以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。また、以下に説明する各実施形態は、適宜に組み合わせて実施しても構わない。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
近年、通信機器のトラフィック拡大等に伴って、ネットワークの更なる大容量化及び高速化が期待されている。例えば、光ネットワークのエレメントの一例である光伝送装置には、DP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を用いたデジタルコヒーレント信号処理技術が採用される場合がある。
デジタルコヒーレント信号処理技術の採用により、1波長(「チャネル」と称してもよい。)あたりの伝送速度を例えば100ギガビット/秒(Gbps)、あるいは100Gbpsを超える速度に高速化することが可能である。
また、光波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術を併用することにより、光ネットワークの最大伝送容量の拡大化することができる。例えば、1チャネルあたり、100Gbpsの光信号を最大で88チャネル分だけ波長多重することができる。即ち、1光ファイバあたりの最大伝送容量を8.8テラビット/秒(Tbps)に拡大することができる。
図1に、光伝送システムの一例としてのWDM光ネットワークの構成例を示す。図1に示すWDM光ネットワーク1は、例示的に、光伝送装置10−1と、光伝送路20を介して当該光伝送装置10−1と光通信可能に接続された光伝送装置10−2と、を備える。
光伝送装置10−1及び10−2を区別しなくてよい場合には、単に「光伝送装置10」と表記することがある。光伝送装置10は、WDM光ネットワーク1のエレメント(ネットワークエレメント:NE)の一例である。NE10には、光送信局や光受信局、光中継局、ROADM(reconfigurable optical add/drop multiplexer)等の光アドドロップ局等が該当してよい。「局」は、「ノード」と称されてもよい。
例示的に、図1において、NE10−1は、光送信局(光送信ノード)に該当し、NE10−2は、光受信局(光受信ノード)に該当する。
光伝送路20は、例示的に、光ファイバ伝送路である。光伝送路20には、WDM光信号の伝送距離に応じて光増幅器(光アンプ)30が適宜に設けられてもよい。光アンプ30を備えたノードが、光中継ノードに該当すると捉えてもよい。なお、WDM光信号の伝送距離によっては、光アンプ30が設けられないこともある。
光伝送装置10−1は、図1に例示するように、複数のトランスポンダ11と、波長多重器(マルチプレクサ:MUX)12と、光増幅器(光アンプ)30と、を備えてよい。
トランスポンダ11は、例えばルータ等の通信機器40と光ファイバ22により接続されてよい。ここで、通信機器40は、例えばクライアント側(「トリビュータリ側」と称してもよい。)の通信機器40である。通信機器40から送信された信号は、対応するトランスポンダ11にて受信された後、いずれかの波長(チャネル)の光信号に変換されて、マルチプレクサ12に入力される。
なお、各トランスポンダ11とマルチプレクサ12との間の接続に、光ファイバが用いられてもよい。別言すると、各トランスポンダ11とマルチプレクサ12とは、光通信可能に光学的に接続されればよい。
マルチプレクサ12は、WDMカプラ等の合波カプラであってよく、各トランスポンダ11から受信される光信号を波長多重することによりWDM光信号を生成して光伝送路20へ送信する。当該送信に際して、WDM光信号は、マルチプレクサ12の後段(ポストステージ)に備えられた光アンプ30によって所定の送信光パワーに増幅されてよい。
光伝送路20へ送信されたWDM光信号は、光伝送装置10−2にて受信される。光伝送装置10−2は、例示的に、波長分離器(デマルチプレクサ:DMUX)15と、複数のトランスポンダ16と、を備える。デマルチプレクサ15の前段(プレステージ)には、光伝送路20から受信されるWDM光信号を増幅する光アンプ(プリアンプ)30が備えられてよい。
デマルチプレクサ15は、光伝送路20から入力されるWDM光信号を波長毎に分離してトランスポンダ16のいずれかに入力する。なお、トランスポンダ16においてコヒーレント受信する場合には、デマルチプレクサ15は、代替的に、WDM光信号を分岐する光スプリッタであってもよい。光スプリッタは、分岐カプラであってもよい。
トランスポンダ16は、デマルチプレクサ15から入力された光信号を電気信号に光電変換して例えばルータ等の通信機器50に送信する。ここで、通信機器50は、例えばクライアント側の通信機器50である。
なお、図1には、光伝送装置10−1から光伝送装置10−2への方方向の通信に着目した構成を例示しているが、逆方向の通信に関しても、上記と同様の構成でよい。別言すると、光伝送装置10−1と光伝送装置10−2との間(通信機器40と通信機器50との間)は、双方向通信が可能であってよい。
双方向通信は、光伝送装置10−1と光伝送装置10−2との間に、双方向のそれぞれについて個別に設けられた光伝送路20を介して行なわれてよい。例えば、光伝送装置10−2から光伝送装置10−1への逆方向の通信は、図1において、光伝送装置10−1を光伝送装置10−2に読み替え、且つ、光伝送装置10−2を光伝送装置10−1に読み替えた構成によって実現されると捉えてよい。
双方向のうち、光伝送装置10−1(又は10−2)が光伝送路20へWDM光信号を送信する方向を「アップストリーム方向」と称し、その逆方向を「ダウンストリーム方向」と称する。
したがって、光伝送装置10−1及び10−2は、それぞれ、アップストリーム方向に対応した送信系と、ダウンストリーム方向に対応した受信系と、を備えてよい。例えば図1では、トランスポンダ11及びマルチプレクサ12が光伝送装置10−1の送信系に該当し、デマルチプレクサ15及びトランスポンダ16が光伝送装置10−2の受信系に該当する。
別言すると、光伝送装置10−1は、図1には図示を省略しているが、受信系として、光伝送装置10−2の受信系と同様に、デマルチプレクサ15及びトランスポンダ16を備えている、と捉えてよい。また、光伝送装置10−2は、図1には図示を省略しているが、送信系として、光伝送装置10−1の送信系と同様に、トランスポンダ11及びマルチプレクサ12を備えている、と捉えてよい。ただし、トランスポンダ11(又は16)は、送受信に共用であってよい。別言すると、トランスポンダ11及び16は、同じ構成(送信部及び受信部)を有していてよい。
図2に、双方向通信をサポートする光伝送装置10の構成例を示す。図2に示す光伝送装置10は、例示的に、複数のトランスポンダ111と、波長多重分離ブロック112と、光アンプブロック113と、ラインカード制御部114−1と、ネットワーク制御部114−2と、を備える。なお、「ブロック」は、「モジュール」と称してもよい。
トランスポンダ111は、それぞれ、図1に例示したトランスポンダ11又は16に相当する。トランスポンダ111のそれぞれは、例示的に、ルータ等の通信機器40又は50と光学的に双方向通信可能に接続されて、通信機器40又は50との間で光信号の送受信が可能である。
各トランスポンダ111は、光伝送装置10の「光送信機」のエレメントであると捉えてよく、また、光伝送装置10の「光受信機」のエレメントでもあると捉えてよい。
波長多重分離ブロック112は、例示的に、アップストリーム方向に対応したマルチプレクサ(MUX)112aと、ダウンストリーム方向に対応したデマルチプレクサ(DMUX)112bと、を備える。マルチプレクサ112aは、図1に例示したマルチプレクサ12に相当し、デマルチプレクサ112bは、図1に例示したデマルチプレクサ15に相当する、と捉えてよい。
各トランスポンダ111の出力ポート(送信ポート)がマルチプレクサ112aの入力ポートに光ファイバ等を用いて光学的に接続される。また、各トランスポンダ111の入力ポート(受信ポート)がデマルチプレクサ112bの出力ポートのいずれかに光ファイバ等を用いて光学的に接続される。
したがって、マルチプレクサ112aは、各トランスポンダ111の送信ポートから送信された光信号を波長多重してWDM光信号を生成する。また、デマルチプレクサ112bは、光アンプブロック113から受信されるWDM光信号を波長毎に分離してトランスポンダ111の受信ポートへ入力する。
光アンプブロック113は、アップストリーム方向に対応した光アンプ113aと、ダウンストリーム方向に対応した光アンプ113bと、を備える。光アンプ113aは、マルチプレクサ112aから入力されるWDM光信号を所定の送信パワーに増幅して光伝送路20へ送信する。光アンプ113bは、光伝送路20から受信されるWDM光信号を所定の受信パワーに増幅してデマルチプレクサ112bに入力する。
なお、光アンプブロック113は、WDM光信号の伝送距離によっては必要ない場合もある。
ラインカード制御部114−1は、各トランスポンダ111と電気的或いは光学的に接続され、ラインカード制御部114−1で受信したデータの行き先に応じたスイッチング処理を行なう。したがって、「ラインカード制御部」は、「スイッチング部」あるいは「スイッチングボード」と称してもよい。スイッチングされたデータは、各トランスポンダ111を経由して、通信機器40側、或いは、光伝送路20(光ネットワーク)側へ送出される。
ネットワーク制御部114−2は、ラインカード制御部114−1、波長多重分離ブロック112、及び、光アンプブロック113の動作を統括的に制御する。なお、ラインカード制御部114−1とネットワーク制御部114−2とは、1つの制御部として一体化されてもよい。ラインカード制御部114−1とネットワーク制御部114−2とを区別しなくてよい場合は単に「制御部114」と表記することがある。
制御部114は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の演算能力を備えたプロセッサデバイスと、メモリ等の記憶装置とを用いて実現されてよい。プロセッサデバイスが、記憶装置に記憶された制御に応じたプログラム(「ソフトウェア」と称してもよい。)やデータを適宜に読み取って動作することで、制御部114としての機能が具現されてよい。制御部114は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてもよい。
図3に、図2に例示したトランスポンダ111の構成例を示す。トランスポンダ111は、例示的に、広帯域(ワイドバンド:WB)光送受信モジュール1111、フレーマ1112、及び、狭帯域(ナローバンド:NB)光送受信モジュール1113を備える。「光送受信モジュール」は、「光送受信器」と称してもよい。
WB光送受信モジュール1111は、例示的に、クライアント側のルータ等の通信機器40又は50と、ワイドバンドの光(以下「WB光」と表記することがある。)にて信号を送受信する。WB光にて送受信される信号は、例示的に、SONET(Synchronous Optical Network)やイーサネット(登録商標)等で用いられるフレーム信号であってよい。
例えば、WBモジュール1111は、通信機器40(又は50)から受信されるWB光を電気信号に変換してフレーマ1112に入力する。また、WBモジュール1111は、フレーマ1112から受信した電気信号をWB光に変換して通信機器40(又は50)に送信する。
フレーマ1112は、例示的に、WBモジュール1111にて光電変換された信号を例えばOTU(Optical channel Transport Unit)フレーム信号にマッピングしてNB光送受信モジュール113に入力する。また、フレーマ1112は、SONETやイーサネット(登録商標)等のフレーム信号をデマッピングしてWB光送受信モジュール1111に入力する。なお、当該フレーム信号は、NB光送受信モジュール1113からのOTUフレーム信号にマッピングされている。フレーム信号の処理には、誤り訂正符号の付加等の処理が含まれてよい。
NB光送受信モジュール1113は、例示的に、ナローバンドの光(以下「NB光」と表記することがある。)にて光伝送路20との間でフレーム信号(例えば、OTNフレーム信号)の送受信を行なう。
例えば、NB光送受信モジュール1113は、フレーマ1112で生成された、電気信号のOTUフレーム信号をNB光に変換して図2に例示したマルチプレクサ112aへ出力する。また、NB光送受信モジュール1113は、例えば図2に例示したデマルチプレクサ112bからNB光にて入力されるOTNフレーム信号を電気信号に変換してフレーマ1112へ出力する。
以上のように、トランスポンダ111は、トリビュータリ側とネットワーク(光伝送路20)側との間で送受信される光及びフレーム信号の変換処理を通じて、通信機器40と通信機器50との間の双方向通信を可能にする。
ところで、光伝送技術においては、更なる大容量化のため、WDM技術に加えて、「スーパーチャネル」と呼ばれる技術の利用が検討、議論されている。これまでのWDM技術では、チャネル間干渉が十分に抑えられるだけの間隔に波長間隔が設定されていた。例えば図4(A)に示すように、1チャネルあたり100Gbpsの光信号であれば、WDM光信号において各チャネルは50GHz程度の間隔で配置されることがある。
これに対し、スーパーチャネル技術では、デジタル信号処理によるスペクトル整形処理を用いることで、チャネル間干渉を抑制しながらチャネル間隔をより狭めることができる。例えば、レイズドコサインフィルタ等のSinc関数形状の時間応答を示すフィルタを用いて、主信号(例えば、NRZ信号)を畳み込み処理することで、主信号光の周波数スペクトルを狭帯域化し、且つ、矩形形状に整形することができる。
これにより、1チャネルあたり100Gbpsの光信号であれば、例えば図4(B)に示すように、WDM光信号におけるチャネル間隔は50GHzよりも狭い間隔(例えば、36GHz程度)にまで近接させることが可能になる。
なお、送信光源(例えば、レーザダイオード:LD)の発光波長に変動(「揺らぎ」と称してよい。)が生じる場合には、当該揺らぎを考慮してチャネル間隔にマージンを設定してよい。例えば、LDの発光波長が、環境条件や経時変動等に起因して、或る周波数レンジ(例えば、±1.5GHz)で変動する場合、当該周波数レンジをチャネル間隔のマージンに設定してよい。なお、LDの発光波長の変動は、EOL(End Of Life)変動と称してもよい。
仮に、スペクトル整形処理によって、1チャネルあたりの周波数帯域幅を32GHzに狭帯域化できたとして、EOL変動として±1.5GHzのマージン(3GHz)を考慮すると、1チャネルあたりの周波数帯域幅は35GHzとなる。したがって、各チャネルを1GHzのガードバンドを挟んで配置すれば、チャネル間隔は36GHzとなる。
ここで、或る周波数帯域、例えば、WDM光信号が通過する波長選択スイッチ(WSS)の透過帯域(「周波数グリッド」と称してもよい。)に、複数チャネルを配置(多重)することを想定する。なお、WSSは、光伝送装置10に用いられる光デバイスの一例であり、その透過帯域は、WDM光信号の帯域特性等の伝送特性に影響するパラメータの一例である。
WSSの透過帯域において、当該透過帯域のエッジに相当する周波数と、当該周波数に最も近接するチャネルのエッジに相当する周波数と、の差分は、「外縁マージン」と称してよい。外縁マージンを大きく確保できれば、WDM光信号のマルチスパン伝送時の伝送特性の劣化を抑制することができる。
非限定的な一例として、図5に例示するように、162.5GHzの周波数グリッドに4チャネルを多重することを想定すると、外縁マージンとして7.5GHz程度を確保できる。
しかし、この程度のマージンでは、マルチスパン伝送時の伝送特性の劣化が無視できない程度に増大するおそれがある。また、この場合の周波数利用効率は、図4(A)に例示した通常のWDM伝送におけるチャネル間隔50GHzの場合に比べて23.1%程度増加するに留まる。
スーパーチャネルを実用的に実現するには、より幅の広い外縁マージンを確保して伝送特性を向上させたい。あるいは、更なる大容量伝送のため、周波数利用効率を更に向上したい。
そこで、例えば、光ネットワークあるいは光伝送装置の運用中において、送信LDの発光波長を適応的に制御することで、送信LDの発光波長の揺らぎを抑制して、確保できる外縁マージンの拡大化を図ることが考えられる。
図5に例示したスーパーチャネルのチャネル配置において、送信LDの波長制御を実施しないとすると、送信LDの変動として、4チャネルの左右方向(計8か所)の変動分をマージンとして考慮する必要がある。
これに対し、例えば図6に示すように、4チャネルのうちの1チャネルを基準チャネルとして、送信LDの波長制御を実施すれば、他の3チャネルの変動分はマージンに見込まなくてよくなる。なお、基準チャネルは、波長制御の対象外のチャネルである。別言すると、4チャネルのうちの基準チャネルについての変動分さえマージンに見込めばよい。ただし、波長制御誤差(例えば、500MHz程度)は、見込むこととしてよい。
このような波長制御を実施することで、例えば次表1の例1に示すように、外縁マージンとして11GHz程度を確保することができ、マルチスパン伝送時の伝送特性劣化を抑えることができる。
あるいは、表1の例2に示すように、確保できる外縁マージンは例1よりも小さくなるものの、150.0GHzのグリッドで4チャネルを多重することが現実的に可能になる。この例2では、周波数利用効率を例1での23.1%よりも大きく向上(例えば、33.3%)できる。
次に、図7を参照して、スーパーチャネルの送信信号と受信信号とについて説明する。図7の左上に例示する送信器A1,B1,C1及びD1は、それぞれ、例えば図2及び図3に例示したトランスポンダ111のNB光送受信モジュール1113に備えられたアップストリーム方向の送信器に相当すると捉えてよい。
また、図7の右上に例示する受信器A1,B1,C1及びD1は、それぞれ、例えば図2及び図3に例示したトランスポンダ111のNB光送受信モジュール1113に備えられたダウンストリーム方向の受信器に相当すると捉えてよい。
更に、図7の右下に例示する送信器A2,B2,C2及びD2は、それぞれ、例えば図2及び図3に例示したトランスポンダ111のNB光送受信モジュール1113に備えられたアップストリーム方向の送信器に相当すると捉えてよい。
また、図7の左下に例示する受信器A2,B2,C2及びD2は、それぞれ、例えば図2及び図3に例示したトランスポンダ111のNB光送受信モジュール1113に備えられたアップストリーム方向の送信器に相当すると捉えてよい。
各送信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)から送信された光信号A〜Dは、既述のマルチプレクサ12にてスーパーチャネルを成すWDM光信号に波長多重されて光ネットワーク60へ送信される。
なお、光信号A〜Dは、それぞれ、各送信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)における送信光源の発光波長λA〜λDに対応した波長の光信号であると捉えてよい。スーパーチャネルを成す波長(λA〜λD)は、「サブチャネル」と称してもよいし「サブキャリア」と称してもよい。また、光ネットワーク60は、図1に例示した光伝送路20及び光アンプ30を含む概念として捉えてよい。
光ネットワーク60を伝送されたスーパーチャネルの送信信号(WDM光信号)は、既述の光スプリッタ15にて、受信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)の数に応じた分岐数に分岐される。分岐された光信号は、受信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)にそれぞれ入力される。
別言すると、受信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)は、それぞれ、光信号A〜Dが波長多重された同じWDM光信号を受信する。当該受信は、「マルチチャネル受信」あるいは「マルチキャリア受信」と称してよい。
各受信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)は、それぞれ、コヒーレント受信に用いられる局発光源(例えばLD)を備える。局発光源の発光波長は、それぞれ、対応する送信器A1,B1,C1及びD1(A2,B2,C2及びD2)の送信光源の発光波長と一致している。なお、以下において、送信光源の発光波長を「送信波長」と称することがあり、局発光源の発光波長を「受信波長」と称することがある。
例えば、受信器A1(A2)の受信波長は、送信器A1(A2)の送信波長(λA)と一致しており、受信器B1(B2)の受信波長は、送信器B1(B2)の送信波長(λB)と一致している。同様に、受信器C1(C2)の受信波長は、送信器C1(C2)の送信波長(λC)と一致しており、受信器D1(D2)の受信波長は、送信器D1(D2)の送信波長(λD)と一致している。
なお、この例では、送信器A1〜D1から受信器A1〜D1へ送信される光信号の波長と、送信器A2〜D2から受信器A2〜D2へ逆方向に送信される光信号の波長と、がそれぞれ一致しているが、異なっていてもよい。
受信器A1(A2)では、光スプリッタ15から分岐入力されるWDM光信号のうち、送信器A1(A2)の送信波長λAの信号が抽出、受信される。受信器B1(B2)では、当該WDM光信号のうち、送信器B1(B2)の送信波長λBの信号が抽出、受信される。
同様に、受信器C1(C2)では、送信器C1(C2)の送信波長λCの信号がWDM光信号から抽出、受信される。受信器D1(D2)では、送信器D1(D2)の送信波長λDの信号がWDM光信号から抽出、受信される。
ただし、スーパーチャネルのWDM光信号は、隣接チャネルが近接しているため、隣接チャネルの信号成分の一部が受信器A1〜D1(A2〜D2)での受信信号に含まれ得る(「残留し得る」と称してもよい)。
例えば、受信器A1(A2)では、隣接チャネル(波長λB)の信号成分の一部が受信信号に含まれ得る。受信器B1(B2)では、隣接チャネル(波長λA及びλC)の信号成分の一部が受信信号に含まれ得る。
受信器C1(C2)では、隣接チャネル(波長λB及びλD)の信号成分の一部が受信信号に含まれ得る。受信器D1(D2)では、隣接チャネル(波長λC)の信号成分の一部が受信信号に含まれ得る。
例えば、受信信号のスペクトルには、局発光源の波長に対応した周波数を中心周波数にもつスペクトルだけでなく、当該スペクトルに対して低周波側及び高周波側のいずれか一方又は双方に隣接チャネルの信号成分スペクトルが含まれ得る。
ここで、図7に例示した構成において、送信器の送信波長を制御する方法について検討する。例えば、送信器B2の送信波長が、送信器A2及び送信器C2の送信波長と比べて期待する位置に無い場合に、当該波長位置を制御することを想定する。
当該波長位置の制御は、例えば光ネットワーク60(例えば、光中継ノードやROADM等のNE)にチャネル間隔モニタを設けて、そのモニタ結果を用いることで実現可能である。
チャネル間隔モニタにおいて送信信号のチャネル間隔をモニタできれば、期待する波長位置に無い送信波長を検出できる。検出結果を対応する送信器にフィードバックすることで、期待する波長位置に無い送信波長を本来の期待波長位置に制御することが可能である。
しかし、この方法では、光ネットワーク60にチャネル間隔モニタを追加するための作業やコストがかかる。また、モニタしたチャネル間隔を、送信器にフィードバックするための制御信号パスも追加となる。このように、光ネットワーク60においてチャネル間隔をモニタする方法は、コストへの影響が大きく、導入する上で大きな障壁となり得る。
これに対し、例えば図8に示すように、受信器A2〜D2のいずれか(例えば受信器D2)にてチャネル間隔をモニタできれば、対向の送信器D2の送信波長のずれを当該受信器D2にて検出(「測定」と称してもよい。)できる。
そして、その検出結果(あるいは、当該検出結果に応じた波長制御情報でもよい)を、例えば送信器D1から対向局の受信器D1を通じて対向局の送信器D2に通知すれば、送信器D2の送信波長のずれを最小化制御することが可能となる。
当該通知は、例示的に、送信器D1の送信光を周波数変調して通知情報(波長ずれ検出結果又は波長制御情報)を当該送信光に重畳することで行なってよい。通知情報は、監視制御情報の一例であると捉えてよい。監視制御情報が重畳された送信光は、SV(Supervisory)光成分あるいは光監視チャネル(OSC)成分を含む光であると捉えてよい。
受信器D1は、周波数変調により受信信号に重畳された制御通知情報を復調して検出する。検出した通知情報に基づいて、送信器D2の送信波長を制御することで、当該送信器D2の送信波長ずれを補償することができる。なお、送信器D2以外の他の送信器の送信波長ずれも、上記と同様にして対応する受信器でのモニタ結果を対応する送信器へフィードバックすることで補償可能である。
ここで、受信器D2及び送信器D1の組は、例えば図2に例示した1つのトランスポンダ111に含まれると捉えてよい。同様に、受信器D1及び送信器D2の組も、別ノードの図2に例示した1つのトランスポンダ111に含まれると捉えてよい。
したがって、同一トランスポンダ111内での受信器D2(D1)と送信器D1(D2)との間の情報の送受信は容易であり、送信器D2(D1)の送信波長ずれの制御も容易に実現できる。例えば、送信波長ずれの制御は、図2に例示した制御部114、あるいは、トランスポンダ111に内蔵の制御部(図2において図示省略)によって実施されてよい。
このように、受信器でチャネル間隔をモニタすることができれば、光ネットワーク60に対してモニタや制御信号パスを追加せずに、低コストで波長制御を実現することができる。
次に、図9に、上述した送信光源の波長制御を実現するトランスポンダの構成例を示す。図9に示すトランスポンダ70及び80は、例えば既述の光伝送路20(別言すると、光ネットワーク60)を介して双方向の光通信が可能に接続されている。なお、図9に示すトランスポンダ70及び80は、図3に例示したNB光送受信モジュール1113に相当すると捉えてもよい。
一方のトランスポンダ70は、例えば図1の光伝送装置10−1に備えられた図2のトランスポンダ111のいずれかに相当し、また、図8に例示した受信器D2を含むトランスポンダに相当すると捉えてよい。したがって、トランスポンダ70は、図8にて説明したチャネル間隔モニタ機能を具備するトランスポンダに相当すると捉えてよい。そのため、以下、トランスポンダ70を便宜的に「モニタトランスポンダ70」と称することがある。
他方のトランスポンダ80は、例えば図1の光伝送装置10−2に備えられた図2のトランスポンダ111のいずれかに相当し、また、図8に例示した送信器D2を含むトランスポンダ70に相当すると捉えてよい。
したがって、トランスポンダ80は、図8にて説明したチャネル間隔モニタ結果に基づいて送信波長が制御される対象のトランスポンダに相当すると捉えてよい。そのため、トランスポンダ80を便宜的に「波長制御対象トランスポンダ80」と称することがある。
波長制御対象トランスポンダ80が備えられた光伝送装置10−2は、デジタル信号処理を用いて波形(スペクトル)整形された複数の送信信号をWDM光信号にて送信する第1の光伝送装置の一例に相当すると捉えてよい。
これに対し、モニタトランスポンダ70が備えられた光伝送装置10−1は、光伝送装置10−1が送信したWDM光信号をデジタルコヒーレント受信する第2の光伝送装置の一例に相当すると捉えてよい。
モニタトランスポンダ70は、例示的に、送信器71、受信器72及び制御部73を備える。送信器71は、図8に例示した送信器D1に相当すると捉えてよく、受信器72は、図8に例示した受信器D2に相当すると捉えてよい。
送信器71は、例示的に、送信デジタル信号処理部711、DAC(Digital to Analogue Converter)712、光変調器713、及び、送信光源(例えばLD)714を備える。
送信デジタル信号処理部711は、送信デジタルデータ信号に対してスペクトル整形や搬送波(キャリア)周波数制御、非線形補償等のデジタル信号処理を施す。
DAC712は、送信デジタル信号処理部711でデジタル信号処理された送信デジタルデータ信号をアナログデータ信号に変換する。DAC712により得られたアナログデータ信号は、光変調器713の駆動信号として光変調器713に与えられる。
光変調器713は、DAC712から与えられる駆動信号によって送信光源714の出力光を変調することで送信変調信号光を生成する。送信変調信号光は、対向のトランスポンダ80へ通じる光伝送路20へ送信される。送信光源714は、発光波長が可変の光源(例えば、チューナブルLD)であってよい。
なお、送信デジタル信号処理部711でのキャリア周波数制御において、既述の監視制御情報に応じた周波数制御が行なわれることで、監視制御情報を送信変調信号光に周波数変調成分として重畳することができる。
一方、受信器72は、WDM光信号をデジタルコヒーレント受信して復調する受信部の一例であり、例示的に、受信フロントエンド(FE)721、ADC(Analogue to Digital Converter)722、及び、受信デジタル信号処理部723を備える。
受信FE721は、例示的に、既述の局発光源や、光位相ハイブリッド、フォトディテクタ(PD)等の光電変換器を備える。局発光源の出力光と、光伝送路20から受信されるWDM光信号と、を光位相ハイブリッドにて同じ位相及び異なる位相(例えば、90度異なる位相)で干渉させることで、受信希望チャネルに相当する信号光の電界複素情報を測定して信号光を復調することができる。復調された信号光は例えばPDにてアナログ電気信号に光電変換されてADC722に入力される。なお、受信FE721は、「受信器721」と言い換えてもよい。
ADC722は、受信FE721にて復調された信号光のアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換して受信デジタル信号処理部723に入力する。受信FE721から入力されたアナログ電気信号は、ADC722にて、例えば、1シンボルあたり2回以上サンプリングされてよい。当該サンプリングによって、位相情報を含むアナログ波形情報がデジタル値に量子化される。このようにアナログ波形情報をデジタル値に変換することにより、様々な特性補償をデジタル値の演算処理にて実施することが可能となる。
受信デジタル信号処理部723は、受信FE721にて復調された信号光に相当するデジタル電気信号に対してデジタル信号処理を施す。デジタル信号処理には、例示的に、分散補償、サンプリング位相同期、適応等化、周波数オフセット補償、搬送波位相復元等の処理が含まれてよい。受信デジタル信号処理部723は、例示的に、DSPや、FPGA、大規模集積回路(LSI)等を用いて実現可能である。
具体的な一例として、受信デジタル信号処理部723は、例えば図10に示すように、分散補償部91、サンプリング位相同期部92、適応等化部93、周波数オフセット補償部94、及び、搬送波位相復元部95を備えてよい。なお、トランスポンダ80の受信デジタル信号処理部823も、図10の構成と同一若しくは同様であってよい。
分散補償部91は、ADC722から入力されたデジタル電気信号に対して、例えばトランスバーサルフィルタ等で波長分散による波形歪みをモデル化したデジタルフィルタを用いて波長分散処理を施す。
サンプリング位相同期部92は、ADC722でのサンプリングのタイミング(周波数及び位相)を最適化する(例えば、データパルスの中央に同期させる)ための処理を行なう。
適応等化部93は、例えば、複数の線形フィルタを備え、各フィルタのパラメータを信号光の偏波変動よりも十分高速かつ適応的に更新することで、偏波変動や偏波モード分散(PMD)に起因する波形歪みを適応的に等化(補償)する。当該等化処理は、例示的に、シンボルレートで行なわれてよい。
周波数オフセット補償部94は、受信信号光と局発光源の出力光との間の周波数オフセットを補償(補正)する。周波数オフセットの推定には、例示的に、累乗法と呼ばれる推定方式や、累乗法よりも周波数オフセットの推定可能範囲を拡大化できるPADE(Pre-decision based Angle Differential frequency offset Estimator)法と呼ばれる推定方式等を適用してよい。
搬送波位相復元部95は、周波数オフセット補償部94にて周波数オフセットが補償された受信デジタル信号から雑音成分を除去し、正しい搬送波(キャリア)位相を推定し、受信デジタル信号の位相を推定したキャリア位相に同期させる。キャリア位相の推定には、例示的に、デジタルループフィルタを用いて雑音の影響を除去するフィードバック法や、位相検出器で検出した推定位相差を平均化することで雑音の影響を除去するフィードフォワード法等を適用してよい。
搬送波位相復元部95は、復調途中の信号をモニタし、モニタした信号を利用して伝送品質状態の解析を行なうために利用されてよい。また、搬送波位相復元部95は、対向局との間で監視制御を行なうために伝送信号光に重畳された監視制御信号光の検出に利用されてもよい。
なお、分散補償部91、サンプリング位相同期部92、適応等化部93、周波数オフセット補償部94、及び、搬送波位相復元部95は、例示的に、DSP等の演算能力を備えた演算装置によって実現されてよい。演算装置は、「プロセッサデバイス」あるいは「プロセッサ回路」と称してもよい。
次に、図9に戻り、制御部73は、上述した送信器71及び受信器72の動作を制御する。また、制御部73は、受信器72で得られる受信デジタル信号を基にチャネル間隔をモニタし、モニタ結果(あるいはモニタ結果に基づく波長制御情報)を送信器71の送信光に重畳させる。
そのため、制御部73は、例示的に、主信号データ取得部731、波長間隔モニタ732、及び、周波数変調パタン生成部733を備える。
主信号データ取得部731は、例えば図10に示すように、ADC722の出力から、チャネル間隔のモニタに足るデータ長の主信号データを取得(キャプチャ)する。主信号データのキャプチャ位置は、分散補償部91の出力(サンプリング位相同期部92の入力)でもよい。
分散補償部91による分散補償が十分に機能し、安定的な主信号データが得られれば、チャネル間隔モニタの精度向上が見込める。なお、主信号データのキャプチャ位置としては、他に、適応等化部93の出力や、搬送波位相復元部95の出力等も考えられる。
ただし、これらの出力は、受信データ信号のレートがシンボルレートに低下している(別言すると、ダウンサンプリングされている)。そのため、オーバーサンプリングによれば観測可能な隣接チャネルの信号成分が、十分に観測できないおそれがある。
別言すると、主信号データのキャプチャ位置は、隣接チャネルの信号成分が十分に観測可能なレートを有するデータ信号であれば、ADC722の出力や分散補償部92の出力に限られない。
波長間隔モニタ732は、主信号データ取得部731でキャプチャされた主信号データ(以下「キャプチャデータ」ともいう。)を解析してチャネル間隔を求める。例示的に、波長間隔モニタ732は、キャプチャデータに対してFFT(Fast Fourier Transform)演算を施すことで、キャプチャデータを時間領域のデータから周波数領域のデータ(別言すると、周波数スペクトル信号)に変換する。なお、FFT演算に代えてDFT(Discrete Fourier Transform)演算を用いてもよい。
ここで、スーパーチャネルのようにチャネル間隔が狭い場合、FFT演算により得られた周波数スペクトル信号(以下、単に「スペクトル信号」とも称する。)には、隣接チャネルのスペクトルの一部が含まれていることがある。例えば、パワーの落ち込みが最大となる周波数(例示的に、約18GHz)を基準に、高周波側に隣接チャネルのスペクトルの一部が現れることがある。
波長間隔モニタ732は、当該周波数スペクトルを基に、チャネルとチャネルとの間隙の幅を測定し、その測定結果を基に、対向のトランスポンダ80における送信器81の送信波長の波長制御量を決定する。
チャネルの間隙幅を測定する方法の一例としては、スペクトルの縦軸(パワー)に判定閾値を設定し、この判定閾値よりもスペクトルのパワーが下回る区間を、間隙幅として測定する方法が挙げられる。
図9に戻り、周波数パタン生成部733は、波長間隔モニタ732で決定した波長制御量を示す情報(以下「波長制御情報」と称することがある。)を、例えば「1」又は「0」の2値で表される周波数変調のパタンに組み込む。
周波数変調のパタン(以下「周波数変調パタン」と称することがある。)は、送信器71の送信デジタル信号処理部711に与えられる。送信デジタル信号処理部711は、周波数変調パタンに従って送信デジタルデータ信号に対して周波数変調を施す。
これにより、波長制御情報が監視制御情報の一例として対向のトランスポンダ80への送信変調信号光に重畳される。したがって、送信器71は、波長間隔モニタ732でのモニタ結果に応じた波長制御情報をトランスポンダ80へ送信する送信部の一例であると捉えてよい。
なお、波長制御情報の重畳は、例示的に、送信デジタル信号処理部711において送信デジタルデータ信号をデジタル信号処理によってスペクトル整形した信号の、搬送波周波数を制御することで実現されてよい。
図11に、周波数変調パタンのフレームフォーマットの一例を示す。図11に例示するようなフレーム(以下「周波数変調パタンフレーム」と称することがある。)に波長制御情報がマッピングされる。
フレーム先頭には、トランスポンダ70及び80間で既知の信号の一例であるプリアンブルを付与してよい。受信側であるトランスポンダ80は、プリアンブルを検出することでフレーム先頭を識別することが可能になる。
フレーム末尾には、CRC(Cyclic Redundancy Check)のような誤り検出符号を付与してよい。受信側では、当該誤り検出符号を利用して受信フレームの有効性を確認することが可能になる。
また、周波数変調パタンフレームには、例示的に、波長制御情報による波長制御対象の送受信器ペアを識別可能にする情報(「送受信器識別ID」と称してよい。)がマッピングされてよい。
送受信器識別IDや波長制御情報が1フレーム内に収まりきらない場合には、送受信器識別IDや波長制御情報を分割してマルチフレームにて送信してもよい。マルチフレーム送信の場合には、マルチフレーム番号が周波数変調パタンフレームに付与されてよい。
なお、本例では、トランスポンダ80への送信変調信号光に、波長間隔モニタ732でのモニタ結果に応じた波長制御情報を重畳するが、モニタ結果そのものを「波長間隔情報」としてトランスポンダ80への送信変調信号光に重畳してもよい。
トランスポンダ80では、受信したモニタ結果から波長制御情報を決定すればよい。別言すると、波長制御情報は、モニタ側及び波長制御対象側のいずれで決定してもよい。
次に、図9に例示した(波長制御対象)トランスポンダ80の構成例について説明する。図9に示す波長制御対象トランスポンダ80は、例示的に、送信器81、受信器82、及び、制御部83を備える。
送信器81は、例示的に、送信デジタル信号処理部811、DAC812、光変調器813、及び、送信光源(例えばLD)814を備える。
送信デジタル信号処理部811、DAC812、及び、光変調器813は、それぞれ、トランスポンダ70における送信デジタル信号処理部711、DAC712、及び、光変調器713と同一若しくは同様であってよい。
例えば、送信デジタル信号処理部811は、送信デジタルデータ信号に対して波形(スペクトル)整形や搬送波(キャリア)周波数制御、非線形補償等のデジタル信号処理を施す。
DAC812は、送信デジタル信号処理部811でデジタル信号処理された送信デジタルデータ信号をアナログデータ信号に変換する。DAC812により得られたアナログデータ信号は、光変調器813の駆動信号として光変調器813に与えられる。
光変調器813は、DAC812から与えられる駆動信号によって送信光源814の出力光を変調することで送信変調信号光を生成する。送信変調信号光は、対向のトランスポンダ70へ通じる光伝送路20へ送信される。送信光源814も、送信光源714と同様に、発光波長が可変の光源(例えば、チューナブルLD)であってよい。
なお、図9には図示を省略しているが、送信器81においても、トランスポンダ70の送信器71と同様に、送信デジタル信号処理部811にて、監視制御情報を送信変調信号光に周波数変調成分として重畳してよい。
受信器82は、例示的に、受信FE821、ADC822、及び、受信デジタル信号処理部823を備える。これらの受信FE821、ADC822、及び、受信デジタル信号処理部823は、トランスポンダ70の受信器72における受信FE721、ADC722、及び、受信デジタル信号処理部723と同一若しくは同様であってよい。
オプションとして、受信器82は、周波数変調(FM)検波部820を例えば受信FE821の前段に備えてよい。FM検波部820は、既述のように対向のトランスポンダ70の送信器71において波長制御情報が周波数変調によって重畳された信号光を受信して重畳信号をFM検波する。検波信号は、例示的に、制御部83(後述する周波数パタン復号部831)に与えられる。
次に、制御部83は、例示的に、周波数変調パタン復号部831と、波長制御量算出部832と、を備える。
周波数変調パタン復号部831は、受信器82で受信された信号光に重畳された周波数変調パタンを復号する。上述のように受信器82にFM検波部820が備えられていれば、周波数変調パタン復号部831は、FM検波信号から周波数変調パタンを復号する。
受信器82にFM検波部820が備えられない場合、制御部83に、搬送波周波数オフセットモニタ830を備えてよい。
搬送波周波数オフセットモニタ830は、受信デジタル信号処理部823でデジタル信号処理される受信デジタルデータ信号に対してFM検波に相当する処理を施すことにより、FM検波部820によって得られる検波信号相当の信号を得る。
例えば、周波数オフセット補償部94(図10参照)による周波数オフセットの推定過程でFM検波信号を得るようにしてよい。
この場合、周波数変調パタン復号部831は、搬送波周波数オフセットモニタ830で得られたFM検波信号から、「1」又は「0」の2値で表される周波数変調パタンを復号する。
波長制御量算出部832は、周波数変調パタン復号部831で復号された周波数変調パタンが示す波長制御情報を基に波長制御量を算出、決定し、当該波長制御量に応じて送信器83の送信光源813の発光波長を制御する。
発光波長の制御は、段階的に行なってよい。例えば、波長制御量が所定の閾値よりも大きい場合、波長制御量を数回分に分割して分割した量ずつ少しずつ発光波長をずらしていくように制御量を調整してよい。
あるいは、チャネル間隔をモニタしてから発光波長を調整するまでのフィードバックループに遅延が含まれる場合、安定的に引き込むために1回の制御量を調整してよい。あるいは、波長制御量にランダムな誤差が含まれる場合、複数回分の制御量を用いて平均化することで、その誤差を小さくすることができる。このような目的で制御量の調整をしてもよい。
なお、上述したトランスポンダ70における制御部73を含むモニタ機能は、対向のトランスポンダ80(例えば、制御部83)にも備えられていて構わない。同様に、トランスポンダ80における制御部83を含む送信波長制御機能は、トランスポンダ70(例えば、制御部73)にも備えられていて構わない。別言すると、トランスポンダ70及び80は、それぞれ、モニタトランスポンダとしての機能と波長制御対象トランスポンダとしての機能とを兼ね備えていて構わない。
また、「チャネル間隔」は、通常であれば、或るチャネルの中心波長と、隣のチャネルの中心波長との間の距離を意味する。ただし、図4(B)に例示したように、スーパーチャネルでは、各チャネルのスペクトルを矩形整形しているため、スペクトル幅は、この矩形の幅に相当すると考えてよい。
例えば図12に模式的に示すように、スペクトル幅は、矩形の全幅で32GHz、半幅で16GHzと考えてよい。そのため、チャネルとチャネルとの間隙の幅を測定できれば、「間隙の幅(例えば、3GHz)+スペクトルの全幅(例えば、32GHz)=チャネル間隔(例えば、35GHz)」という計算で、間隙の幅をチャネル間隔に換算することができる。
(送信波長制御の一例)
次に、波長間隔モニタ732で決定した波長制御量に応じた波長制御情報を受信した波長制御対象トランスポンダ80での送信波長制御の一例について説明する。
図9にて説明したように、波長制御対象トランスポンダ80では、制御部83の周波数変調パタン復号部831にて、受信器82で受信された信号光に周波数変調成分として重畳されている周波数変調パタンが復号される。
周波数変調成分は、例えば、周期的に変化する2種類の周波数オフセット値「+Δf」及び「−Δf」を含んでいる。「+Δf」=「1」及び「−Δf」=「0」に対応付けることで、「1」又は「0」の2値の周波数変調パタンを表現できる。したがって、例えば搬送波周波数オフセットモニタ830(図9参照)にて、2種類の周波数オフセット値を検波により検出することで、波長制御情報を含む周波数変調パタンを復元することができる。
周波数変調パタン復号部831は、復元された周波数変調パタン(フレーム:図11参照)の中からプリアンブルを検出してフレーム先頭位置を検出する。そして、周波数変調パタン復号部831は、検出したフレーム先頭位置から、フレーム長に対応するビット数を取り出し、フレーム末尾のCRCを用いて誤り検出の計算を行なう。
誤り検出の結果、誤りがあれば、周波数変調パタン復号部831は、該当フレームを破棄する。誤りが無ければ、周波数変調パタン復号部831は、フレームにマッピングされている波長制御情報を抽出して波長制御量算出部832に与える。
波長制御量算出部832は、周波数変調パタン復号部831から与えられた波長制御情報が示す波長制御量に応じて、送信器81における送信光源814の発光波長を制御する。なお、波長制御量が例えば所定の閾値よりも大きい場合、波長制御量算出部832は、波長制御量を複数に分割して、分割した量ずつ送信光源814の発光波長をずらしてゆくように制御量を調整してよい。
ここで、波長制御量算出部832は、隣り合うチャネル同士のチャネル間隔が一定となるように送信光源814の発光波長を制御する。ただし、波長制御量算出部832は、波長多重された複数チャネルの全てを制御対象とはせずに、いずれかのチャネルを波長制御しない基準チャネルに設定し、当該基準チャネルを基準に他のチャネルの波長制御を行なってよい。
以上のように、スーパーチャネルのチャネル間隔を、受信側トランスポンダ70にて、スペクトルアナライザ等の高価な測定器を用いずに簡易にモニタすることができる。したがって、モニタを光ネットワーク60に設けなくてよく、作業やコストの増大を抑止できる。
また、モニタ結果に応じた波長制御情報を受信側トランスポンダ70から送信側トランスポンダ80へ送信される変調信号光に重畳することで、送信光源814の発光波長を制御することができる。したがって、フィードバックのための制御信号パスを追加的に設けなくて済む。
結果的に、送信光源814の波長制御を低コストで実現でき、送信光源814の波長揺らぎに依存せずにチャネル間隔を接近させることが可能となる。よって、表1に例示したように、外縁マージン確保による伝送品質の向上や、周波数帯域の利用効率向上を図ることができる。
なお、上述したトランスポンダ70の制御部73及びトランスポンダ80の制御部83の一方又は双方は、既述の制御部114と同様に、CPUやDSP等の演算能力を備えたプロセッサデバイスと、メモリ等の記憶装置とを用いて実現されてよい。プロセッサデバイスが、記憶装置に記憶された制御に応じたプログラム(「ソフトウェア」と称してもよい。)やデータを適宜に読み取って動作することで、制御部73や制御部83としての機能が具現されてよい。制御部73及び83の一方又は双方は、制御部114と同様に、ASICやFPGA等を用いて実現されてもよい。
以上のように、光伝送システム1の運用中にWDM信号光のチャネル間隔をモニタして、隣接チャネルと適切なチャネル間隔となっているかを判断し、適切で無い場合には、適切なチャネル間隔になるように波長制御を行なうことが可能である。
ただし、装置の劣化や障害、想定以上の伝送路特性劣化等の影響により、受信局(モニタトランスポンダ70)において、隣接チャネル間隔を精度良く検出できないことも有り得る。そのため、送信波長が過剰に広いチャネル間隔に制御されてしまうことがある。
ここで、制御対象の送信波長が、例えば、マルチプレクサ(MUX)12又はデマルチプレクサ(DMUX)15の透過帯域の外縁に隣接する波長であったと仮定する。この場合、波長制御によって当該送信波長が透過帯域の外縁から不十分なマージンの波長位置にシフトされてしまう可能性がある。
例えば図13(B)に例示するように、MUX12(又はDMUX15)の波長透過帯域の長波長側の外縁に隣接するチャネルCH4が、波長制御によって長波長側へ波長シフトされたとする。なお、MUX12やDMUX15は、WSSを用いて構成されてよく、その場合、MUX12(又はDMUX15)の波長透過帯域は、WSSの波長透過帯域が支配的である(あるいは実質的に等価である)と捉えてよい。そのため、MUX12(又はDMUX15)の波長透過帯域を便宜的に「WSS透過帯域」と称することがある。
チャネルCH4の波長シフトの結果、チャネルCH4とWSS透過帯域の外縁との間に十分なマージンが確保されていなければ、WSS透過帯域の減衰特性により、チャネルCH4の信号光スペクトルの一部が削られてしまう。このように信号光スペクトルの一部が削られてしまうことを「スペクトル狭窄」と称してもよい。
スペクトル狭窄が生じると、信号光の受信特性が劣化する。最悪の場合には、受信局において受信信号の同期を保持できずに信号断となるおそれがある。なお、図13(A)は、各チャネルCH1〜CH4のいずれもが、WSS透過帯域内においてスペクトル狭窄が生じないように、適切な波長位置に設定、制御されている様子を例示している。
以下に説明する実施形態では、上述したようなWSS透過帯域の減衰特性に起因するスペクトル狭窄の発生を抑制あるいは回避するための手法について説明する。
概要的には、光伝送システム1の運用中や、既述のチャネル間隔モニタを用いた波長制御中に、WSS透過帯域の外縁に隣接するチャネルが、当該外縁に接近したこと、あるいは当該外縁を超えそうな状況であるかを判断する。
そして、その判断結果に基づいて、波長制御の停止や適切な波長制御となるようにフィードバックを行なう。なお、WSS透過帯域の外縁に隣接するチャネルは、便宜的に、「外縁チャネル」と称してよい。
例えば、図8において、外縁チャネルに相当する送信器D2の送信波長ずれにより、送信器D2の送信波長が、WSS透過帯域の外縁へ接近したことを対向局の受信器D2で検出し、検出した情報を対向局へ通知(「フィードバック」と称してもよい。)する。
受信器D2が検出した情報のフィードバックは、既述の周波数変調による主信号光への情報の重畳によって行なってよい。図8では、例示的に、受信器D2で検出された情報は、対向局への送信器D1へ与えられて、送信器D1が対向局へ送信する主信号光に周波数変調によって重畳される。
送信器D1が送信した主信号光は、対向局の受信器D1で受信され、当該主信号光に重畳された情報が受信器D1にて検出される。受信器D1にて検出された情報は、送信器D2に与えられる。
これにより、送信器D2は、送信波長が更にWSS透過帯域の外縁に近づく方向へ制御することを停止したり、送信波長がWSS透過帯域の外縁から離れる方向へシフトさせたりすることが可能になる。
受信器D2において、外縁チャネルがWSS透過帯域の外縁に接近したこと、あるいは、当該外縁を超えそうな状況であるか否かは、例示的に、サンプリング位相同期部92(図10参照)での位相検出感度の変化を利用して検出あるいは判断できる。
例えば、信号光スペクトルがWSS透過帯域の減衰特性による帯域制限を受けていると、信号光の周波数成分が削られるため、サンプリング位相同期部92での、信号位相とサンプリング位相とを同期するために必要な、位相の検出感度(以下「位相検出感度」と略称する。)が、低下する傾向にある。
そこで、サンプリング位相同期部92での位相検出感度をモニタし、そのモニタ結果に基づいて、波長制御を停止したり、波長シフト量や波長シフト方向を制御したりすることで、信号光の受信特性劣化を抑制あるいは防止できる。したがって、WSS透過帯域の減衰特性による帯域制限によって、信号断が発生することを防止することができる。
(第1実施例)
図14は、第1実施例のトランスポンダの構成例を示すブロック図であり、図9に対応する図である。図14に示すトランスポンダ(モニタトランスポンダ)70は、図9の構成に比して、制御部73において、外縁接近解析部734を備える点が異なる。なお、図14のトランスポンダ70における受信器72は、図8の受信器D2に相当し、送信器71は、図8の送信器D1に相当する、と捉えてよい。
外縁接近解析部734は、受信デジタル信号処理部723のサンプリング位相同期部92に備えられた、図15により後述する位相検出感度モニタ921によってモニタされた位相検出感度モニタ値を受信する。
受信した位相検出感度モニタ値を基に、外縁接近解析部734は、外縁チャネルがWSS透過帯域の外縁に外縁チャネルが接近したことを検出する、あるいは、外縁チャネルがWSS透過帯域の外縁を超えそうな状況であるかを解析、判断することが可能である。
外縁接近解析部734による検出結果あるいは解析(判断)結果(「外縁接近情報」と総称してよい。)は、例示的に、周波数変調パタン生成部733に与えられてよい。周波数変調パタン生成部733は、外縁接近情報を、例えば「1」又は「0」の2値で表される周波数変調パタンに組み込む。
周波数変調パタンは、送信器71の送信デジタル信号処理部711に与えられる。送信デジタル信号処理部711は、周波数変調パタンに従って送信デジタルデータ信号に対して周波数変調を施す。
これにより、外縁接近情報が監視制御情報の一例として対向のトランスポンダ80への送信変調信号光に重畳される。したがって、送信器71は、外縁接近解析部734によって得られた外縁接近情報を、対向局のトランスポンダ80へ送信する送信部の一例であると捉えてよい。
トランスポンダ80への送信変調信号光に重畳された外縁接近情報は、トランスポンダ80の制御部83における周波数変調パタン復号部831にて復号される。例えば、周波数変調パタン復号部831は、FM検波部820によるFM検波信号から、あるいは、搬送波周波数オフセットモニタ830によって得られるFM検波信号相当の信号から、周波数変調パタンを復号することにより、外縁接近情報を検出する。
検出された外縁接近情報は、波長制御量算出部832に与えられる。波長制御量算出部832は、外縁接近情報に基づいて、送信器81の送信光源814の波長を制御する。例えば、波長制御量算出部832は、現状よりもWSS透過帯域の外縁に近づく方向に送信光源814の波長シフトを行なうとスペクトル狭窄が生じることを外縁接近情報が示している場合、送信光源814の波長シフト量を「0」として波長制御を停止してよい。
あるいは、波長制御量算出部832は、WSS透過帯域の外縁から離れる方向(別言すると、WSS透過帯域の中心に向かう方向)に、送信光源814の波長をシフトさせてよい。WSS透過帯域の中心に向かう方向への波長シフト制御は、サンプリング位相同期部92での位相検出感度が位相同期確立状態を保てる感度に改善されるまで、段階的に継続して行なってよい。
次に、図15に、図14に例示した第1実施例の受信デジタル信号処理部723(又は823)の構成例を示す。図15に示す受信デジタル信号処理部723は、図10に例示した構成に比して、サンプリング位相同期部92に、位相検出感度モニタ921が備えられている点が異なる。
位相検出感度モニタ921は、サンプリング位相同期部92での、信号光位相とサンプリング位相とを同期させるための位相検出感度をモニタする。
ここで、例えば図16に示すように1つのスーパーチャネルに4つのチャネル(サブチャネル)CH1〜CH4が含まれている場合の、位相検出感度特性の一例を図17に示す。なお、スーパーチャネルを成すサブチャネル数は、4チャネルに限られず、2チャネル以上であればよい。
図17には、例示的に、4つのチャネルCH1〜CH4のうち、WSS透過帯域において最も長波長側に位置する外縁チャネルCH4が、波長制御によってWSS透過帯域の長波長側の外縁に近づいた時の、位相検出感度特性の一例が示されている。
図17の(1)は、外縁チャネルCH4が、適切な波長位置にあり、WSS透過帯域において十分な外縁マージンが確保されている状態を模式的に示している。
また、図17の(2)は、外縁チャネルCH4が、波長制御によって適切な波長位置から長波長側にシフトして、外縁マージンが無くなった状態(別言すると、外縁マージンの限界値に到達した状態)を模式的に示している。
更に、図17の(3)は、外縁チャネルCH4が、更なる波長制御によって更に長波長側にシフトして、外縁マージンの限界値を超えた波長位置に到達した状態を模式的に示している。
また、図17に例示するグラフの横軸は、チャネル(CH4)の適切な波長位置からの波長シフト量(周波数シフト量でもよい。)を示す。また、同グラフの2つの縦軸の右側が、波長シフト量に対する位相検出感度を示している。2つの縦軸の左側は、波長シフト量に対するQ値を示している。
そして、図17において、符号Aで示すグラフ(特性)が、波長シフト量に対する位相検出感度の特性を示し、符号Bで示すグラフ(特性)が、波長シフト量に対するQ値の特性を示している。
また、符号Cは、外縁チャネルCH4についての信号光位相とサンプリング位相との同期を維持できる波長シフト量(別言すると、外縁チャネルCH4の信号疎通が可能な波長シフト量)を示す。当該波長シフト量は、便宜的に、「限界波長シフト量」あるいは「閾値波長シフト量」と称してもよい。
外縁チャネルCH4が、限界波長シフト量を超えてWSS透過帯域の外縁に近づく方向に波長シフトされると、サンプリング位相同期部92において、信号光位相とサンプリング位相との同期を維持することができなくなり、外縁チャネルCH4の信号断となる。
図17の位相検出感度特性Aと、図17の(1)〜(3)と、を参照すれば容易に理解できるように、外縁チャネルCH4が適切な波長位置からWSS透過帯域の外縁に近づく(別言すると、波長シフト量が大きくなる)につれて、位相検出感度は低下する傾向にある。
例えば、図17の(1)に示したように、外縁チャネルCH4が適切に波長制御されて十分な外縁マージンが確保されている状態(波長シフト量が「0」)では、位相同期を維持するのに十分に高い位相検出感度が得られる。
しかし、図17の(2)及び(3)に示したように、外縁チャネルCH4の波長シフト量が増加してチャネルCH4がWSS透過帯域の外縁に近づくにつれて、位相検出感度は低下する。
このような傾向(「相関」と称してもよい。)を利用することで、外縁チャネルCH4のWSS透過帯域外縁への接近を精度良く検出することが可能となる。なお、図17の例は、長波長側の外縁チャネルCH4に着目した例であるが、短波長側の外縁チャネルCH1についても同様である。例えば、外縁チャネルCH1がWSS透過帯域の短波長側の外縁に近づくにつれて、位相検出感度は低下する傾向にある。
図17の、位相検出感度特性AとQ値の特性Bとを比較してみると、Q値の特性Bは、チャネルCH4(又はCH1。以下、同様。)とWSS透過帯域外縁との間に十分な外縁マージンがあったとしても、乱高下していることが分かる。
別言すると、波長シフト量(つまりは、チャネルCH4のWSS透過帯域外縁への接近)とQ値の変化との間には、相関が無いか低い。そのため、Q値を基にして、チャネルCH4のWSS透過帯域外縁への接近を精度良く検出することは現実的でないと云える。
そこで、第1実施例の受信デジタル信号処理部723は、サンプリング位相同期部92での位相検出感度を位相検出感度モニタ921によってモニタし、そのモニタ結果である位相検出感度モニタ値を外縁接近解析部734(図14参照)に出力する。
外縁接近解析部734は、位相検出感度モニタ値を基に、外縁チャネルがWSS透過帯域の外縁に外縁チャネルが接近したことを検出する。あるいは、外縁接近解析部734は、位相検出感度モニタ値を基に、外縁チャネルがWSS透過帯域の外縁を超えそうな状況であるかを解析、判断する
WSS透過帯域に対する外縁チャネルの接近検出や接近状況の解析、判断は、位相検出感度モニタ値と閾値(「外縁接近閾値」と称してよい。)との比較によって行なってよい。外縁接近閾値は、サンプリング位相同期部92の既知の性能を基に決定してよい。
例えば、サンプリング位相同期部92の設計や製造試験の性能評価時に、サンプリング位相同期部92が位相同期確立状態を維持できる位相検出感度の限界値を求めることができる。したがって、当該限界値、あるいは、当該限界値を基にして求めた値を外縁接近閾値に設定してよい。
あるいは、システム運用開始前に外縁チャネルを実際にWSS透過帯域の外縁へ向かう方向へ波長制御しながら、Q値や受信信号のビットエラーレート(BER)等を測定し、位相同期外れが生じた時の測定値を基に、外縁接近閾値を設定してもよい。
当該外縁接近閾値は、Q値やBERの実測値に基づく値であるから、設計値や性能評価時の値よりも、実際の運用環境に近い状態での閾値に設定することができる。したがって、WSS透過帯域に対する外縁チャネルの接近検出や接近状況の解析、判断の精度を向上することができる。
外縁接近解析部734は、例えば、位相検出感度モニタ921からの位相検出感度モニタ値と、設定された外縁接近閾値と、の比較結果を、「外縁接近情報」として周波数変調パタン生成部733に出力してよい。
あるいは、外縁接近解析部734は、位相検出感度モニタ値を基に、外縁チャネルとWSS透過帯域の外縁との間の距離(「外縁接近距離」と称してもよい。)を算出して、その算出結果を「外縁接近情報」として周波数変調パタン生成部733に出力してもよい。
別言すると、周波数変調パタン生成部733にて対向局への主信号光に周波数変調により重畳されて対向局に通知される「外縁接近情報」は、位相検出感度モニタ値が閾値以下になったことを示す状態情報でもよいし、外縁接近距離を示す距離情報でもよい。なお、外縁接近距離情報は、図17に例示したように、位相検出感度と波長シフト量との間に相関があるため、波長シフト量を距離に換算して求めることが可能である。
対向局の制御部83(例えば、波長制御量算出部832)は、主信号光に重畳された周波数変調成分によって通知された「外縁接近情報」を基に、外縁チャネルが更にWSS透過帯域の外縁へ近づかないように外縁チャネルの波長制御を行なう。
例えば、波長制御量算出部832は、外縁チャネルに対応する送信光源814の波長制御を停止してもよいし、外縁チャネルがWSS透過帯域の中心に向かう方向へ波長シフトするように送信光源814の出力波長を制御してもよい。
当該波長シフトは、例えば、位相検出感度モニタ921での位相検出感度モニタ値が、位相同期を維持するのに足りる値にまで改善されたと判定されるまで、段階的に継続して行なってよい。位相検出感度の改善判定にも、閾値を用いてよい。当該閾値は、「外縁接近閾値」に対する「外縁離隔閾値」と称してもよい。「外縁離隔閾値」は、「外縁接近閾値」よりも大きい値であってよく、また、「外縁接近閾値」と同様にして決定、設定されてよい。
なお、制御部83は、外縁チャネルの波長制御に応じて、当該外縁チャネルを含むスーパーチャネルの他のチャネルの波長制御を併せて実施してもよい。例えば、制御対象の第1の外縁チャネルとは波長領域において反対側に位置する第2の外縁チャネルに、WSS透過帯域に対する外縁マージンが十分あれば、スーパーチャネルの各チャネルを全体的に第1から第2の外縁チャネルへ向かう方向へシフトしてもよい。
あるいは、スーパーチャネルの各チャネル間隔を狭小化して外縁チャネルの波長シフト量を確保するようにしてもよい。各チャネル間隔を狭小化すると、チャネル間干渉によるクロストークが発生して伝送信号品質が劣化し得る。しかし、当該劣化よりも外縁チャネルがWSS透過帯域外縁に近づくことによる伝送信号品質劣化の方が大きいと判断できる場合には、チャネル間隔を狭小化する波長制御を許容してよい。
(動作例)
以下、図18及び図19に例示するフローチャートを参照して、第1実施例の動作について説明する。図18は、外縁接近検出を行なうモニタトランスポンダ70の動作例を示すフローチャートであり、図19は、外縁接近検出結果に基づく波長制御を行なう波長制御対象トランスポンダ80の動作例を示すフローチャートである。
(モニタトランスポンダの動作例)
図18に例示するように、トランスポンダ70では、受信器72(例えば図8の受信器D2)において、受信デジタル信号処理部723の位相検出感度モニタ921にて位相検出感度がモニタされる(処理P11)。モニタにより得られた位相検出感度モニタ値は、外縁接近解析部734に与えられる。
外縁接近解析部734は、位相検出感度モニタ値が予め設定された閾値(外縁接近閾値)以下であるか否かを判定する(処理P12)。
判定の結果、位相検出感度モニタ値が外縁接近閾値を超えていれば(処理P12でNOの場合)、外縁接近解析部734は、「外縁接近なし」を示す外縁接近情報を周波数変調パタン生成部733に出力する(処理P13)。なお、「外縁接近なし」を示す情報は、対向局へ送信しない設定として、当該処理P13は不要にしてもよい。
一方、位相検出感度モニタ値が外縁接近閾値以下であれば(処理P12でYESの場合)、外縁接近解析部734は、「外縁接近あり」を示す外縁接近情報を周波数変調パタン生成部733に出力する(処理P14)。
周波数変調パタン生成部733は、外縁接近情報を波長間隔モニタ732からの入力情報と併せて周波数変調パタンに組み込んで、送信器71(例えば図8の送信器D1)における送信デジタル信号処理部711に入力する。
送信デジタル信号処理部711は、主信号光の搬送波を周波数変調パタンに応じて周波数変調することで主信号光に各情報を重畳して対向局のトランスポンダ80へ送信する。
なお、外縁接近情報を対向局に送信する方法は、主信号光への周波数変調による重畳に限られない。例えば、送信局が対向局と通信が可能な通信路(「パス」や「チャネル」と称してよい。)であれば、どのような通信路を外縁接近情報の送信に用いてもよい。
例えば、対向局宛の主信号光のオーバヘッド(OH)に、外縁接近情報をマッピングしてもよい。ただし、波長制御対象のチャネルの主信号光のOHを外縁接近情報の送信に用いると、主信号光の断によってOHの通信も不能になる。
そのため、外縁接近情報の通信には、主信号光とは異なる通信路を用いてよい。主信号光とは異なる通信路は、外縁接近情報と他の情報とに共用の通信路であってもよいし、外縁接近情報の通信のために個別に準備、設定された通信路であってもよい。外縁接近情報の情報量は、主信号に比べて少ないので、主信号よりも低速な通信でよく、したがって、主信号光の通信路よりも負荷に強い通信路を外縁接近情報の通信に用いてよい。
(波長制御対象トランスポンダの動作例)
次に、図19を参照して、対向局のトランスポンダ80の動作例について説明する。トランスポンダ80では、受信器82(例えば図8の受信器D1)において、対向局のトランスポンダ70が送信した主信号光を受信する(処理P21)。当該主信号光には、波長間隔情報(あるいは波長制御情報)と外縁接近情報とが周波数変調成分として重畳されている。
当該周波数変調成分は、FM検波部820又は搬送波周波数オフセットモニタ830にて検波され、検波結果が周波数変調パタン復号部831にて復号される。これにより、主信号光に重畳されていた波長間隔情報(あるいは波長制御情報)と外縁接近情報とが復号される(処理P22)。
なお、波長間隔情報(あるいは波長制御情報)と外縁接近情報とが、既述のように主信号光とは異なる通信路にて送信される場合は、当該通信路に応じた受信処理にて各情報が受信器82にて取得される。
復号(あるいは取得)された情報は、波長制御量算出部832に与えられ、波長制御量算出部832は、波長間隔情報(あるいは波長制御情報)を基に、送信器81の送信光源814の波長制御量と制御方向とを算出する(処理P23)。
次いで、波長制御量算出部832は、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示しているか否かをチェックする(処理P24)。
チェックの結果、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していなければ(処理P24でNOの場合)、波長制御量算出部832は、算出した波長制御量及び制御方向で、送信器81(例えば図8の送信器D2)の送信波長の制御を行なってよい(処理P26)。
一方、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していれば(処理P24でYESの場合)、波長制御量算出部832は、波長制御方向がWSS透過帯域へ近づく方向であるか否かを判定する(処理P25)。
判定の結果、波長制御方向がWSS透過帯域外縁から離れる方向であれば(処理P25でNOの場合)、波長制御量算出部832は、処理P23で算出した波長制御量及び制御方向で送信器D2の送信波長の制御を行なってよい(処理P26)。
これに対し、波長制御方向がWSS透過帯域外縁に近づく方向であれば(処理P25でYESの場合)、波長制御量算出部832は、送信器D2の送信波長の制御を行なわなくてよい(停止してよい)(処理P27)。
以上のようにして、外縁チャネルがWSS透過帯域外縁に近づいたことを精度良く検出して波長制御を行なうことにより、外縁チャネルがWSS透過帯域外縁に接近し過ぎて外縁チャネルの伝送信号品質が劣化することを回避することが可能となる。したがって、外縁チャネルが最悪の場合に信号断になることを防止できる。
また、外縁接近情報の通信に、波長間隔情報(又は波長制御情報)の通信と同様の周波数変調による主信号光への重畳を用いることで、これらの通信(「制御通信」と総称してよい。)を共用化することができる。
したがって、制御通信に関わる構成を共用化に応じて簡素化することができ、低コストで信頼性の高い波長制御を実現できる。結果として、表1に例示したように、外縁マージン確保による伝送品質の向上や、周波数帯域利用効率の向上を図ることができる。
(第2実施例)
上述した第1実施例では、WSS透過帯域の一方(例示的に、長波長側)の外縁に隣接する外縁チャネルについての外縁接近情報に基づく波長制御について説明した。第2実施例では、WSS透過帯域の短波長側及び長波長側の双方の外縁に隣接する外縁チャネルについての外縁接近情報に基づく波長制御について説明する。
例えば、WSS透過帯域の双方の外縁に隣接する両外縁チャネルのうちの一方の外縁チャネルがWSS透過帯域外縁に接近したことが検出されると、反対側の他方の外縁チャネルの外縁接近情報を併用して、送信波長の波長制御の判定を行なう。
(システム構成例)
図20は、第2実施例に係る光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。図20は、図8に例示したネットワーク構成に対して、図14に例示した構成を有するトランスポンダ70及び80を適用した例を示している。
図20において、トランスポンダ70には、例えば、4つの送信器A1,B1,C1及びD1と、4つの受信器A2,B2,C2及びD2と、を備える。
例示的に、送信器A1と受信器A2とが1つの送受信器ペアを成し、送信器B1と受信器B2とが1つの送受信器ペアを成す。
同様に、例えば、送信器C1と受信器C2とが1つの送受信器ペアを成し、送信器D1と受信器D2とが1つの送受信器ペアを成す。
4組の送受信器ペアは、それぞれ、スーパーチャネルを成す4つのサブチャネルCH1〜CH4に対応すると捉えてよい。例示的に、サブチャネルCH1がスーパーチャネルの最短波長に相当し、サブチャネルCH4がスーパーチャネルの最長波長に相当し、サブチャネルCH2及びCH3が中間波長に相当すると捉えてよい。
別言すると、送信器A1と受信器A2とのペアは、WSS透過帯域の短波長側の外縁に隣接する外縁チャネルCH1の信号光を送受信すると捉えてよい。また、送信器D1と受信器D2とのペアは、WSS透過帯域の長波長側の外縁に隣接する外縁チャネルCH4の信号光を送受信すると捉えてよい。ただし、サブチャネル数は、4チャネルに限られず、2チャネル以上であればよい。
送信器B1と受信器B2とのペア、及び、送信器C1と受信器C2とのペアは、それぞれ、外縁チャネルCH1及びCH4の間の中間チャネルCH2及びCH3の信号光を送受信すると捉えてよい。
4組の送受信器ペア(A1−A2,B1−B2,C1−C2及びD1−D2)のそれぞれは、例示的に、図14に例示したトランスポンダ70における送信器71と受信器72とのペアに対応すると捉えてよい。ただし、図20において、図14に例示したトランスポンダ70の制御部73の図示は省略している。
受信器A2,B2,C2及びD2は、それぞれ、既述のチャネル間隔モニタによって得られた波長間隔情報を、送受信器ペアを成す送信器A1,B1,C1及びD1に制御部73を介して転送、入力することができる。
また、外縁チャネルCH1及びCH4に対応する受信器A2及びD2は、それぞれ、波長間隔情報に加えて、既述の外縁接近解析部734にて得られた外縁接近情報を、送受信器ペアを成す送信器A1及びD1に制御部73を介して転送、入力することができる。ただし、中間チャネルに対応する受信器B2及びC2も、波長間隔情報に加えて外縁接近情報を送信器B1及びC1へ転送、入力可能であってよい。
したがって、送信器A1,B1,C1及びD1は、それぞれ、波長間隔情報、あるいは、波長間隔情報及び外縁接近情報を、既述のように、周波数変調により主信号光に重畳して対向局のトランスポンダ80へ送信することが可能である。
一方、図20において、トランスポンダ70に対する対向局のトランスポンダ80は、例えば、4つの受信器A1,B1,C1及びD1と、4つの送信器A2,B2,C2及びD2と、監視制御部84と、を備える。
図20に例示するトランスポンダ80において、例示的に、送信器A2と受信器A1とが1つの送受信器ペアを成し、送信器B2と受信器B1とが1つの送受信器ペアを成す。
同様に、例えば、送信器C2と受信器C1とが1つの送受信器ペアを成し、送信器D2と受信器D1とが1つの送受信器ペアを成す。
受信器A1,B1,C1及びD1は、それぞれ、対向局のトランスポンダ70における送信器A1,B1,C1及びD1がそれぞれ送信したチャネルCH1〜CH4の信号光を受信する。
受信した信号光に、周波数変調によって波長間隔情報(あるいは、波長間隔情報及び外縁接近情報)が重畳されていれば、受信器A1,B1,C1及びD1は、既述のように、それぞれ、重畳された情報を復号することが可能である。
各受信器A1,B1,C1及びD1は、それぞれ、復号した波長間隔情報(あるいは、波長間隔情報及び外縁接近情報)を、監視制御部84に転送、入力することが可能である。
監視制御部84は、各受信器A1,B1,C1及びD1から入力された波長間隔情報(あるいは、波長間隔情報及び外縁接近情報)に基づいて、送信器A2,B2,C2及びD2の送信波長を個別的(「選択的」と称してもよい。)に制御することが可能である。そのため、監視制御部84は、各送信器A2,B2,C2及びD2に共通の制御部であってよく、例示的に、図2に例示したラインカード制御部114−1に備えられてよい。
例示的に、監視制御部84は、波長制御量算出部841を備える。波長制御量算出部841は、各受信器A1,B1,C1及びD1からの入力情報に基づいて、送信器A2,B2,C2及びD2の送信波長の波長シフト量や波長制御方向を個別的に求めることができる。
なお、監視制御部84は、既述の制御部114と同様に、CPUやDSP等の演算能力を備えたプロセッサデバイスと、メモリ等の記憶装置とを用いて実現されてよい。プロセッサデバイスが、記憶装置に記憶された制御に応じたプログラムやデータを適宜に読み取って動作することで、監視制御部84(波長制御量算出部841)としての機能が具現されてよい。監視制御部84は、制御部114と同様に、ASICやFPGA等を用いて実現されてもよい。
送信器A2,B2,C2及びD2は、それぞれ、対向局のトランスポンダ70における受信器A2,B2,C2及びD2で受信される、チャネルCH1〜CH4の信号光を送信する。
(動作例)
以下、第2実施例の動作について、図21及び図22を参照して説明する。図21は、(モニタ)トランスポンダ70の動作例を説明するフローチャートであり、図22は、(波長制御対象)トランスポンダ80の動作例を説明するフローチャートである。
(モニタトランスポンダの動作例)
図21に例示するように、トランスポンダ70では、受信器72において、受信デジタル信号処理部723の位相検出感度モニタ921にて位相検出感度がモニタされる(処理P31)。モニタにより得られた位相検出感度モニタ値は、外縁接近解析部734に与えられる。なお、位相検出感度のモニタは、図20の各受信器A2,B2,C2及びD2にて実施されてよい。
外縁接近解析部734は、図17に例示したような、位相検出感度と波長シフト量との間に相関に基づいて、例えば、波長シフト量を距離に換算して外縁接近距離を求める(処理P32)。外縁接近距離は、図20の各受信器A2,B2,C2及びD2にて求められてもよいし、外縁チャネルに対応する各受信器A2及びD2に限って求められる設定にしてもよい。
また、外縁接近解析部734は、位相検出感度モニタ値が予め設定された閾値(外縁接近閾値)以下であるか否かを判定する(処理P33)。
判定の結果、位相検出感度モニタ値が外縁接近閾値を超えていれば(処理P33でNOの場合)、外縁接近解析部734は、「外縁接近なし」を示す情報と外縁接近距離情報とを含む外縁接近情報を周波数変調パタン生成部733に出力する。
これにより、対応する送信器71から対向局へ送信される主信号光に、「外縁接近なし」を示す情報と外縁接近距離情報とが周波数変調によって重畳されて、対向局へ各情報が送信される(処理P34)。なお、「外縁接近なし」を示す情報は、対向局へ送信しない設定としてもよい。
一方、位相検出感度モニタ値が外縁接近閾値以下であれば(処理P33でYESの場合)、外縁接近解析部734は、「外縁接近あり」を示す情報と外縁接近距離情報とを含む外縁接近情報を周波数変調パタン生成部733に出力する。
これにより、対応する送信器71から対向局へ送信される主信号光に、「外縁接近あり」を示す情報と外縁接近距離情報とが周波数変調によって重畳されて、対向局へ各情報が送信される(処理P35)。
なお、外縁接近情報を送信する送信器71は、外縁チャネルに対応する図20の送信器A及びDに限られてもよい。
外縁接近情報を対向局に送信する方法は、主信号光への周波数変調による重畳に限らず、第1実施例と同様に、他の通信路を利用した方法でもよい。
(波長制御対象トランスポンダの動作例)
一方、図22に例示するように、対向局のトランスポンダ80では、受信器82(例えば図20の受信器A1,B1,C1及びD1)において、対向局のトランスポンダ70が送信した主信号光を受信する(処理P41)。
外縁チャネルに対応する受信器82(例えば、受信器A1及びD1)で受信される主信号光には、例示的に、波長間隔情報と外縁接近情報とが周波数変調成分として重畳されている。外縁接近情報には、「外縁接近あり」又は「外縁接近なし」を示す情報、あるいは、当該情報と外縁接近距離情報とが含まれる。
外縁チャネル間の中間チャネルに対応する受信器(例えば、受信器B1及びC1)で受信される主信号光には、例示的に、波長間隔情報が周波数変調成分として重畳されている。
当該周波数変調成分は、FM検波部820又は搬送波周波数オフセットモニタ830にて検波され、検波結果が周波数変調パタン復号部831にて復号される。これにより、スーパーチャネルの各チャネルに対応する受信器82(A1,B1,C1及びD1)では、主信号光に重畳されていた波長間隔情報が復号される。
受信器A1,B1,C1及びD1のうち、外縁チャネルに対応する受信器A1及びD1では、波長間隔情報に加えて外縁接近情報が復号される(処理P42)。
なお、波長間隔情報及び外縁接近情報は、既述のように主信号光とは異なる通信路にて送信されてよく、その場合、当該通信路に応じた受信処理にて各情報が受信器82にて取得される。
復号(あるいは取得)された情報は、監視制御部84の波長制御量算出部841に与えられる。波長制御量算出部841は、波長間隔情報(あるいは、波長制御情報)を基に、送信器81の送信光源814の波長制御量と制御方向とを算出する(処理P43)。
次いで、波長制御量算出部841は、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示しているか否かをチェックする(処理P44)。
チェックの結果、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していなければ(処理P44でNOの場合)、波長制御量算出部841は、算出した波長制御量及び制御方向で送信波長の制御を波長単位に行なってよい(処理P46)。
例えば、波長制御量算出部841は、算出した波長制御量及び制御方向で、外縁チャネル(CH4)に対応する送信器82(送信器D2)の送信波長を、算出した波長制御量及び制御方向で制御してよい。
一方、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していれば(処理P44でYESの場合)、波長制御量算出部841は、波長制御方向がWSS透過帯域へ近づく方向であるか否かを判定する(処理P45)。
判定の結果、波長制御方向がWSS透過帯域外縁から離れる方向であれば(処理P45でNOの場合)、波長制御量算出部841は、処理P43で算出した波長制御量及び制御方向で外縁チャネルの送信波長を制御してよい(処理P46)。
これに対し、波長制御方向がWSS透過帯域外縁に近づく方向であれば(処理P45でYESの場合)、波長制御量算出部841は、処理P42で得られた外縁接近距離情報に基づいて、反対側外縁の接近距離にマージンが有るか否かを判定する(処理P47)。
例えば、長波長側の外縁チャネルCH4がWSS透過帯域の長波長側の外縁に接近している場合、短波長側の外縁チャネルCH1とWSS透過帯域の短波長側の外縁との間に外縁マージンがあるか否かを判定する。
判定の結果、反対側の外縁マージンが有れば(処理P47でYESの場合)、波長制御量算出部841は、例えば、すべてのチャネルCH1〜CH4がWSS透過帯域の長波長側の外縁から離れるように、各送信器81の送信波長を制御してよい(処理P48)。このときの波長制御量(シフト量)は、反対側の外縁チャネル(例えば、チャネルCH1)についての位相検出感度モニタ値が閾値を下回らない範囲であればよい。
一方、反対側の外縁マージンが無ければ(処理P47でNOの場合)、波長制御量算出部841は、各送信器81の送信波長を制御しなくてよい(停止してよい)(処理P49)。
あるいは、波長制御量算出部841は、WSS透過帯域外縁に近づいている外縁チャネル(例えば、長波長側の外縁チャネルCH4)に対応する送信器81(例えば、送信器D2)に限って、当該外縁から離れる方向に送信波長を制御してもよい。
以上のように、第2実施例では、WSS透過帯域の長波長側及び短波長側の双方に対する外縁チャネルの接近距離情報に基づいて、各チャネルの波長制御の要否を判定し、その判定結果に応じた適切な波長制御を実施する。
例えば、WSS透過帯域の両外縁に隣接する外縁チャネルの外縁接近距離情報から、外縁マージンの有る波長制御方向を判断して、外縁マージンの有る方向へ各チャネルを波長シフトさせることができる。
したがって、第1実施例と同様に、外縁チャネルの伝送信号品質が劣化して最悪の場合に信号断になることを防止できると共に、WSS透過帯域の周波数利用効率を向上することが可能になる。
(第3実施例)
上述した第1及び第2実施例では、WSS透過帯域の双方の外縁の一方又は双方に隣接する外縁チャネルの外縁接近情報に基づいて波長制御を行なう例について説明した。
しかし、第1及び第2実施例の波長制御では、例えば、光伝送路20に何らかの障害が発生する等して、スーパーチャネルを成す全チャネルについての位相検出感度が一様に劣化すると、誤った波長制御が実施されるおそれがある。
例えば、外縁チャネルに限って位相検出感度をモニタしていると、位相検出感度の低下が、WSS透過帯域外縁への接近が原因なのか、光伝送路20に何らかの障害が発生した等の、外縁接近以外の事象が原因なのか、を判別できない。
そのため、光伝送路20に何らかの障害が発生していても、外縁チャネルの位相検出感度の低下は、WSS透過帯域外縁への接近が原因であると誤判定してしまい、不要な波長制御が実施されてしまうおそれがある。
そこで、第3実施例では、第1及び第2実施例にて説明した外縁チャネルの外縁接近情報に加えて、外縁チャネル間の中間チャネルについての位相検出感度モニタ値を対向局へフィードバックする。
対向局では、中間チャネルの位相検出感度モニタ値が低下していれば、外縁チャネルの位相検出感度の低下は、光伝送路20の障害等のために、スーパーチャネルを成す全チャネルについての位相検出感度が一様に劣化しているためである、と判断できる。
当該判断に応じて、対向局は、第1実施例及び第2実施例で説明したような外縁チャネルの送信波長制御を実施しないことで、不要な波長制御の実施を防止することができる。
(システム構成例)
図23に、第3実施例に係る光伝送システム1の構成例を示す。図23に例示する光伝送システムは、第2実施例の図20に例示した構成に比して、モニタトランスポンダ70及び波長制御対象トランスポンダ80において転送される情報が異なる。
例えば、モニタトランスポンダ70では、中間チャネルCH2及びCH3にそれぞれ対応する受信器B2及びC2が、それぞれ、波長間隔情報に加えて位相検出感度モニタ値を送信器B1及びC1に転送、入力することが可能である。
したがって、送信器B1及びC1は、それぞれ、波長間隔情報と位相検出感度モニタ値とを、対向局のトランスポンダ80への主信号光に重畳して送信することが可能である。
一方、波長制御対象トランスポンダ80では、中間チャネルCH2及びCH3にそれぞれ対応する受信器B2及びC2が、それぞれ、主信号光に重畳された波長間隔情報と位相検出感度モニタ値とを復号可能である。そして、受信器B2及びC2は、それぞれ、復号結果を監視制御部84の波長制御量算出部841に転送、入力することが可能である。
波長制御量算出部841は、中間チャネルの位相検出感度モニタ値を基に、外縁チャネルの波長制御の要否を判定し、必要と判定した場合に限って例えば第2実施例と同様の波長制御を実施してよい。
(動作例)
以下、第3実施例の動作について、図24及び図25を参照して説明する。図24は、モニタトランスポンダ70の動作例を説明するフローチャートであり、図25は、波長制御対象トランスポンダ80の動作例を説明するフローチャートである。
(モニタトランスポンダの動作例)
図24に例示するように、トランスポンダ70では、受信器72において、受信デジタル信号処理部723の位相検出感度モニタ921にて位相検出感度がモニタされる(処理P51)。モニタにより得られた位相検出感度モニタ値は、外縁接近解析部734に与えられる。なお、位相検出感度のモニタは、図20の各受信器A2,B2,C2及びD2にて実施されてよい。
外縁接近解析部734は、与えられた位相検出感度モニタ値が外縁チャネルについてのモニタ値であるか否かを判定する(処理P52)。当該判定は、例えば、受信器72の受信波長の設定情報や、予め運用開始時等に外縁チャネルとして設定した情報に基づいて、実施されてよい。外縁チャネルに相当するのであれば、外縁接近解析部734は、当該受信器72から受信した位相検出感度モニタ値が外縁チャネルについてのモニタ値であると判定してよい。
判定の結果、外縁チャネルについてのモニタ値であれば、外縁接近解析部734は、例えば第2実施例(図21)の処理P32〜P35と同様にして、外縁接近の有無を示す情報と外縁接近距離情報とを対向局へ送信してよい(処理P53〜P56)。
一方、受信器72から受信した位相検出感度モニタ値が外縁チャネルについてのモニタ値ではなく中間チャネルについてのモニタ値であれば(処理P52でNO場合)、外縁接近解析部734は、当該位相検出感度モニタ値を周波数変調パタン生成部733に出力する。
これにより、中間チャネルに対応する送信器71から対向局へ送信される主信号光に、中間チャネルの位相検出感度モニタ値が周波数変調によって重畳されて、対向局へ中間チャネルの位相検出感度モニタ値が送信される(処理P57)。
なお、位相検出感度モニタ値に代えて、当該位相検出感度モニタ値の劣化度を対向局に送信してもよい。また、位相検出感度モニタ値を対向局に送信(フィードバック)する対象のチャネルは、中間チャネルに限らず外縁チャネルを含んでもよい。更に、位相検出感度モニタ値を対向局に送信する方法は、主信号光への周波数変調による重畳に限らず、既述のように他の通信路を利用した方法でもよい。
(波長制御対象トランスポンダの動作例)
一方、対向局の波長制御対象トランスポンダ80では、図25に例示するように、受信器82(例えば図23の各受信器A1,B1,C1及びD1)において、対向局のトランスポンダ70が送信した主信号光を受信する(処理P61)。
外縁チャネルに対応する受信器82(例えば図23の受信器A1及びD1)で受信される主信号光には、例示的に、波長間隔情報と、外縁接近情報と、が周波数変調成分として重畳されている。
また、中間チャネルに対応する受信器82(例えば図23の受信器B1及びC1)で受信される主信号光には、例示的に、波長間隔情報と、外縁接近情報と、位相検出感度モニタ値(あるいは、その劣化度を示す情報)と、が周波数変調成分として重畳されている。
当該周波数変調成分は、FM検波部820又は搬送波周波数オフセットモニタ830にて検波され、検波結果が周波数変調パタン復号部831にて復号される。これにより、主信号光に重畳されていた情報が復号される(処理P62)。
なお、波長間隔情報、外縁接近情報及び位相検出感度モニタ値のいずれかは、既述のように主信号光とは異なる通信路にて送信されてよく、その場合、当該通信路に応じた受信処理にて各情報が受信器82にて取得される。
復号(あるいは取得)された情報は、監視制御部84の波長制御量算出部841に与えられる。波長制御量算出部841は、復号された波長間隔情報を基に、送信器81の送信光源814の波長制御量と制御方向とを算出する(処理P63)。
併せて、波長制御量算出部841は、中間チャネルの位相検出感度モニタ値(あるいは、その劣化度を示す情報)に基づいて、中間チャネルの位相検出感度が劣化しているか否かを判定する(処理P64)。なお、当該判定処理P64は、処理P63よりも前に実施しても構わない。判定処理P64での位相検出感度の劣化判定には、閾値判定を用いてよい。
劣化判定は、例えば、設計値や、製造試験の性能評価時にスペクトル狭窄を受けていない信号を受信した時の位相検出感度レベル(例えば図17の波長シフト量が「0」の時と同じ)を基準にしてよい。当該基準から位相検出感度レベルが閾値よりも低下している場合に「劣化」と判定してよい。閾値は、劣化許容範囲量の設計値として設定されてよい。
位相検出感度の劣化判定の結果、「劣化無し」と判断できる場合(処理P64でNOの場合)、波長制御量算出部841は、第2実施例における図22の処理P44〜P49と同様の処理P65〜P70を実施してよい。
例えば、波長制御量算出部841は、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示しているか否かをチェックする(処理P65)。
チェックの結果、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していなければ(処理P65でNOの場合)、波長制御量算出部841は、算出した波長制御量及び制御方向で、外縁チャネルに対応する送信器81(送信器D2)の送信波長を制御する(処理P67)。
一方、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していれば(処理P65でYESの場合)、波長制御量算出部841は、波長制御方向がWSS透過帯域へ近づく方向であるか否かを判定する(処理P66)。
判定の結果、波長制御方向がWSS透過帯域外縁から離れる方向であれば(処理P66でNOの場合)、波長制御量算出部841は、処理P63で算出した波長制御量及び制御方向で、送信器D2の送信波長を制御してよい(処理P67)。
これに対し、波長制御方向がWSS透過帯域外縁に近づく方向であれば(処理P66でYESの場合)、波長制御量算出部841は、処理P62で得られた外縁接近距離情報に基づいて、反対側外縁の接近距離にマージンがあるか否かを判定する(処理P68)。
例えば、長波長側の外縁チャネルCH4がWSS透過帯域の長波長側の外縁に接近している場合、短波長側の外縁チャネルCH1とWSS透過帯域の短波長側の外縁との間に外縁マージンがあるか否かを判定する。
判定の結果、反対側の外縁マージンが有れば(処理P68でYESの場合)、波長制御量算出部841は、例えば、すべてのチャネルCH1〜CH4がWSS透過帯域の長波長側の外縁から離れるように、各送信器81の送信波長を制御してよい(処理P69)。このときの波長制御量(シフト量)は、反対側の外縁チャネル(例えば、チャネルCH1)についての位相検出感度モニタ値が閾値を下回らない範囲であればよい。
一方、反対側の外縁マージンが無ければ(処理P68でNOの場合)、波長制御量算出部841は、各送信器81の送信波長を制御しなくてよい(停止してよい)(処理P70)。
あるいは、波長制御量算出部841は、WSS透過帯域外縁に近づいている外縁チャネル(例えば、長波長側の外縁チャネルCH4)に対応する送信器81(例えば、送信器D2)に限って、当該外縁から離れる方向に送信波長を制御してもよい。
一方、処理P64において、中間チャネルの位相検出感度が劣化していると判断されると(処理P64でYESの場合)、波長制御量算出部841は、外縁チャネルの位相検出感度も外縁接近以外の要因で劣化していると判断してよい。
例えば、中間チャネルの主信号光は、WSS透過帯域外縁よりも十分に離れた波長で送受信されているはずであるから、中間チャネルの位相検出感度がWSS透過帯域外縁の帯域制限により低下することは無いと判断してよい。
したがって、波長制御量算出部841は、中間チャネルの位相検出感度が劣化していれば、外縁チャネルの位相検出感度も外縁接近以外の要因で劣化していると判断して、各送信器82(A2,B2,C2及びD2)の送信波長を制御しなくてよい。
別言すると、波長制御量算出部841は、外縁接近情報が「外縁接近あり」を示していても、当該情報を無視して、各送信器82(A2,B2,C2及びD2)の送信波長制御を停止してよい。これにより、不要な送信波長制御が実施されることを防止することができる。
以上のように、第3実施例では、第2実施例の動作に加えて、中間チャネルの位相検出感度をモニタすることで、外縁チャネルの位相検出感度の低下が、WSS透過帯域外縁への接近が原因なのか、外縁接近以外の原因なのか、を判別できる。
したがって、既述の第1及び第2実施例と同様の作用効果が得られる他、外縁チャネルに限って位相検出感度をモニタすることによる誤判定を防止して、不要な送信波長制御の実施を回避することができる。よって、例えば、送信波長制御に関わる電力消費量を削減することができる。なお、第3実施例は、第1実施例に組み合わせてもよい。