JP6488703B2 - 2軸延伸ポリプロピレンフィルム - Google Patents
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Description
また、高立体規則性を持ち、分子量分布の広いポリプロピレンを用いて延伸フィルムとすることにより電気絶縁性、機械特性等に優れたキャパシターフィルムとして好適に用いることができるという技術が知られていた(例えば特許文献2等参照)。
さらに、本発明のポリプロピレンフィルムは150℃以上の環境下に晒されても諸物性を維持することができ、従来のポリプロピレンフィルムでは考えられなかったような高温の環境下でも使用することができる。
ポリプロピレンはいくつかの結晶多形を有することが知られているが、通常はα型結晶が優先的に生成する。α型結晶には、α1型とα2型があることが知られているが、α1型結晶と比較して、α2型結晶は分子鎖の向きが揃った秩序性の高い結晶であり、安定性が高いと考えられる(参考文献:M.Hikosaka & T.Seto、Polymer Journal、111(5)、1973)。したがって、α2型結晶を多く含むことにより、種々の物性向上が期待できる。α2型結晶量は、広角X線回折法や固体NMR法により定量できるが、フィルムのような結晶配向が強い試料では、広角X線回折法で定量することは困難であるため、固体NMRを用いた方法が好ましい。固体NMRを用いる方法については、T.Miyoshiら、J.Phys.Chem.B、114、92−100(2010)に記載されている。
ところで、α1型結晶とα2型結晶は生成する温度の範囲が異なり、130℃以下の結晶化温度ではα1型が主体的に、150℃を超えるとα2型が主体的に生成する。しかし、温度が高いほど結晶化速度は低下し、例えば140℃を超えるような結晶化温度では、固化に要する時間が長いため、工業的にα2型結晶が多い製品を製造することは困難とされていた。
したがって、高温でのポリプロピレンの結晶化速度を向上させることが必要であるが、そのためには、立体規則性を高くしたプロピレンホモポリマーを用いることが好ましい。しかしながら、特に、延伸ポリプロピレンフィルムの用途では、生産性向上や物性などの観点から、延伸前原反の結晶化度を低下させるため、エチレンなどコモノマーを共重合したり、立体規則性を低くすることが行われることがある。このため、融点が低くなり、α2型結晶が多くできるような高温での延伸や熱固定が困難になる。
本発明者らは鋭意検討の結果、分子量分布が広いポリプロピレンホモポリマーを用い、高温で延伸や熱固定を行うことによって、α2型結晶が多く含まれるフィルムを製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
フィルム中に含まれるα2型結晶量の下限は、全結晶量の23%であり、好ましくは25%であり、より好ましくは26%であり、さらに好ましくは27%である。α2型結晶が23%よりも少ないと、耐熱性が不足する。フィルム中に含まれるα2型結晶量の上限は、全結晶量の90%が好ましく、より好ましくは85%であり、更に好ましくは70%以下である。α2型結晶量を90%を超えて増やすためには、結晶化時間が著しく長く必要となり、生産性に劣る。α2型結晶量は、延伸温度や熱固定温度を高くしたり、オフラインアニールを行うことで高くすることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムの密度の下限は0.910g/cm3であり、より好ましくは0.911g/cm3であり、さらに好ましくは0.912g/cm3であり、特に好ましくは0.913g/cm3である。上記範囲であると結晶性が高く熱収縮率が小さくなることがある。
フィルム密度の上限は好ましくは0.925g/cm3であり、より好ましくは0.922g/cm3であり、さらに好ましくは0.920g/cm3であり、特に好ましくは0.918g/cm3である。上記範囲であれば現実的な製造が容易となることがある。フィルム密度は、延伸倍率や温度を高くする、熱固定温度を高くする、さらにはオフラインアニールすることで高めることができる。
なお、ヤング率は延伸倍率を高くすることで高めることができ、MD−TD延伸の場合はMD延伸倍率を低めに設定し、TD延伸倍率を高くすることでTD方向のヤング率を大きくすることができる。
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、α2型結晶の生成に必要な高温での結晶化が生じることを阻害しない範囲で、プロピレン単独重合体や共重合モノマーとの共重合体であっても良い。共重合モノマー種としてはエチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等が可能である。
数平均分子量:Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi 2)/Σ(Ni・Mi)
Z平均分子量:Mz=Σ(Ni・Mi 3)/Σ(Ni・Mi 2)
Z+1平均分子量:Mz+1=Σ(Ni・Mi 4)/Σ(Ni・Mi 3)
ピーク分子量:Mp(GPC曲線のピーク位置の分子量)
また、分子量分布を表すパラメータとしては、これらの平均分子量の比が一般的に用いられ、例えば、Mw/Mn、Mz/Mw、Mz/Mnなどが挙げられる。このような分子量や分子量分布の測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が一般的に用いられる。
分子量1万以下程度の分子は分子鎖同士の絡み合いには寄与せず、可塑剤的に分子同士の絡み合いをほぐす効果がある。分子量1万以下の成分の量が特定量含まれることで延伸時の分子の絡み合いがほどけやすく、低い延伸応力での延伸が可能となり、その結果として残留応力も低く高温での収縮率を低くできているものと考えられる。
高分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは0.0001g/10分であり、より好ましくは0.0005g/10分であり、さらに好ましくは0.001g/10分であり、特に好ましくは0.005g/10分である。上記範囲であると現実的な樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。なお、高分子量成分の230℃、2.16kgfでのMFRは小さすぎて現実的測定が困難となる場合がある。10倍の荷重(21.6kgf)でのMFRであらわすと、好ましい下限は0.1g/10分であり、より好ましくは0.5g/10分であり、さらに好ましくは1g/10分であり、特に好ましくは5g/10分である。
高分子量成分のMwの上限は好ましくは10000000であり、より好ましくは8000000であり、さらに好ましくは6000000であり、特に好ましくは5000000である。上記範囲であると現実的な樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。
高分子量成分の量の上限は好ましくは30質量%であり、より好ましくは25質量%であり、さらに好ましくは22質量%であり、特に好ましくは20質量%である。上記範囲であると低分子量成分の効果である高温での低い熱収縮率など、本発明の効果がより得られやすくなることがある。
ここで、高分子量成分は、直鎖状のポリプロピレン樹脂の代わりに、長鎖分岐や架橋構造を有するポリプロピレン樹脂を用いることもでき、これは高溶融張力ポリプロピレンとして知られており、例えば、Borealis社製Daploy WB130HMS、WB135HMS等がある。
低分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは70g/10分であり、より好ましくは80g/10分であり、さらに好ましくは100g/10分であり、特に好ましくは150g/10分であり、最も好ましくは200g/10分である。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など、本発明の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFRの上限は好ましくは2000g/10分であり、より好ましくは1800g/10分であり、さらに好ましくは1600g/10分であり、特に好ましくは1500g/10分であり、最も好ましくは1450g/10分である。上記範囲であると全体でのMFRを維持しやすくなり、製膜性に優れることがある。
低分子量成分のMwの上限は好ましくは150000であり、より好ましくは140000であり、さらに好ましくは130000であり、特に好ましくは120000であり、最も好ましくは110000である。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など、本発明の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分の量の上限は好ましくは98質量%であり、より好ましくは97質量%であり、さらに好ましくは96質量%であり、特に好ましくは95質量%である。上記範囲であると全体のMFRを維持するために低分子量成分の分子量を上げる必要がなく、高温での低い熱収縮率など本発明の効果がより得られやすくなることがある。
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂全体に対するMw5万未満のポリプロピレンの比率の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは45質量%であり、さらに好ましくは40質量%であり、特に好ましくは35質量%であり、最も好ましくは30質量%である。Mw5万未満のポリプロピレンの比率が50質量%以下であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなることがある。
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の立体規則性の指標であるアイソタクチックメソペンタッド分率の下限は好ましくは96%であり、より好ましくは96.5%であり、さらに好ましくは97%である。上記範囲であると結晶性や融点が向上し、高温での熱収縮率がより低くなることがある。アイソタクチックメソペンタッド分率の上限は好ましくは99.5%であり、より好ましくは99.3%であり、さらに好ましくは99%である。上記範囲であると現実的な製造が容易となることがある。
ポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料となるプロピレンを重合させて得られる。中でも上記異種結合をなくすためには、チーグラー・ナッタ触媒を用い、その中でも立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
プロピレンの重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のプロピレンやエチレン中で重合する方法、気体であるプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法が挙げられる。
高分子量成分、低分子量成分は別々に重合した後に混合しても良く、多段階の反応器で1連のプラントで製造しても良い。特に、多段階の反応器を持つプラントを用い、高分子量成分を最初に重合した後にその存在下で低分子量成分を重合する方法が好ましい。なお、分子量の調節は重合中に混在させる水素の量で行うことができる。
本発明の延伸フィルムとしては長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の1軸延伸フィルムでも良いが、2軸延伸フィルムであることが好ましい。2軸延伸の場合は逐次2軸延伸であっても同時2軸延伸であっても良い。
延伸フィルムとすることで、従来のポリプロピレンフィルムでは予想できなかった150℃でも熱収縮率が低いフィルムを得ることができる。
まず、ポリプロピレン樹脂を単軸または2軸の押し出し機で加熱溶融させ、チルロール上に押し出して未延伸フィルムを得る。
溶融押出し条件としては、樹脂温度として200〜280℃となるようにして、Tダイよりシート状に押出し、10〜100℃の温度の冷却ロールで冷却固化する。ついで、120〜160℃の延伸ロールでフィルムを長さ(MD)方向に3〜8倍に延伸し、引き続き幅(TD)方向に155℃〜175℃、好ましくは157℃〜170℃の温度で4〜15倍延伸を行う。
さらに、165〜175℃、好ましくは166〜173℃の雰囲気温度で1〜15%のリラックスを許しながら熱処理を施す。
こうして得られたポリプロピレンフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりロールフィルムを得ることができる。
TD延伸温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは170℃であり、さらに好ましくは168℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を超えると低分子量成分が融解、再結晶化して表面荒れやフィルムが白化するだけでなく、延伸時に結晶化が進まず、α2型結晶分率が増大せずに、耐熱性が低下することがある。
熱固定温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは173℃である。上記を超えると低分子量成分が融解、再結晶化して表面荒れやフィルムが白化することがある。
オフラインアニール温度の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは163℃である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。オフラインアニール温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは174℃であり、さらに好ましくは173℃である。上記を超えると透明性が低下したり、厚みムラが大きくなったりすることがある。
包装フィルムとしても用いた場合には、高剛性であるため薄肉化が可能であり、コストダウン、軽量化ができる。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷の乾燥時に高温乾燥か可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。
さらには、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムとして用いることも可能である。
MFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃で測定した。
分子量および分子量分布は、GPCを用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。
GPC測定での使用カラム、溶媒は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、Z+1平均分子量(Mz+1)はそれぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(Mi)の分子数(Ni)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi 2)/Σ(Ni・Mi)
Z平均分子量:Mz=Σ(Ni・Mi 3)/Σ(Ni・Mi 2)
Z+1平均分子量:Mz+1=Σ(Ni・Mi 4)/Σ(Ni・Mi 3)
また、GPC曲線のピーク位置の分子量をMpとした。
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとする。
得られたGPC曲線から、分子量の異なる2つ以上の成分にピーク分離を行った。各成分の分子量分布はガウス関数を仮定し、それぞれのピーク幅がMw/Mn=4となるように設定した。得られた各成分のカーブから平均分子量をそれぞれ計算した。
また、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂全体のGPC曲線から、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂全体における分子量1万以下となる成分の比率及び分子量10万以下となる成分の比率を求めた。
アイソタクチックメソペンタッド分率(メソペンタッド分率、[mmmm])およびアイソタクチックメソ平均連鎖長(メソ平均連鎖長)の測定は、13C−NMRを用いて行った。アイソタクチックメソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)に記載の方法に従い、アイソタクチックメソ平均連鎖長は、J.C.Randallによる、“Polymer Sequence Distribution”第2章(1977年)(Academic Press,New York)に記載の方法に従って算出した。
NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用いて行い、試料200mgをo−ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で13C−NMR測定を実施した。
各試料を300mgずつ、ZrO2ローター中に均一かつ密に充填した後、固体核磁気共鳴装置に挿入した。その後、ローターを外部磁場に対してマジック角(54.7°)だけ傾斜し、4000Hzの速度で回転させ、13C−NMR測定をCP/MAS法を用いて行った。条件を以下に記す。
装置名:BRUKER社製 AVANCE300
測定核:13C
測定周波数:75.5MHz
回転数:4000Hz
待ち時間(D1):5秒
データ取り込み時間(Aq):34.9ms
フリップ角:90°
積算回数:3000〜10000回
測定温度:室温
得られた13C−NMRスペクトルに対して、T.Miyoshiら、J.Phys.Chem.B、114、92−100(2010)に記載の解析方法を適用し、α2型結晶の比率を算出した。リファレンスとして、α1型結晶の比率が100%である標準試料を用意して用いた。
フィルムの密度は、JIS K7112に従って密度勾配管法により測定した。
島津製作所製DSC−60示差走査熱量計を用いて熱測定を行った。フィルムから約5mgの試料を切り出して測定用のアルミパンに封入した。20℃/分の速度で室温から230℃まで昇温し、試料の融解吸熱ピーク温度をTmpとした。
ポリプロピレン試料1gを沸騰キシレン200mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶化させ、ろ過液に溶解している質量の、元の試料量に対する割合をCXS(質量%)とした。
JIS Z 1712に準拠して測定した。すなわち、延伸フィルムを20mm巾で200mmの長さでMD、TD方向にそれぞれカットし、熱風オーブン中に吊して5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用いて、23℃にて測定した。
JIS K 7127に準拠して、MDおよびTDの引張強度を23℃で測定した。
JIS K7105に従って測定した。
アタゴ製アッベ屈折計を用いて測定した。MD、TD方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzとした。
上記12)で測定したNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzから[(Nx+Ny)/2]−Nzの式を用いて計算した。
巻き取ったフィルムロールから長さが1mの正方形のサンプルを切り出し、MD方向およびTD方向にそれぞれ10等分して測定用サンプルを100枚用意した。測定用サンプルのほぼ中央部を接触式のフィルム厚み計で厚みを測定した。
得られた100点のデータの平均値を求め、また最小値と最大値の差(絶対値)を求め、最小値と最大値の差の絶対値を平均値で除した値をフィルムの厚み斑とした。
ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0g/10分、[mmmm]=97.3%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製:「ノバテック(登録商標)PP SA4L」)を用いた。60mm押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向に4.5倍に延伸し、次いで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向に8.2倍に延伸し、次いで6.7%のリラックスをさせながら168℃で熱処理した。その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取った。こうして得られたフィルムの厚みは20μmであり、表1、表2、表3に示すとおり、熱収縮率が低く、ヤング率が高いフィルムが得られた。図1に固体NMRで得られたスペクトルと、α1型結晶100%の試料のスペクトルを重ねて示す。これらの面積比から全結晶中のα2型結晶の分率(%)を求めた。
SA4Lの90質量部に対して、分子量分布が狭く、分子量10000である低分子量プロピレン単独重合体を10質量部加え、30mmの2軸押出機にて溶融混錬して、混合物のペレットを得た。このペレットを、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
SA4Lの70質量部に対して、Mw/Mn=4.6、Mz+1/Mn=22、MFR=120g/10分、[mmmm]=98.1%であるプロピレン単独重合体を30質量部添加し、ドライブレンドした後、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、2、3に示した。
SA4Lを用い、横延伸における予熱温度を173℃、延伸温度と熱処理温度を167℃とした以外は、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
長さ方向に5.5倍、横方向に12倍延伸した以外は、実施例2と同様な方法でフィルムを得た。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
実施例1で作製したフィルムを用いて、テンター式熱風オーブン中で、170℃で5分間熱処理を行った。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=8.9、Mz+1/Mn=110、MFR=3.0g/10分、mmmm=97.1%であるプロピレン単独重合体(サムスントタル(株)製「HU300」)を用い、予熱温度を171℃、TD方向の延伸温度を161℃、熱固定温度を170℃とした以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレンフィルムを得た。ポリプロピレン樹脂の特性と、得られたフィルムの物性を表1、2、3に示した。
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製の「住友(登録商標)ノーブレン(登録商標)FS2011DG3」を用い、縦延伸温度を125℃、横延伸における予熱温度を168℃、延伸温度を155℃、熱処理温度を163℃とした以外は、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。Mw/Mn=4、Mz+1/Mn=21、MFR=2.5g/10分であった。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
予熱温度を171℃、延伸温度を160℃、熱処理温度を165℃とした以外は、比較例1と同様にフィルムを作製した。ポリプロピレン樹脂の特性と得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
ポリプロピレン樹脂として、日本ポリプロ(株)製の「ノバテック(登録商標)PP SA03」(MFR=30g/10分)を用い、縦延伸温度を130℃とした以外は実施例1と同様に2軸延伸を試みたが、横延伸で破断してフィルムを得ることができなかった。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷の乾燥時に高温乾燥か可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。
さらには、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムにも適している。
Claims (4)
- 固体NMRで測定されるα2型結晶量が全結晶中の23%以上であり、密度が0.910g/cm3以上であり、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が168℃以上であり、150℃での熱収縮率が15%以下であり、かつ、ヘイズが6%以下であることを特徴とする2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のアイソタクチックメソペンタッド分率の下限が96%であり、フィルムの面配向係数の下限が0.0125である請求項1に記載の2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である請求項1または2に記載の2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分が7質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
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