以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態の六方切換弁1を図1〜図11を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る六方切換弁の第1実施形態を示す概略斜視図、図2(A)、(B)は、その平面図、図3は、図2(A)のX−X矢視線に従う断面図、図4は、図2(A)のY−Y矢視線に従う断面図である。
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
図示実施形態の六方切換弁1は、例えば前述した図21に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における六方切換弁180として用いられるもので、ロータリー式の主弁5と、流体圧式のアクチュエータ7とを備える。なお、本実施形態の六方切換弁1に備えられている6個のポートは、上記六方切換弁180の各ポートpA〜pFに対応させて同一の符号が付されている。
以下においては、まず、主として主弁5について説明し、その後にアクチュエータ7について説明する。
<主弁5の構成及び動作>
主弁5は、主弁ハウジング10と、この主弁ハウジング10内に回動可能かつ上下動可能に配在された主弁体20とを備える。
主弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属製とされ、円筒状の胴部10Cと、この胴部10Cの上面開口を気密的に封止するようにかしめ固定され、さらにはんだ付け、ろう付け、溶接等により固定された厚肉円板状の上側弁シート10Aと、胴部10Cの下面開口を封止するように前記上側弁シート10Aと同様に前記胴部10Cに固定された厚肉円板状の下側弁シート10Bとを有する。上側弁シート10Aには、該上側弁シート10Aに形成された開口と該開口に接続された管継手からなる3個のポート(第1ポートpA、第2ポートpF、第3ポートpE)が設けられ、下側弁シート10Bにも、該下側弁シート10Bに形成された開口と該開口に接続された管継手からなる3個のポート(第4ポートpB、第5ポートpC、第6ポートpD)が設けられ、6個のポートpA〜pFは、同径でかつ平面視で(主弁ハウジング10の中心線O方向で視て)同一円周上に設けられており、図1、図2、図3に加えて図8の概略分解斜視図を参照すればよくわかるように、上側のポートpAと下側のポートpB、上側のポートpEと下側のポートpD、上側のポートpFと下側のポートpCは、平面視で同一位置に配在されている。上側弁シート10Aの下面及び下側弁シート10Bの上面は、平坦で滑らかなシート面17、17となっている。
前記主弁ハウジング10における上側弁シート10Aの上面側中央(主弁ハウジング10の中心線O上)付近には、上向きに凹部19(後述する回転伝達機構77の収容部)が設けられ、この凹部19における前記中心線O上に、主弁体20の上側回転軸部30A(後述)を回転自在に支持する軸受穴15Aが設けられ、下側弁シート10Bの下面側中央には、主弁体20の下側回転軸部30B(後述)を回転自在に支持する軸受穴15Bが設けられている。
また、上側弁シート10Aの上面側には後述するアクチュエータ7の本体部50が設けられている。前記本体部50は、平面視で主弁ハウジング10から側方には突出しないように、ポートpEとポートpFとの間に設けられている(上側弁シート10Aの径内に収まっている)。
主弁体20は、短円柱状の上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成となっており、前記上半部20Aと下半部20Bとの間に、それらを相互に逆方向に付勢する付勢手段としての4本の圧縮コイルばね29が縮装されている(図3、図4参照)。4本の圧縮コイルばね29は、上半部20Aと下半部20Bとの間に所定の間隙が形成されるように、上半部20Aの下部及び下半部20Bの上部の同一円周上に等角度間隔で設けられた4個のばね収納穴29hに装填されている。なお、圧縮コイルばね29の数は4本に限定されない。
主弁体20の上面側及び下面側の平面視で同一位置には、主弁体20の中心線O(主弁ハウジング10と共通)を通り、その両端が外周端近くまで伸びる断面矩形の横溝27、27が形成されており、この横溝27、27の両端近くに、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとを一体回動可能かつ上下動可能とすべく、図4に示される如くに、2本の貫通孔26が形成されるとともに、この2本の貫通孔26に、上下端部に小径部25aが設けられた段付きの一体回動棒25が挿入されている。
主弁体20の回転軸部は、主弁体20の本体部分(上半部20A、下半部20B)と一体的に挙動可能な上側回転軸部30Aと下側回転軸部30Bとに分けられている。上側回転軸部30Aは、前記軸受穴15Aに挿入される枢軸部30a(後述する回転伝達機構77の従動歯車39の固定軸部にもなる)と、中間大径部30cと、前記主弁体20の上面側に形成された横溝27に嵌合する断面矩形の角棒部30bとからなっている。下側回転軸部30Bは、前記軸受穴15Bに挿入される枢軸部30dと、前記主弁体20の下面側に形成された横溝27に嵌合する断面矩形の角棒部30bとからなっている。前記上下の角棒部30b、30bの両端近くには挿通穴が設けられ、該挿通穴に、前記一体回動棒25の上下端部に設けられた小径部25aが嵌挿されることで、前記一体回動棒25は、上側回転軸部30Aと下側回転軸部30Bとに固定される。
したがって、上側及び下側の回転軸部30A、30Bと左右の一体回動棒25、25は、相互に若干の相対移動可能かつ一体回動可能に井形状ないし矩形状に組まれた枠状体28を構成しており、この枠状体28により、二分割構成とされた主弁体20(上半部20A、下半部20B)の上下動、傾き、位置ずれ等に柔軟に対応できる。
流路切換にあたり、主弁体20は、後述するアクチュエータ7により、正逆両方向に回転せしめられ、図2(A)及び図8(A)に示される如くの第1の回転位置と、この第1の回転位置から反時計回りに120°回転させた、図2(B)及び図8(B)に示される如くの第2の回転位置とを選択的にとり得るようにされている。
主弁体20には、上下のポート間を連通する上下ポート連通路31と、上側のポート同士を連通する上側Uターン連通路32と、下側のポート同士を連通する下側Uターン連通路33と、が設けられている。
上下ポート連通路31は、各ポートpA〜pFと略同径の直線状の貫通路とされ、上側Uターン連通路32と下側Uターン連通路33は、平面視で湾曲した矩形ないし扇形状の、上面又は下面の全面が開口した横長形状とされ、各連通路31〜33の上面開口又は下面開口は、前記6個のポートpA〜pFと同一円周上に配在されている。また、上側Uターン連通路32と下側Uターン連通路33の両端部も各ポートpA〜pFと略同径の断面半円形状となっており、上下ポート連通路31と上側Uターン連通路32の両端部、並びに、上下ポート連通路31と下側Uターン連通路33の両端部のそれぞれの三者の角度間隔は120°となっている。
ここで、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、上下ポート連通路31は、第1ポートpAの真下で第4ポートpBの真上に位置し、主弁体20を第1の回転位置から反時計回りに120°回転させた第2の回転位置では、上下ポート連通路31は、第3ポートpEの真下で第6ポートpDの真上に位置し、同様に、上側Uターン連通路32の両端部は、第1の回転位置では、第3ポートpEと第2ポートpFの真下に位置し、第2の回転位置では、第1ポートpAと第2ポートpFの真下に位置する。さらに、下側Uターン連通路33の両端部は、第1の回転位置では、第5ポートpCと第6ポートpDの真上に位置し、第2の回転位置では、第5ポートpCと第4ポートpBの真上に位置する。
したがって、上下ポート連通路31は、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポートpAと第4ポートpBを連通させるとともに、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第3ポートpEと第6ポートpDとを連通させ、上側Uターン連通路32は、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第3ポートpEと第2ポートpFを連通させるとともに、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポートpAと第2ポートpFとを連通させ、下側Uターン連通路33は、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第5ポートpCと第6ポートpDを連通させるとともに、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第5ポートpCと第4ポートpBとを連通させるようになっている。
前記した上下ポート連通路31の下端部、上側Uターン連通路32の上面側、及び下側Uターン連通路33の下面側には、図3、図5、図6を参照すればよくわかるように、上側弁シート10A、下側弁シート10Bのシート面17、17における各ポートpA〜pFの開口周りに密接する環状シール面37を持つ凸部36が突設されている。
上記に加えて、本実施形態では、主弁体20の上半部20Aと上側弁シート10Aとの間、及び、主弁体20の下半部20Bと下側弁シート10Bとの間に、主弁体20の回転時において、主弁体20側のシール面37を上側弁シート10A及び下側弁シート10Bのシート面17、17から離れさせるボール式シール面離隔機構45が設けられている。
ボール式シール面離隔機構45は、上半部20Aと上側弁シート10Aとの間に設けられたものが図7に代表例で示されているように、ボール46と、該ボール46を、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部47と、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、主弁体20側のシール面37が上側弁シート10Aのシート面17から離れないように、前記収容部47から突出する前記ボール47の一部が嵌め込まれ、主弁体20の回転時(流路切換中)においては、ボール46が主弁体20を押し下げながら転がり出るような寸法形状とされた逆円錐状の凹穴48とを備えている。なお、収容部47は、丸穴47aと、該丸穴47に圧入等により固定された、上部が窄まった筒状抜け止め金具47bとで構成されている。
前記ボール46が収容された収容部47は、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bの同一円周上にそれぞれ120°間隔をあけて3箇所に設けられており、また、凹穴48は上側弁シート10Aと下側弁シート10Bの同一円周上のそれぞれに、平面視で前記収容部47と同一位置及び該位置から反時計回りに120°離れた位置の3箇所ずつに設けられている。
かかるシール面離隔機構45では、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、例えば図7(A)に示される如くに、上側弁シート10Aの凹穴48内にボール46の一部が嵌り込んでいる。この嵌り込み量(上側弁シート10Aのシート面17からボール46の頂上までの高さ)をhとする。この状態から主弁体20を120°回転させ始めると、収容部47が周方向に移動(回転)し、これに伴ってボール46は、図7(B)に示される如くに、主弁体20(上半部20A)を、上半部20Aと下半部20Bとの間に縮装された圧縮コイルばね29の付勢力に抗して押し下げながら、凹穴48から転がり出る。これによって、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aのシート面17から離れる。この際の主弁体20の押し下げ量は前記嵌り込み量hとなる。
なお、主弁体20が120°回転すると、ボール46が次の凹穴48に嵌り込むので、主弁体20(上半部20A)は圧縮コイルばね29の付勢力によって押し上げられ、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aのシート面17に押し付けられる。
一方、上下ポート連通路31は、図3に示される如くに、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとに跨がる分割連通路となっているので、シール性を確保して弁洩れを生じ難くするため、並びに、本発明の「課題」で述べたように、主弁体20を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させると、第1ポートpAから上側Uターン連通路32に導入される高圧冷媒により主弁体20が押し下げられて、上側弁シート10Aのシート面17と上下ポート連通路31及び上側Uターン連通路32の上端シール面37との間に隙間が生じて弁洩れが発生するという問題を解消すべく、次のような弁洩れ対策が講じられている。
すなわち、主弁体20の上半部20Aには、上下ポート連通路31の下半部よりも大径の、上下面が開口しかつ側面が部分的に切欠された段付き円筒状の収容部90が設けられており、この収容部90の下部に、その上下にOリング(シール部材)装着用の環状溝が形成された段付き挿入部92が設けられている。
この段付き挿入部92の下部(大径部)には、下半部20Bの上面から上側に延設された上下ポート連通路31の一部を構成する円筒状の延長通路部(円筒部)20eが摺動自在に挿入されるとともに、段付き挿入部92と延長通路部20eとの間にOリング(シール部材)93が介装され、当該Oリング93の脱落を防止すべく、ワッシャ94が段付き挿入部92の下端部に圧入あるいは溶接にて接合固定されている。Oリング93の内周(延長通路部20eの外周との間)には、図5(A)を参照すればよくわかるように、滑りを良くするため、テフロン(登録商標)等からなるパッキン95が介装されている。このような構成により、分割連通路においても弁洩れを生じ難くできる。
一方、図3に加えて図5(A)、(B)を参照すればよくわかるように、前記収容部90の上部には、上下ポート連通路31の上部を構成する、主弁体20の上半部20Aに対して独立して上下動可能な段付き円筒状の別体通路部材80が配在されている。この別体通路部材80の上端面は、上側弁シート10Aのシート面17に密接する、前記凸部36と同等の円環状シール面37aとされ、そのシール面37aから若干下がった部位に鍔状部80aが突設されている。また、別体通路部材80の下端小径部80bと前記段付き挿入部92の上部との間には、前記分割連通路の弁洩れ対策と同様に、Oリング(シール部材)93が介装され、当該Oリング93の脱落を防止すべく、ワッシャ94が段付き挿入部92の上端部に圧入あるいは溶接にて接合固定されている。Oリング93の内周(別体通路部材80の下端小径部80bとの間)には、前記と同様にパッキン95が介装されている。
別体通路部材80の外側であって該別体通路部材80の鍔状部80aとワッシャ94との間には、前記シール面37aをシート面17に押し付ける方向に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)81が介装されている。
また、前記収容部90の上端部には、流路切換時に前述したボール式シール面離隔機構45により主弁体20の上半部20Aが押し下げられた際に、前記別体通路部材80のシール面37aもシート面17から離れるようにするための、別体通路部材80の上端部に外挿される、耳状部82a付きの環状押さえ部材82が固着されている。この押さえ部材82は、前記収容部90の上端部に2箇所設けられた凹部91に耳状部82aが嵌合せしめられてレーザー溶接等により接合固定されている。ボール式シール面離隔機構45により主弁体20の上半部20Aが押し下げられた際には、前記押さえ部材82が別体通路部材80の鍔状部80aに接当してこれを押し下げ、このとき以外は、押さえ部材82と鍔状部80aとの間に所定の隙間が形成されるように各部の寸法形状が設定されている。なお、上記のように環状押さえ部材82を設けることにより、別体通路部材80の組み付け時に該別体通路部材80の圧縮コイルばね81の付勢力による主弁体20の収容部90からの飛び出しを防止できるという効果も得られる。
また、圧縮機の吐出側に接続される、上側弁シート10Aにおける第1ポートpAの下端部(シート面17)には、高圧冷媒を主弁ハウジング10内に導入するための切欠部10sが設けられている(図3において上下ポート連通路31を構成する別体通路部材80の直上)。
以上の説明から理解されるように、本実施形態の六方切換弁1を図21に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100に組み込んで、冷房運転を行う際には、図8(A)に示される如くに、主弁体20に第1の回転位置をとらせ、上下ポート連通路31により上側と下側のポート間pA-pBを連通させ、上側Uターン連通路32により上側同士のポート間pE-pFを連通させ、下側Uターン連通路33により下側同士のポート間pC-pDを連通させる。
冷房運転から暖房運転に切り換える際には、図8(B)に示される如くに、主弁体20を第1の回転位置から反時計回りに120°回転させて第2の回転位置をとらせ、上下ポート連通路31により上側と下側のポート間pE-pDを連通させ、上側Uターン連通路32により上側同士のポート間pA-pFを連通させ、下側Uターン連通路33により下側同士のポート間pC-pBを連通させる。
ここで、上記したように、主弁体20に対して独立して上下動可能な別体通路部材80が備えられていない構成であると、冷房運転から暖房運転へ切り換えると、圧縮機からの高圧冷媒がポートpAから上側Uターン連通路32に導入されるとともに、上下ポート連通路31によりポートpEがポートpDを介して圧縮機吸入側に接続され、また、ポート間pC-pBを連通させる下側Uターン連通路33は低圧ないし中間圧側に接続される。そのため、上側Uターン連通路32に導入される高圧冷媒により主弁体20が押し下げられて、上側弁シート10Aのシート面17と上下ポート連通路31及び上側Uターン連通路32の上端シール面37との間に隙間が生じる。
高圧冷媒は前記切欠部10sから主弁ハウジング10内に常時導入されて、主弁ハウジング10内は高圧冷媒で満たされているため、高圧冷媒が導入される上側Uターン連通路32の上端シール面37とシート面17との間に隙間が生じても大きな問題とはならないが、圧縮機吸入側に接続される上下ポート連通路31の上端シール面とシート面17との間に隙間が生じると、主弁ハウジング10内の高圧冷媒がその隙間を介して圧縮機吸入側に抜けてしまう弁洩れが発生してしまう。
それに対し、本実施形態の六方切換弁1では、上下ポート連通路31の上部が主弁体20に対して独立して上下動可能な別体通路部材80で形成されるとともに、該別体通路部材80のシール面37aを圧縮コイルばね81でシート面17に押し付けるようにされているので、主弁体20(の上半部20A)が押し下げられても、上下ポート連通路31の上部を構成する別体通路部材80のシール面37aはシート面17に密接した状態を維持する。
そのため、圧縮機吸入側に接続される上下ポート連通路31の上端シール面37aとシート面17との間に隙間は生じることはなく、したがって、主弁ハウジング10内の高圧冷媒が圧縮機吸入側に抜ける弁洩れを生じ難くできる。
また、本実施形態の六方切換弁1においては、上下ポート連通路31は、通路径がポートpA〜pFの口径と略同じ直線状の通路とされ、上側Uターン連通路32及び下側Uターン連通路33は、内容積が比較的大きくされているので、圧力損失が軽減され、トータルでは従来の六方切換弁に比べて圧力損失を相当軽減できる。
また、主弁体20が上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成とされ、上半部20Aと下半部20Bはそれぞれ独立して上下動できるようにされるとともに、上半部20Aと下半部20Bとの間に圧縮コイルばね29が縮装されているので、そのばね力により、上半部20Aは押し上げられてそのシール面37(37a)が上側弁シート10Aのシート面17における各ポートpA、pE、pF周りに押し付けられるとともに、下半部20Bは押し下げられてそのシール面37が下側弁シート10Bのシート面17における各ポートpB、pC、pD周りに押し付けられる。
この場合、主弁体20(上半部20Aと下半部20B)側に凸部36が突設されてその端面が環状シール面37(37a)とされていることから、シート面17に対接する部分の面積が必要最小限とされ、そのため、対接面圧が高められる。これにより、十分なシール性を確保できて、弁洩れを効果的に抑制できる。
加えて、上側弁シート10A及び下側弁シート10Bは平板状とされるので、シート面17を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、従来例のようにシールすべき面に円筒面を含んでいるものに比べて、シール性を格段に向上できる。
さらに、主弁ハウジング10の上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに全てのポートpA〜pFが設けられることから、配管の取り回しが容易となるとともに、配管を含めた実質的な占有スペースを小さくできる。
さらに加えて、本実施形態においては、ボール式シール面離隔機構45により、主弁体20の回転時(流路切換中)に、主弁体20の上半部20Aが押し下げられるとともに、下半部20Bが押し上げられ、主弁体20側のシール面37(37a)が上側弁シート10A及び下側弁シート10Bのシート面17、17から離されるようにされているので、摺動摩擦がほとんど生じず、そのため、スティックスリップ等を生じ難くでき、摺動部分の摩耗を大幅に抑制することができ、さらに、摩耗が抑制されることから、耐久性が向上して弁洩れを効果的に抑えることができる。
さらに、本実施形態の六方切換弁1は、高圧を受ける主弁体20(上半部20Aと下半部20B)が円柱状とされ、その内部に連通路31〜33が設けられるので、従来例のような変形(撓み)等を生じ難くでき、十分な強度や耐久性を確保できる。
上記に加えて、本実施形態の六方切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、各連通路31〜33は主弁体20内で比較的大きく離されて設けられているので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流される従来のものに比べて、主弁ハウジング10内での熱交換量を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
<アクチュエータ7の構成及び動作>
次に、図9〜図11を参照しながら、第1実施形態の六方切換弁1における主弁体20を回動させるためのアクチュエータ7について説明する。
本実施形態1のアクチュエータ7は、前記主弁5内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用した流体圧式のもので、前記主弁ハウジング10における上側弁シート10Aの一端側に設けられた本体部50を有する。
本体部50は、上側弁シート10Aから上方に向けて延設された円筒状の胴部51と、この胴部51の上面開口を気密的に封止するように固着されてかしめ固定された、中央に凸部を持つ上面閉塞部材52と、胴部51の下面開口を封止するように固定された厚肉円板状の、シール部材とストッパを兼ねる下面閉塞部材53とを備え、その内部には、作動室55が設けられている。この作動室55には、運動変換機構58を構成する厚肉有蓋円筒状の受圧移動体60と、この受圧移動体60に該受圧移動体60の上下方向の移動に伴い相対的に回動可能に内挿される円柱状の回転駆動体65とが収容されている。回転駆動体65は、本体部50に対して回動可能に軸支されているため、作動室55内で上下方向に移動せずに、受圧移動体60の上下方向の移動に伴って相対的に該受圧移動体60内で回動するようになっている。
前記受圧移動体60の外周上端近くには、作動室55の内周面との間を気密的に封止して該作動室55を容積可変の下部55Aと上部55Bとに気密的に仕切るパッキン62が装着され、受圧移動体60の外周の下部には、胴部51の内周下半部に左右2カ所設けられた高さ方向に伸びるキー溝54にそれぞれ嵌め込まれる作動ピン63が圧入等により固定されている。
前記作動ピン63とキー溝54により、受圧移動体60は、直線的に上下動するがその回転は阻止される。
なお、図9には、受圧移動体60が最上昇位置にある状態(上動行程完了状態)が示され、図10には、受圧移動体60が最下降位置にある状態(下動行程完了状態)が示されている。
また、本体部50(の胴部51)の下部には、作動室下部55Aに高圧流体を導入・排出するための下部ポート56が設けられるとともに、その上部(上面閉塞部材52)には、作動室上部55Bに高圧流体を導入・排出するための上部ポート57が設けられている。
そして、本実施形態のアクチュエータ7には、前記運動変換機構58を構成する受圧移動体60と回転駆動体65との間に、受圧移動体60の上下動(往復直線運動)を回転駆動体65の正逆両方向の回転運動に変換するため、ボール72、このボール72の収容部74、及び螺旋溝75が設けられている。
詳細には、受圧移動体60には、複数個(本実施形態では2個)のボール72及びその収容部74が設けられ、回転駆動体65には、その外周に、周方向に曲がりながら上下方向に伸びる複数本(本実施形態では2本)の螺旋溝75が設けられている。前記収容部74は、受圧移動体60の下端部と、該下端部に溶接等により接合された環状押さえ部材66とにより、ボール72を、その一部を半径方向内方に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容するようになっている。一方、前記螺旋溝75は、前記収容部74から半径方向内方に突出するボール72の一部が嵌め込まれて回転自在に密接するような、断面円弧状の浅溝からなっている。
前記回転駆動体65の中央には、該回転駆動体65と一体回動するように段付き円柱状の回転駆動軸部76が圧入、かしめ等により固定されている。回転駆動軸部76と下面閉塞部材53に設けられた中央穴との間にはOリングが介装されている。回転駆動体65(回転駆動軸部76)の回転軸線Qは、主弁体20の回転軸線(中心線)Oに対して偏心するとともに、主弁体20の回転軸線Oに平行に配在されており、回転駆動軸部76と主弁体20の上側回転軸部30Aとの間には、回転駆動体65の回転を主弁体20に伝達する回転伝達機構77が設けられている。
回転伝達機構77は、回転駆動軸部76に連結固定された扇形状の駆動歯車97と、上側回転軸部30A(の枢軸部30a)に連結固定され、前記駆動歯車97に噛合する従動歯車98とで構成されている。なお、回転伝達機構77としては、例えば特願2014−223189号に記載されているような揺動アーム式のもの等を用いてもよい。
次に、アクチュエータ7の本体部50内の動作について説明する。
図9は、作動室下部55Aにポート56を介して高圧流体(高圧冷媒)を導入するとともに、作動室上部55Bからポート57を介して高圧流体を排出した状態を示している。
作動室下部55Aに高圧流体を導入すると、高圧流体は、受圧移動体60に装着されているパッキン62より下方で下面閉塞部材53より上方の空間の隅々まで、つまり、受圧移動体60の内周面と回転駆動体65の外周面との間に形成される隙間を介して受圧移動体60の上底面と回転駆動体65の上面との間の部分や、本体部50の胴部51の内周面と受圧移動体60の外周面との間に形成される隙間部分等に行き渡る。
このような構成のもとで、図9に示される状態において、作動室上部55Bにポート57を介して高圧流体を導入するとともに、作動室下部55Aからポート56を介して高圧流体を排出すると、作動室下部55Aより作動室上部55Bの方が高圧となる。そのため、受圧移動体60が下向きに押されて、受圧移動体60の作動ピン63がキー溝54に案内されながら、受圧移動体60が真っ直ぐに下動し、これに伴って運動変換機構58のボール72も回転しながら真っ直ぐに下動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が一方向(ここでは上から視て反時計回り)に回転する。そして、受圧移動体60の下端(環状押さえ部材66)が下面閉塞部材53に接当すると、受圧移動体60の下動が停止し、回転駆動体65の回転も停止する。この行程を下動行程と称する。
それに対し、前記下動行程完了状態において、作動室下部55Aにポート56を介して高圧流体を導入するとともに、作動室上部55Bからポート57を介して高圧流体を排出すると、作動室上部55Bより作動室下部55Aの方が高圧となる。そのため、受圧移動体60が上向きに押されて、受圧移動体60の作動ピン63がキー溝54に案内されながら、受圧移動体60が真っ直ぐに上動し、これに伴って運動変換機構58のボール72も回転しながら真っ直ぐに上動する。この際、ボール72の、螺旋溝75内に嵌り込んでいる部分により螺旋溝75が周方向に押されて回転駆動体65が他方向(ここでは上から視て時計回り)に回転する。そして、受圧移動体60の上端が上面閉塞部材52(の凸部)に接当すると、受圧移動体60の上動が停止し、回転駆動体65の回転も停止する。この行程を上動行程と称する。
上記のように受圧移動体60に下動行程をとらせることにより、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われ、それとは逆に、受圧移動体60に上動行程をとらせることにより、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われることになる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の六方切換弁2を図12〜20を参照しながら説明する。
図12は、本発明に係る六方切換弁の第2実施形態を示す概略斜視図、図13(A)は、第2実施形態の六方切換弁における上面側配置図、図13(B)は、図13(A)に対応させた下面側配置図、図14は、図13(A)、(B)における、Oを通るC−C矢視線に従う断面図である。以下の各図において、第1実施形態の六方切換弁1の各部に対応する部分には共通の符号ないし(’)付き符号を付して重複説明を省略する。
本第2実施形態の六方切換弁2は、第1実施形態と同様に、前述した図21に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における六方切換弁180として用いられるもので、ロータリー式の主弁6と、流体圧式(シリンダ型)のアクチュエータ8とを備える。なお、本実施形態の六方切換弁1に備えられている6個のポートも、上記六方切換弁180の各ポートpA〜pFに対応させて同一の符号が付されている。
<主弁6の構成及び動作>
主弁6は、主弁ハウジング10と、この主弁ハウジング10内に回動可能かつ上下動可能に配在された主弁体20とを備える。
主弁ハウジング10は、円筒状の胴部10Cと、この胴部10Cの上面開口を気密的に封止するように固定された厚肉円板状の上側弁シート10Aと、胴部10Cの下面開口を封止するように前記上側弁シート10Aと同様に前記胴部10Cに固定された厚肉円板状の下側弁シート10Bとを有する。上側弁シート10Aには、該上側弁シート10Aに形成された開口と該開口に接続された管継手からなる3個のポート(第1ポートpA、第2ポートpF、第3ポートpE)が設けられ、下側弁シート10Bにも、該下側弁シート10Bに形成された開口と該開口に接続された管継手からなる3個のポート(第4ポートpB、第5ポートpC、第6ポートpD)が設けられ、6個のポートpA〜pFは、ここでは、弁シート10A、10Bの一端側(左側)に偏って配在され、それらは、同径でかつ平面視で(主弁ハウジング10の中心線O方向で視て)同一円周上に設けられており、上側のポートpAと下側のポートpB、上側のポートpEと下側のポートpD、上側のポートpFと下側のポートpCは、平面視で同一位置に配在されている。上側弁シート10Aの下面及び下側弁シート10Bの上面は、平坦で滑らかなシート面17、17となっている。
前記主弁ハウジング10における上側弁シート10Aの上面側中央には、丸棒からなる回転軸部30の上端部を回転自在に支持する軸受穴15Aが設けられ、下側弁シート10Bの下面側には、回転軸部30の下端部を回転自在に支持する軸受穴15Bが設けられている。
主弁ハウジング10における胴部10Cの一側部の上下方向中央部付近には、前記シリンダ型のアクチュエータ8が横向きに差し込まれて取り付けられている(後で詳述)。
主弁体20は、短円柱状の上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成となっており、比較的薄い第1層部材21と該第1層部材21の下面側に溶接等により一体的に接合された厚肉円板状の第2層部材22とで上半部20Aが構成され、厚肉円板状の第3層部材23と該第3層部材23の下面側に溶接等により一体的に接合された比較的薄い第4層部材24とで下半部20Bが構成されている。なお、第1実施形態では単層構造であった上半部20Aと下半部20Bとを上記のように2層構造としているのは、第1実施形態では上側Uターン連通路32及び下側Uターン連通路33は、その上面又は下面の全面が開口したものとなっていたが、本例では、主弁体20内に形成される上側Uターン連通路43及び下側Uターン連通路44を、両端部のみが開口したU字状通路とするためである(詳細は、必要なら、本願の出願人が先に提案している特願2014−223189号等を参照されたい)。
上半部20Aと下半部20Bの中央には、回転軸部30が摺動自在に嵌挿される貫通穴11A、11Bが設けられるとともに、上側の貫通穴11Aの下部と下側の貫通穴11Bの上部には、それぞれ、回転軸部30より大径のばね受け穴11a、11bが逆向きに設けられ、該ばね受け穴11a、11bの底部間には、上半部20Aと下半部20Bとを相互に逆方向に付勢する圧縮コイルばね(付勢手段)29’が縮装されている。
また、上半部20Aの下部と下半部20Bの上部の他端側(右側)には、アクチュエータ8取り付け用の切欠部20j、20kが設けられるとともに、前記アクチュエータ8により主弁体20を回動させるための一体回動棒25’が配在されている。一体回動棒25’は、上半部20Aの下部と下半部20Bの上部とに設けられた装着穴26a’、26b’に摺動可能に嵌挿されている。
流路切換にあたり、主弁体20は、後述するアクチュエータ8により、正逆両方向に回転せしめられ、図17(A)及び図18に示される如くの第1の回転位置と、この第1の回転位置から時計回りに45°回転させた、図17(B)及び図19に示される如くの第2の回転位置とを選択的にとり得るようにされている。
主弁体20には、図16に示される如くに、第1上下ポート連通路41と、第2上下ポート連通路42と、上側Uターン連通路43と、下側Uターン連通路44とが設けられている。
第1上下ポート連通路41及び第2上下ポート連通路42は、各ポートpA〜pFと略同径の直線状の貫通路とされ、上側Uターン連通路43と下側Uターン連通路44は、図18、図19に示される如くに、U字状の通路とされ、その両端部は各ポートpA〜pFと同径の円形とされている。各連通路41〜44の上面開口又は下面開口は、前記6個のポートpA〜pFと同一円周上に配在されている。第1上下ポート連通路41と、第2上下ポート連通路42と、上側Uターン連通路43の両端部、並びに、第1上下ポート連通路41と、第2上下ポート連通路42と、下側Uターン連通路44の両端部の四者の角度間隔は45°となっている。
ここでは、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、第1上下ポート連通路41は、第1ポートpAの真下で第4ポートpBの真上に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに45°回転させた第2の回転位置では、上側弁シート10Aと下側弁シート10Bにより閉塞された状態となる。
また、第2上下ポート連通路42は、第1の回転位置では、上側弁シート10Aと下側弁シート10Bにより閉塞された状態となり、第2の回転位置では、第3ポートpEの真下で第6ポートpDの真上に位置する。
上側Uターン連通路43の両端部は、第1の回転位置では、第3ポートpEと第2ポートpFの真下に位置し、第2の回転位置では、第1ポートpAと第2ポートpFの真下に位置する。
さらに、下側Uターン連通路44の両端部は、第1の回転位置では、第5ポートpCと第6ポートpDの真上に位置し、第2の回転位置では、第5ポートpCと第4ポートpBの真上に位置する。
したがって、第1上下ポート連通路41は、第1の回転位置では、第1ポートpAと第4ポートpBを連通させ、第2の回転位置では、いずれのポートも連通させないようにされ、第2上下ポート連通路42は、第1の回転位置では、いずれのポートも連通させず、第2の回転位置では、第3ポートpEと第6ポートpDとを連通させ、上側Uターン連通路43は、第1の回転位置では、第3ポートpEと第2ポートpFを連通させ、第2の回転位置では、第1ポートpAと第2ポートpFとを連通させ、下側Uターン連通路44は、第1の回転位置では、第5ポートpCと第6ポートpDを連通させ、第2の回転位置では、第5ポートpCと第4ポートpBとを連通させるようになっている。
上記からわかるように、第1上下ポート連通路41は、圧縮機吐出側に接続される第1ポートpAと室外熱交換器に接続される第4ポートpBとを連通する高圧専用の連通路とされ、第2上下ポート連通路42は、圧縮機吸入側に接続される第6ポートpDと冷房用膨張弁に接続される第3ポートpEとを連通する低圧専用の連通路とされる。
前記した上下ポート連通路41、42の下端部、上側Uターン連通路43の両端部、及び下側Uターン連通路44の両端部には、第1実施形態と同様に、上側弁シート10A、下側弁シート10Bのシート面17、17における各ポートpA〜pFの開口周りに密接する環状シール面37を持つ凸部36が突設されている。
上記に加え、本実施形態においても、第1実施形態と同様なボール式シール面離隔機構45が設けられている。
一方、第1上下ポート連通路41及び第2上下ポート連通路42には、第1実施形態の上下ポート連通路31と同様に、弁洩れ対策が講じられている。なお、本実施形態の用途では、上側Uターン連通路43に高圧流体を導入するときは第1上下ポート連通路41には流体を流さないため、第1上下ポート連通路41には上下ポート連通路31と同様の弁漏れ対策は必要ないが、他の用途も考慮した結果、第1上下ポート連通路41にも弁漏れ対策が施されている。
これを、第1上下ポート連通路41側を代表して説明すると、本例では、主弁体20の上半部20Aを貫通する段付きの収容部90’が設けられ、該収容部90’に、例えばステンレスパイプからなる、上部大径部82Aと管状通路部82Bを持つ延長通路部材82が挿入されている。延長通路部材82における管状通路部82Bの下部82bは、上半部20Aの下側に突出して下半部20Bの上部に形成された段付き挿入部96に挿入されている。延長通路部材82の下部82bと段付き挿入部96との間にOリング(シール部材)97が介装され、当該Oリング97の脱落を防止すべく、ワッシャ94が段付き挿入部96の上端部に圧入あるいは溶接にて接合されている。
また、延長通路部材82の上部大径部82Aには、第1上下ポート連通路41の上部を構成する、内周鍔状部85a付きの別体通路部材85が上下動可能に嵌挿されている。この別体通路部材85は、図14に加えて図15を参照すればよくわかるように、その内周鍔状部85aの上端面に上側弁シート10Aのシート面17に密接する、前記凸部36と同等の円環状シール面37aを持つ凸部36aが突設されるとともに、その胴部外周には環状溝85cが形成され、該環状溝85cには、第1実施形態と同様なOリング(シール部材)93及びテフロン(登録商標)等からなるパッキン95が装着されており、これにより、別体通路部材85と延長通路部材82の上部大径部82Aとの間が気密的に封止されている。
別体通路部材85の内側であって該別体通路部材85の内周鍔状部85aの下面と上部大径部82Aの底面(段差面)82dとの間には、前記シール面37aをシート面17に押し付ける方向に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)86が介装されている。
なお、本例においても、圧縮機の吐出側に接続される、上側弁シート10Aにおける第1ポートpAの下端部(シート面17)には、高圧冷媒を主弁ハウジング10内に導入するための切欠部10sが設けられている(図14において第1上下ポート連通路41を構成する別体通路部材85の直上)。
以上の説明から理解されるように、本実施形態の六方切換弁1を図21に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100に組み込んで、冷房運転を行う際には、図17(A)、図18に示される如くに、主弁体20に第1の回転位置をとらせて、第1上下ポート連通路41により第1ポートpAと第4ポートpBを連通させるとともに、上側Uターン連通路43により第3ポートpEと第2ポートpFを連通させ、さらに、下側Uターン連通路44により第5ポートpCと第6ポートpDを連通させる。このとき、第2上下ポート連通路42の上下両端部(開口)は、上側及び下側の弁シート10A、10Bにより閉塞されている。
それに対し、冷房運転から暖房運転に切り換える際には、図17(B)、図19に示される如くに、主弁体20を第1の回転位置から反時計回りに45°回転させて第2の回転位置をとらせ、第2上下ポート連通路42により第3ポートpEと第6ポートpDとを連通させるとともに、上側Uターン連通路43により、第1ポートpAと第2ポートpFとを連通させ、かつ、下側Uターン連通路44により第5ポートpCと第4ポートpBとを連通させる。このとき、第1上下ポート連通路41の上下両端部(開口)は、上側及び下側の弁シート10A、10Bにより閉塞されている。
ここで、本実施形態の六方切換弁2においても、第1及び第2上下ポート連通路41、42の上部が主弁体20に対して独立して上下動可能な別体通路部材85で形成されるとともに、該別体通路部材85のシール面37aを圧縮コイルばね86でシート面17に押し付けるようにされているので、主弁体20(の上半部20A)が押し下げられても、第1及び第2上下ポート連通路41、42の上部を構成する別体通路部材85のシール面37aはシート面17に密接した状態を維持する。
そのため、圧縮機吸入側に接続される第2上下ポート連通路42(pE→pD)の上端シール面37aとシート面17との間に隙間は生じることはなく、したがって、主弁ハウジング10内の高圧冷媒が圧縮機吸入側に抜ける弁洩れを生じ難くできる。
上記に加えて、本実施形態の六方切換弁2においても、第1実施形態の六方切換弁1と略同様な作用効果が得られることは勿論である。
<アクチュエータ8の構成及び動作>
次に、図12、14、20を参照しながら、第2実施形態の六方切換弁2における主弁体20を回動させるためのアクチュエータ8について説明する。
図示実施形態におけるアクチュエータ8は、前記主弁6内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用した流体圧式(シリンダ型)のもので、主弁ハウジング10における胴部10Cの、ポートpA〜pFが設けられた側とは反対側の上下方向中央部付近の左右(図面上では前後)に設けられた切欠開口10j、10kに、主弁6の中心線Oに直交する方向から横向きに差し込まれて溶接、ろう付け等により密封接合されたシリンダ本体部150を有する。
シリンダ本体部150には、その左右両端開口を気密的に封止するように、断面ハット形状の左蓋部材151及び右蓋部材152が固着されてかしめ固定されるとともに、この左蓋部材151及び右蓋部材152には、それぞれ円環状底部付き筒状の左ストッパ51A及び右ストッパ51Bが溶接等により固着されている。
シリンダ本体部150の中央部には、主弁ハウジング10内に開口する切欠開口168が設けられており、その内部には、受圧移動体60が左右方向に摺動自在に配在されている。
受圧移動体60は、平面視で細長い矩形枠状の板状連結体160と、この板状連結体160の左右両端にボルト等で取り付けられて、シリンダ本体部150の内周面との間を気密的に封止して容積可変の左室55A及び右室55Bと主弁ハウジング10内に開口する中央室55Cとに仕切るピストン型パッキン60A、60Bとを有している。板状連結体160は、主弁体20の中心側に位置する半分程度が上半部20Aと下半部20Bとの間に形成される隙間に挿入されている。板状連結体160の左右方向中央には、主弁体20に設けられた一体回動棒25’に係合するU字状溝を持つ連れ回し係合部165が設けられている。
図20(A)には、主弁体20が第1の回転位置にある状態、すなわち、受圧移動体60が最も左側に位置して、左側のパッキン60A部分が左ストッパ51Aに接当した状態が示され、図20(B)には、主弁体20が第2の回転位置にある状態、すなわち、受圧移動体60が最も右側に位置して、右側のパッキン60B部分が右ストッパ51Bに接当した状態が示されている。
また、シリンダ本体部150の左端部近くと右端部近くには、左室55A、右室55Bにそれぞれ高圧冷媒を導入・排出するための左室ポート56、右室ポート57が設けられている。
次に、アクチュエータ8の動作について説明する。
図20(A)に示される、主弁体20が第1の回転位置にある状態から、左室55Aに左室ポート56を介して高圧流体(高圧冷媒)を導入するとともに、右室55Bから右室ポート57を介して高圧流体を排出すると、右室55Bより左室55Aの方が高圧となる。そのため、受圧移動体60が右向きに押されて、受圧移動体60が直線的に右方に摺動し、これに伴って連れ回し係合部165も右方に移動する。その際、連れ回し係合部165に係合している一体回動棒25’によって、主弁体20が周方向に押されることとなり、主弁体20が上から視て反時計回りに回転する。受圧移動体60のパッキン60B部分が右ストッパ51Bに接当すると、受圧移動体60の右方への移動が停止し、これにより、主弁体20が第2の回転位置で停止する。この際の主弁体20の回転角度は45°となる。
この状態から、右室55Bに右室ポート57を介して高圧流体(高圧冷媒)を導入するとともに、左室55Aから左室ポート56を介して高圧流体を排出すると、左室55Aより右室55Bの方が高圧となる。そのため、受圧移動体60が左向きに押されて、受圧移動体60が直線的に左方に摺動し、これに伴って連れ回し係合部165も左方に移動する。その際、連れ回し係合部165に係合している一体回動棒25’によって、主弁体20が周方向に押されることとなり、主弁体20が上から視て時計回りに回転する。受圧移動体60のパッキン60A部分が左ストッパ51Aに接当すると、受圧移動体60の左方への移動が停止し、これにより、主弁体20が第1の回転位置で停止する。この際の主弁体20の回転角度は45°となる。
このように、主弁体20が第1の回転位置にあるときにおいて、受圧移動体60を右行させることにより、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われ、それとは逆に、主弁体20が第2の回転位置にあるときにおいて、受圧移動体60を左行させることにより、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われることになる。
なお、本発明に係る六方切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。
また、弁ハウジング10、主弁体20、受圧移動体60、回転駆動体65等の素材としては、アルミやステンレス等が用いられるが、それに限られることはなく、その他の金属、樹脂等の、導入される流体の圧力に耐えられるものであれば、如何なるものであってもよい。