JP5712981B2 - 電磁スプール弁 - Google Patents
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Description
この特許文献1は、スプール弁と電磁アクチュエータとを軸方向に結合したものであり、スプール弁におけるスプールの中心には、ドレン空間に連通するオイルドレン経路(軸方向に沿う通路穴)が形成されている。
そして、プランジャの軸方向の両側の空間が、スプール内に形成されたオイルドレン経路を介してドレン空間に連通する。
このため、スプール弁の作動によってオイルドレン経路に排出されたドレン油(排出油)が、スムーズに高磁束密度部へ達してしまい、ドレン油に含まれる異物も高磁束密度部へ簡単に達してしまう。
このため、高磁束密度部へ簡単に達してしまう異物によって、プランジャの摺動摩耗や摺動不良が発生する懸念がある。
これにより、異物の影響を受け易い高磁束密度部へ異物が到達するのを防ぐことができる。その結果、プランジャの摺動摩耗および摺動不良を防ぐことができ、電磁スプール弁の信頼性を高めることができる。
なお、以下では、説明の便宜上、図1左側を前、図1右側を後と称して説明するが、この前後方向は、説明のための方向であり、実際の搭載方向を限定するものではない。
実施例1を図1〜図3を参照して説明する。
この実施例は、油圧式のVVT(可変バルブタイミング装置)のOCV(オイル・コントロール・バルブ)1に本発明を適用したものである。
VVTは、車両走行用のエンジンに搭載されるものであり、
・カムシャフトに取り付けられてカムシャフトの進角量を連続的に可変することでバルブの開閉タイミングを連続的に可変可能なVCT(可変カムシャフトタイミング機構)2と、
・このVCT2の作動を油圧制御するOCV1を用いた油圧回路3と、
・OCV1を電気的に制御するECU(エンジン・コントロール・ユニット)4と、
を用いて構成される。
進角室αおよび遅角室βは、ベーン6aを進角側あるいは遅角側へ駆動するための油圧室である。
油圧回路3は、進角室αおよび遅角室βのオイルを給排して、進角室αと遅角室βに油圧差を発生させてベーンロータ6をシューハウジング5に対して相対回転させる手段であり、クランクシャフト等によって駆動されるオイルポンプ7から圧送されるポンプ油圧を進角室αまたは遅角室βの一方に調量供給するとともに、進角室αまたは遅角室βの油圧を調量排圧することが可能なOCV1を備える。
スプール弁8は、
・エンジン部品に設けられたOCV装着穴に挿入配置されるスリーブ11と、
・このスリーブ11の内部において軸方向へ摺動自在に支持され、各ポートの連通状態を調整するスプール12と、
・このスプール12を後方へ付勢するリターンスプリング13と、
を備えて構成される。
このスリーブ11の内部には、スプール12を軸方向へ摺動自在に支持する摺動穴が形成されており、この摺動穴の内周面においてスプール12が軸方向へ摺動自在に支持される。
具体的に、スリーブ11の径方向には、オイルポンプ7の吐出した作動油の供給を受ける入力ポート14、進角室αに通じる進角ポート15、遅角室βに通じる遅角ポート16が設けられている。
これらの径方向のポートは、スリーブ11の前側から後側に向かって、進角ポート15、入力ポート14、遅角ポート16の順に配置されている。
一方、スリーブ11の前端には、ドレン空間(ドレンパンに通じる空間)に通じるドレンポート17が設けられている。
そして、スプール12が後方から前方へスライド変位することで、各ポートの切替え状態が変化して、遅角状態(カムシャフトを遅角側へ駆動する状態)、保持状態(カムシャフトの進角量を保持する状態)および進角状態(カムシャフトを進角側へ駆動する状態)が達成される。
この全周溝23は、入力ポート14と常に連通するものであり、
(i)スプール12が前方へ移動した際に入力ポート14と進角ポート15を連通して進角室αの油圧を上昇させ、
(ii)スプール12が後方へ移動した際に入力ポート14と遅角ポート16を連通して遅角室βの油圧を上昇させる分配室の機能を果たすものである。
ここで、スリーブ11は、ドレンポート17の周囲に、軸方向に対して垂直なバネ座27を備えており、このバネ座27と、スプール12に設けたバネ受段差28(オイルドレン経路24の前側で前方に拡径する部位の段差)の間で軸方向に圧縮された状態で組付けられている。
なお、リターンスプリング13が配置されるバネ室(スプール12の前部に設けられる容積変動室)は、ドレンポート17を介して常にドレン空間と連通するものである。
電磁アクチュエータ9は、コイル31、プランジャ32、磁気吸引ステータ33、磁気受渡ステータ34、ヨーク35、カップガイド36、ステー37およびコネクタ38を備える。
コイル31は、通電されるとプランジャ32を磁気吸引するための磁力を発生する磁力発生手段であり、樹脂製のコイルボビンの周囲に絶縁被覆された導線を多数巻回したものである。
なお、図面では、磁気受渡ステータ34とヨーク35を一体に設ける例を示すが、限定するものではない。
カップガイド36の前端には、径方向に広がる拡径フランジ部が設けられており、この拡径フランジ部がスリーブ11(具体的には、スリーブ11の後端に配置されたOリング39)と磁気吸引ステータ33との間に挟まれることで、カップガイド36の内外のシールが成される。
なお、スリーブ11の後部外周に配置されたOリング40は、OCV装着穴からオイルが漏れるのを防ぐためのものである。
コネクタ38は、コイル31等を樹脂モールドする2次成形樹脂の一部によって形成された結合手段であり、その内部には、コイル31の導線端部とそれぞれ接続されるターミナル端子38aが配置されている。このターミナル端子38aは、一端がコイルボビンに差し込まれた状態で2次成形樹脂に樹脂モールドされたものであり、ターミナル端子の他端がコネクタ38内において露出配置されている。
プランジャ32は、上述したように、カップガイド36の内部で軸方向へ摺動するものである。
プランジャ32が軸方向へ移動するには、
・プランジャ32の前端に接する高磁束密度部A(プランジャ32に接する軸方向の両側の空間のうち、スプール12に近い側でプランジャ32に磁気吸引力を与えるために磁束密度が高くなる空間)の容積を変動可能に設けるとともに、
・プランジャ32の後端に接する低磁束密度部B(プランジャ32に接する軸方向の両側の空間のうち、スプール12から離れた側の空間)の容積を変動可能に設ける必要がある。
スプール12の後端には、第1流れ邪魔手段を成す筒状のパイプ41が貫通配置されている。
このパイプ41は、スプール12の後端の中心に設けた軸方向に沿う貫通穴の内壁面に、圧入等の固定手段により固定されたものであり、パイプ41の後端(プランジャ32側)が閉塞し、パイプ41の前端がオイルドレン経路24の内部において開口するものである。
また、パイプ41は、スプール12に固定された状態で、オイルドレン経路24の内部に突出配置される内側突出部41aと、スプール12の後端から後方へ突出配置される外側突出部41bとを備える。
一方、外側突出部41bには、パイプ41の内部と、パイプ41の外周の第1空間Cとを連通する径方向に貫通した第1絞り口41cが1つまたは複数設けられている。
このように、パイプ41によって、ドレン油の流れを曲折化し、オイルドレン経路24から高磁束密度部Aに向かうドレン油のスムーズな流れを阻害することで、ドレン油に含まれる異物が高磁束密度部A(この実施例では第2流れ邪魔手段側)へ到達するのを防ぐことができる。
プランジャ32とスプール12の間には、第2流れ邪魔手段の機能を果たす中空シャフト42が設けられている。
この中空シャフト42は、プランジャ32の軸力をスプール12に伝達するものであり、パイプ41(外側突出部41b)との間、および後述するカラー43との間に、ドレン油が通過可能な空間(第1空間Cと第2空間D)を形成する。
そして、中空シャフト42の前端がスプール12の後端に当接し、中空シャフト42の後端がプランジャ32の前端に当接して、プランジャ32の軸力をスプール12に伝えるとともに、リターンスプリング13の付勢力をプランジャ32に伝えるように設けられている。
この第2絞り口42cは、上述した第1絞り口41cとは軸方向位置(または円周方向の位置)がズラされて設けられている。即ち、第1絞り口41cを通過したドレン油が、直接に第2絞り口42cへ浸入しないように設けられている。
このように、第1絞り口41cと第2絞り口42cの軸方向位置(または円周方向の位置)をズラしたことで、第1絞り口41cを通過したドレン油(径方向に流れるドレン油)が、第2絞り口42cに到達するまでに流れ方向が変化した後、第2絞り口42cを通過し、第3流れ邪魔手段側へ向かう。
プランジャ32の前側には、第3流れ邪魔手段の機能を果たすカラー43が設けられている。
このカラー43は、磁気吸引ステータ33の内側(具体的には、カップガイド36の内側)に挿入配置され、プランジャ32の前端と対向してプランジャ32の磁気吸引力を高める円環状の磁性体部品であり、磁性体金属(例えば、鉄:磁気回路を構成する強磁性材料)によって設けられている。
そして、中空シャフト42とカラー43との間の第2空間Dは、カラー内径部43aと小径筒部42bとの間に形成された第3絞り口43bを介して高磁束密度部Aと連通する。
このように、カラー43によってドレン油の流れを曲折化し、オイルドレン経路24から高磁束密度部Aに向かうドレン油のスムーズな流れを阻害することで、ドレン油に含まれる異物が高磁束密度部Aへ到達するのを防ぐことができる。
このため、第2空間Dに到達した異物が、カラー内径部43aによって第2空間Dの内部に留められ、第2空間Dまで到達した異物が高磁束密度部Aへ浸入しないように設けられている。
この実施例のOCV1は、オイルドレン経路24に排出された異物(ドレン油に混入した異物)がドレン油とともに後方へ流れたとしても、オイルドレン経路24から高磁束密度部Aに向かうドレン油の流れを、「パイプ41(第1流れ邪魔手段)」、「中空シャフト42(第2流れ邪魔手段)」、「カラー43(第3流れ邪魔手段)」のそれぞれが邪魔をして、ドレン油に含まれる異物が高磁束密度部Aへ到達するのを防ぐ。
これにより、OCV1の信頼性を高めることができ、結果的にVVTの信頼性を高めることができる。
この実施例のOCV1は、オイルドレン経路24と低磁束密度部Bの間に「パイプ41(第1流れ邪魔手段)」を設けている。
具体的に、この実施例では、中空シャフト42の後端の中心部に、プランジャ内呼吸孔32a(プランジャ32の軸心において前後方向に貫通形成した連通穴)のみに連通する軸方向穴42dを設けており、低磁束密度部Bがプランジャ内呼吸孔32aを介して第1空間Cに連通する。
しかるに、低磁束密度部Bは、磁束密度が低いため、異物の影響が小さい。
このため、例え低磁束密度部Bに少量の異物が到達したとしても、プランジャ32の摺動摩耗および摺動不良の発生を防ぐことができる。
実施例2を図4を参照して説明する。なお、上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の実施例1では、第1空間Cとプランジャ内呼吸孔32aを軸方向穴42dを介して連通する例を示した。
これに対し、この実施例2は、実施例1の軸方向穴42dを廃止し、高磁束密度部Aとプランジャ内呼吸孔32aを連通させるものである。
これにより、低磁束密度部Bへ異物が到達するのを、より確実に防ぐことができる。
8 スプール弁
9 電磁アクチュエータ
12 スプール
24 オイルドレン経路
32 プランジャ
41 パイプ
42 中空パイプ
43 カラー
A 高磁束密度部
Claims (6)
- 磁力によって軸方向へ駆動されるプランジャ(32)を有する電磁アクチュエータ(9)と、前記プランジャ(32)によって軸方向へ駆動されるスプール(12)を有するスプール弁(8)とを軸方向に結合し、
前記プランジャ(32)に接する軸方向の両側の空間が、前記スプール(12)内に形成されたオイルドレン経路(24)を介してドレン空間に連通する電磁スプール弁(1)において、
前記プランジャ(32)に接する軸方向の両側の空間のうち、前記プランジャ(32)に磁気吸引力を与えて磁束密度が高くなる側を高磁束密度部(A)とした場合、
前記オイルドレン経路(24)から前記高磁束密度部(A)に導かれるドレン油は、
前記スプール(12)の前記電磁アクチュエータ(9)側の端に貫通配置されたパイプ(41)と、
前記プランジャ(32)と前記スプール(12)の間に挟まれて配置された内部が空洞の中空シャフト(42)と、
前記プランジャ(32)の磁気吸引力を高める円環状のカラー(43)と、
に邪魔されることを特徴とする電磁スプール弁。 - 請求項1に記載の電磁スプール弁(1)において、
前記パイプ(41)は、前記プランジャ(32)側の端が閉塞し、前記スプール(12)からプランジャ(32)側へ突出する外側突出部(41b)を備え、
この外側突出部(41b)には、径方向に貫通して、前記パイプ(41)の内部と前記パイプ(41)の外周の第1空間(C)とを連通する第1絞り口(41c)が設けられ、 前記パイプ(41)が、前記オイルドレン経路(24)から前記高磁束密度部(A)に向かうドレン油の流れを邪魔することを特徴とする電磁スプール弁。 - 請求項2に記載の電磁スプール弁(1)において、
前記中空シャフト(42)において前記外側突出部(41b)を覆う大径筒部(42a)には、径方向に貫通して、当該中空シャフト(42)の内部と当該中空シャフト(42)の外周の第2空間(D)とを連通する第2絞り口(42c)が設けられ、
前記中空シャフト(42)が、前記オイルドレン経路(24)から前記高磁束密度部(A)に向かうドレン油の流れを邪魔することを特徴とする電磁スプール弁。 - 請求項3に記載の電磁スプール弁(1)において、
前記カラー(43)には、外径側から前記中空シャフト(42)における小径筒部(42b)に向かう環状のカラー内径部(43a)が設けられ、
前記カラー(43)が、前記オイルドレン経路(24)から前記高磁束密度部(A)に向かうドレン油の流れを邪魔することを特徴とする電磁スプール弁。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電磁スプール弁(1)において、
前記プランジャ(32)に接する軸方向の両側の空間のうち、前記高磁束密度部(A)とは異なる側を低磁束密度部(B)とした場合、
前記中空シャフト(42)における前記プランジャ(32)の当接箇所には、前記プランジャ(32)内に貫通形成されたプランジャ内呼吸孔(32a)に連通する軸方向穴(42d)が設けられ、
前記パイプ(41)から前記中空シャフト(42)内に導かれたドレン油が前記プランジャ内呼吸孔(32a)を介して前記低磁束密度部(B)に導かれることを特徴とする電磁スプール弁。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の電磁スプール弁(1)において、
前記オイルドレン経路(24)は、前記スプール弁(8)の出力ポート(15、16)を介して排出されるドレン油を前記ドレン空間に導くドレン油排出通路の機能を備えることを特徴とする電磁スプール弁。
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