JP6480682B2 - 生物粒子計数システム、生物粒子計数方法及び水質管理システム - Google Patents

生物粒子計数システム、生物粒子計数方法及び水質管理システム Download PDF

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Description

本発明は、水中や空気中に存在する生物粒子を判別してその個数を計数する生物粒子計数システム、生物粒子計数方法及び浄水監視システムに関する。
河川や湖水等の水道原水中には様々な生物粒子が存在し、浄化処理を行った水道水中においてもなお、これら生物粒子が残存している場合がある。そこで水質、とりわけ水道原水への生物粒子の混在状況を監視し、その結果に応じた浄化処理等の適切な措置を講じる必要がある。また、食品製造現場などにおいても、空気中を浮遊する菌類などの生物粒子を監視する必要がある。
そうした中、生物粒子を含む液体に向けて所定の波長の光を照射し、生物粒子の細胞内に存在する生命活動の代謝に必要となるリボフラビン等の物質から発せられる蛍光(以下、「自家蛍光」と称す。)の強度を指標として、細菌や酵母、カビ等の生物粒子を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この先行技術によれば、原水中に含まれる生物粒子を光学的に検出し、その個数を計数することができる。
また、オゾンガスを用いて原水中に溶存している多くの有害物質を酸化処理(殺菌)する方法が既に知られている。この方法に関して従来、オゾン注入の前後でそれぞれ測定した蛍光強度に基づいて生物粒子の減少傾向を判断し、オゾンの注入量を制御して適切な殺菌効果を得るシステムの先行技術がある(例えば、特許文献2参照)。この先行技術は、原水中にオゾンを注入すると、その殺菌効果により生物粒子が死滅するため、オゾン注入後は測定から得られる蛍光強度が減衰することを利用したものである。
特開2013−117466号公報 特開2005−324124号公報
しかしながら、例えば水環境に棲む従属栄養細菌などは、発する自家蛍光の強度(元々の自家蛍光能力)が非常に微弱であるため、前者の先行技術(特許文献1)に示された方法ではこうした菌を検出することが困難である。また、後者の先行技術(特許文献2)に示された方法を用いると、元来微弱であるこれらの菌類の自家蛍光強度がオゾンの注入によって更に減衰してしまう。そのため菌の検出が一層困難となり、オゾン注入後すなわち浄化処理後の水中における菌の残存状況を確認することすらできないという問題がある。また、菌類の自家蛍光強度が微弱な場合、蛍光染料剤を用いることもできるが、これらは高額であることや不純物などの混入などの問題がある。
そこで本発明は、自家蛍光の強度が非常に微弱な生物粒子の検出精度を向上させることができる技術の提供を課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
本発明の生物粒子計数システム及び生物粒子計数方法は、まず検出する対象粒子を含む流体に対して生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後に、経過時間が生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内となるまで待機させた流体に向けて所定波長の光を照射し、照射された光の作用により流体に含まれる対象粒子が放出する蛍光を受光する。そして、受光された蛍光の強度に基づいて個々の対象粒子を生物粒子であると判定することにより流体内に存在する生物粒子を計数する。
このように本発明によれば、生物粒子を死滅させる上で有効な処理(以下、「死滅処理」と称する。)がなされた後の生物粒子が放出する蛍光の強度が増加した生物粒子を検出し易い状態において流体内に存在する生物粒子の検出を行うため、生物粒子の検出精度を向上させることが可能となる。
このような本発明の有用性は、単に「殺菌を目的として行う処理」や、「蛍光強度に基づく生物粒子の検出」といった個別に存在する従来手法によっては否定されない。すなわち、「殺菌処理」は文字通り「生物粒子を死滅させる」ことを目的として行われるものであるから、一般的に、生物粒子は、死滅処理によって生命力が弱められその蛍光強度が減衰するものと考えられる。この場合、生物粒子が本来有する自家蛍光能力も低下することから、通常なら「殺菌処理」は「生物粒子を計数する」という目的になじまない。
ところが本発明においては、そうした処理を行った後の経過時間に着目し、予め設定された所定時間の範囲で反対方向の作用を生じさせ、生物粒子の蛍光強度を増加させることができる。この作用により、本来なら「殺菌」を目的とした死滅処理を行う過程で同時に生物粒子の検出が可能となり、流体内における生物粒子の残存状況を確認することができる。そのため、自家蛍光の強度が微弱でその検出が困難である生物粒子を検出するために特別な蛍光染色剤などを別途用意する必要がなく、生物粒子の検出が実現できる点において非常に有益である。
また、本発明の生物粒子計数システム及び生物粒子計数方法では、生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後の生物粒子による蛍光強度の時間特性に基づいて、所定時間の範囲が設定される。
この態様では、生物粒子により放出される蛍光について、生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後の時間経過に伴う蛍光強度の変化を予め測定により割り出しておき、その結果に基づいて決定した時間の範囲で生物粒子の検出を行う。こうすることにより蛍光強度が増加し、より検出しやすい状態となった生物粒子を検出することができるため、生物粒子の計数精度をより一層向上させることができる。
好ましくは、流体が液体である場合には流体に所定濃度のオゾン又は電解水を注入するか、もしくは、紫外線を連続照射することを生物粒子の死滅に有効となる処理として施し、流体が気体である場合には流体に所定濃度のオゾンを注入するか、もしくは紫外線を連続照射することを生物粒子の死滅に有効となる処理として施す。
この態様によれば、オゾン、電解水の注入又は紫外線の照射といういずれも所定濃度かつ所定時間の範囲内において作用すれば生物粒子の放出する蛍光の強度を増加させる上で効果的となる処理を施した上で流体内に存在する生物粒子の検出を行うため、より高精度な検出及び計数を行うことが可能となる。
なお、流体にオゾン又は電解水を注入する場合には、注入後の経過時間が所定時間の範囲内にある流体に対して計数を行うが、流体に紫外線を照射する場合には、照射を開始してから経過時間が所定時間の範囲内となるまで継続して照射した後に計数を行う。
また、水源から取り入れた水を対象として浄化処理を行う浄水施設において、浄水過程の水路上に上述した何れかの態様の生物粒子計数システムを設置し、この生物粒子計数システムにより計数された生物粒子の個数に基づいて、浄水過程において生物粒子を死滅させるために用いる殺菌剤の注入量を調整してもよい。
この態様によれば、浄水処理の途上にある水中に存在する生物粒子の個数をリアルタイムに計数することができるため、浄水過程の水中において生物粒子がどの程度残存しているのかを監視しながら、測定結果に基づいて薬剤の投入量を調整する等、その後の浄水処理において適切な処置を施すことが可能となる。
以上のように、本発明の生物粒子計数システム、生物粒子計数方法及び水質監視システムによれば、流体に対して生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後に、生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内にある生物粒子の計数を行うことができる。これにより、自家蛍光の強度が非常に微弱な生物粒子についても検出が可能となり、背景光となる試料液体の散乱光などのノイズに対して、蛍光強度が増加するのでSN比が向上し、精度の高い生物粒子の計数を実現することができる。
また、特別な蛍光染色剤などを別途用意することなく、死滅処理の過程でこれと同時に蛍光強度を上昇させることができるため、作業効率にも優れており、さらに計数に要するコストを抑制することが可能となる。
一実施形態における生物粒子計数方法を示すフローチャートである。 生物粒子計数システムの一実施形態を示す概略図である。 水道水から培養された従属栄養細菌の例を示す図である。 試料水に対するオゾン水注入後の時間経過に伴う蛍光及び散乱光の強度分布を示す散布図である。 試料水に対する電解水注入後の時間経過に伴う蛍光及び散乱光の強度分布を示す散布図である。 生物粒子計数システムの他の構成例を示す概略図である。 連続式の照射器の構成を示す概略構成図である。 生物粒子計数システムを備えた水質管理システムの一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態で示す生物粒子計数システム及び生物粒子計数方法は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
図1は、一実施形態における生物粒子計数方法のフローチャートである。本実施形態において、生物粒子の計数は以下の工程S1〜S4に沿って行われる。
処理工程S1:検出する対象粒子が含まれる試料流体に対して生物粒子の死滅に有効な処理を施す。試料流体は液体でも気体でもよく、試料流体がいずれの形態であるかにより施す処理が異なる。試料流体が液体である場合には、これに対し所定濃度のオゾン又は電解水を注入するか、もしくは紫外線を連続照射する。一方、試料流体が気体である場合は、所定濃度のオゾンを注入するか、もしくは紫外線を連続照射する。
待機工程S2:処理工程S1で試料流体に対して生物粒子の死滅に有効な処理を施した後の経過時間が生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内となるまで待機する。ここで、死滅処理としてオゾン又は電解水を注入する場合には、処理工程S1でのこれらの殺菌剤注入後に生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内までそのまま待機する。一方、死滅処理として紫外線を照射する場合には、照射開始からの経過時間が所定時間の範囲内になるまで試料流体に対して紫外線を連続照射しながら待機する。なお、殺菌剤の所定の濃度もしくは紫外線の所定の強度における所定時間の範囲を、対象となる生物粒子による蛍光強度の時間特性に基づき予め求めておく。この時間特性は、実験やシミュレーションにより割り出すことが可能である。
受光工程S3:待機工程S2を経た試料流体に対して所定波長の光を照射し、試料流体中に存在する粒子が放出する自家蛍光を受光する。ここで、照射する所定波長の光は、生物粒子がその体内に有するリボフラビンを励起させる上で有効となる330nm〜460nmの波長域にある光とする。待機工程S2の後に測定を行うことにより、生物粒子が放出する蛍光の強度が増加し、生物粒子を一層効率的に検出することができる。
計数工程S4:受光工程S3で受光された蛍光の強度に基づいて試料流体中に存在する粒子が生物粒子であるか否かを判定し、生物粒子の計数を行う。
図2は、生物粒子計数システムの一実施形態を示す概略図である。この生物粒子計数システム700においては、図1で説明した生物粒子計数方法の各工程が実現されている。
図2に示されるように、生物粒子計数システム700は、例えば処理部、待機部、光照射受光部、計数部等により構成される。以下、説明の便宜のため、試料流体が液体であるものとして説明する。
処理部は、図1のステップS1に当たる処理を実行する。すなわち、試料容器530から試料液体を取り出して貯留部510に流入させ、この液体に対して死滅処理に用いる所定濃度の殺菌剤(オゾンなど)を殺菌剤注入器520から注入させる。
待機部は、図1のステップS2に当たる処理を実行する。すなわち、処理部で死滅処理が施された後の経過時間が生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内となるまで待機する。
光照射受光部は、図1のステップS3に当たる処理を実行する。すなわち、死滅処理が施された後の経過時間が所定時間の範囲内となるまで貯留部510内にて待機した流体に向けて所定波長の光を照射し、この光の作用により試料液体に含まれる粒子が放出する蛍光を受光して、その強度を測定する。
計数部は、図1のステップS4に当たる処理を実行する。すなわち、光照射受光部が測定した蛍光強度に基づいて、試料液体中に存在する生物粒子の個数を計数する。ここで、光照射受光部による蛍光強度の測定及び計数部による生物粒子数の計数には、測定器(生物粒子計数器)550を用いる。
測定器550は、主に光検出部1と蛍光計数部2から構成されており、光検出部1が光照射受光部の役割を、蛍光計数部2が計数部の役割を担っている。測定器550を用いることにより、試料液中に浮遊する対象物のうち生物粒子(例えば、菌類等)を検出し計数することができる。なお、測定器550には公知の生物粒子計数器の構成(例えば、先行技術文献に掲げた特許文献1に開示)を用いることができるため、ここではその詳細を省略する。
〔生物粒子〕
図3は、水道水から培養された従属栄養細菌を表す図である。
水道水には複数種類の菌類が存在している。図3に示される赤色小型コロニー(参照符号A)は、赤色の菌類(従属栄養細菌)からなる小型のコロニーが形成されている様子を表している。本発明の発明者は、この赤色小型コロニーを実験に用いて本発明の有効性を確認している。
〔生物粒子により放出される自家蛍光の強度の時間特性〕
図4は、赤色小型コロニーを含む試料水に対してオゾン水を注入した場合の時間経過に伴う蛍光及び散乱光の強度分布の変化を示す散布図である。図4中(A)は、500mlの試料水に1.5ppmの濃度のオゾン水を1ml注入した場合について、また図4中(B)は、500mlの試料水に1.5ppmの濃度のオゾン水を25ml注入した場合について、オゾン水注入時点を起点として段階的に時間が経過した後の粒子による蛍光及び散乱光の強度の変化を散布図で表したものである。
いずれの実験においても、測定器550で測定した蛍光の波長は約520nm(リボフラビンの蛍光波長)である。また、各散布図の縦軸は蛍光の強度を、横軸は散乱光の強度を示しており、プロットされている各ドットは試料液中に存在する個々の粒子を表す。各ドットの位置は、各粒子が放出する蛍光及び散乱光の強度の変化に伴い移動する。なお、蛍光及び散乱光の強度が測定限界(上限)を超える場合、当該ドットを各軸の上限(右端及び上端)線上にプロットした。これらの点は、後述する図5においても同様とする。
図4(A)中〔オゾン水注入前〕の散布図を見ると、オゾン水注入前は全体的に散布度が小さく、蛍光強度の比較的低い範囲内、より具体的には散布図の下から3分の1程度の範囲内に分布の大半が収まっており、蛍光強度の高い方にはあまり分布が見られない。
しかし、図4(A)中〔5分後〕の散布図を見ると、分布が広範に広がり、注入前には殆ど分布が見られなかった蛍光強度の高い方、すなわち散布図の上側にもドットが分布している。この分布は、オゾン水注入前の段階では蛍光強度の低い位置に分布していた生物粒子のドットが、オゾン水の作用によりその蛍光強度が増加したために、蛍光強度の高い位置に移動したものと考えられる。
そして、図4(A)中〔20分後〕の散布図では、分布がより蛍光強度の高い方に拡散している。このように、500mlの試料水に1.5ppmのオゾン水を1ml注入した場合には、少なくとも注入後20分が経過するまでの間は継続して、試料水中に存在する生物粒子(菌類)の蛍光強度が上昇傾向にあると判断することができる。したがって、この例に示すオゾン水の注入条件では、死滅処理後の経過時間が5分〜20分程度(あくまで一例である)の範囲内にある試料水を対象として蛍光強度を測定することにより、測定器550でのSN比を向上して生物粒子を高精度に計数することができる。
次に、図4(B)に示す散布図の変化を追ってみる。前述した(A)に示す変化との違いは、注入したオゾン水の量であり、500mlの試料水に対して(A)に示す変化では1mlのオゾン水を注入したのに対し、(B)では25mlのオゾン水を注入している。
まず、図4(B)中〔オゾン水注入前〕の散布図では、(A)に示す変化のオゾン水注入前と同様であり、全体的には散布度が小さく、大半のドットが蛍光強度の比較的低い範囲内に点在している。
次に、図4(B)中〔10分後〕の散布図を見ると、図4(A)と同様に、注入前には殆ど分布が見られなかった蛍光強度の高い位置、すなわち散布図の上側にもドットが分布している。
しかし、図4(B)中〔20分後〕の散布図では、分布状況が一転し、注入10分後には比較的高めの位置に存在していた分布が見られなくなっており、蛍光強度が低い範囲内に大半のドットが密集している。
上述した(A)に示す変化の測定においては、オゾン水注入後20分までは少なくとも継続して蛍光強度が上昇傾向にあったのに対し、(B)に示す変化の測定においては、注入10分後には上昇傾向にあった蛍光強度が注入20分後には減衰傾向に転じている。こうしたドットの分布状況の変化から、(A)に示す変化においては、試料液中のオゾン濃度が低いために、菌類に対して殺菌効果が十分に作用していない状態と考えられる。また、(B)に示す変化においては、オゾン水の作用により、注入10分後には、殺菌効果の初期状態として、その蛍光強度が増加するものの、さらに時間が経過し注入20分後になると、菌類が死滅に至ることにより、蛍光強度が減衰して殆どのドットが蛍光強度の低い範囲内に収束したと考えられる。そして、この時間範囲は、試料液中のオゾン濃度によるものと考えられる。したがって、図4(B)の例に示すオゾン水の注入条件では、死滅処理後の経過時間が10分前後(あくまで一例である)の範囲内にある試料水を対象として蛍光強度を測定することにより、測定器550でのSN比を向上して生物粒子を高精度に計数することができる。
図5は、赤色小型コロニーを含む試料水500mlに対して200ppmの濃度の電解水を1ml注入した場合の時間経過に伴う蛍光及び散乱光の強度分布を示す散布図の変化を示している。散布図の見方については、前述した図4の場合と同様である。
図5中〔電解水注入前〕の散布図では、蛍光強度の低い位置にドットが密集しているのが分かる。
また、図5中〔1分後〕の散布図を見ると、ドットの分布に変化が生じており、注入前よりも蛍光強度の比較的高い範囲内に拡散しているのが分かる。その後、図5中〔4分後〕の散布図を見ると、ドットの分布が蛍光強度の高い位置に広がっている。
この測定結果から、電解水を注入した場合には、オゾン水を注入した図4中(A)の場合に比べて、蛍光強度の上昇する時間経過は異なるものの、同様な傾向を示していることが分かる。したがって、この例に示す電解水の注入条件では、死滅処理後の経過時間が1分〜7分程度(あくまで一例である)の範囲内にある試料水を対象として蛍光強度を測定することにより、測定器550でのSN比を向上して生物粒子を高精度に計数することができる。
また、図4及び図5に示された散布図の時間経過に伴う変化によれば、試料液中に存在する菌類は、所定濃度のオゾン水を注入した場合には、その蛍光強度が所定の時間をかけて上昇したのち再び減衰するという時間特性を有しているということができる。また、所定濃度の電解水を注入した場合には、オゾン水の場合に比べて急速にその蛍光強度が上昇し、一定範囲まで蛍光強度が上昇するとその後は上昇が飽和するということができる。
このように、本実施形態によれば、試料液に対して例えば所定濃度のオゾン水や電解水の注入といった死滅処理を施した場合に、菌類などの生物粒子から放出される自家蛍光の強度の時間特性に着目する。そして、死滅処理を行ってから所定時間の範囲内に生物粒子から放出される自家蛍光の強度を測定し、これらの測定結果に基づいて試料液中に存在する粒子が生物粒子であるかを判定して、その個数を高い精度で計数することができる。
図6は、生物粒子計数システムの他の構成例を示す概略図である。
これまでに説明した実施形態においては、処理部に殺菌剤注入器が設けられていたのに対し、この構成例による生物粒子計数システム710では、殺菌剤注入器520に代わって照射器610が設けられている。死滅処理として紫外線の照射を行う場合には、例えば試料容器530から取り出した試料液体を貯留部510に流入させ、この試料液体に対し、所定時間の範囲内の時間が経過するまで継続して照射器610により紫外線の照射を行う。その後で、紫外線の照射がなされた試料液体中に存在する生物粒子の蛍光強度を測定器550により測定し試料液体内に存在する生物粒子の個数を計数する。
照射器610は、例えば、紫外線を照射する紫外線ランプや紫外線LEDから構成される。紫外線は菌類に対する殺菌作用のある250nm近傍をピーク波長とし200〜280nmの波長領域(UV−C)とする。なお、照射される光(電磁波)は、測定器550により自家蛍光が十分検出される程度の光量(光強度)に増加される波長の光(電磁波)であればよく、紫外線(UV−C)に限定されるものではない。
また、図6に示されるように、照射器610は例えば貯留部510の内部に備えられる。貯留部510の内部に備えられることにより、試料液体に対し近距離で紫外線を照射することができる。照射する紫外線の強度が生物粒子の蛍光強度を増加させるのに十分であれば、貯留部510の外部に照射器610を備えてもよい。
図7は、照射器610が試料流体に直接触れない態様による処理部の構成例を示す図である。図7に示されるように、照射器610の周囲に流路部620が形成されており、この中を試料液体が通過する。すなわち、この構成例においては、流路部620が前述の貯留部510の役割を担っている。流路部620は、例えば螺旋形状の石英管から構成されている。この流路部620の一端が試料容器530に、他端が測定器550の受光部1に接続されており、試料容器530から流入した試料液体が螺旋を通過しながら紫外線を照射された後に測定器550へと流出する。流路部620を螺旋形状とすることにより、その内部で試料流体を流動させながら照射器610により所定の時間にわたり紫外線を照射することができる。また、照射器610をコンパクトな構成にすることが可能となる。
図8は、生物粒子計数システム700を備えた水質監視システムの一例を示す図である。
実験場やプール、浄水場等のように、水が重要な施設においては、一定の水質を維持できるよう常にその水質を監視し、基準を超える量の生物粒子が水中に含まれる場合には、例えば殺菌剤の注入量を増やすことにより確実に殺菌を行う等、状況に応じた適切な処置が必要となる。このような水質管理の場面で生物粒子計数システム700を活用することができる。以下に、浄水場の浄水システム800を例に挙げて説明する。
図8に示されるように、浄水場の浄水システム800は、水源802から取水した水を、第1の浄化設備804に送水する。次に、送水された水の浄化処理を行うために、浄化設備1に対して殺菌作用を有するオゾンを殺菌剤注入制御装置830から注入する。
浄水システム800による浄水過程の水路上には分流器560が設けられており、分流器560の一端が生物粒子計数システム700に接続している。浄水システム800はこの段階の水を対象として、生物粒子計数システム700により生物粒子の有無をチェックする。具体的には、分流器560から水を貯留部530に取り入れ、殺菌剤注入器520から所定濃度のオゾンを注入し、所定時間の範囲内で、測定器550により計数を行う。これにより、浄水過程のある段階における水中に生物粒子等がどの程度残存しているかをリアルタイムで把握することができる。なお、ここで注入されるオゾンは、第1の浄化設備804に対して注入されたものと比較し殺菌能力が弱い所定の濃度のものである。
生物粒子計数システム700による計数を終えると、その結果が中央監視制御装置820に送信される。中央監視制御装置820は、送信された計数結果に基づいて、注入する殺菌剤の量を増量又は減量する必要性を判断する。必要と判断された場合は、中央監視制御装置820が殺菌剤注入制御装置830の制御を行ない、第1の浄化設備804及び第2の浄化設備806に対して注入される殺菌剤の量をリアルタイムで調整させる。これにより、その時点での水質に応じた適切な浄化処理を実現することが可能となる。
以上のように、生物粒子計数システム700により実現される生物粒子計数方法は、まず検出する対象粒子を含む流体に対して生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後の経過時間が生物粒子により放出される蛍光の強度が増加する所定時間の範囲内にある流体に向けて所定波長の光を照射し、この光の作用により流体に含まれる対象粒子が放出する自家蛍光を受光する。そして、受光された蛍光の強度に基づいて個々の対象粒子を生物粒子であると判定することにより、流体内に存在する生物粒子を計数する。
一般的に、生物粒子は、死滅処理によって生命力が弱められその蛍光強度が減衰するものと考えられるのに対し、上述の如き構成とすることにより、生物粒子の蛍光強度を増加させる作用が生じ、流体内に存在する生物粒子を検出し易い状態を創出することができる。例えば、自家蛍光の強度が微弱でその検出が困難な従属栄養細菌等についても、その蛍光強度が増加するので、検出が容易となる。また、背景光となる試料液体の散乱光などのノイズに対して、蛍光強度が増加するのでSN比が向上し、流体中に含まれる生物粒子の検出精度も向上を図ることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々に変更して実施することが可能である。
例えば、上述の実施形態においては試料流体が液体の水である場合を想定して説明したが、試料流体は液体に限定されず、気体でもよい。また、図7における試料流体として液体を想定した説明を行っているが、試料流体が気体の場合においても、同様の構成により自家蛍光を検出することができる。
1 光検出部(処理後照射手段・受光手段)
2 蛍光計数部(計数手段)
510 貯留部
520 殺菌剤注入器
530 試料容器
550 測定器(生物粒子計数器)
560 分流器
610 照射器
620 流路部
700,710 生物粒子計数システム
800 浄水システム
802 水源
804,806 浄化設備
820 中央監視制御装置
830 殺菌剤注入制御装置

Claims (7)

  1. 検出する対象粒子を含む体に対し、非加熱で生物粒子の死滅に有効となる処理を施す処理手段と、
    前記処理を施した後の経過時間が所定時間の範囲内にある前記体に向けて所定波長の光を照射する処理後照射手段と、
    前記処理後照射手段により照射された光の作用により前記体に含まれる対象粒子が放出する蛍光を受光する受光手段と、
    前記受光された蛍光の強度に基づいて個々の前記対象粒子を生物粒子であると判定することにより前記体内に存在する生物粒子を計数する計数手段と
    を備え、
    前記経過時間が前記所定時間の範囲にある場合において、
    前記受光手段により受光される前記生物粒子により放出される蛍光の強度が増加することを特徴とする生物粒子計数システム。
  2. 請求項1に記載の生物粒子計数システムにおいて、
    前記所定時間の範囲は、
    前記生物粒子の死滅に有効となる処理を施した後の生物粒子による蛍光強度の時間特性に基づき設定していることを特徴とする生物粒子計数システム。
  3. 請求項1又は2に記載の生物粒子計数システムにおいて、
    前記処理手段は、
    前記体に所定濃度のオゾン又は電解水を注入するか、もしくは、紫外線を連続照射することを前記生物粒子の死滅に有効となる処理として施すことを特徴とする生物粒子計数システム。
  4. 検出する対象粒子を含む体に対して非加熱で生物粒子の死滅に有効となる処理を施す処理工程と、
    前記処理工程を経た後の経過時間が所定時間の範囲内となるまで待機する待機工程と、
    前記待機工程を経た前記体に向けて所定波長の光を照射し、前記光の作用により前記体に含まれる対象粒子が放出する蛍光を受光する受光工程と、
    前記受光された蛍光の強度に基づいて個々の前記対象粒子を生物粒子であると判定することにより前記体内に存在する生物粒子を計数する計数工程と
    を含み、
    前記経過時間が所定時間の範囲内にある場合において、
    前記受光工程により受光される前記生物粒子により放出される蛍光の強度が増加することを特徴とする生物粒子計数方法。
  5. 請求項4に記載の生物粒子計数方法において、
    前記所定時間の範囲は、
    前記処理工程を経た後の生物粒子による蛍光強度の時間特性に基づき設定されていることを特徴とする生物粒子計数方法。
  6. 請求項4又は5に記載の生物粒子計数方法において、
    前記処理工程では、
    前記体に所定濃度のオゾン又は電解水を注入するか、もしくは、紫外線を連続照射することを前記生物粒子の死滅に有効となる処理として施すことを特徴とする生物粒子計数方法。
  7. 水源から取り入れた水を対象として浄化処理を行う浄水施設において、
    浄水過程の水路上に請求項1乃至3の何れかに記載の生物粒子計数システムが設置されており、
    前記生物粒子計数システムにより計数された生物粒子の個数に基づいて、浄水過程における生物粒子を死滅させるために用いる殺菌剤の注入量を決定することを特徴とする水質監視システム。
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