JP4304877B2 - 電磁弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁弁に関するもので、特に内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブのうち少なくとも一方の開弁・閉弁時期を変更する吸排気可変バルブタイミング機構の進角油圧室および遅角油圧室に対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エンジンのクランクシャフトと同期回転するタイミングプーリやチェーンスプロケット等を介してカムシャフトを駆動し、タイミングプーリやチェーンスプロケットとカムシャフトとの相対回転運動による位相差によってエンジンの吸気バルブの開弁・閉弁時期(開閉タイミングまたはバルブタイミングとも言う)を変化させて、エンジンの出力の向上や燃費を改善する吸排気可変バルブタイミング機構と、吸気可変バルブタイミング機構の進角油圧室および遅角油圧室に対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁とを備えた内燃機関用バルブタイミング調整装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、例えば吸気バルブをピストンの下死点位置よりも遅く閉じることにより、エンジンのポンピングロスを低減し、燃費を向上することができる。しかし、ピストンの下死点位置よりも遅く吸気バルブを閉じるタイミングだと、エンジン暖機後において燃費が向上する反面エンジン冷間時に実圧縮比が低下し、ピストン上死点における空気温度が十分に上昇しない。したがって、エンジンが始動不良を起こす恐れがある。この場合、エンジン冷間時に最適な吸気バルブの開閉タイミングはエンジン暖機後に最適な開閉タイミングよりも進角側である。
【0004】
そこで、図10に示したように、吸気バルブの開閉タイミングの最遅角位相と最進角位相との位相変化幅の中間位置でハウジング部材101に対してベーン部材102をロックするロックピン103を設け、エンジン停止時に、スプリング104によってベーン部材102を位相変化幅の中間位置以上に進角させて、エンジン始動時にカムシャフト105の変動トルクを利用してベーン部材102をばたつかせることで、カムシャフト105およびベーン部材102の位相変化幅の中間位置でロックピン103をハウジング部材101に設けた嵌合穴106に嵌合(ロック)させるようにした吸気可変バルブタイミング機構(特願2000−174104:平成12年6月9日出願、特願2001−12219:平成13年1月19日出願、特願2001−23256:平成13年1月31日出願)を提案した。
【0005】
ここで、ハウジング部材101は、図10および図11に示したように、エンジンのクランクシャフトにより動力伝達手段107を介して回転駆動されるスプロケット108、およびこのスプロケット108の前端面に配されたシューハウジング109等から構成されている。また、ベーン部材102は、略円環状部の外周壁より径方向の外方に突出する複数個のベーン110を有し、ベーン110の周方向の両側面には、遅角油圧室111と進角油圧室112とが形成されている。
【0006】
しかるに、エンジン停止後直ぐにエンジンを始動するような場合、油路内に作動油が充填されているので、エンジン始動後速やかにオイルポンプ113の油圧が油圧室に加わる。エンジン始動後進角油圧室112に作動油を供給する制御を行う場合、負荷トルクを受けるベーン部材102が遅角側に回転する前に進角油圧室112の油圧が上昇し、ベーン部材102が中間位置よりも進角側に固定される可能性がある。例えば吸気バルブの開閉タイミングが中間位置よりも進角した状態でエンジンを始動すると、排気バルブの開閉タイミングと吸気バルブの開閉タイミングとが重なり(オーバーラップ)、エンジンの始動不良が起こる可能性がある。
【0007】
したがって、吸気可変バルブタイミング機構の機能であるロックピン嵌合性の向上やベーン遅角性の向上、具体的には、エンジン停止時にスプリング104等によって中間位置以上に進角させたベーン部材102をエンジン始動時にベーン部材102を中間位置に遅角させてロックピン103を嵌合穴106にロックさせるようにする必要がある。すなわち、エンジン始動時に、中間位置以上に進角させていたベーン部材102を遅角方向に位相変換させるために、エンジン始動時に、進角油圧室112の油圧を抜く必要がある。つまり、進角油圧室112内および遅角油圧室111内の両方の油圧を抜くドレインモードの設定が必要である。
【0008】
そこで、図10および図11に示したように、エンジン停止時に、スプリング104の最遅角方向の付勢力や進角油圧室112に油圧を供給する制御によってベーン部材102を位相変化幅の中間位置以上に進角させておき、エンジン始動時に、中間位置以上に進角しているベーン部材102をカムシャフト105の変動トルクを利用して遅角方向に位相変換させ易くするために、遅角油圧室111内および進角油圧室112内の両方の油圧を抜くドレインモードを有する構造として、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室111および進角油圧室112に対して選択的に油圧を給排するための油圧システム回路中に電磁式油路切替弁200と電磁式油圧制御弁300を設ける構造を採用することが考えられる。
【0009】
電磁式油路切替弁200は、図10および図11に示したように、ソレノイド部201を通電制御して弁部202の移動位置を制御することで、進角油圧室112とドレインとを遮断する進遅角モードと、進角油圧室112とドレインとを連通するドレインモードとに切り替わる。また、電磁式油圧制御弁300は、図10ないし図12に示したように、ソレノイド部301を通電制御して弁部302の移動位置を制御することで、オイルポンプ113の油圧を遅角油圧室111に供給し、進角油圧室112内の油圧をドレインする最遅角モードと、オイルポンプ113の油圧を進角油圧室112に供給し、遅角油圧室111内の油圧をドレインする最進角モードとに切り替わる。
【0010】
そして、ソレノイド部301には、コイルボビン303、コイル304、コネクタ305、ステータ306、ヨーク307、プランジャ308、シャフト309およびプランジャガイド310等が設けられている。また、弁部302には、スリーブ311、スプール312およびスプリング313等が設けられている。しかるに、吸気可変バルブタイミング機構の進角油圧室112および遅角油圧室111に対して選択的に油圧を給排するための油圧システム回路中に電磁式油路切替弁200と電磁式油圧制御弁300を設ける必要があるので、部品点数および組付工数が増加するので、現状の電磁式油圧制御弁300にドレインモード機能を追加することが望まれる。
【0011】
ところが、現状の電磁式油圧制御弁300の機能にドレインモード機能を追加するために、電磁式油圧制御弁300に対し、ドレインモード用にストローク(現状では2.3mm)を長くとる必要があるが、電磁式油圧制御弁300のソレノイド部301の磁気回路(コイル304、ステータ306、ヨーク307、プランジャ308により形成される)の構成では、コイル304の起磁力の不足により、十分なストロークが得られず、ドレインモード機能の追加が困難である。また、電磁式油圧制御弁300のソレノイド部301の磁気回路の構成で、要求起磁力を得るためには、コイル304のターン数を増加させる必要があるが、電磁式油圧制御弁300のソレノイド部301の外径が大きくなってしまう。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、電磁弁の外径を増加させたり、電磁弁の全長を長くすることなく、磁気回路を高効率化することで、可動子のストローク量を増加させて1個の電磁弁でドレインモード機能を実現できるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、コイルへの通電量を制御してスプールの移動位置が最遅角位置に設定されると、遅角ポートと入力ポートとを連通し、進角ポートとドレインポートとを連通する最遅角モードとなる。また、コイルへの通電量を制御してスプールの移動位置が最進角位置に設定されると、遅角ポートとドレインポートとを連通し、進角ポートと入力ポートとを連通する最進角モードとなる。また、コイルへの通電量を制御してスプールの移動位置がドレイン位置に設定されると、遅角ポートとドレインポートとを連通し、進角ポートと入力ポートとを連通し、進角ポートおよび連通ポートとドレインポートとを連通するドレインモードとなる。このドレインモード時には、進角油圧室内に油圧源の油圧が供給されるが、遅角油圧室内の油圧と進角油圧室内の油圧の両方がドレインされる。
そして、電磁弁の磁気回路の一部品を構成する可動子を、スプールと可動子とを連結するシャフトの軸方向の一端部に接触配置させ、且つ筒状のスリーブ内に収容されるスプールを、シャフトの軸方向の他端部に圧入固定することにより、可動子へのシャフトの圧入し、進角ポートと入力ポートとを連通し、進角ポートおよび連通ポートとドレインポートとを連通するくすることーく、磁気回路を高効率化することができるので、現状の電磁弁の機能に対して、ストローク量を増加させることができ、且つ1個の電磁弁でドレインモード機能を実現することができる。
【0014】
また、現状の電磁弁の機能にドレインモード機能を追加することができるので、ドレインモードの際に、進角油圧室内の油圧および遅角油圧室内の油圧の両方を抜くことができ、中間位置以上に進角させていたベーン部材を遅角方向に位相変換させ易くすることができる。これにより、吸排気可変バルブタイミング機構のハウジング部材に対してベーン部材が最遅角位置と最進角位置との略中間位置でロックできるので、内燃機関の始動不良を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、固定子の第2筒壁部を、吸引部の外周側から第1筒壁部に近づく程、外径が漸減するテーパ形状に形成することにより、可動子の側面への磁束漏れを少なくすると同時に、可動子のストローク方向への磁束分配量が多くなる形状となる。それによって、現状の電磁弁の外径を増加させたり、電磁弁の全長を長くすることなく、磁気回路を高効率化することができるので、少なくとも最遅角モードの移動位置からドレインモードの移動位置までの要求ストロークが得られるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、固定子の吸引部と可動子との対向面距離を、ドレインモードの際に所定値以下に近接配置することにより、磁束の流れを上げて、少なくとも最遅角モードの移動位置からドレインモードの移動位置までの要求ストロークが得られるようになる。さらに、請求項4および請求項5に記載の発明によれば、スリーブとスプールとからなる弁部として、スリーブの側面より油圧源からの油圧が供給され、且つスリーブの側面に2つのドレインポートを有する側面油圧供給型の2ドレインスプール弁タイプの弁部、あるいはスリーブの側面より油圧源からの油圧が供給され、且つスリーブの側面に1つのドレインポートを有する側面油圧供給型の1ドレイン中空スプール弁タイプの弁部を用いたことを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
[第1実施例の構成]
図1ないし図6は本発明の第1実施例を示したもので、図1ないし図3は電磁式油圧制御弁を示した図である。
【0018】
本実施例の電磁式油圧制御弁1は、4サイクル・レシプロエンジン(内燃機関)、例えばDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)エンジン(以下エンジンと略す)のシリンダーヘッド内に設けられた吸気バルブ(図示せず)の開閉タイミングを連続的に変更する連続可変バルブタイミング調整装置の遅角油圧室2または進角油圧室3へのオイル供給を選択的に切り替えることが可能な電磁弁(オイル・コントロール・バルブ:OCV)である。
【0019】
ここで、連続可変バルブタイミング調整装置は、エンジンのクランクシャフト(駆動軸)により回転駆動されるハウジング部材としてのタイミングロータ(図示せず)と、このタイミングロータに対して相対回転可能に設けられた従動軸としての吸気側カムシャフト(図示せず)と、この吸気側カムシャフトに固定されてタイミングロータ内に回転自在に収容されたベーン部材としてのベーンロータ(図示せず)を内蔵した吸気可変バルブタイミング機構と、この吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2と進角油圧室3とに対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁1を電子制御するエンジン制御装置(以下ECUと呼ぶ)とから構成されている。
【0020】
遅角油圧室2または進角油圧室3に対して選択的に油圧を給排するための油圧システム回路には、遅角油圧室2内に油圧を給排するための第1オイル供給路(本発明の遅角油圧室側の油路に相当する)11、進角油圧室3内の油圧を給排するための第2オイル供給路(本発明の進角油圧室側の油路に相当する)12、およびこの第2オイル供給路12の途中より分岐するように接続されて、第2オイル供給路12を介してオイルポンプ4の油圧を電磁式油圧制御弁1の油路に導くための第3オイル供給路13が設けられている。
【0021】
第1〜第3オイル供給路11〜13は、エンジンのシリンダーヘッドに形成されており、遅角油圧室2内または進角油圧室3内からオイルをドレインするためのドレイン油路でもある。また、第1〜第3オイル供給路11〜13には、オイルポンプ4側のオイル供給路(本発明の油圧源側の油路に相当する)10と第1、第2オイル排出路(本発明のドレイン側の油路に相当する)14、15とがそれぞれ電磁式油圧制御弁(オイル・コントロール・バルブ:OCV)1の油路を介して接続されている。なお、第1オイル排出路14は、遅角油圧室2内からオイルをドレインするための遅角油圧室側ドレイン油路で、第2オイル排出路15は、進角油圧室3内からオイルをドレインするための進角油圧室側ドレイン油路である。
【0022】
ここで、上述したオイル供給路10には、作動流体であるエンジンオイルを一時的に溜めるためのオイルパン(ドレイン)内のオイルを汲み上げてエンジンの各部へオイルを吐出するためのオイルポンプ(油圧源)4が設けられ、第1、第2オイル排出路14、15の出口端はオイルパンに連通している。ここで、オイルポンプ4は、エンジンのクランクシャフトに同期して回転駆動されて、エンジン回転数に比例した吐出量のオイルをエンジンの各部へ圧送する。
【0023】
電磁式油圧制御弁1は、弁部材としてのスプール6がスリーブ5内を往復移動することにより吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2および進角油圧室3に対するオイルポンプ4の油圧を給排するスプール制御弁(弁部)と、電流を供給することにより磁気吸引力を発生する電磁駆動部(ソレノイド部)とを備え、第1〜第3オイル供給路11〜13とオイル供給路10および第1、第2オイル排出路14、15とを相対的に切り替え制御できるように構成されている。
【0024】
弁部は、第1〜第3オイル供給路11〜13とオイル供給路10および第1、第2オイル排出路14、15との間に配された円筒状のスリーブ(弁本体)5と、このスリーブ5内に摺動自在に収納されたスプール(弁体)6とから構成されている。本実施例では、スリーブ5の先端側の円環状の前壁部とスプール6の先端側に設けられた軸方向孔19との間に、スプール6を最遅角方向、つまり図示右方向(ソレノイド部側)に付勢する付勢力を発生するスプール付勢手段およびプランジャ付勢手段(可動子付勢手段)としてのスプリング(バネ)7を配置している。
【0025】
スリーブ5の側面(図示下端側面)の中央部には、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート(供給口)20が形成されている。また、スリーブ5の側面(図示上端側面)には、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート(第1開口部)21、進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート(第2開口部)22、およびドレインモード時に第3オイル供給路13と第2ドレインポート25とを連通する連通ポート(連通口)23が形成されている。
【0026】
さらに、スリーブ5の側面(図示下端側面)の入力ポート20の両隣には、ドレイン側の第1、第2オイル排出路14、15に繋がる第1、第2ドレインポート(第1、第2排出口)24、25が形成されている。そして、スリーブ5の軸方向の一端部(先端部)には、円環状の前壁部26が設けられ、また、スリーブ5の軸方向の他端部には、ソレノイド部のかしめ部27(後述する)にかしめ固定されるフランジ部28が設けられている。
【0027】
スプール6は、スリーブ5内に軸方向に往復移動可能に支持されており、ソレノイド部のプランジャ45(後述する)およびシャフト46(後述する)と同一軸心上に設けられている。このスプール6は、図示右端部に作用するソレノイド部の軸力が上昇してスプリング7の付勢力(スプリング力)に打ち勝つと、ソレノイド部によって図示左方向に駆動される。また、スプール6は、ソレノイド部の軸力よりもスプリング7の付勢力(スプリング力)が勝ると、スプリング7によって図示右方向に付勢される。
【0028】
そして、スプール6の外周には、軸方向の図示右端部から図示左端部へ向かって4個の第1〜第4ランド部が設けられている。そのスプール6の外周(第1、第2ランド部間)には、凹状の第1油路31が周設されており、また、スプール6の外周(第2、第3ランド部間)には、凹状の第2油路32が周設されており、また、スプール6の外周(第3、第4ランド部間)には、凹状の第3油路33が周設されている。なお、第1油路31の油路幅は、第2、第3油路32、33の油路幅よりも狭く、第2油路32の油路幅は、第3油路33の油路幅よりも広い。
【0029】
ソレノイド部は、図4に示したように、第1固定子としてのヨーク41、第2固定子としてのステータコア42、コイルボビン43の外周に巻回されたソレノイドコイル(コイル)44、このソレノイドコイル44の起磁力で軸方向の一方側(図示左方向)に吸引される可動子としてのムービングコア(プランジャ)45、このプランジャ45と一体的に軸方向に移動するシャフト46、および内部にプランジャ45を往復移動自在に収容するプラジャガイド47等から構成されている。
【0030】
ヨーク41は、プランジャ45と共に磁気回路を形成する第1固定子であって、コイルボビン43およびソレノイドコイル44の外周を覆う略円筒形状の外周筒部51、プランジャ45の外周とコイルボビン43の内周との間に配された円筒形状の内周筒部(第1筒壁部)52、および外周筒部51と内周筒部52とを連結する円環状の連結部53等から構成されている。なお、ヨーク41の内周筒部52の後端部には、ヨーク41の内周筒部52の開口部を塞ぐシール材59が装着されている。
【0031】
ステータコア42は、プランジャ45と共に磁気回路を形成する第2固定子であって、プランジャ45を軸方向の一方側に吸引する円環状の吸引部54、この吸引部54の外周側に一体的に設けられ、ヨーク41の内周筒部52の先端面との間に軸方向の所定の隙間を隔てて配された円錐台筒形状の円筒壁部(第2筒壁部:以下テーパ部と言う)55、吸引部54の外周側より軸方向の一方側に延長された円筒形状の円筒壁部56、およびこの円筒壁部56の端部より径方向に延長された円環形状のフランジ部57等から構成されている。
【0032】
ここで、本実施例では、ステータコア42の吸引部54とこの吸引部54に対向するプランジャ45の対向面との対向面距離は、最遅角モードの際に第1所定値(例えば4.1mm)とされ、ドレインモード時に第2所定値(例えば0.5mm)以下となるように近接配置している。また、ステータコア42のテーパ部55は、吸引部54の外周側からヨーク41の内周筒部52に近づく程、外径が漸減するテーパ形状に形成されている。すなわち、テーパ部55の形状は、プランジャ45の側面への磁束漏れを少なくすると同時に、プランジャ45のストローク方向への磁束分配量が多くなる形状となるようにテーパ状に形成されている。
【0033】
コイルボビン43は、略円筒状に樹脂一体成形された樹脂一次成形品で、外周にソレノイドコイル44を所定の巻き回数(ターン数)だけ巻装する円筒状部、およびこの円筒状部の両端に設けられた鍔状部等から構成されている。ソレノイドコイル44は、駆動電流が流れるとプランジャ45を軸方向の一方側(ストローク方向)に吸引する起磁力を生じ、この起磁力に応じてプランジャ45がステータコア42の吸引部54に吸引される。また、ソレノイドコイル44の外周に樹脂モールド成形された樹脂成形部材(樹脂二次成形品)48のヨーク41よりも外部に露出した部分には、ソレノイドコイル44と車載電源とを電気的に接続するターミナル(外部接続端子)49をインサート成形したコネクタ50が一体成形されている。
【0034】
シャフト46の図示左端部は、弁部のスプール6の図示右端部に設けられた連結部34の軸方向孔35内に圧入固定されている。プランジャ45は、略円柱形状に形成されており、その先端面には、シャフト46が当接している。これにより、弁部のスプール6は、ソレノイドコイル44が通電されてソレノイドコイル44に起磁力が発生して、ステータコア42の吸引部54にプランジャ45が吸引されると、プランジャ45およびシャフト46と一体的に軸方向の一方側(図示左側)に移動する。また、スプール6は、ソレノイドコイル44の通電が停止されてソレノイドコイル44の起磁力が消磁すると、スプリング7の軸方向の他方側(図示右側)への付勢力により、プランジャ45およびシャフト46と一体的に軸方向の他方側に移動する。
【0035】
プランジャガイド47は、薄肉ステンレス鋼等の非磁性材料をプレス成形する等して所定の有底円筒形状(カップ形状)に形成されている。このプランジャガイド47は、図4に示したように、コイルボビン43の鍔状部とステータコア42のフランジ部57との間に挟持されるフランジ部61、ステータコア42の円筒壁部56の外周とコイルボビン43の筒状部の内周との間に配された円筒状の大径部62、ヨーク41の内周筒部52の内周とプランジャ45の外周との間に配された円筒状の小径部63、プランジャ45の後端部を覆う底部64を有している。プランジャガイド47の大径部62と小径部63とを繋ぐテーパ部65は、ヨーク41の内周筒部52とステータコア42のテーパ部55との間の隙間を挿通している。
【0036】
プランジャガイド47のフランジ部61は、ヨーク41のかしめ部27がスリーブ5のフランジ部28をかしめることにより、フランジ部61は、スリーブ5のフランジ部28に液密的に連結されている。また、プランジャガイド47のフランジ部61とステータコア42のフランジ部57との間には、オイルの漏れを防止するOリング等のシール部材66が装着されている。また、ステータコア42のフランジ部57とスリーブ5のフランジ部28との間には、オイルの漏れを防止するOリング等のシール部材67が装着されている。
【0037】
ここで、スプール6、プランジャ45、シャフト46の図示右方向への移動は、ステータコア42の内周に固定された円環状の最遅角用ストッパ68にスプール6の図示右端面が当接することで規制されている。また、スプール6、プランジャ45、シャフト46の図示左方向への移動は、スリーブ5の先端に設けられた円環状の最進角用ストッパ69にスプール6の図示左端面が当接することで規制されている。
【0038】
ECUは、エンジン回転数を検出するクランク角センサ、エンジン負荷センサ、吸入空気量を検出するエアフロメータからの信号によって現在のエンジンの運転状態を検出すると共に、クランク角センサやカム角センサからの信号によってタイミングロータ(ハウジング部材)と吸気側カムシャフトおよびベーンロータ(ベーン部材)の相対回転位置、吸気側カムシャフトおよびベーンロータの中間ロック位相を検出する。このECUは、エンジン回転数やエンジン負荷に応じて、エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングが最適値となるように、ソレノイド部のソレノイドコイル44に駆動電流を流して電磁式油圧制御弁1の制御状態(スプール6、プランジャ45、シャフト46のストローク量)を連続的に変更することができる。
【0039】
[第1実施例の作用]
次に、本実施例の電磁式油圧制御弁1の作用を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0040】
本実施例の電磁式油圧制御弁1は、ソレノイド部のソレノイドコイル44を流れる駆動電流の増加に応じて増大する起磁力(図示左方向の吸引力)とスプリング7の付勢力(図示右方向のスプリング力)とのバランスによってスプール(弁体)6やプランジャ(可動子)45の移動位置を任意の位置に保持できる構造、つまり吸気バルブの開閉タイミングを連続的に変更できる構造を備えている。
【0041】
イ)最遅角モード
ECUは、ソレノイド部のソレノイドコイル44に最小値(例えば0.3A)以下の駆動電流値を流すように通電量を制御する。したがって、ソレノイドコイル44を流れる駆動電流値が最小値以下の時には、ソレノイドコイル44の起磁力が最小値以下となるので、ステータコア42の吸引部54にプランジャ45が吸引される。このとき、プランジャ45と一体的に軸方向の一方側(ドレインモード方向、ストローク方向)に移動するスプール6のストローク量は0.1mm以下となる。すなわち、スプール制御弁のスプール6やプランジャ45の移動位置は最遅角位置に変更(設定)される。
【0042】
これにより、図2に示したように、スプール6の外周に設けられた第2油路32を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とが連通すると同時に、スプール6の外周に設けられた第3油路33を介して、進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とドレイン側の第2オイル排出路15に繋がる第2ドレインポート25とが連通する。したがって、電磁式油圧制御弁1の制御状態は、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ進角油圧室3内のオイルをドレインする最遅角モード(図2参照)に変更(設定)される。
【0043】
それによって、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2内にオイルが供給され、進角油圧室3内よりオイルが排出されることにより、ハウジング部材に対してベーン部材が遅角油圧室2内の油圧力によって最遅角側に回転する。これにより、例えばエンジンのアイドル時に、エンジンの吸気バルブの開閉タイミング(バルブタイミング)を大きく遅らせる(遅角させる)ことができるので、オーバーラップ(吸気バルブと排気バルブとが同時に開弁している時期)を無くしてエンジンの燃焼状態を安定させることができる。また、エンジンの高速高負荷時に、吸気バルブの閉弁タイミングを最適なところまで遅らせる(遅角させる)ことにより、エンジンの最高出力を確保できる。
【0044】
ロ)最進角モード
ECUは、ソレノイド部のソレノイドコイル44に最小値と最大値との中間値(例えば0.4〜0.8A)の駆動電流値を流すように通電量を制御する。したがって、ソレノイドコイル44を流れる駆動電流値が中間値の時には、ソレノイドコイル44の起磁力も中間値となるので、ステータコア42の吸引部54にプランジャ45が更に吸引される。このとき、プランジャ45と一体的に軸方向の一方側(ドレインモード方向)に移動するスプール6のストローク量は0.5〜2.5mmとなる。すなわち、スプール制御弁のスプール6やプランジャ45の移動位置は最進角位置に変更(設定)される。
【0045】
これにより、スプール6の外周に設けられた第1油路31を介して、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とドレイン側の第1オイル排出路14に繋がる第1ドレインポート24とが連通すると同時に、スプール6の外周に設けられた第2油路32を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とが連通する。したがって、電磁式油圧制御弁1の制御状態は、吸気可変バルブタイミング機構の進角油圧室3内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ遅角油圧室2内のオイルをドレインする最進角モードに変更(設定)される。
【0046】
それによって、吸気可変バルブタイミング機構の進角油圧室3内にオイルが供給され、遅角油圧室2内よりオイルが排出されることにより、ハウジング部材に対してベーン部材が進角油圧室3内の油圧力によって最進角側に回転する。これにより、例えばエンジンの中速中負荷時に、エンジンの吸気バルブの開閉タイミング(バルブタイミング)を大きく早める(進角させる)ことができるので、オーバーラップを拡大し、自己EGR(燃焼室内の残留ガス)を増加させて燃焼温度を低下させ、エンジンより排出される排気ガス中に含まれる有害物質(HC、NOx)の排出量を低減することができる。この場合には、ポンプの損失の低減にもつながり燃費も向上できる。
【0047】
ハ)エンジン停止時
エンジン停止前には、エンジン回転数がアイドル回転数の可能性が高く、ECUにより上述したように最遅角制御されており、ハウジング部材に対してベーン部材が最大遅角位置付近で停止している。そして、ECUは、イグニッションスイッチをOFFしたと判断した時に、電磁式油圧制御弁1の制御状態を上述の最進角モードとなるように変更する。これにより、進角油圧室3内にオイルが供給され、遅角油圧室2内からオイルがドレインされる。しかし、エンジン停止後はオイルポンプ4の吐出量が少なく、進角油圧室3内の油圧が低下してベーン部材の最進角側への移動がし難くなるが、例えばハウジング部材のチェーンスプロケットのスプリング収納溝内に収容されたスプリングのスプリング力および進角油圧室3内の油圧力によってハウジング部材に対してベーン部材が進角側へ回転する。これにより、ハウジング部材に対してベーン部材が最遅角位置と最進角位置との中間位置(中間ロック位相)以上に進角する。その後に、ECUがクランク角センサとカム角センサからの信号によってハウジング部材に対するベーン部材の位相が中間ロック位相以上に進角したことを確認すると、ソレノイド部のソレノイドコイル44への通電を停止する。
【0048】
ニ)ドレインモード(始動時モード)
ECUは、ソレノイド部のソレノイドコイル44に最大値(例えば0.9A)以上の駆動電流値を流すように通電量を制御する。したがって、ソレノイドコイル44を流れる駆動電流値が最大値以上の時には、ソレノイドコイル44の起磁力が最大値以上となるので、ステータコア42の吸引部54にプランジャ45が更に吸引される。このとき、プランジャ45と一体的に軸方向の一方側(ドレインモード方向)に移動するスプール6のストローク量は3.6mm以上となる。すなわち、スプール制御弁のスプール6やプランジャ45の移動位置は始動位置(ドレイン位置)に変更(設定)される。
【0049】
これにより、図3に示したように、スプール6の外周に設けられた第1油路31を介して、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とドレイン側の第1オイル排出路14に繋がる第1ドレインポート24とが連通すると同時に、スプール6の外周に設けられた第2油路32を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とが連通する。さらに、スプール6の外周に設けられた第3油路33を介して、第3オイル供給路13と第2ドレインポート25とを連通する連通ポート23とドレイン側の第2オイル排出路15に繋がる第2ドレインポート25とが連通する。したがって、電磁式油圧制御弁1の制御状態は、進角油圧室3内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ遅角油圧室2内のオイルと進角油圧室3内のオイルの両方をドレインするドレインモード(始動時モード:図3参照)に変更(設定)される。
【0050】
それによって、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2内および進角油圧室3内のオイルが排出されることにより、エンジン停止後に中間ロック位相以上に進角した位置に存するベーン部材が、イグニッションスイッチのONと同時に、カムシャフトの駆動トルクの増加により遅角側に移動したり、スプリングの最進角方向の付勢力により進角側に移動したりしてばたつきながら、中間ロック位相まで遅角すると、ベーン部材と共に一体的に遅角側に移動したロックピンがこのロックピンを嵌合穴に嵌合する方向に付勢するスプリング等の付勢手段の付勢力によってハウジング部材の嵌合穴に嵌合する。これにより、ベーン部材が中間ロック位相でロックされるので、ハウジング部材とベーン部材との相対回転運動が拘束されるため、エンジンの吸気バルブの開閉タイミングが略中間の位相でエンジンを始動することができる。
【0051】
それによって、エンジンの吸気バルブの開閉タイミングと排気バルブの開閉タイミングとが重なる(オーバーラップ)のを防ぐことができるので、エンジンを確実に始動することができる。したがって、中間ロック位相でエンジン始動が可能となることにより、吸気バルブがエンジン冷間時のエンジン始動に適した最適な開閉タイミングとなるので、エミッションを改善でき、エンジン始動不良がなくなり、エンジン始動時間を短縮できる。また、エンジン暖機後の燃費向上に適した最適な開弁タイミングとなるので、エンジン出力の向上やエミッションを改善できる。
【0052】
[第1実施例の特徴]
以上のように、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2または進角油圧室3にオイルポンプ4の油圧を選択的に給排することが可能な電磁式油圧制御弁1は、図1に示したように、スプール制御弁(弁部)とソレノイド部(電磁駆動部)とから構成されている。そして、ソレノイド部のソレノイドコイル44で発生する起磁力は、プランジャ45によりシャフト46を介してスプール(弁体)6に伝わる。このとき、弁部に設けられたスプリング(バネ)7の付勢力により円筒状のスリーブ5に対するスプール6が軸方向の任意の移動位置で保持することが可能となっている。
【0053】
この電磁式油圧制御弁1は、図12に示した現状の電磁式油圧制御弁300の機能(エンジンの吸気バルブの開閉タイミング、ハウジング部材に対するベーン部材の位相を最遅角位相から最進角位相まで任意の位置に保持できる機能)に、進角油圧室3内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ遅角油圧室2内のオイルと進角油圧室3内のオイルの両方をドレインするドレインモード機能を追加するために、弁部を構成するスリーブ5のストローク量(例えば3.6mm:図6のグラフ参照)を現状のストローク量(例えば2.3mm:図7のグラフ参照)よりも大きくする必要がある。
【0054】
そこで、本実施例の電磁式油圧制御弁1においては、図1ないし図4に示したように、磁気回路を構成するソレノイド部のプランジャ45とシャフト46とを軸方向で接触配置させることにより、プランジャ45へのシャフト46の圧入を廃止することで、プランジャ45の透過磁束を向上させて磁気回路効率を改善できる。また、磁気回路を構成するソレノイド部のステータコア42のテーパ部55に、図4および図5に示したように、吸引部54の外周側からヨーク41の内周筒部52に近づく程、外径が漸減するテーパ形状を持たせることにより、プランジャ45の側面への磁束漏れを少なくすると同時に、プランジャ45のストローク方向(図示左方向、ドレインモード方向)への磁束分配量が多くなる形状に形成している。したがって、ドレインモード機能が可能な要求ストローク(例えば3.6mm)が得られる。
【0055】
さらに、磁気回路を構成するソレノイド部のステータコア42の吸引部54の図示右側端面(対向面)とプランジャ45の図示左側端面(対向面)との対向面距離を、ドレインモード(図3参照)の時に所定値(例えば0.5mm)以下に近接させることにより、磁束の流れを上げることで、ドレインモード機能が可能な要求ストローク(例えば3.6mm)を得られるようにしている。したがって、図12に示した現状の電磁式油圧制御弁300の外径や全長を変えることなく、スプール6とプランジャ45のストロークを延長させることができる。これにより、本実施例の電磁式油圧制御弁1は、弁部を構成するスリーブ5の要求ストロークを実現できるので、現状の電磁式油圧制御弁300の機能にドレインモード機能を追加することができる。
【0056】
[第2実施例]
図8および図9は本発明の第2実施例を示したもので、図8は最遅角モード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した図で、図9はドレインモード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した図である。
【0057】
本実施例の電磁式油圧制御弁1は、側面油圧供給型の1ドレイン中空スプール弁タイプのスプール制御弁であり、弁部材としての中空スプール9がスリーブ8内を往復移動することにより吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2および進角油圧室3に対するオイルポンプ4の油圧を給排するスプール制御弁(弁部)と、電流を供給することにより磁気吸引力を発生する電磁駆動部(ソレノイド部)とを備え、第1〜第3オイル供給路11〜13とオイルポンプ4側のオイル供給路10およびドレイン側のオイル排出路16とを相対的に切り替え制御できるように構成されている。なお、ソレノイド部は、第1実施例と同様な構造のため説明を省略する。
【0058】
弁部は、第1〜第3オイル供給路11〜13とオイル供給路10およびオイル排出路16との間に配された円筒状のスリーブ(弁本体)8と、このスリーブ8内に摺動自在に収納された中空スプール(弁体)9とから構成されている。本実施例では、スリーブ8の先端側の円環状の前壁部と中空スプール9の先端側に設けられた軸方向孔70との間に、中空スプール9を最遅角方向、つまり図示右方向(ソレノイド部側)に付勢するスプール付勢手段およびプランジャ付勢手段(可動子付勢手段)としてのスプリング(バネ)7を配置している。
【0059】
スリーブ8の側面(図示下端側面)には、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20が形成されている。また、スリーブ8の側面(図示上端側面)には、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21、進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22、およびドレインモード時に第3オイル供給路13と第2ドレインポート29とを連通する連通ポート23が形成されている。さらに、スリーブ8の軸方向の先端面(図示左端面)には、ドレイン側のオイル排出路16に繋がるドレインポート29が形成されている。
【0060】
中空スプール9の外周には、軸方向の図示右端部から図示左端部へ向かって2個の第1、第2ランド部71、72が設けられ、中空スプール9の内部にはスリーブ8の入力ポート20に連通する大径の軸方向孔70が設けられている。この軸方向孔70は、図示左端部が開口しており、図示右端部が閉塞している。第1ランド部71には、スリーブ8の遅角ポート21と軸方向孔70とを連通可能な第1連通口73が周方向に設けられている。また、第2ランド部72には、スリーブ8の進角ポート22と軸方向孔70とを連通可能な第2連通口74が周方向に設けられている。
【0061】
また、第1、第2ランド部71、72間には、スリーブ8の遅角ポート21または進角ポート22のいずれか一方を入力ポート20に連通可能な凹状の連通油路75を周方向に形成するための側面角部が円環状に設けられている。それらの第1、第2ランド部71、72の各側面角部は、オイルの流れを安定させるために面取り形状とされている。そして、中空スプール9の図示右端部に設けられた連結部34には、ソレノイド部のシャフト46の図示左端部を圧入固定するための小径の軸方向孔35が形成されている。なお、シャフト46の図示左端部によって大径の軸方向孔70の図示右端部が閉塞される。
【0062】
本実施例の電磁式油圧制御弁1は、第1実施例と同様にして、ソレノイド部のソレノイドコイル44を流れる駆動電流の増加に応じて増大する起磁力(図示左方向の吸引力)とスプリング7の付勢力(図示右方向のスプリング力)とのバランスによって中空スプール(弁体)9やプランジャ(可動子)45の移動位置を任意の位置に保持できる構造、つまり吸気バルブの開閉タイミングを連続的に変更できる構造を備えている。
【0063】
なお、最遅角モード時には、図8に示したように、中空スプール9の外周に設けられた凹状の連通油路75を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とが連通すると同時に、中空スプール9の内部に設けられた軸方向孔70と第2連通口74を介して、進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とドレイン側のオイル排出路16に繋がるドレインポート29とが連通する。したがって、中空スプール9は、吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ進角油圧室3内のオイルをドレインする最遅角位置(図8参照)に固定される。
【0064】
最進角モード時には、中空スプール9の内部に設けられた軸方向孔70と第1連通口73を介して、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とドレイン側のオイル排出路16に繋がるドレインポート29とが連通すると同時に、中空スプール9の外周に設けられた凹状の連通油路75を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とが連通する。したがって、中空スプール9は、吸気可変バルブタイミング機構の進角油圧室3内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ遅角油圧室2内のオイルをドレインする最進角位置に固定される。
【0065】
ドレインモード時には、図9に示したように、中空スプール9の内部に設けられた軸方向孔70と第1連通口73を介して、遅角油圧室2側の第1オイル供給路11に繋がる遅角ポート21とドレイン側のオイル排出路16に繋がるドレインポート29とが連通すると同時に、中空スプール9の外周に設けられた凹状の連通油路75を介して、オイルポンプ4側のオイル供給路10に繋がる入力ポート20と進角油圧室3側の第2オイル供給路12に繋がる進角ポート22とが連通する。さらに、中空スプール9の内部に設けられた軸方向孔70と第2連通口74を介して、第3オイル供給路13に繋がる連通ポート23とドレイン側のオイル排出路16に繋がるドレインポート29とが連通する。したがって、中空スプール9は、進角油圧室3内にオイルポンプ4の油圧を供給し、且つ遅角油圧室2内のオイルと進角油圧室3内のオイルの両方をドレインする始動時位置(ドレイン位置:図9参照)に固定される。
【0066】
[変形例]
本実施例では、本発明を、エンジンの吸気バルブの開閉タイミングを連続的に変えるための吸気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室2と進角油圧室3とに対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁1に適用した例を説明したが、本発明を、エンジンの排気バルブの開閉タイミングを連続的に変えるための排気可変バルブタイミング機構の遅角油圧室と進角油圧室とに対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁に適用しても良い。また、エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングを連続的に変えるための吸排気可変バルブタイミング機構の各遅角油圧室と各進角油圧室とに対して選択的に油圧を給排するための電磁式油圧制御弁に適用しても良い。
【0067】
本実施例では、軸方向の弁部側とは逆側に配される第1固定子としてヨーク41、軸方向の弁部側に配される第2固定子としてステータコア42を設けたが、軸方向の弁部側とは逆側に配される第1固定子としてステータコア、軸方向の弁部側に配される第2固定子としてヨークを設けても良い。この場合には、ステータコアの円筒壁部が第1筒壁部となり、ヨークの内周筒部に吸引部やテーパ状の円筒壁部(第2筒壁部)が設けられる。
【0068】
本実施例では、本発明の電磁弁として、側面油圧供給型の2ドレインスプール弁タイプの弁部を備えた電磁式油圧制御弁1や、側面油圧供給型の1ドレイン中空スプール弁タイプの弁部を備えた電磁式油圧制御弁1を用いた例を説明したが、本発明の電磁弁として、先端面油圧供給型の1ドレイン中空スプール弁タイプの弁部を備えた電磁式油圧制御弁を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の電磁式油圧制御弁を示した断面図である。
【図2】最遅角モード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した断面図である。
【図3】ドレインモード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した断面図である。
【図4】本発明の第1実施例の電磁式油圧制御弁のソレノイド部を示した断面図である。
【図5】本発明の第1実施例の電磁式油圧制御弁のソレノイド部の主要構造を示した説明図である。
【図6】本発明の第1実施例の電磁式油圧制御弁の駆動電流値に対するストローク量を示したグラフである。
【図7】現状の電磁式油圧制御弁の駆動電流値に対するストローク量を示したグラフである。
【図8】最遅角モード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した断面図である(第2実施例)。
【図9】ドレインモード時の電磁式油圧制御弁の制御状態を示した断面図である(第2実施例)。
【図10】内燃機関用バルブタイミング調整装置を示した断面図である。
【図11】内燃機関用バルブタイミング調整装置を示した概略図である。
【図12】現状の電磁式油圧制御弁を示した断面図である。
【符号の説明】
1 電磁式油圧制御弁(電磁弁)
2 遅角油圧室
3 進角油圧室
4 オイルポンプ(油圧源)
5 スリーブ(弁本体)
6 スプール(弁体)
10 オイル供給路(油圧源側の油路)
11 第1オイル供給路(遅角油圧室側の油路)
12 第2オイル供給路(進角油圧室側の油路)
13 第3オイル供給路
14 第1オイル排出路(ドレイン側の油路)
15 第2オイル排出路(ドレイン側の油路)
20 入力ポート
21 遅角ポート
22 進角ポート
23 連通ポート
24 第1ドレインポート(ドレインポート)
25 第2ドレインポート(ドレインポート)
41 ヨーク(固定子)
42 ステータコア(固定子)
43 コイルボビン
44 ソレノイドコイル(コイル)
45 プランジャ(可動子)
46 シャフト
52 内周筒部(第1筒壁部)
54 吸引部
55 テーパ部(第2筒壁部)

Claims (5)

  1. 内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの少なくとも一方の開弁・閉弁時期を変更する吸排気可変バルブタイミング機構の進角油圧室または遅角油圧室に対して油圧源の油圧を選択的に給排する電磁弁であって、
    (a)前記遅角油圧室側の油路に繋がる遅角ポート、前記進角油圧室側の油路に繋がる進角ポート、前記油圧源側の油路に繋がる入力ポート、およびドレイン側の油路に繋がるドレインポートを有し、
    且つ前記進角油圧室側の油路と前記ドレインポートとを連通する連通ポートを有する筒状のスリーブと、
    (b)このスリーブ内に収容されて、
    少なくとも、前記遅角ポートと前記入力ポートとを連通し、前記進角ポートと前記ドレインポートとを連通する最遅角モードと
    前記遅角ポートと前記ドレインポートとを連通し、前記進角ポートと前記入力ポートとを連通する最進角モードと
    前記遅角ポートと前記ドレインポートとを連通し、前記進角ポートと前記入力ポートとを連通し、前記進角ポートおよび前記連通ポートと前記ドレインポートとを連通するドレインモードと
    の間を往復移動可能なスプールと、
    (c)このスプールを軸方向の一方側に駆動することが可能な可動子と、
    (d)前記スプールと前記可動子とを連結すると共に、前記スプールおよび前記可動子と一体的に軸方向に移動することが可能なシャフトと、
    (e)前記可動子を、軸方向の一方側に吸引する起磁力を発生するコイルと、
    (f)前記可動子を、軸方向の他方側に付勢する付勢力を発生する付勢手段と、
    (g)前記可動子と共に磁気回路を形成する固定子であって、前記可動子の外周を覆う第1筒壁部、前記可動子を軸方向の一方側に吸引する吸引部、およびこの吸引部の外周側に一体的に設けられ、且つ前記第1筒壁部との間に軸方向の隙間を隔てて設けられた第2筒壁部を有する固定子と
    を備え、
    前記可動子は、前記シャフトの軸方向の一端部に接触配置され、
    前記スプールは、前記シャフトの軸方向の他端部を圧入固定したことを特徴とする電磁弁。
  2. 請求項1に記載の電磁弁において、
    前記固定子の第2筒壁部は、前記吸引部の外周側から前記第1筒壁部に近づく程、外径が漸減するテーパ形状に形成されていることを特徴とする電磁弁。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電磁弁において、
    前記固定子の吸引部と前記可動子との対向面距離を、前記ドレインモードの際に所定値以下に近接配置させることを特徴とする電磁弁。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電磁弁において、
    前記スリーブと前記スプールとからなる弁部として、側面油圧供給型の2ドレインスプール弁タイプの弁部を用いたことを特徴とする電磁弁。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電磁弁において、
    前記スリーブと前記スプールとからなる弁部として、側面油圧供給型の1ドレイン中空スプール弁タイプの弁部を用いたことを特徴とする電磁弁。
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