JP6476639B2 - 銅含有粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、銅含有粒子に関する。
金属パターンの形成方法として、銅等の金属粒子を含むインク、ペースト等の導電材料をインクジェット印刷、スクリーン印刷等により基材上に付与する工程と、導電材料を加熱して金属粒子を焼結させ、導電性を発現させる導体化工程とを含む方法が知られている。導電材料に含まれる金属粒子としては、金属の酸化を抑制して保存性を高めるために表面に被覆材としての有機物を付着させたものが知られている。
特許文献1には、アルキルアミンで被覆された銅粒子及びその製造方法が記載されている。特許文献1に記載の方法は、シュウ酸銅等の銅前駆体とヒドラジン等の還元性化合物とを混合して複合化合物を得る工程と、前記複合化合物をアルキルアミンの存在下で加熱する工程とを有している。この方法により得られる銅粒子は、被覆材としてのアルキルアミンの種類を適切に選択することによって、大気中でも長期保存が可能であり、かつ300℃以下の加熱で良好な導電性を示すと報告されている。前記アルキルアミンとしては、炭素数が12以上のアルキルアミンが好ましいとされている。
特開2012−72418号公報
近年、生産効率の向上、使用する基材の種類の多様化等の観点から、より低温(例えば、150℃以下)での導体化を可能にする技術の開発が求められている。従って、特許文献1に記載されている銅粒子よりも低い温度で導体化できる銅粒子の開発が求められている。
本発明は上記課題に鑑み、低温で導体化できる銅含有粒子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
<1>銅を含有するコア粒子と、
前記コア粒子の表面の少なくとも一部に存在するアルキルアミンに由来する物質を含む有機物と、を有し、前記アルキルアミンは炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンを含む、銅含有粒子。
<2>前記有機物の割合がコア粒子及び有機物の合計に対して0.1質量%〜20質量%である、<1>に記載の銅含有粒子。
<3>前記コア粒子中の酸化物の含有率が5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の銅含有粒子。
<4>無作為に選択される200個の銅含有粒子の長軸の中央値が10nm〜500nmである、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の銅含有粒子。
本発明によれば、低温で導体化できる銅含有粒子を提供することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<銅含有粒子>
本発明の銅含有粒子は、銅を含有するコア粒子の表面の少なくとも一部に存在するアルキルアミンに由来する物質を含む有機物を有し、アルキルアミンは炭素数が7以下であるアルキルアミン(以下、特定アルキルアミンともいう)を含む。有機物及びアルキルアミンの存在及びその量は、例えば、窒素雰囲気中で前記有機物又はアルキルアミンが熱分解する温度以上の温度で銅含有粒子を加熱し、加熱前後の銅含有粒子の質量を比較することで確認することができる。
本発明の銅含有粒子は、銅を含有するコア粒子の表面の少なくとも一部にアルキルアミンに由来する物質を含む有機物を有することにより、耐酸化性に優れる。さらに、本発明の銅含有粒子は、低温(例えば、150℃以下)で導体化することができる。これは、有機物を構成するアルキルアミンの炭化水素基の鎖長が比較的短いために、比較的低い温度でも熱分解しやすいためと考えられる。
(特定アルキルアミン)
本発明において、特定アルキルアミンはRNH(Rは炭素数が7以下の炭化水素基であり、環状又は分岐状であってもよい)で表される1級アミン、RNH(R及びRは同じであっても異なっていてもよい炭化水素基であり、環状又は分岐状であってもよく、各炭化水素基の炭素数が7以下である)で表される2級アミン、炭化水素鎖に2つのアミノ基が置換しており、前記炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキレンジアミン等を意味する。特定アルキルアミンは、1つ以上の二重結合を有していてもよく、酸素、ケイ素、窒素、硫黄、リン等の原子を有していてもよい。特定アルキルアミンは、1種のみであっても2種以上であってもよい。
特定アルキルアミンの炭化水素基の炭素数が7を超えていると、導体化に必要な温度を充分に低くできない場合がある。耐酸化性と低温での導体化をより有効に両立させる観点からは、特定アルキルアミンの炭素数は6以下であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
特定アルキルアミンとしての1級アミンとして具体的には、エチルアミン、2−エトキシエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、等を挙げることができる。
特定アルキルアミンとしての2級アミンとして具体的には、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルペンチルアミン、等を挙げることができる。
特定アルキルアミンとしてのアルキレンジアミンとして具体的には、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノへキサン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン等を挙げることができる。
銅を含有するコア粒子の表面の少なくとも一部に存在する有機物は、特定アルキルアミン以外のアルキルアミンに由来する物質を含んでいてもよい。特定アルキルアミン以外のアルキルアミンとしては、炭素数が8以上である炭化水素基を有する1級アミン、2級アミン及びアルキレンジアミン等を挙げることができる。特定アルキルアミン以外のアルキルアミンは、炭化水素基が環状又は分岐状であってもよく、1個以上の二重結合を有していてもよく、酸素、ケイ素、窒素、硫黄、リン等の原子を有していてもよい。特定アルキルアミン以外のアルキルアミンは、1種のみであっても2種以上であってもよい。
特定アルキルアミン以外の1級アミンとして具体的には、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン等を挙げることができる。
特定アルキルアミン以外の2級アミンとして具体的には、ジオクチルアミン、ジノニルアミン等を挙げることができる。
特定アルキルアミン以外のアルキレンジアミンとして具体的には、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,12−ジアミノドデカン等を挙げることができる。
銅含有粒子の表面の少なくとも一部に存在する有機物が特定アルキルアミンに由来する物質以外のアルキルアミンに由来する物質を含む場合、特定アルキルアミンに由来する物質のアルキルアミンに由来する物質全体における割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
(銅含有粒子の諸特性)
銅を含有するコア粒子の表面の少なくとも一部に存在する有機物は、その割合がコア粒子及び有機物の合計に対して0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。有機物の割合が0.1質量%以上であると、充分な耐酸化性が得られる傾向にある。有機物の割合が20質量%以下であると、低温での導体化が容易に達成される傾向にある。コア粒子及び有機物の合計に対する有機物の割合は0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、コア粒子及び有機物の合計に対する有機物の割合は10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の銅含有粒子の大きさは特に制限されず、用途に応じて選択することができる。銅含有粒子を後述する方法によって製造する場合は、一般に無作為に選択される200個の銅含有粒子の長軸の長さの中央値が10nm〜500nmの範囲内である。導体化温度を低くする観点からは、無作為に選択される200個の銅含有粒子の長軸の長さの中央値が10nm〜300nmであることが好ましく、10nm〜200nmであることがより好ましい。
本発明において長軸の長さとは、粒子に外接し、互いに平行である二平面の間の距離が最大となるように選ばれる二平面間の距離を意味する。本発明において長軸の長さの中央値とは、200個の銅含有粒子の長軸の長さの値を小さい順に並べたときに中央に位置する2つの値(100番目及び101番目)の算術平均値を意味する。銅含有粒子の長軸の長さは、電子顕微鏡による観察等の通常の方法によって測定できる。
本発明の銅含有粒子の形状は特に制限されない。例えば、球状、長粒状、扁平状、繊維状等を挙げることができ、銅含有粒子の用途にあわせて選択できる。印刷用ペーストの観点からは、球状又は長粒状であることが好ましい。
本発明の銅含有粒子は、少なくとも金属銅を含み、必要に応じてその他の物質を含んでもよい。銅以外の物質としては、金、銀、白金、錫、ニッケル等の金属又はこれらの金属元素を含む化合物、後述する脂肪酸銅、還元性化合物又はアルキルアミンに由来する有機物、酸化銅、炭酸銅などを挙げることができる。導電性に優れる導体を形成する観点からは、銅含有粒子中の金属銅の含有率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明の銅含有粒子は、表面の少なくとも一部に有機物が存在しているために酸化が抑制されており、酸化物の含有率が小さい。例えば、ある実施態様では銅含有粒子中の酸化物の含有率が5質量%以下であり、別の実施態様では銅含有粒子中の酸化物の含有率が1質量%以下である。銅含有粒子中の酸化物の含有率は、例えばXRDによって測定することができる。
<銅含有粒子の製造方法>
本発明の銅含有粒子を製造する方法は特に制限されない。例えば、炭素数が9以下である脂肪酸と銅との塩化合物と、還元性化合物と、炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンを含むアルキルアミンと、を含む組成物を加熱する工程を有する方法によって本発明の銅含有粒子を製造することができる。
前記方法は、銅前駆体として、炭素数が9以下である脂肪酸と銅との塩化合物を使用するものである。これにより、銅前駆体としてシュウ酸銀等を用いる特許文献1に記載の方法と比較して、より沸点の低い(すなわち、分子量の小さい)アルキルアミンを反応媒として使用することが可能となっていると考えられる。その結果、得られる銅含有粒子の表面に存在する有機物がより熱分解しやすいものとなり、導体化を低温で実施することが可能になっていると考えられる。
(脂肪酸)
前記方法に使用される脂肪酸は、RCOOHで表される1価のカルボン酸(Rは鎖状の炭化水素基であり、直鎖状であっても分岐を有していてもよい)である。本発明で使用される脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。前記脂肪酸は1種のみでも、2種以上であってもよい。
導体化温度を低くする観点からは、前記脂肪酸の炭素数が9以下であることが好ましい。炭素数が9以下である飽和脂肪酸としては、酢酸(炭素数2)、プロピオン酸(炭素数3)、酪酸及びイソ酪酸(炭素数4)、吉草酸及びイソ吉草酸(炭素数5)、カプロン酸(炭素数6)、エナント酸及びイソエナント酸(炭素数7)、カプリル酸及びイソカプリル酸及びイソカプロン酸(炭素数8)、ノナン酸及びイソノナン酸(炭素数9)などを挙げることができる。炭素数が9以下である不飽和脂肪酸としては、上記の飽和脂肪酸の炭化水素基中に1つ以上の二重結合を有するものを挙げることができる。
本発明の銅含有粒子の製造に使用される脂肪酸の種類は、得られる銅含有粒子の分散媒への分散性、焼結性等の性質に影響しうる。このため、銅含有粒子の用途に応じて脂肪酸の種類を選択することが好ましい。粒子径の均一化の観点からは、炭素数が5〜9である脂肪酸と、炭素数が4以下である脂肪酸とを併用することが好ましい。例えば、炭素数が9であるノナン酸と、炭素数が2である酢酸とを併用することが好ましい。炭素数が5〜9である脂肪酸と炭素数が4以下である脂肪酸とを併用する場合の比率は、特に制限されない。
炭素数が9以下である脂肪酸と銅との塩化合物(脂肪酸銅)を得る方法は特に制限されない。例えば、水酸化銅と脂肪酸とを溶媒中で混合することで得てもよく、市販されている脂肪酸銅を用いてもよい。あるいは、水酸化銅、脂肪酸及び還元性化合物を溶媒中で混合することで、脂肪酸銅の生成と、脂肪酸銅と還元性化合物との間で形成される錯体の生成とを同じ工程中で行ってもよい。
(還元性化合物)
前記方法に使用される還元性化合物は、脂肪酸銅と混合した際に両化合物間で錯体等の複合化合物を形成すると考えられる。これにより、還元性化合物が脂肪酸銅中の銅イオンに対する電子のドナーとなり銅イオンの還元が生じやすくなり、錯体を形成していない状態の脂肪酸銅よりも自発的な熱分解による銅原子の遊離が生じやすくなると考えられる。還元性化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
還元性化合物として具体的には、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン等のヒドラジン化合物、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン誘導体等のヒドロキシルアミン化合物、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム化合物などを挙げることができる。
脂肪酸銅中の銅原子に対して配位結合を形成しやすい、脂肪酸銅の構造を維持した状態で錯体を形成しやすい等の観点からは、アミノ基を有する還元性化合物が好ましい。アミノ基を有する還元性化合物としては、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン及びその誘導体等を挙げることができる。
前記方法において脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物を加熱する工程(以下では加熱工程ともいう)における加熱温度を低くする(例えば、150℃以下)観点からは、アルキルアミンの蒸発又は分解を生じない温度範囲において銅原子の還元及び遊離を生じる錯体を形成可能な還元性化合物を選択することが好ましい。このような還元性化合物としては、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン及びその誘導体等を挙げることができる。これらの還元性化合物は、骨格を成す窒素原子が銅原子との配位結合を形成して錯体を形成可能である。また、これらの還元性化合物は一般にアルキルアミンと比較して還元力が強いため、生成した錯体が比較的穏和な条件で自発的な分解を生じ、銅原子の還元及び遊離が生じる傾向にある。
ヒドラジン又はヒドロキシルアミンの代わりにこれらの誘導体から好適なものを選択することで、脂肪酸銅との反応性を調節することができ、所望の条件で自発分解を生じる錯体を生成することができる。ヒドラジン誘導体としては、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n−プロピルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、n−ブチルヒドラジン、イソブチルヒドラジン、sec−ブチルヒドラジン、t−ブチルヒドラジン、n−ペンチルヒドラジン、イソペンチルヒドラジン、neo−ペンチルヒドラジン、t−ペンチルヒドラジン、n−ヘキシルヒドラジン、イソヘキシルヒドラジン、n−ヘプチルヒドラジン、n−オクチルヒドラジン、n−ノニルヒドラジン、n−デシルヒドラジン、n−ウンデシルヒドラジン、n−ドデシルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、フェニルヒドラジン、4−メチルフェニルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、2−フェニルエチルヒドラジン、2−ヒドラジノエタノール、アセトヒドラジン等を挙げることができる。ヒドロキシルアミンの誘導体としては、N,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキシルアミン、モノメチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、モノエチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)ヒドロキシルアミン等を挙げることができる。
脂肪酸銅に含まれる銅と還元性化合物の比率は、所望の錯体が形成される条件であれば特に制限されない。例えば、前記比率(銅:還元性化合物)はモル基準で1:1〜1:4の範囲とすることができ、1:1〜1:3の範囲とすることが好ましく、1:1〜1:2の範囲とすることがより好ましい。
(アルキルアミン)
前記方法に使用されるアルキルアミンは、脂肪酸銅と還元性化合物とから形成される錯体の分解反応の反応媒として機能すると考えられる。さらに、還元性化合物の還元作用によって生じるプロトンを捕捉し、反応溶液が酸性に傾いて銅原子が酸化されることを抑制すると考えられる。
アルキルアミンは、炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミン(特定アルキルアミン)の少なくとも1種を含む。これにより、耐酸化性にすぐれ、低温で導体化できる銅含有粒子を製造することができる。特定アルキルアミンは1種単独又は2種以上を併用してよく、その種類及び好ましい態様等は、本発明の銅含有粒子の表面に存在する有機物に関連して述べたものと同様である。アルキルアミンは、特定アルキルアミン以外のアルキルアミンを含んでもよく、その種類及び好ましい態様等は、本発明の銅含有粒子の表面に存在する有機物に関連して述べたものと同様である。アルキルアミンが特定アルキルアミン以外のアルキルアミンを含む場合、アルキルアミン全体に占める特定アルキルアミンの割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
脂肪酸銅に含まれる銅とアルキルアミンの比率は、所望の銅含有粒子が得られる条件であれば特に制限されない。例えば、前記比率(銅:アルキルアミン)はモル基準で1:1〜1:8の範囲とすることができ、1:1〜1:6の範囲とすることが好ましく、1:1〜1:4の範囲とすることがより好ましい。
(加熱工程)
前記方法において、脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物を加熱する工程を実施するための方法は特に制限されない。例えば、脂肪酸銅と還元性化合物とを混合した後にアルキルアミンを添加して得た組成物を加熱する方法、脂肪酸銅とアルキルアミンとを混合した後に還元性化合物を添加して得た組成物を加熱する方法、脂肪酸銅の出発物質である水酸化銅、脂肪酸、還元性化合物及びアルキルアミンを混合して得た組成物を加熱する方法等を挙げることができる。
形状及び大きさの揃った粒子を得る観点からは、脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物は脂肪酸銅及びアルキルアミンの混合物を得る第1工程と、脂肪酸銅及びアルキルアミンの混合物に還元性化合物を添加する第2工程とを含む方法によって得ることが好ましい。この場合、脂肪酸銅とアルキルアミンとの混合物を得る第1工程と、脂肪酸銅及びアルキルアミンの混合物に還元性化合物を添加する第2工程とは同一容器内で連続して行っても、別々に行ってもよい。
脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物を得る方法が脂肪酸銅及びアルキルアミンの混合物を得る第1工程と、脂肪酸銅及びアルキルアミンの混合物に還元性化合物を添加する第2工程とを含む場合、前記第1工程は0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上90℃以下で行うことより好ましく、25℃以上80℃以下で行うことがさらに好ましい。前記第2工程は還元反応が抑制される温度で行うことが好ましい。例えば10℃以下で行うことが好ましく、5℃以下で行うことがより好ましく、0℃以下で行うことがさらに好ましい。
脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物の加熱は、脂肪酸銅と還元性化合物とから形成される錯体が分解する温度で行われる。例えば、前記加熱は150℃以下で行うことが好ましく、130℃以下で行うことがより好ましく、100℃以下で行うことがさらに好ましい。前記方法では、銅前駆体として特定の脂肪酸銅を用いることにより、加熱工程を比較的低温で行うことができる。
脂肪酸銅、還元性化合物及びアルキルアミンを含む組成物は、さらに溶媒を含んでもよい。脂肪酸銅と還元性化合物による錯体の形成を促進する観点からは、極性溶媒を含むことが好ましい。ここで極性溶媒とは、25℃で水に対する溶解度を有するものであることが好ましく、アルコール溶媒であることがより好ましい。溶媒としてアルコールを用いることで錯体の形成が促進される理由は明らかではないが、固体である脂肪酸銅を溶解させながら水溶性である還元性化合物との接触が促進されるためと考えられる。溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
25℃で水に対する溶解度を示すアルコールとしては、炭素数が1〜8であり、分子中に水酸基を1つ有するアルコールを挙げることができる。このようなアルコールとしては、直鎖状のアルキルアルコール、フェノール、分子内にエーテル結合を有する炭化水素の水素原子を水酸基で置換したもの等を挙げることができる。より強い極性を発現する観点からは、分子中に水酸基を2個以上含むアルコールも好ましく用いられる。また、製造される銅含有粒子の用途に応じて硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等を含むアルコールを用いてもよい。
溶媒として用いるアルコールとして具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ピナコール、プロピレングリコール、メントール、カテコール、ヒドロキノン、サリチルアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、スクロース、グルコース、キシリトール、メトキシエタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール等を挙げることができる。
前記アルコールのうち、水に対する溶解度が極めて大きいメタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールが好ましく、1−プロパノール及び2−プロパノールがより好ましく、1−プロパノールがさらに好ましい。
(導電材料)
本発明の導電材料は、本発明の銅含有粒子と、分散媒とを含み、必要に応じてその他の成分を含む。本発明の導電材料は、形状が制御された本発明の銅含有粒子を含むため、粒子自体の分散性に優れている。このため、導電材料のチキソトロピー性、保存安定性等の特性を分散剤等の添加によらずに制御することができる。その結果、導体化を妨げる要因となる添加剤の量を低減でき、より低温での導体化を実現することが可能となる。本発明において「導体化」とは、導電材料中に含まれる銅含有粒子が焼結して得られる焼結物の抵抗率が300μΩ・cm以下となることを意味する。
本発明の導電材料の導電材料に使用される分散媒は特に制限されず、導電インク、導電ペースト等の作製に一般に用いられる有機溶剤から用途に応じて選択できる。例えば、粘度コントロールの観点からはテルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート等が好ましい。
本発明の導電材料の状態は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、導電材料をスクリーン印刷法に適用する場合は、粘度が0.1Pa・s〜30Pa・sであることが好ましく、1Pa・s〜30Pa・sであることがより好ましい。導電材料をインクジェット印刷法に適用する場合は、粘度が0.1mPa・s〜30mPa・sであることが好ましく、5mPa・s〜20mPa・sであることがより好ましい。
本発明の導電材料は上述のように、比較的低い温度で導体化することが可能である。具体的には例えば、150℃以下で導体化することができる。従って、例えば、樹脂等の耐熱性の低い基板上に銅配線を形成する場合等にも好適に用いることができる。
本発明の導電材料を導体化する際の雰囲気は、所望の導体化が達成できれば特に制限されない。一般に、有機物被覆を有する銅含有粒子を焼結させる際には有機物を熱分解させるために酸素を含有させた雰囲気中で加熱する必要がある。そのため、雰囲気中の酸素で酸化された銅を還元するために還元雰囲気での加熱を別途行う必要がある。本発明の導電材料では、銅含有粒子の表面に存在する有機物の熱分解が容易であるために雰囲気中の酸素の量を低くする(例えば、10000ppm以下)ことができる。このため、雰囲気中の酸素による銅の酸化が抑制される。その結果、還元雰囲気での加熱工程を省略することができ、導体化の工程数を削減することができる。
ある実施態様では、本発明の導電材料の導体化は、窒素、アルゴン等の不活性ガス中の酸素濃度が1ppm〜10000ppmの範囲内である雰囲気中で実施される。本発明の導電材料は、従来の導電材料を導体化させる場合よりも酸素濃度を高くすることで、より低温での導体化が達成される傾向にある。その理由は明らかではないが、本発明の銅含有粒子は従来の銅含有粒子よりも酸化しにくい性質を有しているため、銅含有粒子の過度な酸化を抑制しつつ酸素濃度を高めて有機物の熱分解を促進することができるためと考えられる。
以下、本発明の銅含有粒子について実施例をもとに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
[1.1]ノナン酸銅の合成
水酸化銅(関東化学株式会社、特級)91.5g(0.94mol)に1−プロパノール(関東化学株式会社、特級)150mLを加えて撹拌し、これにノナン酸(関東化学株式会社、90%以上)370.9g(2.34mol)を加えた。得られた混合物を、セパラブルフラスコ中で90℃、30分間加熱撹拌した。得られた溶液を加熱したままろ過して未溶解物を除去した。その後放冷し、生成したノナン酸銅を吸引ろ過し、洗浄液が透明になるまでヘキサンで洗浄した。得られた粉体を50℃の防爆オーブンで3時間乾燥してノナン酸銅(II)を得た。収量は340g(収率96質量%)であった。
[1.2]銅粒子の合成
上記で得られたノナン酸銅(II)15.01g(0.040mol)と酢酸銅(II)無水物(関東化学株式会社、特級)7.21g(0.040mol)をセパラブルフラスコに入れ、1−プロパノール10mLとヘキシルアミン(東京化成工業株式会社、純度99%)32.1g(0.32mol)を添加し、オイルバス中で80℃で加熱撹拌して溶解させた。氷浴に移し、内温が5℃になるまで冷却した後、ヒドラジン一水和物(関東化学株式会社、特級)7.72mL(0.16mol)を1−プロパノール12mLに溶解させた溶液を脂肪酸銅の溶液に加え、氷浴中で撹拌した。なお、銅:ヘキシルアミンのモル比は1:4である。次いで、オイルバス中で90℃で加熱撹拌した。その際、発泡を伴う還元反応が進み、10分以内で反応が終了した。セパラブルフラスコの内壁が銅光沢を呈し、溶液が暗赤色に変化した。遠心分離を4000rpm(回転/分)で1分間実施して固体物を得た。固形物を更にヘキサン15mLで洗浄する工程を3回繰り返し、酸残渣を除去して、銅光沢を有する銅粒子の粉体を含む銅ケークを得た。
<低温導体化の評価>
実施例1で得た銅粒子のケーク(60質量部)、テルピネオール(20質量部)、及びイソボルニルシクロヘキサノール(商品名:テルソルブMTPH、日本テルペン化学株式会社)(20質量部)を混合して導電材料を作製した。得られた導電材料をポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上に塗布し、加熱して金属銅の薄膜を形成した。加熱は、窒素中の酸素濃度を100ppmとした雰囲気中、昇温速度40℃/分で140℃まで加熱し、60分間保持することによって行った。
得られた金属銅の薄膜の体積抵抗率を、4端針面抵抗測定器で測定した面抵抗値と、非接触表面・層断面形状計測システム(VertScan、株式会社菱化システム)で求めた膜厚とから計算した。結果は30μΩcmであり、体積抵抗率が充分に低い導体が形成されていた。
以上より、本発明の銅含有粒子は低温で導体化できることが分かった。
<比較例1>
アルキルアミンとしてヘキシルアミンの代わりに同量のウンデカアミン(炭化水素基の炭素数が11)を用いた以外は実施例1と同様にして銅粒子を作製し、実施例1と同じ条件で金属銅の薄膜を作製して体積抵抗率を測定した。結果は1310μΩcmであり、実施例1で作製した薄膜の体積抵抗率よりも高かった。

Claims (2)

  1. 銅を含有するコア粒子と、
    前記コア粒子の表面の少なくとも一部に存在するアルキルアミンに由来する物質を含む有機物と、を有し、
    前記アルキルアミンはRNH (Rは炭素数が4〜6の炭化水素基であり、環状又は分岐状であってもよい)で表される1級アミン及びR NH(R 及びR は同じであっても異なっていてもよい炭化水素基であり、環状又は分岐状であってもよく、各炭化水素基の炭素数が4〜6である)で表される2級アミンからなる群より選択される少なくとも一方のみを含み、
    前記有機物の割合がコア粒子及び有機物の合計に対して0.1質量%〜20質量%であり、
    無作為に選択される200個の銅含有粒子の長軸の中央値が10nm〜500nmである、銅含有粒子。
  2. 前記コア粒子中の酸化物の含有率が5質量%以下である、請求項1に記載の銅含有粒子。
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