本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、少なくとも、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を100重量部、(B)エポキシ化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を1.0重量部以上5.0重量部以下および/又は下記一般式(2)で表される化合物を2.0重量部より多く7.0重量部以下、(C)オレフィン系エラストマーを2.0重量部以上60重量部以下、(D)強化繊維を10重量部以上60重量部以下配合してなるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である。
(一般式(1)中、Ra、Rbは、それぞれ、直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、直鎖若しくは分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合の一部若しくは全部がエポキシ化された一価の基(以下、エポキシ化脂肪族炭化水素基と称する)を示す。)
(一般式(2)中、Rc、Rd、Reは、それぞれ、直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、エポキシ化脂肪族炭化水素基を示す。但し、Rc、Rd、Reのうち少なくとも一つはエポキシ化脂肪族炭化水素基である。)
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、少なくとも、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を配合してなる。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と、1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする重合体である。前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はさらに、特性を損なわない範囲、例えば20重量部以下、他の共重合成分を含む共重合体であってもよい。
前記重合体および前記共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられる。これらの重合体および共重合体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合体および共重合体のうち、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上する点で好ましいのは、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)である。
本発明で用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の250℃、1000gで測定されるメルトフローレート(以下、MFRと略記することがある。)は、5g/10分以上60g/10分以下であることが好ましい。ここで、MFRはASTM−D1238−13に従って測定される。前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の250℃、1000gで測定されるMFRの下限は5g/10分以上であり、より好ましくは20g/10分以上である。また、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の250℃、1000gで測定されるMFRの上限は60g/10分以下であり、より好ましくは40g/10分以下である。前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の250℃、1000gで測定されるMFRを5g/10分以上、より好ましくは20g/10分以上とすることでポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性がより向上する。また、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の250℃、1000gで測定されるMFRを60g/10分以下、より好ましくは40g/10分以下とすることでインサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上する。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などを用いることができる。
前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の重合法は、バッチ重合法および連続重合法のいずれでもよいが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合法が好ましい。また、アルコールとエステルとを反応させるエステル交換反応による重縮合、およびアルコールとカルボン酸とを反応させるエステル化反応による重縮合のいずれも適用することができるが、コストの点で好ましいのは、エステル化反応による重縮合である。
前記エステル化反応による重縮合または前記エステル交換反応による重縮合を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましい。触媒の具体例としては、有機チタン化合物、スズ化合物、ジルコニア化合物、アンチモン化合物などが挙げられる。これらのうち、触媒効果の点で好ましいのは有機チタン化合物、スズ化合物である。
前記有機チタン化合物のより具体的な例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどが挙げられる。
前記スズ化合物のより具体的な例としては、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などが挙げられる。
前記ジルコニア化合物のより具体的な例としては、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物が挙げられる。
前記アンチモン化合物のより具体的な例としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどが挙げられる。
これらのうち、より高い触媒効果を有する点でチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。また、これらの触媒は2種以上併用することもできる。
前記触媒の添加量は、インサート成形品とする際の成形性や、インサート成形品とした際の機械特性および色調を優れたものにするためには、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上0.5重量部以下の範囲が好ましく、0.010重量部以上0.2重量部以下の範囲がより好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、少なくとも、(B)エポキシ化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を1.0重量部以上5.0重量部以下および/又は下記一般式(2)で表される化合物を2.0重量部より多く7.0重量部以下(以下、(B)エポキシ化合物と称する場合がある)を配合してなる。
一般式(1)中、Ra、Rbは、それぞれ、直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、直鎖若しくは分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合の一部若しくは全部がエポキシ化された一価の基(即ち、上記不飽和結合の一部若しくは全部がオキシラン環に変換された基;以下、エポキシ化脂肪族炭化水素基と称する場合がある)を示す。なお、Ra、Rbは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基として、例えば、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
前記飽和脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基などが挙げられる。
前記不飽和脂肪族炭化水素基として、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基などのアルケニル基や、エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基などの、1個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
前記エポキシ化脂肪族炭化水素基として、例えば、前記不飽和脂肪族炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合の一部又は全部がエポキシ化された一価の基などが挙げられる。前記不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、少ないと成形時の発生ガスが多くなりやすく、多いと流動性が悪化しやすくなることから、4〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、特に好ましい、一般式(1)で表される化合物は、DIC株式会社からモノサイザー(登録商標)、例えばモノサイザー(登録商標)W−150、新日本理化株式会社からサンソサイザー(登録商標)、例えばサンソサイザー(登録商標)E−POという商品名で入手できる。
一般式(1)で表される化合物を用いる場合の配合量は、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、1.0重量部以上5.0重量部以下の範囲である。前記一般式(1)で表される化合物を用いる場合の配合量の下限は1.0重量部であり、3.0重量部がより好ましい。また、上限は5.0重量部である。前記一般式(1)で表される化合物を用いる場合の配合量が1.0重量部未満では、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性及び、流動性が低下する。また、5.0重量部を超えるとき、インサート成形品とした際の機械特性が低下する。
一般式(2)中、Rc、Rd、Reは、それぞれ、直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、エポキシ化脂肪族炭化水素基を示す。但し、Rc、Rd、Reのうち、少なくとも1つはエポキシ化脂肪族炭化水素基である。上記直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、エポキシ化脂肪族炭化水素基としては、上記式(1)におけるRa、Rbにおけるものと同様のものが例示される。なお、Rc、Rd、Reはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
中でも、一般式(2)で表される化合物として特に好ましいのは、Rc、Rd、Reのいずれもがエポキシ化脂肪族炭化水素基である、エポキシ化脂肪酸トリグリセリドである。
前記エポキシ化脂肪酸トリグリセリドとしては、より具体的には、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化魚油などが挙げられる。
一般式(2)で表される化合物は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。特に好ましい、一般式(2)で表される化合物は、株式会社ADEKAからアデカサイザー(登録商標)、例えばアデカサイザー(登録商標)O−130P、アデカサイザー(登録商標)O−180Pという商品名で入手できる。
一般式(2)で表される化合物を用いる場合の配合量は、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、2.0重量部より多く7.0重量部以下の範囲である。前記一般式(2)で表される化合物を用いる場合の配合量の下限は2.0重量部より多く、3.0重量部がより好ましい。また、上限は7.0重量部である。前記一般式(2)で表される化合物を用いる場合の配合量が2.0重量部以下では、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性及び、流動性が低下する。また、7.0重量部を超えるとき、インサート成形品とした際の機械特性が低下する。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、少なくとも、(C)オレフィン系エラストマーを2.0重量部以上60重量部以下配合してなる。
前記(C)オレフィン系エラストマーとしては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体、エチレン/プロピレン/共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸/グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体などを挙げることができる。これらは各々単独、あるいは混合物の形で用いることができる。
前記(C)オレフィン系エラストマーの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、2.0重量部以上60重量部以下である。配合量が2.0重量部未満であると、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性が劣り、60重量部を超えるとインサート成形品とした際の機械特性が劣る。機械特性と耐冷熱衝撃性の点から、(C)オレフィン系エラストマーを、3.0重量部以上30重量部以下の範囲で配合することが好ましい。
オレフィン系エラストマーでも特に好ましくは、(C1)α−オレフィンとα,β−不飽和グリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体(以下、(C1)グリシジル基含有共重合体と称する場合がある)と、(C2)エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンを共重合成分とするエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体と称する場合がある)とを含む混合物であって、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、前記(C1)グリシジル基含有共重合体を1.0重量部以上30重量部以下、前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体を1.0重量部以上30重量部以下含む混合物である。
前記(C1)グリシジル基含有共重合体は、α−オレフィン、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルおよび必要に応じてこれらと共重合可能な不飽和モノマーを共重合することにより得られる共重合体である。前記(C1)グリシジル基含有共重合体における全共重合成分中、α−オレフィン、およびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを合計60重量%以上用いることが好ましい。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。メタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
また、上記成分と共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアクリル酸およびメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、スチレンなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
前記(C1)グリシジル基含有共重合体の好ましい例としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物から得られる成形品の、低温における溶着強度をより向上させる観点から、前記(C1)グリシジル基含有共重合体はα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有二元共重合体であることが好ましく、具体的には、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体がより好ましい。
特に好ましいエチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体は、Elf Atochemからロタダー(登録商標)、例えばロタダー(登録商標)AX8840という商品名で入手できる。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物において、(C1)グリシジル基含有共重合体を用いる場合の配合量は、上記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、1.0重量部以上30重量部以下の範囲である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(C1)グリシジル基含有共重合体の配合量を1.0重量部以上とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性が向上する。また、配合量を30重量部以下、好ましくは15重量部以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性、機械特性およびポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性が向上する。
前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンを共重合してなるものである。上記エチレンと上記炭素数3以上20以下のα−オレフィン以外にも、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内において他の成分を加えることができる。この場合において、他の成分としてα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを有するものは、前記(C1)グリシジル基含有共重合体とする。
前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体の炭素原子数3以上20以下のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられ、1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物において、(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合の配合量は、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、1.0重量部以上30重量部以下の範囲である。配合量を1.0重量部以上、好ましくは5.0重量部以上とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性が向上する。また、配合量を30重量部以下、好ましくは20重量部以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性、機械特性およびポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性が向上する。
また、前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は870kg/m3以下が好ましい。密度を870kg/m3以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上しやすくなる。一方、下限については特に制限はないが、上記エチレン・α−オレフィン共重合体の入手の容易性に鑑み密度は600kg/m3以上が好ましい。
また、前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体は、ASTM−D1238−13に従った190℃、2160g荷重で測定したメルトフローレート(以下MFRと略す)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下であることが好ましい。MFRを0.05g/10分以上とすることで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性がより向上しやすくなり、1.0g/10分以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上しやすくなる。
特に好ましい、エチレン/1−ブテン共重合体は、三井化学株式会社からタフマー(登録商標)、例えばタフマー(登録商標)A0550Sという商品名で入手できる。
さらに、前記(C1)グリシジル基含有共重合体と前記(C2)エチレン・α−オレフィン共重合体の配合の重量比(以下、(C1)/(C2)と略記することがある。)は、10/90以上30/70以下であることが好ましい。(C1)/(C2)が10/90未満となると、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性が低下する場合がある。また、(C1)/(C2)が30/70を超えると、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性が低下しやすくなる場合がある。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、少なくとも、(D)強化繊維を10重量部以上60重量部以下配合してなる。
本発明を構成する(D)強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維および有機繊維(ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、アクリル等)等を使用することが可能であり、1種または2種以上併用することも可能である。(D)強化繊維としては、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、例えば、日本電気硝子(株)からT−120Hという商品名で入手できる。また、(D)強化繊維の繊維径は、好ましくは、直径4μm以上25μm以下、より好ましくは6μm以上20μm以下である。
また、本発明において(D)強化繊維は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中で開繊していることが好ましい。ここで、開繊している状態とは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中の(D)強化繊維が単繊維にまで開繊している状態をいい、具体的には、観察した強化繊維の中で10本以上束になった強化繊維の本数が強化繊維の総本数の40%以下であることを意味する。
本発明に用いる(D)強化繊維は、収束剤又は表面処理剤で処理がされていることが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物およびチタネート系化合物等の官能性化合物が挙げられ、エポキシ含有量の多いエポキシ系化合物が強化繊維の耐湿熱性向上の観点から特に好ましい。収束剤又は表面処理剤としてエポキシ含有量の多いエポキシ系化合物で処理をしたガラス繊維は、例えば日本電気硝子(株)からT−127Hという商品名で入手できる。
本発明に用いる(D)強化繊維の配合量は、上記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(D)強化繊維の配合量を10重量部以上とすることで、インサート成形品とした際の機械特性が向上し、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(D)強化繊維の配合量を60重量部以下とすることで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性が向上する。
また、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、さらに(E)水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基およびアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を3つ以上有する多官能性化合物(以下、(E)多官能性化合物と称する場合がある)を0.05重量部以上2.0重量部以下配合してなることが好ましい。
前記(E)多官能性化合物を配合することでポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。(E)多官能性化合物は、低分子化合物であってもよいし、高分子量の重合体であってもよい。
このような(E)多官能性化合物は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基およびアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を3つ以上有する。
(E)多官能性化合物の好ましい例として、前記官能基が水酸基の場合は、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3〜24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。
なかでも、(E)多官能性化合物の構造については、インサート成形品とした際の機械特性、およびポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物としての流動性により優れるという点でより好ましいのは、分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールである。
また、(E)多官能性化合物の価数については、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性がより向上し、さらに高温多湿の環境下においてインサート成形品の表面に(E)多官能性化合物が出現するブリードアウトを抑制することが可能となる点でより好ましいのは、3価または4価の水酸基を有する(E)多官能性化合物であり、さらに好ましいのは3価の水酸基を有する(E)多官能性化合物である。ブリードアウトを抑制することにより、例えばインサート成形品が自動車燃料系部品に使用された場合にブリートアウト物が混入する危険性を低減することができる。
また、インサート成形品とした際の機械特性およびポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、(E)多官能性化合物がアルキレンオキシド単位を一つ以上含むことが好ましい。アルキレンオキシド単位の好ましい例としては、炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が好ましく、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位が挙げられる。特に、本発明においては、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる(E)多官能性化合物を使用することがより好ましく、流動性、また高温多湿の環境下において成形品表面に、(E)多官能性化合物が出てくるブリードアウトを抑制するという点でプロピレンオキシド単位が含まれる(E)多官能性化合物を使用することがさらに好ましい。
本発明において、(E)多官能性化合物がアルキレンオキシド単位を一つ以上含む場合のアルキレンオキシド単位数については、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が、0.1以上20以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがより好ましく、1.0以上5.0以下であることがさらに好ましい。
アルキレンオキシド単位を一つ以上含む(E)多官能性化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
前記(E)多官能性化合物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂成分と反応し、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂成分の主鎖および側鎖に導入されていてもよく、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂成分と反応せずに、配合時の構造を保っていてもよい。
前記(E)多官能性化合物の官能基の反応率は、40%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上が特に好ましい。
前記(E)多官能性化合物の粘度は、25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、インサート成形品とした際の機械特性およびポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性により優れる観点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、成形時のブリードアウトを抑制することができる観点から100m・Pa以上であることが好ましい。25℃における粘度を15000m・Pa以下とすることでポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。
前記(E)多官能性化合物の分子量または重量平均分子量(Mw)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性の点で、50以上10000以下であることが好ましく、150以上8000以下であることがより好ましく、200以上3000以下であることがさらに好ましい。本発明において、(E)多官能性化合物のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
前記(E)多官能性化合物の含水分は1.0重量%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5重量%以下であり、さらに好ましくは、0.1重量%以下である。
特に好ましい(E)多官能性化合物は、日本乳化剤(株)からTMP−F32という商品名で入手できる。
前記(E)多官能性化合物の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上2.0重量部以下の範囲であることが好ましく、0.10重量部以上3.0重量部以下の範囲であることがより好ましく、0.10重量部以上1.0重量部以下の範囲であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることで、インサート成形品とした際の機械特性がより向上し、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性もより向上する。
前記(E)多官能性化合物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性の点から、少なくとも1つ以上の水酸基、あるいはカルボン酸基を有していることが好ましく、3つ以上水酸基、あるいはカルボン酸基を有していることがより好ましく、3つ以上水酸基を有していることがさらに好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分、無機充填材、離型剤、安定剤、着色剤、滑剤などの通常の添加剤を配合することができる。これらを2種以上配合してもよい。
他の樹脂成分としては、溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、水添または未水添SBS樹脂(スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)、水添または未水添SIS樹脂(スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。また、耐加水分解性を向上する目的で、分子内にグリシジルエーテルを有するエポキシ樹脂、グリシジルエステルを有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を配合しても良い。これらを2種以上配合してもよい。
無機充填材としては、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウムなどの粉状、粒状または板状充填剤などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
離型剤としては、ポリエステル樹脂組成物の離型剤に用いられるものをいずれも使用することができる。例えば、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油およびその誘導体、脂肪酸およびその誘導体等の油脂系ワックスなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
安定剤としては、ポリエステル樹脂組成物の安定剤に用いられるものをいずれも使用することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、触媒失活剤などを挙げることができる。これらを2種以上配合してもよい。
着色剤としては、例えば、有機染料、有機顔料、無機顔料などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、前記(A)〜(D)および必要により配合されたその他成分が均一に分散されていることが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなどの公知の溶融混練機を用いて、各成分を溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。なお、各成分に含まれる水分は少ない方がよく、必要により予め乾燥しておくことが望ましい。
また、溶融混練機に各成分を投入する方法としては、例えば、単軸あるいは2軸の押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から前記(A)〜(C)、及び(E)成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(D)強化繊維を供給し溶融混合する方法が挙げられる。
溶融混練温度は、流動性および機械特性に優れるという点で、110℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましく、240℃以上がさらに好ましい。また、360℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましい。ここで、溶融混練温度とは、溶融混練機の設定温度を指し、例えば2軸押出機の場合、シリンダー温度を指す。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することにより、各種成形部品に加工し利用することができる。射出成形時の温度は、流動性をより向上させる観点から240℃以上が好ましく、機械特性を向上させる観点から280℃以下が好ましい。
成形部品としては、例えば、射出成形部品、押出成形部品、ブロー成形部品、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は滞留安定性に優れることから、大型成形部品にも好ましく用いられる。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部材、電気・電子部材、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。特に、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐冷熱衝撃性に優れる成形品を得ることができるため、自動車の各種センサー部品や端子台などのインサート部品として特に好適である。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例、比較例で使用する原料の略号および内容を以下に示す。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート(MFR:32g/10分(250℃、1000g))
(B)エポキシ化合物
B−1:エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル(新日本理化株式会社製“サンソサイザー”(登録商標)E−PO(商品名))
B−2:4,5エポキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DIC株式会社製“モノサイザー”(登録商標)W−150(商品名))
B−3:エポキシ化大豆油(株式会社ADEKA製“アデカサイザー”(登録商標)O−130P(商品名))
B−4:エポキシ化亜麻仁油(株式会社ADEKA製“アデカサイザー”(登録商標)O−180A(商品名))
(C)オレフィン系エラストマー
C1−1:エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(Elf Atochem製“ロタダー”(登録商標)AX8840(商品名))
C1−2:エチレン/メタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(Elf Atochem製“ロタダー”(登録商標)AX8900(商品名))
C2−1:エチレン/1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー”(登録商標)A0550S(商品名) 密度:861kg/m3 MFR:0.5g/10分(190℃、2160g))
C2−2:エチレン/1−オクテン共重合体(ダウケミカル社製“エンゲージ”(登録商標)HM7487(商品名) 密度:860kg/m3 MFR:0.5g/10分(190℃、2160g))
C2−3:エチレン/1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー”(登録商標)A35050(商品名) 密度:864kg/m3 MFR:35g/10分(190℃、2160g))
C2−4:エチレン/1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー”(登録商標)A4085S(商品名) 密度:885kg/m3 MFR:3.6g/10分(190℃、2160g))
C2−5:エチレン/ブチルアクリレート共重合体(Elf Atochem製“ロトリル”(登録商標)35BA40(商品名) 密度:930kg/m3 MFR:40g/10分(190℃、2160g))
(D)強化繊維
D−1:チョップドストランド(日本電気硝子(株)社製 T−127H(商品名) 3mm長、平均繊維径10.5μm)
(E) 多官能性化合物
E−1:ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル(日本乳化剤(株)社製 TMP−F32(商品名))
(1)流動性
流動性は、厚み1mm、幅10mmの短冊型成形品を作製し、その流動長により判断した。流動長は、日精樹脂工業(株)社製NEX1000型射出機を用い、実施例1〜29および比較例1〜8の組成のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を射出成形し、成形された上記短冊型成形品の長さとした。射出条件は、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出圧100MPa、射出時間10秒、冷却時間10秒にて実施した。流動長が、90mm以上であればポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性は良好と判断できる。前記流動長は、100mm以上であればより好ましい。
(2)耐冷熱衝撃性
縦47mm、横47mm、高さ27mmの、材質がS35C製の鉄芯をインサート成形用の金型に設置した。次に、上記金型に実施例1〜29および比較例1〜8の組成のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を日精樹脂工業(株)社製NEX1000型射出機にて射出成形し、樹脂厚み1.5mmで被覆したインサート成形品を得た。射出条件は、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出圧100MPa、射出時間10秒、冷却時間10秒にて実施した。上記インサート成形品について、(株)TABAI ESPEC製THERMAL SHOCK CHAMBER TSA−100S冷熱試験機を用いて、−40℃×1時間〜130℃×1時間を1サイクルとする条件で、上記インサート成形品にクラックが発生するサイクル回数を測定した。クラックの発生の有無については10サイクルに1回、確認をおこなった。クラックが発生するサイクル回数が、850サイクル以上であればインサート成形品の耐冷熱衝撃性は良好と判断できる。前記クラックが発生するサイクル回数は、1000サイクル以上が好ましく、1200サイクル以上がより好ましい。
(3)引張強度
ISO527−1:2012、ISO527−2:2012に従い、試験片の引張強度を測定した。試験片の引張強度が、75MPa以上であればインサート成形品の機械特性は良好と判断できる。前記試験片の引張強度は、100MPa以上がより好ましい。
(4)(C)オレフィン系エラストマーの密度
ISO1183:2012に従い測定した。
(5)(C)オレフィン系エラストマーのメルトフローレート
ASTM−D1238−13に従い、190℃、2160g荷重で測定した。
[実施例1〜29]
表1〜2に示したように樹脂組成物の組成を変更し、(A)、(B)、(C)、(E)成分を2軸押出機の主投入口から供給し、(D)成分を、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から供給してシリンダー温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行った。
ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各ペレットは、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、試験片を作製し、上記の評価方法により流動性、耐冷熱衝撃性、引張強度の評価を行なった。得られた試験片は、何れも耐冷熱衝撃性、引張強度に優れ、得られたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は流動性に優れたものであった。
[比較例1〜8]
表3に示したように樹脂組成物の組成を変更し、(A)、(B)、(C)成分を2軸押出機の主投入口から供給し、(D)成分を、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から供給してシリンダー温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行った。
ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各ペレットは、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、試験片を作製し、上記の評価方法により流動性、耐冷熱衝撃性、引張強度の評価を行なった。得られた試験片は、何れも耐冷熱衝撃性に劣り、また、さらに引張強度が劣るものもあった。得られたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物についても、流動性に劣るものもあった。