JP6486634B2 - 乳母車および乳母車に用いられる筒状部材 - Google Patents

乳母車および乳母車に用いられる筒状部材 Download PDF

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Description

本発明は、乳母車および乳母車に用いられる筒状部材に係り、とりわけ乳母車の軽量化および振動吸収性能の両方を改善することができる乳母車及び筒状部材に関する。
例えば特許文献1に開示されているように、乳幼児を連れ出す際に乳母車を使用することが、広く普及している。乳幼児が乗車する乳母車は、走行中、路面状態に応じて衝撃を受ける。このため、乳幼児への衝撃の伝達を抑制するため、乳母車には振動を吸収するための手段が設けられている。振動吸収手段として、車輪保持ユニットのサスペンション機構や、乳幼児の着座領域への振動吸収性材料の設置等が、例示される。しかしながら、このような振動吸収手段の設置は、乳母車の重量化の原因となる。
特開2014−73846号公報
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、乳母車の重量化を効果的に抑制しながら乳母車の振動吸収性能を効果的に向上させることを目的とする。
本発明による乳母車は、炭素繊維および樹脂を含んだ筒状部材を備える。
本発明による乳母車において、
前記筒状部材は、肉厚方向における異なる位置に配置された複数の層であって、各層が炭素繊維を含んでいる、複数の層を有し、
前記複数の層の間で、前記炭素繊維の長手方向が互いに異なっていてもよい。
本発明による乳母車において、
前記筒状部材は、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の軸線方向に沿っている第1層と、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の周方向に沿っている第2層と、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の軸線方向に沿っている第3層と、を有し、
前記第2層は、前記筒状部材の肉厚方向において前記第1層及び前記第3層の間に位置していてもよい。
本発明による乳母車において、前記樹脂は、熱硬化性樹脂であるようにしてもよい。
本発明による乳母車において、
前記樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
前記筒状部材は、曲がっていてもよい。
本発明による乳母車において、前記筒状部材は、引き抜き成形法によって筒状に形成された炭素繊維強化プラスチックからなる部材であるようにしてもよい。
本発明による乳母車において、
前記筒状部材の少なくとも一方の開口した端部に固定された端部部品を、さらに備え、
前記端部部品は、
前記筒状部材内に挿入される内方支持部であって、前記筒状部材の内面に周状の領域で対面する内方対向面を有した内方支持部と、
前記筒状部材の外面に周状の領域で対面する外方対向面を有した外方支持部と、を有するようにしてもよい。
本発明による乳母車において、前記端部部品は、乳母車の他の構成要素と接続されていてもよい。
本発明による乳母車において、前記筒状部材は、前記端部部品が設けられている部分において、乳母車の他の構成要素と接続されていてもよい。
本発明による乳母車において、
前記端部部品は、
前記内方支持部と、前記内方支持部と一体的に形成された基部と、を有する第1部材と、
前記第1部材とは別途に形成され、前記外方支持部と、前記外方支持部の端部から延び出して前記筒状部材の端面に対面するフランジ部と、を有する第2部材と、を含むようにしてもよい。
本発明による乳母車において、
前記端部部品は、
前記外方支持部と、前記外方支持部と一体的に形成された基部と、を有する第1部材と、
前記第1部材とは別途に形成され、前記内方支持部と、前記内方支持部の端部から延び出して前記筒状部材の端面に対面するフランジ部と、を有する第2部材と、を含むようにしてもよい。
本発明による乳母車において、前記端部部品は、前記内方支持部及び前記外方支持部の両方と一体的に形成された基部をさらに有するようにしてもよい。
本発明による乳母車が、前脚、後脚及びハンドルを備え、
前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚及び前記ハンドルのうちの一以上の少なくとも一部分を形成していてもよい。
本発明による乳母車が、
前脚および後脚と、
前記前脚および前記後脚と回動可能に接続されたアームレストと、
前記アームレストと回動可能に接続された第1リンクと、
前記前脚と回動可能に接続された第2リンクと、
前記後脚と回動可能に接続された第3リンクと、を備え、
前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク及び前記第3リンクのうちの一以上の少なくとも一部分を形成していてもよい。
本発明による乳母車が、
一対の前脚および一対の後脚と、
前記前脚および前記後脚と回動可能に接続された一対のアームレストと、
前記アームレストと回動可能に接続された一対の第1リンクと、
前記前脚と回動可能に接続された一対の第2リンクと、
前記後脚と回動可能に接続された一対の第3リンクと、
前記一対の後脚を連結する後方連結材と、
前記一対の第2リンクを連結するリンク連結材と、を備え、
前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク、前記後方連結材及び前記リンク連結材のうちの一以上の少なくとも一部分を形成していてもよい。
本発明による乳母車において、前記第1リンクが、ハンドルの一部を形成するようにしてもよい。
本発明による乳母車が、
前脚および後脚と、
前記前脚および前記後脚と回動可能に接続されたアームレストと、
前記アームレストと回動可能に接続された第1リンクと、
前記前脚と回動可能に接続された第2リンクと、
前記後脚と回動可能に接続された第3リンクと、
前記第1リンク、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一以上と回動可能に接続されたハンドルと、を備え、
前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び前記ハンドルのうちの一以上の少なくとも一部分を形成していてもよい。
本発明による筒状部材は、乳母車に用いられる筒状部材であって、樹脂および炭素繊維を含む。
本発明によれば、乳母車の重量化を効果的に抑制しながら乳母車の振動吸収性能を効果的に向上させることができる。
本発明の一実施の形態における乳母車の全体構成を説明するための斜視図。 乳母車を示す側面図。 折り畳み状態にある乳母車を示す側面図。 筒状部材の構成を示す図。 筒状部材の製造方法の一例を説明するための図。 筒状部材と、筒状部材と接続した端部部品と、を示す断面図。 筒状部材および端部部品を示す分解斜視図。 端部部品の一変形例を示す図。 端部部品の他の変形例を示す図。 端部部品のさらに他の変形例を示す図。 端部部品のさらに他の変形例を示す図。 乳母車の一変形例を示す斜視図。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1〜図7は本発明による乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1〜図3には、乳母車の全体構成が示されている。本実施の形態における乳母車10は、脚14,16を有した折り畳み可能な乳母車本体11を有している。図示は省略するが、乳母車本体11には、クッション性の座席材が取り外し可能に装着される。乳幼児は、この座席材上に着座する。乳母車本体11は、前脚14及び後脚16を有する本体フレーム12と、本体フレーム12に対して揺動可能となるように本体フレーム12に接続されたハンドル48と、を有している。後脚14及び後脚16の下端には、車輪45が回転可能に保持されている。
本実施の形態において、乳母車10は、広く普及しているように(例えば、JP2006−117012A)、折り畳み可能に構成されている。また、本実施の形態の乳母車10においては、ハンドル48を本体フレーム12に対して揺動させることにより、操作者(保護者)が乳幼児の背面側からハンドル48を把持して乳母車10を操縦し、乳幼児が進行方向の前方を向くようにして乳母車10を走行させること(図1のハンドル48の位置参照)、並びに、操作者が乳幼児に対面する前脚側の位置からハンドル48を把持して乳母車10を操縦し、乳母車10の後脚側が進行方向の前方となるようにして乳母車10を走行させること(図2のハンドル48の位置参照)、の両方が可能となっている。
ここで、本明細書中において、乳母車およびその構成要素に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車およびその構成要素に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。さらに詳しくは、「前後方向」とは、図1における紙面の左下と右上とを結ぶ方向であって、図2における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、図1における紙面の左下側並びに図2における紙面の左側が前側となる。一方、「上下方向」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「横方向」とは幅方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。
まず、乳母車の全体構成として、乳母車本体11について説明する。図1に示すように、本実施の形態における乳母車10は、全体的に、前後方向に沿った横方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。上述したように、乳母車本体11は、本体フレーム12及びハンドル48を有している。このうち本体フレーム12は、図1に示すように、それぞれ左右に配置された一対の前脚14と、それぞれ左右に配置された一対の後脚16と、それぞれ左右に配置された一対のアームレスト19と、それぞれ左右に配置された一対の第1リンク20と、を有している。
図1及び図2に示すように、前脚14の上端部分は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト19の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。同様に、後脚16の上端部分は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト19の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。また、第1リンク20の上方部分が、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト19の後方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。図2に示されているように、図示された例において、第1リンク20は、主リンク材21と、主リンク材21の上端部分に固定された上接続材22と、を有している。主リンク材21は、筒状に形成されている。上接続材22の一部分が、主リンク材21内に挿入されている。第1リンク20は、上接続材22において、アームレスト19の後端部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。
図1及び図2に示すように、本体フレーム12は、前脚14と回動可能(揺動可能)に接続された第2リンク25と、後脚16と回動可能(揺動可能)に接続された第3リンク30と、を有している。第1リンク20は、第2リンク25及び第3リンク30の少なくとも一方と回動可能(揺動可能)に接続される。第2リンク25は、第1リンク20及び第3リンク30の少なくとも一方と回動可能(揺動可能)に接続される。第3リンク30は、第1リンク20及び第2リンク25の少なくとも一方と回動可能(揺動可能)に接続される。
図1に示すように、図示された例において、第2リンク25をなす部材として、フレーム材26と、フレーム材26に固定された前接続材27及び後接続材28とが設けられている。フレーム材26は、曲げ加工された筒状部材からなっている。前接続材27及び後接続材28は、例えば樹脂成形物からなる。後接続材28の一部分が、筒状部材からなるフレーム材26内に挿入されている。フレーム材26は、前後方向に延びる一対の側部26aと、一対の側部26a間を前方にて連結する連結部26bと、を有してU字状をなしている。前接続材27は、一端部分を前脚14と回動可能に接続され、他端部分を側部26aの前方部分に固定されている。後接続材28は、側部26aの後端部分に固定されている。この例において、右側に位置するフレーム材26の側部26aと、この右側の側部26aに固定された右側の前接続材27及び後接続材28とによって、右側の第2リンク25が形成されている。同様に、左側に位置するフレーム材26の側部26aと、この左側の側部26aに固定された左側の前接続材27及び後接続材28とによって、左側の第2リンク25が形成されている。
図1に示すように、図示された例において、第3リンク30は、後脚16に回動可能に接続された主軸材31と、主軸材31の上端部分に固定された端部材32と、を有している。主軸材31は、筒状部材からなっている。端部材32の一部分が、主軸材31内に挿入されている。主軸材31は、下端部分において後脚16と回動可能に接続されている。
図示された例において、第1リンク20、第2リンク25及び第3リンク30は、同一の軸部材34を用いて、互いに回動可能に接続されている。この軸部材34は、第1リンク20の主リンク材21、第3リンク30の端部材32、及び、第2リンク25をなす後接続材28を貫通している。この構成により、第1リンク20、第2リンク25及び第3リンク30は、軸部材34によって画成される同一の軸線を中心として、互いに回動可能となっている。
また、図示された例において、図1及び図2に示すように、本体フレーム12は、ベースフレーム41及び上方フレーム42と、ベースフレーム41と上方フレーム42とを連結する連結フレーム43と、をさらに、有している。フレーム材26およびベースフレーム41には、ベース布材(図示せず)が張設される。ベース布材は、フレーム材26、ベースフレーム41、上方フレーム42及び連結フレーム43とともに、クッション性の座席材(図示せず)を支持する。ベースフレーム41及び上方フレーム42は、共にU字状に形成されている。ベースフレーム41は、その両端部において、軸部材34に貫通されている。そして、ベースフレーム41は、フレーム材26やその他の構成要素に対して回動可能(揺動可能)となっている。上方フレーム42は、その両端部において、アームレスト19の後端部分と回動可能(揺動可能)に接続されている。上方フレーム42のアームレスト19に対する回動軸線は、第1リンク20のアームレスト19に対する回動軸線と同一線上に位置している。ベースフレーム41及び上方フレーム42の間には、横方向に離間して一対の連結フレーム43が設けられている。連結フレーム43は、その両端において、ベースフレーム41及び上方フレーム42と回動可能に接続されている。
図1に示すように、本体フレーム12は、横方向に延びる構成要素として、一対の前脚14間を連結する前方連結材15と、一対の後脚16間を連結する後方連結材17と、を有している。前方連結材15は、フットレストとして機能する。また、一対の後接続材28間には、リンク連結材29が設けられている。前方連結材15、後方連結材17及びリンク連結材29によって、乳母車10の横方向への変形を抑制することができる。さらに、一対のアームレスト19間に可撓性を有したガード部材38が取り外し可能に設けられている。
以上の構成からなる本体フレーム12に対し、ハンドル48が揺動可能に連結されている。図1に示すように、本実施の形態において、ハンドル48は、互いに略平行に延びる一対の軸部48aと、一対の軸部48a間を連結する中間部48bと、を含んでいる。ハンドル48は、全体として略U字状の形状を有している。ハンドル48は、U字の両端部において、本体フレーム12と回動可能(揺動可能)に接続されている。ハンドル48は、軸部材34を用いて、本体フレーム12と回動可能に接続されている。したがって、第1リンク20、第2リンク25、第3リンク30、ベースフレーム41及びハンドル48は、軸部材34によって画成される同一の軸線を中心として、互いに対して回動可能となっている。
この乳母車本体11において、ハンドル48は、側面視において垂直軸よりも後方に傾斜する第1位置(背面押し位置)と、垂直軸よりも前方に傾斜する第2位置(対面押し位置)と、の間を揺動可能となっている。図1において、ハンドル48は、第1位置に配置されている。図2において、ハンドル48は、第2位置に配置されている。
以上の構成を有した乳母車10は、各構成部材を相対回動させることにより、折り畳むことができる。具体的には、第1位置に配置されたハンドル48をいったん後上方に引き上げ、その後、下方に押し下げることによって、第3リンク30を後脚16に対し図2において時計回り方向に回動させる。この操作にともなって、アームレスト19および第2リンク25は第1リンク20に対し図2において時計回り方向に回動する。このような操作により、側面視においてハンドル48と前脚14とが略平行に配置されるとともに、ハンドル48の配置位置が下げられるようになる。以上のようにして、図3に示すように、乳母車10を折り畳むことができる。図3の折り畳まれた状態では、乳母車10の前後方向および上下方向に沿った寸法を小型化することができる。一方、乳母車10を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の手順を踏めばよい。
ところで、乳幼児が乗車する乳母車10は、走行中、路面状態に応じて衝撃を受けることになる。このため、乳幼児への衝撃の伝達を抑制するため、従来の乳母車には振動を吸収するための手段が設けられている。一般的な振動吸収手段として、車輪保持ユニットへのサスペンション機構の設置や、乳幼児の座席材への特別な振動吸収性材料の付加等が、例示される。しかしながら、このような振動吸収手段は、単に製造コストを増加させるだけでなく、乳母車の重量化を引き起こす。乳母車の重量化は、乳母車の取り扱い性を悪化させるとともに、振動吸収性能の改善を阻害することにもなる。
一方、本実施の形態による乳母車10は、次に説明するように、乳母車10の重量化を抑制しながら乳母車10の振動吸収性能を効率的に向上させる工夫が施されている。すなわち、本実施の形態による乳母車10は、上述した各構成要素のいずれか一以上をなす部材として、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50(図4参照)が用いられている。具体的には、上述した乳母車10の前脚14、後脚16、後方連結部材17、第1リンク20をなす主リンク材21、第2リンク25をなすフレーム材26、リンク連結材29、第3リンク30をなす主軸材31、ベースフレーム41、上方フレーム42、及び、連結フレーム43、及び、ハンドル48のいずれか一以上の少なくとも一部分に、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50が、用いられている。
筒状部材50は、いわゆる炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)からなる層51,52,53を含んでいる。炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維55及び樹脂56の複合材料である。炭素繊維強化プラスチック層51,52,53は、筒状部材50の肉厚方向における一部分を占める筒状の層となっている。
炭素繊維55として、公知の繊維、例えば、PAN系繊維(ポリアクリロニトリル繊維)や、コールタールなど石油系原料とした繊維(ピッチ系繊維)を使用することができる。炭素繊維55は、高い比強度および比弾性率を有し、且つ、耐食性にも優れる。とりわけ、炭素繊維55は、高い比弾性率に関連して、振動減衰性にも優れている。さらに、炭素繊維55は、線膨張率が小さくて安定性に優れるとともに、疲労特性にも優れる。
樹脂56は、バインダーとして機能する層である。樹脂56として、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を例示することができる。熱硬化性樹脂を樹脂56として用いた筒状部材50は、耐割れ性に優れ且つ十分な強度を有することができる。
また、樹脂56として、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルテフタレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂を樹脂56として用いた筒状部材50は、曲げ加工に適している。デザイン性を付与する目的や折り畳み動作を実現する目的から、乳母車10の各構成要素として、曲げ加工を施された筒状部材を用いることも多い。したがって、熱可塑性樹脂を用いた筒状部材50は、乳母車10の構成要素として好適である。
炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50は、アルミニウム合金等からなる従来の金属製パイプと比較して、軽くて、優れた柔軟性を有している。したがって、この筒状部材50を乳母車10に適用することによって、乳母車10の軽量化を図ることが可能となるとともに、乳母車10の振動吸収性能を向上させることができる。とりわけ乳母車10の構造自体によって当該乳母車10の振動吸収性能を改善することができるので、振動吸収のための特別な機構、部品、材料等を乳母車10に設ける必要性を排除することができる。したがって、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50は、従来の金属製パイプを用いた乳母車と比較して、強度を維持しつつ大幅な軽量化を実現することができる。そもそも振動吸収性能の改善は、乳母車10の軽量化自体によっても実現され得る。結果として、単に重量化を防止するのではなく、積極的に軽量化を図りながら、しかも乳母車10の振動吸収性能を、構成要素の軽量化および柔軟化の両面から相乗的に、向上させることができる。以上の作用効果は、重量化を伴いながら振動吸収性能の改善を図っていた従来の技術水準から予測し得る範囲を超える効果であり、且つ、顕著または異質な効果でもある。
図6に示された例のように、筒状部材50は、肉厚方向dtにおける異なる位置に配置された複数の層51,52,53を有しており、各層51,52,53は炭素繊維55を含んでいる。ただし、この複数の層51,52,53の間で、炭素繊維55の長手方向は互いに異なっている。炭素繊維強化プラスチック層は、炭素繊維の長手方向に高い弾性率を有し、且つ、炭素繊維の長手方向に高い強度を有する。したがって、炭素繊維の長手方向の向きを調節することにより、筒状部材50の弾性率及び強度に異方性を付与することができる。したがって、炭素繊維55の長手方向が互いに異なる複数の層51,52,53を含んだ筒状部材50によれば、筒状部材50が適用されるようになる乳母車10の構成要素として好適な機械的性質を、発揮することが可能となる。したがって、このような筒状部材50によれば、乳母車10に対して作用する種々の方向からの外力に対し、十分な剛性および十分な振動吸収機能の両方を持つことができる。
とりわけ図4に示された例において、筒状部材50は、炭素繊維55の長手方向d1が筒状部材50の軸線方向dlに沿っている第1層51と、炭素繊維55の長手方向d2が筒状部材50の周方向dcに沿っている第2層52と、炭素繊維55の長手方向d3が筒状部材50の軸線方向dlに沿っている第3層53と、を有している。第2層52は、筒状部材50の肉厚方向dtにおいて第1層51及び第3層53の間に位置している。図4に示された筒状部材50では、第1層51が、最内層に位置して、筒状部材50の内面50aを形成している。一方、第3層53が、最外層に位置して、筒状部材50の外面50bを形成している。また、第2層52は、第1層51及び第3層53の両方に隣接している。第1層51、第2層52及び第3層53は、いずれも円筒状の輪郭を有する層となっている。
ここで、筒状部材50についての軸線方向dlとは、図4に示すように、筒状部材50の一対の開口を結ぶ方向である。筒状部材50についての周方向dcとは、図4に示すように、軸線方向dlに直交し且つ軸線方向dlを取り囲む周状の方向である。筒状部材50についての肉厚方向dtとは、図4に示すように、軸線方向dl及び周方向dcの両方に直交する方向である。図4に示された円筒状の筒状部材50においては、軸線方向dlに直交する断面において筒状部材50の中心から放射方向に延び出る方向に一致する。
また、「炭素繊維の長手方向が筒状部材の軸線方向に沿っている」とは、対象となる層51,53内のすべての炭素繊維55の長手方向d1,d3が、筒状部材50の軸線方向dlと厳密に平行となっている必要はなく、対象となる層51,53内の炭素繊維55の長手方向d1,d3が筒状部材50の軸線方向dlに対して20°以下の角度をなすように傾斜している状態を含む意味である。同様に、「炭素繊維の長手方向が筒状部材の周方向に沿っている」とは、対象となる層52内のすべての炭素繊維55の長手方向d2が、筒状部材50の周方向dcと厳密に平行となっている必要はなく、対象となる層52内の炭素繊維55の長手方向d2が筒状部材50の軸線方向dlに対して20°以下の角度をなすように傾斜している状態を含む意味である。
このような第1〜第3層51,52,53を含む筒状部材50は、まず、筒状部材50を軸線方向dlへ圧縮する力及び筒状部材50を軸線方向dlへの圧縮力及び引っ張り力に対して十分な振動吸収性能および強度を有するようになる。加えて、第1〜第3層51,52,53を含む筒状部材50によれば、筒状部材50を曲げる力に対しても、十分な振動吸収性能および強度を有するようになる。したがって、第1〜第3層51,52,53を含む筒状部材50は、軸線方向dlに沿った大きな圧縮力及び引っ張り力、並びに、曲げようとする力が加えられやすい構成要素、例えば、前脚14、後脚16及びハンドル48をなす素材として好適に使用され得る。
第1〜第3層51,52,53を含む筒状部材50が、当該筒状部材50の軸線方向dlへの圧縮力および引っ張り力に対して並びに当該筒状部材50を曲げようとする力に対して極めて優れた振動吸収性能および強度を持つようになるメカニズムの詳細は不明であるが、以下の点が一要因であると推定される。ただし、本発明は以下の推定に拘束されない。
まず、筒状部材50の軸線方向dlへの圧縮力および引っ張り力は、筒状部材50の軸線方向dlに沿った応力を筒状部材50に加える。次に、筒状部材50を曲げようとする力も、筒状部材50の軸線方向dlに沿った応力を筒状部材50に加えることになる。一方、炭素繊維55は、その長手方向に対して、優れた弾性および強度を示す。そして、第1層51及び第3層53では、炭素繊維55が、筒状部材50の軸線方向dlに延びている。したがって、筒状部材50の軸線方向dlへの圧縮力および引っ張り力、並びに、筒状部材50を曲げようとする力に対して、筒状部材50の第1層51及び第3層53は、十分に優れた振動吸収性能および十分な強度を発揮するようになる。とりわけ、第1層51及び第3層53は、第2層52が介在することによって、肉厚方向dtに離間して配置されている。このため、筒状部材50の肉厚方向dtに外力を分散させることができる。これにより、筒状部材50に局所的に大きな力が加えられることによる筒状部材50の破壊を効果的に防止することができる。加えて、第2層52の炭素繊維55は筒状部材50の周方向dcに延びていることから、筒状部材50が拡径するように変形すること及び縮径するように変形することを規制し、筒状部材50が軸線方向dlに沿って割れることを効果的に防止することができる。
なお、本件発明者らが確認したところ、第1層51及び第3層53内の炭素繊維55が、筒状部材50の軸線方向dlに対して20°より大きな角度で傾斜しておらず、且つ、第2層52内の炭素繊維55が、筒状部材50の周方向dcに対して20°より大きな角度で傾斜していない場合、筒状部材50の軸線方向dlへの圧縮力および引っ張り力、並びに、筒状部材50を曲げようとする力に対して、筒状部材50は十分な振動吸収性能および十分な強度を発揮することができた。その一方で、第1層51及び第3層53内の炭素繊維55が筒状部材50の軸線方向dlに対して大きく傾斜する、或いは、第2層52内の炭素繊維55が筒状部材50の周方向dcに対して大きく傾斜すると、筒状部材50の割れを引き起こし得る捻り力が筒状部材50に生じた。
次に、図5を参照して、筒状部材50の製造方法の一例を説明する。以下に説明する製造方法において、筒状部材50は、引き抜き成形法によって連続的に作製され、且つ、作製された筒状部材50は、継ぎ目を持たない。継ぎ目が存在しないことにより、得られた筒状部材50の耐割れ性を優れたものとすることができる。
まず、筒状部材50を製造するための製造装置60について説明する。図5に示すように、筒状部材50を製造するための製造装置60は、貫通孔61aが形成された金型61と、金型61内に延び入ったマンドレル62と、炭素繊維55を繰り出す炭素繊維供給装置63と、樹脂組成物65を保持した樹脂組成物槽64と、筒状部材50を引き抜く引き抜き装置66と、筒状部材50を所望の長さに断裁する切断装置67と、を有している。図示された製造装置60は、作製されるべき筒状部材50の第1〜第3層51,52,53に対応して、三つの炭素繊維供給装置63a,63b,63c及び三つの樹脂組成物槽64a,64b,64cが設けられている。金型61の貫通孔61aの孔形状は、作製されるべき筒状部材50の外形状と相補的となっている。マンドレル62の外形状は、作製されるべき筒状部材50の内形状と相補的となっている。すなわち、作製される筒状部材50は、金型61の貫通孔61aとマンドレル62との間の隙間の形状に対応した形状を有するようになる。
次に、製造装置60を用いて筒状部材50を製造する方法について説明する。図5に示すように、まず、マンドレル62上に、炭素繊維55及び樹脂組成物65を配置する。具体的には、炭素繊維55が第1炭素繊維供給装置63aから繰り出される。第1炭素繊維供給装置63aから繰り出された炭素繊維55は、第1樹脂組成物槽64aで樹脂組成物65内を通過する。したがって、マンドレル62上に配置された炭素繊維55の周囲には、樹脂組成物65が付着している。炭素繊維55は、その長手方向がマンドレル62の長手方向に沿うようにして、マンドレル62上に配置される。
次に、炭素繊維55が第2炭素繊維供給装置63bから繰り出され、この炭素繊維55は、第2樹脂組成物槽64bに貯留された樹脂組成物65内を通過する。第2炭素繊維供給装置63bからの炭素繊維55は、第2樹脂組成物槽64b内の樹脂組成物65とともに、マンドレル62上に配置された第1炭素繊維供給装置63aからの炭素繊維55及び第1樹脂組成物槽64a内に貯留されていた樹脂組成物65の層上に積層される。図5に示すように、第2炭素繊維供給装置63bからの炭素繊維55は、マンドレル62を周回するようにして螺旋状に配置される。
さらに、炭素繊維55が第3炭素繊維供給装置63cから繰り出され、この炭素繊維55は、第3樹脂組成物槽64cに貯留された樹脂組成物65内を通過する。第3炭素繊維供給装置63cからの炭素繊維55は、第3樹脂組成物槽64c内の樹脂組成物65とともに、マンドレル62上に配置された第2炭素繊維供給装置63bからの炭素繊維55及び第2樹脂組成物槽64b内に貯留されていた樹脂組成物65の層上に積層される。図5に示すように、第3炭素繊維供給装置63cからの炭素繊維55は、その長手方向がマンドレル62の長手方向に沿うようにして、マンドレル62上に配置される。
なお、第1〜第3炭素繊維供給装置63a〜63cから繰り出される炭素繊維55は、筒状部材50の第1〜第3層51,52,53の炭素繊維55をなすようになる。したがって、第1〜第3炭素繊維供給装置63a〜63cから繰り出される炭素繊維55として、上述したように、PAN系繊維やピッチ系繊維等の公知な炭素繊維を用いることができる。第1〜第3炭素繊維供給装置から繰り出される炭素繊維55は、同一種類の炭素繊維であってもよいし、異なる種類の炭素繊維であってもよい。
また、第1〜第3樹脂組成物槽64a〜64cに貯留された樹脂組成物65は、それぞれ、筒状部材50の第1〜第3層51,52,53の樹脂56をなすようになる。したがって、第1〜第3樹脂組成物槽64a〜64cに貯留された樹脂組成物65は、上述した熱硬化性や熱可塑性の樹脂を、例えば溶剤等とともに含んだ組成物とすることができる。第1〜第3樹脂組成物槽64a〜64cに貯留された樹脂組成物65は、同一種類の樹脂を含むようにしてもよいし、異なる種類の樹脂を含むようにしてもよい。
炭素繊維55及び樹脂組成物65を含む層の積層体は、マンドレル62と金型61との間の隙間に供給される。ここで金型61は、樹脂組成物を乾燥させるとともに、必要に応じて硬化させる。この結果、マンドレル62上に筒状部材50が作製される。作製された筒状部材50は、引き抜き装置66によってマンドレル62から連続的に引き抜かれ、切断装置67によって所望の長さに切断される。以上のようにして、筒状部材50を製造することができる。
ところで、一般的に、乳母車の構成要素として使用される筒状の部材、典型的には金属製パイプの肉厚を薄くしていくと、当該金属製パイプは、乳母車の使用中に、その端部に割れを生じさせるようになる。上述した炭素繊維55及び樹脂56を含む筒状部材50については、炭素繊維55と樹脂56との界面に亀裂が生じやすくなり、この結果、端部に割れが発生する傾向がより顕著となることがある。
一方、乳母車の構成要素として筒状の部材を使用する場合、筒状の部材は、単独で構成要素をなすのではなく、殆どの場合、その端部に固定された端部部品とともに一つの構成要素をなしている。端部部品は、通常、樹脂成形物からなり、所望の形状を容易に付与され得る。そして、端部部品は、加工性に限界がある金属製パイプ等に代わり、他の構成要素との接続箇所を形成する。また、端部部品は、筒状の部材の端面を覆うことにより、乳母車の安全性や意匠性を改善する。図示された乳母車10においては、例えば、第1リンク20をなす主リンク材21が筒状部材に相当し、上接続材22が端部部品に相当し得る。また、第2リンク25をなすフレーム材26が筒状部材に相当し、後接続材28が端部部品に相当し得る。さらに、第3リンク30の主軸材31が筒状部材に相当し、端部材32が端部部品に相当し得る。
今般、本件発明者らが、筒状の部材への端部部品の固定方法について検討を重ねたところ、所定の固定状態を確保することにより、筒状の部材の端部への割れの発生を極めて効果的に防止し得ることを知見した。すなわち、以下に説明する固定方法を採用することにより、従来の金属製パイプと比較して若干割れが生じ易くなり得る上述の筒状部材50を、割れの発生を効果的に抑制しながら、乳母車10の構成要素として安定して使用することが可能となる。さらに、以下に説明する固定方法を採用することにより、筒状部材50の肉厚を薄くすることも可能となり、乳母車10の軽量化及び材料費の削減を図ることができる。
以下、図6及び図7を主として参照して、端部部品70の筒状部材50への固定方法について説明する。なお、図6〜図9に示された筒状部材50及び端部部品70は、組み合わさって図1〜図3に示された前脚14をなしている。この前脚14は、端部部品70においてアームレスト19に接続され、筒状部材50の下端に車輪45を保持するキャスターが取り付けられている。
図1〜図3及び図6に示すように、端部部品70は、筒状部材50の一方の開口した端部に固定されている。図6及び図7に示すように、端部部品70は、第1部材(主部材)71と、第1部材71とは別体として形成された第2部材(別部材、補助部材)72を、有している。すなわち、端部部品70は、二つの部材によって形成されている。
図6及び図7に示すように、第1部材71は、基部74と、基部74と一体的に形成された内方支持部75と、を有している。図示された例において、基部74は、アームレスト19と接続される部位となっている。内方支持部75は、筒状または柱状に形成されて、基部74から延び出している。内方支持部75は、筒状部材50の一方の開口から筒状部材50内に挿入される。図示された例において、内方支持部75は、円筒状に形成されている。内方支持部75をなす円筒の外周面は、筒状部材50の内面50aのうちの筒状部材50の端面50cに隣接する部分50a1(図6参照)に、筒状部材50の肉厚方向dtにおける内方から、周状の領域で対面する内方対向面75aを形成している。
図6及び図7に示すように、第2部材72は、外方支持部76と、外方支持部76と一体的に形成されたフランジ部77と、を有している。外方支持部76は、筒状に形成されており、筒状部材50の一方の端部が外方支持部76内に挿入される。図示された例において、外方支持部76は、筒状部材50の円筒状の形状に対応して、円筒状に形成されている。外方支持部76をなす円筒の内周面は、筒状部材50の外面のうちの筒状部材50の端面50cに隣接する部分50b1(図6参照)に、筒状部材50の肉厚方向dtにおける外方から、周状の領域で対面する外方対向面76aを形成している。フランジ部77は、外方支持部76の端部から、筒状部材50の肉厚方向dtにおける内方に延び出している。フランジ部77は、筒状部材50の端面50cに、筒状部材50の軸線方向dlにおける外方から対面する。また、図6に示すように、フランジ部77は、周状に形成されている。第1部材71の内方支持部75は、第2部材72を貫通して、筒状部材50内に延び入っている。フランジ部77は、第1部材71の基部74と筒状部材50の端面50cとの間に狹持されている。
図7によく示されているように、端部部品70の内方支持部75に一対の貫通孔75bが形成されている。また、筒状部材50にも、一対の貫通孔50dが形成されている。端部部品70を筒状部材50の端部に取り付けた状態において、端部部品70の一対の貫通孔75bと筒状部材50の一対の貫通孔50dは、一直線上に並ぶ。そして図6に示すように、ピンやリベット等からなる固定具78が、貫通孔75b,50dを貫通して筒状部材50に固定されている。以上の構成にて、端部部品70が、筒状部材50の端部に固定されている。
以上のように、端部部品70は、筒状部材50の内面50aに周状の領域で対面する内方対向面75aを有した内方支持部75と、筒状部材50の外面50bに周状の領域で対面する外方対向面76aを有した外方支持部76と、を有している。本件発明者らが確認したところ、この端部部品70を筒状部材50の端部に取り付けることにより、筒状部材50の端面50cから裂けるようにして生じることがあった筒状部材50の割れを効果的に防止することができた。端部部品70による割れ防止機能の詳細な理由は不明であるが、筒状部材50の端面50cに隣接する領域において、外方支持部76によって筒状部材50が膨脹することを規制し得るとともに、内方支持部75によって筒状部材50の壁部が内方に倒れ込むこと(座屈すること)を規制し得ることが、一要因であると推定される。
端部部品70によって筒状部材50の割れを効果的に防止することが可能となると、優れた振動吸収性能を有する一方で従来の金属製パイプと比較すると割れが生じ易いと言える上述の筒状部材50を、より安定して使用することができる。また、筒状部材50の肉厚を薄くすることも可能となる。薄肉化された筒状部材50は、軽量化を実現することができるとともに、よりすぐれた柔軟性を持つことができる。結果として、端部部品70との組み合わせにおいて筒状部材50を乳母車10に使用することにより、乳母車10の重量化を回避しながら、振動吸収性能を相乗的に向上させることができる。
以上のような本実施の形態によれば、従来の金属製パイプに代えて、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50を用いることができる。炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50は、軽くて、優れた柔軟性を有している。したがって、乳母車10の軽量化を図ることが可能となるとともに、乳母車10の振動吸収性能を向上させることができる。とりわけ乳母車10のフレーム構造自体によって当該乳母車10の振動吸収性を改善することができるので、振動吸収のための特別な機構、部品、材料等を乳母車に設ける必要性を排除することができる。したがって、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50は、従来の金属製パイプと比較して、強度を維持しつつ大幅に軽量化を実現することが可能となる。以上のことから、単に重量化を防止するのではなく、積極的に軽量化を図りながら、しかも乳母車10の振動吸収性能を大幅に向上させることができる。
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
まず、上述した実施の形態において筒状部材50の一具体例を例示したが、筒状部材50は、上述した実施の形態とは異なる構成を有するようにしてもよい。例えば、各層51,52,53における炭素繊維55の長手方向を、上述した実施の形態と変更してもよい。また、筒状部材50が、第1層51、第2層52及び第3層53に加えて、更なる一以上の層を含むようにしてもよい。更なる層は、炭素繊維55及び樹脂56を含む層であってもよいし、炭素繊維55以外の繊維と樹脂56とを含む層であってもよいし、単なる樹脂層であってもよい。
また、炭素繊維55及び樹脂56を含んだ筒状部材50は、直線状に形成されていてもよいし、曲げ加工を施される等して少なくなくとも一部分が曲線状に形成されていてもよい。筒状部材50に曲げ加工を施す場合、筒状部材50の樹脂56は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いた筒状部材50は、加熱した状態で曲げ加工を行うことにより、筒状部材50への割れの発生を効果的に防止することができる。
さらに、内方支持部75及び外方支持部76を有した端部部品70は、図6及び図7に示された例に限定されることなく、種々の形態にて、乳母車10に適用することができる。例えば、図6及び図7に示された端部部品70は、基部74及び内方支持部75を含む第1部材71と、外方支持部76及びフランジ部77を含む第2部材72と、を有していたが、この例に限られず、図8に示すように、端部部品70が、基部74及び外方支持部76を含む第1部材81と、内方支持部75及びフランジ部83を含む第2部材82と、を有するようにしてもよい。図8に示された例において、第1部材81の基部74及び外方支持部76は一体的に形成されており、外方支持部76は外方対向面76aを形成している。また、第2部材82の内方支持部75及びフランジ部83は一体的に形成されており、内方支持部75は、内方対向面75aを形成している。第2部材82の内方支持部75は、筒状または円柱状に形成される。第2部材82のフランジ部83は、内方支持部75の端部から、筒状部材50の肉厚方向における外方に延び出している。フランジ部83は、筒状部材50の端面50cに対面して配置されている。第1部材81の外方支持部76は、筒状に形成されている。第2部材82は、筒状に形成された外方支持部76の内部に配置されている。基部74は、筒状部材50の端面50cとの間で第2部材82のフランジ部83を狹持する底面部74bを有している。なお、図6及び図7に示された例においては、外方支持部76が内方支持部75よりも短くなっているが、図8に示された例においては、外方支持部76が内方支持部75よりも長くなっている。第1部材81が、固定具78を介して筒状部材50に固定され、第1部材81は、筒状部材50との間で第2部材82を狹持する。図8に示された端部部品70によっても、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏すること、すなわち、筒状部材50の割れを効果的に防止することが可能となる。
また、図6〜図8に示された端部部品70は、別体として形成された第1部材71及び第2部材72を有していたが、この例に限られず、図9又は図10に示すように、端部部品70が、単一の部材として形成されていてもよい。図9又は図10に示された端部部品70では、内方支持部75及び外方支持部76の両方が、基部74から突出している。筒状部材50の端面50cは、内方支持部75と外方支持部76との間に形成された支持部間面74aに対面するようになる。なお、図9に示された例では、内方支持部75が外方支持部76よりも長くなっているが、図10に示された例のように、内方支持部75が外方支持部76よりも短くなっていてもよい。このような端部部品70によっても、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏すること、すなわち、筒状部材50の割れを効果的に防止することが可能となる。
さらに、上述した端部部品70と筒状部材50との組み合わせにおいて、筒状部材50は、端部部品70を介して他の構成要素、例えばアームレスト19と接続される例を示した。しかしながら、図11に示すように、端部部品70を筒状部材50に固定するための固定具79を介して、筒状部材50が他の構成要素と接続されるようにしてもよい。すなわち、図11に示された筒状部材50は、端部部品70が設けられている部分において、乳母車10の他の構成要素と接続されている。図11に示された例において、筒状部材50は、図1〜図3に示されたハンドル48の軸部48aを形成し、端部部品70は、筒状部材50の端部の開口を塞ぐキャップ材を構成する。このような筒状部材50においても、その使用中に端面50cから裂けるようにして割れが生じる可能性がある。そして、図11に示された端部部品70によっても、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏すること、すなわち、筒状部材50の割れを効果的に防止することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態において説明した乳母車10の全体構成は、単なる例に過ぎない。例えば、特開2011−148454に開示された乳母車のように、前後方向に小型化するように折り畳んだ後にさらに折り畳んで幅方向にも小型化させ得るよう、乳母車が構成されていてもよい。具体的には、乳母車10の幅方向に延びる部材、すなわち、ハンドル48の中間部48b、前方連結材15、後方連結材17、リンク連結材29、ベースフレーム41及び上方フレーム42等がヒンジ(屈曲点)を有し、これらの部材が、上述したように前後方向に小型化するように折り畳まれた後に、さらに、ヒンジを中心として屈曲し得るようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において説明した乳母車10において、ハンドル48が背面押し位置(後方位置)と対面押し位置(前方位置)との間を揺動可能に構成されている例を示した。すなわち、上述した実施の形態では、ハンドル48が第1リンク20とは別途に設けられ、ハンドル48が乳母車本体11の本体フレーム12に対して揺動可能に構成されている例を示した。しかしながら、例えば図12に示すように、ハンドル48が後方位置に固定され、背面押し位置から揺動不可能に乳母車10が構成されていてもよい。図12に示す例においては、ハンドル48の軸部48aの下端部に相当する部分によって、一対の第1リンク20が構成されている。言い換えると、第1リンク20が、アームレスト19との連結箇所を越えてさらに延び、ハンドル48の一部分を構成するようになっている。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
10 乳母車
11 乳母車本体
12 本体フレーム
14 前脚
15 前方連結材
16 後脚
17 後方連結材
19 アームレスト
20 第1リンク
21 主リンク材
22 上接続材
25 第2リンク
26 フレーム材
26a 側部
26b 連結部
27 前接続材
28 後接続材
29 リンク連結材
30 第3リンク
31 主軸材
32 端部材
34 軸部材
38 ガード部材
41 ベースフレーム
42 上方フレーム
43 連結フレーム
45 車輪
48 ハンドル
48a 軸部
48b 中間部
50 筒状部材
50a 内面
50b 外面
50c 端面
50d 貫通孔
51 第1層
52 第2層
53 第3層
55 炭素繊維
56 樹脂
60 製造装置
61 金型
61a 貫通孔
62 マンドレル
63 炭素繊維供給装置
631 第1炭素繊維供給装置
632 第2炭素繊維供給装置
633 第3炭素繊維供給装置
64 樹脂組成物槽
641 第1樹脂組成物槽
642 第2樹脂組成物槽
643 第3樹脂組成物槽
65 樹脂組成物
66 引き抜き装置
67 切断装置
70 端部部品
71 第1部材
72 第2部材
74 基部
74a 支持部間面
74b 底面部
75 内方支持部
75a1 内方対向面
75b 貫通孔
76 外方支持部
76a 外方対向面
77 フランジ部
78 固定具
79 固定具

Claims (14)

  1. 炭素繊維および樹脂を含んだ筒状部材と、
    前記筒状部材の少なくとも一方の開口した端部に固定された端部部品と、を備え、
    前記端部部品は、樹脂成形物として形成され、
    前記筒状部材内に挿入される内方支持部であって、前記筒状部材の内面に周状の領域で対面する内方対向面を有した内方支持部と、
    前記筒状部材の外面に周状の領域で対面する外方対向面を有した外方支持部と、を有し、
    前記内方支持部又は前記外方支持部に設けられた一対の貫通孔および前記筒状部材に設けられた一対の貫通孔を貫通して前記筒状部材に固定された固定具を更に備える、乳母車。
  2. 前記端部部品は、樹脂成形物である、請求項1に記載の乳母車。
  3. 前記筒状部材は、肉厚方向における異なる位置に配置された複数の層であって、各層が炭素繊維を含んでいる、複数の層を有し、
    前記複数の層の間で、前記炭素繊維の長手方向が互いに異なっている、請求項1又は2に記載の乳母車。
  4. 前記筒状部材は、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の軸線方向に沿っている第1層と、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の周方向に沿っている第2層と、前記炭素繊維の長手方向が前記筒状部材の軸線方向に沿っている第3層と、を有し、
    前記第2層は、前記筒状部材の肉厚方向において前記第1層及び前記第3層の間に位置している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳母車。
  5. 前記樹脂は、熱硬化性樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳母車。
  6. 前記樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
    前記筒状部材は、曲がっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳母車。
  7. 前記筒状部材は、引き抜き成形法によって筒状に形成された炭素繊維強化プラスチックからなる部材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳母車。
  8. 前記端部部品は、
    前記内方支持部と、前記内方支持部と一体的に形成された基部と、を有する第1部材と、
    前記第1部材とは別途に形成され、前記外方支持部と、前記外方支持部の端部から延び出して前記筒状部材の端面に対面するフランジ部と、を有する第2部材と、を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の乳母車。
  9. 前記端部部品は、
    前記外方支持部と、前記外方支持部と一体的に形成された基部と、を有する第1部材と、
    前記第1部材とは別途に形成され、前記内方支持部と、前記内方支持部の端部から延び出して前記筒状部材の端面に対面するフランジ部と、を有する第2部材と、を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の乳母車。
  10. 前記端部部品は、前記内方支持部及び前記外方支持部の両方と一体的に形成された基部をさらに有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の乳母車。
  11. 前脚、後脚及びハンドルを備え、
    前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚及び前記ハンドルのうちの一以上の少なくとも一部分を形成している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の乳母車。
  12. 前脚および後脚と、
    前記前脚および前記後脚と回動可能に接続されたアームレストと、
    前記アームレストと回動可能に接続された第1リンクと、
    前記前脚と回動可能に接続された第2リンクと、
    前記後脚と回動可能に接続された第3リンクと、を備え、
    前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
    前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク及び前記第3リンクのうちの一以上の少なくとも一部分を形成している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の乳母車。
  13. 一対の前脚および一対の後脚と、
    前記前脚および前記後脚と回動可能に接続された一対のアームレストと、
    前記アームレストと回動可能に接続された一対の第1リンクと、
    前記前脚と回動可能に接続された一対の第2リンクと、
    前記後脚と回動可能に接続された一対の第3リンクと、
    前記一対の後脚を連結する後方連結材と、
    前記一対の第2リンクを連結するリンク連結材と、を備え、
    前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
    前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク、前記後方連結材及び前記リンク連結材のうちの一以上の少なくとも一部分を形成している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の乳母車。
  14. 前脚および後脚と、
    前記前脚および前記後脚と回動可能に接続されたアームレストと、
    前記アームレストと回動可能に接続された第1リンクと、
    前記前脚と回動可能に接続された第2リンクと、
    前記後脚と回動可能に接続された第3リンクと、
    前記第1リンク、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一以上と回動可能に接続されたハンドルと、を備え、
    前記第1リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第2リンクは、前記第1リンク及び前記第3リンクの少なくとも一方と回動可能に接続され、
    前記第3リンクは、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と回動可能に接続されており、
    前記筒状部材は、前記前脚、前記後脚、前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び前記ハンドルのうちの一以上の少なくとも一部分を形成している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の乳母車。
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