JP6466643B2 - 流体管の離脱防止装置 - Google Patents

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Description

本発明は、流体管の管軸方向の離脱を防止する離脱防止装置に関する。より詳しくは、本発明は、複数の流体管が接続して構成される流体管網に対し、地震等の不測の外力が生じた場合でも、この外力に応じて流体管の接続部が管軸方向に所定の許容長さ伸縮する伸縮性を有するとともに、許容長さを超えて流体管が離脱することを防止する耐震性を有する離脱防止装置に関する。
従来の離脱防止装置及び管継手には、元管(挿口管)の外周面に外嵌された締付板(本体部材)の凹部内に、複数の係止爪(楔部)を有する係合片(係止部材)が収容され、締付板(本体部材)に押圧螺子(押圧部材)が設けられており、地震等による外力が管軸方向に流体管を離脱させる向きに生じた場合に、係止爪(楔部)を流体管の外周面に押圧することで、係止爪(楔部)を流体管に食い込ませて流体管の管軸方向の離脱を防止している(例えば、特許文献1参照)。
実開昭52−166815号公報(第3頁、第3図)
しかしながら、特許文献1にあっては、地震等による外力が、元管を離脱させる向きに働いた場合に、係止片が傾動し、前側係止爪(元管端部側)が後側係止爪(元管反端部側)よりも強く押圧され、押圧力は前側係止爪に集中し、前側係止爪が元管に深く食い込み過ぎる處があり、元管の外周面や内面ライニングを損傷させ、延いては、元管の寿命を縮めてしまうという問題がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、地震等による外力が、流体管を離脱させる向きに働いた場合でも、係止部材の楔部の流体管への過度の食い込み、流体管の損傷を防止することができ、延いては流体管の離脱防止機能を強固に維持することができる流体管の離脱防止装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の流体管の離脱防止装置は、
流体管の外周面に外嵌され、前記外周面に対向する凹部を有する本体部材と、前記凹部内に傾動可能に収容され、前記流体管の外周面に食い込み可能な係止部材と、前記本体部材に設けられ、前記係止部材を押圧する押圧部と、を備える前記流体管の管軸方向の離脱を防止する離脱防止装置であって、
前記係止部材は、前記流体管の管軸の前後方向に前側楔部と後側楔部を有するとともに、前記流体管の周方向に延設され且つ前記前側楔部の先端と前記後側楔部の先端を結んだ線より突出しないように構成された補助楔部を有し、前記流体管が管軸方向の離脱側に移動するとき、前記後側楔部の食い込み部周りに傾動した前記前側楔部が前記流体管の外周面に食い込み、更に前記補助楔部が傾動によって前記流体管の外周面に食い込むことで、前記前側楔部が前記流体管に食い込むことを規制することを特徴としている。
この特徴によれば、流体管が離脱する方向に移動すると、流体管軸方向の前後方向に設けた複数の楔部のうち、前側に設けた楔部は流体管へ食い込むが、該前側楔部の食い込みは、係止部材に設けられる補助楔部により規制されるので、前側楔部が流体管への過度の食い込みが抑制され、流体管の傷つきを防止することができる。
また、この特徴によれば、少なくとも傾動によって流体管に食い込む前側楔部に加え、補助楔部も少なくとも傾動によって流体管に食い込むので、前側楔部と補助楔部が相俟って、流体管の管軸方向の離脱を強力に防止することができる。
また、この特徴によれば、補助楔部は前側楔部の先端と後側楔部の先端を結んだ線より突出しないので、傾動によって前側楔部が流体管に食い込んだあとに、補助楔部が流体管に食い込むので、前側楔部が流体管に過度に食い込むことを防止できるとともに、補助楔部の突出量を調整して前側楔部の食い込み量を調整することができる。
本発明の流体管の離脱防止装置は、
前記補助楔部は、前記前側楔部と前記後側楔部との間に設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、補助楔部は、前側楔部と後側楔部との間に設けられるので、前側楔部が流体管にある程度食い込んだ後に、補助楔部は前側楔部が流体管への食い込みを規制するので、前側楔部が過剰に流体管に食い込むことを防ぐことができる。
本発明の流体管の離脱防止装置は、
前記楔部は、前記流体管の管軸方向の前側に傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、楔部は流体管の管軸方向の前側に傾斜しているので、流体管の管軸方向離脱側への移動を確実に防止できる。
本発明の管継手は、
前記流体管と、前記流体管の前端部が挿入される受口管と、前記流体管の前記受口管からの離脱を防止する流体管の離脱防止装置と、からなることを特徴としている。
この特徴によれば、管継手は、流体管の離脱防止装置を備えるので、流体管の管軸方向離脱側への移動を確実に防止できる。
実施例における離脱防止装置が設けられた管継手を示す側断面図である。 (a)は、図1のA矢視の離脱防止装置の一部断面図であり、(b)は、(a)のB矢視図である。 (a)は、係止部材及び介設部材を組合わせた状態の正面図であり、(b)は、(a)の一部側断面図である。 離脱防止装置の側断面図である。 (a)は、押圧部材の初期締付前の離脱防止装置の側断面図であり、(b)は、押圧部材の初期締付後の離脱防止装置の側断面図である。 (a)は、挿口管が流体管の管軸方向離脱側へ移動を開始したときの離脱防止装置の挙動を示す側断面図であり、(b)は、挿口管が流体管の管軸方向離脱側へさらに移動したときの離脱防止装置の挙動を示す側断面図である。 挿口管が流体管の管軸方向離脱側へ移動したときの離脱防止装置の挙動の最終状態を示す側断面図である。 (a)は、係止部材の変形例を示す側断面図であり、(b)は、係止部材の他の変形例を示す側断面図である。
本発明に係る離脱防止装置を実施するための形態を実施例に基づいて、以下に説明する。
実施例に係る離脱防止装置につき、図1から図8を参照して説明する。以下、図1の挿口管2の受口管3への挿入側を管軸方向の前側(前方)とし、挿口管2の受口管3からの離脱側を管軸方向の後側(後方)として説明する。
図1に示されるように、本実施例の管継手1は、受口部3aが端部に形成された受口管3と、この受口部3aに挿入された本発明の流体管である挿口管2と、挿口管2の外周面2bに設けられた離脱防止装置10と、受口部3aの内周面と挿口部2aの外周面2bとの間に周方向に沿って配置されたシール材5とを備えている。また、シール材5は、後述する本体部材11に形成された環状凸部11dにより管軸方向に押圧され、シール材5が受口部3aの内周面と挿口部2aの外周面2bとに密着することで、受口管3及び挿口管2が密封状に接続されている。
尚、本発明における管継手1は、管網を構成する配管の一部であって、これら受口管3及び挿口管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、管の内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
また、図1に示されるように、挿口管2の外周面2bに配置された本発明に係る離脱防止装置10は、挿口管2の外周面2bに外嵌され、外周面2bに対向する凹部12を有する本体部材11と、凹部12内に傾動可能に収容され、挿口管2の外周面2bに食い込み可能な係止部材15と、本体部材11に設けられ、係止部材15を押圧する押圧部材であるボルト13及び介設部材14からなる押圧部と、から主に構成される。
離脱防止装置10は、本体部材11が受口部3aに対し締結部材4により接続固定されるとともに、本体部材11の凹部12内に収容された係止部材15が後述するように挿口管2の外周面2bに係止することで、受口部3aから挿口部2aが離脱することを阻止できるようになっている。以下、離脱防止装置10を構成する部材について説明する。
先ず、本体部材11について説明する。図1、図2及び図4に示されるように、本体部材11は、挿口管2の外周面2bに外嵌可能な環状の一体部材の押輪であり、ダクタイル鋳鉄、ステンレス鋼、鋼、鋳鋼等から形成される。尚、本発明の本体部材は、周方向に所定数に分割可能な構造であってもよい。挿口管2の外周面2bに対向する本体部材11の内周部には、凹部12が周方向に沿って複数形成されている。それぞれの凹部12内は、挿口管2の管軸方向に所定の間隔を離して形成される前側壁12a、後側壁12bと、挿口管2の周方向に形成される周側壁12d、12d、底部壁12cに囲まれた空間となっており、更にこの凹部12は、介設部材14を収容する底部収容部12eを有している。該凹部12内には、後述する係止部材15、介設部材14が収容される。
図2(a)、図4に示されるように、本体部材11は、フランジ部11aと、凹部12を内部に備える収容部11bとが周方向に交互に形成され、フランジ部11aは、受口管3のフランジ部3bと締結部材4によって締付けられ、本体部材11と受口管3とは一体に固定される。収容部11bは、その内周部に前述の凹部12が形成され、収容部11bの外周部には径方向に雌ネジ部11cが設けられている。雌ネジ部11cには、本発明の押圧部材であるボルト13が螺合され、該ボルト13を締付けることによって、介設部材14を介して係止部材15を挿口管2の外周面2bに押圧できるようになっている。
さらに、図1及び図4に示されるように、受口部3aに対向する本体部材11の端面には、シール材5を押圧する環状凸部11dが形成される。シール材5は、締結部材4を締付けることによって、環状凸部11dにより管軸方向に押圧され、受口部3aと挿口部2aとは、密封状に接続される。
つぎに、係止部材15について説明する。係止部材15は、図3(b)及び図4に示されるように、周側面視及び側断面視で非対称の多角形状であって、図3(a)に示されるように、内周部に弧状の前側楔部17、後側楔部16、突出部としての補助楔部18を備えた周方向に所定幅を有する略弓型の部材からなる。係止部材15は、ダクタイル鋳鉄、鋼、ステンレス鋼等から形成される。また係止部材15は、周方向の中央の外周部に傾斜面15aを有する凸部15bが形成され、該傾斜面15aは、挿口管2の管軸方向の前側に向かうにつて挿口管2の外周面2bから遠ざかるように拡径して傾斜している。
複数の楔部16、17、18は、係止部材15の挿口管2の外周面2bに対向する側に、管軸方向に所定の間隔を設けて形成されている。係止部材15の傾斜面15aのうち、挿口管2の外表面からの管径方向の距離が比較的大きい管軸方向の前側には、前側楔部17が形成され、傾斜面15aのうち、挿口管2の外表面からの管径方向の距離が比較的小さい管軸方向の後側には、後側楔部16が形成され、さらに、前側楔部17と後側楔部16との管軸方向の間には、本発明の突出部としての補助楔部18が形成されている。
図4に示されるように、各楔部16、17、18の断面形状は、挿口管2の管軸方向の前側に向かって傾斜する面と挿口管2の外周面に略垂直に挿口管2の管径方向外側(外径方向)に延びる面からなる三角形となっており、各楔部16、17、18は、その基端から挿口管2の外周面に向けて先細り形状となっている。
また、図2(a)及び図3(a)、(b)に示されるように、弧状の各楔部16、17、18の先端の内径寸法(管軸方向視の半径寸法)及び周方向寸法は、係止部材15をボルト13により押圧したとき、あるいは係止部材15が後述するように傾動したとき、各楔部16、17、18の周方向のほぼ全長にわたって挿口管2に食い込む寸法に設定されている。前側楔部17及び後側楔部16の周方向長さS1は、略同一に形成され、突出部としての補助楔部18の周方向長さS2よりも大きく設定されている。さらに、補助楔部18の内径方向の突出量は、前側楔部17及び後側楔部16の内径方向の突出量よりも小さく設定され、より詳しくは、図3(a)、(b)に示されるように、弧状の補助楔部18の内径方向の先端は、前側楔部17の先端と後側楔部16の先端を結んだ線から所定寸法δ径方向外側(外径方向)の位置に設定されている。
つぎに、介設部材14について説明する。介設部材14は、押圧部材としてのボルト13とともに押圧部を構成している。図3(a)、(b)、図4に示されるように、介設部材14は、流体管の管軸方向に沿う溝部を有し、該溝部の底はテーパ面14aとなっている。介設部材14は、前記溝部が係止部材15の凸部15bを覆うように配設され、介設部材14のテーパ面14aと凸部15bの傾斜面15aとは摺動可能に接触し、係止部材15は介設部材14のテーパ面14aに沿って移動またはテーパ面14aに当接して傾動可能となっている。
上述の本体部材11と、係止部材15と、ボルト13及び介設部材14からなる離脱防止装置10は、以下のように組立てられる。図1、図2及び図4に示されるように、本体部材11の底部収容部12eに介設部材14を収容するとともに、係止部材15の周方向端部の嵌合溝15dに弾性体19を保持させた状態で、係止部材15を本体部材11の凹部12に挿入し、係止部材15を凹部12内に保持する。さらに、介設部材14及び係止部材15が収容された本体部材11を挿口管2の挿口部2aに遊嵌状態で外嵌して、その前端側の挿口部2aの外周面2bにシール材5を所定位置に外嵌する。
次に、本体部材11及びシール材5を外嵌した挿口部2aを受口部3aに挿入し、締結部材4によって挿口部2aと受口部3aとの間にシール材5を押圧しながら本体部材11を受口管3に締結し、初期組付け位置にセットした状態で、本体部材11の収容部11bの雌ネジ部11cに螺合されたボルト13を螺入し、ボルト13を所定の締付トルクによって初期締付けを行う。
以下、本体部材11に螺合されたボルト13の初期締付け開始から、挿口管2の管軸の離脱方向に力が加わった時の離脱防止装置10の挙動について説明する。
図5(a)に示されるように、本体部材11に螺合されたボルト13の中心は、介設部材14の管軸方向の長さ寸法の中心位置より後側にずれた位置に、及び係止部材15の後側楔部16の位置より管軸後側にずれた位置に設定されている。また、介設部材14と底部収容部12eとの間及び係止部材15と凹部12との間には、介設部材及び係止部材の移動、傾動を許容する空隙が形成されている。そのため、ボルト13を最初に軽く締付けると、介設部材14は挿口管2の管軸方向の後側へ移動して、底部収容部12eの後側壁12fに接触した状態で、または係止部材15は反時計方向に傾いた状態で、本体部材11の凹部の前側壁12aに接触した状態でセットされる。そして、係止部材15が反時計方向に傾いた状態では、後側楔部16は、挿口管2の外周面2bに軽く当接し、前側楔部17及び補助楔部18は、挿口管2の外周面2bからそれぞれc1、c2のクリアランスもって非接触状態となる。
つぎに、図5(b)に示されるように、ボルト13を所定の初期締付けトルクにて締付けを行うと、ボルト13の中心は、係止部材15の後側楔部16の位置より管軸後側にずれているので、ボルト13による初期締付け力は、主に係止部材15の後側楔部16に集中し、主に後側楔部16が挿口管2の外周面2bに食い込む。また、前側楔部17は、挿口管2に接触しない状態又は軽く接触する状態となり、補助楔部18は、挿口管2の外周面2bからc3のクリアランスもって非接触状態を保つ。尚、ボルト13の押圧面13aは平面に形成されるので、ボルト13は介設部材14の被押圧面14bを広い範囲で押圧することができ、楔部16、17、18をその周方向長さのほぼ全長にわたって、均等に挿口管2の外周面2bに食い込ませることができるので、楔部16、17、18が偏って挿口管2の外周面2bに食い込むことを防ぐことができる。
つぎに、この初期締付け状態から挿口管2の管軸方向に離脱力が働くと、図6(a)に示されるように、係止部材15の後側楔部16の挿口管2の食い込み部O点は、挿口管2とともに管軸方向後側へ移動し、係止部材15は楔効果で介設部材14より押圧される。すると、係止部材15は後側楔部16のO点の周り、時計方向に傾動するとともに、後側楔部16及び前側楔部17が挿口管2の外周面2bに食い込み、補助楔部18は、挿口管2の外周面2bに非接触あるいは軽く接触した状態となる。尚、この状態で挿口管2の管軸方向の離脱力は、係止部材15の前側楔部17及び後側楔部16の二つの楔部によって保持される。
挿口管2が、さらに管軸方向後側へ移動すると、図6(b)に示されるように、後側楔部16及び前側楔部17の挿口管2の外周面2bへの食い込み量がさらに増加する。すると今度は、突出部としての補助楔部18が挿口管2への食い込みを開始する。補助楔部18が挿口管2への食い込みを開始すると、介設部材14から係止部材15への押圧力は、補助楔部18によっても保持されるようになるので、前側楔部17の外周面2bへの食い込みは規制される。尚、この状態では、挿口管2の管軸方向の離脱力は、前側楔部17、後側楔部16及び突出部としての補助楔部18の三つの楔部によって保持される。
そして、介設部材14によって係止部材15は押圧され、最終的に、図7に示されるように、前側楔部17、後側楔部16及び補助楔部18の三つの楔部がさらに挿口管2に食い込み、挿口管2の管軸方向の離脱力は、各楔部16、17、18に生じる係止力と釣合って、挿口管2の管軸方向の離脱力を防ぐことができる。
尚、設計上想定される離脱力に対して十分余裕を持って、楔部の形状、大きさは設定されている。したがって、設計上想定される離脱力が離脱防止装置に加わって、楔部が挿口管2に食い込んでも、楔部16、17、18の間の底部15eは挿口管2の外周面2bに接触せずに離間するよう設定されている。この理由は、楔部16、17、18の間の底部15eが挿口管2の外周面2bに接する状態になると、楔部16、17、18は、これ以上挿口管2に食い込むことができず、さらに大きな離脱力を保持できなくなることを防ぐためである。さらに、楔部16、17、18の間の底部15eが挿口管2の外周面2bに接触すると、挿口管2は、楔部16、17、18及び楔部の間の底部15eの両者から大きな押圧力を受けて、挿口管2は大きく縮径し、外周面や内周面のライニングの損傷を防止するためである。
本発明の離脱防止装置は、以下のような作用効果を奏する。
本体部材11に螺合されたボルト13を挿口管2に対し初期締付けを行った状態で、挿口管2の管軸方向に離脱力が働くと、係止部材15は傾動し、前側楔部17が挿口管2へ食い込む。そして、さらに係止部材15が傾動すると、突出部としての補助楔部18が挿口管2への食い込みを開始し、補助楔部18の食い込みによって前側楔部17の挿口管2への食い込みが規制され、前側楔部17が挿口管2に対し過度に食い込むことを防ぐことができ、延いては挿口管2は前側楔部17から過度の押圧力を受けないので、離脱防止装置は、外周面及び内面ライニングの損傷を防止することができる。
突出部としての補助楔部18は、前側楔部17と後側楔部16との間に設けられるので、前側楔部17が挿口管2にある程度食い込んだ後に、補助楔部18は食い込みを開始して、前側楔部17の挿口管2への食い込みを規制するので、前側楔部の挿口管2への局所的な食い込むことを防ぐことができる。
補助楔部18は、係止部材15の傾動によって挿口管2に食い込む楔部としたので、傾動によって挿口管2に食い込む前側楔部17に加え、補助楔部18も傾動によって挿口管2に食い込むので、前側楔部17と補助楔部18が相俟って、挿口管2の管軸方向の離脱を強力に防止することができる。
補助楔部18の先端は、前側楔部17の先端と後側楔部16の先端を結んだ線より突出しないので、傾動によって前側楔部17が挿口管2に食い込んだ後に、補助楔部18は挿口管2に食い込むので、前側楔部17が挿口管2に過度に食い込むことを防止できるとともに、補助楔部18の先端の突出量を調整して前側楔部17の食い込み量を調整することができる。
各楔部16、17、18の断面形状は、挿口管2の管軸方向の前側に向かって傾斜する面と挿口管2の外周面2bに略垂直に挿口管2の径方向外側(外径方向)に延びる面からなる三角形となっており、その基端から挿口管2の外周面に向けて先細り形状となっているので、各楔部16、17、18は、挿口管2の外周面2bに食込みやすく、挿口管2の外周面2bに略垂直に挿口管2の径方向外側(外径方向)に延びる面が離脱力を強力に保持することでき、延いては、挿口管2の管軸方向の離脱を強力に防止することができる。
管継手1は、挿口管2と、挿口管2の前端部2cが挿入される受口管3と、挿口管2の受口管3からの離脱を防止する離脱防止装置10とを備えるので、管継手1は、挿口管2が受口管3からの離脱することを確実に防止することができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、介設部材のテーパ面及び係止部材の傾斜面は平面としていたが、これに限らず、介設部材のテーパ面と係止部材の傾斜面と間の接触面積を減らして摩擦を低減するために、特に図示しないが、介設部材のテーパ面を凹曲面若しくは係止部材の傾斜面を凸曲面、または介設部材のテーパ面、係止部材の傾斜面の双方が凹凸曲面としてもよい。
また、前記実施例では、係止部材15に設けられる補助楔部18は、前側楔部17と後側楔部16との間に一つ設けるようにしているが、本発明の係止部材の変形例として図8(a)に示されるように、前側楔部17の挿口管2への食い込みをさらに規制できるように、係止部材25は、前側楔部17と後側楔部16との間に二つの補助楔部18、18を設けてもよい。尚、3つ以上の所定個数の補助楔部を前側楔部と後側楔部との間に設けてもよい。
さらに、前記実施例では、係止部材15に設けられる補助楔部18は、前側楔部17と後側楔部16との間に一つ設けるようにしているが、本発明の係止部材の他の変形例として図8(b)に示されるように、係止部材35は、前側楔部17より流体管の管軸方向の前側に補助楔部18が設けられてもよい。
尚、前記実施例においては、介設部材14を介してボルト13によって、係止部材15を押圧していたが、これに限らず、介設部材を使用しないで、係止部材15をボルト13によって、直接押圧してもよいし、本体部材11によって係止部材15を押圧するように構成してもよい。
他の変形例として、例えば、前記実施例では、凹部12を備えた本体部材11、受口管3に対し締結部材4で固定接続された押輪であるとして説明しているが、例えば本体部材11は、管継手の接続強度を高める補強金具でもよいし、あるいは本体部材は、流体管としての挿口管が挿入される受口管自体であってもよく、当該受口管の受口部に係止部材を収容する凹部が形成されてもよい。
また、前記実施例では、ボルト13、介設部材14、及び係止部材15が、それぞれの面同士を直接に当接若しくは摺接しているが、例えば介設部材の表面の全部又は一部をゴムライニング等で被覆してもよいし、あるいは、介設部材のテーパ面若しくは係止部材の傾斜面にゴムや樹脂等からなる緩衝材を設けてもよい。このような構成によれば、地震等の外力が管軸方向の前後に繰り返し作用した場合に、凹部内で各部材に負荷される衝撃を吸収することができる。
1 管継手
2 挿口管(流体管)
2b 外周面
2c 前端部
3 受口管
4 締結部材
5 シール材
10 離脱防止装置
11 本体部材
12 凹部
13 ボルト(押圧部)
14 介設部材(押圧部)
15 係止部材
16 後側楔部
17 前側楔部
18 補助楔部(突出部)
19 弾性体

Claims (5)

  1. 流体管の外周面に外嵌され、前記外周面に対向する凹部を有する本体部材と、前記凹部内に傾動可能に収容され、前記流体管の外周面に食い込み可能な係止部材と、前記本体部材に設けられ、前記係止部材を押圧する押圧部と、を備える前記流体管の管軸方向の離脱を防止する離脱防止装置であって、
    前記係止部材は、前記流体管の管軸の前後方向に前側楔部と後側楔部を有するとともに、前記流体管の周方向に延設され且つ前記前側楔部の先端と前記後側楔部の先端を結んだ線より突出しないように構成された補助楔部を有し、前記流体管が管軸方向の離脱側に移動するとき、前記後側楔部の食い込み部周りに傾動した前記前側楔部が前記流体管の外周面に食い込み、更に前記補助楔部が傾動によって前記流体管の外周面に食い込むことで、前記前側楔部が前記流体管に食い込むことを規制することを特徴とする流体管の離脱防止装置。
  2. 前記補助楔部は、前記前側楔部と前記後側楔部との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の流体管の離脱防止装置。
  3. 前記係止部材の初期締付け状態において、前記押圧部の中心が前記後側楔部の位置よりも管軸方向の後側にずれて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の流体管の離脱防止装置。
  4. 前記楔部は、前記流体管の管軸方向の前側に傾斜していることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の流体管の離脱防止装置。
  5. 前記流体管と、前記流体管の前端部が挿入される受口管と、前記流体管の前記受口管からの離脱を防止する請求項1ないしのいずれかに記載の流体管の離脱防止装置と、から成ることを特徴とする管継手。
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