JP6554765B2 - ポリプロピレン積層延伸フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、マット調ポリプロピレン積層延伸フィルムに関するものである。更に詳しくは、マット調に艶消しされ、高温での寸法安定性や高い剛性が求められる様々な分野で好適に用いることができる、耐熱性、機械特性に優れたマット調ポリプロピレン積層二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
従来、ポリプロピレンの延伸フィルムは食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられていた。また、包装する商品によっては、包装に光沢感のあるものが好まれる場合と光沢感がないものが好まれる場合がある。例えば、和風調の食品や、日本酒等の包装の場合、光沢感のないものが好まれる場合もある。光沢感を抑える1つの手段としては樹脂組成等により包装フィルムをマット調にする手法がよく知られている(たとえば特許文献1,2参照)。しかし、従来のマット調ポリプロピレン延伸フィルムは150℃での収縮率が数十%あり、PET等と比べると耐熱性が低く、また、剛性も低いため用途が制限されていた。これらマット調化による光沢低減と耐熱性を両立する技術については公知となっていない。
以上の問題を解決するため、ポリプロピレン系樹脂層(A)は、高立体規則性を持ち、分子量分布の狭いポリプロピレンを用いて延伸フィルムとするにより高温剛性、耐熱性のフィルムとする技術が知られていた(例えば特許文献3等参照)。
また、高立体規則性を持ち、分子量分布の広いポリプロピレンを用いて延伸フィルムとすることにより電気絶縁性、機械特性等に優れたキャパシターフィルムとして好適に用いることができるという技術が知られていた(例えば特許文献4等参照)。
さらにまた、低分子量であり、昇温分別法による0℃の可溶分量が特定の範囲のポリプロピレンを用いてセパレーターフィルムとする技術が知られており、このフィルムは乾燥工程、印刷工程での寸法安定性にも優れるとされていた(例えば特許文献5等参照)。
しかし、特許文献3〜5は延伸性に難があり、耐衝撃性など機械特性も劣るものであった。
長鎖分岐もしくは架橋されたポリプロピレンを中分子量物に微量添加することにより子ラメラの形成を促して延伸性を向上させ、機械特性、耐熱性、耐電圧特性に優れ、諸物性の均一性に優れるフィルムとする技術が知られていた(例えば特許文献6等参照)。
また、高分子量と中分子量物をほぼ同量含み(低分子量が少ない)、分子量分布が広く、デカリン可溶分の少ないポリプロピレンを用いてフィルムとすることにより剛性−加工性バランスするという技術が知られていた(例えば特許文献7等参照)。
これら特許文献6〜7は、高温での耐熱性は十分なものとは言えず、高い耐熱性を持ち、耐衝撃性、透明性に優れたポリプロピレンフィルムは知られていなかった。
つまり、これらは従来のポリプロピレンフィルムの域を超えるものではなく、その用途は限られたものであり、例えば150℃を超えるような高温での耐熱性については着目もされていなかった。
特許第3077394号公報 特許第3045600号公報 特開平8−325327号公報 特開2004−175932号公報 特開2001−146536号公報 特開2007−84813号公報 特表2008−540815号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、150℃でPETに匹敵する低収縮率を有し、高剛性であるマット調ポリプロピレン積層延伸フィルムを提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、ポリプロピレン系樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、3次元表面平均粗さが0.15μm以上の表面粗さを有するポリプロピレン系樹脂マット層(B)が積層されたマット調ポリプロピレン積層延伸フィルムであって、150℃でのMD方向およびTD方向の熱収縮率が10%以下であり、衝撃強度が0.6J以上であり、ヘイズが40%以上であることを特徴とするポリプロピレン積層延伸フィルムである。
この場合において、前記フィルムのMD方向のヤング率が、2.2GPa以上、TD方向のヤング率が、3.9GPa以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記ポリプロピレン樹脂マット層(B)がポリプロピレン樹脂と、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる2種類以上のモノマーよりなるポリオレフィン系樹脂とからなるプロピレンブロック共重合体であることが好適である。
本発明により、ポリプロピレン積層延伸フィルムにおいて、150℃でPETに匹敵する低収縮率、高剛性とすることができ、ひいては薄膜化が可能である。
さらに、本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムは150℃以上の環境下にさらされても諸物性を維持することができ、従来のポリプロピレンフィルムでは考えられなかったような高温の環境下でも使用することができる。
例えば、ヒートシール温度を高く設定することにより、製袋加工におけるライン速度を大きくすることなどが可能となり、生産性が向上する。また、ヒートシール温度を高くすることで、ヒートシール強度も向上させることができる。さらには、レトルトなど高温処理を行う際にも、袋の変形量を抑えることができる。
本発明は高温での寸法安定性、機械特性に優れたポリプロピレン積層延伸フィルムに関する。本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムの特徴は用いるポリプロピレン系樹脂層(A)の分子量分布状態にある。
本発明は、ポリプロピレン樹脂を主体として構成されたポリプロピレン積層延伸フィルムであって、150℃でのMD方向およびTD方向の熱収縮率が10%以下であり、衝撃強度が0.6J以上であり、ヘイズが40%以上であることが必要である。
ここで、MD方向とは、フィルムの流れ方向であり、TD方向とは、フィルムの流れ方向に垂直な方向である。
(フィルム特性)
本発明の延伸フィルムのMD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の下限は好ましくは0.5%であり、より好ましくは1%であり、さらに好ましくは1.5%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは2.5%である。上記範囲であるとコスト面などで現実的な製造が容易となったり、厚みムラが小さくなったりすることがある。
MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは9%であり、さらに好ましくは8%であり、特に好ましくは7%であり、最も好ましくは6%である。上記範囲であると150℃程度の高温に晒される可能性のある用途で使用がより容易なる。なお、150℃熱収縮率は2.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、固定条件を調整することで可能であるが、それ以下はオフラインでアニール処理をすることが好ましい。
従来のマット調ポリプロピレン積層延伸フィルムでは、MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率は15%以上であり、120℃熱収縮率は3%程度である。熱収縮率を上記の範囲とすることで、耐熱性の優れたマット調ポリプロピレン積層延伸フィルムを得ることができる。
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムの耐衝撃性(23℃)の下限は好ましくは0.6Jであり、より好ましくは0.7Jである。上記範囲であるとフィルムとして十分な強靱性があり、取り扱い時に破断したりすることがない。
耐衝撃性の上限は現実的な面から好ましくは3Jであり、より好ましくは2.5Jであり、さらに好ましくは2.2Jであり、特に好ましくは2Jである。耐衝撃性は例えば低分子量成分が多い場合全体での分子量が低い場合、高分子量成分が少ない場合や高分子量成分の分子量が低い場合に耐衝撃性が低下する傾向となるため、用途に合わせてこれら成分を調整して範囲内とすることが出来る。
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムのヘイズは現実的値として下限は好ましくは24%であり、より好ましくは28%であり、さらに好ましくは32%であり、特に好ましくは36%であり、最も好ましくは40%である。
ヘイズの上限は好ましくは96%であり、より好ましくは92%であり、さらに好ましくは88%であり、特に好ましくは84%であり、最も好ましくは80%である。上記範囲であるとマット調が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く延伸原反の冷却速度が遅い場合、低分子量が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで範囲内とすることも出来る。
(ポリプロピレン樹脂の分子量分布)
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)に用いるポリプロピレン樹脂は、例えば質量平均分子量(Mw)が10万程度の低分子量の成分を主とし、さらにたとえばMwが150万程度の非常に分子量の高い高分子量成分が含まれているのが好ましい。低分子量成分を主とすることで結晶性を大きく高めることができ、従来にはない高剛性、高耐熱性の延伸ポリプロピレンフィルムが得られていると考えられる。一方、低分子量のポリプロピレン樹脂は加熱軟化した場合の溶融張力が低く、一般には延伸フィルムとすることは困難である。そこに高分子量成分を数%〜数十%存在させることで延伸を可能にさせると共に、高分子量成分が結晶核の役割を果たし、さらにフィルムの結晶性を上げ、本発明の延伸フィルムの効果を達成しているものと考えられる。
このような分子量分布を表す指標としては、高分子量成分を重視した平均分子量であるZ+1平均分子量(Mz+1)と数平均分子量(Mn)の比である(Mz+1)/Mnが好適である。
Mz+1/Mnの下限は好ましくは50であり、より好ましくは60であり、さらに好ましくは70であり、特に好ましくは80であり、最も好ましくは90である。上記未満であると高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られにくくなることがある。
Mz+1/Mnの上限は好ましくは300であり、より好ましくは200である。上記を越えると現実的な樹脂の製造が困難になることがある。
上記分子量分布を有するポリプロピレン樹脂を、一般的に分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表すと当然にその値はおおきなものになるが、Mw/Mnの下限は好ましくは5.5であり、より好ましくは6であり、さらに好ましくは6.5であり、特に好ましくは7であり、最も好ましくは7.2である。
Mw/Mnの上限は好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは20であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは13である。
なお、これらの平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCによるMz+1の下限は好ましくは2500000であり、より好ましくは3000000であり、さらに好ましくは3300000であり、特に好ましくは3500000であり、最も好ましくは3700000である。上記範囲であると高分子量成分が十分であり、本発明の効果が得られやすい。
全体のMz+1の上限は好ましくは40000000であり、より好ましくは35000000であり、さらに好ましくは30000000である。上記範囲であると現実的な樹脂の製造が容易であったり、延伸が容易となったり、フィルム中のフィッシュアイが少なくなることがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCによるMnの下限は好ましくは20000であり、より好ましくは22000であり、さらに好ましくは24000であり、特に好ましくは26000であり、最も好ましくは27000である。上記範囲であると延伸が容易となる、厚み斑が小さくなる、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率が低くなるという利点が生じることがある。
全体のMnの上限は好ましくは65000であり、より好ましくは60000であり、さらに好ましくは55000であり、特に好ましくは53000であり、最も好ましくは52000である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られやすくなったり、延伸容易となることがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCによる質量平均分子量(Mw)の下限は好ましくは250000であり、より好ましくは260000であり、さらに好ましくは270000であり、特に好ましくは280000であり、最も好ましくは290000である。上記範囲であると延伸が容易となる、厚み斑が小さくなる、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率が低くなるという利点が生じることがある。
全体のMwの上限は好ましくは500000であり、より好ましくは450000であり、さらに好ましくは400000であり、特に好ましくは380000であり、最も好ましくは370000である。上記範囲であると機械的負荷が小さく延伸容易となることがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは1g/10minであり、より好ましくは1.2g/10minであり、さらに好ましくは1.4g/10minであり、特に好ましくは1.5g/10minであり、最も好ましくは1.6g/10minである。上記範囲であると機械的負荷が小さく延伸が容易となることがある。
全体のMFRの上限は好ましくは20g/10minであり、より好ましくは17g/10minであり、さらに好ましくは15g/10minであり、特に好ましくは14g/10minであり、最も好ましくは13g/10minである。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率がより低くなることがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPC積算カーブを測定した場合、分子量10万以下の成分の量の下限は好ましくは35質量%であり、より好ましくは38質量%であり、さらに好ましくは40質量%であり、特に好ましくは41質量%であり、最も好ましくは42質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られやすくなったり、延伸が容易となることがある。
分子量10万以下の成分の量の上限は好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%であり、特に好ましくは56質量%であり、最も好ましくは55質量%である。
分子量1万以下程度の分子は分子鎖同士の絡み合いには寄与せず、可塑剤的に分子同士の絡み合いをほぐす効果があるため、分子量1万以下の成分の量が特定量含まれることが好ましい。これにより、低い延伸応力での延伸が可能となり、その結果として残留応力も低く高温での収縮率を低くできているものと考えられる。
分子量1万以下の成分の量の下限は好ましくは2質量%であり、より好ましくは2.5質量%であり、さらに好ましくは3質量%であり、特に好ましくは3.3質量%であり、最も好ましくは3.5質量%である。
GPC積算カーブでの分子量1万以下の成分の量の上限は好ましくは20質量%であり、より好ましくは17質量%であり、さらに好ましくは15質量%であり、特に好ましくは14質量%であり、最も好ましくは13質量%である。
このような分子量分布の特徴を有するポリプロピレン樹脂をえるために好ましく用いられる高分子量成分と低分子量成分に関して説明する。
(高分子量成分)
高分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは0.0001g/10minであり、より好ましくは0.0005g/10minであり、さらに好ましくは0.001g/10minであり、特に好ましくは0.005g/10minである。上記範囲であると現実的に樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。
なお、高分子量成分の230℃、2.16kgfでのMFRは小さすぎて現実的測定が困難となる場合がある。10倍の加重(21.6kgf)でのMFRであらわすと、好ましい下限は0.1g/10minであり、より好ましくは0.5g/10minであり、さらに好ましくは1g/10minであり、特に好ましくは5g/10minである。
高分子量成分のMFRの上限は好ましくは0.5g/10minであり、より好ましくは0.35g/10minであり、さらに好ましくは0.3g/10minであり、特に好ましくは0.2g/10minであり、最も好ましくは0.1g/10minである。上記範囲であると全体のMFRを維持するために多くの高分子成分の量が必要でなく、低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
高分子量成分のMwの下限は好ましくは500000であり、より好ましくは600000であり、さらに好ましくは700000であり、特に好ましくは800000であり、最も好ましくは1000000である。上記範囲であると全体のMFRを維持するために多くの高分子成分の量が必要でなく、低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
高分子量成分のMwの上限は好ましくは10000000であり、より好ましくは8000000であり、さらに好ましくは6000000であり、特に好ましくは5000000である。上記範囲であると現実的に樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。
高分子量成分の量の下限は好ましくは2質量%であり、より好ましくは3質量%であり、さらに好ましくは4質量%であり、特に好ましくは5質量%である。上記範囲であると全体のMFRを維持するため低分子量物の分子量を上げる必要がなく、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
高分子量成分の量の上限は好ましくは30質量%であり、より好ましくは25質量%であり、さらに好ましくは22質量%であり、特に好ましくは20質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
ここで、高分子量成分は、直鎖状のポリプロピレン樹脂の代わりに、長鎖分岐や架橋構造を有するポリプロピレン樹脂を用いることもでき、これには高溶融張力ポリプロピレンとして知られている、Borealis社製Daploy WB130HMS、WB135HMS等がある。
(低分子量成分)
低分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは70g/10minであり、より好ましくは80g/10minであり、さらに好ましくは100g/10minであり、特に好ましくは150g/10minであり、最も好ましくは200g/10minである。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFRの上限は好ましくは2000g/10minであり、より好ましくは1800g/10minであり、さらに好ましくは1600g/10minであり、特に好ましくは1500g/10minであり、最も好ましくは1500g/10minである。上記範囲であると全体でのMFRを維持しやすくなり、製膜性に優れることがある。
低分子量成分のMwの下限は好ましくは50000であり、より好ましくは53000であり、さらに好ましくは55000であり、特に好ましくは60000であり、最も好ましくは70000である。上記範囲であると全体でのMFRを維持しやすくなり、製膜性に優れることがある。
低分子量成分のMwの上限は好ましくは150000であり、より好ましくは140000であり、さらに好ましくは130000であり、特に好ましくは120000であり、最も好ましくは110000である。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分の量の下限は好ましくは40質量%であり、より好ましくは50質量%であり、さらに好ましくは55質量%であり、特に好ましくは60質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分の量の上限は好ましくは98質量%であり、より好ましくは97質量%であり、さらに好ましくは96質量%であり、特に好ましくは95質量%である。上記範囲であると全体のMFRを維持するため低分子量物の分子量を上げる必要がなく、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFR/高分子量成分のMFR比の下限は好ましくは500であり、より好ましくは1000であり、さらに好ましくは2000であり、特に好ましくは4000である。上記範囲であると高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFR/高分子量成分のMFR比の上限は好ましくは1000000である。
高分子量成分、低分子量成分はそれぞれの成分に該当する2つ以上の樹脂の混合物であっても良く、その場合の配合量は合計量である。
また、上記範囲の高分子量成分や低分子量成分以外に、ポリプロピレン樹脂全体としてMFRを調整するために本発明の低分子量成分や高分子量成分以外の分子量を有する成分を添加しても良く、また、分子鎖の絡み合いをほぐしやすくして延伸性などを調節するために低分子量成分の分子量以下、特に分子量3万程度以下、さらには分子量1万程度以下のポリプロピレン樹脂を添加しても良い。
高分子量成分、低分子量成分を用いて好ましいポリプロピレン樹脂の分子量分布状態とするためには、例えば、用いる低分子量成分の分子量が低めの場合は高分子量成分の分子量を上げる、高分子量成分の量を増やすなどして分布状態を調整すると共に延伸フィルムとして製造しやすいMFRに調整することができる。
このような特徴的分子量分布を持つポリプロピレン樹脂をポリプロピレン系樹脂層(A)に用いることで、従来では十分な延伸が不可能であった低分子量を主体としたポリプロピレンを延伸することが可能となり、また、高い熱固定温度を採用することができ、高い結晶性、強い熱固定の相乗効果で高温での熱収縮率を低くすることができているものと考えられる。
(ポリプロピレン樹脂の規則性)
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率(「mmmm」%)の下限は好ましくは96%であり、より好ましくは96.5%であり、さらに好ましくは97%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率がより低くなることがある。
メソペンタッド分率(「mmmm」%)の上限は好ましくは99.5%であり、より好ましくは99.3%であり、さらに好ましくは99%である。上記範囲であると現実的な製造が容易となることがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂において、頭−頭結合のような異種結合は認められないことが好ましい。なお、ここで認められないとは、13C−NMRでピーク見られないことを言う。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のメソ平均連鎖長の下限は好ましくは100であり、より好ましくは120であり、さらに好ましくは130である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
メソ平均連鎖長長の上限は現実的な面から好ましくは5000である。
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分の下限は現実的な面から好ましくは0.1質量%である。
キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
(ポリプロピレン樹脂)
本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂はプロピレンモノマーのみから得られる完全ホモポリプロピレンであることが最も好ましいが、微量であれば共重合モノマーとの共重合体であっても良い。共重合モノマー種としてはエチレン、ブテンが好ましい。
共重合モノマー量の上限は好ましくは0.1mol%であり、より好ましくは0.05mol%であり、さらに好ましくは0.01mol%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
なお、本発明のポリプロピレン系樹脂層(A)は、工業的には完全なホモポリプロピレンでは結晶性の高さや、溶融軟化後に急速に溶融張力が低下するなど、延伸できる条件範囲が非常に狭いために製膜しづらく、通常は0.5%前後の共重合成分(主にエチレン)を添加していた。しかし、上記のような分子量分布状態のポリプロピレン樹脂は共重合成分がほとんど、もしくは全くなくても溶融軟化後の張力低下が穏やかであり、工業的な延伸が可能である。
本発明におけるポリプロピレン樹脂マット層(B)の表面粗さは、3次元表面平均粗さが0.15μm以上を有する必要がある。0.15μm未満では十分な艶消し効果が得られない。
本発明におけるポリプロピレン樹脂マット層(B)は、ポリプロピレン樹脂と、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる2種類以上のモノマーよりなるポリオレフィン系樹脂とからなるプロピレンブロック共重合体を積層することで目的を達成される。α−オレフィンには、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン、オクテン、等が挙げられる。また、MFRは0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは、1.0〜10g/10分の範囲のものを例示することができる。
ポリプロピレン樹脂マット層(B)におけるプロピレンブロック共重合体中のエチレンおよびα−オレフィンから選ばれる2種類以上のモノマーよりなるポリオレフィン系樹脂の量としては、3から30%が好ましく、3%以下になると、艶消し感が薄れ、30%を超えると生産性が劣る為、好ましくない。
さらに、ポリプロピレン樹脂マット層(B)には、艶消し感を調整、溶断シール性調整等の目的で、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンを混合してもよい。
ポリプロピレン樹脂マット層(B)としては、0.5μmからフィルム全体厚みの1/3以下の厚みが好ましい。0.5μm未満では、均一で、充分な艶消し調の風合いが得られず、フィルム全体厚みの1/3以上になると熱収縮性が悪くなるため好ましくない。
(ポリプロピレン樹脂の製造方法)
ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料となるプロピレンを重合させて得られる。中でも異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、かつ、規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
プロピレンの重合方法としては、公知の方法でよく、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のプロピレンやエチレン中で重合する方法、気体であるプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
高分子量成分、低分子量成分は別々に重合した後に混合しても良く、多段階の反応器で一連のプラントで製造しても良い。特に、多段階の反応器を持つプラントを用い、高分子量成分を最初に重合した後にその存在下で低分子量成分を重合する方法が好ましい。
(添加剤)
本発明のフィルム成形用樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、エチレンとα−オレフィンの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用しても良い。
(フィルム物性)
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムが二軸延伸フィルムである場合、MD方向のヤング率(23℃)の下限は好ましくは1.8GPaであり、より好ましくは1.9GPaであり、さらに好ましくは2.0GPaであり、特に好ましくは2.1GPaであり、最も好ましくは2.2GPaである。
MD方向のヤング率の上限は好ましくは3.7GPaであり、より好ましくは3.6GPaであり、さらに好ましくは3.5GPaであり、特に好ましくは3.4GPaであり、最も好ましくは3.3GPaである。上記範囲ではと現実的な製造が容易であったり、MD−TDバランスが良化することがある。
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムが二軸延伸フィルムである場合、TD方向のヤング率(23℃)の下限は好ましくは3.7GPaであり、より好ましくは3.8GPaであり、さらに好ましくは3.9GPaであり、特に好ましくは4.0GPaである。
TD方向のヤング率の上限は好ましくは8GPaであり、より好ましくは7.5GPaであり、さらに好ましくは7GPaであり、特に好ましくは6.5GPaである。上記範囲だと現実的な製造が容易であったり、MD−TDバランスが良化することがある。
なお、ヤング率は延伸倍率を高くすることで高めることができ、MD−TD延伸の場合はMD延伸倍率を低めに設定し、TD延伸倍率を高くすることでTD方向のヤング率を大きくすることができる。
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムの厚み均一性の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは1%である。
厚み均一性の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは17%であり、さらに好ましくは15%であり、特に好ましくは12%であり、最も好ましくは10%である。上記範囲だとコートや印刷などの後加工時に不良が生じにくく、精密性を要求される用途に用いやすい。
(ポリプロピレン積層延伸フィルムの製造方法)
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムとしては長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸の場合は逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であっても良い。
延伸フィルムとすることで、従来のポリプロピレン積層延伸フィルムでは予想できなかった150℃でも熱収縮率が低いフィルムを得ることができる。
以下に最も好ましい例である縦延伸−横延伸の逐次二軸延伸のフィルムの製造方法を説明する。
まず、一方の押し出し機よりポリプロピレン系樹脂層(A)を溶融押し出しし、他方の押し出し機によりポリプロピレン樹脂マット層(B)を溶融押し出しし、Tダイ内にて、ポリプロピレン系樹脂層(A)とポリプロピレン樹脂マット層(B)となるように積層し、冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得る。溶融押出し条件としては、樹脂温度として200〜280℃となるようにして、Tダイよりシート状に押出し、10〜100℃の温度の冷却ロールで冷却固化する。ついで、120〜165℃の延伸ロールでフィルムを長さ(MD)方向に3〜7倍に延伸し、引き続き幅(TD)方向に155℃〜175℃、好ましくは158℃〜170℃の温度で6〜12倍延伸を行う。
さらに、165〜175℃、好ましくは166〜173℃の雰囲気温度で1〜15%のリラックスを許しながら熱処理を施す。
こうして得られたポリプロピレンフィルムには、必要に応じて少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりロールサンプルを得ることができる。
MDの延伸倍率の下限は好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍である。上記未満であると膜厚ムラとなることがある。
MDの延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7倍である。上記を越えると引き続き行うTD延伸がしにくくなることがある。
MDの延伸温度の下限は好ましくは120℃であり、より好ましくは125℃であり、さらに好ましくは130℃である。上記未満であると機械的負荷が大きくなったり、厚みムラが大きくなったり、フィルムの表面粗れが起こることがある。
MDの延伸温度の上限は好ましくは160℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは150℃である。温度が高い方が熱収縮率の低下には好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなることがある。
TDの延伸倍率の下限は好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍である。上記未満であると厚みムラとなることがある。
TD延伸倍率の上限は好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍である。上記を越えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断することがある。
TD延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは延伸温度より10〜15℃高く設定する。
TDの延伸では従来のポリプロピレン積層延伸フィルムより高温で行う。
TDの延伸温度の下限は好ましくは157℃であり、より好ましくは158℃である。上記未満であると十分に軟化せずに破断したり、熱収縮率が高くなることがある。
TD延伸温度の上限は好ましくは170℃であり、より好ましくは168℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を越えると低分子成分が融解、再結晶化して表面粗れやフィルムが白化することがある。
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定は従来のポリプロピレン積層延伸フィルムより高温で行うことが可能である。熱固定温度の下限は好ましくは165℃であり、より好ましくは166℃である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。また、熱収縮率を低くするために長時間が必要になり、生産性が劣ることがある。
熱固定温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは173℃である。上記を越えると低分子成分が融解、再結晶化して表面粗れやフィルムが白化することがある。
熱固定時にリラックス(緩和)させることが好ましい。リラックスの下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。
リラックスの上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。上記を越えると厚みムラが大きくなることがある。
さらに、熱収縮率を低下させるためには上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。
オフラインアニール温度の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは163℃である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。
オフラインアニール温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは174℃であり、さらに好ましくは173℃である。上記を越えると透明性が低下したり、厚みムラがおおきくなったりすることがある。
オフラインアニール時間の下限は好ましくは0.1分であり、より好ましくは0.5分であり、さらに好ましくは1分である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。
オフラインアニール時間の上限は好ましくは30分であり、より好ましくは25分であり、さらに好ましくは20分である。上記を越えると生産性が低下することがある。
フィルムの厚みは各用途に合わせて設定されるが、フィルム厚みの下限は好ましくは2μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは4μmである。フィルム厚みの上限は好ましくは300μmであり、より好ましくは250μmであり、さらに好ましくは200μmであり、特に好ましくは100μmであり、最も好ましくは50μmである。
このようにして得られたポリプロピレン積層延伸フィルムは通常、幅2000〜12000mm、長さ1000〜50000m程度のロールとして製膜され、ロール状に巻き取られる。さらに、各用途に合わせてスリットされ幅300〜2000mm、長さ500〜5000m程度のスリットロールとして供される。
本発明のポリプロピレン積層延伸フィルムは上記の様な従来にはない優れた特性を有する。
包装フィルムとしても用いた場合には、高剛性であるため薄肉化が可能であり、コストダウン、軽量化ができる。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷時に高温処理が可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。実施例における物性の測定方法は次のとおりである。
1)メルトフローレート(MFR、g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃で測定した。
2)分子量および分子量分布
分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。
GPC測定での使用カラム、溶媒は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z+1平均分子量(Mz+1)はそれぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(Mi)の分子数(Ni)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi)
Z+1平均分子量:Mz+1=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi
分子量分布:Mw/Mn、Mz+1/Mn
また、GPC曲線のピーク位置の分子量をMpとした。
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとする。
ピーク分離は、得られたGPC曲線から、分子量の異なる2つ以上の成分にピーク分離を行った。各成分の分子量分布はガウス関数を仮定し、通常のポリプロピレンの分子量分布と同様になるようにMw/Mn=4とした。得られた各成分のカーブから、各平均分子量を計算した。
3)立体規則性
メソペンタッド分率(「mmmm」%)およびメソ平均連鎖長の測定は、13C−NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)に記載の方法に従い、アイソタクチックメソ平均連鎖長は、J.C.Randallによる、“Polymer Sequence Distribution”第2章(1977年)(Academic Press,New York)に記載の方法に従って算出した。
13C−NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo−ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
4)冷キシレン可溶部(CXS、質量%)
ポリプロピレン試料1gを沸騰キシレン200mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶化させ、ろ過液に溶解している質量の、元の試料量に対する割合をCXS(質量%)とした。
5)熱収縮率(%)
JIS Z 1712に準拠して測定した。
(延伸フィルムを20mm巾で200mmの長さでMD、TD方向にそれぞれカットし、150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。)
6)耐衝撃性
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用いて、23℃にて測定した。
7)ヤング率(単位:GPa)
JIS K 7127に準拠してMDおよびTD方向のヤング率を23℃で測定した。
8)ヘイズ(単位:%)
JIS K7105に従って測定した。
9)3次元平均粗さ
小坂研究所社製の3次元微細形状測定機(ET−30HK)を使用し、カットオフ80μm、ドライブスピード100μm/秒の条件で測定した。
10)厚み斑
巻き取ったフィルムロールから長さが1mの正方形のサンプルを切り出し、MD方向およびTD方向にそれぞれ10等分して測定用サンプルを100枚用意した。測定用サンプルのほぼ中央部を接触式のフィルム厚み計で厚みを測定した。
得られた100点のデータの平均値を求め、また最小値と最大値の差(絶対値)を求め、最小値と最大値の差の絶対値を平均値で除した値をフィルムの厚み斑とした。
11)ヒートシール外観
作製したフィルムと東洋紡株式会社製パイレンフィルム−CT P1128を重ねて、西部機械株式会社製テストシーラーを用いて、170℃、荷重2kgで1秒間保持することによりヒートシールを行った。ヒートシール後のフィルムの収縮による外観の変化の具合を目視により評価した。ヒートシール部の変形量が小さく、使用に影響しない範囲のものを○、ヒートシールによる収縮が大きく、変形量が大きいものを×とした。
(実施例1)
一方の押し出し機よりポリプロピレン系樹脂層(A)としてポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0、[mmmm]=97.3%であるポリプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製 ノバテックPP「SA4L」)で溶融押出しし、もう一方の押し出し機によりポリプロピレン樹脂マット層(B)として、プロピレンエチレンブロック共重合体(サンアロマー(株)製「PC684S」)70重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学(株)製 住友ノーブレン「S131」)30重量部を合わせて100重量部としてドライブレンドし、250℃の樹脂温度にて溶融押し出しし、Tダイ内にて、ポリプロピレン系樹脂層(A)の両面がポリプロピレン樹脂マット層(B)となるように積層し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、135℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用してタテ方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、170℃による予熱後、160℃にてヨコ方向に8.2倍の延伸を行った上で、168℃にて熱セット実施し、フィルムの片面にコロナ処理を行い、フィルムワインダーにより巻き取ってフィルムを得た。最終的なフィルム厚みは、20μmである。このうち、ポリプロピレン樹脂マット層(B)の厚みは、両面とも2μmであった。
本フィルムは、表1、表2、表3に示すとおり、マット調を付与された外観で、熱収縮率が低く、ヤング率が高いフィルムが得られた。
(実施例2)
ポリプロピレン系樹脂層(A)には、「SA4L」を90重量部に対して、分子量10000である低分子量プロピレン(三井化学(株)製 ハイワックス「NP105」)を10重量部加えて100重量部とし、30mmの2軸押出機にて溶融混錬して、混合物のペレットを得た。このペレットをポリプロピレン系樹脂層(A)に用い、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
(実施例3)
横延伸における予熱温度を173℃、延伸温度と熱処理温度を167℃とした以外は、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
(実施例4)
長さ方向に5.5倍、横方向に12倍延伸した以外は、実施例2と同様な方法でフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
(実施例5)
実施例1で作製したフィルムを用いて、テンター式熱風オーブン中で、170℃で5分間熱処理を行った。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
参考例
ポリプロピレン系樹脂層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=8.9、Mz+1/Mn=110、MFR=3.0g/10min、メソペンタッド分率[mmmm]=97.1%であるポリプロピレン単独重合体(サムスントタル(株)製「HU300」)を用い、横延伸の予熱温度を171℃、延伸温度を161℃、横延伸後の熱処理温度を170℃とした以外は、実施例1と同様な方法で延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの厚みは20μmであり、このうち、ポリプロピレン樹脂マット層(B)の厚みは、両面とも2μmであった。その物性は表1、表2および表3に示すとおりであった。
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製の住友ノーブレン「FS2011DG3」(Mw/Mn=4、Mz+1/Mn=21、MFR=2.5g/10分、[mmmm]=97.0%、エチレン量=0.6mol%)を用い、横延伸における予熱温度を168℃、延伸温度を155℃、熱処理温度を163℃とした以外は、実施例1と同様な方法でフィルムを得た。であった。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
(比較例2)
予熱温度を171℃、延伸温度を160℃、熱処理温度を165℃とした以外は、比較例1と同様にフィルムを作製した。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、MFR=0.5g/10min、Mw/Mn=4.3、Mz+1/Mn=28のホモポリプロピレンを用い、比較例2と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
本発明のポリプロピレンフィルムは包装用途、工業用途に広く使用することができるが、特に高剛性であるため薄肉化が可能であり、コストダウン、軽量化ができる。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷の乾燥時に高温乾燥か可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。

Claims (5)

  1. ポリプロピレン系樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、3次元表面平均粗さが0.15μm以上の表面粗さを有するポリプロピレン系樹脂マット層(B)が積層されたマット調ポリプロピレン積層延伸フィルムであって、ポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体が下記1)〜5)の条件を満たし、150℃でのMD方向およびTD方向の熱収縮率が9%以下であり、衝撃強度が0.6J以上であり、ヘイズが40%以上であることを特徴とするポリプロピレン積層延伸フィルム。
    1)メソペンダット分率の下限が96%である。
    2)プロピレン以外の共重合モノマーの上限が0.1mol%である。
    3)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限が1g/10minであり、上限が20g/10minである。
    4)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の下限が5.5であり、上限が30である。
    5)Z+1平均分子量(Mz+1)/数平均分子量(Mn)の下限が50であり、上限が300である。
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体が下記6)の条件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン積層延伸フィルム。
    6)Z+1平均分子量(Mz+1)の下限が2500000である。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の下限は35質量%である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン積層延伸フィルム。
  4. MD方向のヤング率が、2.2GPa以上、TD方向のヤング率が、3.9GPa以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン積層延伸フィルム。
  5. ポリプロピレン樹脂マット層(B)がポリプロピレン樹脂と、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる2種類以上のモノマーよりなるポリオレフィン系樹脂とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン積層延伸フィルム。
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