JP6469504B2 - フッ化クロム(iii)水和物及びその製造方法 - Google Patents

フッ化クロム(iii)水和物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フッ化クロム(III)水和物及びその製造方法に関する。本発明のフッ化クロム(III)水和物は、例えばクロムめっきや三価クロム化成処理などの金属表面処理に特に有用である。
クロムめっきは、装飾用及び工業用として多くの産業分野で用いられている。例えば、クロムめっきは大気中で腐食せず光沢を失わないので、装飾めっきとして広く用いられている。また高い硬度と低い摩擦係数を有するので、耐摩耗性を要する機械部品等に広く用いられている。このめっきに用いられるめっき液には多量の六価のクロムが用いられている。六価のクロムは人体への影響が懸念されるので、めっき廃液の処理の際に環境中に放出されないよう非常に厳重な条件下で三価のクロムに還元しなければならない。したがって六価のクロムに代えて、三価のクロムを用いためっき液の開発が望まれている。
三価のクロムを用いためっき液として、例えば特許文献1には、三価のクロム源として水酸化クロムをその含水ゲルの状態で用いることが提案されている。しかし水酸化クロムは一般的に水への溶解性が低く、通常のめっき液として用いられる酸性水溶液に対しても溶解性が低い。
特許文献2には、三価のクロム源として酸性水溶液に対する溶解性が高い炭酸クロム(III)が記載されている。この文献には、温度25℃でpHが0.2の塩酸水溶液1リットルに、Crとして1g含有に相当する量を加えたときに、30分以内に完全溶解する炭酸クロム(III)が開示されており、実施例においても塩酸の他、硫酸や硝酸といった酸を混合して使用した酸性水溶液における溶解性試験を行っており、良好な結果が得られている。
三価のクロムを用いためっき液は、作業前の調製や作業中に三価のクロムを補充する必要があるため、補充するクロム塩の溶解性によりその調製時間に影響が及ぶ。すなわち、より溶解性に優れる三価のクロム源を用いることにより、より効率的なめっき作業を行うことが可能となる。
三価のクロム源としては上述したクロム塩以外に、フッ化クロム(III)も挙げることができる。フッ化クロム(III)には三水和物や五水和物といった水和物が存在し、比較的容易に水相へ溶解させることができることから、フッ化クロム(III)は三価のクロム源として広く使用されている。ところで非特許文献1には、フッ化クロム(III)水和物は、三水和物の場合は九水和物の熱分解によって得られ、五水和物の場合は硫酸クロムとフッ化アンモニウムの水溶液を穏やかに蒸発させることにより得られると記載されている。
特開2006−249518号公報 国際公開WO2010/29615号公報
Zeitschrift fur Kristallographie, Vol.171, p.209-224(1985)
しかしながら、非特許文献1では、各々のフッ化クロム(III)水和物の結晶構造や化学的挙動といった学術的な検討がなされているのみであり、フッ化クロム(III)水和物の水相への溶解性といった、めっき用途の検討は行われていない。したがって本発明の目的は、従来以上に水相に対する溶解性に優れ、三価のクロム源として有用なフッ化クロム(III)水和物及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、赤外線吸収スペクトル測定において1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲に吸収ピークが観察されず、且つ六価クロムの含有量が1ppm以下であるフッ化クロム(III)水和物を提供するものである。
また本発明は、前記のフッ化クロム(III)水和物の好適な製造方法として、
三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを、水性媒体へ同時に添加してフッ化クロム(III)を生成させる第一工程、
第一工程で得られたフッ化クロム(III)を濾過後、水洗してケーキを得る第二工程、及び
第二工程で得られたケーキを乾燥してフッ化クロム(III)水和物を得る第三工程を有するフッ化クロム(III)水和物の製造方法であって、
第一工程において、三価のクロムを含む水溶液中のCr(III)に対するフッ化物水溶液中のFのモル比(F/Cr)を2.9以上3.3以下に設定し、
三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時に添加している間の反応液のpHを4.0以上6.5未満に維持し、且つ該反応液の温度を0℃以上65℃以下に維持する、フッ化クロム(III)水和物の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、水に対する溶解性に優れ、三価のクロム源として有用なフッ化クロム(III)水和物及びその製造方法が提供される。
図1は、実施例、比較例及び参考例で得られたフッ化クロム水和物の赤外線吸収スペクトルである。 図2a及び図2bは、実施例、比較例及び参考例で得られたフッ化クロム水和物の、2000cm−1から500cm−1までの波数範囲の赤外吸収線スペクトルである。 図3は、実施例1で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図4は、実施例2で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図5は、実施例3で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図6は、実施例4で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図7は、実施例5で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図8は、実施例6で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図9は、比較例1で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。 図10は、比較例2で得られたフッ化クロム水和物のイオンクロマトグラフィーの測定図である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り「クロム」というときには、三価のクロムを意味する。例えば「フッ化クロム」というときには、三価のクロムのフッ化物である「フッ化クロム(III)」を意味する。本発明のフッ化クロム水和物は、一般式CrF・nHOで表されるものである。式中、nは1以上9以下の数を表す。
本発明のフッ化クロム水和物は、水に対する溶解性が高いことを特徴の一つとするものである。本発明のフッ化クロムの水溶性が高い理由は、その化学的な構造に起因していると本発明者は考えている。この観点から、フッ化クロム水和物の化学的な構造を本発明者が鋭意検討したところ、フッ化クロム水和物の赤外線吸収スペクトル測定において、1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲に吸収ピークが観察されない場合に、その水溶性が高くなることが判明した。フッ化クロム水和物の赤外線吸収スペクトル測定において、1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲に吸収ピークが観察される場合、その吸収ピークは、Cr−OH結合に由来するものであると本発明者は考えている。Cr−OH結合は、フッ化クロム水和物の水溶性を低下させる原因であるクロムのオール化やオクソ化の発生因子であると考えられている。本発明のフッ化クロム水和物では、Cr−OH結合に由来すると考えられる赤外線吸収ピークが観察されないことから、クロムのオール化やオクソ化が進行しておらず、そのことに起因して水溶性が高められているものと考えられる。
また本発明者の検討の結果、フッ化クロム水和物は、そのイオンクロマトグラフィー測定において、保持時間4分以上6分以内の範囲に観察される最大ピーク値が0.5μS以下である場合に、その水溶性が高くなることが判明した。保持時間4分以上6分以内の範囲に観察されるピークは、クロム及びフッ素を含む水不溶分に帰属されるものであると本発明者は考えている。このピーク値が小さいことは、フッ化クロム水和物中における水不溶分の割合が低いこと、すなわち水溶分の割合が高いことを意味する。その結果、本発明のフッ化クロム水和物は水溶性が高いものと、本発明者は考えている。イオンクロマトグラフィー測定の詳細な条件は、後述する実施例において詳述する。
本発明のフッ化クロム水和物は、上述のイオンクロマトグラフィー測定において、保持時間10分以上12分以下の範囲にピークが観察されるものであることが好ましい。このピークは、水溶性のクロム錯イオンに由来するものであると本発明者は考えている。このピークの値が高いほど、フッ化クロム水和物はその水溶性が高くなる傾向にある。
本発明のフッ化クロム水和物における水和数、すなわち上述の一般式におけるnは1以上9以下である。これらの水和数のうち、三水和物、六水和物及び九水和物のいずれか一つ以上であることが、水溶性の向上の点から好ましく、六水和物及び九水和物のいずれか一つ以上であることが一層好ましい。フッ化クロムの水和数は、例えば後述する製造方法においてフッ化クロムケーキの乾燥条件を適切に選択することでコントロールすることができる。フッ化クロム水和物における水和数は、該フッ化クロム水和物をXRD測定し、それによって得られた回折ピークと、ICDDなどのXRDデータベースに登録されている回折ピークとを比較することで決定することができる。
水溶性が高い本発明のフッ化クロム水和物は、その水不溶分がこれまでに知られているフッ化クロムよりも少ないものである。具体的には、本発明のフッ化クロム水和物は、その水不溶分が好ましくは0.2質量%以下という少量であり、更に好ましくは0.16質量%以下、一層好ましくは0.14質量%以下である。水不溶分の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
本発明のフッ化クロム水和物は、水溶性が高いことに加えて六価のクロムの含有割合が極めて低いものであり、環境に負荷がないものである。詳細には、本発明のフッ化クロム水和物は、六価クロムの含有量が好ましくは1質量ppm以下という極めて少量のものであり、更に好ましくは0.5質量ppm以下であり、一層好ましくは実質的に六価クロムを含まない。六価クロムの含有量の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
本発明のフッ化クロム水和物の粒子形状に特に制限はない。一般には球状であるが、その他に塊状などの形状でもあり得る。本発明のフッ化クロム水和物は、水和物であることに起因して、乾燥状態でも若干の湿粉状態となっている。尤も、流動性に影響を与えるほどの湿潤状態ないし固結状態ではなく、取り扱い性が損なわれることはない。また本発明のフッ化クロム水和物は、周囲環境(25℃、65%RH)下に長期間保存した後でも、水溶性の低下が見られないか、又は水溶性が低下するとしてもその程度は極めて小さく、保存安定性の高いものである。
本発明のフッ化クロム水和物は、その純度が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが一層好ましい。このような純度を有するフッ化クロム水和物は、クロムめっきや三価クロム化成処理等の金属の表面処理に用いられる三価のクロム源あるいは補充液として有用なものである。本明細書において「三価クロム化成処理」とは、三価クロム化合物を主成分とする水溶液と被処理物とを接触させ、該被処理物に、化学的に三価のクロムを含む皮膜を生成させる処理のことである。フッ化クロム水和物の純度の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
次に、本発明のフッ化クロム水和物の好適な製造方法について説明する。本発明の製造方法は、三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液との同時添加に特徴の一つを有する。以下、この工程を「第一工程」という。これらの水溶液を、水性媒体へ同時添加することにより、水溶性の高いフッ化クロム水和物を得ることができることを本発明者らは知見した。これに対して、三価のクロムを含む水溶液中にフッ化物水溶液を添加するか、あるいはその逆に三価のフッ化物水溶液中にクロムを含む水溶液を添加する場合には、水溶性の高いフッ化クロム水和物を得ることは困難である。
第一工程において、三価のクロムを含む水溶液及びフッ化物水溶液は、これらを実質的に連続的に水性媒体へ添加する。実質的に連続的にとは、製造上の条件の変動等に起因して、添加が不可避的に一時的に不連続になる場合を許容する趣旨である。例えば、10秒以下の時間で添加が一時的に行われない状態が生じることは「実質的に連続的に」に該当する。
第一工程での三価のクロムを含む水溶液及びフッ化物水溶液の同時添加においては、操作開始時に、両水溶液を実質的に同時に添加する。尤も、本発明の効果を損なわない限度において、フッ化物水溶液の添加の方が、三価のクロムを含む水溶液の添加に先んじてもよく、あるいはその反対に、三価のクロムを含む水溶液の添加の方が、フッ化物水溶液の添加に先んじてもよい。操作終了時においても同様であり、両水溶液の添加は実質的に同時に終了させるが、本発明の効果を損なわない限度において、フッ化物水溶液の添加終了の方が、三価のクロムを含む水溶液の添加終了に先んじてもよく、あるいはその反対に、三価のクロムを含む水溶液の添加終了の方が、フッ化物水溶液の添加終了に先んじてもよい。
第一工程において、フッ化物水溶液及び三価のクロムを含む水溶液は、水性媒体へ同時添加される。本発明において用いられる水性媒体は、好ましくはpHが中性域(pHが7前後、例えば6.5以上7.5以下)のものである。このような水性媒体としては、例えば水(純水(pHが約7)、水道水(pHが7弱)等)や中性塩の水溶液を用いることができる。中性塩としては、例えば塩化ナトリウム等を用いることができる。また該水性媒体は、必要に応じ、低級アルコール等の水溶性有機溶剤を含有することもできる。これらの水性媒体のうち、クロムめっき液等の調製において不要な化学種の混入を防止し得る点から、水(純水、イオン交換水、水道水等)を用いることが好ましい。
生成するフッ化クロム水和物の溶解性は、第一工程において、フッ化物水溶液及び三価のクロムを含む水溶液を同時添加することに加えて、反応液の温度にも影響される。ここで言う反応液とは、フッ化物水溶液及び三価のクロムを含む水溶液が、水性媒体に添加されてなる液のことである。三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時に添加している間の反応液の温度は、0℃以上65℃以下に維持することが好ましい。反応液の温度が65℃よりも高いと、生成物の沈殿が生成しにくく、後の第二工程内の濾過操作においてフッ化クロム水和物を捕集しづらくなる。反応液の温度が0℃未満であると、三価クロム塩及び/又はフッ化物の析出のおそれがある。反応液の温度が10〜50℃、特に10〜40℃であると、溶解性の高いフッ化クロム水和物が一層容易に得られるので好ましい。
第一工程において、フッ化物水溶液及び三価のクロムを含む水溶液の添加速度は、これらの水溶液を添加している間の反応液のpHが4.0以上6.5未満、特に4.0以上5.5以下、とりわけ4.5以上5.5以下に維持されるように調整することが好ましい。同時添加中の反応液のpHをこの範囲内に維持することで、六価クロムの生成を抑制しつつ、目的とする溶解性を有するフッ化クロム水和物を首尾よく製造することができる。
第一工程において、フッ化物水溶液及び三価のクロムを含む水溶液の添加の割合は、三価のクロムを含む水溶液中のCr(III)に対するフッ化物水溶液中のFのモル比(F/Cr)を2.9以上3.3以下に設定することが好ましい。特にモル比(F/Cr)を3.0以上3.2以下に設定することが更に好ましく3.0以上3.1以下に設定することが一層好ましい。この範囲で両液を同時添加することで、目的とするフッ化クロム水和物を首尾よく製造することができる。
三価のクロムを含む水溶液におけるクロム源としては、三価のクロムの水溶性塩を特に制限なく用いることができる。そのような塩としては、例えば塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、硫酸クロムアンモニウム、硫酸クロムカリウム、ギ酸クロム、フッ化クロム、過塩素酸クロム、スルファミン酸クロム、酢酸クロムなどが挙げられる。これらの塩は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの塩は、水溶液の状態で用いてもよく、あるいは粉末の状態で用いてもよい。例えば日本化学工業社製「35%液体塩化クロム」、「40%液体硫酸クロム」(製品名)や市販の硫酸クロム(結晶品)を用いることができる。これらの塩のうち、塩化クロム、硝酸クロム又は硫酸クロムを用いることが、目的とする溶解性を有するフッ化クロム水和物を容易に得られる点、有機物が残存しない点及び経済性の点から好ましい。
三価のクロムを含む水溶液としては、六価のクロムを含む水溶液における六価のクロムを三価に還元したものを用いることもできる。例えば重クロム酸塩の水溶液に亜硫酸ガスを通して六価のクロムを三価のクロムに還元した水溶液を用いることができる。あるいは、重クロム酸塩の水溶液に硫酸を加え、有機物で六価のクロムを三価のクロムに還元した水溶液を用いることもできる。
一方、フッ化物水溶液としては、フッ素を含む水溶性化合物を用いることが好ましい。そのような化合物としては、例えばフッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどが挙げられる。これらの化合物は、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特にフッ化物水溶液として、pHが7以上9未満、特に7.5以上8.5以下のフッ化アンモニウム水溶液を用いることが、溶解性の高いフッ化クロム水和物が得られやすい点から好ましい。
第一工程においては、フッ化クロム(III)を生成させた後、10分以上の熟成を行うことが、水溶性の高いフッ化クロム水和物が容易に得られる点から好ましい。この観点から熟成は10分以上120分以下、特に20分以上60分以下の時間にわたって行うことが好ましい。熟成は、第一工程で得られた反応液を、静置下又は撹拌下に放置することで行われる。熟成中の反応液の温度は、10℃以上50℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることが更に好ましい。
第一工程においては、反応中に又は反応終了後に、還元剤を添加してもよい。本製造方法においては弱酸性域で反応を行っていることから、六価のクロムは基本的には生成しないが、還元剤を添加することで、反応中に、又は保存中に、酸化雰囲気下に置かれた場合でも、再酸化を防止できることから、六価のクロムが生成することを確実に防止できる。特に、反応終了後に還元剤を添加すると、再酸化を一層確実に防止できる観点から好ましい。還元剤としては、当該技術分野において従来用いられている有機系又は無機系の還元剤を特に制限なく用いることができる。有機系の還元剤としては、例えばメチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコールが好適に使用される。他の有機系の還元剤としては、グルコースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、でんぷんなどの多糖類等が挙げられる。無機系の還元剤としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、過酸化水素等が挙げられる。
第一工程でフッ化クロムが得られたら、第二工程として、フッ化クロムを濾過後、水洗してフッ化クロムのケーキを得る。フッ化クロムの濾過には、例えば吸引濾過、加圧濾過、遠心分離濾過などを用いることができる。濾過によって得られた固形分は水道水等を用いて洗浄され、未反応物や副生成物等の不純物が除去される。洗浄は、液の導電率が例えば5mS/cm以下となるまで行うことが好ましい。液の導電率が高いことは、原料に由来する副生物が多く残存していることを意味する。かかる副生物は、フッ化クロム水和物を三価クロムめっき液のクロム源として用いた場合に、めっき液中に蓄積されてしまうので極力除去されるべきものである。したがって濾液の導電率が前記の値以下となるまで洗浄を行うことが好ましい。水洗後、濾過等による水の除去を行い、含水率が好ましくは35質量%以上70質量%以下、更に好ましくは40質量%以上65質量%以下のフッ化クロムのケーキを得る。含水率は、(水の質量/フッ化クロムケーキの質量)×100で算出される。
濾過及び洗浄は、好ましくは0℃以上50℃以下、更に好ましくは10℃以上40℃以下の低温で行うことが好ましい。クロムのオール化やオクソ化及びそれに起因する難溶性物の生成を防止することができるからである。
第二工程で得られたフッ化クロムのケーキは、第三工程である乾燥工程において乾燥され、目的物であるフッ化クロム水和物が得られる。乾燥方法としては、例えば加熱乾燥及び通風乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法は、1つ又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。いずれの乾燥方法を採用する場合であっても、得られるフッ化クロム水和物の水和数が好ましくは1以上9以下、更に好ましくは3以上9以下になるように乾燥を行う。
具体的には、加熱乾燥を行う場合には、好ましくは40℃以上150℃未満、更に好ましくは60℃以上110℃以下、一層好ましくは60℃以上90℃以下の温度にフッ化クロムのケーキを加熱する。加熱時間は、好ましくは0.5時間以上24時間未満、更に好ましくは1時間以上24時間以下、一層好ましくは1時間以上12時間以下とする。乾燥の雰囲気は例えば大気とすることができる。乾燥の雰囲気は、静置とすることができる。乾燥は真空下に行うこともできる。真空の程度は、絶対圧で好ましくは0.05MPa以下、更に好ましくは0.03MPa以下、一層好ましくは0.01MPa以下とすることができる。これらの条件でフッ化クロムのケーキを乾燥させることで、水溶性の高いフッ化クロム水和物を得ることができる。
通風乾燥を行う場合には、好ましくは10℃以上100℃未満、更に好ましくは15℃以上90℃以下、一層好ましくは20℃以上60℃以下の温度にフッ化クロムのケーキを加熱する。加熱時間は、好ましくは1時間以上48時間未満、更に好ましくは3時間以上24時間以下、一層好ましくは6時間以上24時間以下とする。乾燥の雰囲気は例えば大気とすることができる。通風量は、特に制限はないが、例えば2m/sec以上10m/sec以下の風速で連続的にケーキに与えることとすることができる。この条件でフッ化クロムのケーキを乾燥させることで、水溶性の高いフッ化クロム水和物を得ることができる。
以上の各種の乾燥方法のうち、得られるフッ化クロム水和物の水溶性が特に高くなる点から、通風乾燥を用いることが好ましい。
このようにして得られた本発明のフッ化クロム水和物は、上述のとおり水溶性が高いので、以下に述べるように、例えば三価のクロムを用いたクロムめっき液や三価クロム化成処理液などの金属の表面処理液における三価クロム源として有用である。本発明のフッ化クロム水和物を三価クロム源として用いることで、めっき液や処理液の調製時間を短縮化することが可能となる。また、めっき液や処理液中に未溶解のフッ化クロム(III)が存在しないので、良質なめっき皮膜や三価クロム皮膜を形成することができる。
本発明によれば、上述した溶解性の高いフッ化クロム水和物をクロム源として用いた三価クロム含有液も提供される。本発明のフッ化クロム水和物含有液は、装飾用の最終仕上げ及び工業用の三価クロムめっきに用いられる。また、基体となる金属の表面や、基体となるプラスチックに形成されたニッケルめっきの表面などを始めとする金属の表面に施されるめっき等の各種金属の表面処理に用いられる。更に亜鉛めっきやすずめっき等のめっきの表面を対象とした三価クロム化成処理に用いられる。すなわち、本発明の三価クロム含有液は、三価クロムめっき液や三価クロムの化成処理液であり得る。以下の説明では、特に断らない限り、これらの液を総称して「めっき液等」と言う。
本発明の三価クロム含有液を三価クロムめっき液として用いる場合、該三価クロムめっき液は、上述のフッ化クロム水和物に由来する三価のクロム及び有機酸等を始めとする他の成分を含むものである。また本発明の三価クロム含有液を三価クロム化成処理用の処理液として用いる場合には、該処理液は、クロム源として上述のフッ化クロム水和物を用い、更にコバルト化合物、珪素化合物、亜鉛化合物、種々の有機酸等を含むことができる。
前記の三価クロム化成処理液に用いられるコバルト化合物としては、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。珪素化合物としては、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸カリ、珪酸リチウムが挙げられる。これらの珪素化合物は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの亜鉛化合物は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリシン等が挙げられる。これらはキレート作用を示すことから、めっき液中で三価のクロムを安定な形に保持することができると考えられる。
前記の三価クロム化成処理液は、クロムを例えば0.005〜1.0モル/リットル含むことが好ましい。クロムと有機酸のモル比は、クロム1モルに対して1〜5モルであることが好ましい。
本発明によれば、上述のめっき液等に加えて、クロムめっきや三価クロム化成処理などの金属の表面処理に用いられるめっき液等の補充液も提供される。この補充液は、上述のフッ化クロム水和物を含む。この補充液には、上述のとおり不純物イオンが含まれていないことが好ましい。クロムめっきや三価クロム化成処理等においては、無機アニオン、例えば硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオンなどは、皮膜中に取り込まれず液中に残存したままになる。したがって、めっき液等にクロム源を注ぎ足すと、そのクロム源の対アニオンである無機アニオンがめっき液等中に次第に蓄積していき、めっき液等の組成が変化してしまう。これに対して、上述のフッ化クロム水和物を含む補充液は、これらのアニオンを含まないので、該補充液をクロム供給源としてめっき液等に注ぎ足しても、めっき液等の組成の変化が少ない。その結果、めっき液等を頻繁に更新することなく、長期にわたりめっき液等を用いることができる。
前記の補充液によってクロム源が補充されるめっき液等の種類に特に制限はなく、従来用いられてきた三価のクロムを含有するめっき液等を用いることができる。
本発明の補充液は、クロムめっきや三価クロム化成処理を行っている間、めっき液等中のクロムイオンの消耗の程度に応じて該めっき液等中に適量添加される。添加は連続的でもよく、あるいは断続的でもよい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、当該技術分野に属する通常の知識を有する者の常識の範囲内において種々の改変を行うことは何ら妨げられない。またそのような改変は本発明の範囲内のものである。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。以下に述べる例中の測定は、以下の方法で行った。
<純度>
株式会社島津製作所製のICPS-8100CLを用い、ICP−AESによってCrの量を測定し、CrF・3HO(分子量163.04)に換算した。
<溶解性及び水不溶分>
精秤した試料(A)を、フッ化クロム3水和物換算で3.0%溶液となるようにイオン交換水を加え、60℃に昇温して2時間撹拌した。撹拌後に得られる溶液について、目視により溶解性を判断した。判断基準は下記のとおりとした。
評価○:濁りなし
評価×:濁りあり
その後、得られた溶液を5種A濾紙で濾過し、濾紙上をよく洗浄して105℃に設定した乾燥機内で1時間乾燥した。乾燥後質量(B)を秤量し、予め測定しておいた濾紙質量値(C)を用いて水不溶分を下記の式から算出した。
水不溶分(%)=[(B−C)/A]×100
<六価クロム含有量>
ジフェニルカルバジド法によって発色させた試料を測定対象として用い、株式会社島津製作所製の分光光度計UV−1800によって六価クロムを定量した。
<水和数>
株式会社リガク製のULTIMA IVを使用してX線回折分析によって求めた。
<赤外線吸収スペクトル測定>
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のNICOLET6700を使用した。
<イオンクロマトグラフィーによる測定>
カラムにサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のDionex IonPac CS14(4×250mm)を用い、溶離液に0.01モル/Lのメタンスルホン酸水溶液を用い、流量を1mL/minに設定し、サンプル水溶液の濃度を0.01質量%に設定した。検出器としては、ダイオネクス製のICS−1500を使用した。
[実施例1]
本実施例においては、クロム源として塩化クロムを用い、フッ素源としてフッ化アンモニウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの真空下での加熱乾燥を行った。
<第一工程>
99%フッ化水素アンモニウム(関東化学株式会社製)86.4gに143.1gの水道水を加えて撹拌混合し、フッ化アンモニウムのスラリーを得た。このスラリーに28%アンモニア水(関東化学株式会社製)を加えてpH7.5〜8.0程度とし、フッ化アンモニウムを溶解させてフッ化アンモニウム水溶液とし、これを60℃以下に調整した。
次いで、このフッ化アンモニウム水溶液と、25℃に調整した35%塩化クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)444.1gとを、25℃に調整した水道水125g中に同時添加した。添加速度は、フッ化アンモニウム水溶液が11.3g/分、35%塩化クロム水溶液が14.8g/分であり、添加は連続的に30分間行った。このときのCrに対するFの仕込モル比(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液のpHは約5.0に維持されていた。また、添加の間、反応液の温度は20〜40℃の間に維持されていた。また、添加の間、反応液を200rpmで撹拌して、塩化クロムの量に対してフッ化アンモニウムの量が局所的に過剰にならないようにした。反応終了後、液温を20℃以上40℃以下の間に保ちながら更に30分間にわたり200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程>
反応によって生成した沈殿を吸引濾過して濾過物を得た。この濾過物に水道水を添加してスラリーとなし、このスラリーの吸引濾過を行い、含水率41.5%のフッ化クロム(III)ケーキを得た。
<第三工程>
このフッ化クロム(III)ケーキを、80℃で8時間にわたり0.01MPaの真空下で乾燥させてフッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は以下の表1に示すとおりであった。
[実施例2]
本実施例においては、クロム源として塩化クロムを用い、フッ素源としてフッ化アンモニウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの通風乾燥を行った。
詳細には、第二工程までは実施例1と同じ方法で行った。第三工程においては、第二工程で得られたフッ化クロム(III)ケーキを、25℃で24時間にわたり常圧(101kPa)下で通風乾燥させてフッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。通風量は5m/secとした。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例3]
本実施例においては、クロム源として塩化クロムを用い、フッ素源としてフッ化アンモニウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの加熱乾燥を行った。
詳細には、第二工程までは実施例1と同じ方法で行った。第三工程においては、第二工程で得られたフッ化クロム(III)ケーキを、110℃で3時間にわたり大気雰囲気中、常圧(101kPa)下で加熱乾燥させてフッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。 得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例4]
本実施例においては、クロム源として塩化クロムを用い、フッ素源としてフッ化アンモニウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの真空下での加熱乾燥を行った。
<第一工程>
99%フッ化水素アンモニウム(関東化学株式会社製)95.1gに169.0gの水道水を加えて撹拌混合し、フッ化アンモニウムのスラリーを得た。このスラリーに28%アンモニア水(関東化学株式会社製)を加えてpH7.5〜8.0程度とし、フッ化アンモニウムを溶解させてフッ化アンモニウム水溶液とし、これを60℃以下に調整した。
次いで、このフッ化アンモニウム水溶液と、25℃に調整した35%塩化クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)444.1gとを、25℃に調整した水道水125g中に同時添加した。添加速度は、フッ化アンモニウム水溶液が12.7g/分、35%塩化クロム水溶液が14.8g/分であり、添加は連続的に30分間行った。このときのCrに対するFの仕込モル比(F/Cr)は3.3であった。添加の間、反応液のpHは約5.0に維持されていた。また、添加の間、反応液の温度は20〜40℃の間に維持されていた。また、添加の間、反応液を200rpmで撹拌して、塩化クロムの量に対してフッ化アンモニウムの量が局所的に過剰にならないようにした。反応終了後、液温を20℃以上40℃以下の間に保ちながら更に30分間にわたり200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程>
実施例1の第二工程と同様とした。
<第三工程>
第二工程で得られたフッ化クロム(III)ケーキを、80℃で6時間にわたり0.01MPaの真空下で乾燥させてフッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。 得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例5]
本実施例においては、クロム源として硝酸クロムを用い、フッ素源としてフッ化カリウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの通風乾燥を行った。
<第一工程>
99%フッ化カリウム(関東化学株式会社製)175.3gに262.9gの水道水を加えて撹拌混合し、フッ化カリウムの40%水溶液を得た。これを実施例1と同様にフッ化カリウム水溶液と、25℃に調整した40%硝酸クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)586.0gと、25℃に調整した水道水125g中に同時に添加した。添加速度は、フッ化カリウム水溶液が14.6g/分、40%硝酸クロム水溶液が19.53g/分であり、添加は連続的に30分間行った。このときのCrに対するFの仕込モル比(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液のpHは約5.0に維持されていた。また、添加の間、反応液の温度は20〜40℃の間に維持されていた。また、添加の間、反応液を200rpmで撹拌して、硝酸クロムの量に対してフッ化カリウムの量が局所的に過剰にならないようにした。反応終了後、液温を20℃以上40℃以下の間に保ちながら更に30分間にわたり200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程>
実施例1の第二工程と同様とした。
<第三工程>
実施例2と同じ方法で行い、フッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例6]
本実施例においては、クロム源として硫酸クロムを用い、フッ素源としてフッ化カリウムを用い、フッ化クロム(III)ケーキの通風乾燥を行った。
詳細には、実施例5と同じフッ化カリウム水溶液と、25℃に調整した40%硫酸クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)491.4gと、25℃に調整した水道水125g中に同時に添加した。添加速度は、フッ化カリウム水溶液が14.6g/分、40%硫酸クロム水溶液が16.4g/分であり、添加は連続的に30分間行った。このときのCrに対するFの仕込モル比(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液のpHは約5.0に維持されていた。また、添加の間、反応液の温度は20〜40℃の間に維持されていた。更に、添加の間、反応液を200rpmで撹拌して、硫酸クロムの量に対してフッ化カリウムの量が局所的に過剰にならないようにした。反応終了後、液温を20℃以上40℃以下の間に保ちながら更に30分間にわたり200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程>
実施例1の第二工程と同様とした。
<第三工程>
実施例2の第三工程と同様に行い、フッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[比較例1]
本比較例は、三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時添加せず、フッ化物水溶液中に、三価のクロムを含む水溶液を添加した例である。
<第一工程>
25℃に調整した35%塩化クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)444.1gを、実施例1で使用したフッ化アンモニウム水溶液342.9g中に、200rpmで撹拌しながら添加した。このときのCrに対するFの仕込モル比は(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液の液温は約25℃で維持され、pHは8.0から4.0に変化した。反応終了後、更に30分間、200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程及び第三工程>
実施例1と同じ方法により行い、フッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[比較例2]
本比較例は、三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時添加せず、三価のクロムを含む水溶液中に、フッ化物水溶液を添加した例である。
<第一工程>
実施例1で使用したフッ化アンモニウム水溶液342.9gを、25℃に調整した35%塩化クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)444.1g中に、200rpmで撹拌しながら添加した。このときのCrに対するFの仕込モル比は(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液の液温は約25℃で維持され、pHは0から4.0に変化した。反応終了後、更に30分間、200rpmの撹拌を続けて熟成を行った。
<第二工程及び第三工程>
実施例1と同じ方法により行い、フッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[比較例3]
本比較例は、三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時に添加している間の反応液の温度を高く設定した例である。
詳細には、実施例1で使用したフッ化アンモニウム水溶液と、35%塩化クロム水溶液(日本化学工業株式会社製)444.1gとを、70℃に調整した水道水125g中に液温が70℃を維持するように加熱しながら同時添加した。添加速度は、フッ化アンモニウム水溶液が11.3g/分、35%塩化クロム水溶液が14.8g/分であり、添加は連続的に30分間行った。このときのCrに対するFの仕込モル比(F/Cr)は3.0であった。添加の間、反応液のpHは3.5に維持されていた。また、添加の間、反応液を200rpmで撹拌して、塩化クロムの量に対してフッ化アンモニウムの量が局所的に過剰にならないようにした。反応終了後、液温を25℃まで放冷したが反応液に沈殿は生じておらず、第二工程以降を実施することができなかった。
[参考例]
99.9%の無水クロム酸(日本化学工業株式会社製)50.0gを水道水40.0gに溶解した。ここに還元剤として99%メタノール溶液(関東化学株式会社製)15.0gを30分間かけて加え、反応温度を約90℃に保ちつつ200rpmで撹拌しながら還元を行った。次に50%フッ化水素酸(関東化学株式会社製)59.9gを60分間かけて加え、反応を行った。その後、更に60分間、200rpmで撹拌を続けて反応液の熟成を行った。反応によって生成した沈殿を吸引濾過して濾過物を得て、この濾過物に水道水を添加して再度吸引濾過を行い、フッ化クロム(III)ケーキを得た。このフッ化クロム(III)ケーキを、110℃で8時間にわたり0.01MPaの真空下で乾燥させてフッ化クロム(III)水和物の結晶を得た。得られたフッ化クロム(III)水和物の測定結果は表1に示すとおりであった。
[評価]
実施例1ないし6、比較例1及び2、並びに参考例で得られたフッ化クロム(III)水和物について、溶解性を測定した結果を表1に示す。また、赤外線吸収スペクトル測定の結果を図1、図2(a)及び図2(b)に示す。イオンクロマトグラフィーによる測定の結果を図3ないし図10に示す。
Figure 0006469504
表1に示す結果から明らかなように、各実施例のフッ化クロム(III)水和物は、各比較例のフッ化クロム(III)水和物と比べて、水不溶分が少なく溶解性に優れる結果となった。また、無水クロム酸を原料とした参考例と比べると、各実施例のフッ化クロム(III)水和物は六価クロムを実質的に含有していなかった。特に、実施例1ないし実施例6の比較から明らかなとおり、フッ化クロムのケーキの乾燥に通風乾燥を用いた実施例2、5及び6は、真空乾燥を用いた実施例1及び4や、加熱乾燥を用いた実施例3に比べて水不溶分が少ないことが判る。
図1に示される赤外線吸収スペクトル測定においては、枠線で囲まれた1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲において各実施例では吸収ピークが観察されなかったが、比較例1及び2では吸収ピークが観察された。なお、図2aは各実施例、図2bは各比較例及び参考例における1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲により焦点を合わせた図であり、各比較例において吸収ピークが観察されていることが明確に確認できる。
図3ないし図10に示されるイオンクロマトグラフィーによる測定においては、保持時間4分以上6分以下の範囲において観察される導電度の最大ピーク値が、各実施例では0.5μS以下であるのに対し、比較例1〜2では0.5μSを超えるものとなった。

Claims (11)

  1. 赤外線吸収スペクトル測定において1500cm−1から1250cm−1までの波数範囲に吸収ピークが観察されず、且つ六価クロムの含有量が1ppm以下であるフッ化クロム(III)水和物。
  2. 水和数が1以上9以下である請求項1に記載のフッ化クロム(III)水和物。
  3. 水不溶分が0.2質量%以下である請求項1又は2に記載のフッ化クロム(III)水和物。
  4. 三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを、水性媒体へ同時に添加してフッ化クロム(III)を生成させる第一工程、
    第一工程で得られたフッ化クロム(III)を濾過後、水洗してケーキを得る第二工程、及び
    第二工程で得られたケーキを乾燥してフッ化クロム(III)水和物を得る第三工程を有するフッ化クロム(III)水和物の製造方法であって、
    第一工程において、三価のクロムを含む水溶液中のCr(III)に対するフッ化物水溶液中のFのモル比(F/Cr)を2.9以上3.3以下に設定し、
    三価のクロムを含む水溶液とフッ化物水溶液とを同時に添加している間の反応液のpHを4.0以上6.5未満に維持し、且つ該反応液の温度を0℃以上65℃以下に維持する、フッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  5. 第一工程において用いる三価のクロムを含む水溶液が、塩化クロム(III)、硝酸クロム(III)又は硫酸クロム(III)の水溶液である請求項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  6. 第一工程において用いるフッ化物水溶液が、pH7以上9未満のフッ化アンモニウム水溶液である請求項又はに記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  7. 第一工程においてフッ化クロム(III)を生成させた後、10分以上の熟成を行った後に第二工程を行う請求項ないしのいずれか一項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  8. 第三工程において、水和数が1以上9以下となるように乾燥を行う請求項ないしのいずれか一項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  9. 第三工程において、40℃以上150℃未満の温度で、0.5時間以上24時間未満にわたり加熱乾燥を行う請求項ないしのいずれか一項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  10. 0.05MPa以下の真空下に乾燥を行う請求項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
  11. 第三工程において、10℃以上100℃未満の温度で、1時間以上48時間未満にわたり通風乾燥を行う請求項ないしのいずれか一項に記載のフッ化クロム(III)水和物の製造方法。
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