以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明に係る流路切換弁の第1実施例を示し、図1は一側面図、図2は、図1の上面を示し、(A)は主弁体が第1の回転位置にあるときの上面配置図、(B)は主弁体が第2の回転位置にあるときの上面配置図、図3は、図2(A)のA−A矢視線に従う、主として主弁体部分を示す拡大断面図である。
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
図示第1実施例の流路切換弁1は、四方切換弁であり、例えば前述した図22に示されるヒートポンプ式冷暖房システム200における四方切換弁240として用いられるもので、ロータリー式の主弁5と、流体圧式のアクチュエータ7とを備える。
ロータリー式の主弁5は、基本的には、主弁ハウジング10とその中に回動可能に配在された主弁体20を有し、また、流体圧式のアクチュエータ7(後述する運動変換機構50等の主要部)は、前記主弁体20を回動させるべく、主弁ハウジング10内における主弁体20の外周側に配在されている。
以下においては、まず、主として主弁5について説明し、その後にアクチュエータ7について説明する。
[主弁5の構成、動作、作用効果]
主弁5は、主弁ハウジング10と、この主弁ハウジング10内に回動可能かつ上下動可能に配在された主弁体20とを備える。
主弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属製とされ、図1〜図3に加えて、図11、図12並びに図14、図15を参照すればよくわかるように、円筒状の胴部10Cと、この胴部10Cの上面開口を気密的に封止するようにかしめ固定され、さらにはんだ付け、ろう付け、溶接等により固定された厚肉円板状の上側弁シート10Aと、胴部10Cの下面開口を閉塞するように前記上側弁シート10Aと同様に前記胴部10Cに固定された厚肉円板状の下側弁シート10Bとを有し、上側弁シート10Aの左右には、管継手からなる第1ポート11、第2ポート12が垂設され、下側弁シート10Bの左右には、管継手からなる第3ポート13、第4ポート14が垂設されている。各ポート11〜14は同一円周上に設けられており、第1ポート11と第3ポート13及び第2ポート12と第4ポート14は平面視同一位置に配在されている。上側弁シート10Aの下面及び下側弁シート10Bの上面は、平坦で滑らかな弁シート面17、17となっている。
本実施例では、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム200に組み込まれた場合において、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートDとされ、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートEとされ、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートCとされ、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる(図1参照)。
前記主弁ハウジング10における上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの内面側中央(主弁ハウジング10の中心線O上)には、それぞれ主弁体20の上側回転軸部30A及び下側回転軸部30B(後述)を回転自在に支持する軸受穴15A、15Bが設けられている。
また、下側弁シート10Bの下面側の一端側には、アクチュエータ7に付随するパイロット弁80が設けられている。
主弁体20は、短円柱状の上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成となっている。詳しくは、比較的厚みのある第1層部材21と該第1層部材21の下面側に溶接等により一体的に接合された第2層部材22とで上半部20Aが構成され、厚肉円板状の第3層部材23と該第3層部材23の下面側に溶接等により一体的に接合された比較的厚みのある第4層部材24とで下半部20Bが構成されている。
前記上半部20A(の第2層部材22)と下半部20B(の第3層部材23)との間には、図4に示される如くに、それらを相互に逆方向に付勢する付勢手段としての4本の圧縮コイルばね29が縮装されている。4本の圧縮コイルばね29は、第3層部材23の上面側の同一円周上に等角度間隔で設けられた4個のばね収納穴23h(図9参照)に、その一部を上方に突出させた状態で装填されている。
主弁体20の第1層部材21の上面側及び第4層部材24の下面側の平面視同一位置には、主弁体20の中心線O(主弁ハウジング10と共通)を通る断面矩形の横断溝27、27が形成されている。
主弁体20の回転軸部は、図3及び図11に示される如くに、主弁体20の本体部分(上半部20A、下半部20B)と一体的に挙動可能な上側回転軸部30Aと下側回転軸部30Bとに分けられている。上下の回転軸部30A、30Bは、同一構成となっており、前記軸受穴15A、15Bに挿入される枢軸部30aと、前記横断溝27に嵌合する、それと長さが略同じで断面矩形の角棒部30bとからなっている。角棒部30bの両端部には連結棒部30cが突設されている。この連結棒部30cは、後述する運動変換機構50における段付き円筒状の回転駆動体65の上下に2カ所ずつ肉厚方向に貫設された係止横穴66(図13(B)も参照)を通して、角棒部30bの両端部に外側から圧入、螺合等することにより結合されている。なお、角棒部30bと連結棒部30cとを一体物として作製し、回転駆動体65の方に、係止横穴66に代えてU形溝を形成し、該U形溝に前記一体物とされた連結棒部を嵌合させるようにしてもよい。
また、横断溝27、27の両端近くには、主弁体上半部20Aと下半部20Bとを一体回動可能かつ上下動可能とすべく、図11に示される如くに、2本の貫通穴26が形成されており、この2本の貫通穴26に上下端部が小径とされた段付きの一体回動棒25がそれぞれ挿入されている。一体回動棒25の上下の小径部25aは、前記回転軸部30A、30Bの角棒部30bの両端近くに設けられた挿通穴30dに圧入やかしめ固定等されて挿入されている。
したがって、上下の回転軸部30A、30Bと左右の一体回動棒25、25は、一体回動可能に井形状ないし矩形状に組まれた枠状体28を構成しており、この枠状体28により、運動変換機構50における回転駆動体65の回転が主弁体20(上半部20Aと下半部20B)に偏り無く確実に伝達されるとともに、二分割構成とされた主弁体20(上半部20A、下半部20B)が一体回動棒25に沿って若干摺動可能とされていることにより、その上下動、傾き、位置ずれ等に柔軟に対応できる。
流路切換にあたり、主弁体20は、後述するアクチュエータ7により、正逆両方向に回転せしめられ、図6(A)に示される如くの第1の回転位置と、この第1の回転位置から時計回りに60°回転した、図6(B)に示される如くの第2の回転位置とを選択的にとり得るようにされている。
主弁体20には、第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路31及び第2ポート12と第4ポート14とを連通させる第2連通路32とが設けられるとともに、第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させる第3連通路33及び第3ポート13と第4ポート14とを連通させる第4連通路34とが設けられている。
詳細には、前記第1〜第4連通路31〜34を構成する、第1〜第4層部材21〜24に設けられた各通路部の上面開口又は下面開口は、第1〜第4ポート11〜14と同一円周上に配在されており、また、その口径は各ポート11〜14の口径と略同じとされ、さらに、第1連通路31と第2連通路32は、各ポート11〜14の口径と略同じ通路径となっている。
主弁体上半部20Aの上部を構成する第1層部材21には、図7に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部21A、21Bが設けられるとともに、第2層部材22によりその下面開口が閉塞される、平面視波状の横穴21Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部21C、21Dが設けられている。横穴付き通路部21Cと21Dは、180°間隔をあけて配在されており、2つ合わせてU字状の比較的容積の大きな連通路(第3連通路33)を形成する。直線貫通路部21A、21Bと横穴付き通路部21C、21Dとの角度間隔は60°とされている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部21A、21Bが第1ポート11、第2ポート12の真下に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させると、直線貫通路部21A、21Bの上面開口が上側弁シート10Aにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部21C、21Dの上面開口が第1ポート11、第2ポート12の真下に位置する。
主弁体上半部20Aの下部を構成する第2層部材22には、図8に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部22A、22Bが設けられている。直線貫通路部22A、22Bは第1層部材21の直線貫通路部21A、21Bの真下に位置している。
主弁体下半部20Bの上部を構成する第3層部材23には、図9に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部23A、23Bが設けられている。直線貫通路部23A、23Bは第2層部材22の直線貫通路部22A、22Bの真下に位置している。
主弁体下半部20Bの下部を構成する第4層部材24には、図10に示される如くに、第1層部材21と同様に、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部24A、24Bが設けられるとともに、第3層部材23によりその上面開口が閉塞される、平面視波状の横穴24Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部24C、24Dが設けられている。直線貫通路部24A、24Bは第3層部材23の直線貫通路部23A、23Bの真下に位置している。横穴付き通路部24Cと24Dは、180°間隔をあけて配在されており、2つ合わせてU字状の比較的容積の大きな連通路(第4連通路34)を形成する。直線貫通路部24A、24Bと横孔付き通路部24C、24Dとの角度間隔は60°とされている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部24A、24Bが第3ポート13、第4ポート14の真上に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させると、直線貫通路部24A、24Bの下面開口が下側弁シート10Bにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部24C、24Dの下面開口が第3ポート13、第4ポート14の真上に位置する。
第1層部材21と第2層部材22の2つの部材を合わせて連通路(第3連通路33)を形成したため、断面視で視て、横穴付き通路部21C、21Dの間には、横穴21E側に膨出した案内部が、中心線Oに垂直な方向に比較的長く設けられている。この案内部により、流体(冷媒)がU字状に曲がる部分に発生する渦流を防止することができ、また、横穴21Eの口径と各ポート11〜14の口径とがほぼ同じ通路径となるので、流路の体積を一様にすることができるため、主弁5内で流体の膨張や縮小が発生せず、圧力損失を低減できる。仮に、後述する3Dプリンターを用いずに成形品にて主弁体上半部20Aを作成した場合には、前記連通路は、案内部の無い椀型とせざるを得ず、渦流が発生したり、流路の体積を一様にできないため、圧力損失が大きくなる。
前記した各連通路31、32、33、34の両端部には、図3、図5、図7を参照すればよくわかるように、上側弁シート10A、下側弁シート10Bの弁シート面17、17における各ポート11〜14の開口周りに密接する円環状シール面37、37を持つ凸部36が突設されている。隣り合う凸部36、36(のシール面37、37)は連設されて平面視メガネ状を呈するものとなっており、第4層部材24に設けられた凸部36(のシール面37)も同様である。
また、第1連通路31と第2連通路32は、図3に示される如くに、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとに跨がる分割連通路となっているので、シール性を確保するため、次のような方策が講じられている。すなわち、第1連通路31を代表して説明するに、第1連通路31を構成する第2層部材22の直線貫通路部22Aの下部に大径部22cが形成されるとともに、第3層部材23の直線貫通路部23Aの上端に、前記大径部22cに摺動自在に挿入される円筒状部23cが延設され、大径部22cと円筒状部23cとの間にOリング49が介装され、当該Oリング49の脱落を防止するワッシャ49aが大径部22cの端部に溶接にて接合されている。第2連通路32も同様な構成となっている。
上記に加え、本実施例では、主弁体20の第1層部材21と上側弁シート10Aとの間、及び、第4層部材24と下側弁シート10Bとの間に、主弁体20の回転時において、主弁体20側のシール面37、37を上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17、17から離れさせるボール式シール面離隔機構45が設けられている。
ボール式シール面離隔機構45は、第1層部材21と上側弁シート10Aとの間に設けられたものが図3、図5に代表例で示されているように、ボール46と、該ボール46を、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部47と、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、主弁体20側のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れないように、前記収容部47から突出する前記ボール46の一部が嵌め込まれ、主弁体20の回転時(流路切換中)においては、ボール46が主弁体20を押し下げながら転がり出るような寸法形状とされた逆円錐状の凹穴48とを備えている。なお、収容部47は、丸穴47aと該丸穴47aに圧入等により固定された、上部が窄まった筒状抜け止め金具47bとで構成されている。
前記ボール46が収容された収容部47は、図7及び図10の(A)の(1)に示される如くに、主弁体20の第1層部材21と第4層部材24の同一円周上にそれぞれ90°間隔をあけて4箇所に設けられており、また、凹穴48は上側弁シート10Aと下側弁シート10Bの同一円周上の、平面視で前記収容部47と同一位置及び該位置から時計回りに60°離れた位置の計8箇所に設けられている。
かかるシール面離隔機構45では、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、図5(A)に示される如くに、上側弁シート10Aの凹穴48内にボール46の一部が嵌り込んでいる。この嵌り込み量(上側弁シート10Aの弁シート面17からボール46の頂上までの高さ)をhとする。この状態から主弁体20を60°回転させ始めると、収容部47が周方向に移動(回転)し、これに伴ってボール46は、図5(B)に示される如くに、主弁体20(上半部20A)を、上半部20Aと下半部20Bとの間に縮装された圧縮コイルばね29の付勢力に抗して、押し下げながら凹穴48から転がり出る。これによって、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れる。この際の主弁体20の押し下げ量は前記嵌り込み量hとなる。
なお、主弁体20が60°回転すると、ボール46が次の凹穴48に嵌り込むので、主弁体20(上半部20A)は圧縮コイルばね29の付勢力によって押し上げられ、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17に押し付けられる。
[主弁5の動作、作用効果]
以上の説明から理解されるように、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路31は、直線貫通路部21A、22A、23A、及び24Aで構成される直線状通路となり、また、第2ポート12と第4ポート14とを連通させる第2連通路32は、直線貫通路部21B、22B、23B、及び24Bで構成される直線状通路となる。
それに対し、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させる第3連通路33は、主弁体20の上半部20Aに設けられた横穴付き通路部21C及び21Dで構成されるU字状通路となり、また、第3ポート13と第4ポート14とを連通させる第4連通路34は、主弁体20の下半部20Bに設けられた横穴付き通路部24C及び24Dで構成されるU字状通路となる。
上記のように、本実施例の流路切換弁1では、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させることにより、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間から、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間への流路の切り換えが行われ、主弁体20を第2の回転位置から反時計回りに60°回転させることにより、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間から、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間への流路の切り換えが行われる。
本実施例の流路切換弁1を、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込む際には、前述したように、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートD、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートE、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートC、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる。
そして、冷房運転を行う場合には、主弁体20に図6(A)に示される如くの第1の回転位置をとらせる。これにより、図6(A)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→直線状の第1連通路31→室外側入出ポート13(C)へと流れるとともに、室内熱交換器からの低圧冷媒が室内側入出ポート12(E)→直線状の第2連通路32→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
一方、暖房運転を行う場合には、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させて図6(B)に示される如くの第2の回転位置をとらせる。これにより、流路の切り換えが行われ、図6(B)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→U字状の第3連通路33→室内側入出ポート12(E)へと流れるとともに、室外側熱交換器からの低圧冷媒が室外側入出ポート13(C)→逆U字状の第4連通路34→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
このような構成とされた本実施例の流路切換弁1においては、第1連通路31及び第2連通路32は始端から終端までの太さ(通路径)が第1ポート11及び第2ポート12の口径と略同じ直線状の通路とされ、冷媒は第1ポート11、第2ポート12から真下にストレートに流れるので、主弁5(主弁体20)内での圧力損失はほとんど生じない。また、二つの横穴付き通路部21C及び21D、24C及び24Dで構成される第3連通路33及び第4連通路34は、内容積が比較的大きくされているので、圧力損失が軽減され、トータルでは従来の流路切換弁に比べて圧力損失を相当軽減できる。
また、主弁体20が上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成とされ、上半部20Aと下半部20Bはそれぞれ独立して上下動できるようにされるとともに、上半部20Aと下半部20Bとの間に圧縮コイルばね29が縮装されているので、そのばね力により、上半部20Aは押し上げられてそのシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17における各ポート11、12周りに押し付けられるとともに、下半部20Bは押し下げられてそのシール面37が下側弁シート10Bの弁シート面17における各ポート13、14周りに押し付けられる。
この場合、主弁体20(上半部20Aと下半部20B)側に凸部36が突設されてその端面が環状シール面37とされていることから、弁シート面17に対接する部分の面積が必要最小限とされ、そのため、対接面圧が高められる。これにより、十分なシール性を確保できて、流体(冷媒)が主弁体20の摺動面から漏れる弁洩れを効果的に抑制できる。
また、高圧を受ける主弁体20が円柱状とされ、その内部に連通路31〜34が設けられるので、従来例のように、高圧を受ける主弁体が片持ち支持された、板厚に対して受圧面積の大きな板状体であるものに比べて、変形(撓み)等は生じ難く、十分な強度や耐久性を確保できる。
加えて、シールすべき面、すなわち、流路切換時に主弁体が摺接する部分(上側弁シート10A及び下側弁シート10B)は、平板状とされるので、シールすべき面(弁シート面)を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、従来例のようにシールすべき面に円筒面を含んでいるものに比べて、シール性を格段に向上できる。
また、主弁ハウジング10の上側弁シート10A及び下側弁シート10Bにポート11〜14が設けられるので、弁シート面17を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、従来例のようにシールすべき面に円筒面を含んでいるものに比べて、シール性を格段に向上できる。
さらに、主弁ハウジング10の上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに全てのポート11〜14が設けられることから、配管の取り回しが容易となるとともに、配管を含めた実質的な占有スペースを小さくできる。
さらに加えて、本実施例においては、ボール式シール面離隔機構45により、主弁体20の回転時(流路切換中)には、主弁体20の上半部20Aが押し下げられるとともに、下半部20Bが押し上げられ、主弁体20側のシール面37、37が上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17、17から離されるようにされているので、摺動摩擦がほとんど生じず、そのため、スティックスリップ等を生じ難くでき、摺動部分の摩耗を大幅に抑制することができ、さらに、摩耗が抑制されることから、シール性が向上して弁洩れを効果的に抑えることができる。
また、特許文献1に示されるような従来のスライド式主弁体を有する四方切換弁においては、流路の切換時に高圧配管Dと低圧配管Sとの流路開口面積が急激に変化するため、高圧の冷媒が低圧配管に一気に入り込むことより異音(切換音)が発生する。この異音を防止するために、冷暖房システム側で圧縮機の周波数を徐々に低下させて、高圧配管Dと低圧配管Sとの圧力差による異音が許容できる程度の差圧になるようにしてから流路の切り換えを行う必要があった。本実施例の流路切換弁1においては、ボール式シール面隔離機構45により主弁体を弁シート面から嵌り込み量hの分だけ浮かせてから切り換えるので、切換直後から一定の流路開口面積を確保でき、高圧配管Dと低圧配管Sとの間の流路開口面積が急激に変化することがなく、それゆえ上記の異音の発生を抑制できる。また、嵌り込み量hを適宜変更することにより、流路切換時の圧縮機の周波数の低下度合を特許文献1の四方切換弁を用いた冷暖房システムより小さくすることもできるし、圧縮機の周波数の低下を行うことなく流路を切り換えることもできる。
上記に加え、本実施例の流路切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、各連通路31〜34は主弁体20内で比較的大きく離されて設けられているので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流される従来のものに比べて、主弁ハウジング内での熱交換量を大幅に低減でき、そのため、システムの効率が向上できるという効果も得られる。
なお、上記実施例では、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる直線状の第1連通路31と、第2ポート12と第4ポート14とを連通させる直線状の第2連通路32とが設けられるとともに、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させるU字状の第3連通路33と、第3ポート13と第4ポート14とを連通させるU字状の第4連通路34とが設けられているが、4本の連通路構成は、それに限られることはなく、例えば、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる直線状の第1連通路と、第4ポート14と第2ポート12とを連通させる直線状の第2連通路とを設けるとともに、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第4ポート14とを連通させるクランク状の第3連通路と、第3ポート13と第2ポート12とを連通させるクランク状の第4連通路とを設ける構成等にすることもできる。
また、上記実施例では、第1層部材21とこれに接合された第2層部材22とで上半部20Aが、また、第3層部材23とこれに接合された第4層部材24とで下半部20Bが構成されていたが、それに代えて、3Dプリンター等で上半部20A及び下半部20Bをそれぞれ始めから一体物として作製してもよい。
また、上記実施例では、四方切換弁1を例示したが、本発明に係る流路切換弁は四方切換弁に限られることはなく、三方切換弁等にも適用できる。三方切換弁の場合は、上記実施例の流路切換弁(四方切換弁)1において、例えば、主弁ハウジング10に設けられている第2ポート12を無くすとともに、第1層部材21と第2層部材22とを一体化し、第2連通路32及び第3連通路33を構成する直線貫通路部21B、22B、23B、24Bと横穴付き通路部21C、21D及びそれに付随する部分を削除するとよい。
なお、上記三方切換弁を前述したヒートポンプ式冷暖房システムに使用する場合には、当該三方切換弁を2個使用して四方切換弁として働かせる、あるいは、冷媒又は冷気・暖気供給先の切り換え(例えば、2室のうちの一方に送るか、他方に送るかの切り換え)等に使用する。
[アクチュエータ7の構成]
次に、主として図11〜図16を参照しながら、第1実施例の流路切換弁1における主弁体20を回動させるためのアクチュエータ7について説明する。
本例のアクチュエータ7は、主弁5内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用した流体圧式のもので、主弁ハウジング10の胴部10C内における主弁体20の外周側で上側弁シート10Aと下側弁シート10Bとの間に画成された所定の幅(厚み)を持つ円筒状の内空部16に設けられた主要部を構成する運動変換機構50と、下側弁シート10Bの下面側における一端部に設けられた四方パイロット弁80と、を備えている。
運動変換機構50は、往復直線運動を正逆両方向の回転運動に変換するためのもので、受圧移動体60と、回転駆動体65と、内空部16を厚み方向中央部付近で仕切るように、上側弁シート10Aから下向きに延設された薄肉短円筒状の上部隔壁52Aと、下側弁シート10Bから上向きに延設された薄肉短円筒状の下部隔壁52Bとを有する。この上下の隔壁52A、52Bの高さは、内空部16の高さの1/3弱程度となっている。
上下の隔壁52A、52Bの外周側と内周側とに、それぞれ受圧移動体60と回転駆動体65とが配在されている。
詳しくは、上下の隔壁52A、52Bと主弁ハウジング10の胴部10Cとの間には、前記内空部16の半分程度の幅(厚み)を持つ円筒状の作動室55が画成されており、この作動室55に、図13(A)に示される如くの、円筒状ピストン形の受圧移動体60が摺動自在に嵌挿されている。受圧移動体60の上下方向の長さは、作動室55の高さの2/3強とされており、その上半部と下半部には、それぞれ上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに圧入等により垂直に植立固定された上下2本ずつ計4本の作動案内ピン53が相対摺動可能に嵌挿される縦穴63が設けられている。この4本の作動案内ピン53と縦穴63により、受圧移動体60は、直線的に上下動するがその回転は阻止される。
また、受圧移動体60の上下端近くの内外周には、作動室55の内周面(上下の隔壁52A、52Bの外周面)及び外周面(胴部10Cの内周面)との間を気密的に封止すべく、摺動面間用のシール部材(パッキン)61(内周側)、62(外周側)が装着されている。以下、作動室55のうちの、前記上側のシール部材61、62より上側の部分を作動室上部55A(図12参照)と称し、前記下側のシール部材61、62より下側の部分を作動室下部55B(図11参照)と称する。
一方、図14、図15に示される如くに、作動室上部55Aの上端面及び作動室下部55Bの下端面には、それぞれ、上側弁シート10Aの厚み方向に貫設された上部ポート56及び下側弁シート10Bの厚み方向に貫設された下部ポート57が開口せしめられている。なお、受圧移動体60の上下の両端面部における上部ポート56及び下部ポート57が開口する部位(上下の両縦穴63、63から90°離れた部位で上下1箇所ずつのみ)には、高圧流体の導入・排出を行うための厚み方向に横断する横溝64が形成されている(図13(A)、図14、図15参照)。
前記内空部16における上下の隔壁52A、52B及び受圧移動体60と主弁体20との間には、前記枠状体28を介して主弁体20に一体的に回動可能に連結された回転駆動体65が配在されている。この回転駆動体65は、図13(B)に示される如くに、前記枠状体28の連結棒部30cが挿入される係止穴66が形成された上下の薄肉部65A、65Bと中央厚肉部65Cとからなる段付き円筒状とされており、前記受圧移動体60に回動可能かつ上下方向に相対移動可能に内挿されている。回転駆動体65は、連結棒部30cにより主弁体20(の上下の回転軸部30A、30B)と一体的に連結されており、内空部16内で上下方向にほぼ移動せずに、受圧移動体60の上下方向の移動に伴って該受圧移動体60内で回動するようになっている。
前記運動変換機構50を構成する受圧移動体60と回転駆動体65との間には、受圧移動体60の上下動(往復直線運動)を回転駆動体65の正逆両方向の回転運動に変換するため、ボール72、このボール72の収容穴71、及び螺旋溝75を有する運動変換部70が設けられている。
詳細には、受圧移動体60には、複数個(本実施例では2個)のボール72及びその収容穴71が設けられ、回転駆動体65の中央厚肉部65Cの外周には、周方向に曲がりながら上下方向に伸びる複数本(本実施例では180°間隔で2本)の螺旋溝75が設けられている。
前記収容穴71は、ボール72を、その一部を半径方向内方に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容するようになっており、半径方向内周側が若干窄まった段付き丸穴と、この丸穴の外周側に圧入等により嵌込固定されたボール押さえ円板73とから構成されている。
また、前記螺旋溝75は、図13(B)に示される如くに、収容穴71から半径方向内方に突出するボール72の一部が嵌め込まれて回転自在に密接するような、断面円弧状の浅溝からなっている。
[アクチュエータ7の動作]
次に、アクチュエータ7の運動変換機構50の動作について説明する(四方パイロット弁80の構成及びそれを用いた動作については後述する)。
図11及び図14は、作動室下部55Bに下部ポート57を介して高圧流体(高圧冷媒)を導入するとともに、作動室上部55Aから上部ポート56を介して高圧流体を排出した状態を示している。この状態では、受圧移動体60が作動室55の上端面(上側弁シート10A)に接当して停止し、受圧移動体60が最上動位置、主弁体20が第1の回転位置にある。
この状態において、作動室上部55Aに上部ポート56を介して高圧流体を導入するとともに、作動室下部55Bから下部ポート57を介して高圧流体を排出すると、受圧移動体60が下向きに押されて作動案内ピン53に案内されながら真っ直ぐに下動し、これに伴って運動変換機構50のボール72も回転しながら真っ直ぐに下動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が一方向(ここでは時計回り)に回転する。そして、受圧移動体60の下端が作動室55の下端面(下側弁シート10B)に接当すると、受圧移動体60の下動が停止するとともに、回転駆動体65の回転も停止し、図12及び図15に示される如くの状態となる。この状態では、受圧移動体60が最下動位置、主弁体20が第2の回転位置にある。以下、受圧移動体60が最上動位置から最下動位置まで下降する行程を下動行程と称し、図12及び図15に示される状態を下動行程完了状態と称する。
それに対し、図12及び図15に示される如くの、前記下動行程完了状態において、作動室下部55Bに下部ポート57を介して高圧流体を導入するとともに、作動室上部55Aから上部ポート56を介して高圧流体を排出すると、受圧移動体60が上向きに押されて、受圧移動体60が作動案内ピン53に案内されながら真っ直ぐに上動し、これに伴って運動変換機構50のボール72も回転しながら真っ直ぐに上動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が他方向(ここでは反時計回り)に回転する。そして、受圧移動体60の上端が上側弁シート10Aに接当すると、受圧移動体60の上動が停止するとともに、回転駆動体65の回転も停止し、図11及び図14に示される如くの状態となる。この状態では、受圧移動体60が最上動位置、主弁体20が第1の回転位置にある。以下、受圧移動体60が最下動位置から最上動位置まで上昇する行程を上動行程と称し、図11及び図14に示される状態を上動行程完了状態と称する。
前記上動行程完了状態において受圧移動体60に下動行程をとらせることにより、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと時計回りに60°回転して前述した如くの流路切換が行われ、それとは逆に、前記下動行程完了状態において受圧移動体60に上動行程をとらせることにより、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと反時計回りに60°回転して前述した如くの流路切換が行われる。なお、前記流路切換に必要とされる回転角度60°は、受圧移動体60の上下動のストローク長や螺旋溝75のピッチ等により設定され、回転方向は螺旋溝75の巻き方向により決定される。
本実施例では、前記流路切換、すなわち、上動行程と下動行程との切り換えを、前記上部ポート56と下部ポート57、及び、高圧部分である主弁ハウジング10内と低圧部分である第4ポート14(ここでは、吸入側低圧ポートSであり,以下、低圧ポート14と称することがある)とに接続された電磁式の四方パイロット弁80により行うようにされている。
[電磁式四方パイロット弁80の構成、動作]
電磁式四方パイロット弁80は、その構造自体はよく知られているもので、図14〜図16に示される如くに、前記主弁ハウジング10の下側弁シート10Bの下面側におけるアクチュエータ7の本体部50とは反対側に下方に向けて延設された下面が開口した円筒状の弁ケース部81と、この弁ケース部81の下面開口を気密的に封止するようにろう付け・かしめ等により固定されたソレノイド部82と、弁ケース部81の側面部にかしめ・ろう付け・はんだ付け・溶接等により気密的に取着された、その内端面が弁座(シート面)92とされる有底筒形の弁座ブロック83とを有する。
弁ケース部81内は、弁室88となっており、この弁室88は、下側弁シート10Bに貫設された細孔89を介して高圧部分である主弁ハウジング10内に連通するようになっている。ソレノイド部82は、通電励磁用のコイル82a、このコイル82aの外周を覆うカバーケース82b、コイル82aの内周側に配在されてボルト82cによりカバーケース82bに固定された吸引子84、この吸引子84に対向配置されたプランジャ85等を備えている。プランジャ85は、コイル82aと吸引子84との間にその下部が配在された円筒状のガイドパイプ86に摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ86の下端は吸引子84の外周段丘部に溶接等により固定され、その上端鍔状部が弁ケース部81に溶接・ろう付け・かしめ・はんだ付け等により気密的に取着されている。
また、吸引子84とプランジャ85との間には、プランジャ85を吸引子84から離れる方向(図では上方)に付勢する圧縮コイルばねからなるプランジャばね87が縮装されている。
プランジャ85の吸引子84側とは反対側の端部には、弁体91をその自由端側で厚み方向に摺動可能に保持する板状の弁体ホルダ90がその幅広の基端部96をかしめにより取付固定されている。弁体ホルダ90には、弁体91を弁座92に押し付ける方向(厚み方向)に付勢する板ばね94が取り付けられている。弁体91は弁座92のシート面をプランジャ85の上下動に伴って摺動するようになっている。
前記弁座92には、上から順にポートa、ポートb、ポートcが設けられており、また、弁体91には、前記ポートaとポートb及びポートbとポートcを選択的に連通させ得る、厚み方向に凹む凹部93が設けられている。弁座ブロック83には、ポートaのみに連通するように細管95aの一端部が、ポートbのみに連通するように細管95bの一端部が、ポートcのみに連通するように細管95cの一端部がそれぞれ気密的に挿着されている。
細管95aの他端部は、下部ポート57を介して作動室下部55Bに接続され、細管95bの他端部は低圧ポート14に接続され、細管95cの他端部は、上部ポート56を介して作動室上部55Aに接続されている。
このような構成とされた四方パイロット弁80においては、ソレノイド部82への通電OFF時には、図15、図16(A)に示される如くに、プランジャ85はプランジャばね87の付勢力により、その上端が弁座ブロック83に接当する位置まで押し上げられている。この状態では、弁体91がポートaとポートb上に位置し、その凹部93によりポートaとポートbが連通するとともに、ポートcと弁室88とが連通するので、主弁ハウジング10内の高圧流体が細孔89→弁室88→ポートc→細管95c→上部ポート56を介して作動室上部55Aに導入されるとともに、作動室下部55Bの高圧流体が下部ポート57→細管95a→ポートa→凹部93→ポートb→細管95b→低圧ポート14へと流れて排出される。
それに対し、ソレノイド部82への通電ON時には、図14、図16(B)に示される如くに、プランジャ85は吸引子84の吸引力により、その下端が吸引子84に接当する位置まで引き寄せられている。このときには、弁体91がポートbとポートc上に位置し、その凹部93によりポートbとポートcが連通するとともに、ポートaと弁室88とが連通するので、主弁ハウジング10内の高圧流体が細孔89→弁室88→ポートa→細管95a→下部ポート57を介して作動室下部55Bに導入されるとともに、作動室上部55Aの高圧流体が上部ポート56→細管95c→ポートc→凹部93→ポートb→細管95b→低圧ポート14へと流れて排出される。
したがって、ソレノイド部82への通電をONからOFFにすると、前記下動行程がとられ、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転し、前記した如くの流路切換が行われる一方、ソレノイド部82への通電をOFFからONにすると、前記上動行程がとられ、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転し、前記した如くの流路切換が行われる。
[アクチュエータ7の作用効果]
このように、本実施例の流路切換弁1においては、電磁式四方パイロット弁80への通電をON/OFFで切り換えることで、主弁10内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用して主弁体20を回動させるようにされているので、電動モータ等で主弁体20を回動させる場合に比べて、コスト削減、消費電力の低減、省エネ化等を図ることができる。なお、本実施例のアクチュエータ7よる流路切換は、電動モータ+減速機で行う流路切換より素早く行うことができる。
また、アクチュエータ7の主要部(運動変換機構50等)が主弁ハウジング10内における主弁体20の外周側に配置された構成であるので、主弁ハウジング10の外径を少し大きくすれば済み、従来のように主要部が主弁ハウジング外に設けられるものに比べて、アクチュエータや配管を含めた流路切換弁全体の体格や占有スペースを小さくでき、全体をコンパクトに纏めることができるとともに、流路切換弁の製造コスト、設置コスト等を低く抑えることができる。
また、本実施例のアクチュエータ7では、回転力を加える部位が主弁体20の外周であるので、主弁体20の回転軸線Oから力点までの距離が長くなり、そのため、従来例のように主弁体の回転軸部を直接又はギア等を介して回転させる構成のものに比べて、主弁体に対して小さな出力で大きなトルクを得ることができ、これによっても、アクチュエータとその回転伝達機構部分を小さくすることができ、流路切換弁を小型でコンパクトに纏めることが可能となる。
加えて、アクチュエータ7は、主弁体20より大径の厚肉円筒状の受圧移動体60を上下動させ、この上下動を回転運動に変換して主弁体20に伝達する構成なので、従来例のように高圧を受ける部分が主弁体の回転軸部の延長軸部に片持ち支持された、板厚に対して受圧面積の大きな板状体であるものに比して、高圧を受ける部分(受圧移動体60)に、十分な強度を確保でき、耐久性を向上させることができるとともに、十分な強度を確保できることから、受圧面積を大きくすることができる。また、円筒状の受圧移動体60が円筒状の作動室55内を上下動する構成であるので、受圧移動体60の内外周面と作動室55の内外周面との間のシールは、従来例のような円筒面を含む作動室内面と板状体との間のシールに比べて容易であり、アクチュエータにおけるシール性を向上させることができ、上記主弁体20に対して小さな出力で大きなトルクを得ることができること並びに上記受圧面積を大きくできることとあいまって、流路切換を確実かつ迅速に行うことができる。
上記に加え、直線運動を回転運動に変換する機構としては、一般にボールねじ機構が知られているが、通常のボールねじ機構は、ボールを多数使用し、リターン構造も必要であるため、本実施例の運動変換機構50に比べて、構造が複雑で高価であり、また、高温高圧環境下での使用は考慮されていないため、ヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれる流路切換弁に採用することは難しい。それに対し、本実施例の運動変換機構50を備えた流体圧式のアクチュエータ7は、部品点数が少なく極めてシンプルな構成であるので、コスト的に有利であるとともに、高温高圧環境下で使用する場合の対策を容易にとることができ、そのため、本実施例の流路切換弁1は、特に、ヒートポンプ式冷暖房システム等の高温高圧環境下に組み込まれる流路切換弁として費用対効果に極めて優れるものとなる。
[第2実施例:アクチュエータ8の構成、動作、作用効果]
次に、第2実施例の流路切換弁2を、図17〜図21を参照しながら説明する。
本第2実施例の流路切換弁2は、第1実施例の流路切換弁1に対して、主弁5部分(主弁ハウジング10、主弁体20等)は略同じ構成であり、また、本第2実施例のアクチュエータ8の主要部(運動変換機構50)も、基本構成は略同じであるので、第1実施例の流路切換弁1の各部に対応する部分には共通の符号を付してその重複説明は省略し、以下においては、相違点を重点的に説明する。
本例の主弁ハウジング10は、上側弁シート10Aと胴部10Cとが一体化され、第1実施例のものよりやや厚手とされた下側弁シート10Bが胴部10Cの下面開口を気密的に封止するようにかしめ固定され、さらにはんだ付け、ろう付け、溶接等により固定されている。
本例のアクチュエータ8は、受圧移動体60の上下動に連動して上側弁シート10A内部に設けられた上部ポート56及び下側弁シート10B内部に設けられた下部ポート57を選択的に開閉すべく、受圧移動体60の上下端に1箇所ずつ円錐台状の上閉弁体67A、下閉弁体67Bが一体に設けられており(図17、図18に加えて図21参照)、受圧移動体60の最上動位置、最下動位置は、上閉弁体67A、下閉弁体67Bが上部ポート56、下部ポート57(の端縁部)に接当してそれを閉塞した位置となる。
この場合、最上動位置においても、受圧移動体60の上閉弁体67A部分を除く上端面と作動室55の上端面(上側弁シート10A)との間には隙間が形成され、この隙間を含むシール部材61、62より上側の部分が作動室上部55Aとされ、この作動室上部55Aに、受圧移動体60が前記最上動位置にあるときにおいても、主弁ハウジング10内の高圧流体を導入すべく、上部隔壁52Aの外周側には、下端から上端近くまで伸びる浅くて細い縦溝からなる上部均圧通路58Aが形成されている(図17に加えて図20の拡大図参照)。
また、同様に、最下動位置においても、受圧移動体60の下閉弁体67B部分を除く下端面と作動室55の下端面(下側弁シート10B)との間には隙間が形成され、この隙間を含むシール部材61、62より下側の部分が作動室下部55Bとされ、この作動室下部55Bに、受圧移動体60が前記最下動位置にあるときにおいても、主弁ハウジング10内の高圧流体を導入すべく、下部隔壁52Bの外周側には、上端から下端近くまで伸びる浅くて細い縦溝からなる下部均圧通路58Bが形成されている(図18に加えて図19(A)の拡大図参照)。
さらに、本例のシール部材61、62と作動室55の内外周面との間には若干の隙間が形成されるようになっており(この点が第1実施例のものとは相違する)、この隙間が均圧通路として働いて、作動室上部55A、作動室下部55Bだけでなく、作動室55における上下のシール部材61−61間(受圧移動体60の内周側)、62−62間(受圧移動体60の外周側)にも高圧流体が導入されるようになっている。
また、本実施例のアクチュエータ8では、上動行程と下動行程との切り換えに、第1実施例の電磁式四方パイロット弁80に代えて電磁式三方パイロット弁100が用いられ、また、第1実施例では存在した外部細管(95a、95b、95c)に相当するものは無く、それに代わり、主弁ハウジング10の一端側内部に、三方パイロット弁100の一部を構成する上側弁室101、下側弁室102、上側弁口104付き上側弁座103、下側弁口106付き下側弁座105等が設けられるとともに、上部ポート56と下側弁室102を連通する高圧排出通路107、上側弁座103と下側弁座105との間に形成された中央弁室109と低圧ポート14とを連通する低圧通路108等が設けられている。上動行程は、作動室上部55A内の高圧流体を上部ポート56から高圧排出通路107、三方パイロット弁100、低圧通路108を介して低圧ポート14に排出することにより行われ、また、下動行程は、作動室下部55B内の高圧流体を下部ポート57から三方パイロット弁100、低圧通路108を介して低圧ポート14に排出することにより行われる。
以下、これについて詳細に説明する。
電磁式三方パイロット弁100は、その構造自体はよく知られているもので、図19に拡大図示されているように、主弁ハウジング10の下側弁シート10Bの下面側における一端部に下方に向けて延設された下面が開口した円筒状の取付ケース部111と、この取付ケース部111の下面開口を気密的に封止するようにろう付け・かしめ等により固定されたソレノイド部112とを有する。
ソレノイド部112は、通電励磁用のコイル112a、このコイル112aの外周を覆うカバーケース112b、コイル112aの内周側に配在されてボルト112cによりカバーケース112bに固定された吸引子114、この吸引子114に対向配置されたプランジャ115等を備えている。プランジャ115は、コイル112aと吸引子114との間にその下部が配在された円筒状のガイドパイプ116に摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ116の下端は吸引子114の外周段丘部に溶接等により固定され、その上端鍔状部が弁ケース部111に溶接・ろう付け・かしめ等により気密的に取着されている。
また、吸引子114とプランジャ115との間には、プランジャ115を吸引子114から離れる方向(図では上方)に付勢する円錐状の圧縮コイルばねからなるプランジャばね117が縮装されている。
取付ケース部111内と下側弁シート10Bに設けられた下面が開口した凸穴とで前記下側弁室102が構成され、また、下側弁シート10Bには、下部ポート57に連なって前記上側弁室101が設けられており、下側弁室102には、一端が上部ポート56に接続された高圧排出通路107の他端が接続されている。高圧排出通路107は、上側弁シート10A、胴部10C、及び下側弁シート10Bに跨って形成されている。また、前記中央弁室109は、横孔からなる低圧通路108の一端部(始端部)として同径に形成されている。
一方、プランジャ115の吸引子114側とは反対側の端部には、先端(上端部)が円錐状の下側弁体122がプランジャ115の上部に設けられた収容穴に上下方向に若干移動可能に抜け止め支持された状態で前記下側弁室102に上下方向に移動可能に配在されている。また、上側弁室101には、先端(下端部)が円錐状の上側弁体121が上側弁室101の上端部との間に縮装された圧縮コイルばねからなる弁体付勢ばね123により下向きに付勢された状態で上下方向に移動可能に配在されている。
前記弁体付勢ばね123の付勢力は、プランジャばね117の付勢力より小さくされている。
また、上側弁体121及び下側弁体122の先端部には弁口104、106を通して相互に突き合わせられる突き合わせロッド124、125が固定されている。
ここで、ソレノイド部112への通電OFF時には、プランジャばね117の付勢力の方が弁体付勢ばね123のそれより大きくされているので、図19(A)に示される如くに、プランジャ115及び下側弁体122が押し上げられ、突き合わせロッド125が上側弁体121に固定された突き合わせロッド124に当接することにより、上側弁体121は一緒に押し上げられて、下側弁体122が下側弁口106を閉じるとともに、上側弁体121が上側弁口104を開いた状態で停止する。
そのため、上部ポート56に接続された高圧排出通路107と低圧ポート14に接続された低圧通路108との間は遮断される一方、下部ポート57は、上側弁室101→上側弁口104→中央弁室109→低圧通路108を介して低圧ポート14に連通する。
それに対し、ソレノイド部112への通電をONにすると、図19(B)に示される如くに、プランジャ115は吸引子114の吸引力により引き寄せられ、それに伴い、下側弁体122がプランジャ115の上部に設けられたワッシャにより下側に引き下げられ、突き合わせロッド125も下側に引き下げられる。それとともに、弁体付勢ばね123の付勢力により上側弁体121が一緒に押し下げられて、下側弁体122が下側弁口106を開くとともに、上側弁体121が上側弁口104を閉じた状態で停止する。この時、突き合わせロッド124と突き合わせロッド125との間には若干の隙間Gが形成される。
そのため、下部ポート57と低圧通路108との間は遮断され、上部ポート56に接続された高圧排出通路107は、下側弁室102→下側弁口106→中央弁室109→低圧通路108を介して低圧ポート14に連通する。
次に、上記した如くの三方パイロット弁100を備えたアクチュエータ8の動作について説明する。
図18及び19(A)は、受圧移動体60が最下動位置にあり、三方パイロット弁100が通電OFFにされて下側弁口106が閉じられ、高圧排出通路107−低圧通路108間が遮断されるとともに、上側弁口104は開かれているが、下部ポート57が受圧移動体60の下閉弁体67Bにより閉じられ、下部ポート57を除く作動室55全体(上下のシール部材61−61間、62−62間、高圧排出通路107、及び下側弁室102を含む)に高圧流体が行き渡った状態を示している。
上記のように、作動室55全体に高圧流体が行き渡った状態において、三方パイロット弁100を通電ONにすると、図19(B)に示される如くに、上側弁口104が閉じられるとともに、下側弁口106が開かれ、下部ポート57−低圧通路108間が遮断されるとともに、高圧排出通路107−低圧通路108間が連通し、作動室上部55Aの高圧流体が上部ポート56→高圧排出通路107→下側弁室102→下側弁口106→中央弁室109→低圧通路108→低圧ポート14へと排出され、作動室上部55Aの圧力が急激に低下し、受圧移動体60の上面側の受圧荷重が下面側の受圧荷重より小さくなるので、受圧移動体60が上動し始める。
受圧移動体60が上動すると、下閉弁体67Bが下部ポート57から離れて下部ポート57を開くが、下部ポート57−低圧通路108間は遮断されているので、作動室55の高圧流体は下部ポート57からは排出されず、受圧移動体60の上面側の受圧荷重と下面側の受圧荷重との差が大きくなり、受圧移動体60はさらに上動する。
受圧移動体60がさらに上動すると、図17、図20に示される如くに、上閉弁体67Aが上部ポート56に接当してそれを閉塞し、受圧移動体60が最上動位置にて停止し、これにより、上動行程が完了する。
この上動行程においては、受圧移動体60の上動に伴って運動変換部70を構成するボール72も回転しながら真っ直ぐに上動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が一方向(ここでは反時計回り)に回転し、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われる。
それに対し、図17、図19(B)、図20に示される如くの、受圧移動体60が最上動位置にある状態(上動行程完了後)において、三方パイロット弁100を通電OFFにすると、図19(A)に示される如くに、下側弁口106が閉じられるとともに、上側弁口104が開かれ、高圧排出通路107−低圧通路108間が遮断されるとともに、下部ポート57−低圧通路108間が連通し、作動室下部55Bの高圧流体が下部ポート57→上側弁室101→上側弁口104→中央弁室109→低圧通路108→低圧ポート14へと排出され、作動室下部55Bの圧力が急激に低下し、受圧移動体60の下面側の受圧荷重が上面側の受圧荷重より小さくなるので、受圧移動体60が下動し始める。
受圧移動体60が下動すると、上閉弁体67Aが上部ポート56から離れて上部ポート56を開くが、上部ポート56−低圧通路108間は遮断されているので、作動室55の高圧流体は上部ポート56からは排出されず、受圧移動体60の下面側の受圧荷重と上面側の受圧荷重との差が大きくなり、受圧移動体60はさらに下動する。
受圧移動体60がさらに下動すると、図18、図19(A)に示される如くに、下閉弁体67Bが下部ポート57に接当してそれを閉塞し、受圧移動体60が最下動位置にて停止し、これにより、下動行程が完了する。
この下動行程においても、受圧移動体60の下動に伴って運動変換部70を構成するボール72も回転しながら真っ直ぐに下動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が他方向(ここでは時計回り)に回転し、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われる。
このように、本第2実施例の流路切換弁2においては、作動室上部55A内の高圧流体を上部ポート56から高圧排出通路107、三方パイロット弁100、低圧通路108を介して低圧ポート14に排出することにより上動行程が行われ、また、作動室下部55B内の高圧流体を下部ポート57から三方パイロット弁100、低圧通路108を介して低圧ポート14に排出することにより下動行程が行われ、それによって、流路の切り換えが行われるようにされる。そのため、第1実施例のものと略同様な作用効果が得られることに加えて、本例のアクチュエータ8では、外部細管が無く、三方パイロット弁100の一部並びに高圧排出通路107及び低圧通路108等が主弁ハウジング10内部に設けられるので、第1実施例のアクチュエータ7に比して、気密性や組立性を向上でき、アクチュエータや配管を含めた全体の体格や占有スペースを一層小さくでき、全体をコンパクトに纏めることができる。
なお、本発明に係る流路切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム(給湯設備等)、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。
また、弁ハウジング10、主弁体20、受圧移動体60、回転駆動体65等の素材としては、アルミやステンレス等が用いられるが、それに限られることはなく、その他の金属、樹脂等の、導入される流体の圧力に耐えられるものであれば、いかなるものであってもよい。