以下、本発明の車両用情報入力装置の具体的な一実施形態について、図1から図4を用いて説明する。
(全体構成の説明)
図1は本発明の一実施形態である車両用情報入力装置100aの外観斜視図である。図2は図1の切断線A1−A1に沿う断面図である。図3は図1に示した操作板の背面側の構造を示す斜視図である。そして、図4は図2,図3に示したローラー部10(11)の詳細構造を示す斜視図である。
図1に示した車両用情報入力装置100aは、車両(非図示)の運転席周辺やインストルメントパネル等に取り付けて用いられる。この車両用情報入力装置100aは、開口1aが設けられたケース本体(表示装置本体)1と、開口1a内に設けられた情報表示部2を有する。この情報表示部2は、ケース本体1に保持された情報表示用の液晶表示器2aと、液晶表示器2aの表面に設けられてタッチ操作により画面操作を行うタッチパネル3(タッチ入力式表示装置)を有する。液晶表示器2aの裏面側には、図2に示すように、後述する制御部20(図5),記憶部22(図5)が実装されたプリント基板18が設置されている。なお、タッチパネル3は、例えば静電容量の変化を検出する方式で構成されており、同時に押下された複数の点の座標値をそれぞれ識別して検出することができる、所謂マルチタッチが可能となっている。
車両用情報入力装置100aは、さらに、情報表示部2の表面に沿って上下に移動可能にケース本体1に取り付けられた操作板4aを有する。更に、操作板4aは、図2に示すように、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)の表面に沿わせて配置された表面板部4sと、表面板部4sの両側に連設された側板部4t、4uを備えている。
側板部4t、4uの内側面には係合爪4t1,4u1が設けられている。この係合爪4t1,4u1を、図2に示すようにケース本体1の側部に長手方向に沿って延びるガイド溝1b、1cに係合させることにより、操作板4aの表面板部4sが情報表示部2の表面(タッチパネル3の表面)に沿って移動可能にケース本体1に取り付けられている。
操作板4aの両側部には、スイッチ表示用開口5の縁部から側板部4tまで延びる操作突部8、およびスイッチ表示用開口6の縁部から側板部4uまで延びる操作突部9がそれぞれ形成されており、操作板4aは、これらの操作突部8,9を掴んで上下方向に移動することができる。
操作板4aの背面側には、図3に示すように、操作板4aの移動方向に沿って転動可能に設置された円筒状の2つのローラー部10,11が備えられている。これらのローラー部10,11は、回転軸10a,11aの周りに回転可能に設置されている。なお、ローラー部10,11の外周面には、それぞれ、導電性材料で形成された接触部10c,11cが形成されている。なお、ローラー部10,11の詳細な構造については後述する。
操作板4aの表面板部4sの中央部には、図1に示すように、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)の表面に沿って回転可能なリング状(環状)のダイヤル12(回転操作部)が設置されている。このダイヤル12の中央部分には、情報表示部2を臨む円形状の開口7が形成されている。
このダイヤル12の背面側には、図3に示すように、タッチパネル3に臨むフリンジ部12aが形成されている。そして、このフリンジ部12aには、図3に示すように複数の位置検出部12b1,12b2,12b3が、それぞれ、タッチパネル3に接触するように備えられている。これらの位置検出部12b1,12b2,12b3は、半球状の、例えば導電ゴムで形成されており、ダイヤル12の回転とともに、タッチパネル3の表面に接触しながら移動する。
図4は、ローラー部10,11の詳細構造を示す斜視図である。なお、ローラー部10,11は同一の構造を有しているため、以下、ローラー部10の構造についてのみ説明する。ローラー部10は、回転軸10aによって操作板4a(図3)に支持されており、非導電性材料で形成された円柱状の外周面10bを有する。外周面10bの表面には、導電性材料で形成された接触部10cが、外周面10bを周回する方向に沿って形成されている。ここで、図4において、接触部10cは、ローラー部10の外周面10bを側面視した状態で、回転軸10aと直交する方向に沿って形成されている。
なお、ローラー部11も同様に、回転軸11aと、外周面11bと、接触部11cを備えている。
これらのローラー部10,11は、例えば、導電性材料で形成された接触部10c,11cを構成する芯材に対して、非導電性材料を円柱状に肉付けすることによって形成される。なお、接触部10c,11cは、ローラー部10,11の外周面10b,11bに導電性材料で形成された線材を巻き付けて形成してもよい。
また、図1に示すように、表面板部4sの左右の部分には、情報表示部2を臨む正方形状(四角形状)のスイッチ表示用開口5,6が形成されている。これらのスイッチ表示用開口5の外周である4辺5L1〜5L4は触覚式のスイッチ確認部5aとして用いられ、操作者が触れた辺の位置に対応する処理を実行する。また、スイッチ表示用開口6の4箇所の角部6C1〜6C4は触覚式のスイッチ確認部6aとして用いられ、操作者が触れた角部の位置に対応する処理を実行する。
次に、車両用情報入力装置100aの機能構成について、図5を用いて説明する。
(機能構成の説明)
車両用情報入力装置100aは、図5に示すように、液晶表示器2aと、タッチパネル3と、操作板4aと、スイッチ確認部5a,6aと、ダイヤル12と、制御部20と、記憶部22を備える。制御部20は、図5に図示しないCANバスによって、車載されたオーディオ機器32,カーナビゲーション機器34,空調装置36,インターネット送受信部38とそれぞれ接続されている。
情報表示部2は、操作板4aによって上下2つの領域に分割されており、図1に示すように、操作板4aより上方の領域にコンテンツAを表示させ、操作板4aより下方の領域にコンテンツBを表示させるような表示制御が行われる。
この車両用情報入力装置100aは、運転者をはじめとする車両の乗員が必要な情報操作を容易に行うことができるよう考慮されて設計された情報表示操作系をなしている。すなわち、車両の乗員は、タッチパネル3と、操作板4aと、スイッチ確認部5a,6aと、ダイヤル12を操作して必要な情報ソース(オーディオ,カーナビゲーション,空調,インターネット等)にアクセスし、所望の操作を行うことができる。
制御部20は、タッチパネル押下位置検出部24と、ダイヤル回転方向、回転量検出部26と、スイッチ接触位置検出部28と、操作板位置特定部30と、動作制御部31を備えている。
タッチパネル押下位置検出部24は、接触部10c,11c、位置検出部12b1,12b2,12b3、および操作者の手指によって押下された、タッチパネル3の位置座標を検出する。タッチパネル3はマルチタッチされたことを検出可能であるため、押下された複数の位置座標をそれぞれ検出することができる。
ダイヤル回転方向、回転量検出部26は、位置検出部12b1,12b2,12b3によって押下されたタッチパネル3の位置座標に基づいて、ダイヤル12の回転方向と回転量を検出する。
スイッチ接触位置検出部28は、スイッチ確認部5a,6aの出力に基づいて、触覚式スイッチの操作箇所を検出する。
操作板位置特定部30は、接触部10c,11cによって押下されたタッチパネル3の位置座標に基づいて、タッチパネル3に対する操作板4aの位置を特定する。
動作制御部31は、操作板4aの位置,タッチパネル3の押下位置,ダイヤルの回転方向と回転量,スイッチ確認部5a,6aの出力に基づいて、液晶表示器2aの表示制御、および車両用情報入力装置100aに接続された周辺機器(オーディオ,カーナビゲーション,空調,インターネット等)の制御を行う。
記憶部22には、車両用情報入力装置100aを動作させるために必要なデータやテーブルが記憶されており、制御部20から必要に応じてアクセスされて、必要なデータやテーブルが逐次読み出されて使用される。
(接触点の移動軌跡の説明)
ローラー部10,11の外周面10b,11bに形成された接触部10c,11cは、常にタッチパネル3に接触した状態となっており、図6に示すように、タッチパネル3からは、接触部10cとタッチパネル3の接触点Pi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))と、接触部11cとタッチパネル3の接触点Qi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xqi(t),yqi(t))が、それぞれ逐次出力される。このとき、操作板4aを上下に移動させると、ローラー部10,11の転動に伴って接触部10c,11cがそれぞれ移動するため、接触部10cによる接触点Piの移動軌跡10rと、接触部11cによる接触点Qiの移動軌跡11rが得られる。
なお、2つの接触部10c,11cは、図6に示すように間隔wを隔てて設置されているため、接触部10cによる接触点Piの移動軌跡10rと、接触部11cによる接触点Qiの移動軌跡11rは、間隔wの平行線となる。
操作板位置特定部30は、接触点Piの時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))の時間変化によって形成される移動軌跡10rと、接触点Qiの時刻tにおける座標値(xqi(t),yqi(t))の時間変化によって形成される移動軌跡11rに基づいて、操作板4aの位置を特定する。
具体的には、操作板位置特定部30は、まず、タッチパネル押下位置検出部24で検出された複数の押下位置を、位置検出部12b1,12b2,12b3の接触位置と、2つの接触部10c,11cの接触点と、車両用情報入力装置100aの操作者が押下したタッチパネル3の押下位置と、に識別する。
次に、識別された接触部10c,11cの接触点の座標値に対して、それぞれの接触点のうち、同一の接触部によって生じたと考えられる接触点の座標値の時間変化を検出する。このようにして検出された全ての接触点の座標値の時間変化の中から、左右方向に所定の間隔wを有して、かつ平行に延びた移動軌跡10r,11rのペアを抽出して、その移動軌跡10r,11rを操作板4aの移動によって生じた移動軌跡であると判断する。そして、移動軌跡10rの終点10sと移動軌跡11rの終点11sに基づいて、操作板4aの現在位置を特定する。具体的には、図6に示す終点10sの上下方向位置、または終点11sの上下方向位置を操作板4aの現在位置とする。
なお、操作板4aが移動せずに静止しているときは、操作板位置特定部30によって、左右方向に所定の間隔wを有して時間とともに座標位置が変化しない接触点のペアが観測される。このような場合、操作板位置特定部30は、検出された接触点の上下方向位置に操作板4aが静止しているものと判断する。
操作板4a以外のタッチパネル3の領域のうち、2つの接触部10c,11cと同じ相対関係にある2点が、所定の時間に亘って意図的に押下され続けた場合であっても、2点を押下し続けるのには身体的負担がかかるため、時間経過とともに押下された接触点の座標位置に変化が生じる可能性が高い。操作板位置特定部30は、接触点の移動軌跡の動きを検出することによって、操作板4aの接触とタッチパネル3の故意の押下を識別することができる。
なお、操作板位置特定部30において操作板4aの位置の特定を行うには、接触点の座標位置の時間変化を計測する必要があるため、所定の時間を要する。この位置特定に要する時間は、操作板位置特定部30における演算速度等に基づいて決定されるが、例えば1秒程度に設定される。そして、その1秒の間の接触点の座標位置の変化(例えば、時間間隔Δt=100msec毎に検出された10個の接触点の座標位置の変化)が操作板位置特定部30で分析されて、操作板4aの位置が特定される。
次に、接触点の移動軌跡の検出方法と、移動軌跡に基づいて、操作板4aの接触とタッチパネル3の故意の押下を識別する方法について、図7A,図7B,図7Cを用いて説明する。
(移動軌跡の検出方法と移動軌跡の分析方法の説明)
図7Aは、操作板4aの位置を移動させたときの接触点Piの移動軌跡10rと接触点Qiの移動軌跡11rを検出した結果を示す図である。
時刻tにおいて2つの接触点Pi(xpi(t),ypi(t)),Qi(xqi(t),yqi(t))が検出されて、時刻t+Δtにおいて2つの接触点Pi+1(xpi(t+Δt),ypi(t+Δt)),Qi+1(xqi(t+Δt),yqi(t+Δt))が検出されたとする。
このとき、操作板位置特定部30は、同時刻に検出された2つの接触点Pi(xpi(t),ypi(t)),Qi(xqi(t),yqi(t))の上下方向位置が等しく(ypi(t)=yqi(t))、なおかつ、2つの接触点Pi,Qiの左右方向の間隔が所定の間隔wであるとき(xqi(t)−xpi(t)=w)、2つの接触点Pi,Qiは操作板4aによって生じた接触点である可能性が高いと判断する。
そして、続けて検出された2つの接触点Pi+1,Qi+1の左右方向位置が、ともに接触点Pi,Qiの左右方向位置とそれぞれ等しいとき、操作板位置特定部30は、接触点Piと接触点Pi+1は移動軌跡10rを構成して、接触点Qiと接触点Qi+1は移動軌跡11rを構成すると判断する。
操作板位置特定部30は、前述した接触点の検出と移動軌跡を構成するか否かの判断を繰り返して実行し、移動軌跡の終点10s,11sを操作板4aの位置であると判断する。
図7Bは、操作板4aが静止しているときの接触点Piの移動軌跡10rと接触点Qiの移動軌跡11rを検出した結果を示す図である。
操作板4aが静止しているときは、接触点Pi,Qiは時間経過にかかわらず同じ位置となる。したがって、移動軌跡10r,11rは発生しない。そして、2つの接触点Pi,Qiの左右方向の間隔wも一定となるため、操作板位置特定部30は、操作板4aが静止しているものと判断する。
図7Cは、タッチパネル3の上下位置が等しい、間隔wだけ離れた2点を、手指F1,F2で意図的に押下し続けたときに得られる、接触点Piと接触点Qiの分布を検出した結果の一例を示す図である。
このとき、一般に、接触点Piと接触点Qiの位置は、時間とともに不規則に変動して観測される。すなわち、操作板位置特定部30は、2つの接触点Pi,Qiの上下方向位置のずれ、または2つの接触点Pi,Qiの左右方向の間隔の変動が検出されたときに、接触点Piと接触点Qiは意図的に押下された点であると判断する。
なお、操作板位置特定部30において行われる具体的な処理の流れについては後述する。
次に、特定された操作板4aの移動位置に応じて、車両用情報入力装置100aのコンテンツ表示領域が変更される様子について、図8(a),(b)を用いて説明する。
(車両用情報入力装置の動作内容の説明)
制御部20(図5)は、タッチパネル3から出力される、接触部10c,11cの接触位置に基づいて、図8(a)に示すように、タッチパネル3を上下に分ける操作板4aの上側の表示領域に第1のコンテンツ(コンテンツA)を表示させ、また、タッチパネル3の操作板4aよりも下側の表示領域に第2のコンテンツ(コンテンツB)を表示制御するようになっている。
この際、操作板4aを下方向に移動操作すると、タッチパネル3に対する接触部10c,11cの接触位置が変化する。制御部20(図5)は、新たな接触位置に基づいてタッチパネル3に対する操作板4aの位置を求めて、図8(b)に示すように、コンテンツA,Bの表示領域の大きさを操作板4aの位置に合わせて変更する。このとき、コンテンツA,Bの表示形態は、表示領域の大きさに応じて変更されるが、その図柄は、コンテンツ毎に予め設定されて、記憶部22(図5)に記憶されている。
なお、コンテンツA,Bの種類としては、例えば、「ナビ」、「音楽」、「車両情報」、「空調設定」、「インターネットブラウザ」などを選択することができるが、勿論、コンテンツの種類はこれらに限定されるものではない。
また、コンテンツとして「ナビ」を選択した場合、2本の指を閉じたり開いたりする、いわゆるピンチイン・ピンチアウトの操作によって、地図画面を拡大・縮小表示することができる。さらに、画面をタッチして上下左右にスライド操作することにより、地図を上下左右にスクロールすることができる。
次に、実施例1において、操作板4aの位置を特定する具体的な処理の流れについて、図9のフローチャートを用いて説明する。
(操作板位置特定処理の流れの説明)
(ステップS10)時刻tを0にセットする。
(ステップS20)時刻t=0における接触点を全て検出して記憶する。
(ステップS30)前回の接触点の検出後、時刻がΔt経過したか否かを判定する。時刻がΔt経過したらステップS40に進み、それ以外のときはステップS30を繰り返す。
(ステップS40)接触点を全て検出して記憶する。
(ステップS50)同時に検出された接触点のうち、上下方向の位置が等しい接触点のペアを全て抽出する。
(ステップS60)ステップS50で抽出された接触点のペアについて、左右の間隔がwであるか否かを判定する。左右の間隔がwであるときはステップS70に進み、それ以外のときはステップS60を繰り返す。
(ステップS70)全ての接触点のペアに対して左右の間隔の評価が完了したか否かを判定する。評価が完了したときはステップS80に進み、それ以外のときはステップS60に戻る。
(ステップS80)接触点のペアがステップS60の条件を満足するときは、接触点のペアは操作板4aの移動軌跡を形成していると判断する。
(ステップS90)所定の時間(例えば1秒)が経過したか否かを判定する。所定の時間を経過したときはステップS100に進み、それ以外のときはステップS30に戻る。
(ステップS100)移動軌跡の終点の位置に基づいて操作板4aの位置を特定する。
(ステップS110)車両のイグニッションスイッチがOFFか否かを判定する。イグニッションスイッチがOFFのときは図9の処理を終了し、それ以外のときはステップS30に戻る。
次に、本発明の車両用情報入力装置の第二の実施形態である車両用情報入力装置100b(図1)について、図10から図14を用いて説明する。なお、実施例2の機能構成は実施例1の機能構成(図5)と共通であるため、機能ブロックについては、図5と同一の符号を用いて説明する。
図10は、図1の切断線A1−A1に沿う断面図である。図11は図1に示した操作板の背面側の構造を示す斜視図である。図12は図10,図11に示したローラー部の詳細構造を示す斜視図である。
図1に示した車両用情報入力装置100bは、情報表示部2の表面に沿って上下に移動可能にケース本体1に取り付けられた操作板4bを有する。操作板4bには、実施例1で説明したローラー部10,11(図2)の代わりに、図10,図11に示すローラー部13が備えられている。このローラー部13は、回転軸13aの周りに回転可能に設置されている。なお、ローラー部13の外周面13bには、導電性材料で形成された接触部13c,13dが形成されている。なお、ローラー部13の詳細な構造については後述する。
図12は、ローラー部13の詳細構造を示す斜視図である。ローラー部13は、回転軸13aによって操作板4b(図10,図11)に支持されており、非導電性材料で形成された円柱状の外周面13bを有する。外周面13bの表面には、導電性材料で形成された接触部13c,13dが、それぞれ、外周面13bを周回する方向に沿って形成されている。ここで、図12において、接触部13c,13dは、ともに、ローラー部13の外周面13bを側面視した状態で、一定の間隔vを隔てて、回転軸13aと直交する方向に沿って平行に形成されている。
接触部13c,13dは、常にタッチパネル3の表面に接触した状態となっており、操作板4bを移動させたとき、図13に示すように、タッチパネル3からは、接触部13cとタッチパネル3の接触点Pi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))と、接触部13dとタッチパネル3の接触点Qi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xqi(t),yqi(t))が、それぞれ逐次出力される。このとき、操作板4bを上下方向に移動させると、ローラー部13の転動に伴って接触部13c,13dがそれぞれ移動するため、接触部13cによる接触点Piの移動軌跡13r1と、接触部13dによる接触点Qiの移動軌跡13r2が得られる。
図13は、操作板4bの位置を移動させたときの接触点Piの移動軌跡13r1と接触点Qiの移動軌跡13r2を検出した結果を示す図である。
図13に示す2本の移動軌跡13r1,13r2は、実施例1において、2個のローラー部10,11(図6)にそれぞれ設けられた接触部10c,11cの接触点がそれぞれ描く移動軌跡10r,11rと同様に、平行な2本の点列となる。そして、2本の移動軌跡13r1,13r2は、間隔vをなす。すなわち、実施例1では2個のローラー部10,11を用いて実現した構成を、1個のローラー部13のみで実現することができる。
なお、本実施例2において、操作板4bの位置を特定する処理は、実施例1で説明した操作板位置特定処理(図9)と同様に行われる。
すなわち、図14に示すように、接触点Piの時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))の時間変化によって形成される移動軌跡13r1と、接触点Qiの時刻tにおける座標値(xqi(t),yqi(t))の時間変化によって形成される移動軌跡13r2に基づいて、操作板4bの位置を特定する。
具体的には、操作板位置特定部30(図5)が、タッチパネル押下位置検出部24で検出された複数の接触点の座標値に対して、それぞれの接触点のうち、同一の接触部によって生じたと考えられる接触点の座標値の時間変化を検出する。こうして検出された全ての接触点の座標値の時間変化の中から、図14に示す左右の間隔v1,v2,…,vnのうち、所定の間隔v(図13)を有して、かつ平行に延びた移動軌跡13r1,13r2のペアを抽出して、その移動軌跡13r1,13r2を操作板4bの移動によって生じた移動軌跡であると判断する。そして、移動軌跡13r1の終点13s1と移動軌跡13r2の終点13s2の座標に基づいて、操作板4bの現在位置を特定する。具体的には、終点13s1の上下方向位置、または終点13s2の上下方向位置を操作板4bの現在位置とする。
なお、操作板4bが静止しているときは、実施例1で説明した(図7B)のと同様に、接触点Pi,Qiは時間経過にかかわらず同じ位置となり、移動軌跡13r1,13r2は発生しない。そして、2つの接触点Pi,Qiの左右方向の間隔vも一定となるため、操作板位置特定部30は、操作板4bが静止しているものと判断する。
また、2つの接触部10c,11cの間隔vは、2本の指でタッチパネル3を同時に押下したときに生じる2点の最小間隔に比べて、より小さい間隔に設定することができるため、操作板4bの位置を示す接触点と故意のタッチによる接触点とを確実に識別することができる。
次に、本発明の車両用情報入力装置の第三の実施形態である車両用情報入力装置100c(図1)について、図15から図17を用いて説明する。なお、実施例3の機能構成は実施例1の機能構成(図5)と共通であるため、機能ブロックについては、図5と同一の符号を用いて説明する。
車両用情報入力装置100cが有する操作板4c(図1)の背面側には、図15に示すローラー部14が備えられている。このローラー部14は、回転軸14aによって操作板4cに支持されており、非導電性材料で形成された円柱状の外周面14bを有する。外周面14bの表面には、導電性材料で形成された接触部14cが、外周面14bを周回する方向に沿って形成されている。ここで、接触部14cは、ローラー部14の外周面14bを側面視した状態で、一定の傾斜角θを有して螺旋状に形成されている。また、図15に示すように、接触部14cは、外周面14bを1周して同じ母線を横切る位置の間隔がkとなるように形成されている。
接触部14cは、常にタッチパネル3の表面に接触した状態となっており、操作板4cを移動させたとき、図16に示すように、タッチパネル3からは、接触部14cとタッチパネル3の接触点Pi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))が逐次出力される。このとき、操作板4cを上下に移動させると、ローラー部14の転動に伴って接触部14cが移動するため、接触部14cによる接触点Piの移動軌跡14rが得られる。この移動軌跡14rは、図16に示すように傾斜角θを有する鋸波状を呈する。
ここで、図15に示した接触部14cは、ローラー部14の外周面14bを1周するように設置されているが、タッチパネル3の表面を転動した際に、常に接触点Piが形成されるよう、接触部14cの両端点は、外周面14bに沿って一部重複するように設置されている。すなわち、ローラー部14がタッチパネル3の表面を転動した際に、接触点Piの移動軌跡14rは、図16に示すように重複領域Jを形成するようになっている。
このように、1個のローラー部14の外周面に一定の傾斜角θを有する接触部14cを設けて、タッチパネル3の表面上に接触点Piを形成することにより、ローラー部14が転動した際に生じる接触点Piの移動軌跡14rを、傾斜角θに応じた所定の方向に沿って延びる点列とすることができる。このような所定の方向に沿って延びる移動軌跡14rと同じ軌跡を、タッチパネル3の表面で意図的になぞって再現するのは非常に困難であるため、本実施例3の構成とすることにより、操作板4cの位置を示す接触点Piと故意の押下による接触点とを確実に識別することができる。
次に、実施例3において、操作板4cの位置を特定する具体的な処理の流れについて、図17のフローチャートを用いて説明する。
(操作板位置特定処理の流れの説明)
(ステップS200)時刻tを0にセットする。
(ステップS210)時刻t=0における接触点を全て検出して記憶する。
(ステップS220)前回の接触点の検出後、時刻がΔt経過したか否かを判定する。時刻がΔt経過したらステップS230に進み、それ以外のときはステップS220を繰り返す。
(ステップS230)接触点を全て検出して記憶する。
(ステップS240)前回検出された接触点と、新たに検出された接触点のうち、傾斜角θに沿って並んだペアがあるか否かを判定する。ペアがあったときはステップS250に進み、それ以外のときはステップS270に進む。
(ステップS250)前回の終点(接触点)と新たな終点(接触点)の左右方向距離がk以下であるか否かを判定する。k以下であるときはステップS260に進み、それ以外のときはステップS270に進む。
(ステップS260)新たな接触点を移動軌跡の終点とする。
(ステップS270)所定の時間(例えば1秒)が経過したか否かを判定する。所定の時間を経過したときはステップS280に進み、それ以外のときはステップS220に戻る。
(ステップS280)移動軌跡の終点の位置に基づいて操作板4cの位置を特定する。
(ステップS290)車両のイグニッションスイッチがOFFか否かを判定する。イグニッションスイッチがOFFのときは図17の処理を終了し、それ以外のときはステップS220に戻る。
次に、本発明の車両用情報入力装置の第四の実施形態である車両用情報入力装置100d(図1)について、図18から図22を用いて説明する。なお、実施例4の機能構成は実施例1の機能構成(図5)と共通であるため、機能ブロックについては、図5と同一の符号を用いて説明する。
車両用情報入力装置100dが有する操作板4dの背面側には、図18に示すように、2つのローラー部15,16が備えられている。これら2つのローラー部15,16は回転軸15aによって連結されて、操作板4dに支持されており、それぞれ、非導電性材料で形成された円柱状の外周面を有する。なお、2つのローラー部15,16を連結する長い回転軸15aが必要となるため、ローラー部15,16は、実施例1から実施例3とは異なり、操作板4dの一方の長辺側にオフセットした位置に設置される。
ローラー部15の外周面には、導電性材料で形成された接触部15cが、外周面を周回する方向に沿って形成されている。また、ローラー部16の外周面には、導電性材料で形成された接触部16cが、外周面を周回する方向に沿って形成されている。
接触部15cは、図19に示すように、ローラー部15の外周面を側面視した状態で、一定の傾斜角θ1を有して螺旋状に形成されている。また、接触部16cは、図19に示すように、ローラー部16の外周面を側面視した状態で、一定の傾斜角θ2を有して螺旋状に形成されている。なお、図19において、θ1>θ2となっている。
また、図19に示すように、接触部15cと接触部16cの一方の端点同士は、間隔Kを隔てて設置されているものとする。
さらに、図19に示すように、接触部15cが、外周面15bを1周して同じ母線を横切る間隔k1と、接触部16cが、外周面16bを1周して同じ母線を横切る位置の間隔k2は、k1<k2になっている。
接触部15cは、常にタッチパネル3の表面に接触した状態となっており、操作板4dを移動させたとき、図20に示すように、タッチパネル3からは、接触部15cとタッチパネル3の接触点Pi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xpi(t),ypi(t))が逐次出力される。このとき、操作板4dを上下に移動させると、ローラー部15の転動に伴って接触部15cが移動するため、接触部15cによる接触点Piの移動軌跡15rが得られる。この移動軌跡15rは、図20に示すように傾斜角θ1を有する鋸波状を呈する。
同様に、接触部16cは常にタッチパネル3の表面に接触した状態となっており、操作板4dを移動させたとき、図20に示すように、タッチパネル3からは、接触部16cとタッチパネル3の接触点Qi(i=1,2,…,n)の時刻tにおける座標値(xqi(t),yqi(t))が逐次出力される。このとき、操作板4dを上下に移動させると、ローラー部16の転動に伴って接触部16cが移動するため、接触部16cによる接触点Qiの移動軌跡16rが得られる。この移動軌跡16rは、図20に示すように傾斜角θ2を有する鋸波状を呈する。
なお、ローラー部15とローラー部16は回転軸15aによって連結されているため、接触部15cと接触部16cの相対位置関係は常に一定に保たれる。すなわち、移動軌跡15rと移動軌跡16rの間隔は、後述するように一定の規則に基づいたものとなる。
ここで、図19に示した接触部15cは、ローラー部15の外周面15bを1周するように設置されているが、タッチパネル3の表面を転動した際に、常に接触点Piが形成されるよう、接触部15cの両端点は、外周面15bに沿って一部重複するように設置されている。すなわち、ローラー部15がタッチパネル3の表面を転動した際に、接触点Piの移動軌跡15rは、図20に示すように重複領域Jを形成するようになっている。
同様に、図19に示した接触部16cは、ローラー部16の外周面16bを1周するように設置されているが、タッチパネル3の表面を転動した際に、常に接触点Qiが形成されるよう、接触部16cの両端点は、外周面16bに沿って一部重複するように設置されている。すなわち、ローラー部16がタッチパネル3の表面を転動した際に、接触点Qiの移動軌跡16rは、図20に示すように重複領域Jを形成するようになっている。
次に、図21を用いて、移動軌跡15r,16rの情報に基づいて、操作板4dの位置を特定する方法について説明する。前述したように、移動軌跡15rと移動軌跡16rの間隔は、一定の規則に基づいたものとなっている。すなわち、図21において、移動軌跡15rの傾斜角θ1と移動軌跡16rの傾斜角θ2はそれぞれ一定であり、なおかつ、接触部15cと接触部16cの相対位置関係は一定に保たれているため、例えば、移動軌跡15rを構成する接触点Piが見つかれば、その接触点Piの上下方向位置と、接触点Piの基準位置からの変位量αiに基づいて、接触点Piと同時に形成される接触点Qiの位置を予測することができる。
具体的には、移動軌跡15r上の接触点Pi(xpi(t),ypi(t))が検出されたとき、移動軌跡15rを構成する最も左方の複数の接触点(P1,P2,…)によって形成される線分Lを基準位置として、線分Lから接触点Piまでの変位量αiに基づいて、(式1)によって、接触点Piと接触点Qi(接触点Piと同時に検出される接触点)の接触点間距離βiを算出することができる。
βi=ypi(t)/tanθ2+K−αi (式1)
すなわち、(式1)を満足する接触点Piと接触点Qiのペアを検出することができれば、タッチパネル3に対する操作板4dの位置を特定することができる。
次に、実施例4において、操作板4dの位置を特定する具体的な処理の流れについて、図22のフローチャートを用いて説明する。
(操作板位置特定処理の流れの説明)
(ステップ300)時刻tを0にセットする。
(ステップ310)時刻t=0における接触点を全て検出して記憶する。
(ステップ320)前回の接触点の検出後、時刻がΔt経過したか否かを判定する。時刻がΔt経過したらステップS330に進み、それ以外のときはステップS320を繰り返す。
(ステップ330)接触点を全て検出して記憶する。
(ステップ340)同時に検出された接触点のうち、上下方向の位置が等しい接触点のペアを全て抽出する。
(ステップ350)ステップS340で抽出した接触点のペアの左右方向距離が、接触点間距離βiと等しいか否かを判定する。条件を満足するときはステップS360に進み、それ以外のときは、別の接触点のペアに対してステップS350を繰り返す。
(ステップ360)全ての接触点のペアに対して左右の間隔の評価が完了したか否かを判定する。評価が完了したときはステップS370に進み、それ以外のときはステップS350に戻る。
(ステップ370)ステップS350の条件を満たす接触点のペアを、移動軌跡15r,16rの終点とする。
(ステップ380)所定の時間(例えば1秒)が経過したか否かを判定する。所定の時間を経過したときはステップS390に進み、それ以外のときはステップS320に戻る。
(ステップ390)移動軌跡の終点の位置に基づいて操作板4dの位置を特定する。
(ステップ400)車両のイグニッションスイッチがOFFか否かを判定する。イグニッションスイッチがOFFのときは図22の処理を終了し、それ以外のときはステップS320に戻る。
以上説明したように、実施例1に係る車両用情報入力装置100aによれば、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)の表面の一部を覆う操作板4aの背面側に、外周面10bに接触部10cが形成されたローラー部10と、外周面11bに接触部11cが形成されたローラー部11を備えて、操作板4aをタッチパネル3の表面に沿って移動させたときに、操作板位置特定部30が、接触部10cの接触点Piの位置の時間変化を表す移動軌跡10rの位置と、接触部11cの接触点Qiの位置の時間変化を表す移動軌跡11rの位置と、に基づいて、タッチパネル3に対する操作板4aの位置を特定するため、操作板4aの位置を、意図的なタッチパネル3の押下と識別して確実に特定することができる。
また、実施例2に係る車両用情報入力装置100bによれば、操作板4bは複数の接触部13c,13dを有するため、特定の位置関係にある2つの接触点Pi,Qiでタッチパネル3(タッチ入力式表示装置)と接触する。したがって、操作板4bの位置を、意図的なタッチパネル3の押下と、より一層確実に識別することができる。
そして、実施例3に係る車両用情報入力装置100cによれば、接触部14cは、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)との接触点Piの移動軌跡14rが、ローラー部14の移動方向に対して傾斜角θを有して形成されるように設けられるため、操作板4cの位置を示す接触点Piと故意の押下による接触点とを確実に識別することができる。
さらに、実施例4に係る車両用情報入力装置100dによれば、複数の接触部15c,16cは、ローラー部15,16の回転とともに形成される接触点Pi,Qiの移動軌跡15r,16rが、ローラー部15,16の移動方向に対して異なる傾斜角θ1,θ2を有して形成されるように設けられるため、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)に対する操作板4dの位置を容易かつ確実に特定することができる。
また、実施例4に係る車両用情報入力装置100dによれば、複数のローラー部15,16の回転軸15aが互いに連結されて、複数のローラー部15,16がそれぞれ接触部15c,16cを備えるため、複数のローラー部15,16にそれぞれ形成された接触部15c,16cの相対位置関係を保持することができる。そのため、一方の接触部15cの接触点Piの位置に基づいて、他方の接触部16cの接触点Qiの位置を容易に推定することができる。したがって、検出された接触点の位置が接触部15c,16cによるものであるか否かを容易に判定することができ、これによって、タッチパネル3(タッチ入力式表示装置)に対する操作板4dの位置を容易かつ確実に特定することができる。
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
例えば、実施例3において、接触部14cは一定の傾斜角θを有するように形成し、実施例4において、接触部15cは一定の傾斜角θ1を有し、接触部16cは一定の傾斜角θ2を有するように形成したが、これらの傾斜角は一定である必要はない。すなわち、傾斜角が場所によって変化するように形成しても(接触部が曲線形状、例えば正弦波形状をなすように形成しても)、同様の作用効果を得ることができる。
また、実施例4では、2つのローラー部15,16に、それぞれ接触部15c,16cを形成したが、これは、1つのローラー部に傾斜角が異なる2つの接触部を形成しても同様の作用効果を得ることができる。
さらに、図23に示すように、回転軸17aによって支持されたローラー部17の外周面17bに、点線状の接触部17cを形成しても、実施例1から実施例4で説明したのと同様の作用効果を得ることができる。すなわち、接触点の移動軌跡が、タッチパネルを意図的に押下したときと、明らかに異なるパターンを呈するような接触部を形成すれば、実施例1から実施例4と同様の作用効果を得ることができる。