以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の伸縮シートの一実施形態の厚み方向に沿う断面図が示されている。同図は、伸縮シートの伸縮方向に沿った断面図である。本実施形態の伸縮シート1は弾性体10を備えている。弾性体10の一方の面には、該弾性体10に隣接して第1の非弾性繊維層11が配されている。弾性体10の他方の面には、第2の非弾性繊維層12が配されている。更に、弾性体10と第2の非弾性繊維層12との間には、これらの層10,12に隣接して第3の非弾性繊維層13が配されている。これら各層は、隣り合う層との間が接合されている。接合には、例えば接着剤による接合や、熱融着などが用いられる。
弾性体10は、伸縮シート1に弾性を付与する部位であり、例えば弾性材料を含んでいる層状部位とすることができる。本発明において弾性とは、物体の伸び縮みに関し、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの2倍の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの1.25倍以下の長さまで戻る性質を言う。弾性体10の有する弾性によって伸縮シート1は少なくとも一方向に伸縮性を発現する。
弾性体10に含まれる弾性材料は、例えば弾性繊維の形態や、弾性フィルムの形態をしている。弾性材料が弾性繊維の形態をしている場合、該弾性繊維としては、例えばステープルファイバ等の短繊維を用いることもでき、あるいは連続フィラメント等の長繊維を用いることもできる。短繊維からなる弾性繊維を用いる場合、該弾性繊維はランダムに配置されていてもよく、あるいは任意の一方向に配向するように配置されていてもよい。同様に、長繊維からなる弾性繊維を用いる場合も、該弾性繊維はランダムに配置されていてもよく、あるいは任意の一方向に配向するように配置されていてもよい。特に弾性繊維は、特開2008−179128号公報の図1に記載されているとおり、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した複数の弾性フィラメントからなることが好ましい。弾性繊維がいずれの形態であっても、その繊維径は、3μm以上であることが好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、また200μm以下であることが好ましく、120μm以下であることが更に好ましい。具体的には3μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上120μm以下であることが更に好ましい。弾性体10としては、通気性の向上の観点から弾性繊維を用いることが好ましい。
弾性材料としては、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどの弾性樹脂を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸又はフィルム成形が可能であり、またそのようにして得られた繊維又はフィルムは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(プロピレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したエチレン系のα-オレフィンエラストマー、又は、エチレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性繊維の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
弾性体10に隣接して該弾性体10の一方の面に配されている第1の非弾性繊維層11は、非弾性繊維を含んでいる。本発明において非弾性とは、物体の伸び縮みに関し、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの2倍の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの1.25倍超の長さにまでしか戻らない性質を言う。つまり、伸ばすことはできるが、伸ばした状態から縮まない性質のことである。つまり第1の非弾性繊維層11は伸長可能なものである。第1の非弾性繊維層11は、少なくとも、弾性体10の伸縮する方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(イ)第1の非弾性繊維層11の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。特に、原料とする第1、第2及び第3の非弾性繊維層の延伸加工前の各最大伸度は、伸縮方向に相当する方向において、100%以上(元の長さの2倍の長さになる)であることが好ましく、更に150%以上であることが好ましく、800%以下であることが好ましい。
第1の非弾性繊維層11は、非弾性繊維を含む繊維からなる層である。第1の非弾性繊維層は、非弾性繊維のみから構成されていてもよく、あるいは非弾性の性質を示す限りにおいて、非弾性繊維と少量の弾性繊維とを含んでいてもよい。非弾性繊維は、非弾性材料からなる繊維である。非弾性繊維としては、例えばステープルファイバ等の短繊維を用いることもでき、あるいは連続フィラメント等の長繊維を用いることもできる。短繊維からなる非弾性繊維を用いる場合、該非弾性繊維はランダムに配置されていてもよく、あるいは任意の一方向に配向するように配置されていてもよい。同様に、長繊維からなる非弾性繊維を用いる場合も、該弾性繊維はランダムに配置されていてもよく、あるいは任意の一方向に配向するように配置されていてもよい。特に非弾性繊維は、ランダムに配置された短繊維からなるか、又はランダムに配置された長繊維からなることが好ましい。
第1の非弾性層11は、弾性体10と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性体10と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性体10と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。第1の非弾性層11を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝ロールやギアによるかみ込み延伸処理、テンターによる引張延伸などが挙げられる。これらの方法のうち、後述するとおり、第1の非弾性層11は、弾性体10と接合される前は伸長性を有しておらず、弾性体10と接合された後に延伸処理によって伸長性を獲得することが、製造時の原反の搬送性を良好にする観点から好ましい。
第1の非弾性繊維は、一定の繊維径を有する高伸度(例えば繊維の最大伸度が80〜800%、特に120〜650%)の繊維を原料とすることが、最大強度の高い伸縮シート1が得られる点で好ましい。繊維の伸度は、JIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±5%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された伸縮シートから繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
前記の高伸度の繊維は、低延伸の非弾性繊維であることが好ましい。低延伸の非弾性繊維を原料として、後述する製造方法に従い本実施形態の伸縮シート1を製造すると、延伸処理において低延伸の繊維が引き伸ばされることで、第1の非弾性繊維と弾性繊維又は弾性フィルムとの接合点が破壊されることを最小限にすることが可能になり、伸縮性能を維持しつつ伸縮シート1の強度を高くすることができる。つまり、高伸度と高強度とが両立した伸縮シート1が得られる。また、延伸処理において、第1の非弾性繊維間の接合も破壊されにくくなるので、得られる伸縮シート1が毛羽立ちにくくなる効果もある。このことは、本実施形態の伸縮シート1の外観を向上させる点から有利である。
上述した低延伸の非弾性繊維は、紡糸後に低延伸倍率で延伸された繊維及び延伸されていない繊維、すなわち未延伸繊維の両方を包含する。低延伸の繊維としてはその伸度が80%以上、特に120%以上ものを用いることが好ましく、800%以下、特に650%以下のものを用いることが好ましい。例えば伸度が80%以上800%以下、特に120%以上650%以下の高いものを用いることが好ましい。低延伸の非弾性繊維の繊維径は、延伸前の状態において10μm以上、特に12μm以上であることが好ましく、35μm以下、特に30μm以下であることが好ましい。低延伸の非弾性繊維の繊維径は、例えば10μm以上35μm以下、12μm以上30μm以下であることが好ましい。
低延伸の非弾性繊維は、単一の原料からなる繊維でもよく、あるいは2種以上の原料を用いた複合繊維、例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維であってもよい。非弾性繊維どうしの接合のさせやすさや、非弾性繊維と弾性繊維又は弾性フィルムとの接合のさせやすさを考慮すると、複合繊維を用いることが好ましい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT))、ポリプロピレン(PP)、鞘が低融点ポリエステル(PETやPBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性繊維又は弾性フィルムがポリオレフィン系エラストマーを含む場合、該弾性繊維又は該弾性フィルムと第1の非弾性繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。第1の非弾性繊維は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記非弾性繊維の原料として2種以上の樹脂をブレンドしたものを用いると、樹脂の結晶化度が低下し、高伸長の繊維となるため好ましい。この目的のために、ポリエチレンを主体としてプロピレン、ブテン又はオクテン等を1種以上共重合したエチレン系のα−オレフィンエラストマーを5質量%以上40質量%以下ブレンドしたり、ポリプロピレンを主体としてエチレン、ブテン又はオクテン等を1種以上共重合したプロピレン系のα−オレフィンエラストマーを5質量%以上40質量%以下ブレンドしたりすることが好ましい。
前記非弾性繊維には、その肌触りを良くするために、シリコーン系化合物、シリコーン系重合体、フッ素系化合物、フッ素系重合体、脂肪酸アミド化合物、脂肪酸化合物、パラフィン及び炭化水素樹脂などから選択される1種以上を内添したり、塗布などにより外添したりすることが好ましい。
弾性繊維又は弾性フィルムと第1の非弾性繊維との好適な組み合わせは、弾性繊維又は弾性フィルムにSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、第1の非弾性繊維にPP繊維、PP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。これらの組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができ、最大強度の高い伸縮シート1が得られる。
以上は、第1の非弾性繊維層11に関する説明であるところ、第2の非弾性繊維層12及び第3の非弾性繊維層13に関しても、第1の非弾性繊維層11について詳述した説明が同様に適用される。
伸縮シート1の具体的な用途にもよるが、該伸縮シート1を構成する各層の自然状態(弛緩状態)における坪量は、該伸縮シート1を例えば吸収性物品の構成部材として用いる場合には、弾性体10が例えば弾性繊維からなる場合には、その坪量は2g/m2以上であることが好ましく、5g/m2以上であることが更に好ましい。また30g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以下であることが更に好ましい。弾性層の10の坪量は2g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上15g/m2以下であることが更に好ましい。弾性体10が例えば弾性フィルムからなる場合には、その坪量は5g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることが一層好ましい。また、100g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以下であることが一層好ましい。弾性層の10の坪量は5g/m2以上100g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上50g/m2以下が一層好ましい。一方、各非弾性繊維層11,12,13の坪量は、それぞれ独立に4g/m2以上であることが好ましく、7g/m2以上であることが更に好ましい。また25g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以下であることが更に好ましい。各非弾性繊維層11,12,13の坪量は5g/m2以上25g/m2以下であることが好ましく、7g/m2以上15g/m2以下であることが更に好ましい。各非弾性繊維層の坪量は後述する密度の測定方法と同様に測定される。
図1に示す形態は、伸縮シート1が自然状態(弛緩状態)でのものである。自然状態において、伸縮シート1は、厚み方向の断面を伸縮方向に沿って見たときに周期的な凹凸構造を有している。詳細には、伸縮シート1は、頂部14a及び谷部14bが交互に配列した波形形状になっている。頂部14aと谷部14bとは稜線部15を介して連なっている。稜線部15の厚みに対して、頂部14a及び谷部14bの厚みは小さくなっており、稜線部15よりも光を透過させにくくなっている。伸縮シート1を平面視したとき、頂部14a、稜線部15及び谷部14bは、伸縮シート1の伸長方向と直交する方向へ延びている。したがって伸縮シート1には、その自然状態において、光を透過させにくい頂部14a及び谷部14bと、それよりも光を透過させやすい稜線部15に起因する横縞模様がうっすらと現れる。この横縞模様は、伸縮シート1を伸長させると後述する延伸処理等の条件によって一層顕著になる場合がある。伸縮シート1を後述する方法で製造した場合、凹凸の周期は、歯溝ロール51,52の凸条部(歯)のピッチよりも小さなものとなり、歯溝ロール51,52の凸条部(歯)のピッチの0.2倍以上0.8倍以下になることが好ましい。
伸縮シート1の厚み方向の断面が凹凸構造をしていることに関連して、自然状態(弛緩状態)において、この凹凸構造の周期を周期Aとしたとき、第2の非弾性繊維はその繊維径の周期が、周期Aと等しいものとなる。一方、第1の非弾性繊維はその繊維径が周期Aで変化しているとともに、別の異なる周期である周期Bでも繊維径が変化していることが好ましく、周期Bは周期Aの1.3倍以上3.5倍以下の範囲で変化していることが好ましい。第1及び第2の非弾性繊維の繊維径がこのように周期的に変化していることに起因して、伸縮シート1は、延伸加工により繊維径の細い部分がより細かく形成され、肌触りのより柔らかなものとなる点で有利なものとなる。第1及び第2の非弾性繊維の繊維径の周期的な変化は、伸縮シート1の伸縮方向に沿って発現していることが特に好ましい。第3の非弾性繊維に関しては、第1の非弾性繊維と同様に、その繊維径が周期Aで変化しているとともに、別の異なる周期である周期Bでも繊維径が変化していることが好ましく、周期Aの1.3倍以上3.5倍以下の範囲で変化していることが好ましい。
繊維径の周期は次の方法で測定される。後述する歪みの測定と同様にして、伸縮方向に沿って任意の間隔で繊維径を測定し、繰り返し存在する繊維径の太い部分のピッチを求める。周期的な凹凸形状や透過率の変化が見られる場合は、この周期の10分の1以下の間隔にて繊維径を測定する。このピッチを2倍した値を周期とする。
第1の非弾性繊維の繊維径は、平均で5μm以上であることが好ましく10μm以上であることが更に好ましい。また平均で30μm以下であることが好ましく20μm以下であることが更に好ましい。第1非弾性繊維の平均繊維径は、5μm以上30μm以下であることが好ましく10μm以上20μm以下であることが更に好ましい。第1の非弾性繊維の平均繊維径とは、該繊維の繊維径が周期的に変化している場合には、後述する繊維径の測定において、2周期以上の範囲から無作為に40点を測定した値の平均値として求められる。繊維径が周期的に変化していない場合には、無作為に40点を測定した値の平均値として求められる。第2及び第3の非弾性繊維の繊維径は、第1の非弾性繊維の繊維径と同様とすることができる。繊維径の測定方法は後述する頂部及び稜線部の繊維径の測定方法に準ずる。
伸縮シート1における弾性体10を構成する弾性繊維又は弾性フィルムは、歪みのない状態で、第1の非弾性繊維層11に含まれる第1の非弾性繊維と接合している。換言すると弾性繊維又は弾性フィルムは、実質的に非伸長状態で第1の非弾性繊維に接合されている。弾性繊維又は弾性フィルムに歪みがなく実質的に伸長していない状態で第1の非弾性繊維に接合されるため、本実施形態の伸縮シート1は、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、伸縮性が低下しにくいという利点がある。更に、第1ないし第3の非弾性繊維層11,12,13の伸長可能な長さまで、又は弾性繊維若しくは弾性フィルムの最大伸度まで、伸縮シート1を伸ばすことが可能となるという利点がある。弾性体10と第1の非弾性繊維層11とを接合する際、弾性体10と第1の非弾性繊維層11との接合倍率は1倍となる。
「弾性繊維又は弾性フィルムが、歪みのない状態で、第1の非弾性繊維と接合している」及び「実質的に非伸長状態」とは、弾性繊維又は弾性フィルムと第1の非弾性繊維のみにした状態において、第1の非弾性繊維と接合されている状態を解除した後の弾性繊維又は弾性フィルムの長さL1が、第1の非弾性繊維と接合されている状態での弾性繊維又は弾性フィルムの長さL2と同じであるか、又はL1がL2に対して90%以上110%以下の範囲内にあることを言う。ここで言う長さL1及びL2とは自然状態(弛緩状態)での長さのことである。弾性体10と第1の非弾性繊維との接合時には、弾性体10は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)で、歪みのない状態である。弾性体10と第1の非弾性繊維層11とを接合する際、弾性体10と第1の非弾性繊維層11との接合倍率は1倍となる。
弾性体10に含まれる弾性繊維又は弾性フィルムが、歪みのない状態になっていることとは対照的に、弾性体10に隣接する層である第1の非弾性繊維層11に含まれる第1の非弾性繊維のうち、少なくとも弾性繊維又は弾性フィルムに接合している第1の非弾性繊維は歪み(この歪みのことを「第1の歪み」とも言う。)を有している。「第1の非弾性繊維が歪みを有している」とは、伸縮シート1に加工される前の原反の状態での第1の非弾性繊維に対して、伸縮シート1中の第1の非弾性繊維が塑性変形に起因する永久歪みを有していることを言う。第1の歪みの程度は、以下の方法で測定することができる。
伸縮シート1の厚み方向の断面を剃刀を用いて切り出し、断面を上にして二次電子顕微鏡によって繊維径を測定する。その値が有効数字2桁以上となる倍率で観察する(例えば50倍以上500倍以下のいずれかの倍率)。測定対象には、必要であれば観察の前に金、白金又はカーボンなどの蒸着やスパッタリングを0.05μm以下の厚みで行う。
伸縮シート1の第1の非弾性繊維層11における頂部14aにおいてその最頂部付近に位置する5本の繊維の繊維径を測定する。異なる頂部14aの列の4ケ所を同様に測定する。これらトータル20ケ所の繊維径の平均値を繊維径1とする。
同様に伸縮シート1の第1の非弾性繊維層11における稜線部15付近に位置する5本の繊維の繊維径を測定する。異なる稜線部15の列の4ケ所を同様に測定する。これらトータル20ケ所の繊維径の平均値を繊維径2とする。
歪みは、以下の式から算出される
歪み(%)={(繊維径1/繊維径2)2−1}×100
以上の方法によって測定される第1の歪みは、20%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また500%以下であることが好ましく、350%以下であることが更に好ましい。第1の歪みは、20%以上500%以下であることが好ましく、90%以上350%以下であることが更に好ましい。
第1の非弾性繊維層11に含まれる第1の非弾性繊維が歪みを有していることと同様に、第2の非弾性繊維層12に含まれる第2の非弾性繊維も歪みを有している。尤も、第1の非弾性繊維と第2の非弾性繊維とでは歪みの程度が相違している。詳細には、第1の非弾性繊維が有している第1の歪みに対して、第2の非弾性繊維は第1の歪みよりも小さい歪み(この歪みのことを「第2の歪み」とも言う。)を有している。つまり、第1及び第2の非弾性繊維はいずれも歪みを有しているものの、第2の非弾性繊維の方が、第1の非弾性繊維よりも歪みの程度が小さい。第2の非弾性繊維が第1の歪みよりも小さいとは、第1の歪みと第2の歪みとの差において、〔第1の歪み−第2の歪み〕の値で表して、1パーセントポイント以上小さいことが好ましい。第2の歪みは、第1の歪みと同様の方法で測定される。ただし、上述した第1の歪みの測定における繊維径1は、頂部14aにおいて測定されたが、第2の歪みの測定における繊維径1は、谷部14bにおいて測定される。
以上の方法によって測定される第2の歪みは、第1の歪みよりも小さいことを条件として、2%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また200%以下であることが好ましく、100%以下であることが更に好ましい。第2の歪みは、2%以上200%以下であることが好ましく、10%以上100%以下であることが更に好ましい。また、第1の歪みと第2の歪みとの差は、〔第1の歪み−第2の歪み〕の値で表して、18パーセントポイント以上であることが好ましく、30パーセントポイント以上であることが更に好ましい。また400パーセントポイント以下であることが好ましく、280パーセントポイント以下であることが更に好ましい。〔第1の歪み−第2の歪み〕の値は、18パーセントポイント以上400パーセントポイント以下であることが好ましく、30パーセントポイント以上280パーセントポイント以下であることが更に好ましい。
伸縮シート1の第3の非弾性繊維層に含まれる第3の非弾性繊維に関しては、歪みを有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。後述する方法に従い伸縮シート1を製造した場合には、第3の非弾性繊維は歪み(この歪みのことを「第3の歪み」とも言う。)を有する。第3の歪みの値は第1の歪みの値と同様とすることができる。したがって、第3の非弾性繊維よりも、第2の非弾性繊維の方が、歪みの程度が小さい。第3の歪みは、第1の歪みと同様の方法で測定される。
以上の構成を有する本実施形態の伸縮シート1は、これを伸縮方向に沿って引き伸ばすと、弾性体10が弾性的に伸長し、その伸長に連れて各非弾性繊維層11,12,13も伸長する。更に引き伸ばしが進行すると、歪みが相対的に大きい非弾性繊維である第1の非弾性繊維がその破断伸度を超えて破断する。第3の非弾性繊維も同様に破断することが多い。しかし、歪みが相対的に小さい繊維である第2の非弾性繊維は、この時点でまだ破断伸度に達せず塑性変形が可能であることから、伸縮シート1の強度は大きく低下せず、強度が概ね維持された状態で伸長が可能である。したがって、伸縮シート1の引き伸ばしを更に続けても、該伸縮シート1の大きな強度低下は観察されない。そして、伸縮シート1の引き伸ばしが第2の非弾性繊維の破断伸度にまで達すると、該伸縮シート1の強度が急激に低下する。このように、本実施形態の伸縮シート1は、これを引き伸ばしたときに、非弾性繊維が2段階で伸長するので、高伸度状態でも高強度状態が維持されるという、これまでの伸縮シートでは達成し得なかった二律背反の要求が達成される。
図2は、本実施形態の伸縮シート1を引き伸ばしたときの応力−歪み曲線である。同図には、比較として、特許文献1に記載の伸縮シート、及び不織布に糸ゴムを伸長状態で取り付けた、いわゆる「糸ゴムギャザー」の応力−歪み曲線も併せて記載されている。同図から明らかなとおり、本実施形態の伸縮シート1は、これを引き伸ばすと、それに連れて応力が高くなる。応力は、ある歪みまで上昇するが、一旦低下し、再び上昇する。つまり、応力−歪み曲線に変曲点Pが観察される。変曲点Pに達するまでは、第1ないし第3の非弾性繊維の伸長が進行し、変曲点Pに達した時点で第1の非弾性繊維が破断伸度に達して破断する。第3の非弾性繊維も破断伸度に達して破断する場合が多い。そのことに起因して応力が一時的に低下して変曲点Pが観察される。変曲点Pを超えて歪みが更に大きくなっても第2の非弾性繊維が引き続き伸長し、伸縮シート1の強度低下を防ぐので、変曲点Pを超えて歪みが大きくなっても応力は上昇する。そして、歪みが第2の非弾性繊維の破断伸度を超えると、伸縮シート1の強度を維持する部位が存在しなくなるので、応力が急激に低下する。
これとは対照的に、図2に示すとおり、特許文献1に記載の伸縮シートや糸ゴムギャザーでは、歪みが大きくなるに連れて応力が単調増加し、非弾性繊維がその破断伸度に達すると応力が急激に低下する。したがって本実施形態の伸縮シート1で観察される変曲点Pは出現しない。
図1に示すとおり、伸縮シート1においては、その一方の表面が第1の非弾性繊維層11から構成されており、他方の表面が第2の非弾性繊維層12から構成されている。この場合、第2の非弾性繊維層12よりも第1の非弾性繊維層11の方が、密度が低くなっていることが好ましい。ここで言う密度とは見掛け密度のことである。両層11,12間にこのような密度差が存在することで、第2の非弾性繊維層12が相対的に強いクッション性を発現するとともに、第1の非弾性繊維層11が相対的に柔らかな面となる。その結果、伸縮シート1は、その全体としてクッション感を呈しつつ、柔らかな構造のものとなる。第3の非弾性繊維層13に関しては、その密度が、第1の非弾性繊維層11と同様であることが好ましい。
第1の非弾性繊維層11の密度は次の方法で測定される。伸縮シート1を0.5cN/cm2の荷重で平板間に挟む。その状態下にマイクロスコープを用いて断面を25倍以上200倍以下の倍率で観察し、第1の非弾性繊維層11について、谷部14bの反対側に位置する第1の非弾性繊維層11が弾性体10と接する側の面から頂部14a側の平板までの厚み方向における距離を厚みとして測定する。異なる谷部14bについて5点測定しその平均値を厚みとする。第1の非弾性繊維層11の坪量は伸縮シート1から弾性体10を溶媒(例えばトルエンなど)によって溶かし、残った第1の非弾性繊維層11の重量を自然状態(弛緩状態)における元の伸縮シート1の面積で割ることで求められる。坪量の測定は元の伸縮シート1の質量を面積で割ることにより得られ、これを2枚測定し平均値を求める。第1の非弾性繊維層11の密度は坪量を前記厚みで割ることによって求められる。
第2の非弾性繊維層12の密度は次の方法で測定される。伸縮シート1を0.5cN/cm2の荷重で平板間に挟む。その状態下にマイクロスコープを用いて断面を25倍以上200倍以下の倍率で観察し、第2の非弾性繊維層12について、頂部14aの反対側に位置する第2の非弾性繊維層12が第3の非弾性繊維層13と接する側の面から谷部14b側の平板までの厚み方向における距離を厚みとして測定する。異なる頂部14aについて5点測定しその平均値を厚みとして求める。第2の非弾性繊維層12の坪量は伸縮シート1から第2の非弾性繊維層12と第3の非弾性繊維層13を接合している接着剤を溶媒(例えばトルエンなど)によって溶かし、溶媒を乾燥後、残った第2の非弾性繊維層12の重量を自然状態(弛緩状態)における元の伸縮シート1の面積で割ることによって求められる。これを2枚測定し平均値を求める。第2の非弾性繊維層12の密度は坪量を前記厚みで割ることによって求められる。
なお、弾性体10の坪量は伸縮シート1の坪量を同様にして求め、伸縮シート1の坪量から各非弾性繊維の坪量を差し引くことで求められる。
上述の利点を一層顕著なものとする観点から、第2の非弾性繊維層12はその密度が0.02g/cm3以上であることが好ましく、0.05g/cm3以上であることが更に好ましい。また0.08g/cm3以下であることが好ましく、0.07g/cm3以下であることが更に好ましい。第2の非弾性繊維層12の密度は0.02g/cm3以上0.08g/cm3以下であることが好ましく、0.05g/cm3以上0.07g/cm3以下であることが更に好ましい。一方、第1及び第3の非弾性繊維層11,13は、それらの密度が、第2の非弾性繊維層12の密度よりも低いことを条件として、0.005g/cm3以上であることが好ましく、0.015g/cm3以上であることが更に好ましい。また0.06g/cm3以下であることが好ましく、0.03g/cm3以下であることが更に好ましい。第1及び第3の非弾性繊維層11,13の密度は0.005g/cm3以上0.06g/cm3以下であることが好ましく、0.015g/cm3以上0.03g/cm3以下であることが更に好ましい。
次に図1に示す実施形態の伸縮シート1の好適な製造方法について説明する。伸縮シート1は図3に示す製造装置16を用いて好適に製造される。同図に示す製造装置16は、原反の搬送方向Cに沿って、上流側から下流側に向けて第1ニップ軸20、第1延伸装置30、第2ニップ軸40、第2延伸装置50及び第3ニップ軸60を備えている。
第1ニップ軸20は、一対のニップロール21,22から構成されている。各ニップロール21,22はそれらの軸方向が平行になるように、且つロールの周面間に所定のクリアランスが生じるように配置されている。各ニップロール21,22は、軸周りに互いに反対方向に回転するようになっており、それらの回転方向は、不織布原反1Aの搬送方向Cと同方向になっている。各ニップロール21,22の周面はいずれも平滑になっている。第1ニップ軸20には、少なくとも一方のニップロール21,22を回転駆動させるための駆動源(図示せず)が備えられている。駆動源としては例えばサーボモータを用いることができる。
第2ニップ軸40は、一対のニップロール41,42から構成されている。また第3ニップ軸60は、一対のニップロール61,62から構成されている。第2ニップ軸40及び第3ニップ軸60の構造は、先に述べた第1ニップ軸20の構造と同様となっている。
第1ニップ軸20から搬送方向Cに沿って距離を隔てた下流側の位置には、第1延伸装置30が配置されている。第1延伸装置30は、互いに噛み合う一対の歯溝ロール31,32を備えている。各歯溝ロール31,32はそれらの軸方向が平行になるように、且つロールの周面に設けられた歯溝が互いに噛み合うように配置されている。各歯溝ロール31,32は、軸周りに互いに反対方向に回転するようになっており、それらの回転方向は、原反の搬送方向Cと同方向になっている。それによって搬送方向Cに沿った延伸加工が行われるようになされている。
各歯溝ロール31,32は、それらの軸方向に延びる凸条部(歯)33と、同じく軸方向に延びる溝34とをロールの周方向に沿って交互に有している。歯溝ロール31における凸条部33の高さは、歯溝ロール32における凸条部33のそれと同じになっている。また、ロールの周方向に沿う歯溝ロール32間のピッチも、両歯溝ロール31,32で同じになっている。
歯溝ロール31,32における隣接する凸条部33どうしのピッチは、1.5mm以上3.5mm以下であることが好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であることが更に好ましい。凸条部33の根元での幅(ロール周方向に沿う長さ)は、前記ピッチの0.25倍以上0.5倍未満が好ましく、0.3倍以上0.4倍以下がより好ましい。凸条部33の高さは、凸条部33のピッチの1.0倍以上2.0倍以下が好ましく、1.25倍以上1.75倍以下がより好ましい。歯溝ロールにおける隣接する凸条部33どうしのピッチとは、図4に示すとおり、1つの凸条部33の中心線とそれと隣り合う凸条部33の中心線との距離Pを言う。凸条部33の幅は均等でなく、凸条部33の根元から凸条部33の先端に向って細くなる台形型であってもよい。凸条部33の高さとは、凸条部33の根元から先端までの長さを言う。凸条部33の先端の角部は、面取りしておくことが好ましい。
歯溝ロール31,32の凸条部33の噛み合い深さは、延伸の対象となるシートを十分に伸長させることを考慮すると、前記ピッチが前記範囲の場合、前記ピッチ以上となることが好ましく、具体的には、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。凸条部33の噛み合い深さとは、図4に示すとおり歯溝ロール31,32どうしを噛み合わせて回転させるとき、隣接する凸条部33どうしが重なり合う長さDを言う。
各歯溝ロール31,32は、それらの軸がそれぞれ回転駆動源に接続されて、独立に回転可能になっているか、又は一方の歯溝ロールの軸のみが駆動源に接続されており、一方の歯溝ロールの溝内に他方の歯溝ロールの凸条部が遊挿された状態で、他方の歯溝ロールが連れ周りするようになっている。これによって歯溝ロール31,32の回転速度を調整することが可能になっている。あるいは、歯溝ロール31,32の各軸に凸条部33とは別に、一般的な、JIS B1701に規定されているギアを駆動伝達用のギアとして取り付けてもよい。それによって、歯溝ロール31,32の凸条部33が噛み合うのではなく、これら駆動伝達用のギアが噛み合うことによって、歯溝ロール31,32に駆動が伝達され、歯溝ロール31,32を回転させることができる。この場合、歯溝ロール31,32の凸条部33は接触することはない。第1延伸装置30には、少なくとも一方の歯溝ロール31,32を駆動させるための駆動源(図示せず)が備えられている。
また歯溝ロール31,32のうちの少なくとも一方は、他方の歯溝ロールに対して接離可能な構造になっている。この目的のために、少なくとも一方の歯溝ロールの軸受けの部位に、各種の昇降手段を設けることができる。これによって歯溝ロール31,32の噛み合い深さを調整することが可能になっている。
第2延伸装置50は、第2ニップ軸40から搬送方向Cに沿って距離を隔てた下流側の位置に配置されている。第2延伸装置50は、互いに噛み合う一対の歯溝ロール51,52を備えている。各歯溝ロール51,52は、それらの軸方向に延びる凸条部(歯)53と、同じく軸方向に延びる溝54とをロールの周方向に沿って交互に有している。第2延伸装置50の構造は、先に述べた第1延伸装置の構造と同様となっている。したがって、第2延伸装置50によっても、搬送方向Cに沿った延伸加工が行われるようになされており、第1及び第2の延伸を搬送方向に沿う方向に行う伸縮シートの製造方法が示される。
図3に示す装置16によって、目的とする伸縮シート1を得るためには、まず第1の積層体1Aをロールから繰り出して第1ニップ軸20に供給する。供給された第1の積層体1Aは、一対のニップロール21,22に挟持された状態で、搬送方向Cに沿って搬送されて、第1延伸装置30へと供給される。伸縮シート1の凹凸周期は1Cの位置にあるシートよりも縮むため歯溝ロール52間のピッチよりも小さなものとなる。このことから、細かすぎず、布調の外観を得る点で、歯溝ロール52間のピッチは歯溝ロール32間のピッチの0.5倍以上することが好ましく、1倍以上とすることが更に好ましい。また3倍以下とすることが好ましく、2倍とすることが更に好ましい。例えば歯溝ロール52間のピッチは歯溝ロール32間のピッチの0.5倍以上3倍以下とすることが好ましく、1倍以上2倍以下とすることが更に好ましい。
第1の積層体1Aは、非伸長状態の弾性繊維又は非伸長状態の弾性フィルムを含む弾性層と、第1の非弾性繊維を含む非弾性繊維層とを積層してなるものである。第1の積層体1Aの具体例としては、図3に示すとおり、非伸長状態の弾性繊維又は非伸長状態の弾性フィルムを含む弾性体10Aの一方の面に、第1の非弾性繊維を含む第1の非弾性繊維層11Aが積層されているとともに、該弾性体10Aの他方の面に、第3の非弾性繊維を含む第3の非弾性繊維層13Aが積層されている3層構造のものを用いることができる。このような3層構造の積層体1Aは、例えば特開2008−179128号公報の図4中、符号19で示される複合体に相当するものであり、同公報の図4に示す装置を用いて製造することができる。第1延伸装置30によって延伸される前の状態の第1の積層体1Aは、弾性体10Aの伸縮性が第1及び第3の非弾性繊維層11A,13Aによって規制されているので、非伸長性・非伸縮性のものである。
第1延伸装置30においては第1の延伸加工が行われる。第1の延伸加工では、図4に示すとおり、一方の歯溝ロール31の凸条部33と、それに隣接する他方の歯溝ロール32の凸条部33との間で第1の積層体1Aが引き伸ばされる。つまり延伸される。これによって、第1の積層体1Aにおける第1の非弾性繊維層11A及び第3の非弾性繊維層13Aを構成する第1及び第3の非弾性繊維が塑性変形するとともに、弾性体10Aが弾性変形する。第1の積層体1Aの延伸によって第1及び第3の非弾性繊維が塑性変形すると、その延伸状態が解除されても第1及び第3の非弾性繊維は元の長さに戻らず伸長された状態のままとなる。一方、不織布原反1Aの延伸によって弾性体10Aが弾性変形すると、その延伸状態が解除されることで、弾性体10Aは元の長さに近い状態まで弾性収縮する。これによって、第1及び第3の非弾性繊維層11A,13Aに伸長性が付与され、それによって弾性体10Aの伸縮の規制が解かれるので、第1の積層体1Aは伸縮性を発現する。第1の積層体1Aの伸縮性は、延伸方向である搬送方向Cに沿って少なくとも伸縮性が発現し、好ましくは搬送方向C及びそれに直交する方向で発現する。
第1延伸装置30による第1の延伸の倍率は、肌触りと強度を両立する点において1.5倍以上であることが好ましく、1.8倍以上であることが更に好ましい。また5.0倍以下であることが好ましく、3.6倍以下であることが更に好ましい。第1の延伸の倍率は、1.5倍以上5.0倍以下であることが好ましく、1.8倍以上3.6倍以下であることが更に好ましい。第1の延伸の倍率は、図4における噛み合いによる静的な機械延伸倍率に、第1延伸装置30での延伸加工の速度V3をかけ合わせた値を、第1ニップロール21,22の周速V1で割ることによって求められる。第1延伸装置30での延伸加工の速度V3は、図4に示すとおり、凸条部33の先端から凸条部33の噛み合い深さDの半分まで内側に入った位置D1(隣接する凸条部33どうしの重なり合う長さの半分の位置)での歯溝ロール31,32の周速のことである。
伸縮性が付与された第1の積層体1Aは、第2ニップ軸40に搬送され、第2ニップ軸40において,第2の非弾性繊維を含む第2の非弾性シート1Bと合流し、両者が積層される。それによって第2の積層体1Cが得られる。このとき、第2の非弾性シート1Bは、第1の積層体1Aにおける第3の非弾性繊維層13Aの側に積層される。両者の積層に先立ち、第1の積層体1Aを伸長させた状態にしておき、その伸長状態下に両者を積層する。積層に先立つ第1の積層体1Aの伸長の程度は、第2の非弾性繊維シートの貼り合わせ時の倍率が、第1ニップ前のシートに対して1.5倍以上4倍以下となるようにすることが好ましい。第1の積層体1Aを伸長状態にするには、第1延伸装置30と第2ニップ軸40との間で第1の積層体1Aに張力が加わるようにすればよい。この目的のために、第1延伸装置30における延伸加工の速度V3よりも、第2ニップ軸40の周速V4を高く設定すればよい。
また、第1の延伸の状態の長さ(第1の延伸倍率)に対して第1の延伸後の戻し倍率は、好ましくは0.5倍以上、更に好ましくは0.7倍以上の長さになるように、また好ましくは0.95倍以下、更に好ましくは0.8倍以下の長さになるように、具体的には、0.5倍以上0.95倍以下、更に好ましくは0.7倍以上0.8倍以下の長さになるように、第1の積層体1Aを縮ませ、その状態下に第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを接合して第2の積層体1Cを得ることが好ましい。第1の積層体1Aは第1延伸装置30の前と後(ニップ20とニップ40の間)で幅縮みをするが、この操作を行うことで、伸縮シート1の幅縮みを抑制することができる。
第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを接合する際には、塗工装置43を用いて、第2の非弾性繊維シート1Bの面のうち、第1の積層体1Aと対向する面に接着剤(図示せず)を塗布することが好ましい。接着剤は、第2の非弾性繊維シート1Bに間欠的に又は全面に塗布することができる。間欠的な方法としては、多列をなしており、スパイラル状、ジグザグ状、直線状、帯状(ストライプ状)が挙げられる。また、ドット状に塗布することも可能である。好ましくは機械方向(MD)に延びて多列をなす帯状(幅方向(CD)間欠)、又は幅方向(CD)に延びて多列をなす帯状(機械方向(MD)間欠)が適度な浮きに起因して肌触りに優れる点で好ましい。また接着剤に代えて熱融着などの他の接合手段を用いて、第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを接合してもよい。熱融着の形態としては、ヒートシール(熱エンボス)、超音波シールが挙げられる。接着パターンとしては多列をなしており、直線状、曲線状、帯状、格子状、ドット状が挙げられる。好ましくはドット状が、伸縮特性を阻害せずに、肌触りと接合強度を両立できる点で好ましい。接合装置は第2ニップロール41,42に代えて行うことができる。ヒートシール時の温度は伸縮特性が熱によって低下しないようにするために、フラットロールが120℃以下、特に80℃以下が好ましい。パターンロール側の温度は140℃以下、特に100℃以下が好ましい。接合面積率は、接着剤の場合及び熱融着の場合ともに自然状態(弛緩状態)において1%以上15%以下が好ましい。
第2ニップ軸40において第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとが接合されて第2の積層体1Cが得られた後、第2の積層体1Cは第2延伸装置50に搬送され、そこで第2の延伸が行われる。第2の延伸を行うに際しては、第1の延伸前よりも第2の積層体1Cを伸長させた状態にしておく。第2の積層体1Cを伸長状態にするには、第2ニップ軸40と第2延伸装置50との間で第2の積層体1Cに張力が加わるようにすればよい。第2延伸装置50での延伸加工の速度V5は、第1延伸装置30での延伸加工の速度V3と同様に定義される。
第2延伸装置50による第2の延伸の倍率は、1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることが更に好ましい。また4.5倍以下であることが好ましく、3.5倍以下であることが更に好ましい。第2の延伸の倍率は、1.5倍以上4.5倍以下であることが好ましく、2倍以上3.5倍以下であることが更に好ましい。第2の延伸の倍率は、図4における噛み合いによる静的な機械延伸倍率に、第2延伸装置50での延伸加工の速度V5をかけ合わせた値を、第2ニップロール41,42の周速V4で割ることによって求められる。
第2延伸装置50による第2の延伸で、目的とする伸縮シート1が得られる。伸縮シート1は第3ニップ軸60に挟持された状態で搬送される。この場合、第2の延伸後の戻し倍率として、第3ニップ軸60の周速V6と、第2延伸装置50における延伸の速度V5との関係は、速度V6が速度V5の3倍以上8倍以下とすることができる。こうすることで、第2の積層体1Cは第2延伸装置50の前と後(ニップ40とニップ60の間)で幅縮みをするが、伸縮シート1の幅縮みを抑制することができる。
以上の方法で伸縮シート1を製造するときには、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.4倍以上の倍率で第1の延伸を行う。また、5.0倍以下、更に好ましくは3.8倍以下の倍率で第1の延伸を行う。第1の延伸の倍率は、好ましくは1.5倍以上5.0倍以下、更に好ましくは2.4倍以上3.8倍以下とする。一方、第2の延伸の倍率は、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.2倍以上であり、好ましくは4.5倍以下、更に好ましくは3.2倍以下である。第2の延伸の倍率は、好ましくは1.5倍以上4.5倍以下、更に好ましくは2.2倍以上3.2倍以下である。更にトータルの延伸倍率は、好ましくは2.5倍以上、更に好ましくは3.0倍以上であり、好ましくは7.0倍以下、更に好ましくは5.6倍以下である。第2の延伸の倍率は、好ましくは2.5倍以上7.0倍以下、更に好ましくは3.0倍以上5.6倍以下である。このような条件で延伸を行うことで、各段での延伸倍率を低くして、シートが受けるダメージを低く抑えつつ、全体としての延伸倍率を高くすることができる。それによって一層高伸度で、且つ高強度の伸縮シート1を得ることができる。
第1の延伸の倍率と、第2の延伸の倍率との関係に関しては、第1の延伸の倍率よりも、第2の延伸の倍率を低くすることが好ましく、第2の延伸倍率は第1の延伸倍率よりも70%以上90%以下の範囲で小さいことが好ましい。第1及び第3の非弾性繊維が受けるトータルの延伸倍率が同じ場合は、第1の延伸の倍率と、第2の延伸の倍率との比を変えても第1及び第3の非弾性繊維が受ける延伸の程度は変化しないが、第1の延伸の倍率よりも、第2の延伸の倍率を低くすると、第2の非弾性繊維が受ける延伸倍率は低くなる。その結果、トータルの延伸倍率が同じである場合には、第1の延伸の倍率よりも、第2の延伸の倍率を低くできるので、伸縮シート1を一層高強度のものとすることができる。
次に、本発明の伸縮シートの別の実施形態を図5を参照しながら説明する。本実施形態に関し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また、図5以降の図面に関し、図1ないし図4と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略してある。
図5に示す実施形態の伸縮シート1は、弾性繊維と第1の非弾性繊維とを混合状態で含む弾性体10’と、第2の非弾性繊維を含む第2の非弾性繊維層12との積層構造を有している。弾性体10’における弾性繊維と第1の非弾性繊維との混合の割合は、弾性体10’が十分な弾性を発現できるようにするために、質量比で表すと、弾性繊維:第1の非弾性繊維=30:70〜70:30とすることが好ましい。弾性体10’においては、弾性繊維が、歪みのない状態で第1の非弾性繊維と接合している。また、弾性繊維と接合している第1の非弾性繊維は第1の歪みを有し、第2の非弾性繊維が第1の歪みよりも小さい第2の歪みを有している。本実施形態の伸縮シート1は、先に説明した実施形態の伸縮シートと同様に、図2に示すとおりの変曲点を有する応力−歪み曲線を示すものとなる。そして本実施形態の伸縮シート1は、先に説明した実施形態の伸縮シートと同様に、高伸度で、且つ高強度のものとなる。
図5に示す実施形態の伸縮シート1は、図3に示す装置16を用いて製造することができる。この場合、図3に示す第1の積層体1Aに代えて、弾性繊維と第1の非弾性繊維とを混合状態で含む非弾性の繊維シートを用いればよい。この非弾性の繊維シートは、第1延伸装置30によって延伸加工が施される前の状態では、弾性繊維の伸縮性が第1の非弾性繊維によって規制されているので、非伸長性・非伸縮性のものである。この非弾性の繊維シートに第1の延伸に施した後、第1の延伸前の長さよりも該繊維シートを伸長させた状態で、該繊維シートと、第2の非弾性繊維シート1Bとを接合して積層体を得て、第1の延伸前の長さよりも該積層体を伸長させた状態で、第2の延伸を行えばよい。これ以外は、先に述べた方法と同様の方法で、目的とする伸縮シート1が得られる。
図6には、図1及び図5に示す伸縮シート1の製造に用いられる別の装置16が示されている。図6に示す製造装置16は、第2延伸装置50が、図3に示すものと相違している。図3に示す第2延伸装置50は、搬送方向Cに沿って延伸を行う装置であったのに対して、図6に示す第2延伸装置50は、搬送方向Cと直交する方向に沿って延伸を行う装置である。つまり図6に示す製造装置16は、第1の延伸を搬送方向Cに沿って行い、且つ第2の延伸を搬送方向Cと直交する方向に沿って行うものである。
図6に示す製造装置16を用いて伸縮シート1を製造するときの利点は次のとおりである。すなわち、第2の非弾性繊維シート1Bは、搬送方向Cに沿う延伸を受けないので、得られる伸縮シート1は、その伸縮方向に沿う強度の低下が少ないものとなる。
また、第1の積層体1Aが、搬送方向C及びそれに直交する方向に伸縮性を発現可能な構造をしている場合には、図6に示す製造装置16を用いることで、両方向に伸縮可能な伸縮シート1が得られる。第1の積層体1Aが、搬送方向Cにのみ伸縮性を発現可能な構造をしている場合には、第2延伸装置50による延伸で、伸縮シート1の幅が広がるので、延伸及び搬送に起因する幅縮みを抑制でき、単位面積当たりの製造経費を低減できる。一方、第1の積層体1Aが、搬送方向Cと直交する方向にのみ伸縮性を発現可能な構造をしている場合には、第1延伸装置30による延伸で長さが長くなることから、単位面積当たりの製造経費を低減できる。
以上の方法で製造された伸縮シート1は、その高伸度及び高強度の特性を活かして、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品を構成するシート、例えば吸収性物品の外装材、立体ギャザー、表面材等として好適に用いられる。またこの用途以外に、延伸加工によって発現した良好な風合いや、伸縮性、通気性等の利点を活かし、医療用使い捨て衣類や清掃シート、眼帯、マスク、包帯等の各種の用途に用いることもできる。
伸縮シート1を備えた吸収性物品の一例としてのパンツ型使い捨ておむつについて、その好ましい実施形態に基づき図7及び図8を参照しながら説明する。パンツ型使い捨ておむつ101は、吸収性コア102を含む吸収性本体103と該吸収性本体103の非肌当接面側に位置して該吸収性本体103を固定している外装体104とを備えている。
吸収性本体103は、液透過性の表面シート105、液不透過性又は撥水性の防漏シート(図示せず)及びこれら両シート間に配された液保持性の吸収性コア102を有している。表面シート105、防漏シート及び吸収性コア102としては、それぞれ、従来からこの種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。吸収性本体103の長手方向両側部には、自由端に弾性部材161を有する防漏カフス形成シート106が配されて、側部防漏カフス160が形成されている。ウエスト開口部112及び一対のレッグ開口部113,113それぞれの開口周縁部においてはウエスト部弾性部材121及びレッグ部弾性部材122が外装体104に固定されている。弾性部材161,121,122の素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、弾性部材161,121,122の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
本実施形態の外装体104は、その全体又は一部に、特定の構造を有する伸縮性複合部Iを有している。伸縮性複合部Iは、非弾性繊維層からなる非伸縮シート136と伸縮シート138とが、伸縮シート138の伸長状態下に貼り合わされた構成を有している。そして、伸縮シート138として、上述した本発明の伸縮シート1が用いられている。
本実施形態においては、図8に示すように、腹側部Aから股部Cの一部にかけての伸縮性複合部I、股部Cにおける伸縮シート非配置部II、及び股部Cの一部から背側部Bにわたる伸縮性複合部Iが、外装体104における、おむつの展開状態長手方向に沿ってこの順に存在している。より具体的に説明すると、外装体104は、腹側部Aから股部Cの一部にわたる領域及び背側部Bから股部Cの一部にわたる領域それぞれに配された伸縮シート138,138と、腹側部A、股部C及び背側部Bにわたって連続して配された非伸縮シート136と、股部Cのみに配され、非伸縮シート136と貼り合わされているとともに、両端が伸縮シート138と連接するように配された第2の非伸縮シート(図示せず)から構成されている。したがって、外装体104は、その全体に存在する非伸縮シート136上における腹側部A及び背側部Bを含む所定の領域のみにおいて、非伸縮シート136の一面上に接着固定された伸縮シート138が存在する構成となっており、その非伸縮シート136上に伸縮シート138が存在する領域が、伸縮性複合部Iとなっている。
他方、外装体104は、股部Cに、非伸縮シート136及び第2の非伸縮シート(図示せず)が配されているが、それらの非伸縮シート上には伸縮シート138が配されていない領域を有しており、該領域が、伸縮シート138が配されていない伸縮シート非配置部IIとなっている。なお、伸縮シート非配置部IIの非伸縮性シートは、非伸縮シート136Bを除いて1層とすることも可能である。
外装体104が、股部Cに伸縮シート非配置部IIを有していると、股部Cにおける吸収性コア2や吸収性本体103が幅方向に縮んで吸収面を狭めることを防止でき、漏れ防止性能が低下することを防止することができる。
外装体104は、伸縮性複合部Iにおける非伸縮シート136側が、おむつの内面側(着用者の肌側に向けられる面側)に位置し、伸縮性複合部Iにおける伸縮シート138側が、おむつ外面側に位置するように配されている。
外装体104を構成する前記の非伸縮シート136及び伸縮シート138は、ウエスト開口部112近傍の領域にも存在しており、前述した弾性部材121が、ウエスト開口部112における非伸縮シート136と伸縮シート138との間に接着剤(図示せず)を介して固定されている。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、図1に示す実施形態では、弾性体10と第2の非弾性繊維層12との間に、第3の非弾性繊維層13が配されていたが、この第3の非弾性繊維層は用いなくてもよい。
また、第1の非弾性繊維層11の表面、及び/又は、第2の非弾性繊維層の表面に、他の繊維層又はフィルム層などの各種の層を1層以上積層してもよい。更に、第2延伸装置50の後にニップ装置と延伸装置を複数追加して他の繊維層又はフィルム層をこの間に積層し、多段で行ってもよい。
更に、図3に示す装置16を用いた伸縮シート1の製造方法においては、第1の積層体1Aとして、特開2008−179128号公報の図4に示される装置を用いて製造されたものを用いることが好ましいと説明したが、これに代えて、スパンボンド法や、メルトブローン法、エアスルー法で製造された第1の積層体1Aを用いてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
〔1〕第1の積層体1Aの製造
特開2008−179128号公報の実施例1の記載に準じて3層構造からなる第1の積層体1A(図3参照)を製造した。第1の積層体1Aの詳細は、以下の表1に示すとおりである。第1の積層体1Aにおいては、弾性フィラメントは歪みのない状態で他の繊維と接合されていた。
〔2〕第2の非弾性繊維シート1Bの準備
以下の表1に示す不織布を第2の非弾性繊維シートとして用いた。
〔3〕伸縮シート1の製造
図3に示す装置を用いて伸縮シートを製造した。製造条件を以下の表1に示す。第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを積層し接合するときの手段も同表に示しており、本実施例では接着剤を幅方向に間欠(MD方向に連続)になるように線状に塗工した。なお、第1及び第2延伸装置30,50における凸条部33,53のピッチPは2.0mmであった。歯溝ロールの噛み合い深さDはそれぞれの延伸倍率になるように調整した。延伸加工性の評価として、延伸装置による弾性体の破断状態を観察し、破断のないものを良好とした。
〔実施例2ないし4〕
第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを接合するときの手段を表1に示すものに変更した。これ以外は実施例1と同様にして伸縮シート1を得た。なお、表中の「熱エンボス」とは第1の積層体1Aと第2の非弾性繊維シート1Bとを散点状の熱エンボスにより接合したことを意味し、ベタ接着剤は両シート間の全面に接着剤を塗工したことを意味し、「線状接着剤(MD間欠)」は両シート間に接着剤を機械方向に間欠になるように線状に塗工したことにより接合したことを意味する。
〔実施例5ないし12〕
延伸の条件を表2及び表3に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして伸縮シート1を得た。
〔実施例13〕
本実施例では図5に示す実施形態の伸縮シート1を製造した。第1延伸装置30に供給する繊維シートとして、表3に示すSEPSの弾性フィラメントと、PPの非弾性フィラメントとを含む混繊スパンボンド不織布を用いた。これ以外は実施例1と同様にして伸縮シート1を得た。
〔比較例1〕
本比較例は、特許文献1(特開2008−179128号公報)の実施例に準じて製造した伸縮シートである。この伸縮シートは延伸処理が1段のみ行って得られたものであり、また第2の非弾性繊維シート1Bは積層されていない。詳細を表4に示す。
〔比較例2〕
本比較例は、特許文献3(特表2006−520701号公報)の実施例に準じて製造した伸縮シートである。この伸縮シートは、いわゆる糸ゴムギャザーに対して歯溝ロールを用いた延伸加工を施して得られたものである。その詳細を表4に示す。
〔比較例3〕
本比較例は、いわゆる糸ゴムギャザーを製造した例である。この糸ゴムギャザーは、スパンボンド不織布に、ポリウレタンの糸ゴムを伸長状態で接合して得られたものである。その詳細を表4に示す。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた伸縮シートについて、MD最大伸度、戻り50%伸長時強度、MD最大強度及びCD最大強度を以下の方法で測定した。その結果を表1に示す。なお表中、MDは、機械方向の略であり、搬送方向Cを意味する。CDは、幅方向の略であり、搬送方向Cと直交する方向を意味する。
また、実施例及び比較例で得られた伸縮シートについて、第1の非弾性繊維の繊維径の周期B、第2の非弾性繊維の繊維径の周期A、第1の非弾性繊維層11の密度、及び第2の非弾性繊維層12の密度を上述の方法で測定した。
更に、実施例及び比較例で得られた伸縮シートについて、外観及び第1の非弾性繊維層11側での肌触りを以下の方法で評価した。これらの結果を以下の表1ないし表4に示す。
〔MD最大伸度、MD最大強度及びCD最大強度〕
延伸加工された伸縮性を有する不織布を用いて、MD方向へ200mm、それと直交するCD方向へ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に試験片を装着する。チャック間距離は150mmとする。試験片を試験片のMD方向へ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定する。そのときの最大点の荷重をMD最大強度とする。またそのときの試験片のチャック間距離をBとし、元の試験片のチャック間距離をAとしたとき、{(B−A)/A}×100をMD最大伸度(%)とする。同様に不織布のCD方向へ引張り試験を行った値をCD最大強度とする。
〔戻り50%伸長時強度〕
延伸加工された伸縮性を有する不織布を用いて、伸縮方向へ200mm、それと直交する方向へ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に試験片を装着する。チャック間距離は150mmとする。100%伸長サイクル試験を行い、試験片を不織布の伸縮方向へ300mm/分の速度で伸長させ、100%伸長時強度を100%伸長時の荷重から求める。更に、100%伸長後、直ちに同速にて原点に戻して行ったとき、戻り途中における50%伸長時の荷重から戻り50%伸長時強度を求める。
〔外観〕
パネラーの目視によって、伸縮性シートの第1の非弾性繊維層11側を上面とし、自然状態(弛緩状態)で評価した。5人の評価者によって1点から5点までの5段階評価を行い、その平均点を四捨五入して求めた。評価基準は、好ましいもの(微少な波形状を有し布調であるもの)を5点、やや好ましいものを4点、普通なものを3点、やや好ましくないものを2点、好ましくないもの(糸ゴムギャザーのように表面のうねりの大きなもの)を1点とした。
〔第1の非弾性繊維層11側での肌触り〕
伸縮性シートの第1の非弾性繊維層11側の肌触りの評価を行った。肌触りは自然状態(弛緩状態)で評価した。5人の評価者によって1点から5点までの5段階評価にて行い、その平均点を四捨五入して求めた。評価基準は、好ましいもの(柔らかでベタツキのないもの)を5点、やや好ましいものを4点、普通なものを3点、やや好ましくないものを2点、好ましくないもの(硬いものやベタツキのあるもの)を1点とした。
表1ないし表4に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた伸縮シートは、比較例のシートに比べて、高伸度及び高強度が両立したものであることが判る。