JP6507769B2 - R−t−b系焼結磁石 - Google Patents
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Description
R−T−B系焼結磁石は、高温で保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特にハイブリッド自動車用や電気自動車用モータに使用される場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。そして高温下での不可逆熱減磁を抑制するため、すなわち高温下でも高いHcJを維持するために、室温においてより高いHcJを得ることが求められている。
特許文献2には、通常のR−T−B系合金よりもB量を少なくするとともに、B、Al、Cu、Co、Ga、C、Oの量を所定の範囲にし、さらにBに対するNd及びPr、並びにGaおよびCの原子比がそれぞれ特定の関係を満たすことによって高い残留磁束密度および保磁力が得られることが示されている。
例えば、B量が0.01質量%変化しただけでHcJが100kA/m変化することがある。これに対し、一般的なR−T−B系焼結磁石(R2T14B型化合物の化学量論比のB量よりも多くのBを含む)は、B量が0.1質量%変わってもHcJは、ほとんど変化しない。
本発明は、このような、問題を解決するためになされたものであり、B量の変化に対するHcJの変化が少なく、かつ高いBrと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を提供することを目的とする。
uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)
29.0≦u≦32.0 (2)
(ただし、重希土類元素RHはR−T−B系焼結磁石の10質量%以下)
0.93≦w≦1.00 (3)
0.3≦x≦0.8 (4)
0.05≦z≦0.5 (5)
0≦v≦3.0 (6)
0.15≦q≦0.28 (7)
60.42≦g≦69.57(8)
0≦j≦2.0 (9)
gをFeの原子量で割った値をg’、vをCoの原子量で割った値をv’、zをAlの原子量で割った値をz’、wをBの原子量で割った値をw’、qをTiの原子量で割った値をq’としたときに下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする、R−T−B系焼結磁石である。
0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
R6T13A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、Cuおよび Siのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と、
Tiの硼化物と、
が共存する組織を有することを特徴とする態様1または2に記載のR−T−B系焼結磁石である。
本発明者らは、本発明に係るR−T−B系焼結磁石において、Tiの硼化物(TiBおよび/またはTiB2)が形成されることを確認している。そして、本発明は、前記Beff量が一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくなるよう、Tiの硼化物を生成させている。これらを踏まえて本発明者らが考える、所定の含有量のTiを含むことにより、B量が変動してもHcJの変化が抑制されるメカニズムは以下の通りである。ただし、以下に示すメカニズムは本発明の技術的範囲を制限することを意図するものではないことに留意されたい。
これは、B量がR2T14B型化合物の化学量論比を下回ると、RおよびTが余剰となってR2T17相が生成され、通常は、B量の低下とともに急激に磁気特性が低下するが、磁石組成にGaが含有されていると、R2T17相の代わりにR−T−Ga相(代表的にはR6T13A化合物)が生成され、これにより高いHcJが得られるものと考えられる。
ここで、本明細書における「R−T−Ga相」とは、R20原子%以上35原子%以下、T55原子%以上75原子%以下、Ga3原子%以上15原子%以下を含むものであって、典型的にはR6T13Ga化合物が挙げられる。なお、R−T−Ga相は、不可避不純物としてAl、Si、Cu等が混入する場合があるため、R6T13A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、CuおよびSiのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と規定することができる。例えば、R6T13(Ga1−i−y−s AliSiyCus)化合物になっている場合がある。
しかし、上述したように、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なくし、さらに、Ga等を添加した組成の焼結磁石は、B量が変化するとHcJが大きく変化する。これは、B量がR2T14B型化合物の化学量論比よりもどのくらい少なくなるか(R、Tがどのくらい余剰となるか)によりR−T−Ga相の生成量が大きく変化するため、HcJのB量依存性が大きくなっているものと考えられる。
これは、本発明のように、R2T14B型化合物の化学量論比から求まるB量よりもB量が多き組成のR−T−B系焼結磁石中にTiの硼化物を形成することによってBeff量を一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくした場合、Gaの添加によりR2T17相などの生成が抑制されてR−T−Ga相が生成され、結果、HcJが向上するが、このとき、磁石全体組成のB量がR2T14B型化合物の化学量論比のB量に対して変わると、TiBとTiB2の生成比が変わる、すなわち、磁石全体組成のB量とR2T14B型化合物の化学量論比から求まるB量との差が小さい(すなわち、含有しているB量がより少ない)場合は、TiB2よりもTiBが多く生成され、逆に、磁石全体組成のB量とR2T14B型化合物の化学量論比から求まるB量との差が大きい場合(すなわち、含有しているB量がより多い場合)は、TiBよりもTiB2が多く生成されると考えられる。このようにBが多いほどBリッチなTi硼化物(TiB2)が生成され、Bが少ないほどBプアなTi硼化物(TiB)が生成されることで、磁石全体のB量が変動しても、磁石中でTiと化合物を生成していないB量(Beff量)の変化を小さくすることができ、この結果、B量の変化に対するR−T−Ga相の生成量の変化を小さくすることができ、HcJの変化を抑制することができたと考えられる。
0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
ここで、g’は、gをFeの原子量(55.845)で割った値であり、v’は、vをCoの原子量(58.933)で割った値であり、z’は、zをAlの原子量(26.982)で割った値であり、w’は、wをB(10.811)の原子量で割った値であり、q’は、qをTiの原子量(47.867)で割った値である。
前記Beff量がR2T14B型化合物の化学量論比を下回ると、Feと、主相のFeサイトを容易に置換することができるCo、Alが余剰となる(すなわち、FeとCoとAlの合計がR2T14B型化合物の化学量論比のT量よりも余剰となる)。よって、全てのTiがTiB2になった場合(つまりTiが最も多くのBと結合した場合)、前記Beff量をR2T14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なくするためには、[(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))](主相を形成しないFe、Co、Alの合計)が0よりも大きい(FeとCoとAlが余剰になる)必要がある。そして、さらにこの主相を形成していないFe、Co、Alの合計が、0.06以上であることを規定しているのが式(A)である。0.06以上とすることにより、R−T−Ga相を適切に生成させることができる。また、式(A)は、Fe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値にそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)を用いて計算することにより求めることができる。後述する式Bも同様である。
主相を形成していないFe、Co、Alの合計が0.06未満だと、R−T−Ga相の相比率が少なすぎるために高いHcJを得ることができない恐れがあるからである。
次に本発明に係るR−T−B系焼結磁石の組成の詳細を説明する。
上述したように、本発明はTiを添加して、Tiの硼化物を生成させることで、前記Beff量を一般的なR−T−B系焼結磁石のB量よりも少なくするとともに、Ga等を含有させている。これにより、粒界にR−T−Ga相が生成し、喩え、Dyなどの重希土類元素の含有量を抑制しても、高いHcJを得ることができる。
uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)
以下に個々の元素の組成範囲、すなわちu、w、x、z、v、q、g、jの数値範囲について説明する。
本発明のR−T−B系焼結磁石におけるRは、希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む。本発明に係るR−T−B系焼結磁石は重希土類元素RHを使用しなくても高いBrと高いHcJを得ることができるため、より高いHcJを求められる場合でもRHの添加量を削減でき、典型的にはRHは10質量%以下、好ましくは5質量%以下とすることができる。
Rの含有量は、式(2)に示すように29.0質量%〜32.0質量%である。
29.0≦u≦32.0 (2)
Rが、29.0質量%未満では、十分な量のR−T−Ga相を生成するのに必要なRが確保できず高いHcJを得ることができない恐れがあり、32.0質量%を超えると主相比率が低下して高いBrを得ることができない。
Bの含有量は、式(3)に示すように0.93質量%〜1.00質量%である。
0.93≦w≦1.00 (3)
Bが、0.93質量%未満では前記Beff量が少なくなりすぎて、R2T17相が析出して高いHcJが得られない、または主相比率が低下して高いBrを得ることができず、1.00質量%を超えるとR−T−Ga相が十分に生成されずに高いHcJが得られない恐れがある。
Gaの含有量は、式(4)に示すように0.3質量%〜0.8質量%である。
0.3≦x≦0.8 (4)
Gaが、0.3質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R2T17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができない恐れがあり、0.8質量%を超えると、不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBrが低下する恐れがある。
Alの含有量は、式(5)に示すように0.05質量%〜0.5質量%である。
0.05≦z≦0.5 (5)
Alを含有することにより、HcJを向上させることができる。Alは不可避的不純物として含有されてもよいし、積極的に添加して含有させてもよい。Alが0.5質量%を超えるとBrが低下する恐れがある。不可避的不純物で含有される量と積極的に添加した量の合計で0.05質量%以上0.5質量%以下含有させる。
Coの含有量は、式(6)に示すように、3.0質量%以下である。
0≦v≦3.0 (6)
Coは、3.0質量%以下まで含有してもよい。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効であるが、Coの含有量が3.0質量%を超えると高いBrを得ることができない恐れがある。
Tiの含有量は、式(7)に示すように0.15質量%〜0.28質量%である。
0.15≦q≦0.28 (7)
Tiは、0.15質量%未満では、B量の変化によるHcJの変化を抑制できない恐れがあり、0.28質量%を超えると、主相比率が低下して高いBrを得ることができない恐れがある。好ましくは、下記の式(10)に示すように0.18質量%以上0.28質量%以下である。よりB量の変化によるHcJの変化を抑制することができる。
0.18≦q≦0.28 (10)
Feの含有量は、式(8)に示すように60.42質量%〜69.57質量%である。
60.42≦g≦69.57(8)
Feは、60.42質量%未満では、主相比率が低下して高いBrが得ることが出来ない恐れがあり、69.57質量%を超えると、R−T−Ga相などが必要以上に生成することにより主相比率が低下して高いBrが得られない恐れがある。
Mは、R、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素である。
式(9)に示すように、R、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素Mを合計で2.0質量%以下含んでもよい。
0≦g≦2.0 (9)
すなわち、式(9)は、得られるR−T−B系焼結磁石の特性の改善等を目的に、任意の元素(複数の種類の元素であってもよい)と不可避的不純物(Alが不可避的不純物の場合はAlを除く)とを合計で2.0質量%まで含んでよいことを示している。
R−T−B系焼結磁石の特性を改善する元素として、例えば、Cu、Ni、Ag、Au、Mo等を0質量%〜2.0質量%含んでよい。特にCuを含有することが好ましい。Cuを含有することにより高いHcJを得ることができる。Cuのより好ましい含有量は、0.05質量%以上1.0質量%以下である。
本発明のR−T−B系焼結磁石の製造方法の一例を説明する。R−T−B系焼結磁石の製造方法は、合金粉末を得る工程、成形工程、焼結工程および熱処理工程を含む。以下、各工程について説明する。
所定の組成となるようにそれぞれの元素の金属または合金を準備し、溶解、鋳造を行った所定の組成の合金を得る。典型的には、ストリップキャスティング法等を用いて、フレーク状の合金を製造する。得られたフレーク状の原料合金を水素粉砕し、粗粉砕粉のサイズを例えば1.0mm以下とする。次に、粗粉砕粉をジェットミル等により微粉砕することで、例えば粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られた体積基準メジアン径)が3〜7μmの微粉砕粉(合金粉末)を得る。合金粉末は、1種類の合金粉末(単合金粉末)を用いてもよいし、2種類以上の合金粉末を混合して粉砕することにより合金粉末(混合合金粉末)を得る、いわゆる2合金法を用いてもよく、公知の方法などを用いて本発明の組成となるように合金粉末を作製すればよい。ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として既知の潤滑剤を使用してもよい。
得られた合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内に、合金粉末を分散させたスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら磁界中で成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
成形体を焼結することにより焼結磁石を得る。成形体の焼結は公知の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
得られた焼結磁石に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などは公知の条件を採用することができる。最終的な製品形状にするなどの目的で、得られた焼結磁石に研削などの機械加工を施してもよい。その場合、熱処理は機械加工前でも機械加工後でもよい。さらに、得られた焼結磁石に、表面処理を施してもよい。表面処理は、公知の表面処理であってよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗装などの表面処理を行うことができる。
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を、水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。
次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
得られた成形体を、真空中、1070℃〜1090℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m3 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、表1において、Nd、Prの量を合計した値がR量(u)であり、ICP−OESで測定されたR、B、Ga、Al、Co、Ti、Fe以外の元素である、Cu、Cr、Mn、Si、O、N、Cの量を合計した値がM量(j)である。後述する表3、5および7においても同じである。また、表1に示すFe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値をそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)と、その値を用いて式(A)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))および式(B)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’))を計算し、本発明の範囲内である場合は「○」、本発明の範囲外の場合は「×」と、表1の「式A」および「式B」の欄に記載した。以下に示す表3、5および7においても同様である。なお、表1に示す様に、試料No.1〜3、4〜6、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17は、それぞれ、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
さらに、試料No.1〜3、4〜6、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17それぞれにおける、B量の変化に対するHcJの変化を以下の様にして求めた。
まず、各試料のうち(B量以外ほぼ同じ組成のうち)一番低いB量と一番高いB量におけるB量の差を求め、さらに、一番低いHcJと一番高いHcJとの差を求めて、HcJの差をB量の差で割ることにより、B量が0.01質量%変化するときHcJがいくら変化するのかを求めた。例えば、試料No.4〜6におけるHcJの変化は以下の様に求めた。
まず、試料No.4〜6において、一番低いB量は、試料No.4の0.90質量%、一番高いB量は、試料No.6の0.95質量%であり、一番低いHcJは、試料No.6の1278kA/m、一番高いHcJは試料No.4の1509kA/mである。そして、B量が0.90質量%から0.95質量%へ変わる(0.05質量%変化すると)と、HcJが1508kA/mから1278kA/mへ変わる(230kA/m変化する)ため、B量が0.01質量%変化するとHcJが46kA/m(230/(0.05×100))変化することになる。同様にして、試料No.1〜3、7〜9、10〜11、12〜15、16〜17も求めた。結果を表2の「△HcJ/0.01B」欄に示す。以下に示す表6の△HcJ/0.01Bも同様にして求めた。
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を実験例1と同じ方法で、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉を実験例1と同じ方法で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。更に、実験例1と同じ方法により磁界中で成形し、成形体を得た。得られた成形体を1080℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。焼結磁石の密度は7.5Mg/m3 以上であった。
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Coおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、粒径D50が10μm以下のTiH2粉末を0.22質量%添加し、さらに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m3 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表5に示す。なお、表5における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、ICP−OESの分析値から計算した式(A)および式(B)の結果を表5に示す。表5に示す様に、試料No.19〜22は、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Coおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、所定の組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
前記微粉砕粉に、粒径D50が10μm以下のTiH2粉末を0.1〜0.28質量%添加し、さらに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100質量%に対して0.05質量%添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1040℃で4時間保持して焼結した後急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.5Mg/m3 以上であった。得られた焼結磁石の成分、ガス分析(O(酸素量)、N(窒素量)、C(炭素量))の結果を表7に示す。なお、表7における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、ICP−OESの分析値から計算した式(A)および式(B)の結果を表7に示す。表7に示すように、試料No.23〜26、27〜28は、Ti量が異なる以外は、ほぼ同じ組成である。
試料No.25(実施例)のサンプルについてクロスセクションポリッシャ(装置名:SM−09010、日本電子製)にて切削加工し、加工断面をFE−SEM(装置名:JSM−7001F、日本電子製)を用いて倍率2000倍で撮影した反射電子像を図1に示す。また、FE−SEMに付属のEDX(装置名:JED−2300、日本電子製)による組成分析の結果を表9に示す。なお、EDXでは軽元素の定量性が乏しいためBは除外して測定した。
表1の試料No.13、15および表3の試料No.20、21、25(いずれの試料も本発明の実施例)のR−T−B系焼結磁石の任意の断面について、鏡面加工を施した後、その鏡面の一部をクロスセクションポリッシャ(SM−09010、日本電子株式会社製)によってイオンビーム加工を施した。次に、その加工面をFE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡、JSM−7001F、日本電子株式会社製)によって観察(加速電圧5kV、ワーキングディスタンス4mm、TTLモード、倍率2000倍)した。そして、FE−SEMによる反射電子像(BSE像)を画像解析ソフト(Scandium、OLYMPUS SOFT IMAGING SOLUTIONS GMBH製)により解析し、R6T13A化合物(代表的にはNd6Fe13Ga化合物)の面積比率を求めた。FE−SEMによるBSE像はその領域を構成する元素の平均原子番号が大きいほど明るく表示され、元素の原子番号が小さいほど暗く表示される。例えば、粒界相(希土類リッチ相)は明るく表示され、主相(R2T14B相)や酸化物などは暗く表示される。R6T13A化合物はその中間くらいの明るさで表示される。画像解析ソフトによる解析は、画像処理によりBSE像の明るさを横軸、頻度(面積)を縦軸としたグラフを作成し、EDS(エネルギー分散型X線分光法)によりR6T13A化合物を探索し、前記グラフ内の特定の明るさと対応させ、R6T13A化合物の面積比率を求めた。なお、FE−SEMによる反射電子像(BSE像)の視野の広さは45μm×60μm)であった。その結果を表10に示す。
Ndメタル、Prメタル、Dyメタル、フェロボロン合金、Gaメタル、Cuメタル、Alメタル、電解Co、Tiメタルおよび電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、表11に示す組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚み0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を、水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。
次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、本実験例では、粉砕時の窒素ガス中の酸素濃度を50ppm以下とすることにより、最終的に得られる焼結磁石の酸素量が0.1質量%前後となるようにした。また、粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(体積基準メジアン径)である。
得られた成形体を、真空中、1090℃〜1110℃で4時間保持して焼結した後、急冷し、焼結磁石を得た。
焼結磁石の密度は7.6Mg/m3 以上であった。得られた焼結磁石の成分の分析結果を表11に示す。なお、表11における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。また、表11において、Nd、Pr、Dyの量を合計した値がR量(u)であり、ICP−OESで測定されたR、B、Ga、Al、Co、Ti、Fe以外の元素である、Cu、Cr、Mn、Si、O、N、Cの量を合計した値がM量(j)である。また、Fe(g)、Co(v)、Al(z)、B(w)、Ti(q)の分析値をそれぞれ、Fe、Co、Al、B、Tiの原子量で割った値(g’、v’、z’、w’、q’)と、その値を用いて式(A)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’))および式(B)の(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’))を計算し、本発明の範囲内である場合は「○」、本発明の範囲外の場合は「×」と、表11の「式A」および「式B」の欄に記載した。なお、表11に示す様に、試料No.40〜43、44〜47は、それぞれ、B量が異なる以外はほぼ同じ組成である。
Claims (2)
- R 2 T 14 B化合物(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)と、
R 6 T 13 A化合物(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、AはGa、Al、CuおよびSiのうち少なくとも一種でありGaを必ず含む)と、
Tiの硼化物と、
が共存する組織を有し、
任意の断面におけるR 6 T 13 A化合物の面積比率が2%以上であるR−T−B系焼結磁石であって、
下記式(1)で示される組成が、下記式(2)〜(9)を満足し、
uRwBxGazAlvCoqTigFejM (1)
(Rは希土類元素の少なくとも一種でありNdを必ず含み、MはR、B、Ga、Al、Co、TiおよびFe以外の元素であり、u、w、x、z、v、q、g、jは質量%を示す)
29.0≦u≦32.0 (2)
(ただし、重希土類元素RHはR−T−B系焼結磁石の10質量%以下)
0.93≦w≦1.00 (3)
0.3≦x≦0.8 (4)
0.05≦z≦0.5 (5)
0≦v≦3.0 (6)
0.15≦q≦0.28 (7)
60.42≦g≦69.57(8)
0≦j≦2.0 (9)
gをFeの原子量で割った値をg’、vをCoの原子量で割った値をv’、zをAlの原子量で割った値をz’、wをBの原子量で割った値をw’、qをTiの原子量で割った値をq’としたときに下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする、R−T−B系焼結磁石。
0.06≦(g’+ v’+z’)−(14×(w’−2×q’)) (A)
0.10≧(g’+ v’+z’)−(14×(w’−q’)) (B)
- 0.18≦q≦0.28である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石。
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