以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる情報記録装置の全体構成の説明図である。図1の装置は各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカードなどに画像情報を記録する。このため情報記録部Aと画像記録部(画像形成部;以下同様)Bと、これらにカードを供給するカード供給部Cが備えられている。
[カード供給部]
装置ハウジング1にはカード供給部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセットで構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカードK(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、ユニットフレームの旋回動とローラ対の回転を別駆動に構成してもよい。
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢変更することとなる。
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢変更されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カードに磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬入経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬入経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、カード搬送モータSMr(ステッピングモータ)に連結されている。この搬送ローラ29、30、は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ55にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、上述のカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)に連結されている。
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためデカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
[画像形成部]
画像形成部Bは、カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。この画像形成部Bには転写プラテン31が設けられ、このプラテン上でカード表面に画像形成を行う。図示の装置は、転写フィルム46(中間転写フィルム)上に画像形成し、このフィルムの画像を転写プラテン31上でカード面に転写する。このため装置ハウジング1には、インクリボンカセット42と転写フィルムカセット50が装備される。
図示のインクリボンカセット42は、昇華型インクリボンその他の熱転写インクリボン41を操出ロール43と巻取ロール44間に巻装し、装置ハウジング1に着脱可能に装着される。この巻取ロール44には図示しないワインドモータ(DCモータ)Mr1が連結されており、繰出ロール43にも同様にDCモータが連結されている。また、装置側にはサーマルヘッド40と画像形成プラテン45がインクリボン41を挟んで対向配置されている。
上記サーマルヘッド40にはヘッドコントロール用IC74a(図6参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントロール用IC74aは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。このためサーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ロール44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。図示f1はサーマルヘッド40を冷やす為の冷却ファンである。
一方、転写フィルムカセット50(以下「フィルムカセット」という)も装置ハウジング1に着脱可能に装着される。このフィルムカセット50に装填された転写フィルム46がプラテンローラ(画像形成プラテン)45とインクリボン41の間を走行して転写フィルム上に画像を形成する。このため転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46は画像形成プラテン45上で形成された画像を転写プラテン31と後述する転写ローラ33の間に移送する。図示49は転写フィルム46の移送ローラであり、この移送ローラの周面にピンチローラ32aと32bが配置され、図示しない駆動モータ(ステッピングモータ)に連結されている。また、供給スプール47はDCモータMr2に連結されており、巻取スプール48も同様に図示しないDCモータに連結されている。
また、図示34aは転写プラテン31に転写フィルム46を案内するガイドコロであり、図示34bは転写プラテン31を記録媒体から剥離する剥離コロ(剥離部材;以下同様)である。このガイドコロ34aと剥離コロ34bは転写プラテン31を挟んでガイドコロ34aが上流側に、剥離コロ34bが下流側に、それぞれフィルムカセット50に取付けられている。そして、転写処理時のカード搬送方向に対して剥離コロの下流側直後にはカードの転写面側を支持する支持ピン51(支持部材;以下同様)が設けられている。この支持ピン51は剥離ピン34bを支持するブラケット69に設けられており、剥離ピン34bと支持ピン51は一定の位置関係を保持している。また、ガイドコロ34aと剥離コロ34bとの間隔L1はカードKの画像形成方向(搬送方向)長さLcより短く(L1<Lc)設定されている。
上記転写プラテン31には、転写フィルム46を挟んで転写ローラ33が対向配置されている。この転写ローラ33は転写フィルム46上に形成された画像をカードに加熱圧接して転写する。このため転写ローラ33はヒートローラで構成され、フィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接・離間するように後述する転写部材昇降手段61が備えられている。転写プラテン31は搬送ローラ29、30、37及び38と同一のカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)によって駆動され、転写ローラ33とカードKと中間転写フィルム46を挟持した状態でカードK(及び中間転写フィルム46)を搬送しながら転写処理を行う。尚図示Se1はインクリボン41の位置検出センサであり、図示Se2は転写フィルム46の有無検出センサであり、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。このように、サーマルヘッド40を用いて中間転写フィルム46に画像を形成するユニットを1次転写部、転写ローラ33を用いて、1次転写部で中間転写フィルム46に形成した画像をカードKに転写するユニットを2次転写部という。
上記画像形成部Bの下流側にはカード収容部Dが設けられ、転写プラテン31から送られたカードを収容スタッカ55に収容する。この収容スタッカ55は昇降機構56と図示しないレベルセンサで、カード収容量に応じて繰り下げ降下するように構成されている。
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセット50について説明する。このフィルムカセット50は図2に示すように装置ハウジング1とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング1に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーを開けた状態で装置フレームにフィルムカセット50を図2矢印方向に装着するようになっている。
このフィルムカセット50には、供給スプール47と巻取スプール48が着脱可能に装着される。図示52はスプールの一端を支持する軸受部であり、図示56はスプールの他端側を支持するカップリング部材である。このカセット側に配置された軸受部52とカップリング部材56でスプール端部を支持している。そして供給スプール47から剥離コロ34b、を経てガイドコロ34a、35b、35a、次いで巻取スプール48に転写フィルム46が架け渡される。
なお、上記ガイドコロ35a、35b、34a及び剥離コロ34b(剥離部材;以下同様)は、図示のものはフィルムカセット50に取付けたピン部材(従動コロ)で構成してあるが、これは固定ピン(不回転)であっても良い。本装置では、カードに転写フィルム46上の画像を転写する際は供給スプール47で転写フィルム46を巻き取りながら転写を行う。よって、剥離コロ34bは転写フィルム46の転写時におけるフィルム搬送方向下流側(転写ローラ33よりも供給スプール47側)に設けられている。
剥離コロ34bはブラケット69に固定されており、そのブラケット69には支持ピン51が設けられている。転写フィルム46は剥離コロ34bと支持ピン51との間を走行するため、転写フィルム46を交換する際はフィルムカセット50を装置ハウジング1から抜き取った状態で、支持ピン51は剥離コロ34bから離間するように構成されている。
図3に示すように、支持ピンの一端51aはブラケット69に着脱可能に嵌合されており、他端51bはブラケット69の凹部に枢支されているため、支持ピン51は破線矢印方向に回動可能に構成されている。よって、支持ピン51はセット位置(実線)と開放位置(破線)に(ピボット)移動可能であり、ユーザはフィルムカセット50を装置ハウジング1から抜き取り、支持ピン51を開放位置に移動させた状態で転写フィルム46を交換し、支持ピン51をセット位置に戻してからフィルムカセット50を装置ハウジング1に装填する。
なお、支持ピン51はセット位置の状態で剥離コロ34bと一定の位置関係を保持する必要がある。図4(a)に示すように、カードKから転写フィルム46が剥離された後にカード先端が支持ピン51に支持された状態では、支持ピン51に対して剥離後の転写フィルム46の走行方向(図の下方)に力が加わる。支持ピン51を支持するブラケット69の軸受け凹部は転写フィルム46の走行方向に沿った方向に設けられており、支持ピン51はセット位置において軸受け凹部の底面に支持されるため、カードKから転写フィルム46走行方向の力が加わっても、ブラケット69は支持ピン51をしっかりと支持することができる。当然、転写フィルム走行方向と交わる方向に支持ピン51が回動移動してもよいが、支持ピン51がカードKを支持したときに剥離コロ34bとの位置関係が変わらないようセット位置を保持する必要がある。
このように架け渡された転写フィルム46には装置側に配置された移送ローラ49とピンチローラ32a、32bが係合される。そして供給スプール47と巻取スプール48に連結される駆動回転軸(不図示)と、上記移送ローラ49は同一速度でフィルムを走行するように駆動回転する。
ここで、2次転写部の詳細な構成を図4に従って説明する。2次転写部には、転写ローラ(ヒートローラ)33、転写プラテン31、転写フィルム46をガイドするガイドコロ34a、同様に転写フィルム46をガイドして、カードKから転写フィルム46を剥離する剥離コロ34bと剥離コロ34bの下流でカードKの転写面側を支持する支持ピン51が配置されている。また、転写ローラ33と転写プラテン31との間にカードKを搬送する搬送ローラ30と支持ピン51を通過したカードをニップして下流側へ搬送する搬送ローラ37が設けられている。なお、搬送ローラ30と搬送ローラ37との間の距離は、転写処理以外の通常搬送時にカード搬送ができるよう、カードKの搬送方向の長さLcよりも短い距離に設定されている。
転写ローラ33と剥離コロ34b及び支持ピン51とはそれぞれ図4(a)に示す作動位置と図(b)に示す退避位置に移動可能に構成されている。剥離コロ34bは作動位置において、搬送経路P1に沿って搬送されるカードKの表面に対して転写フィルム46を介して接するように設定されている。よって、図5に示すように、剥離コロ34bのカード接触点は、転写ローラ33の作動位置におけるカード接触点と、搬送ローラ37がカード転写面と接触するカード接触点を結ぶ直線Ln1(転写ローラ33のカード接触点と搬送ローラ37のカード接触点とを通る第1接線)よりも、少なくとも転写プラテン31側(カード側)にオフセットしており、直線Ln1よりも転写ローラ33側に配置されることはない。なお、本実施形態では、剥離コロ34bのカード接触点は直線Ln1よりも1.52mm転写プラテン側にオフセットしている。なお、剥離コロ34bのカード接触点が直線Ln1よりも転写ローラ33側でなければよく、直線Ln1の線上に設定してもよい。
よって、カードに転写された転写フィルム46は、転写ローラ33から剥離コロ34bまではカードに接着しており、カードが剥離コロ34bに到達したときに転写フィルム46がカード表面から剥離される。なお、剥離された転写フィルム46はカードと直交する方向(図の下方向)に巻き取られるため、カードと剥離後の転写フィルム46は剥離コロ34bを介して略90度の関係が保たれる(剥離角度βが略90度)。
剥離コロ34bを通過したカードは、図4(a)に示すようにカード先端が転写フィルム46の走行方向に引っ張られて下方に姿勢が変化することなく、支持ピン51に支持される。この支持ピン51のカード接触点は転写ローラ33の作動位置におけるカード接触点と、剥離コロ34bの作動位置におけるカード接触点を結ぶ直線Ln2(転写ローラ33のカード接触点と剥離コロ34bのカード接触点とを通る第2接線)よりも、転写プラテン31側(カード側)にオフセットしており、直線Ln2よりも転写ローラ33側に配置されることはない。なお、本実施形態では、支持ピン51のカード接触点は直線Ln2よりも0.35mm転写プラテン側にオフセットしている。なお、支持ピン51のカード接触点は直線Ln2よりも転写ローラ33側でなければよく、直線Ln2の線上に設定してもよい。
支持ピン51のカード接触点が直線Ln2よりも下方に配置されると、従来のようにカード先端が転写フィルム46の走行方向に引っ張られてしまうため、少なくとも支持ピン51のカード接触点は直線Ln2上か、直線Ln2よりも転写プラテン31側に配置する必要がある。しかし、あまりにも転写プラテン31側にオフセットし過ぎると、支持ピン51と剥離コロ34bとの間の段差が大きくなってしまい、剥離コロ34bがカードKから離れてしまうため、転写フィルム46の剥離位置が不安定になる問題が生じるおそれがあるため、扱う記録媒体の種類等から適宜設定することが望ましい。
さらに、剥離コロ34bから支持ピン51までの距離が大きいと、カード先端が支持されない状態が長くなってしまうため、剥離コロ34bの直後に支持ピン51を配置することが望ましい。よって、本実施形態では、剥離コロ34bの直径が5mm、支持ピン51の直径が3mm、剥離コロ34bの中心と支持ピン51の中心との間の距離が5mmとしているため、剥離コロ34bと支持ピン51との間の隙間は1mmである。これにより、支持ピン51を剥離コロ34bよりも細くすることで、支持ピン51を剥離コロ34bに近づけることができる。しかし、細くしすぎるとカードKを支持する強度が保てないため、ある程度の強度は残しておいた上で支持ピン51を細くすることが望ましい。
また、前述の通り、剥離コロ34bと支持ピン51は同一部材のブラケット69に支持されているため、剥離コロ34bと支持ピン51との高さ関係の位置決めが容易である。例えば、支持ピン51を装置本体側に設けてもよいが、その場合、装置本体側の支持ピン51とフィルムカセット50側の剥離コロ34bをそれぞれ作動位置と退避位置に移動する必要があり、さらに双方が作動位置において上述の配置関係を維持しなければならないため、高い部品加工精度が必要になる。
なお、支持ピン51によってカード先端が若干持ち上げられるため、支持ピン51より下流の搬送ローラ37が離れた位置に配置されていると、カード先端が搬送ローラ37にニップされなくなってしまう。よって、カード先端が上側の搬送ローラ37の下半分領域(図4(a)の搬送ローラ37の斜線部)に入る位置に搬送ローラ37を配置している。
また、転写プラテン31に対して転写ローラ33を圧接及び離間させる。後述する制御手段70は、カード上に画像転写するときには転写ローラ33を作動位置(Pn1)に移動して圧接し、画像形成後(カード後端が転写ローラ33を通過した後)は退避位置(Pn2)に移動して離間させる。これによって、カード後端が転写ローラ33を通過した後に転写ローラ(ヒートローラ)33に転写フィルム46が接触して、転写フィルム46が転写ローラ33の熱により変形するのを防止する。
また、制御手段70は、カード後端が支持ピン51を通過するタイミングで、剥離コロ34b及び支持ピン51を作動位置(Pn3)から退避位置(Pn4)に移動させる。ここで、剥離コロ34b及び支持ピン51を退避位置に移動させているため、両面印刷を行う際に、搬送パス上流側の反転ユニットFに向けてカードをスイッチバック搬送させた時にカードが支持ピン51や剥離コロ34bに衝突することを防止している。このような制御によって転写フィルムに過剰の熱が作用して変形する恐れも、また転写フィルム46を剥離する際に転写不良が発生することもない。
そこで転写ローラ33と剥離コロ34及び支持ピン51を昇降させるために、不図示の転写部材昇降手段と、剥離部材昇降手段(移動手段)を制御手段で制御する。この制御は、カード先端が転写プラテン31に到達する見込み時間で転写ローラ33を退避位置(Pn2)から作動位置(Pn1)に位置移動する。また、これと前後して(例えばプリントコマンド信号、上流側のジョブ終了信号など)剥離コロ34b及び支持ピン51を退避位置(Pn4)から作動位置(Pn3)に移動する。
この状態でプラテン位置に所定速度で移動するカードに、その先端から後端に画像を転写する。カード後端が転写ローラ33を通過した見込み時間で転写ローラ33を退避位置(Pn2)に移動させる。すると転写フィルム46はガイドコロ34aと剥離コロ34bに支持され、その一部はカード表面に打擲した状態となる。そしてカードが排出方向に移動するのに伴って転写フィルム46はカード表面から徐々に剥離される。その際、カード先端は支持ピン51に支持される。
この画像転写の過程で転写フィルルム46はカード表面と一定の剥離角度βでカード先端から後端まで同一角度方向にフィルムを引き剥がすこととなる。従ってカードに転写された画像に斑が生ずることがない。
本実施形態では、図4(a)に示す通り、カードKの先端は剥離コロ34bと支持ピン51に乗り上げ、さらに搬送ローラ37の側面(図4(a)の斜線部分)に当たりながら搬送ローラ対37に突入する。このとき、カードKをニップしている転写ローラ33及び転写プラテン31と搬送ローラ対30でスリップ(ローラの空回り)が起こる場合がある。そうすると、実際のカードKの搬送量が少なくなるので、カードKの搬送量に対して転写ローラ33よりも上流側の転写フィルム46の搬送量が多くなってしまい(カードKが進まないのに転写フィルム46だけが送り出される)、転写フィルム46の弛み量が約1mm多くなってしまう。
そこで本実施形態では、カード搬送量の減少するタイミングと減少量を予測・想定し、左記タイミングの直前または直後に、左記減少量分カード搬送速度を速める又は、移送ローラ49による転写フィルム送り出し速度を遅く(フィルム送り出し量を少なく)することで、転写フィルム46の弛み量を一定範囲内に保ち、転写品位の安定性を向上させている。
また、本実施形態では、画像転写部による転写処理中の転写フィルム46の送り出し量は移送ローラ49によって管理される。転写処理中のカードK(及び転写フィルム46)の搬送量よりも移送ローラ49によって送り出される転写フィルム46の搬送量が少ない場合、転写ローラ33と転写プラテン31に挟持されたカードのニップ点に対して転写フィルム46のバックテンションが過剰に付加されてしまい、カードKに転写される画像が伸びてしまう。そこで、転写処理中はカードKの搬送量よりも転写フィルム46の送り出し量を多くしてカード後端側の転写フィルム46を弛ませる。なお、カードKの搬送量は搬送ローラ30、37及び転写プラテン31に接続されるカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)によって制御され、転写フィルム46の送り出し量は移送ローラ49に接続される駆動モータ(ステッピングモータ)によって制御される。これにより、転写フィルム46のバックテンションにより画像が伸びることがない。
しかし、転写処理が終了して、カード後端の剥離を行う際にカード後端より上流側の転写フィルム46が弛んでいると、カード後端が剥離コロ34bを通過するときに転写フィルム46が剥離されずに、剥離位置が剥離コロ34bよりも下流側にずれてしまい、剥離角度が異なってしまうため、カード後端側に剥離カスが発生してしまう。
よって、本実施形態では、カード後端が転写ローラ33を通過してから剥離コロ34bに到達するまでの間に、搬送ローラ対37、38よるカードKの搬送量を多くして、カードK後端よりも移送ローラ49側の転写フィルム46の弛みを取る。なお、カード後端が転写ローラ33を通過してすぐに転写フィルム46のバックテンションをかけると、カードKと転写フィルム46との接着面の温度が高いため、カード後端が剥離コロ34bに到達する前に転写フィルム46が剥離してしまい、早期剥離のため剥離カスが発生してしまう。
以上から、本実施形態のカードKの搬送速度と転写フィルム46の搬送速度(移送ローラ49による送り出し速度)は以下の関係となる。まず、カードKの供給から転写開始位置まで(図7(b)より前の状態)の搬送速度は50mm/秒。その後、転写開始からカード先端が搬送ローラ対37の手前5mm(第1弛み除去開始位置)に到達するまで(図7(c)から図8(d)までの状態)のカードKの搬送速度は25mm/秒で転写フィルム46の送り出し速度は25.5mm/秒。その後、カード先端が第1弛み除去開始位置を通過してからカード後端が転写ローラ33を通過するまで(図8(d)から図8(e)までの状態)のカードKの搬送速度は25.36mm/秒で転写フィルム46の送り出し速度は25.5mm/秒。その後カード後端が転写ローラ33を通過してから転写終了まで(図8(e)から図8(f)までの状態)のカードKの搬送速度は変わらず25.36mm/秒で転写フィルム46の送り出し速度は23.4mm/秒となるように、搬送ローラ30、37及び転写プラテン31を駆動するカード搬送モータSMr、移送ローラ49を駆動する駆動モータ、及び転写時に転写フィルム46を巻き取るDCモータMr2を制御する。
これにより、転写開始からカード先端が搬送ローラ対37に到達するまでは、転写ローラ33よりも上流側の転写フィルム46の弛み量が適切(約2mmの弛み)となり、その後カード先端が搬送ローラ対37に突入することにより転写フィルム46の弛み量が増えてもカードKの搬送速度を速めることで転写フィルム46が過度に弛むことがなく、さらにカード後端が転写ローラ33を通過した後に転写フィルム46の送り出し量を少なくすることでカード後端の剥離時に転写フィルム46の弛みを取ることができ、良好な転写及び剥離を行うことができる。本実施形態では、カードKの搬送速度を速めるタイミングを、カード先端が搬送ローラ対37の5mm手前の位置に設定したため、転写処理を開始したときのカード搬送速度(25mm/秒)から大きく変更することなく転写フィルム46の弛みを除去でき、画像転写に影響が少ない。カード先端が搬送ローラ対37を通過した後にカードKの搬送速度を早くしようとした場合、転写フィルム46の弛みを除去するにはさらにカードKの搬送速度を早くしなければならない。このとき、カード搬送速度を速くしすぎて画像転写の際に転写ローラ33から十分な熱を加えることができない場合は、移送ローラ49による転写フィルム46の送り出し速度を遅く(送り出し量を少なく)してもよい。当然、画像転写に影響がない場合は、カードKの搬送速度を速くしてもよい。
なお、カード先端が搬送ローラ対37に突入することによるカード搬送量の減少については、環境温度や連続印刷による搬送ローラ37の径の変動や、カード厚さによって変わってくる。つまり、環境温度が高かったり連続印刷により機内温度が上昇したりすることにより搬送ローラ37の径が大きくなると、搬送ローラ対間のギャップが縮まる。よって、カード先端は通常時よりも搬送ローラ対37の間を通過し難くなり(カード先端の衝突の衝撃が大きい)、スリップ量が多くなることで転写フィルム46の弛み量が多くなる。また、カードKの厚さが厚くなることで同様にカード先端が搬送ローラ対37に衝突しやすくなるため、転写フィルム46の弛み量が多くなる。よって、装置にカードKの厚さ(カード種類)情報を入力する入力部を設けるか、上位装置から入力することでカード厚さ情報を取得し、その情報に基づいて転写フィルム46の目論見の弛み量を設定し、それに応じてカード搬送速度と転写フィルム送出し速度を算出(またはテーブルで速度情報を格納)してもよい。また、サーミスタTで機内温度を検出し、その結果に基づいて搬送ローラ対37の径を算出(または径情報を格納)し、それに応じてカード搬送速度と転写フィルム送出し速度を算出(またはテーブルで速度情報を格納)してもよい。また、連続発行枚数をカウントして、所定枚数以上連続発行を行った場合は搬送ローラ対37の径が大きくなったと判断し、それに応じてカード搬送速度と転写フィルム送出し速度を算出(またはテーブルで速度情報を格納)してもよい。なお、上記を組み合わせてもよい。
よって、このような場合は目論見の転写フィルム弛み量を多くして、カード搬送速度をさらに速くするか、転写フィルム46の送り出し速度をさらに遅くすることで適切な搬送速度となるように設定する。
なお、本実施形態では、搬送ローラ対37はデカール機構36の一部を構成しており、カードKのデカール処理を行う際は搬送ローラ対37のローラ間が若干離間するように構成されている。よって、搬送ローラ対37のカードKに対するニップ圧は、転写ローラ33及び転写プラテン31によるニップ圧に比べて弱く設定されている。カード後端が転写ローラ33を通過した後、カードKは搬送ローラ対37によってのみ搬送されるため、ニップ圧が弱い搬送ローラ対37とカードKとがスリップを起こす可能性がある。よって、カード後端が転写ローラ33を通過した後に、搬送ローラ対37を駆動するカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)の駆動量によってカードKの搬送量を管理すると、目論見の搬送量に対して実際の搬送量が少なくなってしまい、正しい転写終了位置にカードKを搬送できない場合がある。
そこで、本実施形態では、転写ローラ33から剥離コロ34bまでの間はカードKと転写フィルム46とが張り付いて同時に搬送されることに着目し、カード後端が転写ローラ33を通過してから剥離コロ34bを通過するまでの間、制御部Hは転写フィルム46の搬送量(巻取り量)をカード搬送量として管理(カウント)している。具体的には、2次転写の際に転写フィルム46を巻き取る供給スプール47を駆動するDCモータMr2の回転軸に設けられたエンコーダにより、制御部Hは、DCモータMr2の回転量を取得し、その時の供給スプール47の径と比較しながら転写フィルム46の搬送量を計算している。つまり、転写ローラ33から剥離コロ34bまでの距離を74mmとしたときに、制御部Hは、2次転写時の供給スプール47の径情報からDCモータMr2を何回転させると転写フィルム46が74mm搬送されるか把握できるので、DCモータMr2がその回転量に達したことにより転写フィルム46が74mm搬送されたと判断する。なお、カードKの搬送量は、カードセンサSe3をカード先端が通過してからのカード搬送モータSMrの駆動量をカウントすることで算出している。
制御部Hは、2次転写開始からカード後端が転写ローラ33に到達するまでの間と、カード後端が剥離コロ34bを通過した後については、カードKの搬送量を転写プラテン31、搬送ローラ29、30、37及び38を駆動するカード搬送モータSMrの駆動量によって管理(カウント)している。よって制御部Hは、一回の2次転写中でカードKの搬送量の管理をカード搬送モータSMr(図7(c)から図8(e)に示す、転写開始からカード後端が転写ローラ33に到達するまで)→DCモータMr2(図8(e)から図8(f)に示す、カード後端が転写ローラ33を通過してから剥離コロ34bを通過するまで)→カード搬送モータSMr(カード後端が剥離コロ34bを通過してからカード搬出または裏面転写のための逆搬送)となるように切り替えている。
なお、転写開始(カード頭出し含む)からカード後端が転写ローラ33に到達するまでの間は、カード先端がセンサSe3を通過してからのカード搬送モータSMrの回転量を検出することによってカードKの搬送量を管理している。また、カード搬送量の管理をカード搬送モータSMrからDCモータMr2に切り替えるタイミングについては、カード後端が転写ローラ33を通過したタイミングに限らない。
2次転写を開始する際はカードKと転写フィルム46とを転写ローラ33と転写プラテン31とでニップする。そのとき、転写ローラ33よりも下流側の転写フィルム46は若干弛みが生じるため、実際に転写開始する時はDCモータMr2を先に駆動してからカード搬送モータSMrを駆動してカードKと転写フィルム46の搬送を開始する。よって、転写開始時のカード搬送量はカードKを搬送するためのカード搬送モータSMrで管理した方がよい。その後はカードKと転写フィルム46とは1対1で同時に搬送されるため、カード搬送が開始した以降の任意のタイミングでカード搬送量の管理をDCモータMr2に切り替えてもよい。
[制御構成]
図6に本発明に係わる制御構成について説明する。制御部Hは、例えば制御CPU70で構成し、このCPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。そしてカード搬送制御部75は搬入経路P1と搬出経路P2に配置されているカード搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。また、サーミスタTによって環境温度を検出し、カード搬送制御部75でプレヒートのためのカード搬送制御を行う。
上記カード搬送制御部75には、センサSe1〜Se10の状態信号を受信するようにそれぞれのセンサと電気的に接続されている。これと共にデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されている。
上記データ入力制御部73は、磁気記録部A1に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様にIC記録部A2のデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。上記画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。
この画像形成制御は、カード搬送制御75でコントロールされるカードの搬送に応じてこのカード表面に転写プラテン31で画像転写する。このため画像形成制御部74は、転写フィルルム645に画像形成プラテン45で画像形成する、インクリボンワインドモータ制御部74bと、転写フィルルムワインドモータ制御部74cと、シフトモータMS制御部74dを備えている。
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。また、カード搬送制御部75には監視手段H1が設けられ、いずれも制御CPU70の制御プログラムに組み込まれている。この監視手段H1は、上記センサSe1〜Se10の状態信号と、データ入力制御部73のジョブ信号を受信して、装置内に存在するカードの搬送状態を監視するように構成されている。
ここで、本実施形態のカード印刷装置の全体の動作をカードKの動きに沿って説明する(図9)。まず、パソコン等の上位装置から印刷データ及び情報記録データを受取ると、カードKがカード供給部Cから一枚ずつ反転ユニットFに供給される(St1)。このとき、CPU70は転写ローラ33を発熱させ、約185度の状態で温度をキープする。そして、情報記録データがある場合は、カードKは反転ユニットFから情報記録部Aに搬送され、情報記録処理が行われる(St2)。情報記録データがない場合は、後述のプレヒート処理に移る。
この時点で画像形成部Bの1次転写部において、転写フィルム46とインクリボン41とをサーマルヘッド40及びプラテンローラ45で圧接して加熱することにより、転写フィルム46に対して画像が形成される。その際、インクリボン41の各色を転写フィルム46の画像形成領域に重ねて印刷するため、転写フィルム46は供給スプール47、巻取スプール48及び移送ローラ49によって往復搬送される。
情報記録処理が終了したカードKは1次転写処理中にカード先端のプレヒート処理が行われる。まず、サーミスタTによって環境温度を検出する(St3)。これによりカードがどの程度冷えており、どの程度プレヒートしなければならないか図10に基づいて判断する。なお、転写後のカードKから転写フィルム46を剥離するための供給スプール47による巻取トルク(剥離テンション)を決定するためにも環境温度を参照する。その後、これから転写するカード面が表面か裏面かを判断する(St4)。これは、同じ環境温度でも表面転写時と裏面転写時とでカード温度が異なり、その結果、カードKと転写フィルム46との接着面との温度が異なるため、このような判断を行う。よって、表面転写の場合は、表面転写用のプレヒート量及び剥離テンションを決定し(St5)、裏面転写の場合は裏面転写用のプレヒート量及び剥離テンションを決定する(St6)。本実施形態では、表面転写でも環境温度が高い(常温以上)場合や裏面転写時はプレヒート処理を行う必要がないため、プレヒート量は0(プレヒート時間0秒)に設定される。
次に、決定されたプレヒート量が0か否かを判断し(St7)、プレヒート処理が必要ない場合は、搬送ローラ29、30からなるカード待機部で1次転写処理が終了するまでカードKを待機させる。プレヒート処理が必要と判断された場合、検出した環境温度に応じてプレヒート時間とプレヒート領域をROM71からロードし、カードをプレヒート位置へ搬送する(St8)。
環境温度が低温の場合はカード先端のみプレヒートを行えばよいので、プレヒート中はカードKを移動させる必要はないが、極低温の場合はプレヒート領域が広いため、カードKをプレヒート領域内で位置移動させ、必要に応じて往復搬送させる(St9)。その後、プレヒート時間に到達したか判断し(St10)、プレヒート時間に到達したらカードKを2次転写処理のための転写開始位置に頭出しして(St11)プレヒート処理を終了する。
そして、1次転写が終了したか否かを判断し(St12)、終了していたら二次転写処理を行う(St13)。このとき、転写後のカードKから転写フィルム46を剥離する際は、St5またはSt6で決定された剥離テンションで行われる。なお、カードKと転写フィルム46との頭出しは転写フィルム46の頭出しをした後にカードKの頭出しをする方が望ましいため、プレヒート処理が早く終わった場合は一度転写フィルム46の頭出しをした後にカードKの頭出しを行う。2次転写処理終了後、裏面転写が必要か否かを判断し(St14)、裏面転写が必要な場合はSt6に戻る。既に裏面転写まで転写済みの場合や、表面のみ転写して終了する場合はカードを排出して(St15)、カード発行処理を終了する。
ここで、プレヒート処理から2次転写処理の動作を図7(a)〜(c)と図8(d)〜(f)に従って説明する。図7(a)は1次転写処理中にカードKをプレヒートしている状態を示す。このとき、転写ローラ33と剥離コロ34b及び支持ピン51は退避位置(Pn2、Pn4)に位置している。このとき、転写ローラ33の開閉カバー65は閉位置にいるが、開閉カバー65には開口65cが設けられているためカードKのプレヒート領域に転写ローラ33の熱を伝えることができる。なお、転写フィルム46は1次転写処理で往復搬送されているため、転写フィルム46の一部分のみが過剰に温められることはない。
1次転写処理が終了すると、転写フィルム46とカードKはそれぞれ2次転写の開始位置に頭出しされる(図7(b))。このときも転写ローラ33と剥離コロ34b及び支持ピン51は退避位置をキープしている。なお、転写フィルム46の頭出しは供給スプール47に連結されているDCモータMr2を回転制御することで行い、カードKの頭出しはカード先端がセンサSe3を通過してからのカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)の回転制御により行う。DCモータは停止時にオーバーラン量が一定ではないため、先に転写フィルム46の頭出しをした後にDCモータのオーバーラン量を加味した距離分ステッピングモータを駆動してカードKの頭出しを行う。これにより、転写フィルム46とカードKの頭出し位置が正確となる。なお、DCモータMr2のオーバーラン量は、供給スプール47の回転量(DCモータMr2の回転量)を検出するエンコーダ(不図示)によって検出して算出される。
転写フィルム46とカードKの頭出しが終了すると、制御CPU70は転写ローラ33を退避位置(Pn2)から作動位置(Pn1)に移動させ、剥離コロ34b及び支持ピン51を退避位置(Pn4)から作動位置(Pn3)に移動させる。すると、図7(c)の状態となり、画像転写処理が開始される。このとき、カードKの搬送量(搬送速度)の管理はカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)によって行われる。
画像転写処理が進み、カードKの先端が剥離コロ34bに到達すると、カードKから転写フィルム46が剥離される。カード先端は転写フィルム46の走行方向に引っ張られる力が働くが、剥離コロ34b直後に配置された支持ピン51に支持されるため、カードの姿勢が安定する(図8(d))。画像転写処理中は転写フィルム46のカード後端よりも上流側は弛ませる必要があるため、カード搬送ローラ30、37及び転写プラテン31と移送ローラ49の回転量を制御し、カードKの搬送量よりも転写フィルム46の送り出し量を多くしてバックテンションがかからないようにする。ここで、カード先端が搬送ローラ対37に突入するため、さらに転写フィルム46に弛みが生じる。よって、ここからカード搬送速度を早くするか、転写フィルム送り出し速度を遅くして、転写フィルム46の過度の弛みを解消していく。
次に、制御CPU70はカード後端が転写ローラ33を通過したタイミング(搬送ローラ30等を駆動するカード搬送モータSMrの回転数又は予め設定されたタイマー時間から計算)で、転写ローラ33は図8(d)の状態である作動位置(Pn1)から同(e)の退避位置(Pn2)に移動させる。このとき剥離コロ34b及び支持ピン51は転写フィルム46をカードから剥離させる作動状態(Pn3)に保持されている。このとき、カード後端は転写ローラ33及び転写プラテン31のニップから解除されているため、カードKはニップ圧の弱い搬送ローラ対37、38にのみニップされている。よって、制御CPU70は、カード搬送量の管理を、供給スプール47を駆動するDCモータMr2に切り替える。このとき、移送ローラ49による転写フィルム送り出し量を少なく(送り出し速度を遅く)することにより、図8(f)の状態になるまでに転写フィルム46の弛みを解消する。
その後、制御CPU70はカード後端が少なくとも剥離コロ34bを通過したタイミング(供給スプール47の径情報とDCモータMr2の回転数又は予め設定されたタイマー時間から計算)で、再び剥離コロ34b及び支持ピン51は作動位置(Pn3)から退避位置(Pn4)に移動する(図8(f))。このとき転写ローラ33は退避位置(Pn2)に保持されている。
その後、デカール機構36でカードの反りを矯正し、カード両面に印刷する場合はカードKを反転ユニットFに向けて搬送してカードKを反転し、カード裏面にも同様の転写処理を施し、片面印刷で終了する場合はそのままカード収容部DにカードKを排出して一連の動作を終了する。なお、カード裏面に連続して転写処理を行う際は、カード表面に転写処理を行ったときにカードが温められているため、プレヒート処理は行わない。このときのカード搬送量は再びカード搬送モータSMrの駆動量によって管理される。
ここで、2次転写処理におけるカードKと転写フィルム46の搬送についての処理フローを説明する(図11)。まず2次転写処理が開始されると、カード搬送ローラ30、37及び転写プラテン31を駆動するカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)、移送ローラ49を駆動するステッピングモータと、供給スプール47と巻取スプール48を駆動するそれぞれのDCモータを起動する(St16)。その後転写処理が進み、転写フィルム46の第1弛み除去開始位置(カード先端が搬送ローラ対37の手前5mmに到達した位置。これは、カード先端がセンサSe3を通過してからのステッピングモータの駆動量で検出する。)に達したか判断し(St17)、到達したらカード搬送モータSMr及びDCモータMr2の駆動量を多く(又は移送ローラの駆動モータの駆動量を少なく)して転写フィルム46の過度の弛みを取る(St18)。その後、転写フィルム46の第2弛み除去開始位置(カード後端が転写ローラ33を通過した位置。)に到達したか判断し(St19)、到達したらカード搬送モータSMr及びDCモータMr2の駆動量を多く(又は移送ローラの駆動モータの駆動量を少なく)してカード後端が剥離コロ34bに到達するまでに転写フィルム46の弛みを解消する(St20)。その後転写フィルム46の剥離が終了し2次転写終了位置にカードKが到達したかを判断し(St21)、到達したらそれぞれのモータを停止して(St22)、2次転写処理を終了する。
<効果等>
本実施形態の転写装置では、カードKの搬送量が減少するタイミングと減少量を予測・想定し、このタイミングの直前または直後に、カード搬送速度を移送ローラ49による転写フィルム46の送り出し速度よりも相対的に速めることにより、カード後端側(転写ローラ33よりも転写方向上流側)の転写フィルム46が必要以上に弛むことがない。よって、転写処理時に転写フィルム46が皺になることがなく転写品位が向上する。また、カード後端の剥離時に転写フィルム46が弛んでいると目論見の転写終了位置(剥離が終了する位置)でカードKから転写フィルム46が剥離しきれていない場合があるが、本実施形態の転写装置では、転写終了時にはカード後端側の転写フィルム46の弛みを解消するようにカード搬送速度および転写フィルム送り出し速度を制御しているため、剥離品位も向上する。
また、本実施形態の転写装置では、カードKへの転写処理が開始されてから所定量カードKを搬送するまでは、カード搬送モータSMrの駆動量に基づいてカードKの搬送量をカウントし、転写処理が終了するまでの間に転写処理中に転写フィルム46を巻き取るためのDCモータMr2の駆動量に基づいてカードKの搬送量をカウントするように切り替えるため、カード後端が転写ローラ33を通過した後に搬送ローラ対37がカードKに対してスリップ(空回り)しても目論見のカード搬送量と実際のカード搬送量の差が小さい。よって、目論見の転写終了位置においてカード後端が剥離コロ34bに到達していないという問題を防ぐことができる。
なお、本実施形態では、カード搬送量のカウントを切り替えるタイミングを、転写開始してからカード後端が転写ローラ33を通過する前とする態様を示したが、カード後端が転写ローラ33を通過した後でも転写処理が終了(剥離完了)するまでに、DCモータMr2に基づいたカウントに切り替えることによって、目論見のカード搬送量と実際のカード搬送量の差を小さくすることができる効果を得ることができる。
また、カード搬送量を算出するにあたって、カード先端がセンサSe3を通過してからの搬送ローラ29、30、37及び38と転写プラテン31を駆動するカード搬送モータSMr(ステッピングモータ)の駆動量をカウントすることによってカード搬送量を算出する態様を示したが、モータの駆動量ではなく、搬送ローラの軸にエンコーダを設けて、そのクロック数を検出することによりカード搬送量を算出してもよい。同様に、転写フィルム46の搬送量もDCモータMr2の駆動量ではなく、供給スプール47の軸にエンコーダを設けて、そのクロック数を検出することにより転写フィルム46の搬送量を算出し、それをカード搬送量に置き換えるようにしてもよい。