本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、水系媒体中で結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させてトナー母体粒子を形成する工程を有する静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
前記トナー母体粒子を形成する工程では、
少なくとも、非晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子及び下記式で算出される100ppm以下の平均濃度でペルオキソ二硫酸塩(KPS)を含有させたラテックスと、
前記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含有する着色剤粒子分散液と、
少なくとも、結晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子と、を用い、
前記非晶性樹脂及び前記結晶性樹脂を含有する前記トナー母体粒子を形成することを特徴とする。この特徴は各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
前記KPSの平均濃度(ppm)={ラテックスのKPSの濃度(ppm)/ラテックスの固形分率(%)}×ラテックスの使用比率(%)
本発明の実施態様としては、前記ラテックスには、重合開始剤として、異なる2種の化合物を含有させることが、好適に彩度を良好にできることから好ましい。
本発明においては、前記結着樹脂粒子を、水系媒体中で重合反応により形成することが、顔料がより均一でかつ微分散されるために好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法によって製造された静電潜像現像用トナーは、ナフトールAS色素を用いても高彩度な画像を実現できる静電潜像現像用トナーである。
このような静電潜像現像用トナーを用いる画像形成方法によれば、高彩度な画像を実現できる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《静電潜像現像用トナーの製造方法の概要》
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法(以下、「トナーの製造方法」ともいう。)は、水系媒体中で結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させてトナー母体粒子を形成する工程を有する静電潜像現像用トナーの製造方法であって、トナー母体粒子を形成する工程では、少なくとも、非晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子及び100ppm以下の平均濃度でペルオキソ二硫酸塩を含有させたラテックスと、上記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含有する着色剤粒子分散液と、少なくとも、結晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子と、を用い、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を形成する。
[懸濁重合法]
本発明のトナーの製造方法の一方法としては、懸濁重合法が挙げられる。この懸濁重合法では、重合して非晶性樹脂及び結晶性樹脂などの結着樹脂となるモノマー(以下、これらをまとめて「重合性モノマー」ともいう。)中に、着色剤や必要に応じて離型剤、荷電制御剤、更に重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性モノマーに各種構成材料を溶解又は分散させる。この各種構成材料が溶解又は分散された重合性モノマーと分散安定剤とを含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、撹拌機構が後述の撹拌翼である、反応装置へ移し、加熱することで水系媒体中で重合反応により結着樹脂粒子を形成でき、さらに、当該結着樹脂粒子と、着色剤粒子とを凝集させてトナー母体粒子を形成する。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、更に乾燥することで本発明のトナーを調製する。
このような、結着樹脂粒子を、水系媒体中で重合反応により形成する方法、すなわち、重合性モノマー中に着色剤などのトナー構成成分を分散又は溶解したものを水系媒体中に懸濁し、次いで重合せしめてトナーを得る懸濁重合法トナーでは、重合反応を行う反応容器中での媒体の流れを制御することによりトナー粒子の形状を制御することができる。すなわち、例えば、形状係数が1.2以上の形状を有するトナー粒子を多く形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを乱流とし、重合が進行して懸濁状態で水系媒体中に存在している油滴が次第に高分子化することで油滴が柔らかい粒子となった時点で、粒子の衝突を行うことで粒子の合一を促進させ、形状が不定形となった粒子が得られる。また、例えば、形状係数が1.2より小さい球形のトナー粒子を形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを層流として、粒子の衝突を避けることにより球形の粒子が得られる。この方法により、トナー形状の分布を制御できるものである。
懸濁重合法においては、特定の撹拌翼を使用することで、乱流を形成することができ、形状を容易に制御することができる。この理由としては明確ではないが一般的に使用されている図1に示されるような撹拌翼の構成が一段の場合には、撹拌槽内に形成される媒体の流れが撹拌槽の下部より上部への壁面を伝って動く流れのみになる。そのため、従来では一般的に撹拌槽の壁面などの邪魔板を配置することで乱流を形成し、撹拌の効率を増加することがなされている。しかし、このような装置構成では、乱流が一部に形成されるものの、むしろ乱流の存在によって流体の流れが停滞する方向に作用し、結果として粒子に対するズリが少なくなるために、形状を制御することができない。
好ましく使用することのできる撹拌翼を備えた撹拌槽について図を用いて説明する。図2は2段の撹拌翼を備えた撹拌槽の一例である(ただし、詳しくは後記するとおり、撹拌翼の形状は変えた方がよく、乱流形成部材(邪魔板)もあった方がよい)。撹拌槽の外周部に熱交換用のジャケット1を装着した縦型円筒状の撹拌槽2内の中心部に回転軸3を垂設し、該回転軸3に撹拌槽2の底面に近接させて配設された下段の撹拌翼4と、より上段に配設された撹拌翼5がある。上段の撹拌翼5は、下段に位置する撹拌翼4に対して回転方向に先行した交差角αをもって配設されている。本発明においては交差角αは90度(°)未満であることが好ましい。この交差角の下限は特に限定されるものではないが、5°程度以上、好ましくは10°以上あればよい。これを上面断面図で示したのが図3である。もし3段以上の場合は、それぞれ隣接している撹拌翼間で交差角αが90度未満であればよい。
この構成とすることで、上段に配設されている撹拌翼によりまず媒体が撹拌され、下側への流れが形成される。次いで、下段に配設された撹拌翼により、上段の撹拌翼で形成された流れが更に下方へ加速されるとともにこの撹拌翼自体でも下方への流れが別途形成され、全体として流れが加速されて進行するものと推定される。この結果、乱流として形成された大きなズリ応力を有する流域が形成されるために、トナーの形状を制御できるものと推定される。
なお、図1、2及び図3中、矢印は回転方向を、7は上部材料投入口を8は下部材料投入口を表す。また、9は撹拌を有効にするための乱流形成部材である。
ここにおいて撹拌翼の形状については、特に限定はないが、方形板状のもの、翼の一部に切り欠きのあるもの、中央部に一つ以上の中孔部分、いわゆるスリットがあるものなどを使用することができる。これらの例を図4に記載する。
図4中(a)は撹拌翼に中孔部のないもの、(b)は中央に大きな中孔部6があるもの、(c)は横長の中孔部6があるもの、(d)は縦長の中孔部6があるものである。また、これらは上段と下段で中孔部6が異なるものを用いても、同一のものを用いても良い。
また、この撹拌翼の構成として使用することができる好ましい構成の例を図5〜9に示す。図5は撹拌翼の端部に突起及び又は端部に折り曲げ部を有する構成、図6は下段の撹拌翼にスリットを有するとともに端部に折り曲げと突起を有する構成、図7は下段の撹拌翼の端部に突起と折り曲げを有する構成、図8は上段の撹拌翼にスリットがあり下段の撹拌翼の端部に折り曲げと突起を有する構成、図9は撹拌翼の構成が3段である構成をそれぞれ示したものである。なお、撹拌翼の端部における折り曲げ部の角度は5〜45°程度が好ましい。
これら折り曲げ部(4″又は5″)や上部又は下部への突起(4′又は5′)を有する構成をもつ撹拌翼は、乱流を効果的に発生するものである。
なお、上記の構成を有する上段と下段の撹拌翼の間隙は特に限定されるものではないが、少なくとも撹拌翼の間に間隙を有していることが好ましい。この理由としては明確ではないが、その間隙を通じて媒体の流れが形成されるため、撹拌効率が向上するものと考えられる。ただし、間隙としては、静置状態での液面高さに対して0.5〜50%の幅、好ましくは1〜30%の幅である。
さらに、撹拌翼の大きさは特に限定されるものではないが、全撹拌翼の高さの総和が静置状態での液面高さの50〜100%、好ましくは60〜95%である。
また、懸濁重合法において層流を形成させる場合に使用される撹拌翼及び撹拌槽の一例を図7に示す。撹拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板等の障害物を設けないことが特徴である。撹拌翼の構成については、前述の乱流を形成させる場合に使用される撹拌翼と同様に、上段の撹拌翼が、下段の撹拌翼に対して回転方向に先行した交差角αをもって配設された、多段の構成とすることが好ましい。
この撹拌翼の形状については、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図4(a)の方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
[結着樹脂粒子を水系媒体中で凝集又は融着させる重合法]
また、本発明のトナーの製造方法の別の方法として、結着樹脂粒子を水系媒体中で会合又は融着させることで凝集させて調製する方法も挙げることができる。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、結着樹脂粒子と着色剤粒子などの構成材料の各々の分散粒子又は樹脂及び着色剤等より構成される微粒子を複数以上凝集させてトナー母体粒子を形成する方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止する。更に加熱、撹拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する有機溶媒を加えてもよい。
このような、結着樹脂粒子を水系媒体中で会合又は融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れ及び温度分布を制御することで、更には融着後の形状制御工程において加熱温度、撹拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布及び形状を任意に変化させることができる。
即ち、結着樹脂粒子を会合又は融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる撹拌翼及び撹拌槽を使用して、融着工程及び形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、好ましい形状係数及び均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集及び融着が進行している粒子(会合又は凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては撹拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、撹拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。なお、結着樹脂粒子を、着色剤を含む形で会合融着させたものをトナー母体粒子とよび、トナー粒子とは、トナー母体粒子に更にシリカ微粒子等の外添剤を加えたものを指す場合もある。しかし、粒子形状や粒子径の測定値はいずれを測っても実質的差違はない。
結着樹脂粒子を会合又は融着させる重合法トナーに使用される撹拌翼及び撹拌槽としては、前述の懸濁重合法において層流を形成させる場合と同様のものが使用でき、例えば図7に示すものが使用できる。撹拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板等の障害物を設けないことが特徴である。撹拌翼の構成については、前述の懸濁重合法に使用される撹拌翼と同様に、上段の撹拌翼が、下段の撹拌翼に対して回転方向に先行した交差角αをもって配設された、多段の構成とすることが好ましい。
この撹拌翼の形状についても、前述の懸濁重合法において層流を形成させる場合と同様のものが使用でき、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図4(a)の方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
なお、本発明に係る水系媒体とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいう。
以下に、本発明に係る非晶性樹脂及び結晶性樹脂などの結着樹脂となるモノマーを重合し、トナー母体粒子を形成する工程について、詳細に述べる。
[トナー母体粒子を形成する工程]
本発明に係るトナー母体粒子を形成する工程は、少なくとも、非晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子及び100ppm以下の平均濃度でペルオキソ二硫酸塩を含有させたラテックスと、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物を含有する着色剤粒子分散液と、少なくとも、結晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子と、を用い、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有する前記トナー母体粒子を形成する。
なお、結着樹脂粒子とは、結着樹脂の粒子であり、後述の結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含有することが好ましい。
[トナー母体粒子を形成する工程の一例]
以下に、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法における、水系媒体中で結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させてトナー母体粒子を形成する工程の具体例として、下記「(a)調製工程」、「(b)凝集・融着工程」、「(c)冷却工程」及び「(d)濾過、洗浄、乾燥工程」をこの順に有する例について説明する。
なお、下記の具体例としては、結晶性樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を使用した例について述べる。
(a)調製工程
工程(a)には、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程及び非晶性樹脂微粒子分散液調製工程があり、また、必要に応じて、着色剤粒子の分散液調製工程や離型剤微粒子分散液調製工程などを含む。
(a−1)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成するハイブリッド樹脂を合成し、このハイブリッド樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させてハイブリッド樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
ハイブリッド樹脂の製造方法は後述するため詳細を割愛する。
ハイブリッド樹脂微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法又はハイブリッド樹脂を酢酸エチルなどの溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う方法などが挙げられる。
上述のように、本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
ハイブリッド樹脂は結晶性ポリエステル樹脂ユニット中にカルボキシ基を含む場合がある。このような場合、当該ユニットに含まれるカルボキシ基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
さらに、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
(分散安定剤)
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等などのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、又は環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、n−ドデシル硫酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
なお、上記分散処理は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
このように準備されたハイブリッド樹脂微粒子分散液におけるハイブリッド樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積基準のメジアン径で、60〜1000nmとされることが好ましく、更に好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。
また、ハイブリッド樹脂微粒子分散液におけるハイブリッド樹脂微粒子の含有量は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−2)非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程
非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程は、トナー粒子を構成する非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて、非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
非晶性樹脂の製造方法は後述するため詳細を割愛する。
非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、非晶性樹脂を得るためのモノマーから非晶性樹脂微粒子を形成し、当該非晶性樹脂微粒子の水系分散液を調製する方法(I)や、非晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(II)などが挙げられる。
上記方法(I)では、まず、非晶性樹脂を得るためのモノマーを水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。次に、当該樹脂微粒子が分散している分散液中に、非晶性樹脂を得るためのモノマー及び重合開始剤(以下、「重合開始時の重合開始剤」ともいう。)を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性モノマーを重合する手法を用いることが好ましい。
このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、例えばペルオキソ二硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
方法(I)について、具体的な例を説明する。
まず、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けたセパラブルフラスコにあらかじめアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなど)をイオン交換水に溶解させた溶液を添加する。
次に、窒素気流下で撹拌しつつ、昇温させる一方で離型剤を重合性のモノマーに加え、加温しつつ溶解させ、モノマー溶液を調製する。
得られた上記のモノマー溶液を、循環経路を有する機械式分散機により、混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を調製する。次いで、重合開始剤(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム:KPS)をイオン交換水に溶解させた溶液を添加し加熱、撹拌することでラテックス粒子(例えば、スチレン・アクリル樹脂粒子)を作製する。引き続いて、更に重合開始剤(例えば、KPS)をイオン交換水に溶解させた溶液を添加し、重合性のモノマー、連鎖移動剤(例えば、t−ドデシルメルカプタン)の混合液を滴下する。
滴下終了後、下記のように追い炊きをする。
(追い炊き)
上述の混合液の滴下終了後、加熱撹拌する。本発明では、この工程を追い炊きという。追い炊きされた混合液は、冷却することで、ラテックス粒子を得ることができる。
なお、本発明において、この追い炊きする際に、過酸化水素(以下、「HPO」ともいう。)など重合開始剤(以下、「追い炊き時の重合開始剤」ともいう。)を添加してもよい。
(連鎖移動剤)
非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン;n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸;及びスチレンダイマーなどを用いることができる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
方法(II)において、油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易であるという観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合はその合計使用量)は、非晶性樹脂100質量部に対して、通常10〜500質量部、好ましくは100〜450質量部、更に好ましくは200〜400質量部である。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程と同様に、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
このような油相液の乳化分散は、上記と同様に、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a−1)において説明したものを用いることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、非晶性樹脂微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。又は、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
上記方法(I)又は(II)によって準備されたラテックスにおける非晶性樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積基準のメジアン径で、60〜1000nmとされることが好ましく、更に好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。
また、ラテックスにおける結着樹脂微粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−3)着色剤粒子の分散液調製工程
着色剤粒子の分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記(a−1)で説明したとおりであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a−1)において説明したものを用いることができる。
着色剤粒子の分散液における着色剤の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
(b)凝集・融着工程
この凝集・融着工程は、水系媒体中で、少なくとも非晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子及び100ppm以下の平均濃度でペルオキソ二硫酸塩を含有させたラテックスと、一般式(1)で示される構造を有する化合物を含有する着色剤粒子分散液と、少なくとも結晶性樹脂を含有する結着樹脂粒子とを凝集させて、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を形成する工程である。
具体的には、水系媒体中で、結着樹脂粒子として例えば、前述のハイブリッド樹脂微粒子及び上記非晶性樹脂微粒子の分散液と、必要に応じて着色剤粒子とを凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてトナー母体粒子を形成する工程である。
この工程では、まず結着樹脂粒子(ここでは、ハイブリッド樹脂微粒子及び非晶性樹脂微粒子として説明する。)と、必要に応じて着色剤粒子とを混合し、水系媒体中にこれら粒子を分散させる。
次に、凝集剤を添加した後、ハイブリッド樹脂微粒子及び非晶性樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
具体的には、前述の手順で作製した、ハイブリッド樹脂の分散液及び非晶性樹脂の分散液と、必要に応じて着色剤粒子分散液とを混合し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、ハイブリッド樹脂微粒子及び非晶性樹脂微粒子と、必要に応じて着色剤粒子とを凝集させると同時に粒子同士が融着して結着樹脂が形成される。そして、凝集した粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、凝集用分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、ハイブリッド樹脂及び非晶性樹脂のガラス転移温度以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生する虞があるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。凝集剤を添加する温度は特に限定されないが、結着樹脂であるハイブリッド樹脂及び非晶性樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。
また、凝集工程においては、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.8℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液がガラス転移温度以上の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が4.5〜7.0μmになるまで保持することにより、融着を継続させることが肝要である(第1の熟成工程)。また、熟成中の粒子の平均円形度を測定し、好ましくは0.920〜1.000になるまで第1の熟成工程を行うことが好ましい。
これにより、粒子の成長(ハイブリッド樹脂微粒子、非晶性樹脂微粒子及び必要に応じて着色剤粒子/離型剤微粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
なお、コア−シェル構造の結着樹脂を得る場合には、上記の第1の熟成工程において、シェル部を形成する樹脂(好ましくは非晶性樹脂)の水系分散液を更に添加し、上記で得られた単層構造の結着樹脂の粒子(コア粒子)の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させる。これにより、コア−シェル構造を有する結着樹脂が得られる(シェル化工程)。この際、シェル化工程に引き続き、コア粒子表面へのシェルの凝集、融着をより強固にし、かつ粒子の形状が所望の形状になるまで、更に反応系の加熱処理を行うとよい(第2の熟成工程)。この第2の熟成工程は、コア−シェル構造を有するトナー粒子の平均円形度が、好ましい平均円形度になるまで行えばよい。
(c)冷却工程
この冷却工程は、上記のトナー粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理における冷却速度は、特に制限されないが、0.2〜20℃/分が好ましい。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(d)濾過、洗浄、乾燥工程
濾過工程では、トナー粒子の分散液からトナー粒子を濾別する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
次いで、洗浄工程で洗浄することにより濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理されたトナー粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、解砕処理を行ってもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
なお、形状を均一化させるためには、トナー母体粒子を調製し、濾過した後に粒子に対して10質量%以上の水が存在したスラリーを流動乾燥させることが好ましいが、この際、特に重合体中に極性基を有するものが好ましい。この理由としては、極性基が存在している重合体に対して、存在している水が多少膨潤する効果を発揮するために、形状の均一化が特に図られやすいものと考えられる。
(e)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理したトナー粒子表面へ必要に応じて外添剤を添加、混合してトナーを作製する工程である。外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。
次に、上記トナー母体粒子を形成する工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
<結着樹脂>
本発明に係るトナーを構成する結着樹脂は、以下で詳説する結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含む。
結着樹脂により構成される樹脂粒子(結着樹脂粒子)は、その形態(結着樹脂粒子の形態)は如何なるものであってもよい。なお、結着樹脂粒子(すなわち、非晶性樹脂粒子及び結晶性樹脂粒子)は、水系媒体中で重合反応により形成されることが粒径分布の尖鋭化のため好ましい。
例えば、結着樹脂により構成される樹脂粒子は、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コア−シェル構造(コア粒子の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。コア−シェル構造の樹脂粒子は、着色剤やワックス等を含有したガラス転移温度が比較的低めの樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高めのガラス転移温度を有する樹脂領域(シェル部)を有する。
なお、コア−シェル構造は、シェル部がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル部がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
コア−シェル構造の断面構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
コア−シェル構造の樹脂粒子とする場合、結晶性樹脂及び非晶性樹脂が、コア粒子又はシェル部のいずれかに含まれていればよいが、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに起因する帯電性の低下を抑制し、帯電均一性をより向上させるという観点から、少なくとも、結晶性樹脂がコア粒子に含まれている形態であると好ましい。このとき、非晶性樹脂は、コア粒子及びシェル部のいずれに含まれていてもよいが、コア粒子において結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含み、シェル部において非晶性樹脂を含む形態であると特に好ましい。かような形態とすることにより、コア粒子において結晶性樹脂と非晶性樹脂との親和性が高くなり、かつ結晶性樹脂が表面により露出しにくくなるため、帯電均一性とともに機械的強度を更に向上させることができる。
コア部の含有量は、コア部とシェル部との合計の樹脂量を100質量%として、30〜95質量%が好ましい。
また、結着樹脂中に含まれる樹脂は、下記結晶性樹脂及び非晶性樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、好ましくは、結着樹脂は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂からなる。
また、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、40質量%以上97質量%未満であると好ましい。更に非晶性樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、50質量%以上70質量%未満とするとより好ましく、55質量%以上70質量%未満であると更に好ましい。
<結晶性樹脂>
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂である。明確な吸熱ピークとは、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、例えば昇温速度10℃/minで測定した際、吸熱ピークの半値幅が15℃以内となるピークを示すものを意味する。
結晶性樹脂は、特に限定されないが、低温定着性を実現するため結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
なお、この結晶性ポリエステル樹脂は、後述の、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとが化学的に結合した、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(以下、「ハイブリッド樹脂」ともいうが、特に区別の必要のない場合は、単に「結晶性樹脂ともいう。)であってもよい。
なお、結着樹脂中、結晶性樹脂は分散相(ドメイン)を形成し、非晶性樹脂は連続相(マトリックス)を形成する相分離構造を有している。なお、結着樹脂がこのような特定の相分離構造を有していることは、例えば、トナーを必要に応じて四酸化オスミウム等で着色して、走査型電子顕微鏡(SEM)観察や、透過型電子顕微鏡(TEM)観察などを行うことによって確認できる。
このような特定の相分離構造の形成は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂の分子構造や、上記樹脂の含有量に依存する。したがって、上記特定の相分離構造を形成するためには、結着樹脂を構成する結晶性樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、3質量%以上60質量%未満であると好ましい。また、上記範囲とすることにより結晶性樹脂の添加による各種物性の向上効果が得やすくなる。特に、低温定着性及び帯電均一性をより向上させるという観点からは、30質量%以上50質量%未満であるとより好ましく、30質量%以上45質量%未満であると更に好ましい。なお、トナーからの結晶性樹脂の単離・抽出方法としては、例えば特許第3869968号等に記載の方法(ソックスレー抽出器を用いた方法)を採用することができ、これにより含有割合を特定することができる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
ここで、結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸化合物)と、2価以上のアルコール(多価アルコール化合物)との重縮合反応によって得られる結晶性樹脂である。
多価カルボン酸化合物とは1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物であり、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。多価カルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸と組み合わせてもよい。
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物であり、多価アルコール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができ、例えばエステル化触媒などを使用することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性モノマー成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性モノマー成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
なお、結晶性ポリエステル樹脂粒子の融点Tmは、65〜90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70〜80℃の範囲内である。Tmが、65〜90℃の範囲内であれば、低温定着性を阻害することなく、また、耐熱保管性が向上する。
(結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法)
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。
例えば、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得する。融点は、吸熱ピークのピークトップの温度とする。
なお、当該結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法は、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂の融点測定法としても同様に適用できる。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂>
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとが化学的に結合した樹脂である。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立して得るという観点から、5000〜100000であると好ましく、7000〜50000であるとより好ましく、8000〜20000であると特に好ましい。ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を100000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を5000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。
(結晶性ポリエステル樹脂ユニット)
結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂ユニットをいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂ユニットによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。
また、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸とともに用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られるとともに最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該ユニットを形成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットの製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。更にアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して80質量%以上98質量%未満であると好ましい。さらに、上記含有量は、90質量%以上95質量%未満であるとより好ましく、91質量%以上93質量%未満であると更に好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド樹脂中の各ユニットの構成成分及び含有割合は、例えばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定により特定することができる。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、上記多価カルボン酸及び多価アルコールの他、以下で詳説する非晶性樹脂ユニットに化学的に結合するための化合物もまた重縮合されてなると好ましい。以下で詳説するように、非晶性樹脂ユニットは、ビニル樹脂ユニットであると好ましいが、このような樹脂ユニットに対して付加重合する化合物を用いると好ましい。したがって、結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、上記多価カルボン酸及び多価アルコールに対して重縮合可能であり、かつ、不飽和結合(好ましくは二重結合)を有する化合物を更に重合してなると好ましい。
かような化合物としては、例えば、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等の二重結合を有する多価カルボン酸;2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8ジオール等の二重結合を有する多価アルコールが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂ユニット中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。
ここで、ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットの他に、以下で詳述するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを含む。ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニット及びポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であると好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
さらに、上記観点からは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットが、結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを主鎖として、グラフト化されていると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを有し、側鎖として結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するグラフト共重合体であると好ましい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向をより高めることができ、ハイブリッド樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。これら置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂ユニット中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット中であってもよい。
(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット(本明細書中、単に「非晶性樹脂ユニット」とも称する場合がある)は、結着樹脂を構成する非晶性樹脂とハイブリッド樹脂との親和性を制御するために必須のユニットである。非晶性樹脂ユニットが存在することで、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性が向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、帯電均一性等を向上させることができる。
非晶性樹脂ユニットは、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド樹脂中(さらには、トナー中)に非晶性樹脂ユニットを含有することは、例えばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性樹脂ユニットは、当該ユニットと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂ユニットである。このとき、当該ユニットと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃であることが好ましく、特に40〜65℃であることが好ましい。
非晶性樹脂ユニットは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂ユニットによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性樹脂ユニットを有するものであれば、その樹脂は、非晶性樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂に該当する。
非晶性樹脂ユニットは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(すなわち、ハイブリッド樹脂以外の樹脂)と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に更に取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。更に例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらは同種の樹脂である。
非晶性樹脂ユニットを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂ユニット、ウレタン樹脂ユニット、ウレア樹脂ユニットなどが挙げられる。中でも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂ユニットが好ましい。
ビニル樹脂ユニットとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂ユニット、スチレン−アクリル酸エステル樹脂ユニット、エチレン−酢酸ビニル樹脂ユニットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂ユニットの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル樹脂ユニット(スチレン−アクリル樹脂ユニット)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂ユニットとしてのスチレン−アクリル樹脂ユニットについて説明する。
スチレン−アクリル樹脂ユニットは、少なくとも、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレンモノマーは、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。
以下に、スチレン−アクリル樹脂ユニットの形成が可能なスチレンモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例を示すが、スチレン−アクリル樹脂ユニットの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
まず、スチレンモノマーの具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレンモノマーは、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」とは、「アクリル酸エステルモノマー」と「メタクリル酸エステルモノマー」を総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」を総称したものである。
これらのアクリル酸エステルモノマー又はメタクリル酸エステルモノマーは、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレンモノマーと2種以上のアクリル酸エステルモノマーとを用いて共重合体を形成すること、スチレンモノマーと2種以上のメタクリル酸エステルモノマーとを用いて共重合体を形成すること、又はスチレンモノマーとアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーとを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
非晶性樹脂ユニット中のスチレンモノマーに由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、非晶性樹脂ユニット中の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。このような範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
さらに、非晶性樹脂ユニットは、上記スチレンモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの他、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットに化学的に結合するための化合物もまた付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシ基[−OH]又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、非晶性樹脂ユニットは、上記スチレンモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーに対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]を有する化合物を更に重合してなると好ましい。
かような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
非晶性樹脂ユニット中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。
非晶性樹脂ユニットの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用してモノマーを重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
非晶性樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して、3質量%以上15質量%未満であると好ましい。さらに、上記含有量は、5質量%以上10質量%未満であるとより好ましく、7質量%以上9質量%未満であると更に好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)の製造方法>
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(1)非晶性樹脂ユニットをあらかじめ重合しておき、当該非晶性樹脂ユニットの存在下で結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、上述した非晶性樹脂ユニットを構成するモノマー(好ましくは、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーといったビニルモノマー)を付加反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。次に、非晶性樹脂ユニットの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させるとともに、非晶性樹脂ユニットに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド樹脂が形成される。
この方法において、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性樹脂ユニットの形成時、非晶性樹脂ユニットを構成するモノマーの他に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに残存するカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応可能な部位及び非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂ユニット中のカルボキシ基[−COOH]又はヒドロキシ基[−OH]と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットは非晶性樹脂ユニットと化学的に結合することができる。または、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成時、多価アルコール又は多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
この方法を用いることにより、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(2)結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂ユニットを構成するモノマーを付加重合させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、非晶性樹脂ユニットとを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(3)結晶性ポリエステル樹脂ユニットをあらかじめ形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で非晶性樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成しておく。次に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で、非晶性樹脂ユニットを構成するモノマーを重合反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、上記(1)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに非晶性樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(1)の方法は、非晶性樹脂ユニットをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル樹脂ユニットを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向が均一になりやすい。したがって、本発明のトナーに適したハイブリッド樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
<結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂>
なお、結晶性樹脂としては、上記結晶性ポリエステル樹脂以外にも、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられる。
(結晶性ポリウレタン樹脂)
結晶性ポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート成分とから合成されるものであることが好ましい。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジオール成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
(ジイソシアネート成分)
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、炭素数6〜20(ただしNCO基中の炭素は除く)の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、上記のジイソシアネートとともに3価以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−及び/又は4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレシイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基による変性物などが挙げられる。具体的には、ウレタン変性MDI、ウレタン変性TDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなどが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、炭素数6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましく、特に好ましくはTDI、MDI、HDI、水添MDI、IPDIである。
〔結晶性ポリアミド樹脂〕
結晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン成分とジカルボン酸成分との反応から得られたものであることが好ましい。
結晶性ポリアミド樹脂を得るためのジカルボン酸成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
(ジアミン成分)
結晶性ポリアミド樹脂を得るためのジアミン成分及びポリアミン成分としては、脂肪族ジアミン又は脂肪族ポリアミンを用いることが好ましく、芳香族ジアミンを用いることもできる。
脂肪族ジアミン及び脂肪族ポリアミンとしては、以下のものが挙げられる。
(1)直鎖型脂肪族ジアミン
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンシアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの炭素数2〜6のもの。
(2)脂肪族ポリアミン
ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの炭素数2〜6のもの。
(3)分岐型脂肪族ジアミン
ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン。
(4)脂環式ジアミン
1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4′−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メレンジアミン)などの炭素数4〜15のもの。
(5)複素環式ジアミン
ピペラジン、4−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンなどの炭素数4〜15のもの。
(6)芳香環含有脂肪族ジアミン
キシリレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミンなどの炭素数8〜15のもの。
脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミンと併用することができる芳香族ジアミンしては、炭素数6〜20のものが挙げられ、具体的には、以下のものを用いることが好ましい。
(7)非置換の芳香族ジアミン
1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4′−及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン、ポリフェニルポリメチレンポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリアミン、ナフチレンジアミンなど。
(8)炭素数1〜4のアルキル基により核置換された芳香族ジアミン
2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、エチルトリレンジアミン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4,3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジメチルジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3′−メチル−2′,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−2,2′−アミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの異性体の混合物など。
上記(7)〜(8)の芳香族ジアミンのアミノ基の一部又は全部が−NH−R1(ただし、R1はメチル基、エチル基などの低級アルキル基)により置換されたもの、4,4′−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど。
また、結晶性ポリアミド樹脂を得るためのポリアミン成分としては、以下のその他のポリアミン成分を用いることもできる。
(9)その他のポリアミン
ダイマー酸などのジカルボン酸と過剰(ジカルボン酸酸1モルに対して2モル以上)の脂肪族ポリアミンとの縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン、ポリアルキレングリコールなどのポリオールのシアノエチル化物の水素化物などのポリエーテルポリアミンなど。
(結晶性ポリウレア樹脂)
結晶性ポリウレア樹脂は、ジアミン成分とジイソシアネート成分との反応から得られたものであることが好ましい。
結晶性ポリウレア樹脂を得るためのジアミン成分、ポリアミン成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
また、結晶性ポリウレア樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
(結晶性ポリエーテル樹脂)
結晶性ポリエーテル樹脂としては、結晶性ポリオキシアルキレンポリオールなどを用いることができる。
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造に用いられるアルキレンオキサイド(AO)としては、炭素数3〜9のものが挙げられる。
具体的には、炭素数3のアルキレンオキサイド(AO)としては、プロピレンオキサイド、1−クロロオキタセン、1,2−ジクロロオキタセン、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
炭素数4のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−ブチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
炭素数5のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ペンチレンオキサイド、3−メチル−1,2−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
炭素数6のアルキレンオキサイド(AO)としては、シクロヘキセンオキサイド、1,2−ヘキシレンオキサイド、2,3−へキシレンオキサイド、3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
炭素数7のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−へブチレンオキサイドが挙げられる。
炭素数8のアルキレンオキサイド(AO)としては、スチレンオキサイドが挙げられる。
炭素数9のアルキレンオキサイド(AO)としては、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
これらのアルキレンオキサイドのうち、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドを用いることが好ましく、特にプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドを用いることが好ましく、重合速度が高いことから、最も好ましくはプロピレンオキサイドである。これらのアルキレンオキサイド(AO)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの合成方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。具体的には、Journal of the American Chemical Society 78,18,p.4787−4792(1956)に開示されるキラル体のアルキレンオキサイド(AO)を通常アルキレンオキサイド(AO)の重合で用いられる触媒を使用して開環重合する方法、特開平11−12353号公報に開示される立体的に嵩高いランタニド錯体と有機アルミニウムとを接触させた化合物を触媒として用いる方法、特表2001−521957号公報に開示されるバイメタルμ−オキソアルコキサイドとビロキシル化合物とをあらかじめ反応させる方法、Journal of the American Chemical Society 127,33,p.11566−11567(2005)に開示される高いアイソクティシティのポリオキシアルキレンポリオールを得る方法などが挙げられる。
キラル体のアルキレンオキサイド(AO)を開環重合する方法においては、重合開始剤としてグリコール又は水を用いることによって、末端にヒドロキシ基を有するアイソタクティシティが50%以上のポリオキシアルキレングリコールが得られる。アイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールは、その末端がカルボキシ基に変性されていてもよい。通常、アイソタクティシティが50%以上であると、結晶性のものとなる。
アイソタクティシティは、高シャープメルト性、耐ブロッキング性を得る観点から、70%以上であることがより好ましく、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
アイソタクティシティは、Macromolecule,35,6,p.2389−2392(2002)に開示された方法によって測定されるものである。
具体的には、測定試料30mgを直径5mmの13C−NMR用試料管に秤量、0.5mLの重水素化溶媒(重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルホルムアミド、重水素化ジメチルスルホキシドなど、試料を溶解可能な溶剤を選択)を加えて溶解させ、13C−NMRの三枝類のメチン基由来のシグナル、それぞれシンジオタクチック値:75.1ppm付近、ヘテロタクチック値:75.3ppm付近、アイソタクチック値:75.5ppm付近を観測し、下記一般式(a)から算出することができる。
一般式(a):アイソタクティシティ(%)=[I/(I+S+H)]×100
上記一般式(a)中、I:アイソタクチック値の積分値、S:シンジオタクチック値の積分値、H:ヘテロタクチック値の積分値である。
以上の結晶性樹脂は、その2種以上がブロック共重合体として結合された構成を有していてもよい。
<非晶性樹脂>
非晶性樹脂は、上記結晶性樹脂やハイブリッド樹脂とともに結着樹脂を構成する。非晶性樹脂は、特に限定されるものではないが、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。なお、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg1とし、2度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg2としたとき、上記非晶性樹脂のTg1が、35〜80℃であることが好ましく、特に45〜65℃であることが好ましい。また、上記非晶性樹脂のTg2は20〜70℃であることが好ましく、特に30〜55℃であることが好ましい。
非晶性樹脂は、上記「(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)」の項に記載のユニットを構成する樹脂成分を含んでいると好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などであると好ましい。さらに、非晶性樹脂は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂等といった、非晶性のポリエステル樹脂であってもよい。
結着樹脂にハイブリッド樹脂が含まれる場合、非晶性樹脂は、ハイブリッド樹脂の非晶性樹脂ユニットと同種の樹脂で構成されると好ましい。ここで、「同種の樹脂で構成される」とは、同種の樹脂のみからなる形態であってもよいし、又は同種の樹脂のみならず、他の非晶性樹脂を含む形態であってもよい。ただし、同種の樹脂と他の非晶性樹脂とを含む形態の場合、当該同種の樹脂の含有量は、非晶性樹脂全量に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。
さらに、非晶性樹脂は、ハイブリッド樹脂の非晶性樹脂ユニットと同種の樹脂に由来するユニットと、他の非晶性樹脂に由来するユニットを有する共重合体であってもよい。このとき、共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれであってもよいが、ハイブリッド樹脂との相溶性を制御しやすいという観点から、グラフト共重合体であると好ましい。ただし、この場合、ハイブリッド樹脂の非晶性樹脂ユニットと同種の樹脂に由来するユニットの含有量は、非晶性樹脂全量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。
なお、「同種の樹脂」に係る定義は、上記「(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)」の項において説明したため、詳細な説明を省略する。
非晶性樹脂として用いられる樹脂は、上記の樹脂の中でも、ビニル樹脂又はスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂であると好ましく、ビニル樹脂であると特に好ましい。ビニル樹脂及びスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、特にハイブリッド樹脂の非晶性樹脂ユニットがビニル樹脂ユニットである場合において、ハイブリッド樹脂との相溶性を制御しやすいという点で好適である。
したがって、以下では、ビニル樹脂及びスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂について説明する。
(ビニル樹脂)
非晶性樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル樹脂(スチレン−アクリル樹脂)が好ましい。スチレン−アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、上記「(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)」の項において、スチレン−アクリル樹脂ユニットを構成するモノマー(重合性モノマー)として挙げた化合物と同様のものが使用できる。
よって、詳細な説明を省略するが、スチレンモノマーとしてはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン;(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを用いると好ましい。これらスチレンモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、他のモノマーが重合されていてもよく、その例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(スチレン−アクリル樹脂中のスチレンモノマーに由来する構成単位の含有率)
スチレン−アクリル樹脂中のスチレンモノマーに由来する構成単位の含有率は、スチレン−アクリル樹脂の全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、スチレン−アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の含有率は、スチレン−アクリル樹脂の全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。このような範囲とすることにより、非晶性樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
スチレン−アクリル樹脂中の上記他のモノマーに由来する構成単位の含有率は、スチレン−アクリル樹脂の全量に対し、0.5〜30質量%であると好ましい。
スチレン−アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記「(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)」の項において説明した、スチレン−アクリル樹脂ユニットの形成方法と同様の方法によって製造することができる。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂)
非晶性樹脂として、非晶性のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いてもよい。ここで、「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂」とは、非晶性のポリエステル分子鎖(以下、「ポリエステルセグメント」ともいう。)に、スチレン−アクリル共重合体分子鎖(以下、「スチレン−アクリル共重合体セグメント」ともいう。)を分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂のことである。すなわち、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、ポリエステルセグメントにスチレン−アクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体構造を有する樹脂である。
ここで、非晶性樹脂として用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、以下の点で上記ハイブリッド樹脂と明確に区別される。すなわち、非晶性のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するポリエステルセグメントは、上記ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂ユニットとは異なり、明確な融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する非晶性の分子鎖である。このようなことは、トナーについて示差走査熱量測定(DSC)を行うことによって確認できる。また、ポリエステルセグメントを構成するモノマー(化学構造)は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマー(化学構造)とは異なるため、例えば、NMR等の分析によっても区別することができる。
上記ポリエステルセグメントは、多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分によって形成される。
上記多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、帯電性やトナー強度の観点から、芳香族ジオール又はその誘導体であることが好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができる。
これらの中でも、特にトナーの帯電均一性を向上させるという観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらの多価アルコール成分は1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
上記多価アルコール成分と縮合させる多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;フマル酸、無水マレイン酸、アルケニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸類;及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
ポリエステルセグメントの形成方法は特に制限されず、上記「(結晶性ポリエステル樹脂ユニット)」の項において説明した、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成方法と同様の方法によって製造することができる。
上記スチレン−アクリル共重合体セグメントは、上記「(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)」の項において説明したスチレン−アクリル樹脂ユニットと同様のモノマーに由来する分子鎖である。よって、当該セグメントを構成するモノマーの種類、組成比率、当該セグメントの形成方法等について、詳細な説明は省略する。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂中のポリエステルセグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂中のスチレン−アクリル共重合体セグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。このような範囲とすることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
非晶性樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、重量平均分子量(Mw)が、5000〜150000であると好ましく、10000〜70000であるとより好ましい。
GPCによる樹脂の分子量測定方法は、THFを溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定である。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1mL加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mLの流速で流し、1mg/mLの濃度の試料を約100μL注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。また、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)又はUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
[重合開始剤]
本発明においては、重合開始剤として少なくともペルオキソ二硫酸塩(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム)を使用して、上記重合性モノマーのいずれかを重合する。
また、上述の重合性モノマーは、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸塩であるペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)に加え、他種のラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
なお、ラテックスには、重合開始剤として、異なる2種の化合物を含有させることが好ましく、すなわち、ペルオキソ二硫酸塩以外に少なくとも、もう1種の化合物を重合開始剤として含有させることがKPSをより効果的に低減できるために好ましい。
[着色剤]
本発明に係る着色剤粒子分散液は、着色剤として一般式(1)で示される構造を有する化合物を含有する。
(式中、R2 Dは、水素、ハロゲン、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基又は−COORを表す。R4 Dは、水素、ハロゲン、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、−CONHX、−NHCO−X又は−SO2Yを表す。R5 Dは、水素、ハロゲン、−CONHX、−SO2Y又は−SO2O−Zを表す。R2 Kは、水素、ハロゲン、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。R4 Kは、水素、ハロゲン、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、−CONHX又は−NHCO−Xを表す。R5 Kは、水素、ハロゲン、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。なお、上記Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。上記Xは、水素、炭素数1〜8のアルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。上記Yは、置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。上記Zは、置換基を有してもよいフェニル基を表す。)
前記一般式(1)で示される構造を有する化合物について、具体的化合物例を下記に示す。
このものの数平均一次粒子径は10〜200nm程度が好ましい。着色剤の添加方法としては、乳化重合法で調製した重合体粒子を、凝集剤を添加することで凝集させる段階で添加し重合体を着色する方法や、モノマーを重合させる段階で着色剤を添加し、重合してトナー粒子(着色粒子)とする方法等を使用することができる。
これら本発明に係る着色剤はトナー質量の1〜20質量%含有させるのが好ましい。
[その他の着色剤]
このトナーはフルカラー用として組み合わせて使用することもできる。その際に組み合わせて使用できるトナーとしては限定されるものではなく、下記のような一般的なフルカラー用着色剤を用いたトナーと組み合わせることができる。
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
これらの無機顔料は所望に応じて単独又は複数を選択併用することが可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
本発明に係る着色剤以外で、使用することができるカラー着色剤としては、有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178等が挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、C.I.ソルベントレッド149、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド58、C.I.ソルベントレッド63、C.I.ソルベントレッド111、C.I.ソルベントレッド122、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー44、C.I.ソルベントイエロー77、C.I.ソルベントイエロー79、C.I.ソルベントイエロー81、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントイエロー93、C.I.ソルベントイエロー98、C.I.ソルベントイエロー103、C.I.ソルベントイエロー104、C.I.ソルベントイエロー112、C.I.ソルベントイエロー162、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー60、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブルー93、C.I.ソルベントブルー95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
[凝集剤]
使用される凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。具体的には、一価の金属として例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
これらの凝集剤は臨界凝集濃度以上添加することが好ましい。この臨界凝集濃度とは、水性分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加して凝集が発生する濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、乳化された成分及び分散剤自体によって大きく変化するものである。例えば、岡村誠三他著「高分子化学17、601(1960)日本高分子学会編」等に記述されており、詳細な臨界凝集濃度を求めることができる。また、別な手法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を、濃度を変えて添加し、その分散液のζ(ゼータ)電位を測定し、この値が変化する塩濃度を臨界凝集濃度として求めることもできる。
本発明に好適な凝集剤の添加量は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、更に好ましくは、1.5倍以上添加するのがよい。
[無限溶解する有機溶媒]
無限溶解する有機溶媒とは、すなわち水に対して無限溶解する有機溶媒をいい、この溶媒は、本発明においては形成された樹脂を溶解させないものが選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、ジオキサン等のエーテル類を挙げることができる。特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。
この無限溶解する溶媒の添加量は、凝集剤を添加した重合体含有分散液に対して1〜100体積%が好ましい。
[定着性改良剤]
本発明のトナーは少なくとも樹脂と着色剤を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
<離型剤>
離型剤としては特に限定されず公知のものを用いることができる。ポリプロピレン、ポリエチレン等の低分子量ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックス等が使用できる。好適には、特開2002−99116の段落0052〜0056に記載のエステルワックスがよい。
なお、離型剤の添加量としては、トナー全体に1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%がよい。
本発明のトナーは、モノマー中に離型剤を溶解させたものを水中に分散し、重合させ、結着樹脂粒子中にエステル系化合物を内包させた粒子を形成させ、着色剤粒子とともに塩析/融着することでトナーとすることが好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、かつ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。
<外添剤>
また、本発明のトナーでは、外添剤として無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を添加して使用することでより効果を発揮することができる。この理由としては、外添剤の埋没や脱離を効果的に抑制することができるため、その効果が顕著に出るものと推定される。
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものではないが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mLのビーカー中に入れた蒸留水50mLに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(mL)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
(疎水化度)
疎水化度={a/(a+50)}×100
この外添剤の添加量としては、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
[トナー粒子の物性(形状など)]
<トナー粒子の平均円形度>
また、本発明のトナーの製造方法によって製造されるトナー粒子の形状は、下記式で示される形状係数の平均値(平均円形度)が0.930〜0.980、好ましくは0.940〜0.975であるのがよい。
形状係数=(円相当径から求めた円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、形状係数の分布がシャープであることが好ましく、円形度の標準偏差は0.10以下がよく、下記式で算出されるCV値は20%未満が好ましく、更に10%未満が好ましい。
CV値={(円形度の標準偏差)/(平均円形度)}×100
この平均円形度を0.930〜0.980とすることで、トナーが有する形状をある程度不定形化することができ、熱の伝達を効率化することができ、定着性をより向上することができる。すなわち、平均円形度を0.980以下とすることで定着性を向上することができる。また、0.930以上の平均円形度とすることで、粒子の不定形度合いを抑制し、長期にわたる使用時のストレスによる粒子の破砕性を抑制することができる。
さらに、形状係数の分布がシャープであることが好ましく、円形度の標準偏差は0.10以下とすることで形状がそろったトナーとすることができ、トナー間での定着性能差を少なくすることができるため、定着率の向上及びオフセット性の低減による定着装置の汚染防止効果がより発揮される。また、CV値も20%未満とすることで、同様にシャープな形状分布とすることができ、定着性向上効果をより顕著に発揮することができる。
なお、上記形状係数の測定方法は限定されるものではないが、例えばトナー粒子を電子顕微鏡で500倍に拡大した写真を撮影し、画像解析装置を使用し、500個のトナーについて円形度を測定し、その算術平均値を求めることで、平均円形度を算出することができる。また、簡便な測定方法としては、FPIA−1000(シスメックス株式会社製)により測定することができる。
この形状に制御するためには凝集などの工程で形状を制御されつつあるトナー粒子(トナー母体粒子)の特性をモニタリングしながら適正な工程終了時期を決めてもよい。
モニタリングするとは、インラインに測定装置を組み込みその測定結果に基いて、工程条件の制御をするという意味である。すなわち、形状などの測定をインラインに組み込んで、例えば結着樹脂粒子を水系媒体中で会合(凝集)又は融着させることで形成する重合法トナーでは、融着などの工程で逐次サンプリングを実施しながら形状や粒径を測定し、所望の形状になった時点で反応を停止する。
モニタリング方法としては、特に限定されるものではないが、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(シスメックス株式会社製)を使用することができる。本装置は試料液を通過させつつリアルタイムで画像処理を行うことで形状をモニタリングできるため好適である。すなわち、反応場よりポンプなどを使用し、常時モニターし、形状などを測定することを行い、所望の形状などになった時点で反応を停止するものである。
<トナー粒子の体積平均粒径>
本発明に係るトナー粒子や樹脂粒子の体積平均粒径はコールターカウンターTA−II又はコールターマルチサイザー(ベックマン・コールター社製)で測定されるものである。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上のトナーの体積分布を測定して粒度分布及び平均粒径を算出した。
測定条件(1)アパーチャー:100μm(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mLに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて撹拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
本発明のトナーの粒径は、体積平均粒径で3〜8μmのものであることが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量又は融着時間、更には重合体自体の組成によって制御することができる。
体積平均粒径が3〜8μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
<トナー及びラテックス中のKPSの濃度の定量方法>
本発明に係るKPSの濃度の定量方法としては、内径100μm以下のフューズドシリカキャピラリー管内に泳動液を満たし、試料溶液を注入した後、両端を泳動液に浸し高電圧(−30〜+30kV)をかけて電気泳動を行うことにより、成分を荷電・大きさ・形などに基づく移動度の差異で分離する手法が挙げられる。分離された各成分は吸光度と移動時間で定量と定性を行う。
(分析条件)
・装置;CAPI−3300(大塚電子株式会社製)
・試料導入法;落差法(Δh=25mm、ラテックス90秒、トナー120秒)
・キャピラリー;内径75μm、全長800mm
・泳動液;2mM モリブデン酸アンモニウム、1.5mM ジエチレントリアミン、pH8.5(Tris調整)
・印加電圧;−25kV
・測定温度;25℃
・検出;吸光度 検出波長;210nm(インダイレクトUV法)
・標準物質;ペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学製 特級)
(試料調製方法)
(1)ラテックスの場合
試料を孔径0.45μmのフィルターで濾過し、固形分を除去する。
試料を50mg秤量し超純水で10倍希釈後上記条件のキャピラリー電気泳動装置にて過硫酸イオンの量を測定する。
標準試料を用いた絶対検量線法にて濃度を算出し、試料1kgあたりのペルオキソ二硫酸カリウムの量を下記濃度算出式から算出する。
(2)トナーの場合
試料5gを10mLのトルエンで溶解する。その後10mLの超純水を入れ10分振盪する。
5000rpmで遠心分離後得た水層を更に15000rpmで遠心分離を行う。遠心分離で得た水層を採取し、上記条件のキャピラリー電気泳動装置にて過硫酸イオンの量を測定する。
標準試料を用いた絶対検量線法にて濃度を算出し、試料1kgあたりのKPS(ペルオキソ二硫酸塩)の濃度を下記濃度算出式から算出する。
(濃度算出式)
KPSの濃度は下記式から算出できる。
KPSの濃度=(試料濃度/1000×仕上げ量×希釈倍率)/試料量×1000000(mg/kg)
上記式のうち、試料濃度(ppm)は、吸光度と移動時間から得られたエリア値を検量線から算出した仕上げ量(トナーの場合は抽出量)(mL)であり、試料量(mg)は、秤量した試料量を表す。
(KPSの平均濃度)
なお、KPSの平均濃度とは、結着樹脂粒子とラテックス粒子を含有するラテックスにおいて、結着樹脂粒子とラテックス粒子の固形分と使用比率から求める、KPSの濃度である(以下、「ラテックス中のKPSの平均濃度」又は「ラテックスKPS平均濃度」ともいう。)。下記に具体的な計算例を記す。なお、下記例は、複数のラテックスを使用している場合である。
固形分率30質量%、使用比率80質量%、KPSの濃度10ppmのラテックスA(具体的には、例えば、非晶性樹脂粒子の分散液)と、固形分率30質量%、使用比率20質量%、KPSの濃度0ppmのラテックスB(具体的には、例えば、結晶性樹脂粒子の分散液)を使用した場合、KPSの平均濃度は下記のとおりとなる。
ラテックス中のKPSの平均濃度={10(ラテックスAのKPSの濃度)/0.3(ラテックスAの固形分率)}×0.8(ラテックスAの使用比率)+{0(ラテックスBのKPSの濃度)/0.3(ラテックスBの固形分率)}×0.2(ラテックスBの使用比率)=27ppm
《現像剤》
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、いずれも好適に使用することができるが、キャリアと混合して使用する二成分現像剤として使用することが好ましい。
[キャリア]
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、磁性粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料を用いることができる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものが良い。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、更に樹脂により被覆されているもの又は樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂又はフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
《画像形成装置》
次に、本発明に係る画像形成装置の一例のカラー画像形成装置の断面構成図を示す。図10において、21は潜像担持体である感光体ドラムで、OPC感光体(有機感光体)をドラム基体上に塗布形成したものであり、接地されて図示の時計方向に駆動回転される。22は帯電手段たるスコロトロン帯電器で、感光体ドラム21周面に対し高電位VHの一様な帯電をグリッド電位VGに電位保持されたグリッドとコロナ放電ワイヤによるコロナ放電によって与える。このスコロトロン帯電器による帯電に先だって、前プリントまでの感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いたPCL(帯電前除電器)による露光を行って感光体周面の除電をしておくとよい。
感光体ドラム21への一様帯電の後、露光手段23により画像信号に基づいた像露光が行われる。露光手段23は図示しないレーザーダイオードを発光光源とし回転するポリゴンミラー131、fθレンズ132、シリンドリカルレンズ133を経て反射ミラー134により光路を曲げられ主走査がなされるものである。
感光体ドラム21の回転(副走査)と同期して像露光がなされ潜像が形成される。本例では文字部に対して露光を行い、文字部の方が低電位VLとなるような反転潜像を形成する。
感光体ドラム21の周縁には、イエロー(Y)、マゼンタ(M、本発明に係る静電潜像現像用トナー)、シアン(C)、黒色(K)等のトナーとキャリアとから成る二成分現像剤をそれぞれ内蔵した現像手段24Y、24M、24C、24Kが設けられている。
画像形成方法を説明すると、まず1色目として例えばイエローの現像が行われる。通常現像剤はフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料として色に応じた顔料と荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を加えたトナーとからなる。現像剤は層形成手段によって現像スリーブ上に100〜600μmの現像剤層厚に規制されて現像域へと搬送される。
現像域における現像スリーブと感光体ドラム21との間隙は現像剤層厚よりも大きい0.2〜1.0mmとして、この間にVACのACバイアスとVDCのDCバイアスが重畳して印加される。VDCとVH、トナーの帯電は同極性であるため、VACによってキャリアから離脱するきっかけを与えられたトナーはVDCより電位の高いVHの部分には付着せず、VDCより電位の低いVL部分に付着し顕像化(反転現像)が行われる。
1色目の顕像化が終わった後2色目のマゼンタの画像形成工程にはいり、再びスコロトロン帯電器よる一様帯電が行われ、2色目の画像データによる潜像が露光手段23によって形成される。
再び感光体ドラム21周面の全面にわたってVHの電位となった感光体のうち、1色目の画像のない部分に対しては1色目と同様の潜像がつくられ現像が行われるが、1色目の画像がある部分に対し再び現像を行う部分では、1色目の付着したトナーにより遮光とトナー自身のもつ電荷によってVM′の潜像が形成され、VDCとVM′の電位差に応じた現像が行われる。この1色目と2色目の画像の重なりの部分では1色目の現像をVLの潜像をつくって行うと、1色目と2色目とのバランスが崩れるため、1色目の露光量を減らしてVH>VM>VLとなる中間電位VMとすることもある。
3色目のシアン、4色目の黒色についても2色目のマゼンタと同様の画像形成工程が行われ、感光体ドラム21周面上には4色の顕像が形成される。
一方、給紙カセットより半月ローラーを介して搬出された一枚の記録材(記録紙等)Pは、送り出しローラー対を経てレジストローラー対(給紙ローラー)近傍で一旦停止し、転写のタイミングの整った時点でレジストローラーの回転作動により転写域へと給紙される。
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム21の周面に転写手段が圧接され、給紙された記録材Pを挟着して多色像が一括して転写される。
次いで、記録材Pは分離手段によって除電され、感光体ドラム21の周面より分離して定着装置(定着手段)40に搬送され、加熱ローラー(上ローラー)41と加圧ローラー(下ローラー)42の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち、排紙ローラーを経て装置外部の排紙トレイ上に排出される。なお、前記の転写手段は記録材Pの通過後感光体ドラム21の周面より退避離間して、次なるトナー像の形成に備える。
一方、記録材Pを分離した感光体ドラム21は、除電器により除電を受けたのち、クリーニング手段25のブレードの圧接により残留トナーを除去、清掃され、再び前記PCLによる除電とスコロトロン帯電器による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスにはいる。なお、前記のブレードは感光体面のクリーニング後、直ちに移動して感光体ドラム21の周面より退避する。ブレードによってクリーニング手段25内に掻き落された廃棄トナーは、スクリューにより排出されたのち、図示しない廃トナー回収容器内へ貯留される。
本発明に使用される好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式を挙げることができる。特に、接触加熱方式として、熱圧定着方式、更には熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
熱ローラー定着方式では、多くの場合表面にテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体類等を被覆した鉄やアルミニウム等で構成される金属シリンダー内部に熱源を有する上ローラーとシリコーンゴム等で形成された下ローラーとから形成されている。熱源としては、線状のヒーターを有し、上ローラーの表面温度を120〜200℃程度に加熱するものが代表例である。定着部においては上ローラーと下ローラー間に圧力を加え、下ローラーを変形させ、いわゆるニップを形成する。ニップ幅としては1〜10mm、好ましくは1.5〜7mmである。定着線速は40〜600mm/secが好ましい。ニップが狭い場合には熱を均一にトナーに付与することができなくなり、定着のムラを発生する。一方でニップ幅が広い場合には樹脂の溶融が促進され、定着オフセットが過多となる問題を発生する。
定着クリーニングの機構を付与して使用してもよい。この方式としてはシリコーンオイルを定着の上ローラー又はフィルムに供給する方式やシリコーンオイルを含浸したパッド、ローラー、ウェブ等でクリーニングする方法が使用できる。
定着装置にはクリーニング機構を付与して使用してもよい。クリーニング方式としては、各種シリコーンオイルを定着用フィルムに供給する方式や各種シリコーンオイルを含浸させたパッド、ローラー、ウェブ等でクリーニングする方式が用いられる。
なお、シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等を使用することができる。さらに、フッ素を含有するシロキサンも好適に使用することができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[ラテックス1の調製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた5000mLのセパラブルフラスコにあらかじめアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水(2760g)に溶解させた溶液を添加する。窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。一方で例示化合物19)72.0gをスチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなるモノマーに加え、80℃に加温し溶解させ、モノマー溶液を調製した。
ここで循環経路を有する機械式分散機により上記の溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を作製した。次いで、重合開始時の重合開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム:KPS)0.90gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し80℃にて3時間加熱、撹拌することで、スチレンアクリル樹脂粒子(非晶性樹脂粒子)からなるラテックス粒子を作製した。引き続いて更に上記重合開始剤(KPS)8.00gをイオン交換水240mLに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、t−ドデシルメルカプタン13.7gの混合液を120分かけて滴下した。なお、ラテックス1及び後述のラテックス2〜6の重合固形分は30%であった。
(追い炊き)
滴下終了後、追い炊き時の重合開始剤として、2.4%過酸化水素(表1では「HPO」と記載。)を80g添加したのちに、85℃60分加熱撹拌させた後40℃まで冷却しラテックス粒子(非晶性樹脂粒子)を得た。KPSの濃度は34ppmであった。
[ラテックス2〜6の調製]
<ラテックス2、3の調製>
ラテックス2、3はラテックス1の製造において、追炊き温度をそれぞれ、90℃、95℃、70℃に変えた他は同様にして、ラテックス2、3を調製した。
なお、ラテックス2、3中のKPSの濃度は、表1に記載のとおりであった。
<ラテックス4の調製>
ラテックス1で用いた重合開始剤を、重合開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム:KPS)から2.4%過酸化水素180gに変更して添加した。また、追い炊き時の重合開始剤を2.4%過酸化水素から、ペルオキソ二硫酸カリウム0.09gをイオン交換水20gに溶解させた溶液に変更した。
上記のように変えた他は、ラテックス1の調製と同様にして、ラテックス4を調製した。
ラテックス4中のKPSの濃度は30ppmであった。
<ラテックス5の調製>
ラテックス1の調製において、追い炊き時の重合開始剤である2.4%過酸化水素を加えなかった他は、同様にしてラテックス5を調製した。なお、ラテックス5のKPSの濃度は52ppmであった。
<ラテックス6の調製>
ラテックス5の調製において、追い炊き時の温度を70℃とした他は、同様にしてラテックス6を調製した。なお、ラテックス6のKPSの濃度は212ppmであった。
[トナー1の製造]
(着色剤粒子の合成)
n−ドデシル硫酸ナトリウム(分散安定剤)10gをイオン交換水160mLに撹拌溶解する。この液に、撹拌下、着色剤としてC.I.Pigment Red 146を20g、徐々に加え、次いで、クレアミックスを用いて分散した(着色剤粒子の分散液調製工程)。
大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、分散液中の粒子の粒径を測定した結果、重量平均粒径で121nmであった。
この分散液を「着色剤粒子の分散液1」とした。
(結晶性ポリエステル樹脂粒子の合成)
次に、両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン−アクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 34質量部
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
セバシン酸 281質量部
1,12−ドデカンジオール 283質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂(StAc)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子1を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂1は、その全量に対してCPEs以外の樹脂(StAc)ユニットを8質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂1の数平均分子量(Mn)は9000、融点(Tc)は76℃であった。なお、KPSの濃度は0ppmであった。
<トナー母体粒子1の形成>
次に、前述の「ラテックス1」固形分80g相当、「結晶性樹脂1」固形分20g相当、イオン交換水2000mL及び「着色剤粒子の分散液1」を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を付けた5Lの四つ口フラスコに入れ撹拌した。
このとき、ラテックスの平均KPS濃度は、91ppmであった。
30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム六水和物52.6gをイオン交換水72mLに溶解した水溶液を撹拌しつつ、30℃にて5分間で添加した。その後、1分間放置した後に、昇温を開始し、液温度90℃まで6分で昇温した(凝集・融着工程)。なお、昇温速度は、10℃/分とした。
この状態で、凝集・融着されたトナー母体粒子の粒径をコールターカウンターTA−IIにて測定し、体積平均粒径が6.5μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700mLに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させ、更に継続して液温度90℃±2℃にて、6時間加熱撹拌し、塩析/融着させた。
その後、6℃/minの条件で30℃まで冷却し(冷却工程)、塩酸を添加し、pHを2.0に調整し撹拌を停止した。生成したトナー母体粒子を濾過し、イオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥し(濾過、洗浄、乾燥工程)、トナー母体粒子を得た。以上のようにして得られたトナー母体粒子を「トナー母体粒子1」とする。
なお、KPSの平均濃度は0ppmであった。
次いで上記「トナー母体粒子1」に疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナー1を得た(外添剤処理工程)。
[トナー2〜10の製造]
上記トナー1の製造において、着色剤、ラテックスの種類、ラテックスと結晶性樹脂の比率(表2では「樹脂比率」と記載。)を表2のように変更した他は、同様にして、トナー2〜10を製造した。
なお、トナー1〜10において、形状及び粒径等の物性に関してはトナー母体粒子及びトナーのいずれも差異はなかった。
<トナー及びラテックス中のKPS定量方法>
上記トナー1〜10について、KPS量を定量した。結果は表2に示す。
その方法としては、内径100μm以下のフューズドシリカキャピラリー管内に泳動液を満たし、試料溶液を注入した後、両端を泳動液に浸し高電圧(−30〜+30kV)をかけて電気泳動を行うことにより、成分を荷電・大きさ・形などに基づく移動度の差異で分離する手法を用いた。分離された各成分は吸光度と移動時間で定量と定性を行った。
(分析条件)
・装置;CAPI−3300(大塚電子株式会社製)
・試料導入法;落差法(Δh=25mm、ラテックスでは90秒、トナーでは120秒)
・キャピラリー;内径75μm、全長800mm
・泳動液;2mM モリブデン酸アンモニウム、1.5mM ジエチレントリアミン、pH8.5(Tris調整)
・印加電圧;−25kV
・測定温度;25℃
・検出;吸光度 検出波長;210nm(インダイレクトUV法)
・標準物質;ペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学製 特級)
(試料調製方法)
(1)ラテックスの場合
試料を孔径0.45μmのフィルターで濾過し、固形分を除去した。
試料を50mg秤量し超純水で10倍希釈後上記条件のキャピラリー電気泳動装置にて過硫酸イオンの量を測定した。
標準試料を用いた絶対検量線法にて濃度を算出し、試料1kgあたりのペルオキソ二硫酸カリウムの量(濃度)を下記濃度算出式から算出した。
(2)トナーの場合(トナー残留KPS含有量)
試料5gを10mLのトルエンで溶解した。その後10mLの超純水を入れ10分振盪した。
5000rpmで遠心分離後得た水層を更に15000rpmで遠心分離を行った。
遠心分離で得た水層を採取し、上記条件のキャピラリー電気泳動装置にて過硫酸イオンの量を測定した。
標準試料を用いた絶対検量線法にて濃度を算出し、試料1kgあたりのペルオキソ二硫酸カリウムの量(濃度)を下記濃度算出式から算出した。
(濃度算出式)
KPSの濃度は下記式から算出した。
KPSの濃度=(試料濃度/1000×仕上げ量×希釈倍率)/試料量×1000000(mg/kg)
上記式のうち、試料濃度(ppm)は、吸光度と移動時間から得られたエリア値を検量線から算出した仕上げ量(トナーの場合は抽出量)(mL)であり、試料量(mg)は、秤量した試料量を表す。
(ラテックス中のKPSの平均濃度)
ラテックス中のKPSの平均濃度(表2には「ラテックスKPS平均濃度」」と記載)は下記のようにして求めた。
ラテックス中のKPSの平均濃度(ppm)={ラテックスのKPSの濃度(ppm)/ラテックスの固形分率(%)}×ラテックスの使用比率(%)
なお、上記式において、ラテックスのKPSの濃度は、表1に記載のものである。また、ラテックスの固形分率とは、上述のラテックス1及び後述のラテックス2〜6の重量固形分(30%)である。さらに、ラテックスの使用比率とは、表2に記載の樹脂比率におけるラテックス固形分である。
(現像剤1〜10の製造)
上記トナーの各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の現像剤を調製した。これらをトナーに対応して、現像剤1〜現像剤10とする。
[評価]
調製した上記現像剤1〜10を使用し、図10の画像形成装置とほぼ同じ構成をもつデジタルカラープリンタKonica3015を用い定着器の構成を下記に示す構成に変更して実写評価を実施した。
定着器としては図11に示すごとき圧接方式の加熱定着装置を用いた。具体的構成は下記のようになっている。
表面をPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)の被覆層(厚さ:120μm)12を有し内径40mmで全幅が310mmの、ヒーター13を中央部に内蔵した円柱状の厚さ1.0mmのアルミ合金パイプ11を加熱ローラー(上ローラー)41として有し、表面が同様にスポンジ状シリコーンゴム(アスカーC硬度=48:厚さ2mm)17で構成された内径40mmの肉厚2.0mmの鉄パイプ16を有する加圧ローラー(下ローラー)42を有している。ニップ幅は5.8mmとした。この定着装置を使用して、印字の線速を250mm/secに設定した。
なお、定着装置のクリーニング機構としてポリジフェニルシリコーン(20℃の粘度が10Pa・sのもの)を含浸したウェブ方式の供給方式を使用した。
定着の温度は上ロールの表面温度で制御し、175℃の設定温度とした。なお、シリコーンオイルの塗布量は、0.6mg/A4とした。
<彩度>
マクベスカラーアイ7000にて、光源ASTM−D65 2度視野を用いて、印刷した紙上の画像の彩度を測定し、評価を行った。本発明では、彩度の値が70以上であれば、良好な彩度であると判断した。
<製造されたトナー残留KPS含有量>
上述のようにして、トナー1〜10に残留するKPSの含有量を測定した。結果は表2に示すとおりであるが、いずれのトナーもKPSは検出されなかった。