JP6491125B2 - 異物検出装置および異物検出方法 - Google Patents

異物検出装置および異物検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、X線を用いて被検査物内の異物検出を行なう技術に関する。
食品等の製造を行なう工場では、製品に金属やプラスチック等の異物が混入していないか否かを異物検出装置によって調べている。
この異物検出装置として、従来では、コンベア等によって所定方向に搬送される被検査物の通過路にX線を出射し、被検査物を透過したX線の強さをセンサ(複数のX線センサが通過方向と直交する方向に並んで一体化されたラインセンサ)で検出し、その検出信号が異物の存在によって局所的に変化することを利用して検出する方式のものが用いられている。
しかし、上記したように被検査物を透過したX線の強度をセンサで検出する方式では、X線が通過する方向の厚さや材質が変化する物品による透過率の違いにより、異物を正確に検出できない場合があった。
これを解決する技術として、例えば特許文献1には、被検査物を通過するX線のエネルギーを異ならせて得られる二つの透過X線データに対するサブトラクション(画像データの差分処理)等の処理を行なうことで、異物の検出精度を高めることが提案されている。
特開平10−318943号公報
しかしながら、上記特許文献1では、単一のX線源から出力されて被検査物を透過したX線を、被検査物の搬送方向に並んで配置され、X線に対するエネルギー感度が異なる二つの検出器(ラインセンサ)で検出することで、二つの透過X線データを得るようにしている。
このため、必然的に一方の検出器に入射するX線が被検査物内を透過する経路と、他方の検出器に入射するX線が被検査物内を透過する経路が一致せず、その影響で、被検査物の異物を正しく認識できなくなることが考えられる。また、二つの検出器のセンサ素子の特性差により、正確な異物検出を行なえないことも考えられる。
なお、特許文献1には、X線エネルギーが異なる2つのX線源を用いることも記載されているが、その場合、二つのX線が互いに干渉しないようにX線源およびそれに対応する二つの検出器(ラインセンサ)の間隔を広くとらなければならず、装置全体が大きくなるとともに、その間で搬送中の被検査物の姿勢変化が起きやすくなり、しかも、前記同様に二つの検出器を用いるため、異物の検出精度が低下する恐れがある。
本発明は、上記課題を解決し、被検査物の通過方向に交差するように一列に並んだ複数のX線センサを用いながら、異物の検出をより高い精度で行なえ、小型に構成できる異物検出装置および異物検出方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の異物検出装置は、
被検査物が通過する通過路にX線を出射するX線発生部(22)と、
前記X線発生部から前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を受ける位置で、被検査物の通過方向と交差する方向に並ぶように配置され、それぞれがX線を受けて電気信号に変換する複数のX線センサ(311〜31N)と、
前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する透過画像データ生成手段(40)と、
前記透過画像データ生成手段によって生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する判定手段(50)とを有する異物検出装置において、
当該異物検出装置の動作モードを、異物を含まない良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて動作を確認する準備モードと、異物の有無の検出が必要な被検査物を前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間に通過させて異物検出処理を行なう検査モードのいずれかに切り替えるモード切替手段(60)と、
前記準備モードの際に、前記良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させたときに得られる前記透過画像データから、前記X線センサが前記所定期間に出力するパルス信号の数の最大値を求める最大パルス数算出手段(70)と、
前記最大パルス数算出手段によって求めた最大値と、前記X線センサが前記所定期間に出力することができる規格上の最大パルス数に対して予め設定された適正範囲とを比較する比較手段(80)と、
前記比較手段の比較結果に応じて、前記最大値が前記適正範囲に入るように、前記複数のX線センサに入力されるX線量を設定するX線量設定手段(90)とをさらに有し、
前記X線センサは、X線の光子が入力される毎に該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型であって、
前記透過画像データ生成手段は、
前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成するように構成され、
前記判定手段は、前記透過画像データ生成手段で得られた複数の透過画像データに対してサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定するように構成され、
前記準備モードで設定されたX線量を用いて、前記検査モードの検査を行うことを特徴とする。
また、本発明の請求項2の異物検出装置は、請求項記載の異物検出装置において、
前記X線発生部には、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管が用いられ、
前記X線量設定手段は、前記熱陰極X線管の管電流または管電圧の少なくとも一方を可変して、前記X線センサに入射されるX線量を設定することを特徴とする。
また、本発明の請求項3の異物検出装置は、請求項記載の異物検出装置において、
前記X線量設定手段は、前記複数のX線センサの受光面積を可変して、該複数のX線センサに入射されるX線量を設定することを特徴とする。
また、本発明の請求項の異物検出方法は、
X線発生部(22)から被検査物が通過する通過路にX線を出射する段階と、
前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を、被検査物の通過方向と交差する方向に並んだ複数のX線センサ(311〜31N)で受けて電気信号に変換する段階と、
前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する段階と、
前記生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する段階とを含む異物検出方法において、
当該異物検出装置の動作モードを、異物を含まない良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて動作を確認する準備モードと、異物の有無の検出が必要な被検査物を前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間に通過させて異物検出処理を行なう検査モードのいずれかに切り替える段階と、
前記準備モードの際に、前記良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させたときに得られる前記透過画像データから、前記X線センサが前記所定期間に出力するパルス信号の数の最大値を求める段階と、
前記最大値を求める段階によって求めた最大値と、前記X線センサが前記所定期間に出力することができる規格上の最大パルス数に対して予め設定された適正範囲とを比較する段階と、
前記比較する段階での比較結果に応じて、前記最大値が前記適正範囲に入るように、前記複数のX線センサに入力されるX線量を設定する段階とをさらに含み、
前記X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用い、
前記透過画像データを生成する段階では、前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成し、
前記被検査物内の異物の有無を判定する段階では、前記生成された複数の透過画像データに対してサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定し、
前記準備モードで設定されたX線量を用いて、前記検査モードの検査を行うことを特徴とする。
このように、本発明の請求項1、5では、X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用い、各X線センサについて、そのX線センサから所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、所定期間内のパルス信号入力数を領域毎に累積し、その領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成し、それら生成された複数の透過画像データに対してサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定している。
このため、被検査物の通過方向と交差する方向に一列に並んだ複数のX線センサを用いながら、複数のX線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成することができ、従来のように複数のラインセンサを被検査物の通過方向に並べる方法や、複数のX線源を用いる方法に比べて、異物の検出精度を高くすることができ、装置全体を小型化できる。
また、本発明の請求項2の異物検出装置では、準備モードの際に、異物を含まない良品サンプルをX線発生部と複数のX線センサの間に通過させたときに得られる透過画像データから、X線センサが所定期間に出力するパルス信号の数の最大値を求め、その最大値が、X線センサが所定期間に出力することができる規格上の最大パルス数に対して予め設定された適正範囲に入るように、複数のX線センサに入力されるX線量を設定している。
このため、被検査物を透過したX線の光子数が多すぎて、光子毎に発生するパルス信号が重なりあう現象(パイルアップ現象)による透過画像データの誤差が生じにくくなり、種々の被検査物の異物検出を精度良く行なうことができる。
本発明の実施形態の構成図 X線センサから出力されるパルス信号と領域との関係を示す図 波高値の領域毎に得られる3種類の透過画像データの例を示す図 X線センサから出力されるパルス信号が重なった場合の波形を示す図 パイルアップを抑制するための構成例を示す図
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した異物検出装置20の全体構成を示している。
この異物検出装置20は、搬送装置21、X線発生部22、複数NのX線センサ31〜31、透過画像データ生成手段40および判定手段50を有している。
搬送装置21は、被検査物Wを所定方向(図では紙面に直交する方向)に搬送するためのものであり、一般的には、コンベアのように被検査物Wを一定速度で水平に搬送するものが使用されるが、必ずしも動力源をもつ搬送装置を用いる必要はなく、被検査物の重さを利用して傾斜路を滑走させる方式や、上方から落下させる方式であってもよい。
X線発生部22は、搬送装置21によって所定方向に搬送される被検査物Wが通過する通過路にX線を出射する。この実施形態では、搬送装置21によって搬送される被検査物Wの上方からその搬送路の幅方向に拡がるX線を出射するものとするが、X線の出射方向はこれに限らず、被検査物Wの側方から側面方向へ出射してもよい。
X線発生部22は、X線源として、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管や、格子制御型熱陰極X線管が用いられ、その他にX線管を駆動するために必要な電源が含まれている。
複数NのX線センサ31〜31は、それぞれがX線を受けて電気信号に変換するものであり、X線発生部22から被検査物Wの通過路に出射されて被検査物Wを透過したX線を受ける位置で、被検査物Wの通過方向(紙面と直交する方向)と交差(この例では直交)する方向に隙間がほとんど無い状態で一列に並んでいる。
なお、実際の装置としては、複数NのX線センサ31〜31は、それぞれが一体的に連結された一本のラインセンサ30で構成され、搬送装置21の搬送路の下面側に配置されている。ここで、例えばX線センサの幅を1mm、X線センサ同士の隙間を幅に対して無視できる程小さいとし、被検査物Wを搬送する搬送路の幅を200mmとすれば、概略200個のX線センサを有するラインセンサを用いればよい。
従来の異物検出装置で用いられるX線センサは、一般的に入射したX線により可視光を発生してこれをフォトセンサで受けて電気信号に変換するシンチレータ型フォトセンサであって可視光のエネルギーを積分した値が画像の濃淡を表すが、この異物検出装置20が用いるX線センサ31〜31は、被検査物Wを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型(CdTeセンサ)であり、単位時間当りに出力するパルス数が透過画像の濃淡を表すことになる。
透過画像データ生成手段40は、X線発生部22とX線センサ31〜31の間を被検査物Wが通過している間にX線センサ31〜31からそれぞれ出力される信号を所定期間(以下スキャン時間という)ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物Wの通過方向とX線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、その位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する。なお、このスキャン時間は、被検査物に対する搬送方向の検出単位を決定するものであり、被検査物の長さを搬送速度で除算して得られる物品通過時間に対して十分短いものとする。
前記したように、光子検出型のX線センサ31〜31は、一つの光子の入力に対して、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を一つ出力するが、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーは一定でなくばらつきがあるため、それに応じて、図2に示すように、各X線センサから出力されるパルス信号P、P、P、…の波高値H、H、H、…にばらつきが生じる。
言い換えれば、エネルギーの異なるX線が混在していることになり、スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H、H、H、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数M(図2ではM=4)に区分けした領域R〜Rのいずれに入るかを判定し、スキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積すれば、X線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成することができる。
これを実現するために、透過画像データ生成手段40は、各X線センサ31〜31の出力信号を、それぞれA/D変換器41〜41によってデジタルのデータ列に変換し、波高値検出手段42〜42に入力する。
各波高値検出手段42〜42は、入力されるデータ列からパルス信号の波高値を検出するためのものであり、例えば入力されるデータ列に対して微分処理を行い、微分値(信号の傾き)が所定以上の正の値から所定以下の負の値に切り換わるときのゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスイミングにおけるデータ値をパルス信号の波高値として検出し、それぞれ領域判定手段43〜43に出力する。
領域判定手段43〜43は、前記した波高値の出力範囲を複数Mの領域領域R〜Rに区分けする境界値領域L〜LM−1と、波高値検出手段42〜42で検出された波高値とを比較し、その波高値がいずれの領域に入るかを判定し、波高値が入る領域を表す領域識別信号を領域別累積手段44〜44に出力する。
各領域別累積手段44〜44は、スキャン時間内に領域判定手段43〜43からそれぞれ出力される領域識別信号を受け、同一領域を示す領域識別信号の入力数をそれぞれ累積して、スキャン時間内における領域毎の累積数を求めて順次出力する。
この領域識別信号の累積数は、スキャン時間内に1つのX線センサから出力されるパルス信号のうち、その波高値が入る領域が同じパルス信号同士の累計数であり、上記計数手段からスキャン時間毎に出力される領域識別信号の累積数を、透過画像データメモリ45に、並列的に且つ時系列に記憶することで、領域ごとの被検査物に対するX線透過画像データが得られる。
簡単な例として、スキャン時間を3単位、X線センサ数Nを3、波高値の領域数Mを3とし、パルス信号の累計数をA(波高値の領域の順位、スキャン時間の順位,センサの並び順位)で表すと、最初のスキャン時間T1内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,1,1)、領域Rに入るものの累計数をA(2,1,1)、領域Rに入るもの累計数をA(3,1,1)とする。
また、同じスキャン時間T1内で2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,1,2)、領域Rに入るものの累計数をA(2,1,2)、領域Rに入るものの累計数をA(3,1,2)とする。
また、同じスキャン時間T1内で3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,1,3)、領域Rに入るものの累計数をA(2,1,3)、領域Rに入るものの累計数をA(3,1,3)とする。
同様に、次のスキャン時間T2内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,2,1)、領域Rに入るものの累計数をA(2,2,1)、領域Rに入るものの累計数をA(3,2,1)とし、2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,2,2)、領域Rに入るものの累計数をA(2,2,2)、領域Rに入るものの累計数をA(3,2,2)とし、3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,2,3)、領域Rに入るものの累計数をA(2,2,3)、領域Rに入るものの累計数をA(3,2,3)とする。
さらに、次のスキャン時間T3内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,3,1)、領域Rに入るものの累計数をA(2,3,1)、領域Rに入るものの累計数をA(3,3,1)とし、2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るもの累計数をA(1,3,2)、領域Rに入るものの累計数をA(2,3,2)、領域Rに入るものの累計数をA(3,3,2)とし、3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累計数をA(1,3,3)、領域Rに入るものの累計数をA(2,3,3)、領域Rに入るものの累計数をA(3,3,3)とする。
このようにして得られたデータから、領域Rについて得られた9つの累計数を、図3の(a)のように、横方向をスキャン時間の順、縦方向をセンサの並び順となるように3行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の9つの部位の透過画像データが得られる。
同様に、領域Rについて得られた9つの累計数を、図3の(b)のように3行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の透過画像データが得られ、領域Rについて得られた9つの累計数を、図3の(c)のように3行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の透過画像データが得られる。
実際には、異物検査に必要なスキャン数は、物品の搬送方向の長さを搬送速度で除して得られる搬送時間(例えば0.5秒)をスキャン時間(例えば1ミリ秒)で除算した値(例えば500)となり、センサの並び方向の分割数はX線センサの数N(例えば200)に対応している。
このようにして、波高値の領域にそれぞれ対応したエネルギー範囲毎の透過画像データが得られれば、判定手段50により、それら複数の透過画像データに対して従来から行なわれているサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定することができる。
なお、上記の波高値の領域の区分けの仕方は任意であり、一つの例としては、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーの最大値(X線管の場合、電子の加速電圧に依存する理論値)に対してX線センサが出力するパルス信号の波高値と、所定の基準値(例えば0)との間を複数に等分すればよい。また、領域数も2つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ、その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なってもよい。
具体的には、例えば、初期の領域数を10として、それぞれの領域で透過画像データを生成しておき、エネルギーの大きい方から数えて1番目の領域を前述の領域Rに割当て、3番目の領域を前述の領域Rに割当て、……というように、初期の領域から最終的な領域に選択的に割り当てて、この割り当てられた領域の透過画像データを複数用いて、所定の画像処理を行なってもよい。また、エネルギーの大きい方から数えて1番目と2番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域Rの透過画像データとし、3番目と4番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域Rの透過画像データとし、……というように初期の複数の領域の透過画像データを合成して最終的な1つの領域の透過画像データとし、その合成された透過画像データを複数用いる、あるいは合成された透過画像データと、それを含まない初期の領域の透過画像データとを用いて所定の画像処理を行なってもよい。
上記具体例では、初期の領域の数だけ透過画像データを生成しておき、異物の検出に最適な透過画像データの組合せに応じて、領域の割当てや透過画像データの合成を行なうようにしているが、被検査物に対して異物検出に最適な透過画像データの組合せが既知の場合には、割当てられる領域についての透過画像データのみを生成すればよく、また、複数の透過画像データを合成する代わりに、複数の領域の領域識別信号の累積数を加算して、一つの透過画像データを生成してもよい。これにより、透過画像データの記憶領域を節約することができる。
ここで、サブトラクション処理について簡単に説明すると、同一部位について異なるエネルギーによるX線透過データが得られた場合、その差分処理を行なうと、その部位の厚さの影響が除去され、材質(透過率)の影響だけが現れ、X線エネルギーの違いに対する被検査物自体の材質の透過率変化と、異物の材質の透過率変化の差が顕著化する。これにより、異物に対する検出感度が高くなる。判定手段50では、この処理の他に、ノイズの除去等のために各種のフィルタ処理などを行い、異物の検出をより高い精度で行なっている。
上記方法で得られた複数の透過画像データは、物品の通過方向と直交する方向に一列に並んだ複数のX線センサの出力から求めているので、二つのラインセンサを用いる従来方式に比べて、格段に精度の高い透過画像データが得られ、それにより、異物検出を正確に行なうことができ、しかも小型に構成できる。
なお、判定手段50の判定結果(異物の有無を示す信号)は、図示しない後続の選別装置に送られ、異物有りと判定された物品が、良品の経路から排除されることになる。
上記のように光子検出型のX線センサを用いた場合、X線発生部22から出射されるX線の量(単位時間当りに出力される光子数)が多すぎると、図4のように、X線センサから出力されるパルス信号P、P同士やパルス信号P、P同士が重なってしまい、二つのパルス信号に対して一つのピーク値(波高値)しか得られない現象が発生する。この現象を一般的にパイルアップ現象と呼び、この現象が高い確率で発生すると、領域ごとの正しい計数結果が得られなくなり、その結果、異物の検出を正確に行なえなくなる。
これを防ぐためには、予め被検査物に応じてX線発生部22から出射されるX線の量やX線センサに入力されるX線の量を適正な範囲に設定すればよい。
図5は、この機能を実現するための構成を示しており、前記実施形態に示した構成に加え、モード切替手段60、最大パルス数算出手段70、比較手段80およびX線量設定手段90を備えている。
モード切替手段60は、異物検出装置20の動作モードを、異物を含まない良品サンプルをX線発生部22とX線センサ31〜31の間に通過させて動作を確認する準備モードと、異物の有無の検出が必要な被検査物をX線発生部22とX線センサ31〜31の間に通過させて異物検出処理を行なう検査モードのいずれかに切り替えるためのもので、例えば図示しない操作部に対する所定操作を受けてモードの切替え処理を行なう。
最大パルス数算出手段70は、準備モードの際に、透過画像データ生成手段40で得られる透過画像データから、X線センサがスキャン時間に出力する全領域のパルス信号の数うちの最大値Amax を求める。
図3に示したパルス信号の累積数を用いて表せば、最大パルス数算出手段70は、ΣA(i,1,1)〜ΣA(i,1,3)、ΣA(i,2,1)〜ΣA(i,2,3)、ΣA(i,3,1)〜ΣA(i,3,3)の9つの値のうちの最大のものを上記最大値Amax とする。ただし、記号Σは、i=1〜N(図3はN=3の例)の総和を表す。
また、比較手段80は、最大パルス数算出手段70によって求めた最大値Amax と、一つのX線センサがスキャン時間内に出力することができる規格上の最大パルス数(例えば、スキャン時間1ミリ秒で1000個)に対して予め設定された適正範囲(例えば、400〜600)とを比較する。
X線量設定手段90は、比較手段80の比較結果に応じて、最大値Amax が前記適正範囲に入るように、複数のX線センサに入力されるX線量を設定する。なお、この例では、X線発生部22のX線源が、熱陰極X線管あるいは格子制御型熱陰極X線管であるとし、その管電流を可変し、X線管から出射されるX線量を制御することで、複数のX線センサに入力されるX線量を設定している。
X線管の管電流を制御する場合、そのフィラメント電流を減少させる方向に変化させると放出電子数が減少してX線量が減り、格子制御型のX線管の場合には、フィラメント電流の減少の他に、負の格子電圧の絶対値を大きくすると電子の流れが抑制されてX線量が減ることになる。
なお、X線管の管電圧の絶対値を大きくした場合、X線の平均的なエネルギーは高くなり、管電圧の絶対値を小さくした場合、X線の平均的なエネルギーは低くなる。このような特性があるので、被検査物の材質と厚みに応じた管電圧を選択するのが一般的である。このため、上記のX線量の設定にあたり、管電流の制御だけでなく、管電圧の制御、または管電流と管電圧の両方の制御を行なうようにしてもよい。
このX線量の設定は、最大値Amax と、これを適正範囲に設定するのに必要なフィラメント電流、格子電圧、管電圧等の制御量との関係を表すテーブルや数式を予め求めておき、得られた最大値Amax に応じた制御量で適正範囲内に自動制御する方式、良品サンプルを連続的に通過させている間に、最大値Amax が適正範囲に近づく方向に順次可変する方式、あるいは、比較手段80の比較結果をランプ等で表示させておき、良品サンプルを連続的に通過させている間に、ランプの表示が適正範囲を表すまで作業者が手動で管電流等を可変する方式等が採用できる。
この構成の異物検出装置20であれば、前記したパイルアップ現象が発生する確率を低く抑えることができ、被検査物の厚さや材質等に関わらず、異物の検出を高精度に行なうことができる。
なお、上記説明では、X線量設定手段90が、X線発生部22から出射されるX線量を制御する例を示したが、X線センサ31〜31のX線入射面の面積を可動式の遮蔽板で可変させることで、X線センサ31〜31に入力されるX線量を設定してもよい。
また、複数の透過画像データの保存形式は任意であるが、波高値の領域ごとに異なる色を割当て、その領域に割り当てた色の輝度を、パルス信号の累積数に対応させることで、透過画像を観察する場合に観測者が分かりやすくなる。
例えば、波高値の領域を3つとし、各領域に赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色を割当て、それぞれの色の輝度値にパルス累積数を割当てる。ただし、各色の輝度に割り当てる値は例えば8ビットで表せる範囲(0〜255)とし、実際のパルス累積数の範囲が8ビットで表せる範囲内に収まるように正規化(圧縮処理または伸長処理)する。この場合、3つの透過画像データを1つのRGBカラー画像データとして保存することができる。このため、透過画像データの記憶領域を節約することができる。また、データ形式が、一般的なRGBカラー画像データであるため、画像処理や画像表示が容易に行なえる。
また、このように各領域に異なる色を割当て、その色の輝度をパルス信号の累積数で表すデータ保存形式を用いれば、各領域の透過画像をそれぞれ異なる色の画像で表すことができ、それらを図示しない表示装置に並列的に並べて表示する場合の識別性が非常に高くなる。
20……異物検出装置、21……搬送装置、22……X線発生部、30……ラインセンサ、31〜31……X線センサ、40……透過画像データ生成手段、41〜41……A/D変換器、42〜42……波高値検出手段、43〜43……領域判定手段、44〜44……領域別累積手段、45……透過画像データメモリ、50……判定手段、60……モード切替手段、70……最大パルス数算出手段、80……比較手段、90……X線量設定手段

Claims (4)

  1. 被検査物が通過する通過路にX線を出射するX線発生部(22)と、
    前記X線発生部から前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を受ける位置で、被検査物の通過方向と交差する方向に並ぶように配置され、それぞれがX線を受けて電気信号に変換する複数のX線センサ(311〜31N)と、
    前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する透過画像データ生成手段(40)と、
    前記透過画像データ生成手段によって生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する判定手段(50)とを有する異物検出装置において、
    当該異物検出装置の動作モードを、異物を含まない良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて動作を確認する準備モードと、異物の有無の検出が必要な被検査物を前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間に通過させて異物検出処理を行なう検査モードのいずれかに切り替えるモード切替手段(60)と、
    前記準備モードの際に、前記良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させたときに得られる前記透過画像データから、前記X線センサが前記所定期間に出力するパルス信号の数の最大値を求める最大パルス数算出手段(70)と、
    前記最大パルス数算出手段によって求めた最大値と、前記X線センサが前記所定期間に出力することができる規格上の最大パルス数に対して予め設定された適正範囲とを比較する比較手段(80)と、
    前記比較手段の比較結果に応じて、前記最大値が前記適正範囲に入るように、前記複数のX線センサに入力されるX線量を設定するX線量設定手段(90)とをさらに有し、
    前記X線センサは、X線の光子が入力される毎に該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型であって、
    前記透過画像データ生成手段は、
    前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成するように構成され、
    前記判定手段は、前記透過画像データ生成手段で得られた複数の透過画像データに対してサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定するように構成され、
    前記準備モードで設定されたX線量を用いて、前記検査モードの検査を行うことを特徴とする異物検出装置。
  2. 前記X線発生部には、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管が用いられ、
    前記X線量設定手段は、前記熱陰極X線管の管電流または管電圧の少なくとも一方を可変して、前記X線センサに入射されるX線量を設定することを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。
  3. 前記X線量設定手段は、前記複数のX線センサの受光面積を可変して、該複数のX線センサに入射されるX線量を設定することを特徴とする請求項記載の異物検出装置。
  4. X線発生部(22)から被検査物が通過する通過路にX線を出射する段階と、
    前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を、被検査物の通過方向と交差する方向に並んだ複数のX線センサ(311〜31N)で受けて電気信号に変換する段階と、
    前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する段階と、
    前記生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する段階とを含む異物検出方法において、
    当該異物検出装置の動作モードを、異物を含まない良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて動作を確認する準備モードと、異物の有無の検出が必要な被検査物を前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間に通過させて異物検出処理を行なう検査モードのいずれかに切り替える段階と、
    前記準備モードの際に、前記良品サンプルを前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させたときに得られる前記透過画像データから、前記X線センサが前記所定期間に出力するパルス信号の数の最大値を求める段階と、
    前記最大値を求める段階によって求めた最大値と、前記X線センサが前記所定期間に出力することができる規格上の最大パルス数に対して予め設定された適正範囲とを比較する段階と、
    前記比較する段階での比較結果に応じて、前記最大値が前記適正範囲に入るように、前記複数のX線センサに入力されるX線量を設定する段階とをさらに含み、
    前記X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用い、
    前記透過画像データを生成する段階では、前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成し、
    前記被検査物内の異物の有無を判定する段階では、前記生成された複数の透過画像データに対してサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定し、
    前記準備モードで設定されたX線量を用いて、前記検査モードの検査を行うことを特徴とする異物検出方法。
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