以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、ホールセンサ100の構成の一例を示す。ホールセンサ100は、基板10、磁気収束板20、第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12を備える。ホールセンサ100は、3軸方向の磁場H(Hx,Hy,Hz)を検出する。
基板10は、半導体回路及び半導体素子等を含むIC基板である。本例の基板10はシリコンで形成される。基板10には、第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12が形成される。また、基板10の上方には磁気収束板20が形成される。基板10と磁気収束板20との間には、絶縁膜が設けられてよい。基板10の一方の表面を、X軸及びY軸を有するXY面とし、XY面に垂直な軸をZ軸とする。X、Y、Z軸は互いに直交する座標系である。
磁気収束板20は、ホールセンサ100に入力された磁場H(Hx,Hy,Hz)を、予め定められた方向に曲げる。これにより、第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12に、Z軸方向の磁束密度ベクトルを形成する。磁気収束板20は、基板10のXY面の上方に設けられる。本例の磁気収束板20は、磁性材料等を用いて、円盤形状に形成される。磁気収束板20は、中心がZ軸に貫かれるように配置される。
第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12は、磁気収束板20の外周部付近に配置される。第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12は、XY平面に感磁面を有し、Z軸方向の磁束密度ベクトルを検出する。第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12は、任意の半導体プロセスを用いて基板10上に形成される。第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12は、当該基板10に形成された回路等とそれぞれ接続される。
第1ホール素子対11は、磁場のX成分Hx及びZ成分Hzを検出する。第1ホール素子対11は、X軸と平行に形成された第1ホール素子112と第2ホール素子114とを有する。
第1ホール素子112及び第2ホール素子114は、基板10上において、原点に対して点対称に配置される。第1ホール素子112はX軸の負側に形成され、第2ホール素子114はX軸の正側に配置される。なお、本例の第1ホール素子112及び第2ホール素子114の形状は、十字型であるが、スクエア型等の他の形状であってよい。
第2ホール素子対12は、磁場のY成分Hy及びZ成分Hzの磁場を検出する。第2ホール素子対12は、Y軸と平行に形成された第3ホール素子122と第4ホール素子124とを有する。
第3ホール素子122及び第4ホール素子124は、基板10上において、原点に対して点対称に配置される。第3ホール素子122はY軸の負側に形成され、第4ホール素子124はY軸の正側に配置される。なお、本例の第3ホール素子122及び第4ホール素子124の形状は、十字型であるが、スクエア型等の他の形状であってよい。
第1ホール素子112は、磁気収束板20により曲げられた磁場H(Hx,Hy,Hz)に応じた磁束密度ベクトルB(Hall,X1)を検出する。磁束密度ベクトルB(Hall,X1)は、第1ホール素子112の位置における透磁率Mu(Hall,X1)を用いて次式で示される。なお、透磁率Mu(Hall,X1)は、2階のテンソル(3行3列の行列)となる。
第2ホール素子114は、磁気収束板20により曲げられた磁場H(Hx,Hy,Hz)に応じた磁束密度ベクトルB(Hall,X2)を検出する。磁束密度ベクトルB(Hall,X2)は、第2ホール素子114の位置における透磁率Mu(Hall,X2)を用いて、次式で示される。
ここで、第1ホール素子112及び第2ホール素子114においては、磁場のY成分Hyに対する感度がほぼゼロである。つまり、第1ホール素子112及び第2ホール素子114の検出する磁束密度ベクトルには、磁場のY成分Hyに比例する項が含まれない。よって、第1ホール素子112及び第2ホール素子114の検出する磁束密度ベクトルB(Hall,X1)及び磁束密度ベクトルB(Hall,X2)は、次式で示される。
一方、第2ホール素子対12についても、第1ホール素子対11と同様に考えることができる。即ち、第3ホール素子122及び第4ホール素子124は、それぞれ磁場のY成分Hy及びZ成分Hzを検出できる。第3ホール素子122及び第4ホール素子124においては、磁場のX成分Hxに対する感度がほぼゼロである。つまり、第3ホール素子122及び第4ホール素子124の検出する磁束密度ベクトルには、磁場のX成分Hxに比例する項が含まれない。よって、第3ホール素子122及び第4ホール素子124の検出する磁束密度ベクトルB(Hall,Y1)及び磁束密度ベクトルB(Hall,Y2)は、次式で示される。
以上の通り、第1ホール素子対11は、磁場のX成分Hx及びZ成分Hzを検出し、第2ホール素子対12は、磁場のY成分Hy及びZ成分Hzを検出する。よって、ホールセンサ100は、第1ホール素子対11及び第2ホール素子対12を組み合わせることにより、3軸方向の磁場H(Hx,Hy,Hz)を検出できる。
図2は、第1ホール素子対11における磁束密度ベクトルの一例を示す。本例の第1ホール素子対11には、X軸方向の磁場ベクトルH(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)が印加される。
磁気収束板20の透磁率は、磁気収束板20が磁性材料等によって形成されるので、空気の透磁率と比較して高くなる。よって、磁気収束板20内の磁束密度は、空気中の磁束密度と比較して高くなる。そのため、磁気収束板20の外周付近に配置された第1ホール素子対11の磁束密度も高くなる。例えば、入力磁場Hxが印加された場合の、第1ホール素子112の位置における透磁率Mu,zx(Hall,X1)は、空気の透磁率μと比較して、1.4倍程度高くなる。したがって、透磁率Mu,zx(Hall,X1)は、以下の式で示される。
同様に、入力磁場Hxが印加された場合の、第2ホール素子114の位置における透磁率Mu,zx(Hall,X2)は、磁束密度ベクトルの向きに注意すると、以下の式で示される。
図3は、第1ホール素子対11における磁束密度ベクトルの一例を示す。本例の第1ホール素子対11には、X軸方向の磁場ベクトルH(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)が印加される。
X軸方向の磁場ベクトルH(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)が印加される場合と同様に、磁気収束板20内の磁束密度は、空気中の磁束密度と比較して高くなる。そのため、磁気収束板20の外周付近に配置された第1ホール素子対11の磁束密度も高くなる。例えば、入力磁場Hzが印加された場合の、第1ホール素子112の位置における透磁率Mu,zz(Hall,X1)は、空気の透磁率μと比較して、1.1倍程度高くなる。したがって、透磁率Mu,zz(Hall,X1)は、以下の式で示される。
同様に、入力磁場Hzが印加された場合の、第2ホール素子114の位置における透磁率Mu,zz(Hall,X2)は、磁束密度ベクトルの向きに注意すると、以下の式で示される。
図4は、磁気センサ500の構成の一例を示す。磁気センサ500は、ホールセンサ100が検出した信号に基づいて磁場を検出する。磁気センサ500は、Xチャネル501及びYチャネル502を備える。
Xチャネル501は、第1ホール素子対11に接続された第1信号出力部201を備える。Xチャネル501は、第1ホール素子対11を駆動させ、且つ、第1ホール素子対11の出力するホール起電力信号を処理する。第1信号出力部201は、第1ホール素子対11をマッチングする。第1ホール素子対11のマッチングには、第1ホール素子112の駆動回路と第2ホール素子114の駆動回路とのマッチング、及び、第1ホール素子112の信号処理回路と第2ホール素子114の信号処理回路とのマッチングの2種類のマッチングが含まれる。
第1信号出力部201は、第1ホール素子112及び第2ホール素子114の駆動に関する回路を周期的に入れ替えるDEM(Dynamic Element Matching)動作によって、第1ホール素子対11をマッチングする。また、第1信号出力部201は、第1ホール素子112及び第2ホール素子114の出力の信号処理に関する回路を周期的に入れ替えるDEM動作によって、第1ホール素子対11をマッチングする。
Yチャネル502は、第2ホール素子対12に接続された第2信号出力部202を備える。Yチャネル502は、第2ホール素子対12を駆動させ、且つ、第2ホール素子対12の出力するホール起電力信号を処理する。第2信号出力部202は、第2ホール素子対12をマッチングする。第2ホール素子対12のマッチングには、第3ホール素子122の駆動回路と第4ホール素子124の駆動回路とのマッチング、及び、第3ホール素子122の信号処理回路と第4ホール素子124の信号処理回路とのマッチングの2種類のマッチングが含まれる。
第2信号出力部202は、第3ホール素子122及び第4ホール素子124の駆動に関する回路を周期的に入れ替えるDEM動作によって、第2ホール素子対12をマッチングする。また、第2信号出力部202は、第3ホール素子122及び第4ホール素子124の出力の信号処理に関する回路を周期的に入れ替えるDEM動作によって、第2ホール素子対12をマッチングする。
図5A及び図5Bは、スピニングカレント法(非特許文献1)によるオフセットキャンセルの方法を説明するための図である。図5Aは、スピニングカレントクロック位相φ1での接続例を示す。図5Bは、スピニングカレントクロック位相φ2での接続例を示す。本例では、第1ホール素子112(Hall,X1)を用いたスピニングカレント法について説明を行っているが、その他のホール素子についても同様にあてはまる。
第1ホール素子112は、駆動電流が入力される入力端子対と、磁束密度Bに応じたホール起電力信号Vsig(Hall,X1)を検出する出力端子対を有する。ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)には、ホール起電力信号成分及びオフセット信号Vosの成分が含まれる。
ホール起電力信号成分は、ホール効果によって、外部磁場による磁束の方向及び駆動電流の流れる方向と垂直な方向に発生する。ホール起電力信号成分に基づいて、磁束密度Bの大きさが検出される。
オフセット信号Vosは、第1ホール素子112の製造ばらつき等により、磁束密度Bがゼロの場合であっても生じる信号である。オフセット信号Vosを除去することにより、磁束密度Bの大きさが精度よく検出される。スピニングカレント法では、入力端子対と出力端子対とが、スピニングカレントクロック位相φ1、φ2間で交互に入れ替えられる。これにより、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)が変調されて、ホール起電力信号成分とオフセット信号Vosの成分とが周波数軸上で分離される。したがって、スピニングカレント法を用いた第1ホール素子112の駆動により、オフセット信号Vosを除去できる。
第1ホール素子112は、スピニングカレントクロック位相φ1において、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1_φ1)を出力する。第1ホール素子112は、スピニングカレントクロック位相φ2において、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1_φ2)を出力する。スピニングカレントクロック位相φ1における駆動電流の方向は、スピニングカレントクロック位相φ2における駆動電流の方向と90度異なる。
ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の極性は、駆動電流の方向に対するホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の極性のとり方によって決まる。+側及び−側は、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)を、後段の回路に入力して検出する際の極性の取り方を含めて示す。例えば、スピニングカレントクロック位相φ1において、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の+側は、駆動電流の流れる方向に対して右側の端子に対応する。また、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の−側は、駆動電流の流れる方向に対して左側の端子に対応する。一方、スピニングカレントクロック位相φ2において、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の+側は、駆動電流の流れる方向に対して左側の端子に対応する。また、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)の−側は、駆動電流の流れる方向に対して右側の端子に対応する。これにより、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1_φ1)は、Vsig(Hall,X1_φ2)の極性と異なる。
ここで、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)の導出方法について説明する。第1ホール素子112において発生するホール起電力信号Vsig(Hall,X1)は、以下の式で表される。
また、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)は、第1ホール素子112の定電流磁気感度SI(Hall,X1)と、第1ホール素子112を駆動する駆動電流Ibias(Hall,X1)の積となる。即ち、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)は、下記の式により表される。
同様に、第2ホール素子114において発生するホール起電力信号Vsig(Hall,X2)は、以下の式で表される。
また、第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)は、第2ホール素子114の定電流磁気感度SI(Hall,X2)と、第2ホール素子114を駆動する駆動電流Ibias(Hall,X2)との積となる。即ち、第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)は、下記の式により表される。
第1ホール素子112及び第2ホール素子114が理想的に形成された場合、第1ホール素子112の定電流磁気感度SI(Hall,X1)と第2ホール素子114の定電流磁気感度SI(Hall,X2)とが等しくなる。この場合、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)と第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)との関係は、駆動電流Ibias(Hall,X1)と駆動電流Ibias(Hall,X2)との関係に依存する。よって、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)と第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)とには、駆動電流のばらつきに起因するミスマッチが生じる。
図6は、本願明細書に係る発明の前提となる磁気センサ500の構成の一例を示す。本例では、Xチャネル501及びYチャネル502のより具体的な構成を示す。
Xチャネル501は、第1カレントスイッチ31、第2カレントスイッチ32、第1極性切替回路51、第1オペアンプ70及び第1フィードバック回路81を備える。Xチャネル501は、第1ホール素子対11の出力するホール起電力信号Vsig(Hall,X1)、Vsig(Hall,X2)の対に基づいた増幅信号Vamp,Xchを出力する。
第1カレントスイッチ31は、第1ホール素子112のスピニングカレント駆動を制御する。また、第1カレントスイッチ31は、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)を、差分信号として第1オペアンプ70に出力する。
第2カレントスイッチ32は、第2ホール素子114のスピニングカレント駆動を制御する。また、第2カレントスイッチ32は、ホール起電力信号Vsig(Hall,X2)を、差分信号として第1極性切替回路51に出力する。
第1極性切替回路51は、第2カレントスイッチ32が出力するホール起電力信号Vsig(Hall,X2)の極性を切り替える。極性の切替とは、差分信号として出力されたホール起電力信号Vsig(Hall,X2)を入れ替えることを指す。第1極性切替回路51は、極性が切り替えられたホール起電力信号Vsig(Hall,X2)を第1オペアンプ70に出力する。
第1オペアンプ70は、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)及び第1極性切替回路51を介したホール起電力信号Vsig(Hall,X2)に基づいて、増幅信号Vamp,Xchを出力する。また、第1オペアンプ70は、増幅信号Vamp,Xchを第1フィードバック回路81にも出力する。
第1フィードバック回路81は、入力された増幅信号Vamp,Xchに基づいたフィードバック信号Vfb,Xchを生成する。フィードバック信号Vfb,Xchは、信号増幅率が1+R2/R1となるように制御される。第1フィードバック回路81は、生成したフィードバック信号Vfb,Xchを第1オペアンプ70に出力する。
増幅信号Vamp,Xchは、磁場のX成分Hx及びZ成分Hzに関する信号成分を含む。例えば、増幅信号Vamp,Xchは、第1ホール素子対11の出力するホール起電力信号Vsig(Hall,X1)、Vsig(Hall,X2)の対の間で、2つの演算式(差信号、和信号)を取ることにより生成され、2次元のホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch,Vz,Xch)で表される。
XチャネルX成分信号Vx,Xchは、第1ホール素子対11により検出される磁場のX成分Hxに対応する。磁場のX成分Hxは、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)、Vsig(Hall,X2)の差信号を取り、磁場のZ成分Hzの項をキャンセルすることにより算出される。
XチャネルZ成分信号Vz,Xchは、第1ホール素子対11により検出される磁場のZ成分Hzに対応する。磁場のZ成分Hzは、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)、Vsig(Hall,X2)の和信号を取り、磁場のX成分Hxの項をキャンセルすることにより算出される。
XチャネルX成分信号Vx,Xch及びXチャネルZ成分信号Vz,Xchは、下記の式で表される。なお、XチャネルX成分信号Vx,Xch[0]を出力するかXチャネルZ成分信号Vz,Xchを出力するかは、第1極性切替回路51のスイッチングによって切り替えられる。
Yチャネル502は、第3カレントスイッチ33、第4カレントスイッチ34、第2極性切替回路52、第2オペアンプ75及び第2フィードバック回路82を備える。Yチャネル502は、第2ホール素子対12の出力するホール起電力信号Vsig(Hall,Y1)、Vsig(Hall,Y2)の対に基づいた増幅信号Vamp,Ychを出力する。増幅信号Vamp,Ychは、磁場のY成分Hy及びZ成分Hzに関する信号成分を含む。
第3カレントスイッチ33は、第3ホール素子122のスピニングカレント駆動を制御する。また、第3カレントスイッチ33は、ホール起電力信号Vsig(Hall,Y1)を、差分信号として第2オペアンプ75に出力する。
第4カレントスイッチ34は、第4ホール素子124のスピニングカレント駆動を制御する。また、第4カレントスイッチ34は、ホール起電力信号Vsig(Hall,Y2)を、差分信号として第2極性切替回路52に出力する。
第2極性切替回路52、第2オペアンプ75及び第2フィードバック回路82の動作は、第1極性切替回路51、第1オペアンプ70及び第1フィードバック回路81と基本的に同一である。
増幅信号Vamp,Ychは、磁場のY成分Hy及びZ成分Hzに関する信号成分を含む。例えば、増幅信号Vamp,Ychは、第2ホール素子対12の出力するホール起電力信号Vsig(Hall,Y1)、Vsig(Hall,Y2)の対の間で、2つの演算式(差信号、和信号)を取ることにより生成され、2次元のホール起電力信号ベクトル(Vy,Ych,Vz,Ych)で表される。
YチャネルY成分信号Vy,Ychは、第2ホール素子対12により検出される磁場のY成分Hyに対応する。磁場のY成分Hyは、ホール起電力信号Vsig(Hall,Y1)、Vsig(Hall,Y2)の差信号を取り、磁場のZ成分Hzの項をキャンセルすることにより算出される。
YチャネルZ成分信号Vz,Ychは、第2ホール素子対12により検出される磁場のZ成分Hzに対応する。磁場のZ成分Hzは、ホール起電力信号Vsig(Hall,Y1)、Vsig(Hall,Y2)の和信号を取り、磁場のY成分Hyの項をキャンセルすることにより算出される。
YチャネルY成分信号Vy,Ych及びYチャネルZ成分信号Vz,Ychは、下記の式で表される。なお、YチャネルY成分信号Vy,Ych[0]を出力するかYチャネルZ成分信号Vz,Ychを出力するかは、第2極性切替回路52のスイッチングによって切り替えられる。
図7Aは、第1オペアンプ70の具体的な構成の一例を示す。第1オペアンプ70は、トランスコンダクタ差動対Gm,1、Gm,2、Gm,fb1、第1電流加算回路71及び第1出力段トランジスタ72を備える電流帰還型アンプである。
トランスコンダクタ差動対Gm,1は、入力されたホール起電力信号Vsig(Hall,X1)を電流信号Isig(Hall,X1)に変換する。電流信号Isig(Hall,X1)は、下記の式で表される。
トランスコンダクタ差動対Gm,2は、入力されたホール起電力信号Vsig(Hall,X2)を電流信号Isig(Hall,X2)に変換する。電流信号Isig(Hall,X2)は、下記の式で表される。
また、トランスコンダクタ差動対Gm,fb1は、第1フィードバック回路81からの出力を電流信号Ifb1に変換する。電流信号Ifb1は、下記の式で表される。
ここで、第1抵抗R1及び第2抵抗R2は、第1フィードバック回路81が有する抵抗である。第1フィードバック回路81は、増幅信号Vamp,Xchを第1抵抗R1及び第2抵抗R2により抵抗分割してトランスコンダクタ差動対Gm,fb1に出力する。
第1電流加算回路71は、トランスコンダクタ差動対Gm,1、Gm,2、Gm,fb1から出力された電流信号Isig(Hall,X1)、Isig(Hall,X2)、Ifb1を加算する。第1電流加算回路71は、加算した電流信号を第1出力段トランジスタ72に出力する。
第1出力段トランジスタ72は、第1電流加算回路71が出力した電流信号に基づいて、増幅信号Vamp,Xchを生成する。第1出力段トランジスタ72は、生成した増幅信号Vamp,Xchを第1オペアンプ70の出力として出力する。また、第1出力段トランジスタ72は、増幅信号Vamp,Xchを第1フィードバック回路81にも出力する。
ここで、XチャネルX成分信号Vx,Xchは、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)とホール起電力信号Vsig(Hall,X2)との差信号である。即ち、Xチャネル信号Vx,Xchを検出する場合の第1電流加算回路71における電流信号は、以下の式を満たす。
(数20)式をXチャネルX成分信号Vx,Xchについて解くと以下の通りになる。
一方、XチャネルZ成分信号Vz,Xchは、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)とホール起電力信号Vsig(Hall,X2)との和信号である。即ち、XチャネルZ成分信号Vz,Xchは、以下の式を満たす。
(数22)式をXチャネルX成分信号Vx,Xchについて解くと以下の通りになる。
さらに、(数21)式及び(数23)式に、ホール起電力信号Vsig(Hall,X1)、Vsig(Hall,X2)に関する(数9)式及び(数11)式を代入して考えると、XチャネルX成分信号Vx,Xchは磁場のX成分Hxと磁場のZ成分Hzの線形和となる。XチャネルX成分信号Vx,Xch及びXチャネルZ成分信号Vz,Xchを、磁場成分Hx,Hzの線形結合の形で書き表すと、下記の式となる。
(数24)式の磁電変換の係数Dxx、Dzzは、対角成分(Diagonal element)を示し、NDxz、NDzxは、非対角成分(Non−diagonal element)を示す。ここで、(数24)式の磁電変換の係数は以下の通りである。
(数24)式において線形結合の形で表された磁電変換の数式について、磁場ベクトル(Hx,Hz)から信号ベクトル(Vx,Xch,Vz,Xch)への変換式として行列形式で書き表すと以下の式となる。
非対角成分NDxz、NDzxがゼロの場合は、磁電変換において他軸感度が発生しない。一方、非対角成分NDxz、NDzxがゼロでない場合、磁電変換において他軸感度が発生する。磁電変換において他軸感度が発生すると、(数26)式において直交性が保たれない。よって、非対角成分NDxz、NDzxがゼロになることが望ましい。
ここで、XチャネルZ成分信号Vz,Xchが磁場のZ成分Hzだけに比例するためには、(数25)式において、非対角成分NDxz、NDzxがゼロとなる必要がある。非対角成分NDxz、NDzxがゼロになるには、トランスコンダクタ差動対Gm,1とトランスコンダクタ差動対Gm,2とがマッチングしていること、及び、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)と第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)がマッチングしていることが必要である。なお、第1ホール素子112の磁気感度S(Hall,X1)と第2ホール素子114の磁気感度S(Hall,X2)とは、(数10)式及び(数12)式を参照すると、第1ホール素子112に入力され第1駆動電流I1と第2ホール素子114に入力される第2駆動電流I2とをマッチングすることによりマッチングされる。
図7Bは、第2オペアンプ75の具体的な構成の一例を示す。第2オペアンプ75は、トランスコンダクタ差動対Gm,3、Gm,4、Gm,fb2、第2電流加算回路76及び第2出力段トランジスタ77を備える電流帰還型アンプである。
第2オペアンプ75の各構成は、第1オペアンプ70の構成とそれぞれ対応し、基本的には、第1オペアンプ70と同様に動作する。即ち、YチャネルY成分信号Vy,Ych及びYチャネルZ成分信号Vz,Ychを、磁場成分Hy,Hzの線形結合の形で書き表すと、下記の式となる。
(数27)式の磁電変換の係数Dyy、Dzzは、対角成分を示し、NDyz、NDzyは、非対角成分を示す。ここで、(数27)式の磁電変換の係数は以下の通りである。
図8は、磁電変換における他軸感度の発生を説明するための図である。図8(a)は、磁場ベクトル(Hx,Hz)の一例を示す。図8(b)は、ホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)の一例を示す。
磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)は、単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)及び(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)を有する。単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)を実線で示し、単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)を破線で示す。本例の単位磁場ベクトルは、X軸とZ軸にそれぞれ重なる。磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)は、ホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)に磁電変換される。
ホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)は、Vx,Xch軸及びVz,Xch軸を用いた座標系におけるベクトルである。単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)に対応するホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)を実線で示し、単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)に対応するホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)を破線で示す。
X軸方向の単位磁場ベクトル(1,0,0)から生成されるベクトル信号(Vx,Xch,Vz,Xch)については、(数26)式において、(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)を代入して得られる。非対角成分NDxz、NDzxがゼロでない場合、このベクトル信号(Vx,Xch,Vz,Xch)は、Z成分がゼロでない有限な値となってしまうので、単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(1,0,0)が磁電変換された場合、ホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)は、Vx,Xch軸に重ならず、Vx,Xch軸から反時計回りに角度αだけ回転した向きを向く。なお、本例では、角度α>0の場合を示す。
Z軸方向の単位磁場ベクトル(0,0,1)から生成されるベクトル信号(Vx,Xch,Vx,Xch)については、(数26)式において、(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)を代入して得られる。非対角成分NDxz、NDzxがゼロでない場合、このベクトル信号(Vx,Xch,Vz,Xch)は、X成分がゼロでない有限な値となってしまうので、単位磁場ベクトル(Hx,Hy,Hz)=(0,0,1)が磁電変換された場合、ホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)は、Vz,Xch軸に重ならず、Vz,Xch軸から反時計回りに角度βだけ回転した向きを向く。なお、本例では、角度β<0の場合を示す。
つまり、非対角成分NDxz、NDzxがゼロでない場合、磁場ベクトル(Hx,Hz)からホール起電力信号ベクトル(Vx,Xch、Vz,Xch)への変換が直交変換でなくなり、非直交性誤差が発生する。ここで、他軸感度による非直交性誤差を表す角度α、βは、下記の式により表される。
図9は、非直交性誤差に起因した角度非線形性誤差を示す。角度非線形性誤差とは、ホールセンサ100を3D回転角センサとして用いた場合に、非直交性誤差に起因して生じた回転角の誤差である。図9は、磁場ベクトル(Hx,Hz)に対する角度非線形性誤差(度)の変化を示す。
ホールセンサ100は、XY面、YZ面、ZX面という3つの面での磁場の回転角度を検出する。例えば、3D回転角センサは、車載のペダル位置の検出、弁(バルブ)の開閉度の検出等の用途に利用される。このような用途では、3D回転角センサに高い回転角度の精度が求められる。より具体的には、ホールセンサ100は、ZX平面内の回転磁場(Hx,Hz)=(cos(θ),sin(θ))の回転角度θを検出する。これにより、ホールセンサ100は、自身の回転角を算出する。ここで、ホールセンサ100に対して、Hx=cos(θ)、Hz=sin(θ)となる回転磁場が入力されたときの信号波形の式を以下に示す。
本例では、他軸感度に起因して、ホールセンサ100にα=+1°、β=−1°となる非直交性誤差が発生した場合の誤差を示す。α=+1°、β=−1°の非直交性誤差が生じた場合、ホールセンサ100のZX面内での角度検出において、±1°の角度非線形性誤差が発生する。
図10Aは、本実施形態に係るXチャネル501の構成の一例を示す。本例のXチャネル501は、第1バイアス切替回路41、第1Gmスイッチ回路61及び第1スイッチ制御部65をさらに備える。
第1スイッチ制御部65は、第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61を予め定められた周期でスイッチングさせる。例えば、第1スイッチ制御部65は、2相クロック(Phi1、Phi2)であるDEMクロックを第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61に出力する。また、第1スイッチ制御部65は、第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61のいずれか一方にDEMクロックを出力してもよい。
第1バイアス切替回路41は、入力されたDEMクロックに従い、第1ホール素子対11と電流源との接続を切り替える。例えば、第1バイアス切替回路41は、第1ホール素子112と電流源Ibias1とを接続し、且つ、第2ホール素子114と電流源Ibias2とを接続する第1供給パスを有する。また、第1バイアス切替回路41は、第1ホール素子112と電流源Ibias2とを接続し、且つ、第2ホール素子114と電流源Ibias1とを接続する第2供給パスを有する。第1バイアス切替回路41は、第1供給パスと第2供給パスとをDEMクロックに従い切り替える。
第1Gmスイッチ回路61は、入力されたDEMクロックに従い、第1ホール素子対11と第1オペアンプ70との接続経路を切り替える。例えば、第1Gmスイッチ回路61は、第1カレントスイッチ31とトランスコンダクタ差動対Gm,1とを接続し、且つ、第2カレントスイッチ32とトランスコンダクタ差動対Gm,2とを接続する第1伝達パスを有する。また、第1Gmスイッチ回路61は、第1カレントスイッチ31とトランスコンダクタ差動対Gm,2とを接続し、且つ、第2カレントスイッチ32とトランスコンダクタ差動対Gm,1とを接続する第2伝達パスを有する。第1Gmスイッチ回路61は、第1伝達パスと第2伝達パスとをDEMクロックに従い切り替える。
例えば、第1スイッチ制御部65は、第1期間において、第1供給パス及び第1伝達パスを選択するように第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61を制御する。第1スイッチ制御部65は、第2期間において、第2供給パス及び第2伝達パスを選択するように第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61を制御する。また、第1スイッチ制御部65は、第3期間において、第1供給パス及び第1伝達パスを選択するように第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61を制御する。第1スイッチ制御部65は、第4期間において、第2供給パス及び第2伝達パスを選択するように第1バイアス切替回路41及び第1Gmスイッチ回路61を制御する。さらに、第1スイッチ制御部65は、第1期間及び第2期間におけるホール起電力信号Vsig(Hall,X2)の信号極性と、第3期間及び第4期間におけるホール起電力信号Vsig(Hall,X2)の信号極性とが異なるように第1極性切替回路51を制御する。
なお、第1スイッチ制御部65は、第1期間及び第2期間において磁場のX成分Hxを検出する場合、当該検出期間において、第1期間及び第2期間を少なくとも1周期含むことが好ましい。また、第1スイッチ制御部65は、第3期間及び第4期間において磁場のZ成分Hzを検出する場合、当該検出期間において、第3期間及び第4期間を少なくとも1周期含むことが好ましい。
本実施形態に係るXチャネル501は、電流源Ibias1と電流源Ibias2との間のミスマッチ、及び、トランスコンダクタ差動対Gm,1、Gm,2間のミスマッチを、DEMクロック位相Phi1、Phi2間で時間領域において平均化する。これにより、Xチャネル501は、第1ホール素子112と第2ホール素子114の間のミスマッチを時間平均としてゼロにした増幅信号Vamp,Xchを出力できる。
図10Bは、本実施形態に係るYチャネル502の構成の一例を示す。本例のYチャネル502は、第2バイアス切替回路42、第2Gmスイッチ回路62及び第2スイッチ制御部66をさらに備える。
第2スイッチ制御部66は、第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62を予め定められた周期でスイッチングさせる。例えば、第2スイッチ制御部66は、2相クロック(Phi1、Phi2)であるDEMクロックを第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62に出力する。また、第2スイッチ制御部66は、第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62のいずれか一方にDEMクロックを出力してもよい。なお、第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62には、第1スイッチ制御部65の出力するDEMクロックが入力されてもよい。
第2バイアス切替回路42は、入力されたDEMクロックに従い、第2ホール素子対12と電流源との接続を切り替える。例えば、第2バイアス切替回路42は、第3ホール素子122と電流源Ibias3とを接続し、且つ、第4ホール素子124と電流源Ibias4とを接続する第3供給パスを有する。また、第2バイアス切替回路42は、第3ホール素子122と電流源Ibias4とを接続し、且つ、第4ホール素子124と電流源Ibias3とを接続する第4供給パスを有する。第2バイアス切替回路42は、第3供給パスと第4供給パスとをDEMクロックに従い切り替える。
第2Gmスイッチ回路62は、第2ホール素子対12と第2オペアンプ75との接続経路を切り替える。例えば、第2Gmスイッチ回路62は、第3カレントスイッチ33とトランスコンダクタ差動対Gm,3とを接続し、且つ、第4カレントスイッチ34とトランスコンダクタ差動対Gm,4とを接続する第3伝達パスを有する。また、第2Gmスイッチ回路62は、第3カレントスイッチ33とトランスコンダクタ差動対Gm,4とを接続し、且つ、第4カレントスイッチ34とトランスコンダクタ差動対Gm,3とを接続する第4伝達パスとを有する。第2Gmスイッチ回路62は、第3伝達パスと第4伝達パスとをDEMクロックに従い切り替える。
例えば、第2スイッチ制御部66は、第1期間において、第3供給パス及び第3伝達パスを選択するように第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62を制御する。第2スイッチ制御部66は、第2期間において、第4供給パス及び第4伝達パスを選択するように第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62を制御する。また、第2スイッチ制御部66は、第3期間において、第3供給パス及び第3伝達パスを選択するように第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62を制御する。第2スイッチ制御部66は、第4期間において、第4供給パス及び第4伝達パスを選択するように第2バイアス切替回路42及び第2Gmスイッチ回路62を制御する。さらに、第2スイッチ制御部66は、第1期間及び第2期間におけるホール起電力信号Vsig(Hall,Y2)の信号極性と、第3期間及び第4期間におけるホール起電力信号Vsig(Hall,Y2)の信号極性とが異なるように第2極性切替回路52を制御する。
なお、第2スイッチ制御部66は、第1期間及び第2期間において磁場のY成分Hyを検出する場合、当該検出期間において、第1期間及び第2期間を少なくとも1周期含むことが好ましい。また、第2スイッチ制御部66は、第3期間及び第4期間において磁場のZ成分Hzを検出する場合、当該検出期間において、第3期間及び第4期間を少なくとも1周期含むことが好ましい。
本実施形態に係るYチャネル502は、電流源Ibias3と電流源Ibias4との間のミスマッチ、及び、トランスコンダクタ差動対Gm,3、Gm,4間のミスマッチを、DEMクロック位相Phi1、Phi2間で時間領域において平均化する。これにより、Yチャネル502は、第3ホール素子122と第4ホール素子124の間のミスマッチを時間平均としてゼロにした増幅信号Vamp,Ychを出力できる。
図11は、第1信号出力部201及び第2信号出力部202の信号処理の一例を示す。第1信号出力部201は、第1復調回路90、第1AD変換回路91、Vxレジスタ92及びVzレジスタ93を備える。第2信号出力部202は、第2復調回路95、第2AD変換回路96及びVyレジスタ97を備える。
増幅信号Vamp,Xch及び増幅信号Vamp,Ychは、スピニングカレント駆動により、スピニングカレントクロック周波数f_chopにチョッパー変調される。増幅信号Vamp,Xch及び増幅信号Vamp,Ychは、第1復調回路90及び第2復調回路95にそれぞれ入力される。
第1復調回路90は、入力された増幅信号Vamp,Xchを、復調信号Vdmod,Xchに復調する。本明細書において、復調とは、スピニングカレントクロック周波数f_chopにチョッパー変調された信号をベースバンドに戻すことを指す。第1復調回路90は、スピニングカレントクロック周波数f_chopで、増幅信号Vamp,Xchの信号極性を反転させる。第1復調回路90は、復調信号Vdmod,Xchを第1AD変換回路91に出力する。なお、復調信号Vdmod,Xchは、第1AD変換回路91に入力される前に、アンチエイリアシングフィルターによって、オフセット信号Vosが除去される。例えば、アンチエイリアシングフィルターは、ローパスフィルタ―である。
第1AD変換回路91は、入力された復調信号Vdmod,Xchをデジタル信号に変換する。第1AD変換回路91は、デジタル信号としてADC(Vdmod,Xch)をVxレジスタ92及びVzレジスタ93に出力する。
Vxレジスタ92は、デジタル信号ADC(Vdmod,Xch)に基づいて、磁場のX成分Hxに関する信号を格納する。また、Vzレジスタ93は、デジタル信号ADC(Vdmod,Xch)に基づいて、磁場のZ成分Hzを格納する。つまり、Vxレジスタ92及びVzレジスタ93は、第1信号出力部201の時分割処理に応じて、Vxレジスタ92又はVzレジスタ93に格納する。
第2復調回路95は、入力された増幅信号Vamp,Ychを、復調信号Vdmod,Ychに復調する。即ち、第2復調回路95は、スピニングカレントクロック周波数f_chopで、増幅信号Vamp,Ychの信号極性を反転させる。第2復調回路95は、復調信号Vdmod,Ychを第2AD変換回路96に出力する。なお、復調信号Vdmod,Ychは、第2AD変換回路96に入力される前に、アンチエイリアシングフィルターによって、オフセット信号Vosが除去される。
第2AD変換回路96は、入力された復調信号Vdmod,Ychをデジタル信号に変換する。第2AD変換回路96は、デジタル信号としてADC(Vdmod,Ych)をVyレジスタ97に出力する。
Vyレジスタ97は、デジタル信号ADC(Vdmod,Ych)に基づいて、磁場のY成分Hyに関する信号を格納する。また、第2信号出力部202は、Vzレジスタ93を備えてもよい。この場合、第1信号出力部201は、Vzレジスタ93を備えなくてよい。即ち、第1信号出力部201及び第2信号出力部202のいずれか一方がVzレジスタ93を備えればよい。
図12は、Xチャネル501における磁場検出動作の一例を示す。Xチャネル501は、磁場のX成分Hxの検出動作と、磁場のZ成分Hzの検出動作とを時分割方式によって実行する。本例では、XチャネルX成分信号Vx,Xchの検出動作の間に、NサイクルのDEMを行う。また、XチャネルZ成分信号Vz,Xchの検出動作の間も同様に、NサイクルのDEMを行う。各サイクルは、2サイクル以上であることが好ましい。
DEMクロック位相=Phi1において、第1バイアス切替回路41は、第1ホール素子112と電流源Ibias1とを接続し、第2ホール素子114とIbias2とを接続する。第1Gmスイッチ回路61は、第1ホール素子112とトランスコンダクタ差動対Gm,1を接続し、第2ホール素子114と差動対Gm,2を接続する。
DEMクロック位相=Phi2において、第1バイアス切替回路41は、第1ホール素子112とIbias2を接続し、第2ホール素子114とIbias1を接続する。第1Gmスイッチ回路61は、第1ホール素子112とトランスコンダクタ差動対Gm,2を接続し、第2ホール素子114とトランスコンダクタ差動対Gm,1を接続する。
XチャネルX成分信号Vx,Xchの検出期間では、(数13)式を用いてXチャネルX成分信号Vx,Xchを検出する。例えば、XチャネルX成分信号Vx,Xchの検出は、電流信号Isig(Hall,X1)と電流信号Isig(Hall,X2)の絶対値の差分をとることにより実現される。XチャネルX成分信号Vx,Xchの検出期間が経過し、XチャネルX成分信号Vx,Xchが取得されると、Vxレジスタ92に最新のXチャネルX成分信号Vx,Xchの値が格納される。
XチャネルZ成分信号Vz,Xchの検出期間では、(数14)式を用いてXチャネルZ成分信号Vz,Xchを検出する。例えば、XチャネルX成分信号Vz,Xchの検出は、電流信号Isig(Hall,X1)と電流信号Isig(Hall,X2)の絶対値の和をとることにより実現される。XチャネルZ成分信号Vz,Xchの検出期間が経過し、XチャネルZ成分信号Vz,Xchが取得されると、Vzレジスタ93に最新のXチャネルZ成分信号Vz,Xchの値が格納される。
このように、XチャネルX成分信号Vx,Xchの検出期間と、XチャネルZ成分信号Vz,Xchの検出期間を繰り返すことにより、Vxレジスタ92とVzレジスタ93に格納された値を随時更新する。
図13は、スピニングカレント法による信号処理動作の一例を示す。より具体的には、スピニングカレント駆動及びDEM動作を同時に行う場合の、Xチャネル501における増幅信号Vamp,Xch及び復調信号Vdmod,Xchを示す。本例では、スピニングカレントクロック周波数f_chopとDEMクロック周波数f_demとの間に、f_chop=2×f_demという関係がある。
増幅信号Vamp,Xchは、ホール起電力信号Vsig,Xch及びオフセット信号Vosを含む。増幅信号Vamp,Xchのオフセット信号Vosの成分を片矢印で示し、ホール起電力信号Vsig,Xchの成分を両矢印で示す。増幅信号Vamp,Xchは、オフセット信号Vosを中心として、ホール起電力信号Vsig,Xchが、スピニングカレントクロック周波数f_chopにより振動した信号である。
ホール起電力信号Vsig,Xchは、スピニングカレントクロック周波数f_chop及びDEMクロック周波数f_demにより変調されている。ホール起電力信号Vsig,Xchは、DEMクロック位相Phi1において、スピニングカレントクロック位相φ1、φ2にそれぞれ対応したホール起電力信号Vsig,Xch(φ1、Phi1)、(φ2、Phi1)を含む。また、ホール起電力信号Vsig,Xchは、DEMクロック位相Phi2において、スピニングカレントクロック位相φ1、φ2にそれぞれ対応したホール起電力信号Vsig,Xch(φ1、Phi2)、(φ2、Phi2)を含む。増幅信号Vamp,Xchにおいて、ホール起電力信号Vsig,Xchはスピニングカレントクロック周波数f_chopで振動し、オフセット信号VosはDC成分の信号である。
復調信号Vdmod,Xchは、増幅信号Vamp,Xchを、スピニングカレントクロック位相φ2において信号の極性を反転することにより得られる。復調信号Vdmod,Xchのオフセット信号Vosの成分を片矢印で示し、ホール起電力信号Vsig,Xchの成分を両矢印で示す。復調信号Vdmod,Xchの極性は、スピニングカレントクロック周波数f_chopに応じて反転される。復調信号Vdmod,Xchにおいて、ホール起電力信号Vsig,Xchの信号振幅は、DEMクロック周波数f_demで振動し、オフセット信号Vosの極性は、スピニングカレントクロック周波数f_chopで振動する。
図14は、増幅信号Vamp,Xchのスペクトルの一例を示す。増幅信号Vamp,Xchは、ホール起電力信号Vsig,Xchの成分及びオフセット信号Vosの成分を含む。Yチャネル502の増幅信号Vamp,Ychに関しても同様に考えられる。
増幅信号Vamp,Xchにおいて、ホール起電力信号Vsig,Xchは、スピニングカレントクロック周波数f_chopでの変調に加えて、DEMクロック周波数f_demでの変調を受ける。そのため、ホール起電力信号Vsig,Xchは、周波数軸上において、スピニングカレントクロック周波数f_chopに加えて、スピニングカレントクロック周波数f_chopから±f_demだけ離れた周波数位置にも集中したスペクトルを有する。一方、オフセット信号Vosは、ベースバンドに集中したスペクトルを有する。
図15は、復調信号Vdmod,Xchのスペクトルの一例を示す。復調信号Vdmod,Xchは、ホール起電力信号Vsig,Xchの成分及びオフセット信号Vosの成分を含む。Yチャネル502の復調信号Vdmod,Ychに関しても同様に考えられる。
復調信号Vdmod,Xchのホール起電力信号成分は、復調されてベースバンドに集中したスペクトルを有する。一方、復調信号Vdmod,Xchのオフセット信号Vosは、スピニングカレントクロック周波数f_chopでの変調に加えて、DEMクロック周波数f_demでの変調を受ける。そのため、オフセット信号Vosは、周波数軸上において、スピニングカレントクロック周波数f_chopに加えて、スピニングカレントクロック周波数f_chopから±f_demだけ離れた周波数位置にも集中したスペクトルを有する。ここで、復調信号Vdmod,Xchのホール起電力信号成分を検出するためには、アンチエイリアシングフィルターによって、オフセット信号Vosの成分をホール起電力信号成分から分離する必要がある。
破線は、アンチエイリアシングフィルターの伝達特性を示す。アンチエイリアシングフィルターの帯域は、BW_lpfである。ここで、アンチエイリアシングフィルターの帯域BW_lpfとは、フィルターゲインが3dB低下する周波数を指す。アンチエイリアシングフィルターによって、オフセット信号Vosを分離するためには、以下の式が成り立つように、スピニングカレント駆動クロック周波数f_chopとDEMクロック周波数f_demを選択する必要がある。
なお、f_chop=f_demのように(数31)式を満たさない場合、オフセット信号Vosが変調された成分の一部が、ホール起電力信号成分と同じベースバンド帯域に混入する。同様に、f_chop≒f_demとなってしまった場合には、アンチエイリアシングフィルターの帯域内部にオフセット成分が混入する。このような場合、オフセット成分をアンチエイリアシングフィルターによって十分に低減できない。したがって、(数31)式が成り立たない場合、スピニングカレント駆動によるオフセット低減効果が十分に得られない。
以上の通り、本例の磁気センサ500は、3D磁気センサにおけるZ軸とX軸の間の他軸感度、及び、Z軸とY軸の間の他軸感度を低減できる。本例の磁気センサ500は、動的なマッチング実現手段DEMを用いるので、環境温度が変動しても、良好なマッチングを維持できる。また、磁気センサ500は、プラスチックパッケージにおいて、吸湿等によるパッケージ応力変動が生じても良好なマッチングを維持できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。