<電力線通信システム>
図1は、電力線通信システムの一構成例を示すブロック図である。本構成例の電力線通信システム100は、電力線110と、PLCアダプタ120及び130と、ルータ140と、パーソナルコンピュータ150と、家電機器160と、照明機器170を有する。
電力線110は、宅内や施設内などに引き込まれている商用交流電力線(AC100V/AC200V)である。電力線110は、宅内の分電盤から各居室へ敷設されている。
PLCアダプタ120は、電力線110を介して種々のターミナル端末(PLCアダプタ130、家電機器160、及び、照明機器170など)と相互通信を行うマスター端末(親機)である。なお、マスター端末となるPLCアダプタ120には、ルータ140が接続される。ただし、PLCアダプタ120がルータ機能を備えている場合には、ルータ140を省略することができる。
PLCアダプタ130は、電力線110を介してPLCアダプタ120との相互通信を行うターミナル端末(子機)の一つである。なお、本図の例では、1台のPLCアダプタ130に対して1台のパーソナルコンピュータ150のみが接続されている。ただし、PLCアダプタ130の接続ポート数はこれに限定されるものではなく、例えば、マルチポートのPLCアダプタ130を用いれば、1台のPLCアダプタ130に対して複数台の有線ネットワーク対応機器(パーソナルコンピュータ、ネットワークプリンタ、テレビ、及び、ビデオ録画再生機など)を接続することも可能である。
ルータ140は、LAN[local area network]とWAN[wide area network]との間でデータを中継するための通信機器である。ルータ140のLANポートには、PLCアダプタ120が接続されており、ルータ140のWANポートには、広域通信網180(インターネットなど)が接続されている。
パーソナルコンピュータ150は、PLCアダプタ130を介して電力線通信を行うハードウェアの一つである。パーソナルコンピュータ150を用いれば、ウェブサイトの閲覧や電子メールの送受信はもちろん、家電機器160や照明機器170の動作制御などを行うことも可能となる。
家電機器160は、電力線110を介してPLCアダプタ120との相互通信を行うターミナル端末(子機)の一つであり、PLCベースバンドLSI161と、ユーザインタフェイス162と、ホストCPU[central processing unit]163と、を含む。家電機器160としては、空気調和機、洗濯機、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジなどのいわゆる白物家電を挙げることができる。
PLCベースバンドLSI161は、家電機器160の一部として機能する電力線通信装置であり、所定の電力線通信規格に準拠した半導体装置として集積化されている。PLCベースバンドLSI161を搭載した家電機器160は、機器本来の機能に加えて電力線通信機能を獲得する。
ユーザインタフェイス162は、ユーザ操作を受け付けたり、家電機器160の動作状態をユーザに報知したりするためのフロントエンドである。ユーザインタフェイス162には、ボタン、スイッチ、タッチパネル、及び、リモコンなどの入力部と、インジケータランプ、液晶表示パネル、スピーカ、及び、ブザーなどの出力部が含まれている。
ホストCPU163は、ユーザインタフェイス162で受け付けられたユーザ操作や、パーソナルコンピュータ150や広域通信網180から電力線110を介して伝達された遠隔制御命令に応じて、家電機器160の動作制御を行う。例えば、家電機器160が空気調和機である場合には、運転のオン/オフ、運転モード(冷房/暖房)の切替、目標温度の設定、及び、風量や風向きの調整などがホストCPU163によって制御される。
照明機器170は、電力線110を介してPLCアダプタ120との相互通信を行うターミナル端末(子機)の一つであり、PLCベースバンドLSI171と、LED[light emitting diode]ドライバLSI172と、LED光源173と、を含む。照明機器170としては、LEDシーリングライト、LEDダウンライト、及び、LEDスポットライトなどを挙げることができる。
PLCベースバンドLSI171は、照明機器170の一部として機能する電力線通信装置であり、所定の電力線通信規格に準拠した半導体装置として集積化されている。PLCベースバンドLSI171を搭載した照明機器170は、機器本来の照明機能に加えて電力線通信機能を獲得する。
LEDドライバLSI172は、LED173の駆動電流を生成することにより、LED173の発光駆動制御を行う。特に、LEDドライバLSI172は、パーソナルコンピュータ150や広域通信網180から電力線110を介して伝達された遠隔制御命令に応じて、LED173の点消灯制御、調光制御(輝度制御)、ないしは、調色制御を行う機能を備えている。
LED光源173は、LEDドライバLSI172から駆動電流の供給を受けて、例えば、昼光色(色温度6700K)、昼白色(色温度5000K)、白色(色温度4200K)、温白色(色温度3500K)、若しくは、電球色(色温度3000K)の光を発する。LED光源173は、単一のLED素子、若しくは、直列ないしは並列に接続された複数のLED素子を発光素子として含む。ただし、発光素子はLED素子に限定されるものではなく、有機EL素子などを用いても構わない。
上記の電力線通信システム100を構築することにより、LANケーブルを不必要に引き回すことなく、異なる居室に設置された複数の端末間(例えばパーソナルコンピュータ150と家電機器160または照明機器170との間)で、双方向の有線通信(電力線通信)を行うことが可能となる。
<電力線通信装置>
図2は、電力線通信装置の一構成例を示すブロック図である。本構成例の電力線通信装置200は、図1のPLCベースバンドLSI161または171、若しくは、PLCアダプタ130に相当するものであり、マイコン201と、ROM[read only memory]202と、RAM[random access memory]203と、割込制御回路204と、PLC制御回路205と、送信DAC[digital-to-analogue convertor]回路206と、受信ADC[analogue-to-digital convertor]回路207と、汎用入出力回路208と、PWM[pulse width modulation]出力回路209と、パワーオンリセット回路210と、第1発振回路211と、第2発振回路212と、タイマ回路213と、バス214とを含む。
マイコン201は、メインクロックMCLKの入力を受けて動作し、電力線通信装置200の動作を統括的に制御する。
ROM202は、マイコン201で実行されるプログラムなどを不揮発的に格納する。プログラムの記憶手段としては、データの書き換えが可能なEEPROM[electrically erasable programmable ROM]やフラッシュメモリなどを用いても構わない。
RAM203は、マイコン201の作業領域として使用される揮発性記憶手段である。
割込制御回路204は、例えば、間欠サーチモード(詳細は後述)でのスリープ復帰時において、第1発振回路211を再起動させるための割り込み信号を生成する。
PLC制御回路205は、電力線通信規格に準拠したPLC_PHYレイヤ及びPLC_MACレイヤなどから構成されており、デジタル送信信号の変調処理やデジタル受信信号の復調処理などを行う。
送信DAC回路206は、PLC制御回路205から入力されるデジタル送信信号をアナログ送信信号に変換して電力線に出力する。
受信ADC回路207は、電力線から入力されるアナログ受信信号をデジタル受信信号に変換してPLC制御回路205に出力する。
汎用入出力回路208は、装置外部との双方向通信を行うための外部インタフェイスである。例えば、電力線通信装置200を図1のPLCベースバンドLSI171として用いた場合、汎用入出力回路208からLEDドライバLSI172に対してLED光源173の点消灯信号などを出力することができる。
PWM出力回路209は、装置外部にPWM信号を出力するための外部インタフェイスである。例えば、電力線通信装置200を図1のPLCベースバンドLSI171として用いた場合、PWM出力回路209からLEDドライバLSI172に対してLED光源173のPWM調光信号(輝度制御信号)などを出力することができる。
パワーオンリセット回路210は、電力線通信装置200への電源投入時に装置各部を初期化するためのリセット信号を生成する。
第1発振回路211は、第1周波数f1(例えばf1=1〜20MHz)のメインクロックMCLKを生成する。なお、第1発振回路211は、電力線通信装置200が間欠サーチモード(詳細は後述)に移行し、受信待機状態からスリープ状態へ切り替わる度に、その発振動作を一時停止する。
第2発振回路212は、第2周波数f2(f2<f1、例えばf2=32kHz)のサブクロックSCLKを生成する。なお、第2発振回路211は、電力線通信装置200の動作状態に依ることなく、その発振動作を常時継続する。
タイマ回路213は、電力線通信装置200が間欠サーチモード(詳細は後述)に移行し、受信待機状態からスリープ状態へ切り替わる度に、サブクロックSCLKのパルス数をカウントして、スリープ復帰タイミングを割込制御回路204に報知する。
バス214は、電力線通信装置200の各回路要素間における双方向通信を行うための共通信号経路である。
<手動ペアリング動作>
図3は、マスター端末300とターミナル端末400との間における手動ペアリング動作の一例を示すシーケンス図である。なお、マスター端末300は、図1のPLCアダプタ120に相当する。一方、ターミナル端末400は、図1の家電機器160やPLCアダプタ130など(ユーザインタフェイスを備えた機器)に相当する。
ターミナル端末400は、自身のペアリング実行ボタンが押下されたことを受けて、マスター端末300とのペアリングを確立するための接続シーケンスを開始する。より具体的に述べると、ターミナル端末400は、ペアリング開始ボタンの押下をトリガとして、リクエスト信号(register_REQ)の送信を開始する。リクエスト信号(register_REQ)の送信動作は、マスター端末300からレスポンス信号(register_RES)の返信を受け取るまで最大5分間に亘り継続される。
マスター端末300は、ターミナル端末400からリクエスト信号(register_REQ)を受信している期間中に自身のペアリング実行ボタンが押下されたことを受けて、ターミナル端末400にレスポンス信号(register_RES)を送信する。
ターミナル端末400は、マスター端末300からレスポンス信号(register_RES)が返信されたことを受けて、所定のアルゴリズムでPSK[pre-shared key]を生成し、その後、マスター端末300にアクノリッジ信号(register_RES_ACK)を送信する。
マスター端末300は、ターミナル端末400からアクノリッジ信号(register_RES_ACK)が返信されたことを受けて、所定のアルゴリズムでPSKを生成する。
上記一連の接続シーケンスを経て、マスター端末300とターミナル端末400の双方で一対のPSKが生成されることにより、両者の相互認証が完了し、マスター端末300とターミナル端末400とのペアリングが確立される。
なお、マスター端末300とターミナル端末400との間で一度ペアリングが確立されると、以後、意図的にペアリングを解消しない限り、両者のペアリングが解消されることはない。従って、例えば、ターミナル端末400の主電源をオフしても、次にターミナル端末400の主電源をオンした時点で、上記の接続シーケンスを経ることなく、速やかにマスター端末300との相互認証が完了する。
ただし、上記の手動ペアリング動作を実現するためには、マスター端末300とターミナル端末400の双方に、ペアリング実行ボタンなどのユーザインタフェイスを設けておく必要がある。なお、ターミナル端末400にホストCPUが設けられている場合には、ホストCPUからPLCベースバンドLSIを制御することにより、ユーザインタフェイスがなくても、マスター機器300とのペアリング動作を開始させることが可能である。
しかしながら、例えば、図1の照明機器170のように、ユーザインタフェイスもホストCPUも備えていない機器をターミナル端末400としたい場合には、上記したペアリング実行ボタンの押下やホストCPUからの制御命令に代えて、別途新たなペアリング開始トリガを用意してやる必要がある。
以下では、ユーザインタフェイスやホストCPUを備えていない機器にも適用することが可能な自動ペアリング動作について詳細な説明を行う。
<自動ペアリング動作>
図4は、マスター端末300とターミナル端末500との間における自動ペアリング動作の一例を示すシーケンス図である。なお、マスター端末300は、図1のPLCアダプタ120に相当する。一方、ターミナル端末500は、図1の照明機器170など(ユーザインタフェイスやホストCPUを備えていない機器)に相当する。ターミナル端末500には、図2の電力線通信装置200(PLCベースバンドLSI)が搭載されている。
マスター端末300は、電力線に対してビーコン(BCN)を定期的に送信している。このビーコン(BCN)は、マスター端末300との間でペアリングが確立しているか否かを問わず、電力線に接続されている全てのターミナル端末で受信することが可能である。
そこで、ターミナル端末500(延いては、これに搭載された電力線通信装置200)は、電力線を介してビーコン(BCN)を受信したときに、先述の接続シーケンス(リクエスト信号(register_REQ)の送信)を開始する。すなわち、本図の自動ペアリング動作では、ビーコン(BCN)の受信がペアリング開始トリガとして流用されている。なお、ペアリング開始トリガが異なる以外、接続シーケンス自体は、先の図3と変わりがないので、重複した説明は割愛する。
このような自動ペアリング動作を採用することにより、ユーザインタフェイスやホストCPUを備えていない機器であっても、これを電力線に接続して電源を投入するだけで、マスター機器300とのペアリング動作を自動的に開始することが可能となる。
<ペアリング解消動作/再ペアリング動作>
図5は、マスター端末300aとターミナル端末500との間におけるペアリング解消動作、並びに、マスター端末300bとターミナル端末500との間における再ペアリング動作の一例を示すシーケンス図である。本図において、マスター端末300aは、ターミナル端末500と既にペアリングが確立されているマスター端末である。一方、マスター端末300bは、ターミナル端末500と新たにペアリングを確立しようとしている別のマスター端末である。
先にも述べたように、ターミナル端末500には何らユーザインタフェイス(ペアリング解消ボタンなど)が設けられていない。従って、マスター端末300aとターミナル端末500とのペアリングを解消するためには、ペアリング解消ボタンなどの押下に代えて別途新たなペアリング解消トリガを用意してやる必要がある。
そこで、ターミナル端末500(延いては、これに搭載された電力線通信装置200)は、電力線を介してリセットコマンドを受信したときに、マスター端末300aと確立されている現在のペアリング状態を解消する。なお、上記のリセットコマンドは、例えば、HTTP[hypertext transfer protocol]に準拠したコマンドであり、LAN内に存在するパーソナルコンピュータ600からターミナル端末500に対して送信される。ただし、リセットコマンドは、シリアルインターフェイス等を介して受信してもよい。また、ペアリング解消ボタンを設けることができるのであれば、その押下をペアリング解消トリガとすればよい。
このようなペアリング解消動作により、ターミナル端末500が初期状態(いずれのマスター端末300a及び300bともペアリングされていない状態)に戻ると、先の図4で説明した自動ペアリング動作を行うべく、ターミナル端末500は、ビーコン(BCN)の受信待機状態となる。
そして、ターミナル端末500は、電力線を介してビーコン(BCN)を受信したときに先述の接続シーケンス(リクエスト信号(register_REQ)の送信)を開始する。なお、ターミナル端末500で受信されるビーコン(BCN)は、あくまで自動ペアリング動作の開始トリガに過ぎず、その送信元は不問である。すなわち、ビーコン(BCN)は、新たにペアリングを確立しようとしているマスター端末300bから送信されたものであってもよいし、リセットコマンドに応じてペアリングが解消されたマスター端末300bから送信されたものであってもよい。
その後、ターミナル端末500からリクエスト信号(register_REQ)が送信されている期間中にマスター端末300bのペアリング実行ボタンが押下されると、先に説明した一連の接続シーケンスが進められて、マスター端末300bとターミナル端末500との再ペアリングが完了する。
<フローチャート>
図6は、自動ペアリング動作の第1例を示すフローチャートである。なお、本フローの動作主体は、基本的に、ターミナル端末に設けられた電力線通信装置(PLCブロードバンドLSI)である。後出の図7〜図10についても同様である。
本フローが開始されると、ステップS10において、ターミナル端末のペアリング状態がチェックされ、その後、フローがステップS11に進められる。ステップS11において、ターミナル端末がペアリング済みであると判定された場合には、フローがステップS10に戻される。
このように、ターミナル端末が一旦ペアリング済みになると、以後、ターミナル端末のペアリングが解消されるまで、ステップS10とステップS11とが繰り返される。すなわち、ターミナル端末は、既にマスター端末とペアリング済みであるときには、ビーコンの受信有無に関わらず(そのチェックすらせずに)、現在のペアリング状態を維持する。
一方、ステップS11において、ターミナル端末がペアリング済みでないと判定された場合には、フローがステップS12に進められる。ステップS12では、ビーコンの受信有無がチェックされ、その後、フローがステップS13に進められる。
ステップS13において、ビーコンが受信されていないと判定された場合には、フローがステップS10に戻される。一方、ステップS13において、ビーコンが受信されたと判定された場合には、フローがステップS14に進められる。
ステップS14では、図4で説明した一連の接続シーケンスが実行される。マスター端末とターミナル端末との相互認証完了、若しくは、リクエスト信号(register_REQ)の送信タイムアップにより、この接続シーケンスが終了すると、フローがステップS10に戻される。以後、上記一連のフローが繰り返される。
なお、ステップS10及びS11をステップS13とステップS14との間に移し、ステップS11でのイエス判定時には、ステップS14への移行を禁止するようにフローを変形してもよい。このような変形を行った場合、ターミナル端末は、ビーコンの受信有無を逐次チェックするものの、あるマスター端末とペアリング済みであるときには、そのチェック結果に関わらず、現在のペアリング状態を維持するようになる。
図7は、ステップS14における接続シーケンスの一例を示すフローチャートであり、図4のシーケンス図のうち、ターミナル端末により実行されるステップをフローチャートとして書き直したものである。
本図の接続シーケンスが開始されると、ステップS14−1において、リクエスト信号(register_REQ)が送信された後、フローがステップS14−2に進められる。ステップS14−2では、レスポンス信号(register_RES)を受信したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS14−3に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS14−5に進められる。
ステップS14−2でイエス判定が下された場合、ステップS14−3でPSKの生成が行われ、続くステップS14−4でアクノリッジ信号(register_RES_ACK)の送信が行われた後に、一連の接続シーケンスが終了する。
一方、ステップS14−2でノー判定が下された場合、ステップS14−4では、接続シーケンスを開始してから所定時間Tx(例えば5分)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、リクエスト信号(register_REQ)の送信タイムアップにより、一連の接続シーケンスが終了される。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS14−1に戻される。
図8は、自動ペアリング動作の第2例を示すフローチャートである。本フローチャートは、先述の第1例(図6)をベースとする内容であり、ステップS15及びS16が追加されている点に特徴を有する。そこで、先述の第1例と同様のステップについては、図6と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2例の特徴部分について重点的な説明を行う。
ステップS11でターミナル端末がペアリング済みであると判定された場合、フローはすぐにステップS10に戻されるのではなく、ステップS15に進められる。ステップS15では、受信されたビーコンの送信元がチェックされ、その後、フローがステップS16に進められる。なお、送信元のチェックは、ビーコンに含まれているマスター端末のID情報を確認することにより実施される。
ステップS16では、ビーコンの送信元が現在ペアリング済みのマスター端末とは異なる別のマスター端末であるか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS14に進められて、先述の接続シーケンスが開始される。一方、ノー判定が下された場合にはフローがステップS10に戻される。
すなわち、ターミナル端末は、あるマスター端末(旧マスター端末と呼ぶ)とペアリング済みであっても、異なるマスター端末(新マスター端末と呼ぶ)からのビーコンを受信したときには、新マスター端末とのペアリングをユーザが期待している可能性が高いことに鑑み、先述の接続シーケンスを開始する。
このような自動ペアリング動作によれば、ターミナル端末がリクエスト信号(register_REQ)を送信している期間内に、新マスター端末のペアリング実行ボタンを押下することにより、旧マスター端末とターミナル端末とのペアリングを解消し、新マスター端末とターミナル端末との再ペアリングを実施することができる。一方、新マスター端末のペアリング実行ボタンが押下されなければ、旧マスター端末とターミナル端末とのペアリングが維持される。従って、ターミナル端末のペアリング先を変更するに際して、先出の図5で説明したリセット動作(ペアリング解消動作)が不要となる。
なお、本フローを採用した場合には、複数のマスター端末が電力線に接続されている限り、先述の接続シーケンスが定期的(或いは継続的)に実施されることになる。ただし、既に説明したように、接続シーケンス中に新マスター端末でペアリング実行ボタンが押下されない限り、旧マスター端末とターミナル端末とのペアリングが解消されることはないので、特段の支障は生じないと考えられる。
また、ステップS16からステップS14へ進んだ結果、接続シーケンスが開始されたものの新マスター端末とのペアリングが確立されなかった場合には、その履歴を記憶しておき、以降、当該履歴に該当するマスター端末がビーコンの送信元であったときには、ステップS16にてノー判定を下すように構成してもよい。このような構成とすることにより、不必要に接続シーケンスが開始されなくなる。
図9は、自動ペアリング動作の第3例を示すフローチャートである。本フローが開始されると、ステップS20において、ビーコンの受信状態(例えば、送信元の異なるビーコンの受信本数)がチェックされ、その後、フローがステップS21に進められる。ステップS21では、ビーコンの受信状態が変化したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS22に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS23に進められる。
ステップS21でイエス判定が下された場合、ステップS22で接続シーケンス(リクエスト信号(register_REQ)の送信)が開始された後、フローがステップS20に戻される。すなわち、ターミナル端末は、電力線を介して受信されるビーコンの受信状態が変化したときに、マスター端末とのペアリングを確立するための接続シーケンスを開始する。
一方、ステップS21でノー判定が下された場合、ステップS23では、ビーコンの受信状態が最後に変化してから所定時間Tx(例えば5分)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS24に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS20に戻される。
ステップS23でイエス判定が下された場合、ステップS24では、ステップS22で開始された接続シーケンスが実行中であるか否か(マスター端末との相互認証が未完了であるか否か)の判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS25に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS20に戻される。
ステップS24でイエス判定が下された場合、ステップS25では接続シーケンスの停止処理が行われ、その後、フローがステップS20に戻される。このように、ターミナル端末は、ビーコンの受信状態が最後に変化してから所定時間Txが経過しても接続シーケンスが実行中であるときには、その接続シーケンスを停止する。
以下、具体例を挙げながら、本フローチャートの動作を説明する。例えば、ターミナル端末の初回ペアリング時において、初めてマスター端末からのビーコンを受信したときには、ビーコンの受信本数が0本(初期値)から1本に変化する。従って、ステップS21ではイエス判定が下されるので、ステップS22で接続シーケンスが開始される。その結果、マスター端末のペアリング実行ボタンを押下することにより、マスター端末とターミナル端末とのペアリングが確立される。
その後、電力線に新マスター端末が接続されない限り、ビーコンの受信本数は1本のまま変化しない。従って、ビーコンの受信本数が1本に変化してから所定時間Txが経過するまでは、ステップS20、ステップS21のノー判定、及び、ステップS23のノー判定を経てフローがループする。また、ビーコンの受信本数が1本に変化してから所定時間Txが経過した後は、ステップS20、ステップS21のノー判定、ステップS23のイエス判定、及び、ステップS24のノー判定を経てフローがループする。
一方、旧マスター端末とのペアリングが確立されてから、電力線に新マスター端末が接続された場合には、ビーコンの受信本数が1本から2本に変化する。従って、ステップS21ではイエス判定が下されて、ステップS22で接続シーケンスが開始される。
このとき、ビーコンの受信本数が2本に変化してから所定時間Txが経過するまでは、ステップS20、ステップS21のノー判定、及び、ステップS23のノー判定を経てフローがループする。また、ビーコンの受信本数が2本に変化してから所定時間Txが経過した時点で接続シーケンスが終了している場合(新マスター端末とのペアリングが確立されている場合)には、ステップS20、ステップS21のノー判定、ステップS23のイエス判定、及び、ステップS24のノー判定を経てフローがループする。
ただし、ビーコンの受信本数が2本に変化してから所定時間Txが経過した時点で接続シーケンスが終了していない場合(新マスター端末とのペアリングが確立されていない場合)には、ステップS24でイエス判定が下されるので、ステップS25で接続シーケンスが停止される。
すなわち、ビーコン受信状態の変化を受けて接続シーケンスを開始したものの、新マスター端末のペアリング実行ボタンが押下されないまま所定時間Txが経過した場合には、接続シーケンスが停止される。
このように、ターミナル端末は、ビーコンの受信状態が変化したときには、ネットワーク環境の変化を伴うことから、新マスター端末とのペアリングをユーザが期待している可能性が高いことに鑑み、初回ペアリング時以外にも、先述の接続シーケンスを開始する。
なお、本フローでは、ビーコンの受信本数を監視してビーコンの受信状態が変化したか否かを判定する構成を例に挙げたが、監視対象は何らこれに限定されるものではなく、例えば、ビーコンの受信本数が変わらなくても、ビーコンの送信元データを監視してビーコンの受信状態が変化したか否かを判定することも可能である。
図10は、自動ペアリング動作の第4例を示すフローチャートである。ターミナル端末への電源投入によって本フローが開始されると、ステップS30では、パワーオンリセット後に、マスター端末とのペアリングを確立するための接続シーケンス(リクエスト信号(register_REQ)の送信)を開始する。
その後、ステップS31において、ターミナル端末のペアリング状態がチェックされ、フローがステップS32に進められる。ステップS32において、ターミナル端末がペアリング済みであると判定された場合にはフローが終了する。このように、ターミナル端末が一旦ペアリング済みになると、以後、ターミナル端末のペアリングが解消されるまで、接続シーケンスを開始することなく、現在のペアリング状態を維持する。
ステップS32において、ターミナル端末がペアリング済みではないと判定された場合には、フローがステップS33に進められ、接続シーケンスの開始から所定時間Tx(例えば5分)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS34に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS31に戻される。
ステップS33でイエス判定が下された場合、ステップS34では、接続シーケンスの停止処理が行われる。このように、ターミナル端末は、接続シーケンスの開始から所定時間Txが経過してもペアリングが確立していないときには、実行中の接続シーケンスを一旦停止する。
その後、ステップS35では、接続シーケンスが停止されてから所定時間Ty(例えば1時間)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS30に戻されて、先述の接続シーケンスが再開される。一方、ノー判定が下された場合にはフローがステップS35に戻されて、所定時間Tyのカウント動作が継続される。
このような自動ペアリング動作によれば、ターミナル端末が未ペアリング状態である限り、ビーコンの監視を要することなく、定期的にマスター端末とのペアリングを試行することが可能となる。
<マスターサーチ動作>
図11は、マスターサーチ動作の第1例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、ビーコンBCNの受信状態とターミナル端末の動作状態が描写されている。
マスター端末とのペアリングが確立されたターミナル端末は、マスター端末から定期的に送信されるビーコンBCN(例えば数百μs幅)を受信して電力線通信のタイミング制御等を行う。特に、ターミナル端末は、マスター端末からのビーコンBCNが定期的に受信されているときには、ビーコンBCNの送信周期Ta(例えば50ms、100ms、120ms)に合わせて、所定時間Tb(=Ta−Tc)に亘るスリープ状態(SLP)と、少なくとも所定時間Tc(例えば最短5ms)に亘る受信待機状態(STBY)と、を繰り返す間欠受信モードとなる。
例えば、本図の時刻t11〜t12、ないしは、時刻t13〜t14において、ターミナル端末は、マスター端末がビーコンBCNを送信する直前にスリープ状態(SLP)から受信待機状態(STBY)への復帰を行い、受信したビーコンBCNにデータパケットが続いていないことを認識した時点で、速やかに受信待機状態(STBY)からスリープ状態(SLP)へ移行している。
一方、本図の時刻t12〜t13において、ターミナル端末は、マスター端末がビーコンBCNを送信する直前に受信待機状態(STBY)への復帰を行い、受信したビーコンBCNにデータパケットが続いていることを認識した結果、スリープ状態(SLP)へは移行せずにデータ通信状態(COMM)を継続している。また、時刻t12〜t13において、ターミナル端末は、その後に受信したビーコンBCNにデータパケットが続いていないことを認識した時点で、速やかにスリープ状態(SLP)へ移行している。
なお、上記のスリープ状態(SLP)では、ターミナル端末に含まれる殆ど全ての回路要素(スリープ復帰動作に必要な一部の回路要素を除く)の動作が停止される。従って、上記の間欠受信モードを搭載することにより、ターミナル端末の消費電力を大幅に削減することが可能となる。
ただし、マスター端末が電力線から引き抜かれたり、マスター端末への電力供給が停止されるなどして、マスター端末がビーコンBCNを送信しなくなった場合には、ターミナル端末が受信待機状態(STBY)に復帰しても、ビーコンBCNを受信することができない状態が続くことになる。
その結果、ターミナル端末は、時刻t14以降で示したように、マスター端末をサーチし続ける状態(ビーコンBCNを受信するまで受信待機状態(STBY)に維持された状態)となるので、間欠受信モードのメリット(省電力)が損なわれてしまう。
図12は、マスターサーチ動作の第2例を示すタイミングチャートであり、先の図11と同様、上から順番に、ビーコンBCNの受信状態とターミナル端末の動作状態が描写されている。なお、時刻t11〜t14の間欠受信モードについては、先述の通りであることから重複した説明を割愛し、以下では、時刻t14以降におけるマスターサーチ動作の改善点について重点的な説明を行う。
時刻t14以降で示すように、ターミナル端末(延いてはこれに設けられた電力線通信装置)は、マスター端末からのビーコン(BCN)が受信されなくなったときには、所定時間T1(例えば3秒)に亘って受信待機状態(STBY)を維持した後、所定時間T2(例えば1秒)に亘るスリープ状態(SLP)と所定時間T3(例えば300ms)に亘る受信待機状態(STBY)とを繰り返す間欠サーチモードとなる。
すなわち、ターミナル端末は、ビーコンの送信周期Taよりも十分に長い所定時間T1に亘ってビーコンBCNを受信することができないということは、マスタ端末がビーコンBCNを送信していない(或いはマスタ端末自体が存在しない)と判断し、以後、消費電力を極力抑えるための間欠サーチモードに移行する。
このように、ビーコンBCNを定期的に受信できている状況(時刻t11〜t14)だけでなくビーコンBCNが受信できない状況(時刻t14以降)においても間欠動作を行うことにより、マスターサーチ動作時におけるターミナル端末の消費電力を大幅に抑えることが可能となる。
なお、所定時間T1〜T3のうち、少なくとも一つは、パーソナルコンピュータなどから電力線を介して任意に調整することが可能な可変値にしておくとよい。例えば、間欠サーチモードに移行するまでの所定時間T1は、1秒〜1分の間で任意に調整することができるようにしておくとよい。このような構成とすることにより、間欠サーチモードへの移行のし易さや、間欠サーチモードでの挙動を任意に調整することが可能となる。
また、受信待機状態(STBY)となる所定時間T1及びT3は、いずれもビーコンBCNの送信周期Taよりも長く設定することが望ましい。例えば、Ta=100msであれば、T1=1s程度に設定し、T3=300ms程度に設定することが望ましい。このような設定を行えば、マスター端末からビーコンBCNが定期的に送信されている限り、ターミナル端末の受信待機状態(STBY)において、漏れなくビーコンBCNを受信することが可能となる。
また、上記で例示したように、所定時間T1は所定時間T3よりも長く設定することが望ましい。このような設定を行うことにより、間欠サーチモードへの移行後は、受信待機状態(STBY)を短くして、ターミナル端末の省電力化を優先することが可能となる。
また、間欠サーチモード時のスリープ時間(所定時間T2)は、間欠受信モード時のスリープ時間(所定時間Tb)よりも長く設定しておくことが望ましい。このような設定を行うことにより、間欠サーチモードへの移行後は、スリープ状態(SLP)を長くして、ターミナル端末の省電力化を優先することが可能となる。
また、間欠サーチモード時の受信待機時間(所定時間T1及びT3)は、間欠受信モード時の最短受信待機時間(所定時間Tc)よりも長く設定しておくことが望ましい。このような設定を行うことにより、間欠的にビーコンBCNの受信待機を行うことで省電力化を図りつつ、漏れなくビーコンBCNを受信することが可能となる。
なお、図2の電力線通信装置200がターミナル端末に搭載されている場合、電力線通信装置200は、間欠サーチモード時のスリープ状態(SLP)において、第1発振回路211を停止させるとともに、サブクロックSCLKを用いて所定時間T2をカウントする構成にするとよい。
図12の例に即して具体的に説明する。電力線通信装置200は、ターミナル端末が間欠サーチモードへ移行するまでの間、すなわち、受信待機状態(STBY)を維持して所定時間T1が経過するまでの間、第1発振回路211で生成されるメインクロックMCLKを用いて動作する。
所定時間T1が経過した時点で、電力線通信装置200は、第1発振回路211を停止する。その結果、電力線通信装置200は、メインクロックMCLKを用いるマイコン201などの回路要素がその動作を停止したスリープ状態(SLP)となる。
ただし、第2発振回路212は、スリープ状態(SLP)でもサブクロックSCLKの生成動作を継続している。また、タイマ回路203は、サブクロックSCLKのパルス数をカウントして所定時間T2(例えば1秒)の経時を行うことにより、スリープ復帰タイミングを割込制御回路204に報知する。
割込制御回路204は、タイマ回路203からの報知を受けて、第1発振回路211を再起動する。その結果、メインクロックMCLKの生成動作が再開されるので、電力線通信装置200は、受信待機状態(STBY)に復帰する。その後、所定時間T3内にビーコンBCNが受信されない場合、電力線通信装置200は、再び第1発振回路211を停止し、先述のスリープ状態(SLP)となる。以後も、同様の動作が繰り返される。
先にも述べたように、サブクロックSCLKは、メインクロックMCLKよりも低周波数である。従って、第2発振回路212は、第1発振回路211よりもその消費電流を小さく抑えることができる。そのため、サブクロックSCLKを用いてスリープ復帰タイミングを決定する構成であれば、間欠サーチモード時におけるスリープ状態(SLP)の消費電流を受信待機状態(STBY)のそれと比べて大幅に削減することが可能となる。
なお、第2発振回路212を用意せず、メインクロックMCLKを用いてスリープ復帰タイミングを決定することも当然に可能である。ただし、このような構成を採用した場合には、スリープ状態(SLP)においても第1発振回路211を駆動し続けなければならないので、第1発振回路211の消費電流を削減することはできなくなる。
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。