JP6460227B2 - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、試料の表面に沿ってプローブを相対移動させることにより、試料の表面形状を測定するための走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
走査型プローブ顕微鏡においては、ステージ上に載置された試料の表面に対して、XY平面内でプローブを相対移動させて走査することにより、その走査中にプローブと試料表面との間に作用する物理量(トンネル電流又は原子間力など)の変化が検出される。そして、走査中の上記物理量を一定に保つようにプローブのZ方向の相対位置がフィードバック制御されることにより、そのフィードバック量に基づいて試料の表面形状を測定することができる(例えば、下記特許文献1参照)。
図8は、試料の表面上でプローブを相対移動させる際の従来の態様について説明するための概略図である。図9A及び図9Bは、図8の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、図9AはX方向におけるプローブの相対位置、図9BはY方向におけるプローブの相対位置をそれぞれ示している。
図8に示すように、試料の表面上でプローブを相対移動させる際には、プローブをX方向(往路)及びX方向とは逆方向(復路)に相対移動させることにより1ライン上で往復移動させる動作と、プローブをY方向に1画素ずつ相対移動させることによりシフト移動させる動作とが交互に繰り返される。これにより、各ラインにおける往復移動中の物理量が検出され、往路及び復路のそれぞれで検出された物理量を用いてフィードバック量が調整される。
X方向へのプローブの相対速度は、図9Aに示すように、往路及び復路のいずれにおいても一定である。すなわち、開始位置P1からX方向に相対移動が開始されるプローブは、開始直後から一定速度で往路を相対移動し、折り返し位置P2で相対移動の方向が逆方向に切り替えられる。このときプローブは、相対移動の方向の切替直後から一定速度で復路を相対移動し、開始位置P1へと戻る。このように、一定速度で相対移動するプローブの相対移動の方向が交互に切り替えられることにより、各ラインにおいてプローブが相対的に往復移動される。
Y方向へのプローブの移動は、図9Bに示すように、X方向及びX方向とは逆方向に往復移動するプローブが開始位置P1に戻る度に1画素ずつ行われる。開始位置P1からY方向に相対移動が開始されるプローブは、開始直後から一定速度で相対移動し、1画素分だけ相対移動すれば停止される。
特許第4432806号公報
一般的に、走査型プローブ顕微鏡におけるプローブの相対速度(走査速度)は遅く、試料全体の表面形状を測定するのに数分程度の時間を要する。そのため、走査型プローブ顕微鏡におけるプローブの相対速度を速くして、より短時間で試料の表面形状を測定することができるような構成が望まれていた。
しかしながら、プローブの相対速度を速くした場合には、開始位置P1や折り返し位置P2において、試料の表面形状の測定結果にノイズが生じやすいという問題があった。その原因として、開始位置P1や折り返し位置P2においては、プローブの相対速度が不連続になっていることが考えられる。
すなわち、X方向へのプローブの相対移動については、開始位置P1及び折り返し位置P2において、プローブが相対的に急停止すると同時に逆方向への移動を開始するため、プローブの相対速度が急激に変化する。また、Y方向へのプローブの相対移動についても、開始位置P1においてプローブの相対速度が急激に変化する。このようなプローブの相対速度の急激な変化により、開始位置P1及び折り返し位置P2においてステージの共振周波数で振動しやすくなるため、周期的なノイズが発生しやすいと考えられる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、プローブの相対速度を速くすることができ、かつ、試料の表面形状の測定結果にノイズが生じにくい走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、プローブ、往復移動制御部、シフト移動制御部及び測定制御部を備える。前記プローブは、試料の表面に沿って相対移動する。前記往復移動制御部は、試料の表面に対して第1方向及び当該第1方向とは逆方向に前記プローブを相対移動させることにより往復移動させる。前記シフト移動制御部は、試料の表面に対して前記第1方向に直交する第2方向に前記プローブを相対移動させることによりシフト移動させる。前記測定制御部は、前記往復移動制御部及び前記シフト移動制御部により試料の表面に沿って相対移動される前記プローブの前記第1方向及び前記第2方向に直交する方向への相対的な変位量に基づいて、試料の表面形状を測定する。前記往復移動制御部は、前記プローブの相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、前記プローブを相対的に往復移動させる。前記シフト移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、前記プローブを相対的にシフト移動させる。
このような構成によれば、往復移動の際にプローブの相対移動の方向が切り替わるときや、プローブがシフト移動するときに、プローブの相対速度が不連続になるのを防止することができる。すなわち、往復移動の際にプローブの相対移動の方向を切り替えるときには、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、プローブの相対速度が急激に変化するのを防止することができる。また、シフト移動の際には、プローブの相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、プローブの相対速度が急激に変化するのを防止することができる。これにより、プローブの相対速度を速くした場合であっても周期的なノイズが発生するのを防止することができるため、プローブの相対速度を速くすることができ、かつ、試料の表面形状の測定結果にノイズが生じにくい。
前記往復移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に低下させる前に、一定速度で前記プローブを相対移動させてもよい。
このような構成によれば、往復移動の際には、一定速度でプローブを相対移動させているときに試料の表面形状を精度よく測定することができる。したがって、プローブの相対速度を速くした場合であっても、試料の表面形状の測定結果にノイズが生じにくく、かつ、精度のよい測定結果を得ることができる。
前記走査型プローブ顕微鏡は、表示部をさらに備えていてもよい。この場合、前記測定制御部は、上記一定速度で前記プローブを相対移動させているときの測定結果のみに基づいて、前記表示部に試料表面の凹凸画像を表示させてもよい。
このような構成によれば、一定速度でプローブを相対移動させているときに得られた精度のよい測定結果のみに基づいて、表示部に試料表面の凹凸画像を表示させることができる。
前記プローブは、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられる前と後とで、試料の表面における異なる位置を相対移動してもよい。この場合、前記プローブは、前記往復移動制御部による相対的な往復移動が複数回行われることによって、試料の表面における同じ位置を前記第1方向及び当該第1方向とは逆方向に沿って相対移動してもよい。
このような構成によれば、プローブの相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置で続けて行われるのではなく、往路及び復路において異なる位置で行われ、当該往復移動が複数回行われることによって、同じ位置の往路及び復路の測定結果を得ることができる。これにより、プローブの相対速度が急激に変化するのを効果的に防止しつつ、試料全体の表面形状を測定することができる。
前記プローブは、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられる前と後とで、試料の表面における同じ位置を相対移動してもよい。この場合、前記プローブは、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられている間に、前記シフト移動制御部により第2方向に徐々に相対移動した後、当該第2方向とは逆方向に徐々に相対移動してもよい。
このような構成によれば、プローブの相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置で続けて行われる際に、その相対移動の方向が切り替えられている間にプローブを第2方向に徐々に相対移動させた後、逆方向に徐々に相対移動させて元の位置に戻すことができる。これにより、プローブの相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置で続けて行われる場合であっても、プローブの相対速度が急激に変化するのを効果的に防止することができる。
前記プローブは、前記往復移動制御部により第1方向に相対移動されている間、及び、当該第1方向とは逆方向に相対移動されている間に、前記シフト移動制御部により第2方向に徐々に相対移動した後、当該第2方向とは逆方向に徐々に相対移動する動作を繰り返してもよい。この場合、前記プローブは、前記往復移動制御部による相対的な往復移動が複数回行われることによって、試料の表面における同じ位置を前記第1方向及び当該第1方向とは逆方向に沿って相対移動してもよい。
このような構成によれば、往復移動の際に、プローブが第1方向に沿った真っ直ぐなライン上で相対移動されるのではなく、第2方向に徐々に相対移動した後、逆方向に徐々に相対移動する動作を繰り返すことにより、複数のラインに跨って相対移動される。このような往復移動が複数回行われることによって、同じ位置の往路及び復路の測定結果を得ることができるため、プローブの相対速度が急激に変化するのを効果的に防止しつつ、試料全体の表面形状を測定することができる。
本発明によれば、プローブの相対速度を速くした場合であっても周期的なノイズが発生するのを防止することができるため、プローブの相対速度を速くすることができ、かつ、試料の表面形状の測定結果にノイズが生じにくい。
本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の構成例を示した概略図である。 試料の表面上でプローブを相対移動させる際の第1の態様について説明するための概略図である。 図2の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、X方向におけるプローブの相対位置を示している。 図2の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、Y方向におけるプローブの相対位置を示している。 試料の表面上でプローブを相対移動させる際の第2の態様について説明するための概略図である。 図4の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、X方向におけるプローブの相対位置を示している。 図4の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、Y方向におけるプローブの相対位置を示している。 試料の表面上でプローブを相対移動させる際の第3の態様について説明するための概略図である。 図6の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、X方向におけるプローブの相対位置を示している。 図6の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、Y方向におけるプローブの相対位置を示している。 試料の表面上でプローブを相対移動させる際の従来の態様について説明するための概略図である。 図8の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、X方向におけるプローブの相対位置を示している。 図8の態様でプローブを相対移動させる際の時間とプローブの相対位置との関係を示した図であり、Y方向におけるプローブの相対位置を示している。
図1は、本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の構成例を示した概略図である。この走査型プローブ顕微鏡は、例えば原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)であり、ステージ1上に載置された試料Sの表面に対して、XY平面内(図1の紙面に直交する面内)でプローブ2を相対移動させて走査することにより、その走査中にプローブ2と試料Sの表面との間に作用する原子間力が変化する。プローブ2は、例えば片持ち支持されたカンチレバーからなり、自由端側の先端部が試料Sの表面に接触する。
ステージ1は、例えば円柱状の部材であり、その端面上に試料Sが載置される。ステージ1の外周面には、第1圧電素子11、第2圧電素子12及び第3圧電素子13が取り付けられている。各圧電素子11,12,13は、電圧が印加されることにより変形し、その変形に伴ってステージ1が変形することにより、ステージ1上の試料Sの位置が変化する。これにより、試料Sの表面に沿ってプローブ2を相対移動させることができる。
第1圧電素子11は、ステージ1の中心軸線Lを挟んでX方向に対向する位置に1つずつ設けられている。第2圧電素子12は、ステージ1の中心軸線Lを挟んでX方向に直交するY方向に対向する位置に1つずつ設けられている。すなわち、1対の第1圧電素子11が並ぶ方向(X方向)と、1対の第2圧電素子12が並ぶ方向(Y方向)とが、互いに直交している。第3圧電素子13は、ステージ1の外周面に円環状に設けられている。
したがって、1対の第1圧電素子11に対して印加する電圧を変化させることにより、ステージ1をX方向又はX方向とは逆方向に変形させ、ステージ1上の試料Sの表面に沿ってプローブ2をX方向又はX方向とは逆方向に走査することができる。また、1対の第2圧電素子12に対して印加する電圧を変化させることにより、ステージ1をY方向又はY方向とは逆方向に変形させ、ステージ1上の試料Sの表面に沿ってプローブ2をY方向又はY方向とは逆方向に走査することができる。ステージ1をZ方向又はZ方向とは逆方向に移動させる際には、第3圧電素子13に対して印加する電圧を変化させればよい。
このようなステージ1の変形に伴って試料Sの表面上を相対移動するプローブ2には、発光部3からレーザ光などの光が照射され、プローブ2からの反射光が受光部4により受光される。試料Sの表面の凹凸に沿ってプローブ2を相対移動させた場合には、凹凸の形状に応じてプローブ2が撓み、受光部4においてプローブ2からの反射光を受光する位置が変化する。したがって、受光部4における反射光の受光位置の変化に基づいて、走査中にプローブ2と試料Sの表面との間に作用する原子間力の変化を検出することができる。
この走査型プローブ顕微鏡の動作は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部5により制御される。制御部5は、CPUがプログラムを実行することにより、往復移動制御部51、シフト移動制御部52、フィードバック制御部53及び測定制御部54などとして機能する。
往復移動制御部51は、第1圧電素子11に対する印加電圧を制御する。この往復移動制御部51の制御により、試料Sの表面に対してX方向及びX方向とは逆方向にプローブ2を相対移動させることで、プローブ2を試料Sの表面に対して相対的に往復移動させることができる。これにより、X方向に平行な方向への試料Sの表面に対するプローブ2の走査が行われる。
シフト移動制御部52は、第2圧電素子11に対する印加電圧を制御する。このシフト移動制御部52の制御により、試料Sの表面に対してY方向にプローブ2を相対移動させることで、プローブ2を試料Sの表面に対して相対的にシフト移動させることができる。これにより、Y方向に平行な方向への試料Sの表面に対するプローブ2の走査が行われる。
フィードバック制御部53は、受光部4における反射光の受光位置に基づいて、第3圧電素子13に対する印加電圧を制御する。具体的には、受光部4における反射光の受光位置を一定位置に保つように、すなわちプローブ2と試料Sの表面との間に作用する原子間力が一定となりプローブ2が変形しないように、フィードバック制御部53が第3圧電素子13に対して印加する電圧を変化させる。これにより、試料Sの表面形状に応じてステージ1がZ方向又はZ方向とは逆方向に移動することとなる。
測定制御部54は、フィードバック制御部53による制御に基づいて、試料Sの表面形状を測定する処理を行う。すなわち、試料Sの表面に沿ってXY平面内で相対移動されるプローブ2のZ方向及びZ方向とは逆方向への相対的な変位量(試料Sの表面に対するステージ1のZ方向及びZ方向とは逆方向への変位量)に基づいて、試料Sの表面形状が測定されることにより、試料Sの表面の凹凸画像が得られる。測定制御部54は、例えば液晶表示器により構成される表示部6に、取得した試料Sの表面の凹凸画像を表示させる。
図2は、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際の第1の態様について説明するための概略図である。図3A及び図3Bは、図2の態様でプローブ2を相対移動させる際の時間とプローブ2の相対位置との関係を示した図であり、図3AはX方向におけるプローブ2の相対位置、図3BはY方向におけるプローブ2の相対位置をそれぞれ示している。
図2に示すように、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際には、プローブ2をX方向(往路)及びX方向とは逆方向(復路)に相対移動させることにより往復移動させる動作と、プローブ2をY方向及びY方向とは逆方向に相対移動させることによりシフト移動させる動作とが組み合わせて実行される。この例では、往路の開始位置P1だけでなく、往路から復路への折り返し位置P2においてもプローブ2のシフト移動が行われるようになっている。
具体的には、プローブ2が折り返し位置P2においてY方向に2画素ずつシフト移動されるとともに、折り返し位置P2から開始位置P1に戻る度に、Y方向とは逆方向に1画素ずつシフト移動される。このように、開始位置P1と折り返し位置P2とでシフト量が異なるため、開始位置P1及び折り返し位置P2においてプローブ2の相対移動の方向がX方向又はX方向とは逆方向に切り替えられる前と後とで、試料Sの表面における異なる位置(異なるライン)をプローブ2が相対移動する。これにより、プローブ2は1ライン上で往復移動するのではなく、複数ラインに跨って往復移動するようになっている。
また、上記のような往復移動及びシフト移動が繰り返されることによって、図2に示すように、3ライン目以降は試料Sの表面における同じ位置(同じライン)をX方向及びX方向とは逆方向に沿って相対移動することとなる。すなわち、プローブ2の相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置で続けて行われるのではなく、往路及び復路において異なる位置で行われ、当該往復移動が複数回行われることによって、同じ位置の往路及び復路の測定結果を得ることができる。
この例では、同じ位置の往路及び復路の測定結果が得られる3ライン目以降の測定結果に基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示されるようになっている。このとき、往復移動中の原子間力が検出され、往路及び復路のそれぞれで検出された原子間力を用いてフィードバック制御部53によるフィードバック量が調整されることにより、試料Sの全体の表面形状が測定されることとなる。
ただし、上記のような往路及び復路の測定結果を用いたフィードバック量の調整を行わない場合には、各ラインについて往路又は復路の一方の測定結果のみが得られるように、開始位置P1及び折り返し位置P2におけるプローブ2のシフト移動を行うような構成としてもよい。この場合、各ラインについて往路及び復路の両方の測定結果を用いるような構成と比較して、試料Sの表面形状の測定速度を向上することができる。
図3Aに示すように、X方向及びX方向とは逆方向へのプローブ2の往復移動の際には、開始位置P1及び折り返し位置P2でプローブ2の相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させるようになっている。具体的には、開始位置P1からX方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから折り返し位置P2でX方向とは逆方向に切り替える。そして、折り返し位置P2からX方向とは逆方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから開始位置P1でX方向に切り替える。
また、図3Bに示すように、Y方向及びY方向とは逆方向へのプローブ2のシフト移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させるようになっている。具体的には、折り返し位置P2では、Y方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、2画素ずつシフト移動させる。開始位置P1では、Y方向とは逆方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、1画素ずつシフト移動させる。
上記のような往復移動及びシフト移動が繰り返されることにより、往復移動の際にプローブ2の相対移動の方向が切り替わるときや、プローブ2がシフト移動するときに、プローブ2の相対速度が不連続になるのを防止することができる。すなわち、往復移動の際にプローブ2の相対移動の方向を切り替えるときには、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、プローブ2の相対速度が急激に変化するのを防止することができる。また、シフト移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、プローブ2の相対速度が急激に変化するのを防止することができる。これにより、プローブ2の相対速度を速くした場合であっても周期的なノイズが発生するのを防止することができるため、プローブ2の相対速度を速くすることができ、かつ、試料Sの表面形状の測定結果にノイズが生じにくい。
また、往復移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に低下させる前に、一定速度でプローブ2を相対移動させるため、上記一定速度でプローブ2を相対移動させているときに試料Sの表面形状を精度よく測定することができる。この例では、プローブ2が上記一定速度で相対移動しているときの測定結果のみに基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示されるようになっている。
すなわち、開始位置P1と折り返し位置P2との間の測定結果のうち、プローブ2が上記一定速度で相対移動している位置P3と位置P4との間の測定結果のみに基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示される。したがって、プローブ2の相対速度を速くした場合であっても、試料Sの表面形状の測定結果にノイズが生じにくく、かつ、精度のよい測定結果を得ることができ、得られた精度のよい測定結果のみに基づいて、表示部6に試料Sの表面の凹凸画像を表示させることができる。上記一定速度は、往路及び復路において同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
図4は、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際の第2の態様について説明するための概略図である。図5A及び図5Bは、図4の態様でプローブ2を相対移動させる際の時間とプローブ2の相対位置との関係を示した図であり、図5AはX方向におけるプローブ2の相対位置、図5BはY方向におけるプローブ2の相対位置をそれぞれ示している。
図4に示すように、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際には、プローブ2をX方向(往路)及びX方向とは逆方向(復路)に相対移動させることにより往復移動させる動作と、プローブ2をY方向及びY方向とは逆方向に相対移動させることによりシフト移動させる動作とが組み合わせて実行される。この例では、往路の開始位置P1だけでなく、往路から復路への折り返し位置P2においてもプローブ2のシフト移動が行われるようになっている。
具体的には、折り返し位置P2においてプローブ2の相対移動の方向がX方向から逆方向に切り替えられている間に、プローブ2がY方向に徐々に相対移動した後、Y方向とは逆方向に徐々に相対移動することにより元のラインに戻る。これにより、プローブ2は、折り返し位置P2において相対移動の方向がX方向から逆方向に切り替えられる前と後とで、試料Sの表面における同じ位置(同じライン)を相対移動することとなる。
プローブ2は、折り返し位置P2から開始位置P1に戻る度に、Y方向に1画素ずつシフト移動される。このようにして各ラインについて得られた往路及び復路の測定結果に基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示されるようになっている。このとき、往復移動中の原子間力が検出され、往路及び復路のそれぞれで検出された原子間力を用いてフィードバック制御部53によるフィードバック量が調整されることにより、試料Sの全体の表面形状が測定されることとなる。
図5Aに示すように、X方向及びX方向とは逆方向へのプローブ2の往復移動の際には、開始位置P1及び折り返し位置P2でプローブ2の相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させるようになっている。具体的には、開始位置P1からX方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから折り返し位置P2でX方向とは逆方向に切り替える。そして、折り返し位置P2からX方向とは逆方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから開始位置P1でX方向に切り替える。
また、図5Bに示すように、Y方向及びY方向とは逆方向へのプローブ2のシフト移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させるようになっている。具体的には、折り返し位置P2では、Y方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させ、その後にY方向とは逆方向に相対速度を徐々に上昇させてから、再び相対速度を徐々に低下させることにより、プローブ2の位置を元のライン上に戻す。開始位置P1では、Y方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、1画素ずつシフト移動させる。
上記のような往復移動及びシフト移動が繰り返されることにより、往復移動の際にプローブ2の相対移動の方向が切り替わるときや、プローブ2がシフト移動するときに、プローブ2の相対速度が不連続になるのを防止することができる。したがって、図4、図5A及び図5Bのような態様においても、プローブ2の相対速度を速くした場合に周期的なノイズが発生するのを防止することができるため、プローブ2の相対速度を速くすることができ、かつ、試料Sの表面形状の測定結果にノイズが生じにくい。
特に、この例では、 プローブ2の相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置(同じライン)で続けて行われる際に、その相対移動の方向が切り替えられている間にプローブ2をY方向に徐々に相対移動させた後、逆方向に徐々に相対移動させて元の位置に戻すことができる。これにより、プローブ2の相対的な往復移動が、往路及び復路において同じ位置で続けて行われる場合であっても、プローブ2の相対速度が急激に変化するのを効果的に防止することができる。
また、往復移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に低下させる前に、一定速度でプローブ2を相対移動させるため、上記一定速度でプローブ2を相対移動させているときに試料Sの表面形状を精度よく測定することができる。この例では、プローブ2が上記一定速度で相対移動しているときの測定結果のみに基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示されるようになっている。
すなわち、開始位置P1と折り返し位置P2との間の測定結果のうち、プローブ2が上記一定速度で相対移動している位置P3と位置P4との間の測定結果のみに基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示される。したがって、プローブ2の相対速度を速くした場合であっても、試料Sの表面形状の測定結果にノイズが生じにくく、かつ、精度のよい測定結果を得ることができ、得られた精度のよい測定結果のみに基づいて、表示部6に試料Sの表面の凹凸画像を表示させることができる。上記一定速度は、往路及び復路において同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
図6は、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際の第3の態様について説明するための概略図である。図7A及び図7Bは、図6の態様でプローブ2を相対移動させる際の時間とプローブ2の相対位置との関係を示した図であり、図7AはX方向におけるプローブ2の相対位置、図7BはY方向におけるプローブ2の相対位置をそれぞれ示している。
図6に示すように、試料Sの表面上でプローブ2を相対移動させる際には、プローブ2をX方向(往路)及びX方向とは逆方向(復路)に相対移動させることにより往復移動させる動作と、プローブ2をY方向及びY方向とは逆方向に相対移動させることによりシフト移動させる動作とが組み合わせて実行される。この例では、往路の開始位置P1、及び、往路から復路への折り返し位置P2だけでなく、往復移動中は常にプローブ2のシフト移動が周期的に行われるようになっている。
具体的には、プローブ2がX方向に沿った真っ直ぐなライン上で相対移動されるのではなく、2画素分の振幅にてプローブ2が一定周期でY方向及びY方向とは逆方向に繰り返しシフト移動されることにより、3ラインに跨ってシフト移動しながらX方向及びX方向とは逆方向に往復移動するようになっている。そして、プローブ2が折り返し位置P2から開始位置P1に戻る度に、Y方向に1画素ずつシフト移動される。
なお、図6では、往路が実線で示されており、復路が破線で示されている。また、図6及び図7Bでは、説明を分かりやすくするために、プローブ2がY方向及びY方向とは逆方向に繰り返しシフト移動される周期が実際の周期よりも大きく示されている。
上記のような往復移動及びシフト移動が繰り返されることによって、図6に示すように、2ライン目以降は試料Sの表面における同じ位置(同じライン)をX方向及びX方向とは逆方向に沿って相対移動することとなる。すなわち、プローブ2がY方向及びY方向とは逆方向に繰り返しシフト移動される際の周期を適切に設定すれば、同一のライン上において往路及び復路でプローブ2が通過する位置が周期的に重なり合うため、その重なり合った同じ位置の往路及び復路の測定結果を得ることができる。
この例では、同じ位置の往路及び復路の測定結果が得られる2ライン目以降の測定結果に基づいて、試料Sの表面の凹凸画像が表示部6に表示されるようになっている。このとき、往復移動中の原子間力が検出され、往路及び復路のそれぞれで検出された原子間力を用いてフィードバック制御部53によるフィードバック量が調整されることにより、試料Sの全体の表面形状が測定されることとなる。
図7Aに示すように、X方向及びX方向とは逆方向へのプローブ2の往復移動の際には、開始位置P1及び折り返し位置P2でプローブ2の相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させるようになっている。具体的には、開始位置P1からX方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから折り返し位置P2でX方向とは逆方向に切り替える。そして、折り返し位置P2からX方向とは逆方向にプローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、一定時間だけ相対速度を一定に維持し、その後に相対速度を徐々に低下させてから開始位置P1でX方向に切り替える。
また、図7Bに示すように、Y方向及びY方向とは逆方向へのプローブ2のシフト移動の際には、プローブ2の相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させるようになっている。具体的には、プローブ2がX方向に相対移動されている間、及び、X方向とは逆方向に相対移動されている間に(一定の相対速度で維持されている間を含む。)、プローブ2をY方向に徐々に相対移動させた後、Y方向とは逆方向に徐々に相対移動させる動作が繰り返される。
上記のような往復移動及びシフト移動が繰り返されることにより、往復移動の際にプローブ2の相対移動の方向が切り替わるときや、プローブ2がシフト移動するときに、プローブ2の相対速度が不連続になるのを防止することができる。したがって、図6、図7A及び図7Bのような態様においても、プローブ2の相対速度を速くした場合に周期的なノイズが発生するのを防止することができるため、プローブ2の相対速度を速くすることができ、かつ、試料Sの表面形状の測定結果にノイズが生じにくい。
以上の実施形態では、プローブ2を試料Sの表面に対して相対移動させるための機構として、圧電素子11,12,13を用いた機構について説明した。このような圧電素子11,12,13としては、チューブ型圧電素子又は積層型圧電素子などを例示することができる。ただし、プローブ2を試料Sの表面に対して相対移動させるための機構は、圧電素子11,12,13に限られるものではなく、他の任意の機構を用いて、プローブ2に対するステージ1の位置を変化させることができる。また、プローブ2に対するステージ1の位置を変化させるのではなく、ステージ1に対するプローブ2の位置を変化させることにより、プローブ2を試料Sの表面に対して相対移動させるような機構であってもよい。
以上の実施形態では、走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡に、本発明が適用された構成について説明した。しかし、本発明は、原子間力顕微鏡に限らず、トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)などの他の走査型プローブ顕微鏡にも適用可能である。
1 ステージ
2 プローブ
3 発光部
4 受光部
5 制御部
6 表示部
11 第1圧電素子
12 第2圧電素子
13 第3圧電素子
51 往復移動制御部
52 シフト移動制御部
53 フィードバック制御部
54 測定制御部

Claims (5)

  1. 試料の表面に沿って相対移動するプローブと、
    試料の表面に対して第1方向及び当該第1方向とは逆方向に前記プローブを相対移動させることにより往復移動させる往復移動制御部と、
    試料の表面に対して前記第1方向に直交する第2方向に前記プローブを相対移動させることによりシフト移動させるシフト移動制御部と、
    前記往復移動制御部及び前記シフト移動制御部により試料の表面に沿って相対移動される前記プローブの前記第1方向及び前記第2方向に直交する方向への相対的な変位量に基づいて、試料の表面形状を測定する測定制御部とを備え、
    前記往復移動制御部は、前記プローブの相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、前記プローブを相対的に往復移動させ、
    前記シフト移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、前記プローブを相対的にシフト移動させ
    前記プローブは、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられる前と後とで、試料の表面における異なる位置を相対移動し、前記往復移動制御部による相対的な往復移動が複数回行われることによって、試料の表面における同じ位置を前記第1方向及び当該第1方向とは逆方向に沿って相対移動することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 前記往復移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に低下させる前に、一定速度で前記プローブを相対移動させることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 表示部をさらに備え、
    前記測定制御部は、上記一定速度で前記プローブを相対移動させているときの測定結果のみに基づいて、前記表示部に試料表面の凹凸画像を表示させることを特徴とする請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  4. 試料の表面に沿って相対移動するプローブと、
    試料の表面に対して第1方向及び当該第1方向とは逆方向に前記プローブを相対移動させることにより往復移動させる往復移動制御部と、
    試料の表面に対して前記第1方向に直交する第2方向に前記プローブを相対移動させることによりシフト移動させるシフト移動制御部と、
    前記往復移動制御部及び前記シフト移動制御部により試料の表面に沿って相対移動される前記プローブの前記第1方向及び前記第2方向に直交する方向への相対的な変位量に基づいて、試料の表面形状を測定する測定制御部とを備え、
    前記往復移動制御部は、前記プローブの相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、前記プローブを相対的に往復移動させ、
    前記シフト移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、前記プローブを相対的にシフト移動させ、
    前記プローブは、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられる前と後とで、試料の表面における同じ位置を相対移動し、前記往復移動制御部により相対移動の方向が切り替えられている間に、前記シフト移動制御部により第2方向に徐々に相対移動した後、当該第2方向とは逆方向に徐々に相対移動することを特徴とす走査型プローブ顕微鏡。
  5. 試料の表面に沿って相対移動するプローブと、
    試料の表面に対して第1方向及び当該第1方向とは逆方向に前記プローブを相対移動させることにより往復移動させる往復移動制御部と、
    試料の表面に対して前記第1方向に直交する第2方向に前記プローブを相対移動させることによりシフト移動させるシフト移動制御部と、
    前記往復移動制御部及び前記シフト移動制御部により試料の表面に沿って相対移動される前記プローブの前記第1方向及び前記第2方向に直交する方向への相対的な変位量に基づいて、試料の表面形状を測定する測定制御部とを備え、
    前記往復移動制御部は、前記プローブの相対移動の方向を切り替えるときに、相対速度を徐々に低下させてから方向を切り替え、切替後に相対速度を徐々に上昇させることにより、前記プローブを相対的に往復移動させ、
    前記シフト移動制御部は、前記プローブの相対速度を徐々に上昇させた後、相対速度を徐々に低下させることにより、前記プローブを相対的にシフト移動させ、
    前記プローブは、前記往復移動制御部により第1方向に相対移動されている間、及び、当該第1方向とは逆方向に相対移動されている間に、前記シフト移動制御部により第2方向に徐々に相対移動した後、当該第2方向とは逆方向に徐々に相対移動する動作を繰り返し、前記往復移動制御部による相対的な往復移動が複数回行われることによって、試料の表面における同じ位置を前記第1方向及び当該第1方向とは逆方向に沿って相対移動することを特徴とす走査型プローブ顕微鏡。
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