(第1の実施の形態)
本発明は、偏向手段の偏向タイミングを検出して、例えば、偏向手段を制御するにあたり、上述したように、偏向手段の往復運動(揺動運動)により偏向手段で偏向され往復走査される偏向光を利用することに着目した。本実施の形態では、具体的には、光源を点消灯するタイミングを変化させることで往路と復路における偏向光を受光素子によって検出し、受光素子上の同じ位置となる往路と復路の偏向光の時間を検出し、それらの時間から算出される偏向タイミングの情報を基に、例えば、所望の偏向タイミングで偏向されるように制御手段を介して偏向手段を制御する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる光偏向器の、偏向手段で偏向された偏向光を含む平面における断面図である。図1において、201は光源、202は偏向手段、203は光源201から出射された光線、204、205は偏向手段202により偏向される最大偏向角での光線、206は偏向手段202の光偏向中心軸、207は偏向手段202からLの距離にある平面P(光偏向中心軸206と垂直な関係にある平面)での偏向光の走査軌跡である。光源201から出射された光線203は、偏向手段202に入射し、ここで偏向されて平面P上を走査される。光源201としては、半導体レーザのような変調可能な光源を用いる。
偏向手段202には反射面が設けられ(図17の構成を参照)、偏向手段202が往復揺動することで、光線203は、最大偏向角での光線204、205の範囲で偏向させられる。この最大偏向角の大きさをθとする。以下、説明のため、偏向手段202が揺動していない状態(中立状態)での反射光線は、光偏向中心軸206と一致するとする。回転軸を中心として回転往復運動をする偏向手段202の駆動手段には、周期的な駆動波形が印加される。
図2は、本実施の形態に係わる光偏向器の、偏向手段202から偏向(反射)された偏向光が受光素子101上を移動する様子をその軌跡と共に表す模式図である。図2において、102と103は偏向光、104は偏向光の走査軌跡、105は受光素子(ラインセンサ)101の複数の受光領域である。説明の簡単化のため、ここでは、偏向光102は一次元的に走査されるとして、図2(a)で示すように方向Aの方向に軌跡104に沿って移動し、偏向光103は図2(b)で示すように方向Bの方向(方向Aの逆方向)に軌跡104に沿って移動するとする。この方向Aへの移動と方向Bへの移動を周期的に繰り返す(偏向手段202が周期的に往復運動している)とする。
受光素子101は、受光素子101上の所定位置Xで偏向光を検出できる(受光できる)位置に配置される。図2(a)に図示されるように、往路において或る所定位置Xに偏向光102が位置する時間をTAと呼ぶ。また、図2(b)に図示されるように、復路において或る所定位置Xに偏向光103が位置する時間をTBと呼ぶ。このTAとTBを検出することにより、偏向手段202の駆動信号(周期的な繰り返し信号)の変調タイミングに対する偏向手段の往復運動の運動タイミング(偏向タイミング)を算出することができる。
本実施の形態では、TAとTBを検出するために、光源201の光量を変化(変調)させ、受光素子101により光量の分布を検出することにより、偏向光の位置を検出する。この偏向光の位置を検出すれば、光量を変調するタイミングは分かっているので、或る所定位置Xに偏向光が位置する時間TAとTBを検出できることになる。
以下、詳細に述べる。まず、本実施の形態の偏向手段202による光偏向の偏向タイミングとその算出方法について述べる。
第1に、偏向タイミングについて述べる。図3に、偏向手段202の駆動手段に印加する駆動信号波形(電流波形)の一例を示す。横軸に印加時間(t)、縦軸に印加信号の大きさを示す。(a)が三角波状波形、(b)が正弦波状波形である。偏向手段202の偏向角は、これらの印加信号の波形と同様に変化する。偏向手段202を、図3で示したような周期的な印加信号により往復揺動させると、偏向手段202からLの距離にある平面P上での偏向光の走査(平面上での偏向光の移動を走査と呼ぶ)位置は、図1に符号207で示すような走査軌跡上を往復移動する。
この走査位置h(偏向手段202からLの距離にある平面P上での光偏向中心軸206からの距離)は、
h=L×tan(θ(t))・・・式(1)
の式で表すことができる。ここで θ(t)は、或る時点で偏向手段202により光線が光偏向中心軸206から偏向される偏向角である。
偏向手段202は、温度変化による構成部材の変化や駆動手段の遅延などにより、走査(偏向)特性が異なる。そのため、同じ印加駆動波形を用いても、偏向手段の偏向タイミング(印加波形に対する遅れ時間)は、一定にはならない。図4に偏向手段へ印加する波形と、偏向手段の偏向タイミングの一例を示す。図4(a)の横軸に印加時間、縦軸に印加信号の大きさを示す。図4(b)の横軸に図4(a)と同じ印加時間t、縦軸に偏向角θ(t)を示す。印加波形に対する偏向タイミングの時間遅れ(ズレ)を遅延時間Dcとする。前述したように、この遅延時間Dcは、環境等により変化する。
次に、この偏向タイミング(のズレ)の検出方法について述べる。この遅延時間Dcを測定するためには、例えば、偏向手段が最大の偏向角(揺動角)になる時間を計測する方法や、ゼロクロス点(偏向手段が揺動していない点、又は最大振幅の中点)の揺動角になる時間を検出する方法が考えられる。しかし、光学的な検出を行う場合、全走査を検出するために大きく全ての走査光を遮蔽(カバー)する光学センサを用いる必要があったり、一部の走査を検出する場合は光偏向の軸と光学センサの位置合わせを精度良く行う必要がある。
ここで、偏向手段による偏向角の変化が、図4(b)で表すように周期的に最大偏向角に対して線対称な波形が繰り返される態様(往復運動。例えば、正弦波状波形、三角波状波形)であるとする。この前提があれば、或る偏向角θXとなる時間TAとTBの中点が、往復運動の方向が変化する折り返し時間と一致する。このことを利用すると、往復方向夫々で、或る偏向角θXとなる時間TAとTBを検出し、式(2)の如くTAとTBの中点となる時間TCを算出し、印加駆動波形の同期時間(基準点での時間)との差を計算することにより、遅延時間Dcを算出できる。
ここで、遅延時間Dcは、印加波形の基準点の定義の仕方により変わる。勿論、偏向手段による偏向角の変化が、最大偏向角に対して線対称な波形が繰り返される態様ではなくて、非対称であってその非対称の比率が分かっていれば、上記式は比率による重みを付けた平均を取ることになる。
この方法では、或る偏向角θXに依らず、遅延時間Dcを算出することができるため、光学センサの配置精度に対する制約が無くなる。また、或る偏向角θXでの偏向光(すなわち、受光素子上の或る位置の偏向光)を検出するだけでよいため、他の部分の偏向光を検出以外の用途に用いることができる。本実施の形態によると、任意の偏向角での偏向光のみを検出することで(これを検出すれば、光源の変調タイミングが分かっているのでその偏向角での偏向光の時間(タイミング)が分かる)、駆動信号に対する偏向手段の遅延時間(偏向タイミングのズレ)を検出することができる。
次に、或る偏向角θXとなる時間TA、TBの検出方法について述べる。まず、或る偏向角θXとなる時間TAの検出方法について述べる。本実施の形態では、複数の或る時間tn、tn+1での偏向角θ(tn)、θ(tn+1)の関係から、或る偏向角θXとなる時間TAを検出する。
図5は、或る期間での偏向手段による偏向角の変化を示したグラフである。図5の横軸に時間t、縦軸に偏向角θ(t)を示す。図5に示すように、偏向角θ(tn)とθ(tn+1)の角度間に、或る偏向角θX(時間TA)の角度があるとする。この3つの偏向角と時間の関係は、偏向手段への印加波形の一部を取り出した波形となる(厳密には偏向手段による偏向角の変化の波形の一部であるが、両者は、位相が異なるが相似形状と考えうるので、こうできる)。そのため、印加波形が三角波状波形の場合、3点の関係は線形となる。また、印加波形が正弦波状波形の場合、3点の関係は線形と異なる場合もある。しかし、時間tnとtn+1の時間間隔が、偏向手段の周期に対して十分小さい場合を考えると、3点の関係は線形とみなすことができる。尚、3点の関係がこうした条件を満たせば、偏向角θ(tn)とθ(tn+1)の角度の外側に、或る偏向角θX(時間TA)の角度があっても、同様に扱える。
本実施の形態では、図5(a)に示すように、この3点の関係が線形とみなすことができるような、時間tn、tn+1を設定することとする。この3点が線形の関係にあることを利用して、或る偏向角θXとなる時間TAは、以下の式で算出できる。
同様に、図5(b)に示すように、偏向角θ(tm)とθ(tm+1)の角度間に、或る偏向角θX(時間TB)の角度がある場合に、同様な方法を用いて、或る偏向角θXとなる時間TBを算出する。
以上説明した式(3)、(4)を用いることで、或る偏向角θXとなる時間TA、TBを検出することができるが、本発明による偏向光を光学的に検出する方法では、偏向角は直接検出しないで、次に説明する偏向光の走査位置hを検出することを介して行う。
偏向角θと受光素子上での偏向光の位置の関係について述べる。偏向角θと走査位置hの関係は、下記の式(5)で表すことができる。ここで、受光素子上の走査方向を座標軸に取り、或る偏向角θでの受光素子での偏向光の位置をPとする。受光素子上の座標の原点が、L=L’の位置にあるとすると、或る偏向角θの偏向光の受光素子上での位置Pは、以下の式で表すことができる。
P=L×tan(θ(t))−L’ ・・・式(5)
ここで、偏向角θn、θmの受光素子上での位置をPn、Pmとし、同様にθn+1、θm+1の時の位置をPn+1、Pm+1とし、θXの時の位置をPXとする。この3点の関係はtanの関係式となるが、偏向角θnとθn+1の間が十分小さければ、この3点は線形の関係にあるといえる。本実施の形態では、この3点が線形とみなせるように偏向角θnとθn+1を設定することとする。この3点が線形の関係にあることを利用して、或る偏向角θXの受光素子上の位置Pとなる時間TAは、以下の式で算出できる。
同様に時間TBは、以下の式で算出できる。
結局、以上説明したように、偏向周期に対して、時間tnとtn+1の時間間隔が十分小さい場合を考えると、偏向角θnとθn+1の間も十分小さくなって、3点の関係は線形とみなせるようになり、式(6)、(7)を用いることで、或る偏向角θXの偏向光が受光素子上の位置PXとなる時間TA、TBを検出できることになる。なお、同じ位置Xの周辺で3つ以上の変調スポットが形成される場合でも、上記算出を繰り返すことで、或る偏向角θXの偏向光が受光素子上の位置PXとなる時間TA、TBを検出できる。
偏向角を直接検出しない方法を次に説明する。或る時間tでの偏向光の受光素子上の位置Pを検出する方法について述べる。先ず、受光素子で偏向光の位置を検出するための光源による変調スポットの生成について述べる。受光素子101は、偏向手段202からLの距離にある平面P上の走査軌跡207上に配置される。配置される位置は、走査軌跡207内であればよい。ここでは説明の簡単化のため、ほぼ走査中心に配置するとする。
所定時間範囲での往路と復路の偏向光の受光素子上位置を検出するには、所望の変調タイミングで光源を点灯・消灯させて形成された変調光を偏向して、受光素子101で光の輝度(光量)分布が或る領域(変調スポット)を形成するようにし、この変調スポットの位置情報を測定する方法を用いる。具体的には、図5で示したように、受光素子101上で往路方向に走査される期間と復路方向に走査される期間夫々において、或る所定の時間(タイミング)で光源の点灯を2回ずつ行い、受光素子101上に、往路と復路夫々におけるこれらの時間に対応したスポット(走査光により生成される輝度の高い部分)102、103を形成する。
これにより、受光素子101上で光により誘導された電荷の総量の分布を見ることにより、或る所定の位置での偏向光の時間が受光素子上で検出でき、これらのデータから上記式を用いて受光素子上の位置PXとなる時間TA、TBを検出することができるようになる。よって、夫々のスポット102、103の受光素子101上での位置を測定できるような信号を出力する受光素子101を用いることで、駆動信号に対する偏向手段の遅延時間(偏向タイミングのズレ)を測定できる。
次に、受光素子101上での間隔を測定できる信号を出力する受光素子について述べる。本実施の形態で用いる受光素子101は、変調した偏向光の位置を位置情報として検出し、その位置間隔を検出できる受光素子101である必要がある。本実施の形態において、受光素子101には、複数の受光領域105から構成されたラインセンサ(イメージセンサ)が用いられる。そのような構成の場合、光電変換部である受光素子と、光電変換された電荷の蓄積部と、蓄積した電荷の転送部を備えている必要がある。
この場合、複数の受光領域毎に偏向光(変調スポット)の光量を検出することができるので受光素子上における偏向光の位置を精度良く特定できる。この際、蓄積した電荷の転送は、走査速度に合わせて高速に行う必要は無く、受光素子101上で往復の変調スポットが生成された後に(これらの変調スポットは重ならないようにする)、より低速な転送を行うことができる。そのため、受光素子101上での走査速度vが高速になっても(例えば、印加駆動波形の1周期が短くなっても)、変調スポットの受光素子上位置の検出を行うことができるため、好ましい。
本受光素子を用いれば、変調スポットの受光素子101上での光量分布を電荷として蓄積し、複数の受光領域105毎の位置情報として出力される。そのため、走査(偏向)タイミングを直接検出する方法で問題となる検出回路の遅延の変化などによる検出精度の低下は発生しなく、高精度に変調スポットの位置を検出できて、結局、この位置データと光源の変調タイミングのデータから駆動信号に対する偏向手段の偏向タイミングを高精度で検出することができる。
次に、偏向手段を所望の偏向タイミングで動作するように制御する方法について述べる。図6は、本実施の形態に係わる光偏向器の制御手段を模式的に表す図である。図6において、208は偏向手段202からの偏向された光線、301は光源201の変調信号発生手段、305は光源201の変調信号、306は受光素子101からの検出信号、302は信号変換手段、307は偏向タイミング検出信号、303は制御信号発生手段、308は偏向手段202の制御信号、304は偏向手段202の駆動手段、309は偏向手段202の駆動信号である。
光源201は、変調信号発生手段301からの点灯と消灯の信号である変調信号305により、点灯と消灯が繰り返される(所望の変調タイミングで変調される)。この変調信号305で変調された光線203が偏向手段202により偏向走査されて、変調した偏向光208が受光素子101で検出される。なお、変調信号305は、図2で示す往路と復路の両方向の走査において、夫々、同じ位置Xの周辺で複数の変調スポット102、103が検出されるように、生成される。受光素子101により検出された往路と復路の複数の変調スポットの情報は、出力信号306として、信号変換手段302に送られる。
信号変換手段302は、受光素子からの検出信号306及び変調信号発生手段301からの変調信号305の変調タイミングと駆動手段304からの駆動信号309のタイミングのデータを基に、偏向手段202の偏向タイミングを算出し、偏向タイミング信号として走査位置ズレ信号307を出力する。制御信号発生手段303は、偏向タイミング信号307を基に、偏向手段202の偏向タイミングが所望の偏向タイミングになるように、偏向手段202の制御信号308を変化させる。偏向手段202の制御信号308は、偏向手段202が有するミラー(可動板)の偏向タイミングを変化させるために、可動板の揺動数(周波数)、位相などを変化させるように設定される。
駆動手段304は、上記制御信号308を基に駆動信号309の周期、位相などを設定し、この駆動信号を偏向手段202に印加する。この様に、本実施の形態に係わる光偏向器は、変調した偏向光208を受光素子101で検出することにより、偏向タイミングを所望のものにする制御を行うことができる。こうした制御の方法は、例えば、光源からの光を往復偏向させ該偏向光を走査する偏向手段を有する光偏向器の信号変換手段302や制御信号発生手段303に、上記手順を実行するためのプログラムを実装することでソフト的に実現できる。
本実施の形態においては、以下の様な形態も可能である。
例えば、受光素子101上で往路の変調スポットを生成した後に、蓄積した電荷の転送を行い、この転送後に復路の変調スポットを生成し、その後、電荷の転送を行うこともできる。その場合は、偏向手段の走査状態が短い期間(電荷の転送時間の二倍以上の期間)内で安定している必要がある。これにより、往路・復路の変調スポットを分離して検出することができるため、偏向タイミングの検出のアルゴリズムを簡単なものにできる。
また、本実施の形態では、受光素子101を走査軌跡上に配置していたが、反射ミラーなどを用いて、走査軌跡の偏向光を反射して取り出して受光素子に導いて検出してもよい。それにより、受光素子101の配置に対する制約が少なくなり、光偏向器を用いた装置を小型に構成することができる。また、本実施の形態では、光源を1つ例示したが、本発明は例えば複数の光源を有する光偏向器にも適用できる。この際、複数の光源からの光線が共通の偏向手段で偏向されるのであれば、その複数の光源の内、1つを用いて上記の検出を行なえばよい。また、本実施の形態では、光源として、半導体レーザの他に、LED、あるいはAOM(音響光学変調器)などの外部変調手段を有した固体レーザ、ガスレーザなど、出射光を変調できるものであればどの様なものでも用いられる。
また、本実施の形態では、偏向光が往路と復路で同一軌跡上を通過する1次元の光走査を例示して説明したが、本発明は、その他に復路の軌跡が往路の軌跡と走査方向に垂直な方向において若干異なる部分を通過し、該垂直な方向の位置において往路と復路の軌跡が異なる所謂2次元の光走査にも適用できる。また、本実施の形態では、偏向光を1次元に走査する形態を示したが、その場合、回転する円筒状の感光体の長尺方向に偏向光を走査することで、感光体表面で2次元的に偏向光を走査して静電潜像を得る所謂電子写真方式の画像形成装置の感光体への露光装置として適用することができる。また、本実施の形態は、偏向光を2次元に走査することで、プロジェクタ等の画像表示装置(投影装置)に適用することもできる(これについては、後述の実施の形態を参照)。
これら画像形成装置あるいは画像表示装置においては、画像を構成する画素に対応するように光が点灯あるいは消灯する。1画素の大きさは特に指定はなく、形成したい画像により決定される。走査スピードにもよるが、発光点が点灯期間中に一方向に移動するために、1画素は実際の走査スポット径に加えて、走査距離の分だけ形状が変化する。発光点の中心と周辺部とにおいて光量が異なる(例えば、ガウシアン分布のような異なり方)光源を用いる場合、点灯期間中に一方向に移動しても、実質的な画素の大きさは光量の大きな領域分だけ(例えば、最大光量の半値や1/e2の領域)とみなしてもよい。例えば、人の目で直接画像を見ることができるプロジェクタであれば、人の視覚に応じて適宜その様にみなして、点灯期間中に移動する画素の大きさを規定すればよい。
また、本実施の形態に係わる光偏向器では、受光素子上を往復方向に移動する往路・復路の偏向光の走査タイミングが一定になるように制御することにより、偏向手段202の偏向タイミングの変化の影響を受けずに、投影(光線走査)面での往路方向の変調パターンと復路方向の変調パターンの位置ズレをなくすことができる。そのため、電子写真方式の画像形成装置の感光体への露光装置や、2次元状に画像を表示する画像表示装置において、往復両方向の走査光を用いて所望の画像を表示することができるため、露光速度や表示速度を向上させられる。
さらに、以下の様な偏向手段の偏向タイミングの検出方法も可能である。
例えば、走査往路において受光素子上に少なくとも1つの変調スポットを形成する変調タイミングで光源を変調し、走査復路において受光素子上に少なくとも1つの変調スポットを形成する変調タイミングで光源を変調してもよい。この場合、各変調タイミングが、前記往路と復路において受光素子上の走査方向に関する同じ位置に変調スポットを形成する変調タイミングとなるように、偏向手段への駆動信号に対する光源の点消灯タイミングを少しずつ漸進的に変化させる(例えば、時間間隔を一定に保った2つの点灯タイミングを全体的に少しずつずらしていって、同じ位置に変調スポットが形成される変調タイミングとなるまで続ける)。これにより、上記式に従って偏向手段への駆動信号に対する偏向手段の偏向タイミングを算出し、この偏向タイミングの情報を基に所望の偏向タイミングで偏向されるように制御手段を介して偏向手段を制御する。
また、走査往路と復路の一方における光源の変調タイミングは、受光素子上に少なくとも2つの変調スポットを形成する変調タイミングとし、他方の変調タイミングは、受光素子上に1つの変調スポットを形成する変調タイミングとしてもよい。この場合にも、往路と復路において受光素子上の走査方向に関する同じ位置(上記他方の変調タイミングで1つの変調スポットが形成される受光素子上の位置)に変調スポットが形成されるタイミングを検出できる。これにより、同じく、上記式に従って偏向手段への駆動信号に対する偏向手段の偏向タイミングを算出し、この偏向タイミングの情報を基に所望の偏向タイミングで偏向されるように制御手段を介して偏向手段を制御する。
往路と復路において夫々1つの変調スポットを形成する形態も、次の様な条件を満たせば、可能である。すなわち、これら変調スポットの形成位置がずれていても、偏向光の受光素子上での速度が分かれば、受光素子上の走査方向に関する同じ位置での往路と復路における変調スポットのタイミングが算出できて、偏向手段の偏向タイミングを上記方法で検出できるので、こうした形態が可能である。偏向手段と受光素子までの距離が定まっていて偏向手段の運動状態が印加駆動信号から求められ場合には、こうした形態を採り得る。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、複数の受光領域105から構成された受光素子(ラインセンサ)101上での、変調された偏向光(変調スポット)の位置(中心位置)を特定する方法に関する。その他は第1の実施の形態と同じである。
図7は本実施の形態を説明する図である。図7(a)は、受光素子101上に変調スポット102が1つ形成された位置と複数の受光領域105の位置関係を示す図である。偏向光は、紙面に対して左(右)方向に走査される。以下、説明のために受光素子101上の変調スポットを1つとして説明する。勿論、複数のスポットに対しても同様の処理を複数行うことにより本実施の形態を構成できる。
図7(b)は、図7(a)で示した位置関係のとき、受光素子101上に照射される光量の分布を示す図である。横軸が受光素子101上の位置、縦軸が光量である。このように、変調スポットは、最も光量の大きな位置に対して左右対称な分布(一例として、中心が明るく周辺が暗い所謂ガウシアン分布型)を取る。
図7(c)は、図7(a)で示した位置関係のとき、複数の受光領域105の各領域から検出される信号を示したものである。横軸が、受光素子101上の位置と対応するように示した複数の受光領域105の位置、縦軸が、検出される信号の大きさである。以下、図7において、複数の受光領域105の走査方向に対する幅をwとし、左から順にn番目の受光領域と呼び、n番目の受光領域で検出される光量をPnとする。
図7を用いて、本実施の形態における2つの位置特定方法を説明する。
第1の位置特定方法では、複数の受光領域において最大受光量を得た受光領域105の位置をもって変調スポット102の位置座標とみなす。例えば、図7(c)においては、5番目の受光領域105を位置座標とみなし、受光素子101の左端から「(5−0.5)×w」の位置に変調スポット中心があると検出する。ここで、受光素子101上での走査速度vと、受光素子101が有する複数の受光領域105の走査方向に対する幅wの関係により、検出精度が決まる。走査速度vが一定の場合には、複数の受光領域105の走査方向に対する幅wが小さいほど検出精度が向上する。
第1の位置特定方法によると、受光素子101上でのスポット位置の特定の処理が簡単なものにでき、処理にかかる時間や、処理を行う部分への負荷を低減することができる。また、走査方向に対する複数の受光領域105の幅wを短くすることにより、検出精度を向上させられる。
第2の位置特定方法は、複数の受光領域105での検出信号の分布からスポット位置を特定する方法である。受光素子101で検出される変調スポットの光量分布は、最も光量の大きな位置Cに対して左右対称な分布になるとみなすことができる。そのため、最も光量の大きな位置Cが、受光領域105の中心又は受光領域105の境界と一致しない場合は、各受光領域105からの検出信号は左右非対称なものになる(一例として、図7(c)での検出信号)。これを利用し、各受光領域の位置座標「(n−1)×w」と受光量Pnとを積算し、スポット102が存在する受光領域105を対象にその積算値「Σ(n−1)×w×Pn」を総和する。そして、その総和を、スポットが存在する受光領域における総受光量「ΣPn」により除算すること((Σ(n−1)×w×Pn)/ΣPn)で、位置座標を特定する。これにより、複数の受光領域幅w以下の位置分解能でスポット中心の検出を行うことができる。なお本方法では、偏向光が複数の受光領域105にまたがる構成において、偏向光スポットの位置を特定するにあたり好ましい。勿論、最も光量の大きな位置Cが、複数の受光領域105の中心又は受光領域105の境界と一致する場合でも、本方式は用いられる。
第2の位置特定方法によると、複数の受光領域105の幅w以下の位置分解能を実現できるため、複数の受光領域105の幅wが広い(検出されるスポット幅よりは小さい)受光素子101を用いても高精度に位置を特定できる。
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、複数の受光領域105を2次元に配列した受光素子(エリアセンサ)101を用いた例である。その他は第1ないし第2の実施の形態と同じである。
図8は、本実施の形態に係わる受光素子が有する複数の受光領域105を説明するための模式図である。図8において、受光素子101は、等間隔に2次元状に縦横(軌跡方向104とこれに直交する方向)に揃って配置されている複数の受光領域105を有している。
本実施の形態のように、複数の受光領域105を2次元状に配置することで、変調スポット102の光量分布を2次元的に検出することができるため、変調スポットの形状をより正確に把握でき、また第2の実施の形態の位置特定方法などを用いる際に対象となるデータ数が増えることになる。そのため、本実施の形態を用いると、より高精度に変調スポットの位置を特定することができる。
本実施の形態の受光素子101は、画像撮影用に用いられる汎用のCCDエリアセンサや、CMOSエリアセンサを用いることができるため、特別なセンサを設計する必要がなく、この点において低コストで実現できる。
本実施の形態では、2次元状に配置した受光領域として縦横に揃って配置された受光領域を挙げたが、その他に、受光領域をハニカム状として夫々を配置した構成、走査軌跡方向あるいは軌跡に交差する方向において受光領域の列及び行が入れ子にずれた構成、あるいは受光領域が円形状、平行四辺形形状、三角形形状、ひし形形状、台形形状、その他多角形形状を有する構成でも用いることができる。
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、受光素子に入光する偏向光をレンズで集光する形態である。それ以外は第1から第3の実施の形態のいずれかと同じである。図9は、本実施の形態に係わる光偏向器の、偏向手段から偏向された偏向光を含む平面の断面図である。図9において、209はレンズである。
レンズ209は、距離Lの位置に配置される。受光素子101は、レンズ209の焦点距離fの位置に配置される。偏向手段202により偏向された光は、レンズ209により集光され変調スポットの幅が縮小される。加えて、レンズ209により更に偏向されるため、変調スポットの中心位置が、第1の実施の形態に比べて変化する。
受光素子101上の走査位置hと、ある時点での偏向角θtは、
h=f×tan(θt)・・・式(8)
の式で表すことができる。式(8)から、Lの距離に関係なく、レンズ209の焦点距離fを大きくすることにより、受光素子101上での走査速度vを速くすることができる。そのため、往復路走査における変調スポットの位置変化が大きくなるため、位置検出精度が向上する。
また、Lの距離にスポット位置が依存しないので、Lを短くし焦点距離fの長いレンズ209を用いることにより、各要素の配置が容易となり小型化できる。なお、レンズを本実施の形態の光偏向器の構成要素としてもよい。すなわち、光偏向器の筺体などの光通過部の所にレンズを据え付けてもよい。或いは、レンズを受光素子上に一体に設けてもよい。本実施の形態のようにレンズ209を用いて受光素子101に偏向光を集光すれば、上述したように、受光素子101が偏向光の位置を精度良く特定することができる。さらには、偏向器全体を小型化することができる。
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、共振現象を用いた偏向手段202を用いた光偏向器に係わる。その他は、第1の実施の形態と同じである。
偏向手段202に共振型の偏向器を用いると、共振型偏向器の機械的共振周波数fcと駆動周波数fdを一致させることにより、同じ駆動エネルギーでも広い偏向角を得ることができる。しかし、偏向器の機械的共振周波数fcは、温度などの偏向器の環境の変化により大きく変化し、偏向器202の走査(偏向)タイミングが変化する。そのため、走査状態を一定に保つためには、共振型光偏向器の共振周波数fcと駆動周波数fdを一致させる制御を行う必要がある。
図10は、共振型偏向器の周波数特性を示すグラフである。図10(a)で、横軸は共振型偏向器を揺動させる駆動信号の周波数fd、縦軸は共振型偏向器の偏向角(揺動角)の振れ幅(最大偏向角)である。この図で、最大偏向角が最大の値を取る周波数が共振周波数fcである(偏向手段202の駆動回路等での遅延を考えない理想的な場合とする)。
図10(b)で、横軸は共振型偏向器を揺動させる駆動信号の周波数fd(図10(a)の横軸と対応)で、縦軸を駆動周波数fdの同期信号からの位相の遅れである。なお、駆動周波数fdの同期信号の生成の仕方により、この位相の遅れの横軸での原点(0deg)は変化する。このように、共振型の光偏向器では、駆動周波数fdと共振周波数fcが異なると位相が変化し、走査(偏向)タイミングが変化する。
両図の関係は、偏向器の共振周波数fcが一定の場合には維持される。温度などの環境変化により、共振周波数fcが変化した場合でも、図10の夫々の関係をほぼ維持したまま(すなわち、各曲線の傾きや幅、ピークの高さなどの曲線の相似形形状は、ほとんど変化することなく)、図10の横軸の駆動周波数fdのパラメータのみが変化する。このことを用いると、走査タイミング(位相)が常に一定になるような駆動周波数fdで共振型偏向器を駆動させる(本発明の方法で駆動信号に対する偏向タイミングを検知して、それに基づいて駆動信号の駆動周波数を変化させる)ことにより、駆動周波数fdと共振周波数fcを一致させることができる。
ここで、駆動効率を表す値(共振のQ値)が大きい程、同じ周波数の差でも位相(走査タイミング)に対する影響が大きくなるため、より細かい刻みで周波数を変化させる必要がある。こうして、本実施の形態においては、往復走査の偏向タイミングを検出することにより、共振型光偏向器の共振周波数fcに駆動周波数fdを追従する制御を行い、走査タイミングを一定に保つことができる。
図11は、共振型光偏向器の偏向手段202の駆動信号309と、その駆動信号309に対応した共振型光偏向器の偏向角の時間変化を示す図である。図11(a)は、横軸を時間とし、縦軸を偏向手段202の駆動信号309の信号の大きさ(例えば、電圧)としている。図11(b)は、横軸を図11(a)の横軸と対応する時間軸として、縦軸で偏向手段202の各時間での偏向角θtを表したグラフである。
図11(a)のように、駆動波形を正弦波としたとき、駆動周波数fdと共振周波数fcが一致しているとすると、図11(b)で表すように、偏向角θtの変化には、駆動波形に対して90degの位相遅れが発生する。この際、偏向手段202の偏向角の向きの取り方(回転軸に対してどちらの方向に傾斜する場合を正或いは負と取るかによって)により、180degの位相のオフセットが発生する場合がある。この特性を利用して、共振周波数fcに駆動周波数fdを追従する制御は、上記の方法で検出される駆動波形に対する偏向タイミングがこうした位相遅れを維持するように駆動波形の周波数を制御して行なうことになる。
共振型光偏向器を用いる場合には、正弦波状以外の、三角波状、矩形波状、鋸波状の駆動波形の場合にも、時間に対して偏向角θtは正弦波状に変化することとなる。そのため、往路と復路での走査(偏向)時間が等しくなるため、往路と復路の片側の走査光のみを利用すると光源201の変調に使える時間が短く(半分以下に)なり、光の利用効率が低下する。これを解決するためには、共振型光偏向器では往復の走査光を用いて変調を行う必要がある。
本実施の形態を用いると、偏向手段202に共振型偏向器を用いた場合において、往路・復路の走査タイミングを一定にする制御を行うことができる。これにより、低電力で大きい偏向角を得られる共振型偏向器を、往復の走査光を利用する用途に用いることができる。その結果、低消費電力で、光の利用効率の高い光偏向器を提供できる。
なお、本実施の形態では、駆動周波数fdを共振周波数fcに一致させる制御について述べたが、任意の関係になるように駆動周波数と共振周波数の差を一定値に保つ制御を行うこともできる。この場合、所望の周波数からの周波数ズレに対する走査タイミングの変化の割合が小さくなるので(図10(a)のピークの所から外れた部分を用いるので、周波数ズレに対する最大偏向角の変化の割合が小さくなるので)、周波数追従制御が容易になる。
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、受光素子上で偏向光の位置を検出する為の変調スポットを生成する方法とそれを検出する方法に係わる。それ以外は、第1から第5の実施の形態のいずれかと同じである。図12は本実施の形態による変調スポットの生成方法を説明する図である。
図12(a)は、偏向手段202に印加される駆動信号309の波形を示したものである。横軸に時間、縦軸に印加信号の大きさを示す。ここでは、一例として三角波状の駆動波形で説明する。図12(b)は、光源201を変調(点灯つまりON、消灯つまりOFF)するための変調信号305を示したものである。横軸に図12(a)の横軸に対応した時間、縦軸に変調信号305のパターンを示す。ここでは、変調信号305は、定常時ではOFF信号であり、変調を行って受光素子101上で変調スポットを生成すべき時にON信号になる。
変調信号305は、偏向手段202が受光素子101を含む平面で往復両方向に偏向されている期間毎にON信号を1回ずつ生成し、受光素子101上に変調スポット102、103を分離して生成する信号である(図2参照)。この場合、ON信号とするタイミングを少しずつずらしていって、受光素子101上の所定の同じ位置に変調スポットが来るタイミングを見つけ、それを用いて上記式(2)を用いて偏向タイミングを検出すればよい。
以上の方法では、駆動信号を三角波状としたが、他の駆動波形も用いられる。図13(a)、(b)に正弦波状の駆動信号309での変調信号305の一例を示す(縦・横軸は図12と同じ)。
また、往路・復路夫々において受光素子101上に生成する変調スポットの数を1つずつとして説明したが、往復走査方向毎に複数の変調スポットを用いてもよい。複数の変調スポットが受光素子101で検出される場合、複数の位置を一度に測定して用いることができる。そのため、検出速度が向上する。この場合、第1の実施の形態の所で詳述したような偏向タイミング検出法を用いればよい。
本実施の形態の光偏向器を画像形成装置の露光装置や表示装置などに用いる場合、偏向タイミングがある所定の値のときに往復の露光または表示が正しく行われるように設定する。これにより、往復走査光を用いた高画質な画像形成などを行うことができる。
(第7の実施の形態)
本実施の形態に係わる光偏向器は、偏向光を被投影面に2次元状に投射する光偏向器に係わる。その他については、第1乃至第6の実施の形態のいずれかと同じである。
図14は本実施の形態に係わる光偏向器を模式的に示す図である。図14において、211は第2の偏向手段、210は、偏向手段202により第2の偏向手段211の反射平面上で形成される走査軌跡、212は第2の偏向手段211により偏向される光、213は或る平面、214は或る平面213において偏向光212により走査される範囲、215は或る平面213での走査線の軌跡を模式的に表したものである。なお、図6で示した制御に用いる構成は、図14には図示していない。
偏向手段202と第2の偏向手段210は、夫々が光を水平方向、垂直方向に偏向させる。したがって、偏向光212の広がる範囲が2次元領域になる。この偏向手段202と第2の偏向手段210は、偏向(揺動)速度が異なる。具体的には、図14では、2つの偏向手段を比較すると、偏向手段202は比較的高速に(高周波数で)偏向し、第2の偏向手段210は比較的低速な(低周波数で)偏向を行う。この両者の関係は、逆でもよい。
また、比較的高速な偏向を行う方の偏向手段として共振型偏向器を用いることにより、高精細な画像を表示できる。これは、共振型偏向器は、高速な偏向を行うことができるからである。光源201で変調され、出射された光線203は、偏向手段202により、最大偏向角の光線204と205の間において(最大偏向角で)偏向される。第2の偏向手段211は、偏向手段202により第2の偏向手段211の反射面上に走査された軌跡210を、光線212で示す様に偏向し、任意の位置に配置した平面213上に、符号214で示す範囲に広がる走査範囲を生成する。ここで、或る平面213の走査範囲214内での走査光の軌跡を模式的に示すと215の様になる。走査範囲214の所望の位置に受光素子101を配置する。具体的には、或る水平走査軌跡上に配置されればよい。
図15は、本実施の形態における走査範囲214内に配置される受光素子101と、画像形成に使用される表示領域220とを模式的に表す図である。走査範囲214は、表示領域220と受光素子101を配置する領域とを有する。偏向光212は、走査点S1から走査を開始すると、水平走査方向Xを往路・復路と移動し、次第に垂直走査方向Yに向かって走査範囲上部から下部へ走査される。走査点S2まで走査された偏向光は、再び走査点S1に戻され、同様な走査が繰り返される。走査線215上に配置された受光素子101は、偏向光212が通過するように配置されている。
以上のことから本実施の形態に係わる光偏向器は、共振型偏向器を用いた2次元画像形成装置において、画像形成を行いながら、受光素子101により所望の変調タイミングで変調された変調光の光量の位置的分布を検出し、このデータに基づいて共振型偏向器の偏向タイミングを検知する。そして、これを基に共振型偏向器の駆動周波数を適当に制御して偏向タイミングを所望の状態に保つ制御を行うことができるので、共振型偏向器の往復走査を用いて高画質の画像を表示できる。
なお、本実施の形態では、受光素子101を走査範囲214内に配置していたが、反射ミラーなどを用いて、或る走査範囲214の走査光(偏向光)を取り出し、これを受光素子に導いて検出してもよい。また、偏向手段202と第2の偏向手段210の間の偏向光を受光素子に導いて検出してもよい。本実施の形態では、受光素子101が設けられる領域と表示領域220を別領域としたが、受光素子101または受光素子101の検出のための反射ミラーなどの存在が視覚的に画像に影響を実用上与えなければ、表示領域220内に受光素子101や検出ミラーなどが設けられる領域を設けてもよい。
また、表示領域220以外の領域において、偏向光212は受光素子101上を通過する際にのみ発光する光であってもよい。つまり、少なくとも受光素子101上の走査軌跡上においてのみ、偏向光212は光ればよい。
(第8の実施の形態)
本実施の形態に係わる光偏向器は、受光素子101もその内に有することを特徴とする。その他は第1乃至第7の実施の形態のいずれかと同じである。
本実施の形態は、第7の実施の形態で示した2つの偏向手段を有し、夫々が偏向光を水平走査、垂直走査させることで2次元画像を表示する画像形成装置として光偏向器を用いた形態である。以下、主として、第7の実施の形態との差異のみを述べる。
図16に本実施の形態に係わる光偏向器を模式的に示す。図16において、213は光偏向器の枠体、214は枠体を或る平面としたときの走査領域、220は表示領域、215は表示領域220での走査軌跡である。受光素子101は、走査領域214内の枠体213上に配置される。これにより、表示領域220を含む平面と、受光素子101を含む平面を別の平面にすることができる。
また、受光素子101と偏向手段202からの距離Lと、受光素子101が配置される位置の光偏向中心軸206からの距離を固定できるため、受光素子101上の偏向光の速度が計算できて、受光素子101上で変調パターンが生成されるタイミングを該配置から算出することが容易になる。すなわち、偏向光の受光素子上での速度が既知とできるので、往路と復路において夫々1つの変調スポットが受光素子上に形成されるような変調タイミングで光源を変調すれば、受光素子上の同じ位置での往路と復路におけるスポットのタイミングが算出できて、駆動信号に対する偏向手段の偏向タイミングを検出できる。
本実施の形態によれば、表示領域220に形成された画像を、観察者が枠体213と画像との間に位置して観察できる構成であれば、本実施の形態の光偏向器をフロントタイプのプロジェクタのような画像表示装置として適用できる。
また、本実施の形態によれば、表示領域220を任意の平面に投影できるので、表示領域を任意に選択することができる。そのため、このプロジェクタは、画像表示を行う投影面に制約を与えることなく、任意の平面を選択できる装置として用いられる。また、表示領域220に形成された画像を、観察者が表示領域220の表示面とは反対側から観察できれば、本実施の形態の光偏向器をリアプロジェクタのような画像表示装置として用いることもできる。
また、網膜直描型表示装置やヘッドマウントディスプレイのような画像表示装置に適用することもできる。なお、本実施の形態の光偏向器は枠体213を必須の構成とはしていないものの、受光素子101が枠体213に固定配置されていれば、受光素子101の位置決めができるので上記の理由で好ましい。
また、枠体213は、表示に不必要な光を遮って表示領域220を良好に制限する上で好ましい。従って、受光素子101を配置した枠体213を本実施の形態の光偏向器の構成要素として用いるのが好ましい。