JP6505381B2 - 人工芝パイル用原糸及びそれを用いた人工芝 - Google Patents

人工芝パイル用原糸及びそれを用いた人工芝 Download PDF

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Description

本発明は、人工芝に用いられるパイル用原糸に関する。特に競技場用の人工芝に適したパイル用原糸に関する。さらには、そのパイル用原糸を一次基布に植設してなる人工芝に関する。
近年、野球場やサッカー場等の競技場、公園、校庭などでは、管理が容易なことから、天然芝に替えて、人工芝が用いられるようになってきている。人工芝は、ポリプロピレンやポリエステル等からなる一次基布にポリプロピレンやポリアミド等からなるパイル用原糸を植設して、芝生のような外観に仕立てたものである。特に近年では、長めのパイルを一次基布に植設し、パイル間に砂やゴムチップ等の充填材を充填してなるロングパイル人工芝(パイル長の長い人工芝)が、クッション性に優れ、天然芝生に近い踏み心地や、良好なボールの転がり特性等を得ることができるということで、注目を集めている。
人工芝に使用されるパイル用原糸には、擦れなどによって生じる糸割れや糸切れその他の変形を極力生じさせないようにするための耐摩耗性、天然芝に近い外観、紫外線劣化に対する耐候性、競技者がスライディング等を行ったときに火傷を起こさないための適度な滑り性、さらには夏場に人工芝表面の温度が上昇しすぎないようにするための低昇温性など、様々な機能が要求される。これら要求に対し、本出願人は特許文献1や特許文献2のような発明を提案してきた。
競技場用のロングパイル人工芝では、競技者が人工芝の上で激しく動くことに加えて充填材が充填されることによって充填材とパイルとの擦れがより顕著になる。したがって、競技用のロングパイル人工芝に使用されるパイル用原糸には、特に高い耐摩耗性が要求される。
特開2006−070438号公報 特開2010−265593号公報
本発明は、耐摩耗性に優れた人工芝パイル用原糸を提供することを目的とする。加えて、人工芝パイル用原糸をより天然芝に近い外観とし、優れた滑り性を持たせることもまた本発明の目的とするところである。
熱可塑性樹脂からなり、長さ方向への延伸と厚さ方向からの圧潰とによって長さ方向及び糸幅方向を含む面方向に熱可塑性樹脂が分子配向されていることを特徴とする人工芝パイル用原糸によって上記の課題を解決する。
人工芝パイル用原糸においては、X線回折における糸幅方向のX線強度のピーク高さが、長さ方向のX線強度のピーク高さの0.5倍より大きいことが好ましい。上記人工芝パイル用原糸において、熱可塑性樹脂はポリエチレンであることが好ましい。また、上記人工芝パイル用原糸は、その十点平均表面粗さ(Rz)が、0.01〜20μmであることが好ましい。さらには、上記人工芝パイル用原糸を圧潰により表面に連続する凹凸模様が形成することが好ましい。上記人工芝パイル用原糸を一次基布に対して植設すれば耐摩耗性に優れる人工芝を得ることができる。すなわち、上記の人工芝パイル用原糸を一次基布に植設してなる人工芝である。
本発明の人工芝パイル用原糸は、長さ方向への延伸と厚さ方向からの圧潰とによって長さ方向及び糸幅方向を含む面方向に熱可塑性樹脂が分子配向されていることで、耐摩耗性に優れ、ロングパイル人工芝用のパイルとしても好適に使用することができる。また、本発明によれば、人工芝パイル用原糸表面に連続する凹凸模様を形成することで、人工芝パイル用原糸の表面滑性が向上するため、より優れた耐摩耗性が得られる。加えて、当該凹凸模様により、人工芝が持つ光沢を抑えることが出来るため、より天然芝に近い風合いを持つ人工芝パイル用原糸とすることも可能である。
本発明の人工芝パイル用原糸(以下、単に糸ということがある)は、熱可塑性樹脂からなり、長さ方向への延伸と厚さ方向から圧潰とによって、面方向に熱可塑性樹脂が分子配向している。本発明の面方向に分子配向(以下、面配向ということもある)するとは、糸の長さ方向のみならず、特に糸の幅方向に対し、熱可塑性樹脂中の微結晶及び/又は高分子鎖が配列されることにより、糸の表面方向において様々な方向に配向がなされている状態をいう。
本発明の熱可塑性樹脂は、延伸可能な素材であれば特に制約なく使用することができる。例えば、従来から人工芝パイル用原糸の素材として使用されてきたポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルあるいはポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂を使用することができる。中でもポリオレフィンは、比較的安価でかつ比重が低いので人工芝パイル用原糸の素材として好適に使用することができる。特にロングパイル人工芝のようなパイル長の長い人工芝に使用する場合には、パイル用原糸の使用量が多くなる性質上、安価でかつ比重の低いことが求められる。
安価かつ比重の低いポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を含む)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが、柔軟性があり、延伸性に優れている点で良好な耐摩耗性を得る上で好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
本発明の人工芝パイル用原糸をなす糸の形態としては、熱可塑性樹脂からなるスリットフィルムを用いて作られるフラットヤーン、円形または異形の断面形状を有する口金から熱可塑性樹脂を押出した線状体を用いて作られるモノフィラメントなどが挙げられる。本発明の人工芝パイル用原糸では、フラットヤーン又はモノフィラメントのいずれの形状であっても構わないが、モノフィラメントの方が最終的に糸の厚みを厚く仕上げやすい。最終的な糸厚みが厚い方がより優れた耐摩耗性を実現しやすいため、糸の形状はモノフィラメントとすることが好ましい。
熱可塑性樹脂からなる糸を長さ方向へ延伸する方法としては、従来公知の人工芝パイル用原糸と同様に、スリットフィルムや線状体を、温水、熱ロール、熱板又は熱風などにより加熱しつつ、前後ロールの周速度差を利用して延伸する方法が挙げられ、従来公知の延伸装置を利用すればよい。これによって、主に糸の長さ方向に対して糸を構成する熱可塑性樹脂を分子配向させることができる。
熱可塑性樹脂からなる糸を、厚さ方向から圧潰する方法としては、長さ方向に延伸される前又は長さ方向に延伸された後のスリットフィルムや線状体を、熱を帯びた状態でロールやプレートなどで挟み、押し潰す方法が挙げられる。これによって、糸幅方向を中心に熱可塑性樹脂を分子配向させることができる。
上記のようにして長さ方向及び糸幅方向に分子を配向させる工程を経て作られた糸を構成する熱可塑性樹脂は、糸の長さ方向及び糸幅方向だけでなく、糸の表面に沿って様々な方向に対して分子配向する。この状態を称して、面方向に熱可塑性樹脂が分子配向するという。面方向に熱可塑性樹脂が分子配向された糸は、糸の長さ方向のみならず、糸幅方向などにも配向がなされているため、糸幅方向に対して応力が掛かった場合でも十分な強度を発揮し、結果として耐摩耗性に優れた人工芝パイル用原糸となる。
熱可塑性樹脂を面方向の配向させるに際しては、長さ方向への延伸倍率は特に限定されないが、本発明の人工芝パイル用原糸では、長さ方向への延伸倍率を2.0〜8.0倍の範囲とすることが好ましく、3.0倍より大きくすることがより好ましく、7.0倍以下とすることがより好ましい。延伸倍率が8.0倍を超える場合、糸の内部に糸裂けの原因の一つとなる空隙(ボイド)が過度に生じてしまう可能性がある。逆に延伸倍率が2.0倍を下回る場合、糸の長さ方向への引張強度が低くなることで、植設加工時や人工芝として使用した際に糸が伸びたり、切れやすくなるため好ましくない。
熱可塑性樹脂からなる糸を厚さ方向から圧潰して糸幅方向に対して延伸するに際しては、長さ方向への延伸倍率、圧潰前の糸の厚み、及び目的とする人工芝パイル用原糸の糸厚みなどを考慮して圧潰の程度を決定する。圧潰の程度は、長さ方向に延伸される前又は長さ方向に延伸された後のスリットフィルムや線状体をどの程度押し潰したかによって左右される。
本発明の人工芝パイル用原糸を構成する熱可塑性樹脂の分子配向の状態については、後述のX線回折を行い、空間格子(2,0,0)面のX線強度のピーク高さと、(1,1,0)面のX線強度のピーク高さを確認することにより、分子配向が適切な状態にあるかを推し量ることができる。ここでいう空間格子(2,0,0)面のX線強度ピークは糸の幅方向の分子配向の状態を示し、空間格子(1,1,0)面のX線強度ピークは糸の長さ方向の分子配向の状態を示す。
耐摩耗性に優れた人工芝パイル用原糸を得るうえでは、X線回折における糸の幅方向すなわち空間格子(2,0,0)面のX線強度のピーク高さが、糸の長さ方向すなわち(1,1,0)面のX線強度のピーク高さの0.5倍より大きくなるように、長さ方向への延伸と厚さ方向からの圧潰とを行うようにすることが好ましい。そして、空間格子(2,0,0)面のピーク高さが(1,1,0)面のピーク高さの0.5倍から2倍の範囲であることがより好ましい。空間格子(2,0,0)面のピーク高さが(1,1,0)面のピーク高さの0.5倍を下回る場合、糸幅方向に対する分子配向が十分でないか、ほとんどなされておらず、糸の長さ方向に分子配向が偏っている状態といえる。
本発明の人工芝パイル用原糸に施される長さ方向への延伸と厚さ方向からの圧潰とは、長さ方向への延伸又は厚さ方向からの圧潰のいずれを先に行っても構わないが、長さ方向への延伸を行った後に、厚さ方向からの圧潰を行うことが好ましい。後で圧潰を行うことで、圧潰が人工芝パイル用原糸の糸厚さ、表面状態、密度などを整える役割を担うこととなり、様々な要素において耐摩耗性に対し優位な状態となる。例えば、糸の長さ方向に対して延伸を行うと、その性質上、糸の内部に糸裂けの原因の一つとなる空隙(ボイド)が形成されやすい。しかし、長さ方向の延伸により糸の内部にボイドが生じたとしても、延伸の後に圧潰を行うことで、そのボイドを押し潰して多少の修復をすることができる。また、特に、後述するように凹凸模様を形成する場合には、凹凸模様によって、糸の長さ方向の延伸状態にムラが生じやすくなる上に、糸の長さ方向に模様が変形し、表面光沢を抑えにくくなる。したがって、長さ方向への延伸を行った後に、厚さ方向からの圧潰を行う方法、言い換えれば、長さ方向に延伸したスリットフィルムや線状体(以下、総称して、一軸延伸糸という場合がある)を圧潰する方法の方が好ましいといえる。
前記一軸延伸糸を圧潰する方法を採用するうえで、圧潰される一軸延伸糸の好ましい糸厚みとしては40〜1000μmであり、40μmを下回るとほとんど圧潰による延伸ができないか、得られる人工芝パイル用原糸が薄くなりすぎて耐摩耗性が低下するため好ましくない。また1000μmを超えると、得られる人工芝パイル用原糸の厚みが厚く剛直になるか、人工芝パイル用原糸として適切な糸厚みにするために、過度に(強引に)圧潰することとなり、糸幅方向の伸びを失い、糸切れを起こしやすくなってしまうことが懸念される。より好ましい糸厚みは80〜700μmである。
前記一軸延伸糸の断面形状としては、略方形、円形、三角形、円を複数個数珠状に連結した連結形、楕円形等いずれであっても構わないが、三角形のような上下または左右のいずれかが明らかに非対称の断面になる場合、厚さ方向からの圧潰による配向を行う際にムラが生じやすいため、上下および左右がほぼ対称となる断面であることが好ましい。また、一軸延伸糸の断面が円形断面や正方形断面の場合、より天然芝に近い外観の糸に仕上げるためには、強く(強引に)圧潰することになり、過延伸となることで逆に糸が裂けやすくなる可能性があることや、連結形断面等の表面に深い溝が形成されたものを用いた場合、溝部分に延伸が掛かりにくいことで、溝の部分が裂けやすくなる可能性があることを考慮すると、本発明の一軸延伸糸の断面は楕円形または略長方形であることが好ましい。
熱可塑性樹脂からなる糸を圧潰するには、例えば、一軸延伸糸の糸厚みよりも狭い間隔を維持するように設定された回転する少なくとも二本のロール(挟圧ロール)の間へ一軸延伸糸を長さ方向に連続して通過させる方法を採用することができる。このとき前述の挟圧ロールを無地にすれば、無地の表面を有する人工芝パイル用原糸が得られる。挟圧ロールの少なくとも一本を連続する凹凸模様が刻まれたものとすることで、凹凸模様が転写され、表面に連続する凹凸模様が形成された人工芝パイル用原糸とすることができる。表面に連続する凹凸模様が形成された人工芝パイル用原糸は、凹凸により表面光沢が抑えられていることで、植設した場合に、より天然芝に近い風合いを有する人工芝とすることができる。このとき形成される凹凸模様は、梨地、格子、菱形などいずれであっても、また、それらの組み合わせであっても構わないが、この凹凸模様が単に表面に模様を付けるだけでなく、圧潰などにより人工芝パイル用原糸を面配向させる過程で付加的に行われるべきものである観点では、凹部が極端に圧潰される状態又は凸部がほとんど圧潰されない状態、すなわち凹部と凸部の分子配向の差が大きくなることは好ましいとは言えず、凹凸模様があったとしても人工芝パイル用原糸全体が変形するように圧潰されていることが望まれる。然るに、凹部と凸部の分子配向の差が大きくなりすぎないよう、凹凸差は比較的小さく、かつ凹凸の間隔は比較的短い周期の凹凸状態で形成されることが好ましい。
上記の凹凸模様を有する人工芝パイル用原糸は、天然芝に近い風合いにすることのほかに、凹凸により表面滑性が向上する面でも有利である。人工芝パイル用原糸の表面滑性が高い場合、得られた人工芝の摩擦抵抗が下がるため、例えば、人工芝上でスライディングをしたとしてもプレーヤーが火傷しにくくなる。しかも、摩擦による負荷が軽減することで、人工芝パイル用原糸自身の耐摩耗性が向上することにもつながる。また、凹凸模様による表面滑性の向上は直鎖状低密度ポリエチレンを素材とした場合に特に大きい効果が得られる。直鎖状低密度ポリエチレンが、密度が低くなるほど、糸として裂けにくくなる反面、粘着性を帯びてしまう性質を有しているが、表面滑性の向上により、阻害要因である粘着性の影響が小さくなるため、耐摩耗性が向上するものと考えられる。直鎖状低密度ポリエチレンは、実用上は熱収縮などを加味する必要があるため、密度0.880〜0.935g/cmの範囲で適用することが好適であり、密度0.900〜0.925g/cmの範囲で適用することがより好適である。
上記の人工芝パイル用原糸の凹凸状態は、人工芝パイル用原糸の表面の十点平均表面粗さ(Rz)を測定することにより、好適な状態にあるかを推し量ることができる。耐摩耗性に優れた人工芝パイル用原糸にする観点では、十点平均表面粗さ(Rz)が0.01〜20μmの範囲であることが好ましく、さらに、風合いや表面滑性の効果を得る上では、十点平均表面粗さ(Rz)は、0.2〜20μmであることが好ましい。十点平均表面粗さ(Rz)が十点平均表面粗さ(Rz)が20μmを超える場合、凹凸差が大きく、部分的にしか面配向されていないばかりか、人工芝パイル用原糸に部分的に切れ目が入ることになり、逆に摩耗しやすくなっている可能性が懸念される。十点平均表面粗さ(Rz)としては10μm未満であることがより好ましい。
本発明の人工芝パイル用原糸の糸幅は、天然芝に近い風合いにすることのほか、人工芝表面をパイルで覆いやすくすることや、散布した砂やゴムチップなどの充填材の飛散や偏りを防ぐ観点で1〜20mmであることが好ましい。1mmを下回ると糸幅が狭すぎることで天然芝の風合いから遠くなるうえに、より多くの本数の糸を植設しなければ人工芝表面を覆えなくなるため好ましくない。一方、20mmを超えるとタフティング機での植設がしにくくなるため好ましくない。また、人工芝パイル用原糸の糸厚みとしては耐久性、耐摩耗性あるいは人工芝の風合いやクッション性の観点で、70〜650μmであることが好ましく、70μmを下回ると糸厚みが薄すぎることで、糸が裂けやすくなり、650μmを超えるとパイルが剛直になりすぎるため、好ましくない。
また、本発明の人工芝パイル用原糸の長さ方向の引張強度は、0.5〜5.0cN/dtであることが好ましく、また、長さ方向の引張切断時の伸びとしては、30〜250%であることが好ましい。長さ方向の引張強度及び長さ方向の引張切断時の伸びは、長さ方向に分子を配向させていくほどに、引張強度が増加し、引張切断時の伸びが減少してく傾向にある。引張強度が0.5cN/dtを下回る場合、糸が伸びやすいことが懸念され、植設等がしにくいばかりか、植設した人工芝の上で競技を行った場合、すぐにパイル長さにムラが出てしまう。引張強度が5.0cN/dtを上回る場合、糸の長さ方向へ配向が偏り過ぎて、糸幅方向の配向が十分でないことが懸念される他、パイルが、競技中にスパイク等に絡まった場合に糸が切れないため危険である。
本発明の人工芝パイル用原糸には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、無機充填剤、核剤、発泡剤、分散剤等の添加剤を任意の割合で含有させてもよい。添加剤を含有させる方法としては熱可塑性樹脂を押出成形する際に同時に練り込む方法が一般的である。
前述のようにして得られた人工芝パイル用原糸は、タフティング機などを用いて、フラットヤーン織物や不織布などから選択される一次基布に植設されることにより人工芝となる。本発明の人工芝パイル用原糸を用いた人工芝のパイル長さに、特に制約はなく、5〜75mmの長さにすることが一般的であり、ロングパイル人工芝においては、40〜75mmのパイル長さで植設される。得られた人工芝に対しては、裏面にラテックスなどを塗布し、熱風乾燥させ、植設したパイルが容易に引き抜けないよう固定する、いわゆるバッキングを行うことが好ましい。
以下、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明する。
[比較例1]
直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.922g/cm、融点125℃、MFR2.0g/10min(190℃、2160g荷重))に、緑色顔料及び耐候安定剤を混合し、断面が略長方形の口金から押出して、冷却固化した後、温水延伸装置を用いて、長さ方向へ延伸倍率4倍で延伸し、幅1.0mm、厚み0.24mm、繊度2000dtの楕円形断面のモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを比較例1とした。
[実施例1]
サンドブラストによる凹凸がロールの周面の全体に形成された2本の挟圧ロールを用意し、比較例1のモノフィラメントを2本の挟圧ロールの間を通過させて圧潰することで、ロールの凹凸模様が付き、原糸の表面全体に連続する凹凸模様が形成された幅1.2mm、厚み0.19mm、繊度2000dtの糸を得た。得られた糸を実施例1とした。
[実施例2]
表面に凹凸のない無垢の2本の挟圧ロールを用意し、比較例1のモノフィラメントを2本の挟圧ロールの間を通過させて圧潰することで、表面に模様のない幅1.2mm、厚み0.19mm、繊度2000dtの糸を得た。得られた糸を実施例2とした。
実施例1、実施例2、及び比較例1の糸をそれぞれフラットヤーン織物(素材:ポリプロピレン、目付:100g/m)からなる一次基布に、糸6本を束ね、パイル1房が12本になるようタフティング機を用いて植設した後、裏面にバッキング剤としてSBRラテックスを塗布し、パイル長さ60mmの人工芝とした。
実施例1、実施例2、及び比較例1の糸について、X線回折による配向比の測定と、JIS L 1013に基づく引張強度及び引張切断時の伸びの測定とを行った。結果を表1に記載する。さらに、実施例1、2及び比較例1の糸を使用して作製した人工芝について、耐摩耗性試験を行って、摩耗率を測定した。結果を表1に記載する。測定方法及び測定条件等を以下に説明する。
[糸の試験:引張試験]
JIS L 1013の8,5,3に記載されるISOによる引張強さ及び切断時の伸びの測定方法に準拠して測定した。引張強度は、切断までの最高荷重を基に算出され、引張切断時の伸びは、切断時の伸びを基に算出される。
[糸の試験:表面粗さ]
JIS B 0601の10点平均表面粗さ(Rz)に準拠して、糸の表面粗さを測定した。
[糸の試験:X線回折]
X線回折装置(ブルカー・エイエックス・エス社製 型式:D8 DISCOVER with GADDS)を用いて、以下の測定条件でX線強度を測定することで、糸を構成する分子の配向状態を調べた。このとき得られた空間格子(2,0,0)面のX線強度のピークの高さを、空間格子(1,1,0)のX線強度のピークの高さで除すこと、すなわち数式1により、糸の幅方向と長さ方向の配向比を求めた。なお、空間格子(2,0,0)面は糸の幅方向、空間格子(1,1,0)面は糸の長さ方向を示すものとする。
〔測定条件〕
X線源:銅製回転対陰極
光学系:金属コリメータによる平行光学系(φ300μm)
波長:0.1542nm
管電圧:45kV
管電流:110mA
収集時間:60S
試料位置:ω=11°
検出器位置:2θarm=22°(カメラ長 150nm)
[人工芝の試験:耐摩耗性]
JFAロングパイル人工芝検査マニュアル(第4版;平成20年4月10日)に基づいて耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性試験は、下記の摩耗輪(前輪及び後輪)を10万往復させることとし、特定位置のパイル3房(36本)について、糸先の割れやちぎれが認められる糸(摩耗した糸)の本数を確認した。以下の数式2に示すように、確認した糸本数(36本)中の摩耗した糸本数を百分率で求め、摩耗率とした。
各摩耗輪の重量(軸を含む):26,800±100g
各摩耗輪に取り付けられたスタッドの数:145個
スタッドの仕様:サッカーシューズ用(13mm)
摩耗輪のサイズ:長さ300±2mm×直径118±1mm
摩耗輪の回転数:前輪7回転、後輪3回転
摩耗輪の往復時間(1サイクル):6.5秒(直線速度:0.1m/s)
サンプルの往復時間(1サイクル):2.3秒(1.9cm)
実施例1及び2の糸を用いた人工芝は、比較例1の糸を用いた人工芝に比べて格段に優れた耐摩耗性を示した。耐摩耗性に関しては、糸厚みが厚い方が一般的に有利であるが、比較例1に比べて実施例1及び実施例2の方が糸厚みが薄いにも関わらず、実施例1及び実施例2に係る人工芝が高い耐摩耗性を示した。比較例1と実施例1及び実施例2とでは配向比が異なるところ、実施例1及び2では、原糸の長さ方向だけではなく、糸幅方向を含む面方向に熱可塑性樹脂が分子配向されていることにより、耐摩耗性に良好な結果をもたらしていることが推測される。強度や伸びに関しては、比較例1、実施例1及び実施例2いずれも大きな差はなかった。比較例1、実施例1及び実施例2で糸の長さ方向に対する強度や伸びに差がないことから、実施例1、実施例2で行われた圧潰は、糸幅方向により効果的に配向を行うものであり、面配向が効率よく行われたことが伺える。
実施例1と実施例2とを比べると、摩耗率の観点では有意差はなかった。しかし、糸先の変化(糸先の変形など)を観察すると、両者は摩耗するまでには至らないものの、実施例1に比べて実施例2の方がよく変形していた。実施例1では、原糸表面に凹凸模様が付されていることでより優れた耐摩耗性が得られるものと推察される。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂からなる人工芝パイル用原糸の製造方法であり、長さ方向への延伸と厚さ方向から糸全体を押し潰す圧潰とによって長さ方向及び糸幅方向を含む面方向に熱可塑性樹脂を分子配向させる工程を含む人工芝パイル用原糸の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂からなり、長さ方向への延伸と厚さ方向から糸全体を押しつぶす圧潰とによって長さ方向及び糸幅方向を含む面方向に熱可塑性樹脂が分子配向されており、
    X線回折における糸幅方向のX線強度のピーク高さが、長さ方向のX線強度のピーク高さの0.5倍より大きい人工芝パイル用原糸。
  3. 熱可塑性樹脂がポリエチレンである請求項2記載の人工芝パイル用原糸。
  4. 人工芝パイル用原糸表面の十点平均表面粗さ(Rz)が、0.01〜20μmである請求項2又は3に記載の人工芝パイル用原糸。
  5. 圧潰により表面に連続する凹凸模様が形成されてなる請求項〜4のいずれかに記載の人工芝パイル用原糸。
  6. 請求項〜5のいずれかに記載の人工芝パイル用原糸を一次基布に植設してなる人工芝。
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