜1000℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、次いで500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。熱処理後の焼結磁石に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、3.2MA/mのパルス磁界で着磁した後、B−Hトレーサによって各試料のB及びHcJを測定した。測定結果を表2に示す。なお、B及びHcJを測定したR−T−B系焼結磁石の成分、ガス分析を行ったところ、表1のR−T−B系焼結磁石素材の成分、ガス分析結果と同等であった。
さらに、試料No.1〜3、4〜6、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17それぞれにおける、B量の変化に対するHcJの変化を以下の様にして求めた。
まず、各試料のうち(B量以外ほぼ同じ組成のうち)一番低いB量と一番高いB量におけるB量の差を求め、さらに、一番低いHcJと一番高いHcJとの差を求めて、HcJの差をB量の差で割ることにより、B量が0.01質量%変化するときHcJがいくら変化するのかを求めた。例えば、試料No.4〜6におけるHcJの変化は以下の様に求めた。
まず、試料No.4〜6において、一番低いB量は、試料No.4の0.90質量%、一番高いB量は、試料No.6の0.95質量%であり、一番低いHcJは、試料No.6の1278kA/m、一番高いHcJは試料No.4の1509kA/mである。そして、B量が0.90質量%から0.95質量%へ変わる(0.05質量%変化すると)と、HcJが1508kA/mから1278kA/mへ変わる(230kA/m変化する)ため、B量が0.01質量%変化するとHcJが46kA/m(230/(0.05×100))変化することになる。同様にして、試料No.1〜3、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17も求めた。結果を表2の「△HcJ/0.01B」欄に示す。以下に示す表6の△HcJ/0.01Bも同様にして求めた。
表2に示すように本発明に係る実施例サンプルである、試料No.7〜9、10〜11、12〜15、16〜17は、△HcJ/0.01Bが24kA/m以下とB量の変化に対するHcJの変化が少なく、かつ、高いBと高いHcJを得ている。これに対し、Ti量が本発明の範囲外である試料No.1〜3、4〜6は、△HcJ/0.01Bが46kA/m以上であり、B量の変化に対するHcJの変化が実施例サンプルよりも大きく、そのため、B量が増加するとHcJが低下して(例えば、試料No.3は、1260kA/m)高いHcJを得ることができない。また、本発明に係る実施例サンプルである、試料No.10〜11、12〜15、16〜17から明らかな様に、Tiが0.18質量%以上であると、△HcJ/0.01Bが12kA/m以下と、さらにB量の変化に対するHcJの変化が少ない。
<実験例2>
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を実験例1と同じ方法で、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉を実験例1と同じ方法で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。更に、実験例1と同じ方法により磁界中で成形し、成形体を得た。得られた成形体を1080℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。焼結磁石の密度は7.5Mg/m 以上であった。
得られた焼結磁石の成分の分析結果を表3に示す。なお、表3における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、ICP−OESの分析値から計算した式(A)および式(B)の結果を表3に示す。得られた焼結磁石に対し、実験例1と同じ熱処理を施した。熱処理後の焼結磁石に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、3.2MA/mのパルス磁界で着磁した後、B−Hトレーサによって各試料のB及びHcJを測定した。測定結果を表4に示す。なお、B及びHcJを測定したR−T−B系焼結磁石の成分、ガス分析を行ったところ、表3のR−T−B系焼結磁石素材の成分、ガス分析結果と同等であった。測定結果を表4に示す。
表3に示す試料No.18は、式(A)を満足しないこと以外は、実験例1に示した実施例サンプルである試料No.9とほぼ同じ組成である。表4に示す様に、Tiが本発明の範囲内であっても、TiとBとの関係が本発明の範囲外であると、HcJが1341KA/mと、試料No.9の1444kA/mと比べて大きく低下している。
<実験例3>
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Coおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、粒径D50が10μm以下のTiH粉末を0.22質量%添加し、さらに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1040℃で4時間保持して焼結した後急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表5に示す。なお、表5における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、ICP−OESの分析値から計算した式(A)および式(B)の結果を表5に示す。表5に示す様に、試料No.19〜22は、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
得られた焼結磁石に対し、900〜1000℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、次いで500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。熱処理後の焼結磁石に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、3.2MA/mのパルス磁界で着磁した後、B−Hトレーサによって各試料のB及びHcJを測定した。測定結果を表6に示す。なお、B及びHcJを測定したR−T−B系焼結磁石の成分、ガス分析を行ったところ、表5のR−T−B系焼結磁石素材の成分、ガス分析結果と同等であった。さらに、試料No.19〜22におけるB量の変化に対するHcJの変化を表6の△HcJ/0.01Bに示す。
表6に示すように本発明の実施例に係るサンプルは△HcJ/0.01Bが6kA/mしか変化おらず、かつ、高いBと高いHcJを有している。
<実験例4>
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Coおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、粒径D50が10μm以下のTiH粉末を0.1〜0.28質量%添加し、さらに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1040℃で4時間保持して焼結した後急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m 以上であった。得られた焼結磁石の成分、ガス分析(O(酸素量)、N(窒素量)、C(炭素量))の結果を表7に示す。なお、表7における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、ICP−OESの分析値から計算した式(A)および式(B)の結果を表7に示す。表7に示すように、試料No.23〜26、27〜28は、Ti量が異なる以外は、ほぼ同じ組成である。
得られた焼結磁石に対し、900〜1000℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、次いで500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。熱処理後の焼結磁石に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、3.2MA/mのパルス磁界で着磁した後、B−Hトレーサによって各試料のB及びHcJを測定した。測定結果を表8に示す。なお、B及びHcJを測定したR−T−B系焼結磁石の成分、ガス分析を行ったところ、表7のR−T−B系焼結磁石素材の成分、ガス分析結果と同等であった。測定結果を表8に示す。
表8に示すように式(A)および式(B)のいずれかを満たさない比較例サンプルは、両方を満たす本発明の実施例サンプルと比べてHcJが大きく低下している。
<実験例5>
試料No.25(実施例)のサンプルについてクロスセクションポリッシャ(装置名:SM−09010、日本電子製)にて切削加工し、加工断面をFE−SEM(装置名:JSM−7001F、日本電子製)を用いて倍率2000倍で撮影した反射電子像を図1に示す。また、FE−SEMに付属のEDX(装置名:JED−2300、日本電子製)による組成分析の結果を表9に示す。なお、EDXでは軽元素の定量性が乏しいためBは除外して測定した。
図1および表9に示すように、分析位置1(図1の1に相当)は主相のR14B相であり、R14B相よりもコントラストの明るい分析位置2(図1の2に相当)はR−T−Ga相(R13A化合物)(R20原子%以上35原子%以下、T55原子%以上75原子%以下、Ga3原子%以上15原子%以下を含む相)である。R14B相よりもコントラストの暗い分析位置3(図1の3に相当)は90%以上Tiが検出されている。ここでは前述のようにBは定量性がないために除外しているため、Ti−B相と判断できない。そこで図2に分析位置3のEDXのスペクトルデータを示す。スペクトルデータからはTiとBのピークのみが検出されており、分析位置3がTiとBから構成されていることが確認できる。さらに分析位置3をFIB(装置名:FB2100、FB2000A、日立ハイテクノロジー製)を用いて図1の点線の位置で奥行き方向に抜き出し、FE−TEM(装置名:HF−2100 日立ハイテクノロジー製)を用いて観察した結果を図3に示す。図3に示すように、Ti−B相はアスペクト比の異なる2種類の結晶相が確認できた。ここではアスペクト比の小さな結晶を「粒状結晶」、アスペクト比の大きな結晶を「針状結晶」と呼ぶ。それらについて電子線回折による結晶構造の解析を行った結果を図4(粒状結晶)、図5(針状結晶)に示す。図4に示す粒状結晶の解析結果から、粒状結晶はTiB相(六方晶)であることが確認できた。また、図5に示す針状結晶の解析結果から針状結晶はTiB相(斜方晶)であることが確認できた。
さらに、B量の異なる以外はほぼ同じ組成である試料No.20と試料No.21についてクロスセクションポリッシャ(装置名:SM−09010、日本電子製)にて切削加工し、加工断面をFE−SEM(装置名:JSM−7001F、日本電子製)を用いて倍率20000倍で撮影した反射電子像を図6(試料No.20)、図7(試料No.21)に示す。図6に示すB量が0.94質量%と少ない試料No.20のサンプル中ではTi−B相として針状結晶(TiB相)が多く観察され、図7に示すB量が0.96質量%と多い試料No.21のサンプル中ではTi−B相として粒状結晶(TiB相)が多く観察された。この結果から、B量が変化しても、形成されるTiB相とTiB相の割合が変わることで、R14B型化合物の化学量論比に対して不足しているB量(Tiと結合していないB量)の変化が少なくなっており、これによりB量の変化に対するHcJの変化を抑制することができると考えられる。
<実験例6>
表1の試料No.13、15および表3の試料No.20、21、25(いずれの試料も本発明の実施例)のR−T−B系焼結磁石の任意の断面について、鏡面加工を施した後、その鏡面の一部をクロスセクションポリッシャ(SM−09010、日本電子株式会社製)によってイオンビーム加工を施した。次に、その加工面をFE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡、JSM−7001F、日本電子株式会社製)によって観察(加速電圧5kV、ワーキングディスタンス4mm、TTLモード、倍率2000倍)した。そして、FE−SEMによる反射電子像(BSE像)を画像解析ソフト(Scandium、OLYMPUS SOFT IMAGING SOLUTIONS GMBH製)により解析し、R13A化合物(代表的にはNdFe13Ga化合物)の面積比率を求めた。FE−SEMによるBSE像はその領域を構成する元素の平均原子番号が大きいほど明るく表示され、元素の原子番号が小さいほど暗く表示される。例えば、粒界相(希土類リッチ相)は明るく表示され、主相(R14B相)や酸化物などは暗く表示される。R13A化合物はその中間くらいの明るさで表示される。画像解析ソフトによる解析は、画像処理によりBSE像の明るさを横軸、頻度(面積)を縦軸としたグラフを作成し、EDS(エネルギー分散型X線分光法)によりR13A化合物を探索し、前記グラフ内の特定の明るさと対応させ、R13A化合物の面積比率を求めた。なお、FE−SEMによる反射電子像(BSE像)の視野の広さは45μm×60μm)であった。その結果を表10に示す。
表10に示すように、本発明のR−T−B系焼結磁石には、その任意の断面においてR13A化合物が面積比率で2%以上含まれている。
<実験例7>
Ndメタル、Prメタル、Dyメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、表11に示す組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を、水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。
次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。成形装置は、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1090℃〜1110℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.6Mg/m 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表11に示す。なお、表11における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、表11において、Nd、Pr、Dyの量を合計した値がR量(u)であり、ICP−OESで測定されたR、B、Ga、Al、Co、Ti、Fe以外の元素である、Cu、Cr、Mn、Si、O、N、Cの量を合計した値がM量(j)である。また、Fe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値をそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)と、その値を用いて式(A)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))および式(B)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’))を計算し、本発明の範囲内である場合は「○」、本発明の範囲外の場合は「×」と、表11の「式A」および「式B」の欄に記載した。なお、表11に示す様に、試料No.40〜43、44〜47は、それぞれ、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
得られた焼結磁石に対し、1000℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、次いで500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。熱処理後の焼結磁石に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、3.2MA/mのパルス磁界で着磁した後、B−Hトレーサによって各試料のBを測定し、パルスB−Hトレーサによって各試料のHcJを測定した。測定結果を表12に示す。なお、B及びHcJを測定したR−T−B系焼結磁石の成分、ガス分析を行ったところ、表11のR−T−B系焼結磁石素材の成分、ガス分析結果と同等であった。さらに、B量の変化に対するHcJの変化を表12の△HcJ/0.01Bに示す。
表12に示すように本発明の実施例に係るサンプルは△HcJ/0.01Bが14kA/m、及び11kA/mしか変化しておらず、かつ、高いBrと高いHcJを有している。

Claims (2)

  1. 14 B化合物(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)と、
    13 A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、CuおよびSiのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と、
    Tiの硼化物と、
    が共存する組織を有し、
    任意の断面におけるR 13 A化合物の面積比率が2%以上であるR−T−B系焼結磁石であって、
    下記式(1)で示される組成が、下記式(2)〜(9)を満足し、

    uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
    (Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)

    29.0≦u≦32.0 (2)
    (ただし、重希土類元素RHはR−T−B系焼結磁石の10質量%以下)
    0.93≦w≦1.00 (3)
    0.3≦x≦0.8 (4)
    0.05≦z≦0.5 (5)
    0≦v≦3.0 (6)
    0.15≦q≦0.28 (7)
    60.42≦g≦69.57(8)
    0≦j≦2.0 (9)

    gをFeの原子量で割った値をg’、vをCoの原子量で割った値をv’、zをAlの原子量で割った値をz’、wをBの原子量で割った値をw’、qをTiの原子量で割った値をq’としたときに下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする、R−T−B系焼結磁石。

    0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
    0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
  2. 0.18≦q≦0.28である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石。
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