JP7245026B2 - 樹脂フィルム、金属層一体型樹脂フィルム、及び、フィルムコンデンサ - Google Patents
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Description
主成分として結晶性熱可塑性樹脂を含有し、
下記測定方法(1)により測定される23℃での体積抵抗率ρV23℃と下記測定方法(2)により測定される23℃での比誘電率εr23℃との積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であり、
下記測定方法(3)により測定される100℃での体積抵抗率ρV100℃と下記測定方法(4)により測定される100℃での比誘電率εr100℃との積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であることを特徴とする。
<測定方法>
(1)23℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV23℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(2)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを23℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr23℃を算出する。
(容量C)=(εr23℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
(3)100℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV100℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(4)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを100℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr100℃を算出する。
(容量C)=(εr100℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
一方、本発明では、23℃での体積抵抗率ρV23℃は、上記測定方法(1)により測定し、100℃での体積抵抗率ρV100℃は、上記測定方法(3)により測定する。これにより、フィルムの体積抵抗率を、桁数レベルよりもより高い精度で得ることができる。本発明における体積抵抗率の測定方法では、電位傾度を一定(本発明では、200V/μm)としている点が、精度向上の理由の1つである。
一般的に、オームの法則が成立する範囲内においては、どのような電圧で測定しても(どのような電位傾度で測定しても)体積抵抗率は、一定になる。しかしながら、オームの法則が成立しない領域(高電界領域)では、測定時の電圧に応じて体積抵抗率は、異なることになる。具体的には、測定時の電圧が高くなるほど(電位傾度が高くなるほど)、体積抵抗率は低く測定される。そのため、フィルムの体積抵抗率は、電位傾度を揃えた条件で比較することが重要である。
本発明では、電位傾度を一定として体積抵抗率を求めるため、例えば、複数種類のフィルムの体積抵抗率を測定した場合に、従来方法では、同一桁数であるからほぼ同一の体積抵抗率であると評価されていたものについて、明確に異なる値であるとすることが可能となる。そして、実施例からも分かるように、本発明における体積抵抗率の測定方法で得られるフィルムの体積抵抗率と、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率とは、よい相関が得られる。なお、比誘電率は、樹脂フィルムの分子構造と結晶形態に特有の値である。従って、本発明における体積抵抗率と比誘電率との積も、寿命試験における絶縁抵抗値(IR)の低下率とよい相関が得られる。
以上より、本発明におけるフィルムの体積抵抗率が大きいほど、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率は抑制される。
そして、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であれば、23℃(常温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得る。
また、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であれば、100℃(高温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得る。
なお、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であると、23℃(常温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得るとし、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であれば、100℃(高温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得るとしたのは、寿命試験における評価基準として、当該数値以上であれば、実際の長期間の使用に耐え得る可能性が極めて高いとの想定で設定したことによる。
上述の通り、本発明におけるフィルムの体積抵抗率が大きいほど、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率は抑制される。従って、体積抵抗率は大きいほど好ましい。
一方、比誘電率は、大きいほど電気を貯める能力が高くなる。つまり、電極面積が同じであれば、比誘電率が大きいほど、コンデンサとしての静電容量は、大きくなる。そのため、比誘電率は大きいほど好ましい。
ここで、樹脂材料を検討すると、体積抵抗率が比較的大きいものの、比誘電率は比較的小さいものや、体積抵抗率が比較的小さいものの、比誘電率は比較的大きいもの等、種々の材料が存在する。
このような種々の材料を検討した際に、フィルムの体積抵抗率が比較的大きなものに関しては、寿命試験期間中におけるコンデンサ素子の漏れ電流が小さく抑えられ、コンデンサ素子の発熱が抑制される結果、絶縁抵抗(IR)の低下がより抑制されることになるため、劣化の進行度合いがより遅くなると予想される。そのため、比誘電率が比較的小さくても、性能として、実際の長期間の使用に耐え得ると考えられる。
反対に、フィルムの体積抵抗率が比較的小さいものに関しては、コンデンサ素子の絶縁抵抗(IR)は、体積抵抗率が比較的大きいものと比べると低下しやすく、劣化の進行度合いは、やや速くなると予想される。しかしながら、比誘電率が比較的大きい場合には、もともと電気を溜める能力が高い。そのため、(A)目的の静電容量を得るのに必要なフィルム面積(電極面積)を小さくできる、又は、(B)フィルム面積を維持したままフィルムの厚さを厚くすることができる。その結果、寿命試験期間中におけるコンデンサ素子の漏れ電流を低減することができ、発熱を抑制することができる。
この点につき、より詳細に説明する。
比誘電率の異なるフィルムを用いて静電容量がそれぞれ同一のコンデンサ素子を作製することを想定する。この想定において、比誘電率の比較的大きいフィルムを使用すると、漏れ電流の低減を達成するための選択肢として、次の(1)~(3)の3通りの中から選択可能となる点で有利である。
(1)フィルム厚さを維持したまま使用するフィルム面積を小さくする。
(2)フィルム面積は変えずにフィルムを厚くする。
(3)前2者の利点を取って、フィルムをやや厚めに、フィルム面積をやや小さめにする。
以上により、コンデンサ素子の絶縁抵抗(IR)の低下が、より抑制されることになり、実際の長期間の使用に耐え得ると考えられる。
そこで、体積抵抗率と比誘電率との積を、実際の長期間の使用に耐え得るか否かの指標として用いることにした。
一方、本発明では、23℃での比誘電率εr23℃は、上記測定方法(2)により測定し、100℃での比誘電率εr100℃は、上記測定方法(4)により測定する。これにより、薄い樹脂フィルムであっても、比誘電率を簡便、且つ、再現性良く測定することが可能となった。
以上より、積[ρV23℃×εr23℃]、及び、積[ρV100℃×εr100℃]の値について、より正確な値が得られる。
その結果、実際の長期間の使用に耐え得るか否かの指標として、より正確な値を得ることができる。
従って、仮に、特許文献1の方法により体積抵抗率を測定したとしても、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率との明確な相関を得ることはできない。
そもそも、特許文献1において、体積抵抗率は、高電圧を印加した場合のフィルムの貫通状破壊が抑制され、初期特性が良好であることを目的としており、長期使用におけるコンデンサ素子の品質の評価を目的とするものではない。従って、特許文献1には、体積抵抗率の値を用いて、コンデンサ素子の長期間の使用に耐え得るような評価を行おうとする動機付けは全く存在しないと言わざるを得ない。
なお、一般的に、コンデンサの静電容量Cが大きい(例えば、電極面積が広い、誘電体の厚みが薄い)と、絶縁抵抗(IR)は小さくなる(電流が漏れ易くなる)ことが知られている。一般的に、静電容量Cが異なってもコンデンサを公平に比較する指標として「CR積(静電容量×絶縁抵抗)」が使用されている。本明細書における(C・IR)は、このCR積と同義であり、静電容量Cが異なってもコンデンサを公平に比較することができる点で優れる。
また、前記樹脂フィルムの厚さが6μm以下であると、コンデンサ素子としたときの単位体積当たりの静電容量を大きくすることができるため、コンデンサ用として好適に使用できる。また、前記樹脂フィルムの厚さが0.8μm以上であると、フィルムの製膜安定性の観点から好ましい。
前記積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であり、
前記比誘電率εr100℃が2以上5以下であることが好ましい。
前記樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする。
主成分として結晶性熱可塑性樹脂を含有し、
下記測定方法(1)により測定される23℃での体積抵抗率ρV23℃と下記測定方法(2)により測定される23℃での比誘電率εr23℃との積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であり、
下記測定方法(3)により測定される100℃での体積抵抗率ρV100℃と下記測定方法(4)により測定される100℃での比誘電率εr100℃との積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上である。
<測定方法>
(1)23℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV23℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(2)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを23℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr23℃を算出する。
(容量C)=(εr23℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
(3)100℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV100℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(4)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを100℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr100℃を算出する。
(容量C)=(εr100℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
まず、23℃環境の恒温槽に、体積抵抗率測定用ジグ(以下、単に、「ジグ」ともいう)を配置する。体積抵抗率測定用ジグの構成は下記の通りである。また、ジグの各電極には、直流電源、直流電流計を接続する。
<体積抵抗率測定用ジグ>
主電極(直径50mm)
対電極(直径85mm)
主電極を囲うリング状のガード電極(外径80mm、内径70mm)
各電極は、金メッキされた銅製で、試料と接する面には導電ゴムが貼付されている。使用した導電ゴムは、信越シリコーン社製、EC-60BL(W300)で、導電ゴムの光沢のある面を、金メッキされた銅と接するように貼付する。
体積抵抗率=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(試料の厚さ)×(電流値)]
(有効電極面積)=π×[[[(主電極の直径)+(ガード電極の内径)]/2]/2]2
まず、樹脂フィルム(以下、試料ともいう)の一方の面に直径30mmの型枠を当てて、導電性ペーストを塗布する。溶媒が充分に揮発し、型枠を外しても導電性ペーストが流れださなくなった後、型枠を外し、半日放置する。これにより電極を形成する。次に、試料の他方の面にフィルムを挟んで先の電極と重なるように、同様にして電極を形成する。以上により、両面に各直径30mmの電極を有するコンデンサを得る。
<測定条件>
印加電圧:1V
測定周波数:1kHz
(容量C)=(εr23℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
一方、本実施形態では、23℃での体積抵抗率ρV23℃は、上記測定方法(1)により測定し、100℃での体積抵抗率ρV100℃は、上記測定方法(3)により測定する。これにより、フィルムの体積抵抗率を、桁数レベルよりもより高い精度で得ることができる。本実施形態における体積抵抗率の測定方法では、電位傾度を一定(本実施形態では、200V/μm)としている点が、精度向上の理由の1つである。
一般的に、オームの法則が成立する範囲内においては、どのような電圧で測定しても(どのような電位傾度で測定しても)体積抵抗率は、一定になる。しかしながら、オームの法則が成立しない領域(高電界領域)では、測定時の電圧に応じて体積抵抗率は、異なることになる。具体的には、測定時の電圧が高くなるほど(電位傾度が高くなるほど)、体積抵抗率は低く測定される。そのため、フィルムの体積抵抗率は、電位傾度を揃えた条件で比較することが重要である。
本実施形態では、電位傾度を一定として体積抵抗率を求めるため、例えば、複数種類のフィルムの体積抵抗率を測定した場合に、従来方法では、同一桁数であるからほぼ同一の体積抵抗率であると評価されていたものについて、明確に異なる値であるとすることが可能となる。そして、実施例からも分かるように、本実施形態における体積抵抗率の測定方法で得られるフィルムの体積抵抗率と、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率とは、よい相関が得られる。なお、比誘電率は、樹脂フィルムの分子構造(コンフォメーションやパッキング)に特有の値である。従って、本実施形態における体積抵抗率と比誘電率との積も、寿命試験における絶縁抵抗値(IR)の低下率とよい相関が得られる。
また、本実施形態では、測定した電流値から体積抵抗率を算出する際、有効電極面積を、主電極の面積とはせず、主電極とガード電極との離間部分のうち、主電極から同じ、又は、主電極よりも近い部分を有効電極面積としている。これにより、より正確な電流値の測定を可能としている。
以上より、本実施形態における体積抵抗率が大きいほど、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率は抑制される。
そして、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であれば、23℃(常温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得る。
また、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であれば、100℃(高温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得る。
なお、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であると、23℃(常温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得るとし、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であれば、100℃(高温)雰囲気下での実際の長期間の使用に耐え得るとしたのは、寿命試験における評価基準として、当該数値以上であれば、実際の長期間の使用に耐え得る可能性が極めて高いとの想定で設定したことによる。
上述の通り、本実施形態におけるフィルムの体積抵抗率が大きいほど、寿命試験におけるコンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率は抑制される。従って、体積抵抗率は大きいほど好ましい。
一方、比誘電率は、大きいほど電気を貯める能力が高くなる。つまり、比誘電率が大きいほど、コンデンサとしての静電容量は、大きくなる。そのため、比誘電率は大きいほど好ましい。
ここで、樹脂材料を検討すると、体積抵抗率が比較的大きいものの、比誘電率は比較的小さいものや、体積抵抗率が比較的小さいものの、比誘電率は比較的大きいもの等、種々の材料が存在する。
このような種々の材料を検討した際に、フィルムの体積抵抗率が比較的大きなものに関しては、寿命試験期間中におけるコンデンサ素子の漏れ電流が小さく抑えられ、コンデンサ素子の発熱が抑制される結果、絶縁抵抗(IR)の低下がより抑制されることになるため、劣化の進行度合いがより遅くなると予想される。そのため、比誘電率が比較的小さくても、性能として、実際の長期間の使用に耐え得ると考えられる。
反対に、フィルムの体積抵抗率が比較的小さいものに関しては、コンデンサ素子の絶縁抵抗(IR)は、体積抵抗率が比較的大きいものと比べると低下しやすく、劣化の進行度合いは、やや速くなると予想される。しかしながら、比誘電率が比較的大きい場合には、もともと電気を溜める能力が高い。そのため、(A)目的の静電容量を得るのに必要なフィルム面積(電極面積)を小さくできる、又は、(B)フィルム面積を維持したままフィルムの厚さを厚くすることができる。その結果、寿命試験期間中におけるコンデンサ素子の漏れ電流を低減することができ、発熱を抑制することができる。
この点につき、より詳細に説明する。
比誘電率の異なるフィルムを用いて静電容量がそれぞれ同一のコンデンサ素子を作製することを想定する。この想定において、比誘電率の比較的大きいフィルムを使用すると、漏れ電流の低減を達成するための選択肢として、次の(1)~(3)の3通りの中から選択可能となる点で有利である。
(1)フィルム厚さを維持したまま使用するフィルム面積を小さくする。
(2)フィルム面積は変えずにフィルムを厚くする。
(3)前2者の利点を取って、フィルムをやや厚めに、フィルム面積をやや小さめにする。
以上により、コンデンサ素子の絶縁抵抗(IR)の低下が、より抑制されることになり、実際の長期間の使用に耐え得ると考えられる。
そこで、体積抵抗率と比誘電率との積を、実際の長期間の使用に耐え得るか否かの指標として用いることにした。
一方、本実施形態では、23℃での比誘電率εr23℃は、上記測定方法(2)により測定し、100℃での比誘電率εr100℃は、上記測定方法(4)により測定する。これにより、薄い樹脂フィルムであっても、比誘電率を簡便、且つ、再現性良く測定することが可能となった。
以上より、積[ρV23℃×εr23℃]、及び、積[ρV100℃×εr100℃]の値について、より正確な値が得られる。
その結果、実際の長期間の使用に耐え得るか否かの指標として、より正確な値を得ることができる。
なお、本明細書において、横延伸角度は、以下をいう。
横延伸角度:横延伸開始地点の樹脂フィルム幅を構成する第1線分の両端を第1端と第2端とで定義し、横延伸終了地点の樹脂フィルム幅を構成する第2線分の両端を第3端と第4端とで定義し、第1線分の中点から流れ方向に沿って延びる基準仮想直線の片側に第1端と第3端とが位置すると定義したとき、第1端および第3端をつなぐ第1仮想直線と、第1端から流れ方向に沿って延びる第2仮想直線とがなす角度(当該角度は90°未満)。横延伸角度は、8.5°以上が好ましく、9.0°以上がより好ましい。また、横延伸角度は、13.0°以下が好ましく12.0°以下がより好ましい。横延伸角度を大きくすると[ρV23℃×εr23℃]及び[ρV100℃×εr100℃]は大きくなる傾向にある。
コンデンサ素子の絶縁抵抗値を、日置電機株式会社製 超絶縁抵抗計DSM8104を用いて評価する。絶縁抵抗値の低下率は、以下の手順で求める。コンデンサ素子を23℃で24時間静置後、コンデンサ素子に250V/μmの電位傾度(但しフィルムの厚みが2μm以上である場合は500V)で電圧を印加し、印加後、1分経過時の絶縁抵抗値を測定する。これを、寿命試験前の絶縁抵抗値」とする。次に、コンデンサ素子を超絶縁抵抗計から取り外して、105℃の恒温槽中にて、コンデンサ素子に直流高圧電源で直流280V/μmの電位傾度で電圧を1000時間印加(負荷)し続ける。1000時間経過後、コンデンサ素子を取り外した後にコンデンサ素子に放電抵抗を接続して除電する。次いで、コンデンサ素子を23℃で24時間時間静置し、その後、コンデンサ素子の絶縁抵抗値を測定する。これを、寿命試験後の絶縁抵抗値とする。その後、絶縁抵抗値の低下率を算出する。絶縁抵抗値の低下率は、コンデンサ2個の平均値により評価する。
[絶縁抵抗値の低下率(%)]=[[(寿命試験前の絶縁抵抗値)-(寿命試験後の絶縁抵抗値)]/((寿命試験前の絶縁抵抗値)]×100
[(C・IR)の低下率(%)]=[[(寿命試験前のコンデンサの容量)×(寿命試験前の絶縁抵抗値)-(寿命試験後のコンデンサ容量)×(寿命試験後の絶縁抵抗値)]/[(寿命試験前のコンデンサの容量)×(寿命試験前の絶縁抵抗値)]]×100
本明細書において、「面配向係数ΔP」とは、光学的複屈折測定により求めた樹脂フィルムの厚さ方向に対する複屈折値ΔNyz及びΔNxzの値から算出される面配向係数ΔP(ただし、ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2)をいう。
明細書において、樹脂フィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNyz」とは、光学的複屈折測定により求められる厚さ方向に対する複屈折値ΔNyzをいう。より具体的には、フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸とすると、y軸方向の三次元屈折率からz軸方向の三次元屈折率を差し引いた値が、複屈折値ΔNyzとなる。
前記面配向係数の具体的な測定方法は、実施例に記載の方法による。
また、前記樹脂フィルムの厚さが6μm以下であると、コンデンサ素子としたときの単位体積当たりの静電容量を大きくすることができるため、コンデンサ用として好適に使用できる。また、フィルムの製膜安定性の観点から、前記樹脂フィルムの厚さは0.8μm以上であることが好ましい。
この点について、以下に詳細に説明する。
樹脂フィルムは、厚さが薄いほど、単位体積当たりの静電容量を大きくできる。より具体的に説明すると、静電容量Cは、誘電率ε、電極面積S、誘電体厚さd(樹脂フィルムの厚さd)を用いて、以下のように表される。
C=εS/d
ここで、フィルムコンデンサの場合、電極の厚さは、樹脂フィルム(誘電体)の厚さと比較して3桁以上薄いため、電極の体積を無視すると、コンデンサの体積Vは、以下のように表される。
V=Sd
従って、上記2つの式より、単位体積当たりの静電容量C/Vは、以下のように表される。
C/V=ε/d2
上記式から分かるように、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、樹脂フィルム厚さの自乗に反比例する。また、誘電率εは、使用する材料により決まる。そうすると、材料を変更しない限りは、厚さを薄くすること以外で単位体積当たりの静電容量(C/V)を向上させることはできないことが分かる。
なお、電極面積は、単位体積当たりの静電容量(C/V)に影響しない。この点について以下に説明する。
同じ材料、同じ厚さのフィルムを巻回してコンデンサを作製する場合を想定する。例えば、ターン数(巻き数)を増やして、10倍長く(電極面積を10倍大きく)巻いたとする。そうすると、静電容量は10倍になるが、体積も10倍になるので単位体積当たりの静電容量(C/V)は、電極面積が変化しても変わらない。
上記説明は、理解を容易にするために理想化している。つまり、実際には、例えば、フィルム間にわずかな空隙が存在する場合があることや、電極端でのフリンジ効果の影響があること等により、面積に応じて単位体積当たりの静電容量(C/V)の値に多少の変化が見られる場合はある。しかしながら、一般的には、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、樹脂フィルム厚さによって決まるということが理解できる。
以上より、前記樹脂フィルムの厚さは、製膜安定性が担保される範囲内で、なるべく薄くすることが好ましい。そこで、前記樹脂フィルムの厚さは、6μm以下であることが好ましい。
(a)主鎖が脂肪族炭化水素である結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、脂肪族炭化水素とは、飽和炭化水素と不飽和炭化水素との両方を意味する。
(b)主鎖にアミド結合を有する結晶性熱可塑性樹脂としては、6ナイロン(PA6)、66ナイロン(PA66)等が挙げられる。
(c)主鎖にエーテル結合を有する結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等が挙げられる。
前記結晶性熱可塑性樹脂は、上記(a)~上記(c)の2つ以上を満たすコポリマーであってもよい。
主鎖を構成する炭素原子に、それぞれ少なくとも1つの水素原子が結合している結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、主鎖を構成する炭素原子にそれぞれ少なくとも1つの水素原子が結合している、とは、主鎖にベンゼン環が含まれる場合には、ベンゼン環に少なくとも1つの水素原子が結合していることを意味する。また、主鎖に炭素原子以外の原子がある場合、当該炭素原子以外の原子には、水素原子が結合していても、結合していなくてもよいことを意味する。
なお、「微分分布値差DMが、-5%以上14%以下である」とは、ポリプロピレン樹脂の有するMwの値より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としての対数分子量Log(M)=4.5の成分と、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としてのLog(M)=6.0前後の成分とを比較したときに、差分が正の場合は低分子量成分の方が多く、差分が負の場合は高分子量成分の方が多いと理解できる。
<ポリプロピレン樹脂A>
(ポリプロピレン樹脂A-1)
微分分布値差DMが8.0%以上であるポリプロピレン樹脂。
(ポリプロピレン樹脂A-2)
ヘプタン不溶分(HI)が98.5%以下であるポリプロピレン樹脂。
(ポリプロピレン樹脂A-3)
230℃におけるメルトフローレート(MFR)が4.0~10.0g/10minであるポリプロピレン樹脂。
<ポリプロピレン樹脂B>
(ポリプロピレン樹脂B-1)
微分分布値差DMが8.0%未満であるポリプロピレン樹脂。
(ポリプロピレン樹脂B-2)
ヘプタン不溶分(HI)が98.5%を超えるポリプロピレン樹脂。
(ポリプロピレン樹脂B-3)
230℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.9g/10minであるポリプロピレン樹脂。
前記他の樹脂としては、非結晶性熱可塑性樹脂等が挙げられる。
前記非結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
なお、前記樹脂フィルムは、結晶造核剤(特に、α晶核剤)を含まないことが好ましい。結晶造核剤として、樹脂に可溶なもの(溶解型造核剤)と、樹脂に不溶なもの(分散型造核剤)がある。溶解型造核剤として、例えばノニトール系核剤、ソルビトール系核剤などが挙げられるが、溶解型造核剤の分子量は熱可塑性樹脂に対して非常に小さい。そのため、熱可塑性樹脂に添加された溶解型造核剤は、樹脂フィルムの製造加工中にフィルム表面にブリードアウトを起こし易く、製造設備(特にフィルムに接触する金属ロール)の表面を徐々に汚染してしまう。汚染が蓄積されると、製造設備を停止して汚染を除去する作業が必要となり、生産性の悪化を招くことがある。一方、分散型造核剤として、例えばタルク、マイカ、リン酸エステル金属塩系核剤、カルボン酸金属塩系造核剤などが挙げられるが、熱可塑性樹脂と分散型造核剤の界面は導電パスとなり易いため、耐電圧性を低下させることがある。さらに、結晶造核剤、結晶造核剤の熱分解生成物、結晶造核剤に含まれる不純物のいずれかがイオン性物質であるなどの理由で、フィルムに含まれるイオン性物質が増加すると、イオン性電気伝導が増加して体積抵抗率を悪化させる原因となる。これらの理由により、前記樹脂フィルムは、結晶造核剤(特に、α晶核剤)を含まないことが好ましい。
加熱溶融時の押出機回転数は、5~40rpmが好ましく、10~30rpmがより好ましい。
溶融混練の温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、ポリプロピレン樹脂の場合、加熱溶融時の押出機設定温度は、220~280℃が好ましく、230~270℃がより好ましい。また、加熱溶融時の樹脂温度は、220~280℃が好ましく、230~270℃がより好ましい。加熱溶融時の樹脂温度は、押出機に挿入された温度計にて測定される値である。
なお、加熱溶融時の押出機回転数、押出機設定温度、樹脂温度は、使用する結晶性熱可塑性樹脂の物性も考慮して選択する。なお、加熱溶融時の樹脂温度を前記数値範囲内にすることにより、樹脂の劣化を抑制することもできる。
前記金属ドラムの表面温度(押し出し後、最初に接触する金属ドラムの温度)は、50~100℃であることが好ましく、より好ましくは、60~80℃である。前記金属ドラムの表面温度は、使用する結晶性熱可塑性樹脂の物性等に応じて決定することができる。
前記キャスト原反シートの厚さは、前記樹脂フィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、0.05mm~2mmであることが好ましく、0.1mm~1mmであることがより好ましい。
実施例及び比較例の樹脂フィルムを製造するために使用した結晶性熱可塑性樹脂を、表1に示す。
表1には、樹脂の種類を示している。表1中、PPは、直鎖ポリプロピレン樹脂を示す。
表1に示す樹脂Aは、プライムポリマー株式会社製の製品である。樹脂Bは、大韓油化社製のHPT-1である。樹脂Cは、ボレアリス社製のHC300BFである。樹脂Dは、Basell社製のHF500Nである。樹脂Eは、Basell社製のHP400Rである。樹脂Fは、Basell社製のHP501Lである。
表1に、樹脂A~Fの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)を示した。これらの値は、原料樹脂ペレットの形態での値である。測定方法は以下の通りである。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、微分分布値差DMを測定した。
東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC装置であるHLC-8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel GMHHR-H(20)HTを3本連結して使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、トリクロロベンゼンを、1.0ml/minの流速で流して測定した。検量線を、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、数平均分子量(Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)を得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。
また、微分分布値差DMを、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。Log(M)=4.5のときの微分分布値とLog(M)=6.0のときの微分分布値との差を微分分布値差DMとした。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。結果を表1に示す。
樹脂A~樹脂Fについて、10mm×35mm×0.3mmにプレス成形して約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。結果を表1に示す。
各樹脂について原料樹脂ペレットの形態でのメルトフローレート(MFR)を、東洋精機株式会社のメルトインデックサを用いてJIS K 7210の条件Mに準じて測定した。具体的には、まず、試験温度230℃にしたシリンダ内に、4gに秤りとった試料を挿入し、2.16kgの荷重下で3.5分予熱した。その後、30秒間で底穴より押出された試料の重量を測定し、MFR(g/10min)を求めた。上記の測定を3回繰り返し、その平均値をMFRの測定値とした。結果を表1に示す。
(実施例1)
樹脂Aと樹脂Bとをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(樹脂A):(樹脂B)=66.7:33.3とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、樹脂温度250℃で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させてキャスト原反シートを作製した。得られた未延伸キャスト原反シートを130℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4.5倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。引き続き、延伸フィルムをテンターに導いて、9°の延伸角度で、158℃の温度で幅方向に8倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して巻き取り、40℃程度の雰囲気中でエージング処理を施して二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。このようにして、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの厚さは、表2の通りであった(2.32μm)。
樹脂Cを用いて樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ4.94μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ1.95μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.51μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、幅方向の延伸倍率を8.1倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.07μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、流れ方向の延伸倍率を4.6倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.55μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、流れ方向の延伸倍率を4.4倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.54μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、流れ方向の延伸倍率を4.3倍に延伸すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.31μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂Cを用い、フィラー(チタン酸バリウム、平均粒子径80nm(透過型電子顕微鏡で観察したn=100の数平均値))を60,000ppm添加すること、及び、樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ4.90μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂Dを用いたこと及び樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ4.90μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂Eを用いたこと及び樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ5.20μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂Fを用いたこと及び樹脂組成物の吐出量を変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ5.00μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、幅方向の延伸倍率を8.4倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ1.96μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、幅方向の延伸倍率を8.7倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.07μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、流れ方向の延伸倍率を4.0倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ1.96μmの樹脂フィルムを得た。
樹脂組成物の吐出量を変更すること、及び、流れ方向の延伸倍率を4.2倍に変更すること以外は、実施例1と同様にして厚さ2.31μmの樹脂フィルムを得た。
体積抵抗率の具体的な測定手順を以下に記すが、特に記載のない条件はJIS C 2139に準拠して測定を実施した。
まず、23℃環境の恒温槽に、体積抵抗率測定用ジグ(以下、単に、「ジグ」ともいう)を配置した。体積抵抗率測定用ジグの構成は下記の通りである。また、ジグの各電極には、直流電源、直流電流計を接続する。
<体積抵抗率測定用ジグ>
主電極(直径50mm)
対電極(直径85mm)
主電極を囲うリング状のガード電極(外径80mm、内径70mm)
各電極は、金メッキされた銅製で、試料と接する面には導電ゴムが貼付されている。使用した導電ゴムは、信越シリコーン社製、EC-60BL(W300)で、導電ゴムの光沢のある面を、金メッキされた銅と接するように貼付されている。
体積抵抗率=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(試料の厚さ)×(電流値)]
(有効電極面積)=π×[[[(主電極の直径)+(ガード電極の内径)]/2]/2]2
まず、実施例、及び、比較例の樹脂フィルム(以下、試料ともいう)の一方の面に直径30mmの型枠を当てて、導電性ペースト(藤倉化成(株)社製、ドータイト D-500)を刷毛で塗布した。溶媒が充分に揮発し、型枠を外しても導電性ペーストが流れださなくなった後、型枠を外し、半日放置した。これにより電極を形成した。次に、試料の他方の面に試料を挟んで先の電極と重なるように、同様にして電極を形成した。以上により、両面に各直径30mmの電極を有するコンデンサを得た。
<測定条件>
印加電圧:1V
測定周波数:1KHz
(容量C)=(εr23℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
恒温槽の温度を100℃としたこと以外は、体積抵抗率ρV23℃の測定と同様にして、実施例、比較例の樹脂フィルムの体積抵抗率ρV100℃を測定した。結果を表2に示す。
恒温槽の温度を100℃としたこと以外は、比誘電率εr23℃の測定と同様にして、実施例、比較例の樹脂フィルムの比誘電率εr100℃を測定した。結果を表2に示す。また、積[ρV100℃×εr100℃]も算出した。結果を表2に示す。
上記測定結果を用いて、実施例、比較例の樹脂フィルムのlog10[(ρV23℃×εr23℃)/(ρV100℃×εr100℃)]を算出した。結果を表2に示す。
実施例、比較例の樹脂フィルムについて、JIS-K 7250-1(2006)に準拠して測定した。具体的には、800℃で40分間の灰化処理を行い、得られた灰分の割合(ppm)を測定した。結果を表2に示す。
実施例、比較例の樹脂フィルムについて、約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。結果を表2に示す。
実施例、比較例の樹脂フィルムについて、樹脂A~樹脂Fと同様にして、分子量分布(Mw/Mn)を測定、算出した。その結果、実施例1は7.3、実施例2は7.7、実施例3は7.4、実施例4は7.3、実施例5は7.3、実施例6は7.3、実施例7は7.3、実施例8は7.3、実施例9は7.7、比較例1は4.0、比較例2は3.5、比較例3は、6.1、比較例4は7.3、比較例5は7.3、比較例6は7.3、比較例7は7.3であった。
実施例、比較例に係る樹脂フィルムの結晶子サイズを、XRD(広角X線回折)装置を用いて、以下の条件にて測定した。
測定機:リガク社製のX線回折装置「MiniFlex300」
X線発生出力:30kV、10mA
照射X線:モノクローメーター単色化CuKα線(波長0.15418nm)
検出器:シンチュレーションカウンター
ゴニオメーター走査:2θ/θ連動走査
<レタデーション値>
まず、実施例、比較例に係る樹脂フィルムのレタデーション(位相差)値を、下記の通り、傾斜法により測定した。
測定機:大塚電子社製レタデーション測定装置 RE-100
光源:波長550nmのLED光源
測定方法:次のような傾斜法により、レタデーション値の角度依存性を測定した。フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸としたとき、x軸を傾斜軸として、0°~50°の範囲でz軸に対して10°ずつ傾斜させたときの各レタデーション値を求めた。例えば、逐次延伸法において、MD方向(流れ方向)の延伸倍率よりも、TD方向(幅方向)の延伸倍率が高い場合、TD方向が遅相軸(x軸)、MD方向がy軸となる。
レタデーション値から、非特許文献「粟屋裕、高分子素材の偏光顕微鏡入門、105~120頁、2001年」に記載の通り、次のようにして面配向係数ΔPを算出した。
まず、各傾斜角φに対し、測定されたレタデーション値Rを、傾斜補正が施された厚さdで割ったR/dを求めた。φ=10°、20°、30°、40°、50°のそれぞれのR/dについて、φ=0°のR/dとの差を求め、それらをさらにsin2r(r:屈折角)で割ったものを、それぞれのφにおける複屈折ΔNzyとし、正負の符号を逆にして複屈折値ΔNyzとした。φ=20°、30°、40°、50°におけるΔNyzの平均値として、複屈折値ΔNyzを算出した。
次に、傾斜角φ=0°で測定されたレタデーション値Rを、厚さdで割った値より、前述で求めたΔNzyを除算し、複屈折値ΔNxzを算出した。
最後に、複屈折値のΔNyzとΔNxzを、式:ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2に代入しΔPを求めた。なお、ポリプロピレンについての、各傾斜角φにおける屈折角rの値は、前記非特許文献の109頁に記載されているものを用いた。結果を表2に示す。
実施例、比較例にて得た樹脂フィルムの融点、及び、融解エンタルピーを、パーキン・エルマー社製、入力補償型DSC Diamond DSCを用い、以下の手順により得た。まず、樹脂フィルムを約5mg秤りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、30℃から280℃まで20℃/minの速度で昇温(ファーストラン)し、その融解曲線を測定した。DSC測定の結果、100℃から190℃の間には少なくとも1つ以上の融解ピークを得ることができ、その最も高温側の融解ピーク曲線のピークトップ(頂点)温度を融点として評価した。また、ファーストランの結果から、融解エンタルピーを求めた。結果を表2に示す。
実施例、比較例にて得た樹脂フィルムを用いて以下の通りコンデンサ素子を作製した。樹脂フィルムに対して、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗15Ω/□にてアルミニウム蒸着を施すことにより、上記フィルムの片面に金属膜を含む金属化フィルムを得た。60mm幅にスリットした後に、2枚の金属化フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機3KAW-N2型を用い、φ20mmの巻芯に、巻き取り張力250gにて蒸着フィルムを巻き付け、完成したコンデンサ素子の静電容量が75μF(実施例1、実施例3、実施例4、実施例5~8、比較例4~7)又は50μF(実施例2、実施例5、実施例9)となるよう巻回ターン数を調整して、巻回を行った。素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて15時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサを得た。扁平型コンデンサの端面にリード線をはんだ付けし、その後エポキシ樹脂で封止した。
[寿命試験で印加する直流電圧(V)]=750×[フィルム厚さ(μm)]÷εr100℃-50
つまり、印加電圧を、実施例1では707V、実施例2では1561V、実施例3では586V、実施例4では768V、実施例5では1717V、実施例6では625V、実施例7では782V、実施例8では778V、実施例9では703V、実施例10では1031V、比較例1では1548V、比較例2では1646V、比較例3では1580V、比較例4では589V、比較例5では625V、比較例6では589V、比較例7では703Vとした。
[絶縁抵抗値の低下率(%)]=[[(寿命試験前の絶縁抵抗値)-(寿命試験後の絶縁抵抗値)]/((寿命試験前の絶縁抵抗値)]×100
寿命試験前後での静電容量を測定し、下記式により、静電容量の変化率ΔCを求めた。結果を表2に示す。
[静電容量の変化率ΔC(%)]=[[(寿命試験前のコンデンサの容量)-(寿命試験後のコンデンサの容量)]/((寿命試験前のコンデンサの容量)]×100
なお、(C・IR)の低下率(%)についても合わせて表2に示す。
表2より、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であり、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上である樹脂フィルムは、コンデンサ素子の絶縁抵抗値(IR)の低下率(%)が抑制されていることが分かる。
また、積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であり、積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上である樹脂フィルムは、(C・IR)の低下率(%)が50%以下であり、(C・IR)の低下率(%)か抑制されていることが分かる。
本開示における体積抵抗率の測定方法の測定精度が、特許文献1(国際公開第2016/182003号)のそれよりも高いことを検証した。以下、説明する。
参考例1は、特許文献1における体積抵抗率の測定方法を想定した試験例である。参考例2は、電位傾度を参考例1よりも高くした場合に、参考例1と比較して、測定精度がどのように変化するかを確認するため試験例である。
上述の実施例で用いた体積抵抗率測定用のジグ、直流電源、直流電流計を準備した。
次に、特許文献1の実施例1と同じ厚さの2.3μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(特許文献1記載の実施例1の二軸延伸ポリプロピレンフィルムとは異なる、王子ホールディングス社製の二軸延伸ポリプロピレンフィルム)を、上記ジグにセットし、120℃で30分間、保持した。その後、100Vの電圧を印加した。つまり、電位傾度は、43V/μmとした。その結果、電圧印加後1分経過した時点で0.1~0.5nAレベルの微少電流が測定された。
この電圧と電流の結果を用いて、電極面積の直径が10mmと仮定したときの体積抵抗値を求めると、6.8×1014Ω・cmとなった。この値は、再現テスト(n=4)の平均値である。なお、電極面積の直径が10mmと仮定したときの体積抵抗値を求めたのは、特許文献1の体積抵抗率の測定方法では、電極面積の直径が10mmとされており、これに合わせるためである。
この体積抵抗値(6.8×1014Ω・cm)は、特許文献1の実施例1の値である6.5×1014Ω・cmに近い値となった。従って、この参考例1の測定方法は、特許文献1の測定方法を想定した試験として妥当であることが分かる。
次に、再現テスト(n=4)の電流測定値のバラつきから、標準偏差を求めた。その結果、標準偏差は、1.2×1014Ω・cmとなった。また、変動係数(Coefficient of variation)を算出した結果、約18%となった。
なお、変動係数は、下記により求められる値である。
(変動係数)=(標準偏差)/(平均値)
ここで、特許文献1では、110℃で測定している一方、参考例1では、120℃で測定している。これは、以下の理由による。
参考例1の試験方法において110℃で測定すると、測定される電流値が特許文献1よりも小さくなった。そこで、より正確に特許文献1の測定方法を再現させるために、参考例1では、120℃で測定することとした。参考例1の試験方法において110℃で測定すると、測定される電流値が特許文献1と同じ電流値とならない理由としては、測定に使用した二軸延伸ポリプロピレンフィルムが特許文献1のものと同じものではないことによると考えられる。
参考例1と同様に、上述の実施例で用いた体積抵抗率測定用のジグ、直流電源、直流電流計を準備した。
次に、参考例1で使用したのと同じ二軸延伸ポリプロピレンフィルムを上記ジグにセットし、120℃で30分間、保持した。その後、参考例2では、200Vの電圧を印加した。つまり、参考例2では、電位傾度を、87V/μmとした。電位傾度以外については、参考例1と同様にして電流値を測定した。その結果、11~12nAの電流が測定された。
この電圧と電流の結果を用いて、電極面積の直径が10mmと仮定したときの体積抵抗値を求めると、5.9×1013Ω・cmとなった。この値は、再現テスト(n=4)の平均値である。
次に、再現テスト(n=4)の電流測定値のバラつきから、標準偏差を求めた。その結果、標準偏差は、3.3×1012Ω・cmとなった。また、変動係数(Coefficient of variation)を算出した結果、約6%となった。
参考例1のように、特許文献1の体積抵抗率の測定方法では、得られる電流がpA(ピコアンペア)レベルとなり、値が安定しないが、参考例2のようにnA(ナノアンペア)レベルの電流として測定すれば値が安定することが分かる。
なお、参考例2では、電位傾度を87V/μmとした場合に、電位傾度を43V/μmとした参考例1と比較して値が安定することが示されているので、電位傾度200V/μmとした場合(本体積抵抗率の測定方法とした場合)には、特許文献1の体積抵抗率の測定方法と比較して、さらに値が安定することが分かる。
以上より、本開示における本体積抵抗率の測定方法の精度が高いことが分かる。
Claims (6)
- 樹脂フィルムであって、
主成分として結晶性熱可塑性樹脂を含有し、
前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂であり、
前記樹脂フィルムを構成する樹脂中の灰分が、5ppm以上35ppm以下であり、
前記樹脂フィルムのヘプタン不溶分が、96%以上99.5%以下であり、
前記樹脂フィルムの分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が、5以上12以下であり、
前記樹脂フィルムの面配向係数が0.010~0.016であり、
前記樹脂フィルムの融点が170℃以上176℃以下であり、
前記樹脂フィルムの融解エンタルピーが90J/g以上125J/g以下であり、 下記測定方法(1)により測定される23℃での体積抵抗率ρV23℃と下記測定方法(2)により測定される23℃での比誘電率εr23℃との積[ρV23℃×εr23℃]が、1×1016Ω・cm以上であり、
前記比誘電率εr23℃が、5.0以下であり、
下記測定方法(3)により測定される100℃での体積抵抗率ρV100℃と下記測定方法(4)により測定される100℃での比誘電率εr100℃との積[ρV100℃×εr100℃]が、1×1014Ω・cm以上であり、
前記比誘電率εr100℃が、5.0以下であることを特徴とする樹脂フィルム(ただし、α晶核剤を含む場合を除く)。
<測定方法>
(1)23℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV23℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(2)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを23℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr23℃を算出する。
(容量C)=(εr23℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)]
(3)100℃の雰囲気下で電位傾度200V/μmとなるように電圧を印加し、1分経過時点での電流値から次式により算出する。
ρV100℃=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(樹脂フィルムの厚さ)×(電流値)]
(4)樹脂フィルムの両面に導電性ペーストを塗布、乾燥させて電極を形成し、得られた電極に導電性ペーストを用いて導線を取り付け、得られた試験用コンデンサの容量Cを100℃の雰囲気下で測定し、次式を用いてεr100℃を算出する。
(容量C)=(εr100℃)×(真空の誘電率ε0)×[(電極面積)/(樹脂フィルムの厚さ)] - 厚さが、0.8~6μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
- コンデンサ用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
- 二軸延伸されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の樹脂フィルム。
- 請求項1~4のいずれか1に記載の樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする金属層一体型樹脂フィルム。 - 巻回された請求項5に記載の金属層一体型樹脂フィルムを有するか、又は、請求項5に記載の金属層一体型樹脂フィルムが複数積層された構成を有することを特徴とするフィルムコンデンサ。
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