JP6467184B2 - ねじの製造方法およびねじ - Google Patents
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特許文献1において、このねじの頭部に設けられた係合凹部は、ドライバビットで締め付けることはできるが、緩めることができない構造とされている。さらに、ねじの頭部の周縁部に1以上の凹部が設けられ、この凹部に専用工具を接触させることにより、ねじを緩めることができる。
前端にねじ部が設けられた軸部と、
前記軸部の後端に設けられて前記軸部より大径の頭部と、
締め付け工具が締め付け側に回転するときに係合し、かつ、反締め付け側に回転するときに係合しない、前記頭部の後面に設けられた係合凹部と、を有し、
前記頭部の外周面には、後方から見て前記頭部の径方向に互いに対向しない位置に設けられて前後方向に延びる3つ以上の奇数個の溝部を有し、
前記溝部の前端に、後方から見て、径方向外側に膨らんで張り出した張り出し部が設けられている、ねじの製造方法であって、
円柱状のワークを用意する工程と、
前記軸部と同じ径を有する軸凹部を有する第一金型と、前記第一金型に対して接近可能で、前記軸部の径より大径で前記第一金型に向かって拡径する予備加工凹部を有する第二金型とを用意する工程と、
前記ワークの一端を前記第一金型の前記軸凹部で保持し、前記ワークの他端を前記第二金型の予備加工凹部に接触させながら前記第二金型を前記第一金型に対して接近させて前記ワークを塑性変形させて、軸部と、前記軸部より大径の膨出部を備えた第一中間素材を得る工程と、
前記第一金型に対して接近可能で、前記係合凹部および前記溝部の形状を転写可能な仕上げ加工凹部を備えた第三金型を用意し、
前記第一中間素材の前記膨出部を前記第三金型の前記仕上げ加工凹部で押圧しながら、前記第三金型を前記第一金型に対して近づけて前記第一中間素材を塑性変形させ、前記仕上げ加工凹部で前記係合凹部および前記溝部の形状を転写する際に塑性流動させた肉で前記張り出し部を形成して、前記係合凹部、前記溝部および前記張り出し部を備えた頭部と、軸部とを備えた第二中間素材を得る工程と、
前記第二中間素材の前記軸部にねじ部を形成して前記ねじを得る工程と、を有し、
前記第一中間素材を得る工程において、前記膨出部のうち、前記第一金型に近い部位の径が前記第二金型に近い部位の径よりも大きくなるように加工する、ねじの製造方法。
前端にねじ部が設けられた軸部と、
前記軸部の後端に設けられて前記軸部より大径の頭部と、
締め付け工具が締め付け側に回転するときに係合し、かつ、反締め付け側に回転するときに係合しない、前記頭部の後面に設けられた係合凹部と、を有する、ねじであって、
前記頭部の外周側面には、後方から見て前記頭部の径方向に互いに対向しない位置に設けられ前後方向に延びる3つ以上の奇数個の溝部を有し、
前記溝部の前端に、後方から見て、径方向外側に膨らんで張り出した張り出し部が設けられ、上記のいずれかの製造方法により製造される。
図1は、本実施形態に係るねじ11を示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)におけるI−I断面図である。図2は、ねじ11を緩める締結解除工具31を示す図であって、(a)はねじ11との係合側から視た正面図、(b)は斜視図である。
図示したねじ11は、図1の(a)に示したように、後方から見て時計回り方向が締め付け方向Aとされ、反時計回り方向が反締め付け方向Bとされている。ねじ11は、締め付け方向Aへ回転されることで被締結物を締結し、反締め付け方向Bへ回転されることで被締結物から外される。
係合凹部21は、その内周部が、頭部12の後方へ向かって次第に広がる形状に形成されている。この係合凹部21の内周面は、4つの係合段部23により不連続な面とされている。隣り合う係合段部23の間は傾斜面24によって連続している。傾斜面24は、係合段部23から反締め付け方向B側に向かって、滑らかに径方向の中央側に盛り上がる連続面として形成されている。
また、頭部12の係合凹部21に挿し込んだ締め付け工具を反締め付け方向Bへ回転させると、締め付け工具の突起が各傾斜面24を摺動する。これにより、内周部が頭部12の後方へ向かって次第に広がる形状の係合凹部21において、締め付け工具が傾斜面24に押されて頭部12の後方側へ押し出される。このように、被締結物を締結していたねじ11を係合凹部21に挿し込んで反締め付け方向Bへ回転させても、締め付け工具は頭部12の係合段部23に係合しない。つまり、ねじ11は、締め付け工具によって反締め付け方向Bへ回転されず、締結状態が維持される。
ねじ係合部32は、ねじ11の頭部12を収容可能な収容凹部35を有している。収容凹部35は、先端に開口を有している。この収容凹部35には、その開口側における内縁に、頭部12の溝部25と同数である3つの係合突起部36を有している。これらの係合突起部36は、溝部25と同様に、周方向に等間隔に配置されている。係合突起部36は、先端側から見て中心側へ円弧状に突出する形状に形成されている。
締結解除工具31の把持部33は、後端側から見て正六角形状に形成されており、電動ドライバの六角形のビットや六角形のハンドドライバが係合可能とされている。
図3は、ねじ11の製造方法を説明する図であって、(a)はワーク41の側面図、(b)は本実施形態における第一中間素材41Aの側面図、(c)は比較例における第一中間素材41Cの側面図である。図4は、本実施形態に係るねじ11の製造方法を説明する図であって、(a)は第一中間素材形成工程を説明する側断面図、(b)は第二中間素材形成工程を説明する側断面図である。図5は、第三金型71の形状を説明する第三金型71の斜視図である。
ねじ11となるワーク41を用意する。このワーク41は、金属材料からなるもので、図3の(a)に示すように、軸部13と同じ径を有する所定長さの円柱状に形成したものである。
図4の(a)に示すように、第一金型51と、第二金型61とを用意する。
第一金型51は、上方側が開口した軸凹部52を有している。この軸凹部52は、穴部53に中子54を挿し込むことで形成されている。中子54は上下方向に移動可能に設けられている。軸凹部52は、軸部13と同じ径を有しており、この軸凹部52にワーク41が挿し込まれる。ワーク41は、一端が軸凹部52に挿し込まれることで、他端が上方の第二金型61側へ突出された状態で第一金型51に保持される。
第二金型61は、第一金型51に対して接近可能とされている。第二金型61は、下方側が開口した予備加工凹部62を有している。この予備加工凹部62は、穴部63に中子64を挿し込むことで形成されている。予備加工凹部62は、軸部13の径より大径で第一金型51に向かって拡径されている。
第一金型51の軸凹部52にワーク41を挿し込み、ワーク41を第一金型51に保持させる。この状態で、上方に突出されているワーク41の他端を第二金型61の予備加工凹部62に接触させながら第二金型61を第一金型51に対して接近させる。このようにすると、図4の(a)に示すように、ワーク41は、その他端が第二金型61によって押し潰され、予備加工凹部62の内形に倣って外方へ膨出するように塑性変形される。これにより、図3の(b)に示すように、ワーク41の他端には、軸部13より大径の膨出部42が形成される。つまり、この第一中間素材形成工程によって、軸部13と、この軸部13より大径の膨出部42とを備えた第一中間素材41Aが得られる。
次に、図4の(b)に示すように、第三金型71を用意する。第三金型71は、ねじ11の頭部12を仕上げ加工するための金型であり、第一金型51に対して接近可能とされている。
図5に示すように、第三金型71は、第一金型51側に、仕上げ加工凹部72を有している。この仕上げ加工凹部72は、ねじ11の頭部12の係合凹部21および溝部25の形状を転写可能な凹部である。この仕上げ加工凹部72には、係合凹部21を形成する係合凹部形成凸部73および溝部25を形成する溝部形成凸部74を有している。
第一中間素材41Aの膨出部42を第三金型71の仕上げ加工凹部72で押圧しながら、第三金型71を第一金型51に対して近づける。これにより、図4の(b)に示すように、第一中間素材41Aの膨出部42を塑性変形させ、係合凹部形成凸部73および溝部形成凸部74で係合凹部21および溝部25を形成する。そして、第三金型71の仕上げ加工凹部72の形状を第一中間素材41Aに転写する際に、塑性流動させた肉で頭部12の張り出し部26を形成する。つまり、この第二中間素材形成工程によって、係合凹部21、溝部25および張り出し部26を備えた頭部12と、軸部13とを備えた第二中間素材41Bが得られる。
中子54を上方へ移動させて第一金型51の軸凹部52から第二中間素材41Bの軸部13を押し出し、第二中間素材41Bの軸部13にねじ部14を形成する。これにより、軸部13にねじ部14が形成されたねじ11が得られる。
以上の本実施形態に係る製造方法によれば、圧造により加工するので、切削加工に比べて低コストであり大量生産に適している。
また、第一中間素材形成工程において、第一金型51に近い部位の径が大きくなるように第一中間素材41Aを形成している。このため、第二中間素材41Bを形成する第二中間素材形成工程において、係合凹部21の形状を転写する際に、肉が下方かつ側方に向かって塑性流動し、係合凹部21の深い部位に十分に肉が回り込む。これにより、高い形状精度で係合凹部21を加工することができる。このとき、溝部25の下部に回り込んだ肉により、張り出し部26が形成される。また、この張り出し部26の張り出し量は、頭部12の後方から見て、頭部12の外径線(頭部12の仮想外接円)から径方向外側にはみ出ない程度とされている。
本発明者らは、上述した製造方法を見出す前に、圧造加工により、軸部13と、係合凹部21を備えた頭部12とを備えた中間素材を作製してから、この中間素材に溝部25を剪断加工により加工することを考えた。しかし、溝部25を剪断加工しようとすると、剪断加工により除去した肉が溝部25の前端側に集まり、この肉が径方向外側に大きくはみ出てバリが生じてしまうことがあった。そして、このバリ取り加工のために生産効率が低下してしまい、好ましくないと考えた。
なお、上記実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。
図6は、比較例に係るねじの製造方法を説明する図であって、(a)は第一中間素材形成工程を説明する側断面図、(b)は第二中間素材形成工程を説明する側断面図である。
ねじ11となるワーク41を用意し、図6(a)に示すように、第一金型51と、第二金型81とを用意する。
第二金型81は、第一金型51に対して接近可能とされている。第二金型81は、下方側が開口した予備加工凹部82を有している。この予備加工凹部82は、穴部83に中子84を挿し込むことで形成されている。予備加工凹部82は、軸部13の径より大径で第一金型51に向かって拡径されている。
第一金型51の軸凹部52にワーク41を挿し込み、ワーク41を第一金型51に保持させる。この状態で、上方に突出されているワーク41の他端を第二金型81の予備加工凹部82に接触させながら第二金型81を第一金型51に対して接近させる。このようにすると、図6の(a)に示すように、ワーク41は、その他端が第二金型81によって押し潰され、予備加工凹部82の内形に倣って外方へ膨出するように塑性変形される。
これにより、図3(c)に示すように、ワーク41の他端には、軸部13より大径の大径部45が形成される。つまり、この第一中間素材形成工程によって、軸部13と、この軸部13より大径の大径部45とを備えた第一中間素材41Cが得られる。この第一中間素材41Cを得る第一中間素材形成工程において、大径部45が第一金型51から遠い側に設けられるように加工する。
図6の(b)に示すように、ねじ11の頭部12を仕上げ加工するための第三金型71を用意する。第一中間素材41Cの大径部45を第三金型71の仕上げ加工凹部72で押圧しながら、第三金型71を第一金型51に対して近づける。これにより、第一中間素材41Cの大径部45を塑性変形させ、係合凹部形成凸部73および溝部形成凸部74で係合凹部21および溝部25を形成する。このように第三金型71の仕上げ加工凹部72の形状を第一中間素材41Cに転写する際に、塑性流動させた肉で頭部12の張り出し部26を形成し、係合凹部21、溝部25および張り出し部26を備えた頭部12と、軸部13とを備えた第二中間素材41Dを得る。
中子54を上方へ移動させて第一金型51の軸凹部52から第二中間素材41Dの軸部13を押し出し、第二中間素材41Dの軸部13にねじ部14を形成する。これにより、軸部13にねじ部14が形成されたねじ11が得られる。
また、表1の比較例に示したように、第一中間素材41を、膨出部42の下半分の直径(第一金型に近い部位の径)が上半分の直径(第二金型に近い部位の径)よりも小さいように加工してしまうと、頭部の下側に肉が回りきらないでダレてしまう。
図8は、変形例に係るねじ11Aを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)におけるII−II断面図である。
Claims (3)
- 前端にねじ部が設けられた軸部と、
前記軸部の後端に設けられて前記軸部より大径の頭部と、
締め付け工具が締め付け側に回転するときに係合し、かつ、反締め付け側に回転するときに係合しない、前記頭部の後面に設けられた係合凹部と、を有し、
前記頭部の外周面には、後方から見て前記頭部の径方向に互いに対向しない位置に設けられて前後方向に延びる3つ以上の奇数個の溝部を有し、
前記溝部の前端に、後方から見て、径方向外側に膨らんで張り出した張り出し部が設けられている、ねじの製造方法であって、
円柱状のワークを用意する工程と、
前記軸部と同じ径を有する軸凹部を有する第一金型と、前記第一金型に対して接近可能で、前記軸部の径より大径で前記第一金型に向かって拡径する予備加工凹部を有する第二金型とを用意する工程と、
前記ワークの一端を前記第一金型の前記軸凹部で保持し、前記ワークの他端を前記第二金型の予備加工凹部に接触させながら前記第二金型を前記第一金型に対して接近させて前記ワークを塑性変形させて、軸部と、前記軸部より大径の膨出部を備えた第一中間素材を得る工程と、
前記第一金型に対して接近可能で、前記係合凹部および前記溝部の形状を転写可能な仕上げ加工凹部を備えた第三金型を用意し、
前記第一中間素材の前記膨出部を前記第三金型の前記仕上げ加工凹部で押圧しながら、前記第三金型を前記第一金型に対して近づけて前記第一中間素材を塑性変形させ、前記仕上げ加工凹部で前記係合凹部および前記溝部の形状を転写する際に塑性流動させた肉で前記張り出し部を形成して、前記係合凹部、前記溝部および前記張り出し部を備えた頭部と、軸部とを備えた第二中間素材を得る工程と、
前記第二中間素材の前記軸部にねじ部を形成して前記ねじを得る工程と、を有し、
前記第一中間素材を得る工程において、前記膨出部のうち、前記第一金型に近い部位の径が前記第二金型に近い部位の径よりも大きくなるように加工する、ねじの製造方法。 - (第一中間素材の膨出部の直径/第一中間素材の膨出部の高さ)の比率が1以上であり、かつ、(第一中間素材の膨出部の高さ/ねじの頭部の高さ)の比率が1.8未満である、請求項1に記載のねじの製造方法。
- 前端にねじ部が設けられた軸部と、
前記軸部の後端に設けられて前記軸部より大径の頭部と、
締め付け工具が締め付け側に回転するときに係合し、かつ、反締め付け側に回転するときに係合しない、前記頭部の後面に設けられた係合凹部と、を有する、ねじであって、
前記頭部の外周側面には、後方から見て前記頭部の径方向に互いに対向しない位置に設けられ前後方向に延びる3つ以上の奇数個の溝部を有し、
前記溝部の前端に、後方から見て、径方向外側に膨らんで張り出した張り出し部が設けられている、請求項1または2に記載の製造方法により製造されるねじ。
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