以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るソレノイドバルブ100について説明する。
ソレノイドバルブ100は、流体圧供給源(図示省略)から流体圧機器等(図示省略)に導かれる作動流体の流量を制御するものである。以下の実施形態では、作動流体が作動油である場合について説明する。作動流体は、作動油に限らず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
まず、図1から図3を参照して、ソレノイドバルブ100の全体構成について説明する。なお、図1及び図3における矢印は、作動油の流れを模式的に示すものである。
図1に示すように、ソレノイドバルブ100は、有底筒状のバルブボディ1と、バルブボディ1内に摺動自在に設けられる弁体としてのスプール10と、バルブボディ1内に設けられスプール10を付勢する付勢部材としてのコイルばね9と、を備える。
バルブボディ1内は、中央に貫通孔2Aを有する仕切壁2によって、第一圧力室3と第二圧力室4とに区画される。第一圧力室3と第二圧力室4とは、仕切壁2の貫通孔2Aを通じて連通する。
バルブボディ1には、作動油が流れるバルブ通路としての流入通路5及び流出通路6が軸方向に並んで形成される。
流入通路5は、第一圧力室3に開口する単一の流入ポート5Aを通じて第一圧力室3に連通する。流入通路5は、図示しない配管等を介して流体圧供給源と連通して、作動油を第一圧力室3に導く。
流出通路6は、第二圧力室4に開口する単一の流出ポート6Aを通じて第二圧力室4に連通する。流出通路6は、図示しない配管等を介して油圧機器等と連通して、第二圧力室4から流出する作動油を油圧機器等に導く。
スプール10は、バルブボディ1のボディ開口部1Aに摺動自在に挿入される第一ランド部11と、バルブボディ1の底部に形成される凹部1Bに摺動自在に挿入される第二ランド部12と、第一ランド部11と第二ランド部12との間に形成される第三ランド部13と、を有する。また、スプール10は、第一ランド部11及び第三ランド部13よりも小径に形成されて第一ランド部11と第三ランド部13とを連結する第一小径部14と、第二ランド部12及び第三ランド部13よりも小径に形成されて第二ランド部12と第三ランド部13とを連結する第二小径部15と、を有する。
第一ランド部11の端部には、後述するソレノイド20のシャフト24が接触する。第二ランド部12には、コイルばね9の一部が収容されるばね収容凹部16が形成される。
第三ランド部13は、仕切壁2の貫通孔2Aに沿って摺動可能に形成されると共に、スプール10の移動に伴い、仕切壁2の貫通孔2Aを開閉するように形成される。図1に示すように、第三ランド部13が仕切壁2の貫通孔2Aを閉じた状態では、第一圧力室3と第二圧力室4との連通が遮断される。スプール10が移動すると、第三ランド部13によって貫通孔2Aが開かれ、第一圧力室3と第二圧力室4とが連通する(図2参照)。このように、スプール10は、第三ランド部13によって仕切壁2の貫通孔2Aを開閉して、第一圧力室3から第二圧力室4へ向かう作動油の流れを制御する。
コイルばね9は、スプール10における第二ランド部12のばね収容凹部16とバルブボディ1の底部1Cとの間に圧縮状態で介装される。コイルばね9は、第三ランド部13が仕切壁2の貫通孔2Aを閉じる方向(図1中右方向)にスプール10を付勢する。
バルブボディ1には、作動油の一部をバルブボディ1外に排出するドレン通路が設けられる。具体的には、ドレン通路は、バルブボディ1のボディ開口部1Aとバルブボディ1の外部のタンク40とを連通させ、バルブボディ1のボディ開口部1Aに浸入した作動油をタンク40へ排出する第一ドレン通路7と、バルブボディ1の凹部1Bとタンク40とを連通させ、バルブボディ1の凹部1Bに浸入した作動油をタンク40へ排出する第二ドレン通路8と、を有する。バルブボディ1のボディ開口部1A及び凹部1Bに浸入した作動油が第一ドレン通路7及び第二ドレン通路8を通じて排出されることにより、ボディ開口部1A及び凹部1Bに浸入した作動油の圧力によってスプール10が押圧されることが防止される。よって、ソレノイドバルブ100の制御性の低下を防止することができる。
ソレノイドバルブ100は、スプール10を軸方向に移動させるソレノイド20をさらに備える。
ソレノイド20は、電流が流れると磁力を発生するコイル21と、磁性体によって形成されコイル21を囲う筒状のヨーク22と、コイル21の内側に設けられコイル21が発生する磁力によって励磁されるステータコア23と、スプール10と共に軸方向に沿って移動可能なシャフト24と、シャフト24の外周に固定されるプランジャ25と、を有する。
コイル21は、筒状のボビン21Aに電線を巻付けることにより形成される。コイル21は、端子(図示省略)を通じて供給される電流が流れることによって磁力を発生する。ボビン21Aとコイル21とは、樹脂材(図示省略)によってモールド成形され、一体化される。
ヨーク22は、有底円筒状に形成され、バルブボディ1におけるボディ開口部1A側の端面に当接して固定される。バルブボディ1と当接するヨーク22の端面には、ステータコア23が挿通するヨーク開口部22Aが形成される。
ステータコア23は、ボビン21Aの内側に設けられる円筒状部材である。ステータコア23は、ヨーク22のヨーク開口部22Aを挿通する第一ステータコア23Aと、第一ステータコア23Aと隙間を空けて直列に配置される第二ステータコア23Bと、第一ステータコア23Aと第二ステータコア23Bとの外周を連結する連結部材23Cと、から構成される。第一ステータコア23A及び第二ステータコア23Bは磁性体によって形成され、連結部材23Cは非磁性体によって形成される。
シャフト24は、第一ステータコア23Aの内周に設けられる第一軸受26及び第二ステータコア23Bの内周に設けられる第二軸受27によって、軸方向に摺動自在に支持される。シャフト24の先端は、スプール10の第一ランド部11と接触する。これにより、シャフト24の移動に伴いスプール10が移動する。
プランジャ25は、磁性体によって形成され、シャフト24に対してずれが生じないように、かしめ等の方法によりシャフト24に固定される。プランジャ25には、コイル21の磁力によって第一ステータコア23Aへ向かうように吸着力が作用して、進退する。
ソレノイドバルブ100は、第一圧力室3及び第二圧力室4内の作動油の一部をバルブボディ1外へ排出する逃がし通路をさらに備える。
逃がし通路は、第一圧力室3と第一ドレン通路7とを連通させる第一逃がし通路30と、第二圧力室4と第二ドレン通路8とを連通させる第二逃がし通路31と、を有する。つまり、第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31は、それぞれ第一圧力室3と第二圧力室4とにおける作動油を第一ドレン通路7及び第二ドレン通路8を通じてバルブボディ1外へ排出する。
図3は、図1におけるA−A線に沿った断面図であり、流入ポート5Aの中心を通りスプール10の中心軸に直交する断面図である。図3では、第一圧力室3及び流入ポート5Aのみを示し、第二圧力室4及び流出ポート6Aは図示を省略する。第二圧力室4及び流出ポート6Aの構成は、図3に括弧内の符号で示す。
第一逃がし通路30は、第一圧力室3に開口する第一ポート30Aを通じて第一圧力室3に連通する。第一ポート30Aは、周方向の位置がバルブボディ1の中心軸を挟んで流入ポート5Aと対向するように離間して設けられる。即ち、図3に示すように、第一ポート30Aは、周方向の位置が流入ポート5Aとは周方向に180°離間して設けられる。また、第一ポート30Aは、図1に示すように、バルブボディ1のボディ開口部1A側における第一圧力室3の角部3A付近に開口するように設けられる。角部3Aは、バルブボディ1の中心軸に垂直な第一圧力室3の壁面とバルブボディ1の中心軸を中心とする第一圧力室3の円筒面とによって形成される。
第二逃がし通路31は、第二圧力室4に開口する第二ポート31Aを通じて第二圧力室4に連通する。第二ポート31Aは、周方向の位置がバルブボディ1の中心軸を挟んで流出ポート6Aと対向するように離間して設けられる。即ち、第二ポート31Aは、周方向の位置が流出ポート6Aとは周方向に180°離間して形成される。また、第二ポート31Aは、バルブボディ1の凹部1B側における第二圧力室4の角部4A付近に開口するように設けられる。角部4Aは、バルブボディ1の中心軸に垂直な第二圧力室4の壁面とバルブボディ1の中心軸を中心とする第二圧力室4の円筒面とによって形成される。
次に、ソレノイドバルブ100の動作について説明する。
図1に示すように、コイル21に電流が流れない非通電状態においては、プランジャ25には吸着力が作用せず、スプール10は、第三ランド部13が仕切壁2の貫通孔2Aを閉じる方向(図1中右方向)へコイルばね9の付勢力によって付勢される。このため、第一圧力室3と第二圧力室4との連通が遮断され、作動油の通過は遮断される。このように、ソレノイドバルブ100は、コイル21に通電しない状態においては、流入通路5と流出通路6との連通が遮断されるノーマルクローズ型である。
コイル21に電流が流れて磁力が発生すると、プランジャ25が励磁され、プランジャ25に第一ステータコア23Aへ向かう方向(図1中左方向)の吸着力が作用する。つまり、スプール10には、シャフト24を介してコイルばね9を圧縮する方向へ向かう力が作用する。
スプール10は、シャフト24を介して作用する吸着力とコイルばね9による付勢力とが釣り合う位置まで移動する。コイル21に通電する通電量が大きくなる程、プランジャ25と第一ステータコア23Aとの吸着力は大きくなる。よって、コイル21に通電する通電量が大きくなる程、スプール10はコイルばね9の付勢力に抗してコイルばね9を圧縮する方向へ移動する。
コイル21に通電する通電量を大きくしてコイルばね9の付勢力に抗してスプール10を移動させると、第三ランド部13が仕切壁2の貫通孔2Aから抜け出て、第一圧力室3と第二圧力室4とが連通する。コイル21に通電する通電量をさらに大きくすると、第一圧力室3と第二圧力室4との開口面積が徐々に増大する。このため、流入通路5から第一圧力室3及び第二圧力室4を通じて流出通路6へ導かれる作動油の流量が増加する。
コイル21に通電する通電量をさらに大きくして第一ステータコア23Aへ向かうプランジャ25の移動量を増大させると、図2に示すように、第二ランド部12がバルブボディ1における凹部1Bの底に当接する。これにより、第一圧力室3と第二圧力室4との間の開口面積が最大となり、流入通路5から流出通路6へ導かれる作動油の流量が最大となる。
このように、ソレノイドバルブ100は、コイル21に通電する通電量を制御して、スプール10を軸方向に移動させることにより、流入通路5から流出通路6へ導かれる作動油の流量を調整する。
ここで、ソレノイドバルブ100の理解を容易にするために、図6及び図7を参照して、比較例としてのソレノイドバルブ200について説明する。図6及び図7では、作動油の流れを矢印で模式的に示す。図7は、流入ポート5Aの中心5Bを通りバルブボディ1の中心軸と直交する断面図である。図3に示すように、第一圧力室3と流入ポート5Aとの位置関係及び第二圧力室4と流出ポート6Aとの位置関係は、互いに同一である。このため、図7においても、第一圧力室3及び流入ポート5Aのみを示し、第二圧力室4及び流出ポート6Aは図示を省略する。第二圧力室4及び流出ポート6Aの構成は、図7に括弧内の符号で示す。
図6に示すように、ソレノイドバルブ200には、第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31が設けられない。ソレノイドバルブ200では、流入ポート5Aを通じて導かれる作動油は、第一圧力室3から仕切壁2の貫通孔2Aを通じて第二圧力室4に導かれ、流出ポート6Aを通じてバルブボディ1の外部へ導かれる。
この際、図6中矢印で示すように、第一圧力室3及び第二圧力室4内では、スプール10やバルブボディ1の壁面への作動油の衝突などにより、作動油の流れに渦流Vが発生することがある。
図7に示すように、第一圧力室3内において、流入ポート5Aの中心線(流入ポート5Aの中心5Bを通りバルブボディ1の中心軸と直交する線)と直交するスプール10の第一小径部14における接平面のうち、流入ポート5Aに近い接平面P1によって区画される流入ポート5A側の領域R内には、第一小径部14が存在しない。第一小径部14は、接平面P1を挟んで流入ポート5Aと対向する第一領域α1内に存在する。このため、第一領域α1内では、流入ポート5Aから第一圧力室3内に導かれる作動油の一部が、第一小径部14に衝突する。このように、作動油がスプール10の第一小径部14に衝突するため、第一領域α1では渦流Vが発生しやすくなる。
また、第一領域α1内であって、流入ポート5Aの中心線と直交しスプール10の中心線を含む平面P2を挟んで流入ポート5Aと対向する第二領域β1では、バルブボディ1の壁面に衝突しスプール10における第一小径部14の周りを回り込む作動油の流れが生じる。このため、作動油の流れが乱れ、第二領域βでは渦流Vがより生じ易くなる。第二領域β1は、言い換えると、第一圧力室3内において、スプール10の中心軸を挟んで流入ポート5Aと対向する位置を中心とした周方向180°の範囲内の領域である。
さらに、第二領域β内であって、流入ポート5Aの中心5Bを通る第一小径部14の2つの接平面P3によって形成される領域において、第一小径部14を挟んで流入ポート5Aと対向する第三領域γ1では、スプール10の第一小径部14やバルブボディ1の壁面に衝突して第一小径部14を回り込んだ作動油が導かれる。このため、第三領域γ1では渦流Vがより生じ易くなる。言い換えると、第三領域γ1は、流入ポート5Aの中心5Bからバルブボディ1内部を見た場合に、スプール10によって隠れる領域である。
さらに、図7に示すように、スプール10の中心軸を挟んで流入ポート5Aと対向する周方向の位置では、周方向の左右に向かってそれぞれ流れる作動油が衝突するため、特に渦流Vが発生し易い。
第二圧力室4内では、第一圧力室3と同様に、流出ポート6Aの中心線と直交する第二小径部15の接平面のうち、流出ポート6Aに近い接平面P4を挟んで流出ポート6Aと対向する第一領域α2において、渦流Vが発生しやすくなる。また、第一領域α2内であって、流出ポート6Aの中心線と直交しスプール10の中心線を含む平面P5を挟んで流出ポート6Aと対向する第二領域β2では、渦流Vがより生じ易くなる。また、第二領域β2内において、流出ポート6Aの中心6Bを通る第二小径部15の2つの接平面P6により形成される領域であって、第二小径部15を挟んで流出ポート6Aと対向する第三領域γ2では、渦流Vがより生じ易くなる。さらに、第二圧力室4内において、スプール10の中心軸を挟んで流出ポート6Aと対向する周方向の位置では、第一圧力室3と同様に、周方向に向かって互いに異なる方向に流れる作動油が衝突するため、特に渦流Vが発生し易い。
また、第一圧力室3の角部3A及び第二圧力室4の角部4A付近も、作動油が円筒面と中心軸に垂直な壁面との両方と衝突するため、渦流Vが発生しやすい。
渦流Vが発生した部分は、圧力がこもるため、他の部分と比べて圧力が高い高圧部となる。よって、高圧部から他の部分である低圧部に向かうように力が作用し、スプール10には図6に示すように中心軸に垂直方向(図6中上方向)の横力Fが作用する。
横力Fがスプール10に作用すると、スプール10の第一ランド部11とバルブボディ1のボディ開口部1Aとの間の摩擦力及びスプール10の第二ランド部12とバルブボディ1の凹部1Bとの間の摩擦力が増大する。スプール10の移動を妨げるように作用する摩擦力が増大すると、ソレノイドバルブ100のヒステリシスが増大するおそれがある。
これに対し、図4に示すように、ソレノイドバルブ100は、それぞれ第一ドレン通路7及び第二ドレン通路8を通じて第一圧力室3と第二圧力室4とにおける作動油の一部を排出する第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31を有する。第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31を通じて作動油の一部をバルブボディ1外に排出することにより、圧力が逃がされて渦流Vの発生が抑制され、高圧部と低圧部との圧力差が低減される。よって、高圧部から低圧部へ向かうようにスプール10に作用する横力Fが低減され、スプール10が摺動する際の摩擦力も低減される。このため、ソレノイドバルブ100では、ヒステリシスが低減される。
第一逃がし通路30の第一ポート30A及び第二逃がし通路31の第二ポート31Aは、渦流Vによって圧力が高くなる高圧部が生じる位置に設けられる。具体的には、第一ポート30Aは、周方向の位置がスプール10の中心軸を挟んで流入ポート5Aと対向するように設けられる。第二ポート31Aは、周方向の位置がスプール10の中心軸を挟んで流出ポート6Aと対向するように設けられる。
スプール10への作動油の衝突により渦流Vが発生しやすい第一領域α1,α2内に第一ポート30A及び第二ポート31Aがそれぞれ設けられるため、高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができる。
また、スプール10の周りを回り込むことにより作動油の流れが乱れる第二領域β1,β2内に第一ポート30A及び第二ポート31Aがそれぞれ設けられるため、より確実に高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができる。
また、スプール10やバルブボディ1の壁面に衝突してスプール10を回り込むことによりさらに作動油の流れに乱れが生じ易い第三領域γ1,γ2内に第一ポート30A及び第二ポート31Aがそれぞれ設けられるため、より確実に高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができる。
また、周方向に向かって互いに異なる方向に流れる作動油が衝突する位置、即ちスプール10を挟んで流入ポート5A及び流出ポート6Aと対向する周方向の位置にそれぞれ第一ポート30A及び31Aが設けられるため、より確実に高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができる。
このように、第一ポート30A及び第二ポート31Aが渦流Vの発生しやすい位置に設けられるため、より確実に高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減し、ソレノイドバルブ100のヒステリシスを低減することができる。
第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31は、ソレノイド20の磁気特性及びソレノイドバルブ100を通過する作動油の流量に対して、大きな影響を与えない形状に形成される。このため、ソレノイドバルブ100の性能やソレノイドバルブ100を通過して作動油が導かれる流体圧機器等が発揮する性能に対して影響を与えることなく、ソレノイドバルブ100のヒステリシスを低減することができる。
なお、流入ポート5A及び流出ポート6Aは、それぞれバルブボディ1に複数設けられてもよい。この場合であっても、第一逃がし通路30の第一ポート30A及び第二逃がし通路31の第二ポート31Aは、渦流Vが発生しやすい位置に設けることが望ましい。以下、第一圧力室3及び流入ポート5Aを例にして、具体例を説明する。
例えば、図5に示すように、バルブボディ1の中心軸を挟んで対向する一対の流入ポート5Aが第一圧力室3に開口して設けられる場合には、第一ポート30Aは、一対の流入ポート5Aから周方向に90°離れた位置に設けることが望ましい。流入ポート5Aから周方向に最も離れた位置では、作動油がバルブボディ1の壁面に衝突しやすい。このため、一対の流入ポート5Aのそれぞれから周方向に最も離れた位置に第一逃がし通路30の第一ポート30Aを設けることにより、より確実に高圧部の圧力を逃がすことができる。
また、例えば、流入ポート5Aが複数設けられる場合には、一対の流入ポート5Aは、互いにバルブボディ1の中心軸を挟んで対向せずに、周方向に所定の角度間隔を空けて並んで設けられてもよい。この場合にも、一対の流入ポート5Aのそれぞれから周方向に最も離れた位置、つまりそれぞれの流入ポート5Aとの周方向の距離が等しくなる位置に第一ポート30Aを設けることが望ましい。一対の流入ポート5Aから周方向に最も離れた位置に第一ポート30Aを設けることにより、より確実に高圧部の圧力を逃がすことができる。
また、例えば、複数の流入ポート5Aがバルブボディ1の中心軸に沿って並んで設けられる場合には、単一の流入ポート51が設けられる場合と同様に、第一ポート30Aが、渦流Vが生じ易い領域、つまり、第一領域α1、第二領域β1、第三領域γ1内のいずれかに設けられることが望ましい。特に、単一の流入ポート51が設けられる場合と同様に、第一ポート30Aは、周方向の位置がバルブボディ1の中心軸を挟んで流入ポート5Aと対向するように離間して設けられることが望ましい。このように、単一又はバルブボディ1の中心軸に沿って並ぶ複数の流入ポート5Aが設けられる場合には、第一領域α1、第二領域β1、第三領域γ1内のいずれかに設けられることが望ましい。
ここで、渦流Vが発生しやすい位置は、ソレノイドバルブ100を通過する作動油の圧力や流量に応じて変化することがある。第一圧力室3及び第二圧力室4に開口する流入ポート5A及び流出ポート6Aの数が多いほど、第一圧力室3及び第二圧力室4内の圧力分布が作動油の圧力や流量の変化による影響を受けやすい。また、流入ポート5A及び流出ポート6Aの数が多いほど、第一圧力室3及び第二圧力室4内の作動油の流れが複雑化して、渦流Vが発生しやすい位置を特定することが難しくなる。これに対して、ソレノイドバルブ100のバルブボディ1には、単一の流入ポート5A及び単一の流出ポート6Aが設けられる。このため、作動油の圧力や流量の変化による第一圧力室3及び第二圧力室4内の圧力分布への影響を低減することができ、渦流Vが発生する位置が大きく変化しない。また、渦流Vが発生する位置の特定も比較的容易になる。よって、バルブボディ1に単一の流入ポート5A及び流出ポート6Aが設けられる場合には、作動油の圧力や流量の変化する場合であっても、より確実に高圧部の圧力を逃がすことができる。
また、ソレノイドバルブ100では、複数の第一ポート30A及び第二ポート31Aを設けて、第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31を複数設けてもよい。第一圧力室3及び第二圧力室4内において、複数の場所で渦流が発生し高圧部が形成される場合には、それぞれ高圧部の圧力を逃がすように第一ポート30A及び第二ポート31Aを設けることが望ましい。これにより、より確実に高圧部の圧力を逃がして、ソレノイドバルブ100のヒステリシスを低減することができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ソレノイドバルブ100では、第一逃がし通路30及び第二逃がし通路31によって、第一圧力室3及び第二圧力室4内における高圧部の作動油をバルブボディ1外に排出することにより、高圧部の圧力が逃がされて、高圧部と低圧部との圧力差が低減される。よって、高圧部から低圧部へ向かうようにスプール10に作用する横力Fが低減され、スプール10が摺動する際の摩擦力も低減される。このため、ソレノイドバルブ100では、ヒステリシスが低減される。したがって、ソレノイドバルブ100の制御性を向上させることができる。
また、第一逃がし通路30の第一ポート30A及び第二逃がし通路31の第二ポート31Aは、スプール10への作動油の衝突により渦流Vが発生しやすい第一領域α1,α2内にそれぞれ設けられる。このため、より高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができ、ソレノイドバルブ100のヒステリシスをより確実に低減することができる。
また、第一ポート30A及び第二ポート31Aは、スプール10の周りを回り込むことにより作動油の流れが乱れる第二領域β1,β2内にそれぞれ設けられる。このため、より高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができ、ソレノイドバルブ100のヒステリシスをさらに低減することができる。
また、第一ポート30A及び第二ポート31Aは、スプール10やバルブボディ1の壁面に衝突してスプール10を回り込むことによりさらに作動油の流れに乱れが生じ易い第三領域γ1,γ2内にそれぞれ設けられる。このため、より高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができ、ソレノイドバルブ100のヒステリシスをさらに低減することができる。
また、第一ポート30A及び第二ポート31Aは、周方向に向かって互いに異なる方向に流れる作動油が衝突する位置、即ちスプール10を挟んで流入ポート5A及び流出ポート6Aと対向する周方向の位置にそれぞれが設けられる。このため、より高圧部の圧力を逃がして摩擦力を低減することができ、ソレノイドバルブ100のヒステリシスをさらに低減することができる。
また、バルブボディ1には、単一の流入ポート5A及び単一の流出ポート6Aが設けられるため、作動油の流量や圧力の変化により渦流Vが発生する位置の変化が小さい。このため、作動油の圧力や流量の変化する場合であっても、より確実に高圧部の圧力を逃がすことができ、ソレノイドバルブ100のヒステリシスをさらに低減することができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ソレノイドバルブ100は、バルブボディ1と、バルブボディ1内に区画される第一圧力室3及び第二圧力室4と、第一圧力室3に開口する流入ポート5Aを通じて第一圧力室3へ作動油を導く流入通路5と、第二圧力室4に開口する流出ポート6Aを通じて第二圧力室4の作動油をバルブボディ1外へ導く流出通路6と、バルブボディ1内に摺動自在に設けられ第一圧力室3から第二圧力室4へ向かう作動油の流れを制御するスプール10と、コイル21が発生する磁力によってプランジャ25を進退させてスプール10を軸方向に移動させるソレノイド20と、第一圧力室3と第二圧力室4との少なくともいずれか一方と連通し、第一圧力室3及び第二圧力室4の少なくともいずれか一方における作動油の一部をバルブボディ1外へ排出する逃がし通路(第一逃がし通路30、第二逃がし通路31)と、を備える。
この構成では、逃がし通路(第一逃がし通路30、第二逃がし通路31)によって第一圧力室3及び第二圧力室4のうち少なくとも一方の圧力が逃がされて高圧部と低圧部との圧力差が減少し、高圧部から低圧部へ向かうようにスプール10に作用する横力が低減される。よって、スプール10が摺動する際の摩擦力が低減されて、ヒステリシスが低減される。
この構成によれば、ソレノイドバルブ100の制御性を向上させることができる。
また、ソレノイドバルブ100は、流入通路5が、第一圧力室3に開口する流入ポート5Aを通じて第一圧力室3へ作動油を導き、流出通路6が、第二圧力室4に開口する流出ポート6Aを通じて第二圧力室4の作動油をバルブボディ1外へ導き、第一圧力室3内又は第二圧力室4内であって、単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aの中心線と直交するスプール10における第一小径部14又は第二小径部15の接平面のうち単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aに近い接平面P1,P2を挟んで単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aと対向する第一領域α1,α2内において、第一圧力室3及び第二圧力室4の一方に連通して設けられる。
また、ソレノイドバルブ100は、逃がし通路(第一逃がし通路30、第二逃がし通路31)が、単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aの中心線と直交しスプール10の中心軸を含む平面を挟んで単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aと対向する第二領域β1,β2内において、第一圧力室3及び第二圧力室4の一方に連通する。
また、ソレノイドバルブ100は、逃がし通路(第一逃がし通路30、第二逃がし通路31)が、単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aの中心5B,6Bを通るスプール10における第一小径部14又は第二小径部15の2つの接平面P3,P6によって形成される領域であって、スプール10を挟んで単一の流入ポート5A又は流出ポート6Aと対向する第三領域γ1,γ2内において、第一圧力室3及び第二圧力室4の一方に連通する。
また、ソレノイドバルブ100は、流入通路5が、第一圧力室3に開口する単一の流入ポート5Aを通じて第一圧力室3へ作動油を導き、流出通路6が、第二圧力室4に開口する単一の流出ポート6Aを通じて第二圧力室4の作動油をバルブボディ1外へ導き、逃がし通路が、第一圧力室3内であって、流入ポート5Aの中心線と直交するスプール10における第一小径部14の接平面のうち流入ポート5Aに近い接平面P1を挟んで流入ポート5Aと対向する第一領域α1内において、第一圧力室3に連通して設けられる第一逃がし通路30と、第二圧力室4内であって、流出ポート6Aの中心線と直交するスプール10の第二小径部15の接平面のうち流出ポート6Aに近い接平面P4を挟んで流出ポート6Aと対向する第一領域α2内において、第二圧力室4に連通して設けられる第二逃がし通路31と、を有する。
また、ソレノイドバルブ100は、第一逃がし通路30が、流入ポート5Aの中心線と直交しスプール10の中心軸を含む平面P2を挟んで流入ポート5Aに対向する第二領域β1内において、第一圧力室3に連通し、第二逃がし通路31が、流出ポート6Aの中心と直交しスプールの中心軸を含む平面P5を挟んで流出ポート6Aに対向する第二領域β2内において、第二圧力室4の一方に連通する。
また、ソレノイドバルブ100は、第一逃がし通路30が、流入ポート5Aの中心5Bを通るスプール10における第一小径部14の2つの接平面P3によって形成される領域であって、スプール10を挟んで流入ポート5Aと対向する第三領域γ1内において、第一圧力室3に連通し、第二逃がし通路31が、流出ポート6Aの中心6Bを通るスプール10における第二小径部15の2つの接平面P6によって形成される領域であって、スプール10を挟んで流出ポート6Aと対向する第三領域γ2内において、第二圧力室4に連通する。
これらの構成では、渦流Vが発生しやすい場所に逃がし通路(第一逃がし通路30、第二逃がし通路31)が連通するため、より確実に高圧部の圧力が逃がされて、スプール10が摺動する際の摩擦力がさらに低減される。よって、ヒステリシスがさらに低減される。
これらの構成によれば、ソレノイドバルブ100の制御性をさらに向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記実施形態では、ソレノイドバルブ100は、非通電時において流入通路5と流出通路6との連通が遮断されるノーマルクローズ型である。これに対し、ソレノイドバルブ100は、非通電時において流入通路5と流出通路6とが連通するノーマルオープン型でもよい。
また、上記実施形態では、ソレノイドバルブ100は、弁体としてスプール10を備え、第一圧力室3と第二圧力室4との間の開口面積を調整して作動油の流量を調整するいわゆるスプール式の流量調整弁である。ソレノイドバルブ100は、これに限らず、例えば弁体がポペットであるポペット式でもよいし、方向切換弁や圧力制御弁などでもよい。
また、上記実施形態では、第一逃がし通路30の第一ポート30A及び第二逃がし通路31の第二ポート31Aは、周方向の位置がスプール10を挟んでそれぞれ流入ポート5A及び流出ポート6Aと対向するように設けられる。これに対し、渦流Vが発生しやすい位置は、バルブボディ1やスプール10の形状、制御する作動油の圧力などの条件に応じて異なる。したがって、第一ポート30A及び第二ポート31Aは、バルブボディ1やスプール10の形状、作動油の圧力などの条件に応じて、渦流Vが発生しやすい位置に開口することが望ましい。つまり、第一ポート30A及び第二ポート31Aは、条件に応じて第一領域α1,α2外に設けられてもよい。
また、上記実施形態では、ソレノイドバルブ100は、第一圧力室3と連通する第一逃がし通路30と、第二圧力室4と連通する第二逃がし通路31と、を備える。ソレノイドバルブ100は、第一逃がし通路30と第二逃がし通路31との両方を備えていなくてもよく、少なくともいずれか一方を備えるものであればよい。
また、上記実施形態では、第一逃がし通路30は第一ドレン通路7に連通し、第二逃がし通路31は第二ドレン通路8に連通する。第一逃がし通路30と第二逃がし通路31とは、それぞれ第一ドレン通路7と第二ドレン通路8とに連通しなくてもよい。例えば、第一逃がし通路30と第二逃がし通路31とは、バルブボディ1外におけるタンク40などの第一圧力室3及び第二圧力室4よりも低圧側に直接連通し、それぞれ第一圧力室3と第二圧力室4とにおける作動油の一部を排出するように形成してもよい。このように、第一逃がし通路30と第二逃がし通路31とは、それぞれ第一圧力室3と第二圧力室4とにおける作動油の一部をバルブボディ1の外部に排出できるものであれば、任意の形状に形成することができる。