JP6482407B2 - 多段振り子式チューンド・マス・ダンパー - Google Patents

多段振り子式チューンド・マス・ダンパー Download PDF

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本発明は、複数のフレームを順次同軸的に吊持して最内側のフレームによって錘を水平移動自在に吊持した多段振り子式のTMD(チューンド・マス・ダンパー)に関するものである。
近年、長周期・長時間地震動に対する超高層建物の振動制御技術として、これまで強風等に起因する建物の微小振動に対する制振技術として用いられてきた風揺用TMD(チューンド・マス・ダンパー)を大型化・大ストローク化して、地震の大振幅の揺れの制御にまで適用範囲を広げた各種の地震用TMDが開発されている。
このような地震用TMDの一種として、下記特許文献1においては、大径筒状の固定フレームの内側に順次中径筒状および小径筒状の移動フレームを同軸的に吊持し、最内側の移動フレームに複数本の吊り材によって振動体を水平移動自在に吊持して多段振り子式のTMDとすることにより、吊り長さを確保しつつ全体の高さを低減したものが提案されている。
図2は、この種の多段振り子式TMDを示すもので、このTMD10は、建物11の屋上部に立設された筒状の外側フレーム12と、この外側フレーム12内に配置されて外側フレーム12の上部から複数本のロープ13によって水平移動自在に吊持された筒状の中間フレーム14と、この中間フレーム14内に配置されて中間フレーム14の上部から複数本のロープ15によって水平移動自在に吊持された内側フレーム16と、この内側フレーム16の中心部に複数本のロープ17を介して吊持された錘18とを備えたものである。
ところで、上記構成からなる多段振り子式TMDにおいては、地震時に上下地震動によって、錘18が上下方向に振動して浮き上がりを生じ、これによりTMDとしての性能劣化や破損が生じるおそれがある。
これを解決する手段として、上記錘18の上下方向の振動を抑制するために、建物11とTMDの錘18とを上下方向にオイルダンパー19で接続して上記錘18の上下方向の振動を低減させる方法が考えられる。
しかしながら、上記錘18にオイルダンパー19を上下方向に接続しようとすると、地震時に錘18が揺動した際に、オイルダンパー19も大きく変形するため、オイルダンパー19のストロークが足りなくなって破損することが想定される。
そこで、図3に示すように、外側フレーム12と中間フレーム14との間、中間フレーム14と内側フレーム16との間および内側フレーム16と錘18との間に、それぞれロープ13、15、ロープ17と並列的にオイルダンパー20を設置する方法も提案されている。上記多段振り子式TMDによれば、各オイルダンパー20の鉛直変形が錘18の上下動の1/3になるために、ストロークを超えて破損する虞がないという利点がある。
ところが、上記TMDにあっては、逆に各々のオイルダンパー20の鉛直変形が小さいために、振動エネルギーの吸収効率が悪いという欠点があり、所望の効果を得るためには多くの台数のオイルダンパー20を設置しなければならないという問題点があった。
特開平7−34720号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、少ない台数のダンパーによって、しかも大きなストロークを要することなく錘の上下振動を効果的に抑制することができる多段振り子式TMDを提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、構造物に立設されたフレーム内に、順次外側のフレームの上部から複数本の吊り材を介して吊持された1以上のフレームが同軸的に配置され、最も内側の上記フレームの上部から複数本の吊り材を介して錘が吊持された多段振り子式TMDにおいて、上記フレームまたは上記錘を吊持する上記複数本の吊り材のうちの一箇所の上記複数本の吊り材の鉛直剛性を、他の箇所の上記複数本の吊り材の鉛直剛性よりも小さくし、かつ当該一箇所の上記複数本の吊り材と並列的に上記フレーム間または上記フレームと上記錘との間にダンパーを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記一箇所の上記複数本の吊り材の総断面積を、他の箇所の上記複数本の吊り材の総断面積よりも小さくしたことを特徴とするものである。
多段振り子式のTMDにおいては、錘の上下方向の変位に対して、上記多段のフレームおよび錘を吊持する吊り材が直列的に配置されていることになる。
そして、請求項1または2に記載の発明においては、そのうちの一箇所に配設された複数本の吊り材の鉛直剛性を、他の箇所に配設されている複数本の吊り材の鉛直剛性よりも小さくしているために、上記錘の上下方向の変位が最も鉛直剛性が小さい上記一箇所に配設された複数本の吊り材に集中することになる。
そして、当該一箇所に上記上下振動を吸収するダンパーを配置しているために、少ない台数のダンパーによって、しかも大きなストロークを要することなく錘の上下振動を効果的に抑制することができる。この際に、上記吊り材の鉛直剛性を変えても、錘の水平方向の揺動の周期に影響を与えることは無い。
ここで、上記一箇所に配置される複数本の吊り材の鉛直剛性を、他の箇所に配置される複数本の吊り材の鉛直剛性よりも小さくする態様としては、吊り材自体の材質を異なる鉛直剛性のものに変える構成を採用することもできるが、上記吊り材として同じ材質のものを用いる場合には、請求項2に記載の発明のように、上記一箇所の複数本の吊り材の総断面積を、他の箇所の複数本の吊り材の総断面積よりも小さくすることにより容易に対応することができる。
さらに、上記一箇所の複数本の吊り材の総断面積を小さくする態様としては、他の箇所の吊り材の本数と同じ本数であって、かつ1本ごとの断面積を小さくする構成や、上記一箇所において、他の箇所の吊り材と同じ断面積の吊り材を用い、かつその本数を減じる構成を採用することができる。
本発明の一実施形態を示す縦断面視した概略構成図である。 上記一実施形態を示す正面図である。 図2の平面図である。 従来の多段振り子式TMDを示す縦断面視した概略構成図である。 従来の他の多段振り子式TMDを示す縦断面視した概略構成図である。
図1〜図3は、本発明に係る多段振り子式TMDの一実施形態を示すものである。
このTMD1は、建物2の屋上部に立設された外側フレーム3と、この外側フレーム3内に同軸的に配設された中間フレーム4と、この中間フレーム4内に同軸的に配設された内側フレーム5と、この内側フレーム5の中心部に配設された錘6とを備えたものである。
ここで、外側フレーム3は、4本の柱材3aの上端部が桁材3bで連結された長方形の骨組みで、対向する一対の長辺の桁材3bの両端部分に、桁材3b間に跨って一対の梁3cが固定されている。そして、これら一対の梁3cの両端部分から垂下された複数本(図では合計4本)のロープ(吊り材)7によって中間フレーム4が上記外側フレーム3内において水平移動自在に吊持されている。
この中間フレーム4は、長方形に組まれた下枠材4aと、この下枠材4aの四隅に立設された柱材4bと、これら柱材4bの上端部を連結する桁材4cとを備えた枠体で、下枠材4aが上記ロープ7によって吊持されている。
また、対向する一対の長辺の桁材4cの両端部分に、桁材4b間に跨って一対の梁4dが固定され、これら一対の梁4dの両端部分から垂下された複数本(図では合計4本)のロープ(吊り材)7によって内側フレーム5が上記中間フレーム4内において水平移動自在に吊持されている。
この内側フレーム5も、中間フレーム4を小型にした枠材で、長方形に組まれた下枠材5aと、この下枠材5aの四隅に立設された柱材5bと、これら柱材5bの上端部を連結する桁材5cとを備え、下枠材5aが上記ロープ7によって吊持されている。
そして、対向する一対の長辺の桁材5cの両端部分に、桁材5b間に跨って一対の梁5dが固定され、これら一対の梁5dの両端部分から垂下された複数本(図では合計4本)のロープ(吊り材)8によって錘6が上記内側フレーム5内において水平移動自在に吊持されている。
そして、このTMDにおいては、最も内側に位置する錘6を吊持するロープ8として、その断面積が他のロープ7の断面積よりも小さいものが用いられている。これにより、内側フレーム5と錘6との間(一箇所)に配置された複数本のロープ8の総断面積が、外側フレーム3と中間フレーム4との間および中間フレーム4と内側フレーム5との間(他の箇所)に配置されたロープ7の総断面積よりも小さくなっている。そして、鍔部5aと錘6との間に、オイルダンパー9がロープ8と並列的に設けられている。
以上の構成からなる多段振り子式TMDにおいては、内側フレーム5と錘6との間に配設されたロープ8の総断面積を、他の箇所に配設されたロープ7の総断面積よりも小さくすることにより、複数本のロープ8による鉛直剛性を複数本のロープ7による鉛直剛性よりも小さくしているために、錘6の上下方向の変位が最も鉛直剛性が小さいロープ8に集中することになる。
そして、これらロープ8と並列的に上記上下振動を吸収するオイルダンパー9を配置しているために、図3に示した従来の多段振り子式TMDと比較して、より少ない台数のオイルダンパー9によって、かつ大きなストロークを要することなく錘6の上下振動を効果的に抑制することができる。
なお、上記実施形態においては、内側フレーム5と錘6との間(一箇所)に配置されたロープ8の断面積を、外側フレーム3と中間フレーム4との間および中間フレーム4と内側フレーム5との間(他の箇所)に配置されたロープ7の断面積よりも小さくすることにより、上記ロープ8の総断面積を他の箇所に配置されたロープ7の総断面積よりも小さくした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、ロープ7、8として、同じ断面積の同一製品を用いるとともに、外側フレーム3と中間フレーム4との間および中間フレーム4と内側フレーム5との間(他の箇所)に配置されるロープ7の本数を、内側フレーム5と錘6との間(一箇所)に配置されるロープ8本数よりも多くすることにより、上記ロープ8の総断面積を他の箇所に配置されたロープ7の総断面積よりも小さくして同様の効果を得ることができる。加えて、この場合には、ロープ7、8として同一規格のものを用いることができるという利点もある。
1 多段振り子式TMD
3 外側フレーム
4 中間フレーム
5 内側フレーム
6 錘
7、8 ロープ(吊り材)
9 オイルダンパー(ダンパー)

Claims (2)

  1. 構造物に立設されたフレーム内に、順次外側のフレームの上部から複数本の吊り材を介して吊持された1以上のフレームが同軸的に配置され、最も内側の上記フレームの上部から複数本の吊り材を介して錘が吊持された多段振り子式チューンド・マス・ダンパーにおいて、
    上記フレームまたは上記錘を吊持する上記複数本の吊り材のうちの一箇所の上記複数本の吊り材の鉛直剛性を、他の箇所の上記複数本の吊り材の鉛直剛性よりも小さくし、かつ当該一箇所の上記複数本の吊り材と並列的に上記フレーム間または上記フレームと上記錘との間にダンパーを設けたことを特徴とする多段振り子式チューンド・マス・ダンパー。
  2. 上記一箇所の上記複数本の吊り材の総断面積を、他の箇所の上記複数本の吊り材の総断面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の多段振り子式チューンド・マス・ダンパー。
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