JP6470069B2 - 油脂結晶成長抑制剤、及び該剤を含有する油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、油脂結晶成長抑制剤、及び該剤を含有する油脂組成物に関する。
食品産業において、油脂の使用方法は、大きな課題の一つとなっている。例えば、油脂にはドレッシングやマヨネーズに配合する、フライ油に利用するといった使用方法があるが、長期間にわたって低温で保存すると、ロウ成分や高融点トリグリセリドが結晶化し白濁や分離が起きるため、外観を損ねたり、容器から取出せなくなったりする問題が生じる。また、植物油脂として大きな生産量を持つパーム油は比較的安価に得られ、かつ酸化安定性が高いため、油脂製品への利用が期待されるが、高融点のトリグリセリド成分であるPOP(2-オレオ-1,3-ジパルミチン)などが含まれており、低温下で容易に結晶や沈殿を生じる。取扱い性としては菜種油(キャノーラ油)、大豆油などの液状油脂の方が良好であるため、パーム油とこれら液状油脂を調合(混合)し、液状油脂に近い取扱い性を持つパーム調合油が提供されている。しかしながら、冬場や寒冷地での保管における結晶や沈殿の発生というパーム油に特有の問題があった。
上記問題に対して、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、油脂の結晶成長を抑制させる技術(特許文献1)や、優れた可溶化力及び乳化力を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる技術(特許文献2)が開発されている。また、特許文献3には、水酸基価が850mgKOH/g以下であり、かつ、ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基含有率が50%以上であるポリグリセリンと、脂肪酸とのエステル化物であるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、水酸基価が100mgKOH/g以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有してなる油脂結晶成長抑制剤が開示されている。
特開2004−189965号公報 特開2006−346526号公報 特許第4443628号
上記文献による技術では、マーガリンなどの透明性が要求されない製品には使用できる一方、家庭用液体油脂のように透明性が求められる製品については、使用し難いという問題があった。
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温下でパーム系油脂調合油の結晶成長を抑制して製品の透明性を維持する効果に優れた油脂結晶成長抑制剤等を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、所定のポリグリセリンと所定割合の脂肪酸とからなるポリグリセリン脂肪酸エステルを実質的な成分とする乳化剤が、低温下でパーム系油脂調合油の結晶成長を抑制し、長期間に渡って透明性を維持することを見いだし、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、本願発明に係る油脂結晶成長抑制剤は、水酸基価が700mgKOH/g〜800mgKOH/gであり全ての水酸基のうち1級水酸基含有率が50%以上であるポリグリセリンと、58〜62質量%のカプリル酸と18〜22質量%のパルミチン酸と18〜22質量%のステアリン酸からなる脂肪酸との混合エステル化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、エステル化率が80%以上、酸価が6以下であることを特徴とする。
また、上記油脂結晶成長抑制剤は、ヨウ素価が56〜72であるパームオレイン30〜60質量%と液状植物油40〜70質量%を含有する油脂中に含有させて食用油脂を提供できる。
一般に、パーム系油脂を多く含有する液体油脂は、低温下では結晶が発生して曇りが発生し易くなる。このような食用油脂に対しても、上記発明に係る油脂結晶成長抑制剤を好適に用いることができる。このため、上記発明に係る油脂結晶成長抑制剤は、パーム系油脂を含む油脂に含有して食用油脂(油脂組成物)とすることが好ましい。
本発明によれば、低温下でパーム系油脂調合油の結晶成長を抑制して製品の透明性を維持する効果に優れた油脂結晶成長抑制剤、及びこの油脂結晶成長抑制剤を含有する食用油脂を提供できる。
次に、本発明の実施形態について、表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
ポリグリセリンはグリセリンの重合物であり、グリセリンを脱水縮合するなどして得られる分子内に水酸基とエーテル結合を有する物質を意味する。通常、ポリグリセリンはグリセリンをアルカリ触媒下において、常圧あるいは減圧下で加熱することにより得られる。使用目的に応じて、窒素、水蒸気等の気体を通じて低沸点成分などを除去したり、イオン交換樹脂、イオン交換膜等を用いて触媒などのイオン成分を除去したり、活性炭等吸着剤を用いて色成分、臭成分を除去したり、水素添加等により還元処理を行ったり、分子蒸留、精留によって分画するなどして精製できる。
グリセリンを原料としてポリグリセリンを製造した場合、脱水縮合に際して分子内縮合が生じ、6員環や8員環などの副生成物が生じる。これらの副生成物の発生を抑えるために、グリシドール、エピクロルヒドリン、モノクロロヒドリンなどを原料とすることで、副生成物を殆ど含有しないポリグリセリンを調製できる。
ポリグリセリンの水酸基価は、油脂結晶成長抑制効果の観点から、700mgKOH/g〜800mgKOH/gであることが好ましい。ポリグリセリンを2種以上用いる場合は、加重平均することにより求められた水酸基価が上記範囲内であることが好ましく、各ポリグリセリンの水酸基価が上記範囲内であることがより好ましい。本明細書中において、「水酸基価」とは、基準油脂試験分析法(ピリジン無水酢酸法、2.3.6.2-1996)により測定した値を意味する。
ポリグリセリンの水酸基価を調整する方法としては、特に限定するものではない。例えば、グリセリン重合法、グリシドール重合法等に従ってポリグリセリンを調製する場合、重合反応時間の経過と共に水酸基価が低下するため、反応中のポリグリセリンの水酸基価低下過程を確認することにより、水酸基価を調整できる。
ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が占める割合(以下、「1級水酸基含有率」という)は、油脂結晶成長抑制効果の観点から、50%以上であり、55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。1級水酸基含有率の上限値は、特に限定するものではないが、その効果を最大限に発揮させるためには100%以下であることが好ましい。また、ポリグリセリンを2種以上用いる場合は、加重平均することにより求められた1級水酸基含有率が上記範囲にあることが好ましく、各ポリグリセリンの1級水酸基含有率が上記範囲にあることがより好ましい。本明細書中において、1級水酸基含有率は、炭素原子及び水素原子の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて算出される。
1級水酸基含有率を調整する方法としては、特に限定するものではない。例えば、上記により得られたポリグリセリンに1級水酸基に選択的に反応する試薬、即ち、1級水酸基の保護基となる試薬を反応させて、ポリグリセリンの極性を変化させる。その後、1級水酸基を多く有するポリグリセリンほど極性が低くなることを利用して、1級水酸基を有するポリグリセリンを適宜選択することにより、1級水酸基含有率を調整できる。選択したポリグリセリンは、当業者に公知の方法に従って、保護基の脱離処理を行うとよい。
1級水酸基に選択的に反応する試薬としては、例えば、t-ブチルジフェニルシリルクロライド、イソブテン、1-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボレート、t -ブチルジメチルシリルクロライド、クロロトリフェニルメチル等が挙げられる。
ポリグリセリンと前記試薬との反応比は、所望されるポリグリセリン中の1級水酸基の数にあわせて適宜調整されるが、確実に反応を進行させるため前記試薬を過剰量使用することが好ましい。例えば、前記試薬は、ポリグリセリン1モルに対して、好ましくは2〜10モル、より好ましくは3〜7モル使用される。
ポリグリセリンと前記試薬との反応は、反応の進行及び保護の確実性の観点から、好ましくは-78〜150℃、より好ましくは0〜100℃で行われる。
得られた反応物から目的のポリグリセリンを分別する方法は、保護基が導入されたポリグリセリンの化学的及び物理的差を利用して行える。例えば、沸点の差を利用して蒸留、減圧蒸留、分子蒸留等の方法で目的のポリグリセリンを分別することができ、又は水もしくは有機溶剤への溶解度の差を利用して目的のポリグリセリンを分画できる。例えば、反応物を水に分散させ、水と混和しない有機溶剤(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、エーテル、酢酸エチルなど)で抽出することにより、目的のポリグリセリンを分画できる。この分画方法を使用する場合、水の代わりに水含有エタノール、食塩水、硫酸ナトリウム水溶液等の無機塩の溶液を使用できる。水と酢酸エチルを用いて目的のポリグリセリンを分画することが好ましい。
分別されたポリグリセリンの保護基の脱離は、一般の有機合成で行われている方法を用いることができる。例えば、メタノール中でp-トルエンスルホン酸を作用させる方法、酢酸水溶液中で加熱攪拌する方法等により保護基の脱離が達成される。一例として、トリフェニルメチル基をポリグリセリンに導入した場合、得られた反応物に対して約2〜3倍量の酢酸水溶液を加えて、50〜70℃で24時間攪拌することにより、保護基を脱離できる。
ポリグリセリンとしては、水酸基価と1級水酸基含有率が上記値を有するものであれば、合成品を用いても市販品を用いてもよく、合成品又は市販品の水酸基価、及び/又は1級水酸基含有率を前記に従って調整して用いてもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分である脂肪酸としては、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してあるいは分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質を用いることができる。また、石油等を原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸を用いてもよい。また、これら脂肪酸を水素添加等して還元したもの、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸を用いてもよい。これら脂肪酸としては、58〜62質量%のカプリル酸と18〜22質量%のパルミチン酸と18〜22質量%のステアリン酸を用いる。この範囲のものを用いることで、長期間に渡って透明性及び流動性を、より良好に維持可能な油脂結晶成長抑制剤とできる。
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えば、アルカリ触媒下、酸触媒下、又は無触媒下にて、常圧又は減圧下でエステル化できる。具体的には、ポリグリセリン、脂肪酸、触媒を仕込み、窒素ガス気流下で160〜260℃の温度で遊離脂肪酸がなくなるまで反応させる。
得られたポリグリセリン脂肪酸エステルは、製品の使用上の要求によって更に精製してもよい。精製の方法としては、特に限定するものではない。例えば、活性炭や活性白土等にて吸着処理したり、水蒸気、窒素等をキャリアーガスとして用いて減圧下脱臭処理を行ったり、又は酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、添加するポリグリセリンと脂肪酸の仕込み比率、反応温度、反応時間、触媒の種類及び添加量等を変化させることにより調整できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、80%以上が好ましい。エステル化率が80%未満であると、油脂への溶解性が低下したり、油脂結晶抑制効果が低減したりする場合があるので好ましくない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は、ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み比率(質量%)を変えることにより調整できる。水酸基価が50mgKOH/gより大きくなると、油脂に対して不溶となったり、油脂結晶抑制効果が十分に発揮できなかったりするため、50mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下が更に好ましい。また、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化における反応の確実性の観点から、5mgKOH/g以上が好ましい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、油脂への溶解性及び油脂結晶成長抑制効果の観点から、1〜7が好ましく、1〜6がより好ましい。なお、ここでいうHLB値は、次記式:「HLB=20×(1−S/A)」(但し、式中、S:エステルのけん化価、A:構成脂肪酸の酸価を意味する。)により算出した値のことをいう。
本実施形態の油脂結晶成長抑制剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを実質的な有効成分として含有するが、効果を損なわない範囲で、他の添加剤を含有してもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂結晶成長抑制剤中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。
また、本実施形態では、前記油脂結晶成長抑制剤と油脂とを含有する油脂組成物を提供する。
油脂とは、パーム系油脂を含有する油脂であれば特に限定するものではない。パーム系油脂とは、パーム油及び、パーム油から分別して得ることができるパームオレインやこれらのエステル交換油、水素添加油などである。また、パームオレインを得るための分別方法は特に制限はなく、冷却によるドライ分別、溶剤や界面活性剤を利用した分別を利用することができ、得られるパームオレインのヨウ素価は一般的には56以上である。本実施形態では、ヨウ素価50以上のパーム系油、好ましくはヨウ素価56〜72のパームオレインが好適に用いられ、油脂中にパーム系油脂が80質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30〜60質量%含有するのが好適である。また上記パーム系油脂を2種類以上混合して用いることもできる。
さらに、本実施形態では、パーム系油脂とパーム系油脂以外の液状油脂とを混合したパーム系油脂調合油とするのが好適である。液状油脂は、特に限定するものではないが、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、米油、綿実油、オリーブ油が例示され、これら液状油脂を2種以上混合して用いることもできる。また油脂中のこれら液状油脂の含有量は、好ましくは40〜70質量%である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの組成物中の含有量は、油脂結晶成長抑制効果の観点から、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましい。0.005質量%以上であれば十分な油脂結晶抑制効果が得られ、5質量%以下であれば油脂の結晶化を促進することがない。
また、油脂組成物には、前記油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するものであれば、他の添加剤を含有できる。
次に、実施例を参照しつつ、本発明について更に詳細に説明する。
<1級水酸基含有率の測定>
ポリグリセリン中の1級水酸基と2級水酸基の割合は、核磁気共鳴装置(13C-NMR)におけるスペクトル分析にて決定した。なお、2級水酸基含有率は、次式:「2級水酸基含有率(%)=100(%)−1級水酸基含有率(%)」により算出した。
ポリグリセリン500mgを重水2.8mLに溶解し、ろ過後、ゲートつきデカップリングにより13C-NMR(125MHz)スペクトルを取得した。ゲートデカップルド測定手法では、ピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CH2OH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出した。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素に更に隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH2)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出した。
実施例1(合成例1)
温度計、ジムロート及び攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、太陽化学社製のポリグリセリン(ハイグリオールTAIYO)200g及びピリジン600mLを加えた。ここに1級水酸基に選択的に反応する試薬であるクロロトリフェニルメチル(和光純薬社製)370gを加えて100℃にて1時間攪拌し、室温(25℃)まで冷却後さらに24時間攪拌した。その後、反応液を減圧下で蒸留してピリジンの大部分を除去した。得られた反応物は水800mLを加えて分液ロートに移し、酢酸エチル400mLで抽出した。この抽出操作を3回繰り返した。酢酸エチル層を合わせて濃縮し、得られた残渣156g及び酢酸300gを温度計、ジムロート及び攪拌装置を付けた3つ口フラスコに加えて、120℃で8時間加熱還流してトリフェニルメチル基を脱離後、精製して、ポリグリセリンAを得た。得られたポリグリセリンAの水酸基価は703mgKOH/g、1級水酸基含有率は52.5%、2級水酸基含有率は47.5%であった。
60gのポリグリセリンA、脂肪酸の混合物(108gのカプリル酸、36gのパルミチン酸及び36gのステアリン酸)及び触媒として0.1gの水酸化ナトリウムを300mL容の四ツ口フラスコに入れ、窒素気流下で生成水を除去しながら250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルAを得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルAの理化学分析値としては、酸化6以下、けん化価200〜250、よう素価2以下、水酸基価50mgKOH/g以下であった。
比較例1(合成例2)
脂肪酸の混合物として、90gのカプリル酸、54gのパルミチン酸及び36gのステアリン酸を用いる以外は、実施例1(合成例1)と同様にして反応させ、水酸基価25mgKOH/gのポリグリセリン脂肪酸エステルBを得た。
比較例2(合成例3)
脂肪酸の混合物として、126gのカプリル酸、36gのパルミチン酸及び18gのステアリン酸を用いる以外は、実施例1(合成例1)と同様にして反応させ、水酸基価11.3mgKOH/gのポリグリセリン脂肪酸エステルCを得た。
比較例3(合成例4)
脂肪酸の混合物として、90gのパルミチン酸及び90gのオレイン酸を用いる以外は、実施例1(合成例1)と同様にして反応させ、水酸基価50.5mgKOH/gのポリグリセリン脂肪酸エステルDを得た。
比較例4(合成例5)
特許文献3の実施例6(合成例6)を参考に、脂肪酸として、群(1)カプリン酸及びラウリン酸からなる群より選択される1種類以上を含有する脂肪酸(太陽化学社製)70%、群(2)ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択される1種類以上を含有する脂肪酸(太陽化学社製)30%の構成を有する、水酸基価13mgKOH/gのポリグリセリン脂肪酸エステルEを得た。
試験例1(結晶成長抑制効果1)
ヨウ素価67のパームオレイン50質量%と大豆油50質量%を配合して調合油を調製し、この調合油に、得られたポリグリセリン脂肪酸エステル(油脂結晶成長抑制剤)を0.3質量%となるよう添加して、攪拌溶解した後、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物は目盛り付き試験管に充填して密閉後、0℃の恒温槽中に保存して、最大60日間保存し、30日後及び60日後の結晶析出状態を目視で観察し、以下の評価基準に従って、結晶成長抑制効果を評価した。透明性、流動性共に、「◎」又は「○」の評価である場合に、商品価値があると判断した。なお、コントロールとして、油脂結晶成長抑制剤を添加しないものを用いた。
30日及び60日後の結果を表1に示した。
<透明性の評価基準>
◎:清澄である。
○:少しもやがある
△:全体にもやがある。
×:白色結晶が生じる。
<流動性の評価基準>
◎:傾けたとき、極めて流動性がある。
○:傾けたとき、流動性がある。
△:傾けたとき、若干流動性がある。
×:傾けたとき、全く流動性がない。
試験例2(結晶成長抑制効果2)
ヨウ素価67のパームオレイン油60質量%とキャノーラ油40質量%を配合して調合油を調製し、この調合油に、得られたポリグリセリン脂肪酸エステル(油脂結晶成長抑制剤)を0.3質量%となるよう添加して、攪拌溶解した後、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物は目盛り付き試験管に充填して密閉後、5℃の恒温槽中に保存して、最大30日間保存し、15日後及び30日後の結晶析出状態を目視で観察した。試験例1と同様の評価基準に従って、結晶成長抑制効果を評価した。
15日及び30日後の結果を表2に示した。
試験例3(結晶成長抑制効果3)
ヨウ素価60のパームオレイン油30質量%とキャノーラ油70質量%を配合して調合油を調製し、この調合油に、得られたポリグリセリン脂肪酸エステル(油脂結晶成長抑制剤)を0.3質量%となるよう添加して、攪拌溶解した後、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物は目盛り付き試験管に充填して密閉後、5℃の恒温槽中に保存して、最大30日間保存し、15日後及び30日後の結晶析出状態を目視で観察した。試験例1と同様の評価基準に従って、結晶成長抑制効果を評価した。
15日及び30日後の結果を表3に示した。
表1〜表3より、本実施形態のポリグリセリン脂肪酸エステルをパーム系油脂調合油に添加することにより、油脂結晶成長が抑制され、その効果が持続されることが分かった。
このように本実施形態によれば、低温下でパーム系油脂調合油の結晶成長を抑制して製品の透明性を維持する効果に優れた油脂結晶成長抑制剤、及びこの油脂結晶成長抑制剤を含有する食用油脂(油脂組成物)を提供できた。

Claims (2)

  1. 水酸基価が700mgKOH/g〜800mgKOH/gであり全ての水酸基のうち1級水酸基含有率が50%以上であるポリグリセリンと、58〜62質量%のカプリル酸と18〜22質量%のパルミチン酸と18〜22質量%のステアリン酸からなる脂肪酸との混合エステル化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、エステル化率が80%以上、酸価が6以下であるパーム系油脂調合油の油脂結晶成長抑制剤。
  2. ヨウ素価が56〜72であるパームオレインとパーム系油脂以外の液状植物油とを含有する油脂中に請求項1記載のパーム系油脂調合油の油脂結晶成長抑制剤を含有した食用油脂。
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