JP6606454B2 - 異物検出装置および異物検出方法 - Google Patents

異物検出装置および異物検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、X線を用いて被検査物内の異物検出を行なう技術に関する。
食品等の製造を行なう工場では、製品に金属やプラスチック等の異物が混入していないか否かを異物検出装置によって調べている。
この異物検出装置として、従来では、コンベア等によって所定方向に搬送される被検査物の通過路にX線を出射し、被検査物を透過したX線の強さをセンサ(複数のX線センサが通過方向と直交する方向に並んで一体化されたラインセンサ)で検出し、その検出信号が異物の存在によって局所的に変化することを利用して検出する方式のものが用いられている。
しかし、上記したように被検査物を透過したX線の強度をセンサで検出する方式では、X線が透過する方向の厚さや材質が変化する物品による透過率の違いにより、異物を正確に検出できない場合があった。
これを解決する技術として、例えば特許文献1には、被検査物を透過するX線のエネルギーを異ならせて得られる二つの透過X線データに対するサブトラクション(画像データの差分処理)等の処理を行なうことで、異物の検出精度を高めることが提案されている。
特開平10−318943号公報
しかしながら、上記特許文献1では、単一のX線源から出力されて被検査物を透過したX線を、被検査物の搬送方向に並んで配置され、X線に対するエネルギー感度が異なる二つの検出器(ラインセンサ)で検出することで、二つの透過X線データを得るようにしている。
このため、必然的に一方の検出器に入射するX線が被検査物内を透過する経路と、他方の検出器に入射するX線が被検査物内を透過する経路が一致せず、その影響で、被検査物の異物を正しく認識できなくなることが考えられる。また、二つの検出器のセンサ素子の特性差により、正確な異物検出を行なえないことも考えられる。
なお、特許文献1には、X線エネルギーが異なる2つのX線源を用いることも記載されているが、その場合、二つのX線が互いに干渉しないようにX線源およびそれに対応する二つの検出器(ラインセンサ)の間隔を広くとらなければならず、装置全体が大きくなるとともに、その間で搬送中の被検査物の姿勢変化が起きやすくなり、しかも、前記同様に二つの検出器を用いるため、異物の検出精度が低下する恐れがある。
これを解決する方法として、X線管等から発生されるX線の光子のエネルギーにばらつきがあることに着目し、X線の光子が入射される毎にそのエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型のX線センサを用い、一定時間内にX線センサから出力されたパルス信号をその波高値の違いにより複数の領域に分類し、その領域毎のパルス信号の数を累積することで、X線エネルギーが異なる場合の透過画像データを得ることが考えられる。この方式であれば、複数のX線センサを被検査物の通過方向と交差する方向に1列に並べておけばよく、上記問題を解消できる。
ここで、被検査物を透過するX線のエネルギーは、被検査物の材質とX線透過方向の厚さによって大きく変化する。被検査物の材質をほぼ均一とし、X線透過方向の厚さがほぼ一定であれば、その厚さに合わせてX線の平均的な出射エネルギーを一定に調整しておけば、X線センサに入射するX線の線量を適正範囲に維持できる。
しかし、被検査物の厚さが部位によって大きく変化する場合、X線センサに入射するX線の線量を適正範囲に維持できなくなる。例えば、厚さが大の部位に合わせてX線の出射エネルギーを決めると、厚さが小の部位を透過するX線の線量が過大となり、逆に、厚さが小の部位に合わせてX線の出射エネルギーを決めると、厚さが大の部位を透過するX線の線量が過小となる。
このように被検査物を透過したX線の線量が過大になると、上記した光子検出型のX線センサでは、光子の入力頻度が過大となって、例えば図8のように、X線センサから出力されるパルス信号P、P同士やパルス信号P、P同士が重なってしまい、二つのパルス信号に対してそれぞれ一つのピーク値(波高値H、H)しか得られない現象が発生する。この現象を一般的にパイルアップ現象と呼び、この現象が高い確率で発生すると、領域ごとの正しい計数結果が得られなくなり、その結果、異物の検出を正確に行なえなくなる。
また、被検査物を透過したX線の線量が過小になると、パルス信号の累積数が極端に少なくなってノイズ成分との区別がつかなくなり、透過画像データのS/Nが低下してしまう。
本発明は、上記課題を解決し、光子検出型のX線センサを用いながら、被検査物の部位毎の厚さ変化に伴うパイルアップ現象やS/N低下の影響を抑制して、高精度に異物検出が行なえる異物検出装置および異物検出方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の異物検出装置は、
被検査物が通過する通過路にX線を出射するX線発生部(22)と、
前記X線発生部から前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を受ける位置で、被検査物の通過方向と交差する方向に並ぶように配置され、それぞれがX線を受けて電気信号に変換する複数のX線センサ(31〜31)と、
前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する透過画像データ生成手段(40)と、
前記透過画像データ生成手段によって生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する判定手段(50)とを有する異物検出装置において、
前記X線センサは、X線の光子が入力される毎に該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型であって、
前記X線発生部には、X線を出射するX線源(22a)と、該X線源から出射されるX線の線量を前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させるX線線量可変手段(22b)が設けられており、
前記透過画像データ生成手段は、
前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成するように構成され、
前記判定手段は、
前記透過画像データ生成手段で得られる透過画像データのうち、前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定するように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の本発明の請求項2の異物検出装置は、請求項1記載の異物検出装置において、
前記判定手段は、
前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データのうち、前記所定期間における各領域の累積結果の合計が、予め決められた適正範囲内に入る透過画像データを有効なものとし、可変段階が同一である期間について得られた有効な透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定するように構成されていることを特徴とする。
本発明の請求項3の異物検出装置は、請求項1または請求項2記載の異物検出装置において、
被検査物のサンプル品が前記X線発生部と前記複数のX線センサの間を通過したときに前記透過画像データ生成手段で得られた透過画像データに基づいて、前記X線線量可変手段によって前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変されるX線の各可変段階の線量を決定する可変線量決定手段(60)を備えていることを特徴とする。
また、本発明の請求項4の異物検出装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の異物検出装置において、
前記X線発生部のX線源には、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管が用いられ、
前記X線線量可変手段は、前記熱陰極X線管の管電流または管電圧の少なくとも一方を制御して、前記X線源から出射されるX線の線量を前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させることを特徴とする。
また、本発明の請求項5の異物検出方法は、
X線発生部(22)から被検査物が通過する通過路にX線を出射する段階と、
前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を、被検査物の通過方向と交差する方向に並んだ複数のX線センサ(31〜31)で受けて電気信号に変換する段階と、
前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する段階と、
前記生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する段階とを含む異物検出方法において、
前記X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用いるとともに、前記X線発生部から出射されるX線の線量を前記所定時間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、
前記透過画像データを生成する段階では、
前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成し、
前記被検査物内の異物の有無を判定する段階では、
前記透過画像データを生成する段階で得られた透過画像データのうち、前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定することを特徴する。
また、本発明の請求項6の異物検出方法は、請求項5記載の異物検出方法において、
前記被検査物を検査する前に、そのサンプル品を前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて、該サンプル品についての透過画像データを求める段階と、
前記サンプル品について得られた透過画像データに基づいて、被検査物を検査する際に前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変するX線の各可変段階の線量を決定する段階とを含んでいることを特徴する。
このように、本発明では、X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用いるとともに、X線発生部から出射されるX線の線量を所定時間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、各X線センサについて、そのX線センサから所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、所定期間内のパルス信号入力数を領域毎に累積し、その領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成する。そして、これらの透過画像データのうち、X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定している。
このため、被検査物の通過方向と交差する方向に一列に並んだ複数のX線センサを用いながら、複数のX線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成することができ、従来のように複数のラインセンサを被検査物の通過方向に並べる方法や、複数のX線源を用いる方法に比べて、異物の検出精度を高くすることができ、装置全体を小型化できる。
また、X線発生部から出射されるX線の線量を所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、被検査物を通過方向に所定期間単位で区切った部位ごとに順次異なる線量のX線を照射しているから、被検査物の部位の厚さの変化があっても、段階的に変化するX線の線量のいずれかでパイルアップ現象やS/N低下による精度の低下がおきない透過画像データを得ることができ、異物検出を正確に行なうことができる。
本発明の実施形態の構成図 X線の線量の可変方法を示す図 X線センサから出力されるパルス信号と領域との関係を示す図 高い線量のときの波高値の領域毎に得られる3種類の透過画像データの例を示す図 低い線量のときの波高値の領域毎に得られる3種類の透過画像データの例を示す図 線量と物品の厚さとの関係を示す図 累積値の判定結果の一例を示す図 X線センサから出力されるパルス信号が重なった場合の波形を示す図
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した異物検出装置20の全体構成を示している。
この異物検出装置20は、搬送装置21、X線発生部22、複数NのX線センサ31〜31、透過画像データ生成手段40、判定手段50および可変線量決定手段60を有している。
搬送装置21は、被検査物Wを所定方向(図では紙面に直交する方向)に搬送するためのものであり、一般的には、コンベアのように被検査物Wを一定速度で水平に搬送するものが使用されるが、必ずしも動力源をもつ搬送装置を用いる必要はなく、被検査物の重さを利用して傾斜路を滑走させる方式や、上方から落下させる方式であってもよい。
X線発生部22は、搬送装置21によって所定方向に搬送される被検査物Wが通過する通過路にX線を出射する。この実施形態では、搬送装置21によって搬送される被検査物Wの上方からその搬送路の幅方向に拡がるX線を出射するものとするが、X線の出射方向はこれに限らず、被検査物Wの側方から側面方向へ出射してもよい。
X線発生部22は、X線源22aと、そのX線源22aから出射されるX線の線量を所定期間(スキャン時間)毎に段階的に且つ周期的に可変させるX線線量可変手段22bとを有している。
X線源22aには、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管や、格子制御型熱陰極X線管が用いられ、その他にX線管を駆動するために必要な電源が含まれている。
X線源22aが出射するX線の線量(単位時間当りのエネルギーの総和)は、単位時間当りにフィラメントから陽極のターゲットに到達する電子の数(管電流)や管電圧に対応しており、管電流は、電子の放出量を決めるフィラメント電流や、電子の流れを制御する格子電圧等に依存する。
X線線量可変手段22bは、熱陰極X線管の管電流または管電圧の少なくとも一方を、スキャン時間毎に段階的に且つ周期的に可変して、X線の線量を段階的に且つ周期的に可変させる。
図2の(a)は、X線の線量を決める管電流をI、Iの2段階に交互に可変する例を示し、図2の(b)は管電流をI、I、Iの3段階に可変する例を示している。なお、この段階数が多い程、部位による厚さの種類が多い被検査物に対応できるが、その分、同一段階の線量が照射される部位の間隔が拡がり、粗い画像データとなり、2段階〜4段階程度が実用的である。
また、3段階に可変する場合、図2の(b)のように、最大値Iから最小値Iまで順番に下がってから最大値Iに戻る方法だけでなく、その逆に最小値Iから最大値Iまで順番に上がってから最小値Iに戻る方法、中間値Iから最大Iに変化した後、最小値Iに変化し、最後に中間値Iに戻る方法等であってもよい。また、管電流(線量)の変化量も等しい必要はない。なお、このスキャン時間は、被検査物に対する搬送方向の検出単位を決定するものであり、後述の透過画像データ生成手段40が1ライン分の透過画像データを生成する際の時間と等しく、被検査物の長さを搬送速度で除算して得られる物品通過時間に対して十分短いものとする。
X線線量可変手段22bによって可変される各段階のX線の線量は、後述する可変線量決定手段60によって決定されるが、ここでは、予め被検査物Wの検査前にそのサンプル品を検査したときに得られる透過画像データに基づいて、被検査物Wに適した値、即ち、部位による厚さ変化がある被検査物に対して、どの部位についても各可変段階のいずれかの線量で正しい透過画像データが得られるように設定されているものとする。
複数NのX線センサ31〜31は、それぞれがX線を受けて電気信号に変換するものであり、X線発生部22から被検査物Wの通過路に出射されて被検査物Wを透過したX線を受ける位置で、被検査物Wの通過方向(紙面と直交する方向)と交差(この例では直交)する方向に隙間がほとんど無い状態で一列に並んでいる。
実際の装置としては、複数NのX線センサ31〜31は、それぞれが一体的に連結された一本のラインセンサ30で構成され、搬送装置21の搬送路の下面側に配置されている。ここで、例えばX線センサの幅を1mm、X線センサ同士の隙間を幅に対して無視できる程小さいとし、被検査物Wを搬送する搬送路の幅を200mmとすれば、概略200個のX線センサを有するラインセンサを用いればよい。
従来の異物検出装置で用いられるX線センサは、一般的に入射したX線により可視光を発生してこれをフォトセンサで受けて電気信号に変換するシンチレータ型フォトセンサであって可視光のエネルギーを積分した値が画像の濃淡を表すが、この異物検出装置20が用いるX線センサ31〜31は、被検査物Wを透過したX線の光子が入力される毎に、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型(CdTeセンサ)であり、単位時間当りに出力するパルス数が透過画像の濃淡を表すことになる。
透過画像データ生成手段40は、X線発生部22とX線センサ31〜31の間を被検査物Wが通過している間にX線センサ31〜31からそれぞれ出力される信号をスキャン時間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物Wの通過方向とX線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、その位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する。
前記したように、光子検出型のX線センサ31〜31は、一つの光子の入力に対して、その光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を一つ出力するが、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーは、その管電流が一定であってもばらつきがあるため、それに応じて、図3に示すように、各X線センサから出力されるパルス信号P、P、P、…の波高値H、H、H、…にばらつきが生じる。
言い換えれば、エネルギーの異なるX線が混在していることになり、スキャン時間内に一つのX線センサから出力されるパルス信号の波高値H、H、H、…が、予め波高値の出力範囲全体を複数M(図3ではM=4)に区分けした領域R〜Rのいずれに入るかを判定し、そのスキャン時間内のパルス信号入力数を領域毎に累積すれば、そのスキャン時間に対応する部位についてX線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成することができる。
なお、ここでは、X線発生部22のX線管の管電流、即ちX線の線量をスキャン時間毎に切り替えているから、あるスキャン時間で得られたX線透過データと、次のスキャン時間で得られた複数のX線透過データとは、検査対象の部位が異なっているので、前記したサブトラクション処理の対象とはならない。
上記X線透過エネルギーの範囲が異なる複数の透過画像データを生成するために、透過画像データ生成手段40は、各X線センサ31〜31の出力信号を、それぞれA/D変換器41〜41によってデジタルのデータ列に変換し、波高値検出手段42〜42に入力する。
各波高値検出手段42〜42は、入力されるデータ列からパルス信号の波高値を検出するためのものであり、例えば入力されるデータ列に対して微分処理を行い、微分値(信号の傾き)が所定以上の正の値から所定以下の負の値に切り換わるときのゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスタイミングにおけるデータ値をパルス信号の波高値として検出し、それぞれ領域判定手段43〜43に出力する。
領域判定手段43〜43は、前記した波高値の出力範囲を複数Mの領域R〜Rに区分けする境界値領域L〜LM−1と、波高値検出手段42〜42で検出された波高値とを比較し、その波高値がいずれの領域に入るかを判定し、波高値が入る領域を表す領域識別信号を領域別累積手段44〜44に出力する。
各領域別累積手段44〜44は、スキャン時間内に領域判定手段43〜43からそれぞれ出力される領域識別信号を受け、同一領域を示す領域識別信号の入力数をそれぞれ累積して、スキャン時間内における領域毎の累積数を求めて順次出力する。
この領域識別信号の累積数は、スキャン時間内に1つのX線センサから出力されるパルス信号のうち、その波高値が入る領域が同じパルス信号同士の累積数であり、上記各領域別累積手段44〜44からスキャン時間毎に出力される領域識別信号の累積数を、透過画像データメモリ45に、並列的に且つ時系列に記憶することで、領域ごとの被検査物に対するX線透過画像データが得られる。
ただし、前記したように、この異物検出装置20では、スキャン時間毎にX線発生部22が出射するX線の線量を段階的に且つ周期的に変化させているから、同一可変段階のX線の線量については、その可変段階数に応じて飛び飛びの部位のX線透過データが得られることになる。
簡単な例として、管電流(X線の線量)の可変段階数を2、スキャン時間を4単位、X線センサ数Nを3、波高値の領域数Mを3とし、管電流が大きいときのパルス信号の累積数をA(波高値の領域の順位、スキャン時間の順位,センサの並び順位)、管電流が小さいときのパルス信号の累積数をB(波高値の領域の順位、スキャン時間の順位,センサの並び順位)で表すと、管電流Iで最初のスキャン時間T1内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をA(1,1,1)、領域Rに入るものの累積数をA(2,1,1)、領域Rに入るもの累積数をA(3,1,1)とする。
また、同じスキャン時間T1内で2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をA(1,1,2)、領域Rに入るものの累積数をA(2,1,2)、領域Rに入るものの累積数をA(3,1,2)とし、同じスキャン時間T1内で3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をA(1,1,3)、領域Rに入るものの累積数をA(2,1,3)、領域Rに入るものの累積数をA(3,1,3)とする。
同様に、管電流Iの次のスキャン時間T2内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をB(1,2,1)、領域Rに入るものの累積数をB(2,2,1)、領域Rに入るものの累積数をB(3,2,1)とし、2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をB(1,2,2)、領域Rに入るものの累積数をB(2,2,2)、領域Rに入るものの累積数をB(3,2,2)とし、3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をB(1,2,3)、領域Rに入るものの累積数をB(2,2,3)、領域Rに入るものの累積数をB(3,2,3)とする。
さらに、次の管電流Iのスキャン時間T3内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をA(1,3,1)、領域Rに入るものの累積数をA(2,3,1)、領域Rに入るものの累積数をA(3,3,1)とし、2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るもの累積数をA(1,3,2)、領域Rに入るものの累積数をA(2,3,2)、領域Rに入るものの累積数をA(3,3,2)とし、3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をA(1,3,3)、領域Rに入るものの累積数をA(2,3,3)、領域Rに入るものの累積数をA(3,3,3)とする。
さらに、次の管電流Iのスキャン時間T4内で、1番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をB(1,4,1)、領域Rに入るものの累積数をB(2,4,1)、領域Rに入るものの累積数をB(3,4,1)とし、2番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るもの累積数をB(1,4,2)、領域Rに入るものの累積数をB(2,4,2)、領域Rに入るものの累積数をB(3,4,2)とし、3番目のX線センサ31が出力したパルス信号のうち、その波高値が領域Rに入るものの累積数をB(1,4,3)、領域Rに入るものの累積数をB(2,4,3)、領域Rに入るものの累積数をB(3,4,3)とする。
このようにして得られたデータから、大きい管電流Iのとき(T1、T3)に得られた6つの累積数を、図4の(a)のように、横方向をスキャン時間の順(飛び飛び)、縦方向をセンサの並び順となるように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られる。同様に、大きい管電流Iのときに領域Rについて得られた6つの累積数を、図4の(b)のように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られ、領域Rについて得られた6つの累積数を、図4の(c)のように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られる。
また、少ない管電流Iのとき(T2、T4)に領域Rについて得られた6つの累積数を、図5の(a)のように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られる。同様に、少ない管電流Iのときに領域Rについて得られた6つの累積数を、図5の(b)のように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られ、領域Rについて得られた6つの累積数を、図5の(c)のように2行3列に配置すれば、領域Rに対応したエネルギー範囲のX線による被検査物の6つの部位の透過画像データが得られる。
実際には、異物検査に必要なスキャン数は、物品の搬送方向の長さを搬送速度で除して得られる搬送時間(例えば0.5秒)をスキャン時間(例えば0.5ミリ秒)で除算した値(例えば1000)となり、上記のように、管電流が2段階の切替えの場合、被検査物全体を1000スキャンし、それの一つおきの半分の500スキャン分が、大きな管電流のときの複数のX線透過データとなり、残り半分の500スキャン分が、少ない管電流のときの複数のX線透過データとなる。なお、センサの並び方向の分割数はX線センサの数N(例えば200)に対応している。
このようにして、管電流の異なる時間帯毎に、波高値の領域にそれぞれ対応したエネルギー範囲毎の透過画像データが得られれば、判定手段50により、それら複数の透過画像データに対して従来から行なわれているサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、被検査物の異物の有無を判定することができる。
この処理は、可変段階が同一のX線の線量(管電流)で得られた透過画像データ同士で行なうことになる。つまり、前記した例でいえば、管電流が大きいときに得られた図4の(a)、(b)、(c)の3つのX線透過画像データのいずれか2つを用いたサブトラクション処理を行い、6つの部位についての異物検出を行なう。また、管電流が小さいときに得られた図5の(a)、(b)、(c)の3つのX線透過画像データのいずれか2つを用いたサブトラクション処理を行い、別の6つの部位についての異物検出を行なう。
サブトラクション処理について簡単に説明すると、同一部位について異なるエネルギーによるX線透過データが得られた場合、その差分処理を行なうと、その部位の厚さの影響が除去され、材質(透過率)の影響だけが現れ、X線エネルギーの違いに対する被検査物自体の材質の透過率変化と、異物の材質の透過率変化の差が顕著化する。これにより、異物に対する検出感度が高くなる。判定手段50では、この処理の他に、ノイズの除去等のために各種のフィルタ処理などを行い、異物の検出をより高い精度で行なっている。
ここで、管電流とX線センサに入射する光子の数の関係を考えると、被検査物の材質が均一で、管電流が一定であれば、被検査物を透過してX線センサに入射する光子の数はほぼ一定と考えられるが、被検査物の厚さが部位によって変化する場合、厚さが大な部位ほど透過する光子の数は少なくなる。
つまり、厚さが大の部位に対しては大きな管電流による線量の大きなX線が有利であり、厚さが小な部位に対しては小さい管電流による線量の小さいX線が有利となる。したがって、可変する線量は被検査物に応じて決定する必要があり、被検査物の品種によって予め求められている線量を選択して設定する方法や、被検査物のサンプル品を検査し、その検査で得られたデータから自動的に決定する方法が採用できる。
この実施形態では、後者の方法でX線の線量を決定する可変線量決定手段60が設けられている。可変線量決定手段60は、前記したように、予め被検査物のサンプル品の検査で得られた透過画像データに基づいて、被検査物の検査の際にX線発生部22から出射させるX線の各可変段階の線量を決定し、これをX線線量可変手段22bに与え、その可変段階の線量に応じた管電流を所定時間(スキャン時間)毎に段階的に且つ周期的に変化させるようにしている。ここで、所定時間を被検査物の通過速度に比べて十分短く設定しておくことで、被検査物の搬送方向に近接した部位に対して、異なる線量のX線を入射させることができ、各可変段階のいずれかの線量で正しい透過画像データが得られることになる。
例えば図6のように、被検査物の厚さが大の領域Waに、大きな管電流に対応した大きな線量のX線が照射されたときに検出されるパルス信号の累積数(全領域分)を、前記パイルアップの発生確率が低く、且つ、ノイズレベルに対して十分大きい適正範囲にすることができる。
この適正範囲としては、例えば、1つのX線センサがスキャン時間内に出力することができる規格上の最大パルス数(例えば、スキャン時間1ミリ秒で1000個)に対して予め設定された範囲(例えば、300〜700)とする。
また、逆に、被検査物の厚さが小の領域Wbに、小さな管電流に対応した小さな線量のX線が照射されたときに検出されるパルス信号の累積数(全領域分)を、前記適正範囲にすることができる。
次に、可変線量決定手段60の処理について説明する。可変線量決定手段60は、被検査物を検査する前に、そのサンプル品(例えば被検査物と同一形状、同一材質で異物の有無が既知である物品)を、X線発生部22とX線センサの間に通過させたときに透過画像データ生成部40によって得られた透過画像データに基づいて、被検査物の検査の際にX線発生部22から出射させるX線の各段階の線量を決定する。なお、サンプル品の検査結果から線量の可変段階数を決定する場合もある。
この決定方法については種々考えられる。例えば、被検査物の厚さが最も大の部位を透過する光子の数が最小となることに着目して、一定の線量P(基準線量)のX線が照射されている状態でサンプル品について得られた透過画像データの各部位ごとの全領域分の累積結果を比較対象値Dとして求める。そして、その比較対象値Dのうちの最小値Dmin と基準線量Pとの関係等から、サンプル品の厚さが最も大の部位を透過したX線がX線センサに入射されたときに出力されるパルス信号の全領域分の累積結果が、前記適正範囲内となるような可変段階の最大の線量Pを求める。そして、この最大線量Pを与える管電流IをX線線量可変手段22bに指定する。
また、最小あるいは中間の可変段階の線量P、Pについては、次のように、上記方法で決定した最大線量Pに予め設定された一定の比率α、β(例えばα=0.5、β=0.75)を乗じて求めることができる。
=αP
=βP
また、最小の可変段階の線量Pについては、前記決定した最大の線量Pでサンプル品を再度検査し、そのとき得られる比較参照値Dの最大値Dmax が、前記適正範囲に入るために必要な線量を最小線量Pとして求める方法も採用できる。中間の可変段階の線量については、最大線量と最小線量の中間値等に設定すればよい。
また、基準線量Pのときに得られた比較対象値Dの分布(ヒストグラム)を求め、その分布に応じて、各可変段階の線量を決定してもよい。例えば、可変段階数が2の場合、比較対象値Dの最小値Dmin から最大値Dmax までの全分布領域のうち、最小値Dmin を含む半分以上の分布領域が前記適正範囲内となるような線量を可変段階の最大の線量Pと決定し、最大値Dmax を含む半分以上の分布領域が、前記適正範囲内となるような線量を可変段階の最小の線量PLと決定し、これらを与える管電流I、ILをX線線量可変手段22bに指定する方法も可能である。
また、可変段階数が3の場合には、比較対象値Dの最小値Dmin から最大値Dmax までの全分布領域を、最小値Dmin を含む分布領域、中間値Dmid を含む分布領域、最大値Dmax を含む分布領域に分け、それらの各分布領域が前記適正範囲内となるような線量を各可変段階の線量P、P、PLと決定し、これらを与える管電流I、P、ILをX線線量可変手段22bに指定すればよい。また、上記方法を種々組合せて各可変段階の線量を決定してもよく、全分布領域の広さと適正範囲の広さから、可変段階数を決定するようにしてもよい。
このように被検査物のサンプル品を用いて各可変段階の線量を決定することで、被検査物を検査したときに得られる透過画像データのうち、搬送方向に近接した部位について各可変段階の線量で得られた累積結果のいずれかを適正範囲内にすることができる。
したがって、判定手段50において、適正範囲となる累積結果を含む同一の可変段階の線量で得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで、その同一の可変段階の線量で得られた透過画像データについての異物検出を正確に行なえる。また、他の可変段階の線量で得られた透過画像データ同士についても同様にサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なうことで異物検出を正確に行なえ、これら全ての画像処理で得られた異物検出結果のいずれか一つに異物有りと判定されれば、その被検査物に異物有りと判定される。
判定手段50の判定結果(異物の有無を示す信号)は、図示しない後続の選別装置に送られ、異物有りと判定された物品が、良品の経路から排除されることになる。
なお、厚さが大の部位を線量の小さいX線が透過したときに累積結果が適正範囲に満たないことで透過画像データのS/N低下が発生し、また、厚さが小の部位を線量の大きなX線が透過したときに累積結果が適正範囲を超えることでパイルアップ現象が発生するが、それらは、いずれも異物に対する検出感度の低下を招くものであり、存在しない異物を誤検出する可能性は低い。また、上記の異物に対する検出感度の低下は、前記したように、厚さが大の部位の近傍に線量の大きなX線を透過させて適正範囲に入る累積結果を得ていることや、厚さが小の部位の近傍に線量の小さなX線を透過させて適正範囲に入る累積結果を得ていることにより解消されるので大きな問題とならない。
したがって、判定手段50で行なうサブトラクション処理の対象となる透過画像データとして、累積結果が適正範囲に入るか否かを強く意識する必要はない。
ただし、累積結果が適正範囲に入らない透過画像データを画像処理の対象から除くことで、不確定要素が取り除かれ、より精度の高い効率的な処理を行なうことが可能である。
この場合、判定手段50において、大きい管電流でのスキャン時間1単位に一つのX線センサで得られたパルス信号の全領域分の累積数をAsum 、小さい管電流でのスキャン時間1単位に一つのX線センサで得られたパルス信号の全領域分の累積数をBsum とし、それらが前記適正範囲に入るか否かを調べる。
この判定で、例えば、図7のように、中央部(ハッチングで示す)が厚さ大、その周りが厚さ小の被検査物の場合、管電流が大きいスキャン時間帯T、T、Tでハッチングで示した部位の累積数が適正範囲(丸印)となり、管電流が小さいスキャン時間帯T、T、T、Tでハッチング以外の部位の累積数が適正範囲(丸印)となり、その他の部位については累積数が適正範囲に入らない(×印)という結果が得られる。
この結果に対し、管電流が大きいスキャン時間帯T、T、T、Tで得られた透過画像データのうち、全領域分の累積数Asum が適正範囲に入る(丸印)部位の各領域の累積数を有効なものとし、それらの有効な透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む画像処理で、異物を検出する。また、管電流が小さいスキャン時間帯T、T、T、Tで得られた透過画像データのうち、全領域分の累積数Bsum が適正範囲に入る(丸印)部位の各領域の累積数を有効なものとし、それらの有効な透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む画像処理で、異物を検出する。これらの異物検出のいずれかで異物有りと判定された場合、その被検査物に異物が含まれていると判定し、これを後続の選別装置に通知する。
なお、上記方法によると適正範囲外となる部位に存在する異物の検出が困難になることが考えられるが、検出対象の最小の異物が通過する時間に対してスキャン時間を十分短くしておけば、異物の一部が必ず適正範囲の部位に含まれることになるので、異物の見過ごしは発生しない。
このように、実施形態の異物検出装置20は、X線センサとして光子検出型を用いるとともに、X線発生部22から出射されるX線の線量を所定時間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、各X線センサについて、そのX線センサから所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、所定期間内のパルス信号入力数を領域毎に累積し、その領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成する。そして、これらの透過画像データのうち、X線発生部22から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物の異物の有無を判定している。
このため、被検査物の通過方向と交差する方向に一列に並んだ複数のX線センサを用いながら、複数のX線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成することができ、従来のように複数のラインセンサを被検査物の通過方向に並べる方法や、複数のX線源を用いる方法に比べて、異物の検出精度を高くすることができ、装置全体を小型化できる。
また、X線発生部22から出射されるX線の線量を所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、被検査物を通過方向に所定期間単位で区切った部位ごとに順次異なる線量のX線を照射しているから、被検査物の部位の厚さの変化があっても、段階的に変化するX線の線量のいずれかでパイルアップ現象やS/N低下による精度の低下がおきない透過画像データを得ることができ、異物検出を正確に行なうことができる。
なお、透過画像データ生成手段40における波高値の領域の区分けの仕方は任意であり、一つの例としては、X線発生部22から出射されるX線の光子のエネルギーの最大値(X線管の場合、電子の加速電圧に依存する理論値)に対してX線センサが出力するパルス信号の波高値と、所定の基準値(例えば0)との間の複数に等分すればよい。また、領域数も2つ以上で任意であり、最初に多くの領域で透過画像データを生成しておき、その被検査物について異物の検出に最適な透過画像データの組合せを見つけ、その最適な透過画像データによるサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行なってもよい。
具体的には、例えば、初期の領域数を10として、それぞれの領域で透過画像データを生成しておき、エネルギーの大きい方から数えて1番目の領域を前述の領域Rに割当て、3番目の領域を前述の領域Rに割当て、……というように、初期の領域から最終的な領域に選択的に割り当てて、この割り当てられた領域の透過画像データを複数用いて、所定の画像処理を行なってもよい。また、エネルギーの大きい方から数えて1番目と2番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域Rの透過画像データとし、3番目と4番目の領域の透過画像データを合成して、これを前述の領域Rの透過画像データとし、……というように初期の複数の領域の透過画像データを合成して最終的な1つの領域の透過画像データとし、その合成された透過画像データを複数用いる、あるいは合成された透過画像データと、それを含まない初期の領域の透過画像データとを用いて所定の画像処理を行なってもよい。
上記具体例では、初期の領域の数だけ透過画像データを生成しておき、異物の検出に最適な透過画像データの組合せに応じて、領域の割当てや透過画像データの合成を行なうようにしているが、被検査物に対して異物検出に最適な透過画像データの組合せが既知の場合には、割当てられる領域についての透過画像データのみを生成すればよく、また、複数の透過画像データを合成する代わりに、複数の領域の領域識別信号の累積数を加算して、一つの透過画像データを生成してもよい。これにより、透過画像データの記憶領域を節約することができる。
また、前記実施形態では、サンプル品を検査したときに得られる透過画像データのうち、各部位についての全領域分の累積結果の合計を比較対象値Dとし、その最小値や最大値が、X線センサが1スキャン時間あたりに出力できる最大パルス数に対して設定した適正範囲に入るように各可変段階のX線の線量を決定していたが、これは本発明を限定するものではなく、複数の領域のうちの特定の領域(複数でもよい)の累積結果の合計を比較対象値Dとし、その領域に応じて設定された適正範囲に入るように、各可変段階のX線の線量を決定してもよい。
これは、被検査物の検査で得られた各部位の透過画像データから無効なデータを除外する場合に用いた全領域分の累積結果の合計についても同様であり、複数の領域のうちの特定の領域(複数でもよい)の累積結果の合計が、その領域に応じて設定された適正範囲に入るか否かを調べるようにしてもよい。
また、複数の透過画像データの保存形式は任意であるが、波高値の領域ごとに異なる色を割当て、その領域に割り当てた色の輝度を、パルス信号の累積数に対応させることで、透過画像を観察する場合に観測者が分かりやすくなる。
例えば、波高値の領域を3つとし、各領域に赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色を割当て、それぞれの色の輝度値にパルス累積数を割当てる。ただし、各色の輝度に割り当てる値は例えば8ビットで表せる範囲(0〜255)とし、実際のパルス累積数の範囲が8ビットで表せる範囲内に収まるように正規化(圧縮処理または伸長処理)する。この場合、3つの透過画像データを1つのRGBカラー画像データとして保存することができる。このため、透過画像データの記憶領域を節約することができる。また、データ形式が、一般的なRGBカラー画像データであるため、画像処理や画像表示が容易に行なえる。
また、このように各領域に異なる色を割当て、その色の輝度をパルス信号の累積数で表すデータ保存形式を用いれば、各領域の透過画像をそれぞれ異なる色の画像で表すことができ、それらを図示しない表示装置に並列的に並べて表示する場合の識別性が非常に高くなる。
20……異物検出装置、21……搬送装置、22……X線発生部、22a……X線源、
22b……X線線量可変手段、30……ラインセンサ、31〜31……X線センサ、40……透過画像データ生成手段、41〜41……A/D変換器、42〜42……波高値検出手段、43〜43……領域判定手段、44〜44……領域別累積手段、45……透過画像データメモリ、50……判定手段、60……可変線量決定手段

Claims (6)

  1. 被検査物が通過する通過路にX線を出射するX線発生部(22)と、
    前記X線発生部から前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を受ける位置で、被検査物の通過方向と交差する方向に並ぶように配置され、それぞれがX線を受けて電気信号に変換する複数のX線センサ(31〜31)と、
    前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する透過画像データ生成手段(40)と、
    前記透過画像データ生成手段によって生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する判定手段(50)とを有する異物検出装置において、
    前記X線センサは、X線の光子が入力される毎に該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型であって、
    前記X線発生部には、X線を出射するX線源(22a)と、該X線源から出射されるX線の線量を前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させるX線線量可変手段(22b)が設けられており、
    前記透過画像データ生成手段は、
    前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成するように構成され、
    前記判定手段は、
    前記透過画像データ生成手段で得られる透過画像データのうち、前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定するように構成されていることを特徴とする異物検出装置。
  2. 前記判定手段は、
    前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データのうち、前記所定期間における各領域の累積結果の合計が、予め決められた適正範囲内に入る透過画像データを有効なものとし、可変段階が同一である期間について得られた有効な透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。
  3. 被検査物のサンプル品が前記X線発生部と前記複数のX線センサの間を通過したときに前記透過画像データ生成手段で得られる透過画像データに基づいて、前記X線線量可変手段によって前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変されるX線の各可変段階の線量を決定する可変線量決定手段(60)を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の異物検出装置。
  4. 前記X線発生部のX線源には、加熱したフィラメントから放出される電子を加速して陽極のターゲットに衝突させてX線を放出させる熱陰極X線管が用いられ、
    前記X線線量可変手段は、前記熱陰極X線管の管電流または管電圧の少なくとも一方を制御して、前記X線源から出射されるX線の線量を前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異物検出装置。
  5. X線発生部(22)から被検査物が通過する通過路にX線を出射する段階と、
    前記通過路に出射されて被検査物を透過したX線を、被検査物の通過方向と交差する方向に並んだ複数のX線センサ(31〜31)で受けて電気信号に変換する段階と、
    前記X線発生部と前記複数のX線センサとの間を被検査物が通過している間に前記複数のX線センサからそれぞれ出力される信号を所定期間ずつ区切って所定の信号処理を行い、被検査物の通過方向と前記X線センサの並び方向とで決まる2次元の位置の情報と、該位置毎の信号処理結果からなる被検査物の透過画像データを生成する段階と、
    前記生成された透過画像データに基づいて、被検査物内の異物の有無を判定する段階とを含む異物検出方法において、
    前記X線センサとして、X線の光子が入力される毎に、該光子のエネルギーに対応した波高値のパルス信号を出力する光子検出型を用いるとともに、前記X線発生部から出射されるX線の線量を前記所定時間毎に段階的に且つ周期的に可変させ、
    前記透過画像データを生成する段階では、
    前記各X線センサについて、該X線センサから前記所定期間内に出力されるパルス信号の波高値が、予め所定範囲内を複数に区分けした領域のいずれに入るかを判定し、前記所定期間内のパルス信号入力数を前記領域毎に累積し、該領域毎の累積結果を用いて、X線透過エネルギーが異なる複数の透過画像データを生成し、
    前記被検査物内の異物の有無を判定する段階では、
    前記透過画像データを生成する段階で得られた透過画像データのうち、前記X線発生部から出射されるX線の線量の可変段階が同一である期間について得られた透過画像データ同士のサブトラクション処理を含む所定の画像処理を行ない、被検査物内の異物の有無を判定することを特徴する異物検出方法。
  6. 前記被検査物を検査する前に、そのサンプル品を前記X線発生部と前記複数のX線センサの間に通過させて、該サンプル品についての透過画像データを求める段階と、
    前記サンプル品について得られた透過画像データに基づいて、被検査物を検査する際に前記所定期間毎に段階的に且つ周期的に可変するX線の各可変段階の線量を決定する段階とを含んでいることを特徴する請求項5記載の異物検出方法。
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