JP6482388B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
窒素を含むIII−V族化合物半導体(III族窒化物半導体)は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光のエネルギーに相当するバンドギャップエネルギーを有する。そのため、III族窒化物半導体は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光を発する発光素子の材料として、または、赤外領域から紫外領域の波長を有する光を受ける受光素子の材料として、有用である。
また、III族窒化物半導体では、III族窒化物半導体を構成する原子間の結合力が強く、絶縁破壊電圧が高く、飽和電子速度が大きい。これらのことから、III族窒化物半導体は、耐高温且つ高出力な高周波トランジスタなどの電子デバイスの材料としても有用である。さらに、III族窒化物半導体は、環境を害することが殆どないので、取り扱い易い材料としても注目されている。
このようなIII族窒化物半導体を用いた窒化物半導体発光素子では、基板上にn型窒化物半導体層、発光層、p型窒化物半導体層が順にエピタキシャル成長される。発光層として量子井戸構造を採用することが一般的である。電圧が窒化物半導体発光素子に印加されると、発光層を構成する量子井戸層において、n型窒化物半導体層から注入される電子とp型窒化物半導体層から注入されるホールとが再結合することで光が発生する。発光層は、一般に量子井戸層と障壁層(バリア層)とが交互に積層された多重量子井戸(Multiple Quantum Well:MQW)構造が一般的に採用されている。
発光層では、量子井戸層としてInGaN層を用い、障壁層としてGaN層を用いるのが一般的である。これにより、たとえば、発光ピーク波長が約450nmの青色LED(Light Emitting Device)を作製でき、この青色LEDを蛍光体と組み合わせて白色LEDを作製することもできる。障壁層としてAlGaN層を用いた場合には、障壁層と量子井戸層とのバンドギャップエネルギー差が増大するため発光効率が増すと考えられるが、GaNに比べてAlGaNの方が良質な結晶が得られにくいという問題も存在している。
多重量子井戸層を構成する量子井戸層、障壁層は、通常、一定の層厚保で繰り返し積層される場合が一般的である。これに対して、発光効率の向上のため、量子井戸層、障壁層の層厚を多重量子井戸層内で変動させる技術が提案されている。
たとえば、特許第5011699号公報(特許文献1)に記載された窒化物半導体発光素子では、n型窒化物半導体層側には量子井戸構造の第1の井戸層(組成:In0.14Ga0.86N、3nm厚)が配置され、p型窒化物半導体層側には第2の井戸層(組成:In0.11Ga0.89N、5nm厚)が配置されている。障壁層は組成:In0.01Ga0.99Nであり、層厚は15nmと一定である。第1の井戸層からの光の波長が第2の井戸層からの光の波長とほぼ一致するように、第1の井戸層の組成および厚み、ならびに、第2の井戸層の組成および厚みが調整されている。特許文献1には、薄い第1の井戸層は低い電流密度において効率良く発光し、厚い第2の井戸層は高い電流密度において効率良く発光し、電流密度に対する発光効率の依存性を調整できることが記載されている。
特許第5060637号公報(特許文献2)に記載された窒化物半導体発光素子では、n型窒化物半導体層側には第1から第7の井戸層としてInGaN層(厚さ:3nm、In組成比:0.15)が配置され、p型窒化物半導体層側井戸層(第8井戸層)となるInGaN層(厚さ:5nm、In組成比:0.14)が配置されている。障壁層は厚さ5nmのGaN層である。特許文献2には、この構成により広い電流密度範囲で高い発光効率が得られると記載されている。
米国特許出願公開第2011/0187294号明細書(特許文献3)に記載された窒化物半導体発光素子では、n型窒化物半導体層側には厚さt1の薄い井戸層が配置され、p型窒化物半導体層側(以下「p層側」と省略)には厚さt2の厚い井戸層が配置され、n型窒化物半導体層側(以下「n層側」と省略)からp層側に向けて、井戸層の層厚が徐々に変化する構造が開示されている。厚さt1は1.5nmから2.5nmであり、厚さt2は2.0nmから3.5nmであり、厚さt1より大きい。井戸層の厚さに応じて、In組成を変更する点も記載されている。障壁層の厚さとしては、厚さt3から厚さt4の間で変化する場合や一定の場合が記載されている。具体的な厚さは5nmから25nmの範囲とされ、厚さt3は5nm、厚さt4は15nmが例示されている。特許文献3には、n層側に同じ厚さの5層の薄い井戸層を配置し、その上に同じ厚さの5層の厚い井戸層を配置した構造(B)が大電流で光出力を大きくできると記載されている。
特開2009−99893号公報(特許文献4)に記載された窒化物半導体発光素子では、n層側に層厚8nmのn型GaN層からなる障壁層と層厚2nmのn型In0.25Ga0.75N層からなる井戸層を2周期堆積した上に、層厚6nmのn型GaN層からなる障壁層と層厚2nmのn型In0.15Ga0.85N層からなる井戸層を3周期堆積した発光層構造が開示されている。特許文献4には、多波長発光が可能なLED素子を実現できることが記載されている。
特許第5671244号公報(特許文献5)に記載された窒化物半導体発光素子では、n層側に各層の厚みが略等しい複数の第一障壁層を配置し、その上に第一障壁層より薄く、各層の厚みが略等しい複数の第二障壁層を配置した発光層が開示されている。井戸層は全て同じ厚さを有し、3nmのアンドープのIn0.57Ga0.43Nよりなり、障壁層はGaN層によって構成され、第一障壁層は15nm、第二障壁層は10nmである。第一障壁層が9層、第二障壁層が3層の組合せが、光出力が最も高く、印加電圧も低いと記載されている。特許文献5には、順方向電圧を低下して発光効率を改善できると記載されている。
国際公開第2014/061692号(特許文献6)に記載された窒化物半導体発光素子では、n層側に層厚3.38nmのIn0.20Ga0.75N層からなる井戸層と、層厚4.52nmのInGaN層からなる障壁層を6周期配置し、その上に層厚4.24nmのInGaN層からなる井戸層を2層、間に層厚4.52nmのInGaN層からなる障壁層を挟んで堆積した発光層構造が開示されている。なお、n層側の障壁層の一部はn型ドーピングされている。特許文献6では、発光効率を数%から十数%改善できることが記載されている。
特開2013−12684号公報(特許文献7)に記載された窒化物半導体発光素子では、n層側に層厚3.9nmのn型In0.13Ga0.87N層からなる井戸層と、層厚6.5nmのn型GaN層からなる障壁層を3周期配置し、その上に層厚3.9nmのアンドープIn0.13Ga0.87N層からなる井戸層を3層、間に層厚4.0nmのGaN層からなる障壁層を挟んで堆積した発光層構造が開示されている。特許文献7では、動作電圧の上昇を防ぎ、発光効率を向上できることが記載されている。
特許第5011699号公報 特許第5060637号公報 米国特許出願公開第2011/0187294号明細書 特開2009−99893号公報 特許第5671244号公報 国際公開第2014/061692号 特開2013−12684号公報
窒化物半導体発光素子の発光層に関しては、p層側の量子井戸層を厚くすることで大電流での出力低下を防ぎ、実使用電流域での発光効率を上げる、或いはp層側の障壁層を薄くすることで、n層側に配置された井戸層へも正孔を到達させ、発光効率を一層高めるといった改善が進められてきた。しかしいずれの改善も、量子井戸層の層厚に対して障壁層の層厚が大幅に大きい構造を用いていたため、得られる効果が少なく、且つ、動作温度の上昇と共に光出力が急速に低下するという課題を抱えていた。実際に市販の窒化物半導体発光素子では室温に比べて、80℃では発光効率が7%から10%程度低下することが一般的である。実際の窒化物半導体発光素子の動作では、このような温度上昇は珍しくなく、大きな課題となっている。良好な温度特性(80℃での発光効率/室温の発光効率と定義する)を有し、且つ、発光効率の優れた窒化物半導体発光素子が必要とされている。
一般に窒化物半導体では正孔の移動度が低いため、p型窒化物半導体層から発光層に注入された正孔が、p層側の量子井戸層に滞留する傾向が強く、p層側の量子井戸層ではキャリア濃度が高くなる。その結果、一般に窒化物半導体発光素子が使われる電流注入領域(10A/cm以上)では、オージェ効果などによる非発光再結合が増加し、発光効率が低下する傾向となる。したがって、p層側の量子井戸層の層厚を増すことは、量子井戸層内のキャリア濃度を下げる効果が有り、有効な改善手段である。また、p層側の障壁層を薄くすることは、正孔のn層側の量子井戸層への移動を増やし、p層側の量子井戸層内のキャリア濃度を下げると共に、n層側の量子井戸層にも正孔を供給し、発光を増加させる効果があり(キャリア分布の均一化)、有効な手段である。しかし量子井戸層を厚くすることや障壁層を薄くすることは、量子井戸層に結晶欠陥が生じ易くするため、欠陥による非発光再結合を増加させ、発光効率の低下を招く虞がある。これは量子井戸層が原子半径の大きなIn原子を多量に含むため、障壁層を構成するGaN層との格子不整合が増加するためである。
温度が上昇すると一般に非発光再結合が活性化され、発光効率は低下する。障壁層が厚い場合、キャリアは量子井戸層に閉じ込められるため、この温度上昇による発光効率の低下が顕著に現れると考えられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、温度特性に優れ、発光効率がさらに改善された窒化物半導体発光素子を提供することである。
本発明者らは、発光層において多重量子井戸を構成する障壁層の平均層厚を4nm以下とし、同時に多重量子井戸を構成する量子井戸層の平均層厚より小さくすることで、良好な温度特性を保ちながら発光効率を高められることを見出した。また、多重量子井戸を構成する量子井戸層のうち、p層側に位置する量子井戸層の層厚をn層側の量子井戸層より大きいかまたは等しくすることで、光出力を更に向上できることを見出した。
障壁層を薄くすることで、正孔がより下層の量子井戸層まで分布し、上層の量子井戸層内でのキャリア密度が下がり、発光効率が向上する。前述のように、温度が上昇すると発光効率は低下するが、障壁層が薄い場合には、発光層を構成する量子井戸層間の正孔の分布が温度上昇により均一化するため、温度上昇による発光効率の低下をキャリア分布の均一化による発光効率の改善効果がある程度打消し、温度特性を改善することができると考えられる。
本発明は、基板と、当該基板上に形成されたn型窒化物半導体層と、発光層と、p型窒化物半導体層とを少なくとも備える窒化物半導体発光素子であって、前記発光層は多重量子井戸層より構成され、前記多重量子井戸層はアンドープであるか、n型またはp型不純物濃度が1×1017cm−3以下であり、前記多重量子井戸層を構成する複数の障壁層はAlx1Iny1Ga1−x1−y1N(0≦x1<1、0≦y1<1)からなり、平均層厚が4nm以下であり、前記多重量子井戸層を構成する複数の量子井戸層はAlx2Iny2Ga1−x2−y2N(0≦x2<1、0<y2<1)からなり、前記複数の量子井戸層の平均層厚が前記障壁層の平均層厚より大きいかまたは等しいことを特徴とする。
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記多重量子井戸層の中央の層より前記p型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の最大層厚が、前記多重量子井戸層の中央の層より前記n型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きいことが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記多重量子井戸層の中央の層より前記p型窒化物半導体層側に位置する複数の量子井戸層の各層が、前記多重量子井戸層の中央の層より前記n型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きい層厚を有することが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、前記障壁層は、全て略同じ層厚であることが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記多重量子井戸層を構成する量子井戸層のうち最も層厚が大きい量子井戸層のIn含有率は、前記多重量子井戸層の中央より前記n型窒化物半導体層までの間に存在する量子井戸層のIn含有率の平均値より少ないことが好ましい。
本発明では、窒化物半導体発光素子の温度特性を改善すると共に、発光効率を更に改善できる。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の断面図である。 図2(a)は、図1に示した窒化物半導体発光素子の発光層の拡大図であり、図2(b)は、本発明における多重量子井戸層の一例の透過電子顕微鏡写真である。 図1に示した窒化物半導体発光素子の平面図である。 本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の発光層を積層する直前の面に対してAFM(Atomic Force Microscopy)による観察を行った結果を示す画像である。 本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の中間層を積層した直後の面に対してAFM(Atomic Force Microscopy)による観察を行った結果を示す画像である。 実施例1の窒化物半導体発光素子の特性比較を示すグラフであり、図6(a)において縦軸は120mAでの光出力(mA)、横軸は障壁層の層厚(nm)であり、図6(b)において縦軸は温度特性、横軸は障壁層の層厚(nm)である。 実施例2の窒化物半導体発光素子の特性比較を示すグラフであり、図7(a)において縦軸は120mAでの光出力(mA)、横軸は第8量子井戸層(QW8)の層厚(nm)であり、図7(b)において縦軸は温度特性、横軸は第8量子井戸層(QW8)の層厚(nm)である。 実施例3、4の窒化物半導体発光素子の特性比較を示すグラフであり、左側の縦軸は120mAでの光出力(mA)、右側の縦軸は温度特性である。 実施例6の窒化物半導体発光素子の発光層を積層する直前の面に対してAFM(Atomic Force Microscopy)による観察を行った結果を示す画像である。
以下、本発明の窒化物半導体発光素子について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、層厚、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
以下では、位置関係を表すために、図1の下側に記載した部分を「下」と表現し、図1の上側に記載した部分を「上」と表現することがある。これは、便宜上の表現であり、重力方向に対して定められる「上」及び「下」とは異なる。
発光層を構成する多重量子井戸層について、n型窒化物半導体層側から順にQW1、QW2、…と記号付けし、最もp型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層をLQWと記す。本明細書では、QW1からLQWまでを発光層と定義する。発光層内の障壁層はn型窒化物半導体層側から順にQB1、QB2、…と記号付ける。発光層の最上層であるLQWとp型窒化物半導体層の間に、中間層(IM)を配置している。
以下では、「不純物濃度」と、n型不純物のドープに伴い発生する電子の濃度またはp型不純物のドープに伴い発生する正孔の濃度である「キャリア濃度」とを用いている。ここで、「キャリアガス」とは、III族原料ガス、V族原料ガスおよび不純物原料ガス以外のガスである。キャリアガスを構成する原子は膜中などに取り込まれない。
「n型窒化物半導体層」は、電子の流れを実用上妨げない程度の層厚の低キャリア濃度のn型層またはアンドープ層を含んでいてもよい。「p型窒化物半導体層」は、ホールの流れを実用上妨げない程度の層厚の低キャリア濃度のp型層またはアンドープ層を含んでいてもよい。「実用上妨げない」とは、窒化物半導体発光素子の動作電圧が実用的なレベルであることをいう。
<窒化物半導体発光素子の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の断面図であり、図3に示すI−I線における断面図に相当する。図2(a)は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の発光層の拡大図である。図3は、窒化物半導体発光素子1の平面図である。
図1に示す窒化物半導体発光素子1は、基板3と、バッファ層5と、下地層7と、n型コンタクト層8と、n型バッファ層11と、発光層14と、中間層15、p型窒化物半導体層19とを備える。n型バッファ層11は通常低温n型窒化物半導体層(Vピット20の発生層)9と多層構造体10などの複数の構造よりなるが、本発明の主題では無いので、詳述はしない。p型窒化物半導体層19は、通常、下側からp型AlGaN層16、p型GaN層17、p型コンタクト層18の積層構造からなるが、本発明の主題では無いので、詳述はしないが、従来公知の適宜の構成を特に制限なく適用することができる。
n型コンタクト層8の一部とn型バッファ層11と発光層14とp型窒化物半導体層19(p型AlGaN層16、p型GaN層17およびp型コンタクト層18)とは、エッチングされてメサ部30を構成している。p型コンタクト層18の上面には、透明電極23を介してp側電極25が設けられている。メサ部30の外側(図1における右側)では、n型コンタクト層8の露出面にはn側電極21が設けられている。透明保護膜27は、透明電極23とエッチングにより露出した各層の側面とを覆っており、n側電極21とp側電極25とは、透明保護膜27から露出している。
基板3、バッファ層5、下地層7、n型コンタクト層8については、公知の技術によって構成されており、本発明とは直接関係無いため、詳細な説明は割愛する。その材質、組成、形成方法、形成条件、層厚、不純物濃度など、種々の組み合わせが可能である。なお、近紫外線から紫外線を発光する窒化物半導体素子では、下地層7およびn型コンタクト層8がいずれもAlGaN層で構成されることが好ましい。
また、図3の窒化物半導体発光素子1の平面図に関しても、本発明とは直接関係無いため、詳細な説明は割愛する。種々の平面配置が可能であると共に、フリップチップ構成のチップに対しても、本発明は適用可能である。
本発明の多重量子井戸層は極めて薄い障壁層によって構成されており、多重量子井戸層をエピタキシャル成長させる下地構造の結晶性に乱れが多いと、量子井戸層に結晶欠陥が発生し、発光素子の特性は悪化する。ここで、図4は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の発光層を積層する直前の面に対してAFM(Atomic Force Microscopy:原子間力顕微鏡)による観察を行った結果を示す画像である。本発明者らの検討結果によれば、図4に示す発光層14形成直前の状態のウエハ表面をAFMで観察した像に見られる黒い六角形状のパターンの密度が重要であることが判明した。前記黒い六角形状のパターンはVピットと呼ばれており、下層から伸びて来た転位がn型バッファ層11を経て、六角錐状の穴として顕在化した物と考えられている。したがって、Vピットの密度は転位密度に対応していると考えられ、Vピット密度は低いほど、転位密度も低く、良好な結晶性を実現できていると考えられる。実際に、Vピット密度が2.5×10cm−2以下であれば、4nm以下の層厚の障壁層を有する多重量子井戸層においても、発光特性の劣化が生じないことが分かった。因みに、市場で得られる多くの青色LED素子では、少なくともこの2倍以上のVピット密度を有している。
更に、Vピットサイズも発光特性や歩留りを向上する上で重要である。発光層14形成直前状態でのVピットサイズを60nmから100nmに制御することが好ましい。Vピットは多重量子井戸内のキャリアがVピット内を通る転移に流れ込む障壁の役割を担っており、Vピットが小さ過ぎると、障壁効果が不十分となり、キャリアがVピット内に流れ込み、発光効率が低下すると考えられる。逆に大き過ぎると、Vピット底部に存在するn型窒化物半導体層と後にVピット底部まで埋め込まれるp型窒化物半導体層の距離が短くなり、リーク系不良やESD(Electro−Static Discharge:静電気放電)不良の増加による歩留りの低下を招く。
以下では本発明の発光層を実現する上で必要な発光層の下地構造であるn型バッファ層11の形成方法について記述する。
(低温n型窒化物半導体層)
n型バッファ層11は低温n型窒化物半導体層9と多層構造体10より構成している。n型コンタクト層8までの下部構造は非常に厚いため、一定の結晶性を担保しつつ、できるだけ短時間で成長させる必要上、形成温度は一般に発光層の形成温度に比べ数百℃高くなっている。n型バッファ層11は、前記下部構造の成長から発光層の成長に移行していくためのバッファ層の役割を果たし、その成長温度はn型コンタクト層8と発光層の成長温度の中間的な温度となっている。n型バッファ層11の最初の層は低温n型窒化物半導体層9である。n型コンタクト層8の成長温度から温度を下げることで、Vピット20が発生し始めることが知られている。
低温n型窒化物半導体層9は、たとえば層厚25nmのハイドープn型GaN層であることが好ましい。ここで、ハイドープとはn型ドーパント濃度は3×1018cm−3以上であることが好ましい。一方、低温n型窒化物半導体層9におけるn型ドーパント濃度が高くなり過ぎると、低温n型窒化物半導体層9の上に形成される発光層14での発光効率の低下を招くことがある。そのため、低温n型窒化物半導体層9におけるn型ドーパント濃度は1.1×1019/cm以下であることが好ましい。
低温n型窒化物半導体層(Vピット発生層)9はAls3Gat3Inu3N(0≦s3≦1、0≦t3≦1、0≦u3≦1、s3+t3+u3≒1)層にn型ドーパントがドープされた層であっても良いし、Inu3Ga1−u3N(0≦u3≦1、好ましくは0≦u3≦0.5、より好ましくは0≦u3≦0.15)層にn型ドーパントがドープされた層であることが好ましい。
このような低温n型窒化物半導体層9は5nm以上の層厚を有していることが好ましく、10nm以上の層厚を有していることがより好ましい。
(多層構造体)
低温n型窒化物半導体層9と発光層14との間には多層構造体10が設けられている。多層構造体10の主たる働きは低温n型窒化物半導体層9と発光層14との間に所定の距離を置き、発光層成長開始時の成長表面構造をできる限り平坦で滑らかにすると共に、Vピットを一定以上の大きさに拡大することである。図4に示したAFM像では、ほぼ等間隔の縞模様が大きく湾曲することなく上下方向に走っている。これは基板結晶面の傾斜を反映して、原子レベルのステップがエピタキシャル成長面に形成されていることを示しており、非常に薄い障壁層を成長させる上で、重要な要件となっている。一般に多層構造体の膜厚に応じて、Vピットサイズは拡大する。また、多層構造体の成長過程で、新たなVピットが発生しないようにすることも重要である。
多層構造体10としては、10nm以下の非常に薄い組成が異なる結晶層を交互に積層する超格子層が一般に用いられるが、好適な具体例として、上述のエピタキシャル成長面の平坦性を実現するために、より厚い多層膜を用いた場合が挙げられる。
多層膜は、たとえば層厚12nmのナローギャップ層(A)と同じく層厚12nmのワイドバンドギャップ層(B)を交互に9層積層する。ここではナローギャップ層(A)で始まり、ナローギャップ層(A)で終わる構造としている。ナローバンドギャップ層(A)は、Ala1Inb1Ga(1−a1−b1)N(0≦a1≦1、0<b1≦1)層であることが好ましく、より好ましくはInb1Ga(1−b1)N(0<b1<1)層である。ワイドバンドギャップ層(B)は、Ala2Inb2Ga(1−a2−b2)N(0≦a2<1、0≦b2<1)層であることが好ましく、より好ましくはGaN層である。各ナローバンドギャップ層(A)は、各ワイドバンドギャップ層(B)よりもバンドギャップが小さく、且つ後述する各量子井戸層QWiよりもバンドギャップが大きいことが好ましい。各層厚は10nmより大きいことが好ましく、ナローギャップ層(A)の総数は2層以上であることが好ましい。これにより、エピタキシャル成長面の平坦性が改善され、発光特性を改善することができる。
各ナローバンドギャップ層(A)および各ワイドバンドギャップ層(B)の少なくとも一方はn型ドーパントを含んでいることが好ましい。ワイドバンドギャップ層(A)とナローバンドギャップ層(B)との両方がアンドープであると、駆動電圧が上昇するためである。この場合のn型ドーパント濃度は、たとえば1×1018cm−3以上とすることができる。また、下層から上層にわたって、同じようにドーピングしてもよいし、一部のみをドーピングしてもよい。たとえば上記計9層の場合、下層4層をアンドーピングにして、上層5層をドーピングしてもよい。n型ドーパントとしては、特に限定されないがSi、P、AsまたはSbなどであればよく、好ましくはSiである。さらに、各ナローバンドギャップ層(A)および各ワイドバンドギャップ層(B)の両方がn型ドーパントを含んでいることが好ましい。これにより、発光層14に注入される電子数を増やすことができる。したがって、光出力が向上し、また電圧低減効果が発揮される。
ナローバンドギャップ層(A)およびワイドバンドギャップ層(B)の層厚は同じである必要は無く、たとえば、ナローバンドギャップ層(A)に対して、ワイドバンドギャップ層(B)が50%厚くてもよいし、逆でもよい。各層毎に変更してもよい。
多層構造体として、一般に使われる超格子層を用いてもよい。超格子層は10nm以下の非常に薄い、組成が異なる結晶層を交互に積層することにより、その周期構造が基本単位格子よりも長い結晶格子からなる層を意味する。一般に構成層はバンドギャップエネルギーが相対的に小さなナローバンドギャップ層(A)とバンドギャップエネルギーが相対的に大きなワイドバンドギャップ層(B)とを交互に積層して超格子構造を構成している。ナローバンドギャップ層(A)およびワイドバンドギャップ層(B)を1組としたとき、多層構造体10は数組から20組程度のナローバンドギャップ層(A)およびワイドバンドギャップ層(B)を有することが好ましい。
窒化物半導体発光素子1は、図1に示す例のように、低温n型窒化物半導体層9と発光層14との間に多層構造体10を設けることが好ましい。好ましくは多層構造体10の層厚が30nm以上であり、より好ましくは多層構造体10の層厚が50nm以上であり、さらに好ましくは多層構造体10の層厚が100nm以上である。一方、多層構造体10の層厚が大きすぎると発光層14の品質の劣化を招くおそれがあるため、多層構造体10の層厚は、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは150nm以下である。
以上では、現在一般に使用されているサファイア基板やSiC基板のような異種基板上に窒化物半導体発光素子を形成する場合について記述したが、窒化ガリウム単結晶などよりなる窒化物半導体基板では、これまで記載したn型バッファ層11をはじめとする下地構造はより簡略化できる。異種基板と窒化物半導体の間の格子不整合による結晶欠陥発生が少ないため、図3に示すような良好な結晶面を実現することがより容易になるからである。
(発光層(多重量子井戸層(MQW)))
図5は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の中間層を積層した直後の面に対してAFMによる観察を行った結果を示す画像である。発光層14には部分的にVピット20が形成されている。ここで、「部分的にVピット20が形成されている」とは、発光層14の上面をAFMで観察したときに、図5に示すように、Vピット20が発光層14の上面において点状に観察されることを意味する。発光層14の成長前後のAFM像を示す図4と図5との相違点は、Vピットの径である。多重量子井戸層の成長後に、Vピット径が大きくなっている。密度は図4が1.6E8/cmであるのに対して、図5が1.5E8/cmであり、両者はバラツキの範囲内で等しい(Vピット密度の測定バラツキは一般に大きく、個別の測定データに対しては、最大±50%程度のバラツキが生じ得る)。これは多重量子井戸層の成長では、新たにVピットが発生せず、n型バッファ層11形成後に存在するVピットが拡大していることを示している。
発光層14は、複数の障壁層(QB1、QB2、…、QBe)が複数の量子井戸層(QW1、QW2、…、QWf、f=e+1、fは量子井戸層の総数)に挟まれ、障壁層と量子井戸層とが交互に積層されることにより形成される。多層構造体10のすぐ上側には最初の量子井戸層(第1量子井戸層)QW1が設けられる。量子井戸層のうち最もp型窒化物半導体層16側に位置する量子井戸層QWfの上に、発光層とp型窒化物半導体層を区切る中間層15(IM)が設けられる。図2(a)には、一例として、n型バッファ層側からp型窒化物半導体層側に向かって順に、第1量子井戸層(QW1)41、第1障壁層(QB1)51、第2量子井戸層(QW2)42、第2障壁層(QB2)52、第3量子井戸層(QW3)43、第3障壁層(QB3)53、第4量子井戸層(QW4)44、第4障壁層(QB4)54、第5量子井戸層(QW5)45、第5障壁層(QB5)55、第6量子井戸層(QW6)46、第6障壁層(QB6)56、第7量子井戸層(QW7)47、第7障壁層(QB7)57、第8量子井戸層(QW8)48、中間層(IM)15が順に積層された場合が模式的に示されている。このように、本明細書においては、各障壁層および各量子井戸層を識別するために、多層構造体10からp型窒化物半導体層16へ向かって番号を付して表記することとする。一方、各障壁層および各量子井戸層は特に個々を限定する場合を除き、総じて障壁層QBiおよび井戸層QWi(iは番号を代表する)と表記することがある。
また、本発明における多重量子井戸層の一例の透過電子顕微鏡写真を図2(b)に示す。図2(b)に示す例において、各層の膜厚設定は、
QB1〜QB7:3.6nm
QW1〜QW7:3.6nm
QW8:5.0nm
とした。表1には、実際に測定された各層の層厚を示す。
このように薄い多重量子井戸層について、量子井戸層の層厚と障壁層の層厚を精度良く測定することは容易ではなく、ある程度の測定誤差を許容して、平均的な層厚を基に判断しなければならない。たとえば図2(b)の写真から測定した各層の層厚について、QW7、QW5、QW2、QW1はQB1やQB3より薄いが、QB1〜QB7の平均的膜厚とQW1〜QW7の平均的膜厚は、設定値通りほぼ等しい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、多重量子井戸層を構成する複数の障壁層の平均層厚は4nm以下であり、好ましくは3.0〜3.8nmである。障壁層の平均層厚が4nmを超える場合には、光出力が低下するというような不具合がある。
また本発明の窒化物半導体発光素子における発光層では、障壁層QBiの層厚が量子井戸層QWiの層厚より薄いか、または等しく構成されている。これは全ての障壁層の層厚の平均値(平均層厚)が、全ての量子井戸層の層厚の平均値(平均層厚)以下であることを意味する(すなわち、複数の量子井戸層の平均層厚が障壁層の平均層厚より大きいかまたは等しい)。このようにすることで、p層側から注入された正孔がn層側の量子井戸層まで広く分布し、室温での光出力が向上し、動作電圧が低下すると共に、温度特性も向上する。
この場合、多重量子井戸層の中央の層よりp型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の最大層厚が、多重量子井戸層の中央の層よりn型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きいことが好ましい。さらには、多重量子井戸層の中央の層よりp型窒化物半導体層側に位置する複数の量子井戸層の各層が、多重量子井戸層の中央の層よりn型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きい層厚を有することがより好ましい。このようにn層側の量子井戸層に比べて厚い量子井戸層がp層側に複数あることで、一層光出力を向上できる。
本発明の窒化物半導体発光素子においては、発光層を構成する多重量子井戸層は、アンドープであるか、n型またはp型不純物濃度が1×1017cm−3以下である。p型不純物濃度が1×1017/cm−3を超えると、非発光再結合中心が増加し、光出力が低下する。また、n型不純物濃度が1×1017/cm−3を超えると、正孔の下層井戸層への流れを阻害し、光出力が低下する。また本発明の窒化物半導体発光素子において、多重量子井戸層を構成する複数の障壁層は、Alx1Iny1Ga1−x1−y1N(0≦x1<1、0≦y1<1)からなり、多重量子井戸層を構成する複数の量子井戸層はAlx2Iny2Ga1−x2−y2N(0≦x2<1、0<y2<1)からなる。
本発明の窒化物半導体発光素子において、障壁層QBiは全て略同じ層厚であることが好ましい。ここで、「略同じ層厚」であるとは、全ての障壁層における層厚の差が0.6nm以下であることを意味する。障壁層の層厚は量子井戸層の結晶欠陥を増加させない範囲で、できる限り薄くすることが好ましく、多重量子井戸層が形成される下地構造の結晶性とn層側に配置される量子井戸層の層厚によって、下限が決まってくる。その下限膜厚に近づけることで、最高の光出力と最小の動作電圧を達成できる。
量子井戸層の層厚が大きくなると、薄い量子井戸層に比べ、発光波長が長波長化するため、そのままでは発光スペクトル幅が拡大する。これを防ぐためには厚い量子井戸層のIn組成を減らし、発光波長を短波長側に戻すことが好ましい。In組成を減らすことで、量子井戸層/障壁層間の障壁高さを低減できるため、正孔の下層への流動を加速し、光出力を向上する効果がある。
量子井戸層の層厚はQWfが一番大きく、次いでQWf−1、更に次いでQWf−2と徐々に薄くすることが好ましく、QWf−3からQW1までは略同じ層厚とすることがより好ましい。障壁層の層厚を薄くすることで量子井戸層間の正孔分布は均一化する方向に向かうが、それでも完全に均一化できる訳ではなく、p層側からn層側へ向けて正孔濃度は低下する分布を示すことから、QWfを一番厚くすることで、量子井戸層内の平均キャリア濃度を下げることで、オージェ効果などによる非発光再結合を低減し、最大の発光効率を実現できる。
また本発明の窒化物半導体発光素子は、多重量子井戸層を構成する量子井戸層のうち最も層厚が大きい量子井戸層のIn含有率は、多重量子井戸層の中央よりn型窒化物半導体層までの間に存在する量子井戸層のIn含有率の平均値より少ないことが好ましい。このような構成を採ることで、発光波長分布をより狭くすると共に、光出力向上効果を高めるという利点がある。上述した場合、多重量子井戸層を構成する量子井戸層のうち最も層厚が大きい量子井戸層のIn含有率は、0.11〜0.18の範囲内であることが好ましく、0.12〜0.17の範囲内であることがより好ましい。またこの場合、多重量子井戸層の中央よりn型窒化物半導体層までの間に存在する量子井戸層のIn含有率の平均値は、0.18〜0.22の範囲内であることが好ましく、0.19〜0.21の範囲内であることがより好ましい。
(中間層)
中間層15は発光層14とp型窒化物半導体層16を区切る層である。p型ドーパントであるMg(マグネシウム)が量子井戸層に入ると、発光効率が低下するため、発光層14へのMgの拡散を防止する役割を担っている。中間層15の生成はAlGaIn(1−c−d)N(0≦c<1、0<d≦1)であればよく、好ましくはInを含まないAlGa(1−e)N(0<e≦1)層である。中間層15の層厚は特に限定されないが、多重量子井戸層を構成する障壁層の層厚と同等かそれ以下であることが好ましい。中間層15の層厚は1nm以上4nm以下であることが好ましく、2nm以上3.5nm以下であることがより好ましい。薄くなりすぎるとMgの拡散を防止できず、厚くなりすぎると、発光層へのホール注入効率が低下し、発光効率が低下する。
(p側窒化物半導体層)
図1に示す例の窒化物半導体発光素子1は、p型窒化物半導体層19を、p型AlGaN層16、p型GaN層17および高濃度p型GaN層(p型コンタクト層)18の3層構造としている。しかしながら、この構成はp側窒化物半導体層の一例に過ぎない。p型窒化物半導体層19は、たとえばAls4Gat4Inu4N(0≦s4≦1、0≦t4≦1、0≦u4≦1、s4+t4+u4≠0)層にp型ドーパントがドープされた層であってもよく、Als4Ga(1−s4)N(0<s4≦0.4、好ましくは0.1≦s4≦0.3)層にp型ドーパントがドープされた層であってもよい。
p型ドーパントは特に限定されないが、好ましい例としてMgが挙げられる。p型窒化物半導体層19(p型AlGaN層16、p型GaN層17およびp型コンタクト層18)におけるキャリア濃度は1×1017cm−3以上であることが好ましい。ここで、p型ドーパントの活性率は0.01程度であることから、p型窒化物半導体層19におけるp型ドーパント濃度(キャリア濃度とは異なる)は1×1019cm−3以上であることが好ましい。ただし、p型窒化物半導体層19のうち、発光層14側に位置する部分(図1に示す例ではp型AlGaN層16)におけるp型ドーパント濃度は1×1019cm−3未満であってもよい。
p型窒化物半導体層19の層厚(p型AlGaN層16、p型GaN層17およびp型コンタクト層18の層厚の総計)は特に限定されないが、20nm以上300nm以下であることが好ましい。p型窒化物半導体層19の層厚を小さくすることにより、その成長時における加熱時間を短くすることができる。これにより、p型ドーパントの発光層14への拡散を抑制することができる。
(n側電極、透明電極、p側電極)
n側電極21およびp側電極25は窒化物半導体発光素子1に駆動電力を供給するための電極である。n側電極21およびp側電極25は図3ではパッド電極部分のみで構成されているが、電流拡散を目的とする細長い突出部(枝電極)がn側電極21またはp側電極25に接続されていてもよい。また、p側電極25よりも下に、電流がp側電極25へ注入されることを防止するための絶縁層が設けられていることが好ましい。これにより、p側電極25に遮蔽される発光の量が減少する。
n側電極21は、たとえばチタン層、アルミニウム層および金層がこの順序で積層されて構成されていることが好ましい。n側電極21にワイヤボンディングを行う場合を想定して、n側電極21の層厚は1μm以上であることが好ましい。また、メサ部側壁から放出される光の吸収を低減するためには、薄い方が好ましく、n側電極21の層厚は2μm以下であることが好ましい。
p側電極25は、たとえばニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層がこの順序で積層されて構成されていることが好ましく、n側電極21と同一の材料からなってもよい。p側電極25にワイヤボンディングを行う場合を想定して、p側電極25の層厚は1μm以上であることが好ましい。また、電極の直列抵抗を低減し、駆動電圧を下げるために、層厚は厚い方が好ましいが、厚くすることでコストアップとなるため、p側電極25の層厚は2μm以下であることが好ましい。
透明電極23は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなることが好ましく、20nm以上200nm以下の層厚を有していることが好ましい。
<窒化物半導体発光素子の製造方法>
続いて、窒化物半導体発光素子1の製造方法を説明する。
まず、サファイアなどの異種基板からなる基板3の表面に複数の凸形状3aを形成し、たとえばスパッタ法などにより、基板3の上にバッファ層5を形成する。次に、たとえばMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長法)などにより、バッファ層5の上に下地層7、n型コンタクト層8、低温n型窒化物半導体層9、多層構造体10、発光層14、中間層15、p型AlGaN層16、p型GaN層17および高濃度p型GaN層(p型コンタクト層)18を順に形成する。
次に、n型コンタクト層8の一部分が露出するように、p型AlGaN層16、p型GaN層17、高濃度p型GaN層(p型コンタクト層)18、中間層15、発光層14、多層構造体10、低温n型窒化物半導体層9およびn型コンタクト層8の一部をエッチングする。このエッチングにより露出したn型コンタクト層8の上面にn側電極21を形成する。
また、p型コンタクト層18の上面に透明電極23とp側電極25とを順に積層する。その後、透明電極23および上記エッチングによって露出した各層の側面を覆うように、透明保護膜27を形成する。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1が得られる。なお、各層の組成および層厚などは<窒化物半導体発光素子の構造>の項目で上述したとおりである。
下地層7はバッファ層5が形成された基板3を第1MOCVD装置に入れ、好ましくは800℃以上1250℃以下で、より好ましくは900℃以上1150℃以下で成長させる。これにより、結晶欠陥が少なく且つ結晶品質に優れた下地層7を形成できる。下地層7の成長には、ファセット成長モードで斜めファセット面を形成し、次いで埋込成長モードにより、ファセット間を埋込み、平坦面を形成していく成長方法が好ましい。これにより結晶欠陥が少なく且つ結晶品質に優れた下地層7を形成できる。
一般にファセット成長モードは埋込成長モードに対して、成長圧力が高く、成長温度は低い。たとえば、ファセット成長モードの圧力を500Torr、温度を990℃として、埋込成長モードの圧力を200Torr、温度を1080℃として下地層7を成長させることができる。
n型コンタクト層の成長は、たとえばMOCVD法などにより下地層7の上面に、好ましくは800℃以上1250℃以下で、より好ましくは900℃以上1150℃以下で成長させる。これにより、結晶欠陥が少なく且つ結晶品質に優れたn型コンタクト層8を形成できる。
低温n型窒化物半導体層9はn型コンタクト層8の成長温度よりも低い温度で成長させることが好ましい。具体的には、低温n型窒化物半導体層9の成長温度は、950℃以下であることが好ましく、より好ましくは700℃以上であり、更に好ましくは750℃以上である。低温n型窒化物半導体層9の成長温度が700℃以上であれば、発光層14での発光効率を高く維持できる。
多層構造体10の成長温度は、低温n型窒化物半導体層9の成長温度以下であることが好ましい。これにより、Vピット20の大きさが大きくなるので、転移のシールド効果が大きくなり、発光効率を向上できる。この効果を有効に得るためには、多層構造体10を600℃以上で成長させることが好ましく、700℃以上で成長させることがより好ましい。なお、低温n型窒化物半導体層9と多層構造体10とを同一の成長温度で成長させてもよい。
なお、MOCVD法による各層の結晶成長では、次に示す原料ガスを用いることができる。Gaの原料ガスとしては、TMG(トリメチルガリウム)またはTEG(トリエチルガリウム)を用いることができる。Alの原料ガスとしては、TMA(トリメチルアルミニウム)またはTEA(トリエチルアルミニウム)を用いることができる。Inの原料ガスとしては、TMI(トリメチルインジウム)またはTEI(トリエチルインジウム)を用いることができる。Nの原料ガスとしては、NHまたはDMH(ジメチルヒドラジン)を用いることができる。n型不純物であるSiの原料ガスとしては、SiH、Siまたは有機Siを用いることができる。p型不純物であるMgの原料ガスとしては、CpMgを用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に限定されない。
<実施例1>
[製造工程]
実施例1の窒化物半導体発光素子1(図1参照)の製造工程は以下のとおりである。
まず、凸部3aおよび凹部3bからなる凹凸加工が上面に施された150mm径のサファイアからなる基板3を準備した。凸部3aは平面視略円形をなし、隣り合う3個の凸部3aが平面視略正三角形の頂点に位置するように配置されている。隣り合う凸部3aの頂点の間隔は2μmである。凸部3aの底面における平面形状である円の直径は1.2μm程度であり、凸部3aの高さは0.6μm程度であった。さらに、基板3の表面の凸部3aおよび凹部3bはそれぞれ図1に示す断面を有しており、凸部は先端部を有していた。
凸部3aおよび凹部3bの形成後の基板3の表面に対してRCA洗浄を行った。そして、チャンバーにRCA洗浄後の基板3を設置し、基板3を加熱し、Alターゲットに窒素を含むアルゴン雰囲気下でスパッタする反応性スパッタ法により、凸部3aおよび凹部3bを有する基板3の表面上に、基板3の表面にAlN結晶からなる層厚25nmのバッファ層5を形成した。
バッファ層5が形成された基板3をMOCVD装置内に収容した。MOCVD法により、アンドープGaNからなる下地層7をバッファ層5の上面上に成長させ、引き続いてSiドープn型GaNからなるn型コンタクト層8を下地層7上に成長させた。このとき、下地層7全体の層厚を6μmとし、n型コンタクト層8の層厚を3μm、n型ドーパント濃度を1×1019cm−3とした。
次に、基板温度を801℃に下げ、n型窒化物半導体層(Vピット発生層)9をn型コンタクト層8の上面上に成長させた。具体的には、n型ドーパント濃度が9×1019cm−3になるように、層厚30nmのSiドープGaN層を成長させた。
引き続き、基板の温度を801℃に保持した状態で、多層構造体10を成長させた。具体的には、まずSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層を堆積し、次いでSiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層を堆積し、この動作をさらに3周期繰り返した後、最後にナローバンドギャップ層を堆積し、合計9層を成長させた。各ワイドバンドギャップ層の層厚は12nmであった。各ナローバンドギャップ層の層厚は12nmであった。多層構造体10におけるn型ドーパント濃度をいずれの層においても7×1018cm−3とした。各ナローバンドギャップ層の組成はInGa1−yN(y=0.04)であった。この状態で成長を中断して、即座に基板の温度を下げ、その基板をMOCVD装置から取り出し、即座にAFM装置を用いて基板の結晶表面を観察した。AFMにて測定した結果を図4に示す。この表面には、Vピット構造が面密度1.6×10/cmで形成されていることを確認した。
次に、基板温度を672℃に下げて、発光層14を成長させた。具体的には、InGaNからなる量子井戸層QWiとGaNよりなる障壁層QBiを交互に成長させ、量子井戸層は8層、障壁層は7層を成長した。量子井戸層、障壁層は全てアンドープとした。量子井戸層、障壁層の層厚に関しては、比較のために、以下の構造を作製し、評価した。
(A1〜A5)
量子井戸層の層厚:3.4nm(全層同一)
障壁層の層厚:全層同一で4.5nm、4.0nm、3.6nm、3.2nm、3.0nmまで変更した。
次に、最上層の量子井戸層(第8量子井戸層)QW8の上に、アンドープのGaN層からなる中間層15(層厚:3nm)を成長させた。
基板温度を1000℃に上げて、中間層15の上面上に、それぞれp型Al0.18Ga0.82N層16、p型GaN層17およびp型コンタクト層18を成長させた。
そして、n型コンタクト層8の一部分が露出するように、p型コンタクト層18、p型GaN層17、p型AlGaN層16、中間層15、発光層14、多層構造体10、低温n型窒化物半導体層(Vピット発生層)9およびn型コンタクト層8の各一部をエッチングした。このエッチングにより露出した下部n型コンタクト層8の上面上にAu他からなるn側電極21を形成した。また、p型コンタクト層18の上面上に、ITOからなる透明電極23とAu他からなるp側電極25とを順に形成した。また、主として透明電極23および上記エッチングによって露出した各層の側面を覆うように、SiOからなる透明保護膜27を形成した。
次に、基板を620×680μmサイズのチップに分割した。これにより、実施例1に係る窒化物半導体発光素子1が得られた。
[評価]
上記製造方法で得た窒化物半導体発光素子1に対して、TO−18型ステムにマウントし、樹脂封止を行なわずに窒化物半導体発光素子1の120mAでの光出力特性を25℃の環境下と80℃環境下において測定した。25℃の環境下における光出力PをP(25)と表記し、80℃の環境下における光出力PをP(80)と表記し、光出力Pに係る温度特性P(80)/P(25)も比較した。測定はウエハ上で125チップについて行なったが、以下では中心値のみを記載する。光出力のバラツキは±3mW程度、温度特性のバラツキは±0.5%程度あったが、サンプル間では大きな相違は無かった。
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力と温度特性を図6(a)と図6(b)に示す。ここで、図6は、実施例1の窒化物半導体発光素子の特性比較を示すグラフであり、図6(a)において縦軸は120mAでの光出力(mA)、横軸は障壁層の層厚(nm)であり、図6(b)において縦軸は温度特性、横軸は障壁層の層厚(nm)である。光出力は障壁層の層厚を小さくするに従い上昇し、3.2nm付近でピークを示した。これより薄い領域では、量子井戸層の結晶性が悪化し、非発光再結合中心が増えたものと推測している。温度特性は障壁層の層厚の減少と共に、僅かに減少する傾向を示すが、障壁層の層厚3.2nmでは97%以上を保っている。
なお、上記条件におけるVピットの状況を確認するため、チップ作製する基板3とは別バッチで、上述の方法にしたがって発光層を成長させた後、即座に基板の温度を下げ、その基板をMOCVD装置から取り出し、即座にAFM装置を用いて基板の結晶表面を観察した。その結果を図5に示す。この表面には、Vピット構造が面密度1.5×10/cmで形成されていることを確認した。
比較例として、多重量子井戸の周期数を増減させる検討も行なった。n層側に量子井戸層を1層、障壁層を1層追加しても、各2層追加しても、光出力や温度特性はほぼ変化が無かった。逆に各1層を減らすと、バラツキが増加したため、本実験では8層の量子井戸層を用いた。
また、多重量子井戸層を形成する前の多層構造体の影響を評価するために、Vピット密度を上げる比較を行った。具体的には形成温度を下げることで、Vピット密度を増加させた。図5と同様の評価を行ったところ、Vピット密度は2.3×10/cmであった。光出力の障壁層の層厚への依存性を調べた結果も図6(a),(b)に示した。この条件下でも、ほぼ量子井戸層の層厚に等しい層厚まで、光出力の向上が見られる。また、Vピット密度が小さな条件では、より薄い障壁層まで特性向上が続くことが分かる。このことから、Vピット密度は2.5×10/cm以下であることが好ましく、2.0×10/cm以下であることがより好ましい。
<実施例2>
本実施例は素子構造としては実施例1の窒化物半導体発光素子1(図1参照)に対して第8量子井戸層(QW8)の層厚を変更した。具体的には多重量子井戸層の各層厚を下記のように変更する試料を試作した。
(B1〜B4)
第8量子井戸層(QW8)の層厚を3.4nm、5.1nm、6.8nm、8.5nmと変更した。他の量子井戸層の層厚は3.4nmに固定し、障壁層は全層3.2nmに固定した(B1=A3である)。
第8量子井戸層(QW8)の層厚を変更すると、結晶成長温度やガス組成などの成長条件がそのままであると、発光スペクトル幅が拡大するため、第8量子井戸層(QW8)の層厚を変える毎に量子井戸層の成長温度を調整することで、発光スペクトル幅を一定に保つようにした。第8量子井戸層(QW8)の層厚が大きい程、In組成は低減されている。第8量子井戸層(QW8)の層厚とIn組成の関係を表2に示す。ただし、表2に示す数値には、成膜条件をもとにした推定値であり、±1.2%程度のバラつきがある。
[評価]
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力と温度特性を図7(a)と図7(b)に示す。図7は、実施例2の窒化物半導体発光素子の特性比較を示すグラフであり、図7(a)において縦軸は120mAでの光出力(mA)、横軸は第8量子井戸層(QW8)の層厚(nm)であり、図7(b)において縦軸は温度特性、横軸は第8量子井戸層(QW8)の層厚(nm)である。光出力はQW8の層厚を大きくするに従い上昇し、6.8nm付近でピークを示した。これより厚い領域では、量子井戸層の結晶性が悪化し、非発光再結合中心が増えたものと推測している。温度特性は量子井戸層の層厚の増加と共に、僅かに減少する傾向を示すが、いずれの条件に置いても96%以上を保っている。
<実施例3、4>
本実施例は素子構造としては実施例2の窒化物半導体発光素子1(B3)に対して、以下の変更を行なった。
(C)
第7量子井戸層(QW7)の層厚を5nmに増加した、第8量子井戸層(QW8)の層厚は6.8nm、第1量子井戸層(QW1)から第6量子井戸層(QW6)の層厚は3.4nm、障壁層の層厚は全て3.2nmである。第7量子井戸層(QW7)と第8量子井戸層(QW8)のIn組成は、実施例2において記載したように、層厚の変更に伴いそれぞれ変更した。
(D)
第6量子井戸層(QW6)の層厚を4nmへ増加した。第7量子井戸層(QW7)の層厚は5nm、第8量子井戸層(QW8)の層厚は6.8nm、第1量子井戸層(QW1)から第6量子井戸層(QW6)の層厚は3.4nm、障壁層の層厚は全て3.2nmである。第6量子井戸層(QW6)、第7量子井戸層(QW7)と第8量子井戸層(QW8)のIn組成は、実施例2において記載したように、層厚の変更に伴いそれぞれ変更した。
[評価]
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力と温度特性を図8に示す。光出力は第7量子井戸層(QW7)の層厚を大きくすると上昇し、更に第6量子井戸層(QW6)を増加することによっても、光出力を増加することができた。温度特性は若干低下したが、96%以上を保っている。LEDは用途によって、室温に近い状態で光出力が求められるものと高温で高い出力が求められるものがあり、用途によって条件を使い分けることができる。
比較例として、(C)に対して、第7量子井戸層(QW7)の層厚を6nmに増加させたサンプルも作製したが、光出力は僅かに低下した。また(D)に対して、第6量子井戸層(QW6)の層厚を5nmに増加したサンプルを作成したが、やはり光出力は向上しなかった。
<実施例5>
本実施例は素子構造としては実施例2の窒化物半導体発光素子1(B3)に対して、第8量子井戸層(QW8)の上に障壁層1層と第9量子井戸層(QW9)を追加した。障壁層は全て3.2nmである。第9量子井戸層(QW9)の層厚は3.4nmとし、第8量子井戸層(QW8)と同じ形成条件にて成長させた。第1量子井戸層(QW1)から第7量子井戸層(QW7)の層厚は実施例2と同じく、3.4nmである。それ以外の条件は一切変更していない。
[評価]
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力と温度特性はB3構造とほぼ一致した。但し、発光スペクトルの半値幅がB3構造の20.6nmに対して22.4nmへ拡大した。この結果は、最もp層側に近い量子井戸層の層厚が必ずしも最大値である必要が無いことを意味している。
<実施例6>
本実施例では、実施例2の窒化物半導体発光素子1(B3)に対して、多層構造体10を通常の超格子構造に変更した。
低温n型窒化物半導体層9形成後、基板の温度を801℃に保持した状態で、多層構造体10を成長させた。具体的には、SiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層とSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層を交互に20周期成長させた。各ワイドバンドギャップ層の層厚は1.55nmであった。各ナローバンドギャップ層の層厚は1.55nmであった。多層構造体10におけるn型ドーパント濃度をいずれの層においても7×1018cm−3とした。各ナローバンドギャップ層の組成はInGa1−yN(y=0.04)であった。この状態で成長を中断して、AFM装置を用いて基板の結晶表面を観察して得たVピット密度は2.5×10/cmであった(AFM測定結果を図9に示す。)比較例として、前記超格子構造上に、実施例1において示したA1構造(全ての量子井戸層の層厚が3.4nm、全ての障壁層の層厚が4.5nm)を発光層として形成した。
[評価]
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力は166mW、温度特性は96.0%と、実施例2のB3より若干劣った。また、比較例の光出力160mWであり、温度特性は97.7%であり、実施例1のA1構造とほぼ同等であった。比較例に対して、障壁層を量子井戸層より薄くすると共に、最上層の量子井戸層を厚くすることで、特性が向上していることが分かる。このことから、多層構造体の詳細な構造に関わらず、AFM測定によって得られるVピット密度や平坦性が同等であれば、発光特性としては同等の物が得られることが分かる。
<実施例7>
本実施例は素子構造としては図2に示した構造であり、実施例2の窒化物半導体発光素子1(B3)と類似の構造であるが、以下の変更を行なった。
第8量子井戸層(QW8)の層厚を5.0nm、他の量子井戸層の層厚は3.6nmに固定し、障壁層は全層3.6nmに固定した。また、比較例として第8量子井戸層(QW8)の層厚を3.6nmとしたサンプルも形成した。その他の点は、実施例2と同じである。
[評価]
本実施例に沿って試作したLEDチップの光出力は165mW、温度特性は97.0%と、実施例2のB3よりも特性では劣った。しかし、比較例の光出力162mWであり、温度特性は97.3%であった。多重量子井戸の構造は異なっているが、実施例2と同様に、最上層の量子井戸層を厚くすることで、特性が向上していることが分かる。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 窒化物半導体発光素子、3 基板、3A 凸部、3B 凹部、5 バッファ層、7 下地層、8 n型コンタクト層(n型窒化物半導体層)、9 低温n型窒化物半導体層、10 多層構造体、11 n型バッファ層、14 発光層、14A 障壁層、14W 井戸層、15 中間層、16 p型AlGaN層、17 p型GaN層、18 p型コンタクト層、19 p型窒化物半導体層、20 Vピット、21 n側電極、23 透明電極、25 p側電極、27 透明保護膜、30 メサ部。

Claims (5)

  1. 基板と、当該基板上に形成されたn型窒化物半導体層と、発光層と、p型窒化物半導体層とを少なくとも備える窒化物半導体発光素子であって、
    前記発光層は多重量子井戸層より構成され、前記多重量子井戸層はアンドープであるか、n型またはp型不純物濃度が1×1017cm−3以下であり、
    前記多重量子井戸層を構成する複数の障壁層はAlx1Iny1Ga1−x1−y1N(0≦x1<1、0≦y1<1)からなり、平均層厚が4nm以下であり、
    前記多重量子井戸層を構成する複数の量子井戸層はAlx2Iny2Ga1−x2−y2N(0≦x2<1、0<y2<1)からなり、
    前記複数の量子井戸層の平均層厚が前記障壁層の平均層厚より大きいかまたは等しく、
    前記発光層にはVピットが形成されており、Vピット密度が2.5×10 cm −2 以下であり、
    転位密度が2.5×10 cm −2 以下であり、かつ、障壁層の層厚が3nm以上である、窒化物半導体発光素子。
  2. 前記多重量子井戸層の中央の層より前記p型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の最大層厚が、前記多重量子井戸層の中央の層より前記n型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きいことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 前記多重量子井戸層の中央の層より前記p型窒化物半導体層側に位置する複数の量子井戸層の各層が、前記多重量子井戸層の中央の層より前記n型窒化物半導体層側に位置する量子井戸層の平均層厚より大きい層厚を有することを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 前記障壁層は、全て略同じ層厚であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 前記多重量子井戸層を構成する量子井戸層のうち最も層厚が大きい量子井戸層のIn含有率は、前記多重量子井戸層の中央より前記n型窒化物半導体層までの間に存在する量子井戸層のIn含有率の平均値より少ないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
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