JP6457306B2 - ノルボルネン化合物付加重合体キャストフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ノルボルネン化合物付加重合体からなる透明性に優れたキャストフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、ノルボルネン化合物付加重合体からなり、透明性、耐熱性、寸法安定性などに優れた光学材料用フィルムを効率的に製膜する方法に関する。
レンズ等の光学部品、液晶表示素子、カラーフィルターやEL表示素子基板等のディスプレイ基板、バックライト、導光板等の光学材料の分野では、従来、無機ガラスが一般的に用いられている。しかし、無機ガラスには、割れやすい、柔軟性に欠ける、比重が大きい、加工性が悪い等の欠点があり、近年の軽量化、小型・高密度化の要求に応えるには不充分である。従って、透明樹脂による代替が強く求められている。
透明樹脂を光学材料用途に用いるに当っては、透明性以外にも耐熱性、耐薬品性、低吸水性等の面において非常に高い性能が求められている。例えば、表示素子基板の製造においては、金属または金属酸化物薄膜を積層させる工程で高温での加工が必要であるが、熱による基板の変形や吸水による寸法変動等が大きな問題となる。ところが、従来、光学材料に用いられているアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂は、耐熱性が低く吸水性が大きいという欠点を有していて満足すべきものではなかった。
このため、透明性、耐熱性、耐薬品性、低吸水性及び光学特性を満足させる樹脂として環状オレフィン付加重合体が提案され、この重合体を用いた液晶表示基板材料が提案されている(特許文献1)。
環状オレフィン付加重合体、特に、ポリノルボルネンは、ガラス転移温度が250℃以上と高いので、高温加工時の耐熱変形性に優れた材料である。しかも、ポリノルボルネンは吸湿性が極めて低いので使用環境での湿度変化に対する寸法安定性に優れ、さらに、線膨張率が55ppm/℃程度と低いので熱変動に対する寸法安定性に優れるという特徴を有している。
しかしながら、ポリノルボルネンは、一般溶剤に対する溶解性が低いため、キャスト法によるフィルム成形ができないという問題があった。
この改良策として、極性基を有するノルボルネン化合物との付加重合体が提案されている(特許文献2)。極性基を有するノルボルネン化合物を付加重合することにより、一般溶剤への溶解性が高まり、キャスト法によるフィルム成形が可能となった。
光学材料用途においては、高い透明性が必要であり、このために、高度に制御された高い表面平滑性が求められる。一方で、品質の良いフィルムを効率的に製膜するためには、製造における搬送ライン中で、安定して、滑りよく走行し、良好な巻き形態を得られることが不可欠であり、そのためにはフィルム表面の滑り性が良好でなくてはならない。しかしながら、フィルムの表面平滑性を高めると、フィルムの滑り性が悪化してしまう問題があった。
フィルムの滑り性を高めるためには、一般にはシリカ、炭酸カルシウムなどの無機粒子を樹脂溶液中に添加することによりフィルム表面に微細な凹凸を形成し、フィルムの滑り性を高める(特許文献3)。しかし、この場合には、フィルムの光学特性が低下する問題があった。
また、フィルムの表面にアンチブロッキング層を積層し、滑り性を高める方法も知られている(特許文献4)。しかし、ノルボルネン化合物付加重合体は主骨格が脂環式構造であるために表面エネルギーが小さく、積層したアンチブロッキング層が、ノルボルネン化合物付加重合体フィルムに密着せずに剥離してしまうという問題があった。
これに対して、フィルム自体の表面に適切な凹凸を付与することで、滑り性を高める方法が知られている(特許文献5)。特に、キャスト法でフィルム成形する場合には、適当な凹凸を有する支持体上に流延することで、支持体の表面形状をフィルムに転写させ、効率的に凹凸を制御したフィルムを成形できる(特許文献6)。
一方で、既述のとおり、ノルボルネン化合物付加重合体は、主骨格が脂環式構造であるために、キャストフィルムの支持体表面を濡らし難い。このため、適当な凹凸を有する支持体上に流延しても、溶媒が気化してノルボルネン化合物付加重合体成分(樹脂成分)が濃縮されていく過程で、フィルムが十分に固まる前に支持体からフィルムが剥離してしまい、フィルム表面の凹凸を制御できない課題があった。
そこで、支持体表面に易接着層を設けることで、乾燥中にフィルムを支持体に密着させることが報告されているが、支持体表面の性状を制御して、滑り性の良いフィルムを効率的に製造することは述べられていない(特許文献7)。
また、易接着層を設けると、しばしばノルボルネン化合物付加重合体成分に含まれる極性基が易接着層と強く相互作用し、成形したキャストフィルムを支持体から剥離する際にフィルム表面が著しく荒れてしまい、透明性が悪化する問題もあった。
このため、支持体に対して適切な密着性を有し、かつ剥離後に、滑り性が良好なノルボルネン化合物付加重合体フィルムの製膜方法が求められていた。
特開平6−202091号公報 特表平11−505880号公報 特開昭55−133431号公報 特開2007−182519号公報 特開2004−130736号公報 特開2003−33932号公報 特許第4597418号公報
本発明の課題は、透明性に優れ、滑り性(フィルムの巻き取り性)の良好なノルボルネン化合物付加重合体フィルムを、効率的に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の置換基を有するノルボルネン化合物単量体を繰返し単位として有するノルボルネン化合物を樹脂成分とする樹脂溶液を、適切な表面粗さ及び濡れ張力を有する樹脂フィルム支持体に流涎(キャスト)することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[11]のノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムの製造方法、光学フィルム、及びキャストフィルムに関する。なお、本発明において、「フィルム」とは、厳密にはその厚さで区別される「フィルム」及び「シート」の双方を含む。
[1] 一般式(1)
Figure 0006457306
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4は、互いに結合して環を形成していてもよく、n1は0または1である。)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体を有機溶媒に溶解した樹脂溶液を、樹脂フィルム支持体上に塗工して流延膜を形成し、有機溶媒を揮発させた後、樹脂フィルム支持体を剥離するキャストフィルムの製造方法であって、樹脂フィルム支持体表面の、最大高低差で表される表面粗さ(PV)が0.010〜0.300μmの範囲であり、濡れ張力が50〜75mN/mの範囲であることを特徴とするキャストフィルムの製造方法。
[2] ノルボルネン化合物付加重合体が、前記一般式(1)及び一般式(2)
Figure 0006457306
(式中、R5〜R8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R5〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよく、n2は0または1である。)
で示されるモノマーユニットを含む共重合体である前項1に記載のキャストフィルムの製造方法。
[3] 一般式(1)で示されるユニットが、下記式(A)
Figure 0006457306
で示される前項1または2に記載のキャストフィルムの製造方法。
[4] 一般式(2)で示されるユニットが、下記構造式(B)
Figure 0006457306
で示される前項2または3に記載のキャストフィルムの製造方法。
[5] 樹脂フィルム支持体の最大高低差で表される表面粗さ(PV)が0.03〜0.250μmの範囲である、前項1〜4のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
[6] 樹脂フィルム支持体の濡れ張力が59〜73mN/mの範囲である前項1〜5のいずれかに記載の製膜方法。
[7] 樹脂フィルム支持体がポリエチレンテレフタレートフィルムである前項1〜6のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
[8] 樹脂溶液の有機溶媒がトルエンまたはジクロロメタンである前項1〜7のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
[9] 前項1〜8のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法で得られた光学フィルム。
[10] 前記光学フィルムが表示素子用部材用である前項9に記載の光学フィルム。
[11] 最大高低差で表される表面粗さ(PV)が、0.010μm〜0.300μmであり、一般式(1)で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体からなる、厚み20〜300μmのキャストフィルム。
本発明のノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムは、優れた透明性及び光学特性を有し、光学材料として有用である。
本発明のキャストフィルムは、特定の置換基を有するノルボルネン化合物単量体を繰返し単位として有するノルボルネン化合物付加重合体を有機溶媒に溶解した樹脂溶液を、適切な表面粗さ及び濡れ張力を有する樹脂フィルム支持体上に流涎(キャスト)し、樹脂溶液の溶媒を揮発(乾燥)させることで得られる。乾燥後のキャストフィルムは、樹脂フィルム基材から剥離されて使用される。流延、乾燥、剥離の工程はバッチ処理でもよいが、工業的には連続法が好ましい。例えば、ロール状の長尺樹脂フィルム支持体を連続的に繰り出し、この樹脂フィルム支持体上に樹脂溶液を連続的に流延、乾燥、剥離、キャストフィルムのロールへの巻き取りの工程を実施してもよい。
〔ノルボルネン化合物付加重合体〕
本発明に用いられるノルボルネン化合物付加重合体は、一般式(1)で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体である。
Figure 0006457306
一般式(1)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、また、R2〜R4は、互いに結合して環を形成していてもよい。n1は0または1である。
一般式(1)におけるR1が表す炭素数1〜10のアルキル基は直鎖状でも分岐していてもよい。直鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。分岐を有するアルキル基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が経済性の面で好ましい。モノマー製造コストの観点からは、メチル基が特に好ましい。
一般式(1)におけるR2〜R4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。炭素数3〜10のアルキル基の場合は分岐していてもよい。これらのアルキル基としては前述のR1のアルキル基と同様のものが挙げられる。これらの中でもモノマー製造コストの観点から、水素原子が好ましい。また、R2〜R4は、互いに結合して環を形成していてもよい。n1は0または1である。モノマー製造コストの観点から、n1は0が望ましい。
なお、R2〜R4が水素原子であり、n1が0の場合、一般式(1)で示されるモノマーユニットの基本になるノルボルネン類は、R1が炭素数1のアルキル基のとき、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン、R1が炭素数2のアルキル基のとき、2−[(エチルカルボニルオキシ)メチル]−5−ノルボルネン、R1が炭素数3の直鎖状のアルキル基のとき、2−[(プロピルカルボニルオキシ)メチル]−5−ノルボルネンとなる。
また、一般式(1)で示されるモノマーユニットは一種のみに限定されない。二種以上のモノマーユニットを有していてもよい。
一般式(1)で示されるモノマーユニットは、製造コストの観点から、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンに由来する式(A)で示されるものが好ましい。
Figure 0006457306
さらに、本発明のフィルムを得るためのノルボルネン化合物付加重合体は、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体であってもよい。
Figure 0006457306
一般式(2)中、R5〜R8はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、また、R5〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよい。n2は0または1である。
一般式(2)におけるR5〜R8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、炭素数3〜10のアルキル基の場合は分岐していてもよい。これらのアルキル基としては前述の一般式(1)におけるR1のアルキル基と同様のものが挙げられる。また、R5〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよい。
これらの中でもR5〜R8としては、モノマー製造コストの観点から、水素原子が好ましい。n2は0または1である。モノマー製造コストの観点から、n2は0が望ましい。R5〜R8が水素原子であり、n2が0の場合、一般式(2)で示されるモノマーユニットの基本になるノルボルネン類は2−ノルボルネンとなる。
また、一般式(2)で示されるモノマーユニットは一種のみに限定されない。二種以上のモノマーユニットを有していてもよい。
一般式(2)で示されるモノマーユニットは、製造コストの観点から、2−ノルボルネンに由来する式(B)で示されるものが好ましい。
Figure 0006457306
一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニットから構成されるノルボルネン系共重合体において、一般式(1)で示されるモノマーユニットの含有量は10〜80モル%が好ましく、15〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%がさらに好ましい。本発明ではノルボルネン系共重合体を樹脂溶液とし、樹脂フィルム支持体上に流延してフィルム、シート等へ成形するが、一般式(1)で示されるモノマーユニットの含有量が10モル%以上であると有機溶媒への溶解性が良好となる。含有量が80モル%を以下であれば、樹脂フィルム支持体との密着性が適度なものとなる。
なお、一般式(1)で示されるモノマーユニットの含有量は粉末状もしくはフィルム状の共重合体を適当な重水素化溶媒に溶解させ、1H−NMRを測定し、その積分値より算出することができる。
さらに、一般式(1)で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムとして、さらに一般式(3)で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体、もしくは、さらに一般式(2)と一般式(3)の両方を含むノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムも好ましい。
Figure 0006457306
一般式(3)中、R9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、R9〜R12は、互いに結合して環を形成していてもよい。n3は0または1である。ただし、一般式(1)、一般式(2)で示される構造を除く。
一般式(3)におけるR9〜R12としては、具体的には、水素原子;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等の酸素原子を含む官能基;アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、及びシアノ基等の窒素原子を含む官能基;メルカプト基、アルコキシチオ基、及びアリールオキシチオ基等の硫黄原子を含む官能基;シリル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシシリル基、及びアリールオキシシリル基等のケイ素原子を含む官能基を挙げることができる。また、これらの官能基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基など)、アルケニル基、及びアリール基等の炭化水素基も挙げられる。さらに、R9〜R12は、互いに結合して環を形成してもよく、このような例としては、酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造等を例示することができる。一般式(3)のR9〜R12として、臭素原子などを導入することで本発明のノルボルネン化合物付加重合体の屈折率を調整することができる。また、水酸基の導入で水蒸気バリア性を向上することも可能となる。
本発明のフィルムとなるノルボルネン付加重合体は、基本的にはノルボルネン類のみで構成されることが好ましい。ただし、この場合であっても本発明のノルボルネン付加重合体の性質をほとんど変化させないような微少量、例えば1モル%以下の第3のモノマーユニットの存在を除外するものではない。また、本発明の製造方法で製造されるノルボルネン付加重合体は物性改良のため、本発明の効果を損なわない範囲で第3のモノマーを共重合させていてもよい。
第3のモノマーには特に制限はないが、エチレン性炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン及び1−ヘキセン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物類;1,3−ブタジエン、イソプレン等の鎖状共役ジエン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート類等を挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、1−ヘキセンのようなα−オレフィン類やスチレンのような芳香族ビニル化合物類が特に好ましい。
本発明のフィルムに使用されるノルボルネン化合物付加重合体において、各モノマーユニットの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロック、交互のいずれをもとり得るが、共重合体の物性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
本発明の製造方法で製造されるノルボルネン化合物付加重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は50,000〜2,000,000が好ましい。さらには100,000〜1,500,000がより好ましい。ポリスチレン換算数平均分子量が50,000未満であると機械強度が不十分である。ポリスチレン換算数平均分子量が2,000,000を超えると、キャストフィルムを成形する際に溶媒への溶解度が低下するばかりでなく、溶液粘度が高くなり、成形加工性が低下する。また、分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.00〜4.00が好ましく、1.30〜3.50がより好ましく、1.50〜3.30がさらに好ましい。分子量分布が広いとキャストフィルム成形時の溶液が均一になりにくいため、良好なフィルムが作製しにくくなる。
〔ノルボルネン化合物付加重合体の製造〕
本発明の樹脂溶液に使用されるノルボルネン化合物付加重合体は、重合用触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを付加重合することで製造することができる。
その製造方法は、(i)ノルボルネン系モノマー1種類のみを付加重合することにより、ノルボルネン系モノマーの単独付加重合体を得る方法、(ii)ノルボルネン系モノマー2種類以上を付加共重合することにより、ノルボルネン系モノマーの付加共重合体を得る方法、(iii)ノルボルネン系モノマー1種類以上とノルボルネン系モノマーと共重合可能な他のビニルモノマー1種類以上とを付加共重合することにより、ノルボルネン系モノマーの付加共重合体を得る方法のいずれかである。
一般式(1)で示される骨格を有するポリマーを製造するためには、一般式(4)で示されるノルボルネン化合物を付加重合することで製造できる。
Figure 0006457306
一般式(4)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、また、R2〜R4は、互いに結合して環を形成していてもよい。n1は0または1である。
具体的には、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン等のアセトキシメチル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類、4−アセトキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のアセトキシメチル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類が例示される。これらの中では2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンが好ましい。
一般式(2)で示される骨格を有するポリマーを製造するためには、一般式(5)で示されるノルボルネン化合物を付加重合することで製造できる。
Figure 0006457306
一般式(5)中、R5〜R8はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、また、R5〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよい。n2は0または1である。
具体的には、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−n−ブチル−2−ノルボルネン、5−n−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−n−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン等の無置換または炭化水素基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等の無置換または炭化水素基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン類が例示される。
これらの中では、2−ノルボルネンが好ましい。
一般式(3)で示される骨格を有するポリマーを製造するためには、一般式(6)で示されるノルボルネン化合物を付加重合することで製造できる。
Figure 0006457306
一般式(6)中、R9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ただし、R9〜R12すべてが水素原子とはならない。また、R9〜R12は、互いに結合して環を形成していてもよい。n3は0または1である。ただし、一般式(4)、一般式(5)で示されるノルボルネン化合物を除く。
具体的には、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸n−ブチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸n−ブチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸エチル等のアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸エチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸エチル等のアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等のヒドロキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸等のヒドロキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、2−ヒドロキシメチル−5−ノルボルネン、2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−5−ノルボルネン、2,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5−ノルボルネン等のヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−オール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジメタノール等のヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−アセトキシ−5−ノルボルネン、2,2−ジ(アセトキシメチル)−5−ノルボルネン、2,3−ジ(アセトキシメチル)−5−ノルボルネン等のアセトキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−アセトキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジ(アセトキシメチル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のアセトキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2−カルボキサミド等の窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボキサミド等の窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−クロロ−5−ノルボルネン、2−フルオロ−5−ノルボルネン等のハロゲン原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−フルオロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のハロゲン原子を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
2−トリメチルシロキシ−5−ノルボルネン、2−トリメトキシシリル−5−ノルボルネン、2−トリス(トリメトキシシリロキシ)シリル−5−ノルボルネン等のケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;4−トリメチルシロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−トリス(トリメトキシシリロキシ)シリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等のケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類;
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−カーボネート、5−ノルボルネン−2,3−ジチオカーボネート等の酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−カーボネート、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジチオカーボネート等の酸無水物構造、カーボネート構造、ジチオカーボネート構造を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン類等を挙げることができる。
本発明に使用するノルボルネン化合物付加重合体を得るための重合触媒は、特に限定されない。具体例としては、特開2012−77284号公報記載のπ−アリル配位子を有する1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族の遷移金属と、2座配位子であるサリチルアルジミンとからなる重合触媒を好適なものとして挙げることができる。上記重合触媒は単独で用いても良いが、助触媒、ホスフィン系配位子を同時に用いることが好ましい。
重合反応は塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、沈殿重合等で行うことができる。
〔有機溶媒〕
ノルボルネン化合物付加重合体を溶解して樹脂溶液とするための有機溶媒は、ノルボルネン化合物付加重合体を溶解でき、かつキャスト成形時に樹脂フィルム支持体表面に影響を及ぼさないものであればよく、特に限定されない。具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;等を挙げることができる。これらの中でも、容易に気化させることができるトルエンまたはジクロロメタンが、製造コストの観点から好ましい。これらの溶媒は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。
〔樹脂溶液〕
ノルボルネン化合物付加重合体を有機溶媒に溶解する手段は、特に限定されない。具体例としては、有機溶媒にノルボルネン化合物付加重合体を加えて、室温で撹拌する方法、加熱して撹拌する方法、超音波を当てる方法;有機溶媒中で重合を実施して直接に樹脂溶液を得る方法等が挙げられる。
本発明において、樹脂溶液の樹脂濃度は、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。樹脂濃度が低すぎると粘度が低すぎて、厚さの調節が困難となる。さらに生産効率も悪化し、コスト増につながる。一方で樹脂濃度が高すぎると粘度が高くなり、製膜性が悪く、ムラが大きくなることがある。また、樹脂溶液流延前に樹脂溶液をろ過することでフィルム内の不純物を低減させることが可能となり、本発明のフィルムの透過率を高め、光学フィルム用途により適するものとなる。
本発明において、樹脂溶液の粘度の範囲は25℃において、500〜100000mPa・sが好ましい。より好ましくは1000〜50000mPa・s、さらに好ましくは1000〜20000mPa・sである。粘度が低すぎると樹脂フィルム支持体上に流延した樹脂溶液が流れてしまい、流延膜厚さの調節が困難となる。さらに生産効率も悪化し、コスト増につながる。一方で粘度が高すぎると、フィルターの目詰まりが発生したり、製膜性が悪くムラが大きくなることがある。樹脂溶液の粘度は東機産業株式会社製E型粘度計TV−20を用い、25℃、回転数0.6rpm、コーンローターNo.1°34″の条件で測定することができる。
本発明の樹脂溶液を構成する樹脂成分は、基本的にはノルボルネン付加重合体のみで構成されることが好ましい。ただし、この場合であっても、本発明の樹脂溶液の性質をほとんど変化させないような微小量、例えば1質量%以下の透明樹脂(例えば、環状オレフィン付加重合体、水素化された環状オレフィン開環重合体、α−オレフィンと環状オレフィンとの付加共重合体、結晶性のα−オレフィン重合体、さらにゴム状のエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体、水素化されたブタジエン重合体、水素化されたブタジエン・スチレンブロック共重合体、水素化されたイソプレン重合体等)の存在を除外するものではない。
〔添加剤〕
樹脂溶液には、必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。
このような添加剤としては、酸化防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤等が挙げられる。
これらの添加剤の配合方法は、特に限定されない。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を例示することができる。
本発明のフィルムに用いるノルボルネン化合物付加重合体は、ノルボルネン化合物付加重合体100質量部に対して0.1〜5質量部の酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の量は、ノルボルネン化合物付加重合体100質量部に対して0.2〜3質量部であることがより好ましく、0.5〜2質量部であることがさらに好ましい。酸化防止剤の量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。他方、酸化防止剤の量が多すぎると、キャスト成形時にフィルムと樹脂フィルム支持体の間の界面にブリーディングして転写を妨げ、本発明の効果が低下するおそれがある。また、フィルムの形成工程や形成後の加熱処理時に酸化防止剤が飛散し、フィルム製造装置や加熱処理装置を汚染するおそれがあり、経済的にも不利となり、好ましくない。
酸化防止剤は、少なくともヒンダードフェノール系酸化防止剤を含んでいることが好ましい。また、本発明においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量がヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤の量より多いことが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤の量がヒンダードフェノール系酸化防止剤の量と等しいか、多いときは、表面へのブリード物が増加し光学特性が低下したり、酸化防止効果も低下したりするという問題が生じるおそれがある。
なお、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を1〜99質量部併用すると、熱寸法安定性が高いフィルムが得られ易くなるため好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤との重量比(ヒンダードフェノール系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤)が、1.5以上であることが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、アルキル置換ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アルコキシ置換ヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリアジン基含有ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル置換ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが特に好ましい。
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明で使用しうるヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤は、特に限定されない。
その具体例としては、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤を挙げることができる。これらのうち、熱寸法安定性の高いフィルムが得られ易いことから、リン系酸化防止剤が好ましい。
リン系酸化防止剤としては、通常使用されるものであれば格別な限定はなく、その具体例としては、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス−(2,6−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(混合モノ及びジ−ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシカルボニルエチル−フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−オクタデシルオキシカルボニルエチル−フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤と同様にラジカル捕捉作用や連鎖移動剤移動作用を有する酸化防止剤としては、ラクトン系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤を併用することができる。
本発明のベースフィルムに用いるノルボルネン化合物付加重合体は、ノルボルネン化合物付加重合体100質量部に対して0.1〜5質量部の酸化防止剤分散性向上剤を含んでいることが好ましい。この酸化防止剤分散性向上剤は、ノルボルネン化合物付加重合体と相溶して、酸化防止剤の分散性を向上させる。
酸化防止剤分散性向上剤の量は、ノルボルネン化合物付加重合体100質量部に対して、より好ましくは0.2〜5質量部、さらに好ましくは0.4〜4質量部である。この量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。多すぎる場合には、フィルムの形成工程や形成後の加熱処理時に酸化防止剤分散性向上剤が飛散し、フィルム製造装置や加熱処理装置を汚染するおそれがある。さらに、ノルボルネン化合物付加重合体に対して可塑剤として強く働き、成形品の耐熱性が著しく低下するおそれがある。
酸化防止剤分散性向上剤としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、脂肪族エーテル及び芳香族エーテルのいずれをも使用することができるが、カルボン酸エステルが好ましい。これらの分散剤は、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤分散性向上剤として使用し得るカルボン酸エステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、ヒドロフタル酸ジ−n−オクチル、ヒドロフタル酸−2−エチルヘキシル、ヒドロフタル酸イソデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸モノエステルまたはジエステル系化合物;オレイン酸ブチル、オレイン酸エチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アセチルリシノール酸メチル、アビエチン酸メチル、ステアリン酸ブチル、五塩化ステアリン酸メチル等の脂肪酸エステル系化合物;ジエチレングリコールベンゾエート、トリエチレングリコール−2−エチルブチラート、ペンタエリスリトールヘキサエステル等のグリコールエステル系化合物;マロン酸ジブチル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−n−ヘキシル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル;トリメリット酸トリスブチル、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリット酸エステル系化合物が挙げられる。
これらの中でも、フタル酸モノエステルまたはジエステル系化合物やトリメリット酸エステル系化合物などの芳香環を有するエステル系化合物が好ましく、フタル酸ジエステル系化合物が特に好ましい。
これらの酸化防止剤分散性向上剤は、使用する酸化防止剤との組み合わせを勘案して適宜選定すればよいが、常温、常圧において、液状でかつ沸点が200℃以上の化合物であることが好ましい。
このような条件を満たす具体的なものとしては、カルボン酸エステルとして、例えば、コハク酸ジブチル(274℃/760mmHg)、アジピン酸ジオクチル(230℃/760mmHg)、アジピン酸ジブチル(145℃/4mmHg)、アジピン酸ジイソブチル(293℃/760mmHg)、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(335℃/760mmHg)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(377℃/760mmHg)等の脂肪族二塩基酸エステル;フタル酸ジエチル(298℃/760mmHg)、フタル酸ジヘプチル(235〜245℃/10mmHg)、フタル酸ジ−n−オクチル(210℃/760mmHg)、フタル酸ジイソデシル(420℃/760mmHg)等のフタル酸エステルを挙げることができる。また、リン酸エステル系として、例えば、リン酸トリブチル(289℃/760mmHg)等を挙げることができる。
酸化防止剤及び酸化防止剤分散性向上剤の合計量は、ノルボルネン化合物付加重合体100質量部に対して、好ましくは0.2〜10質量部、さらに好ましくは2〜9質量部である。この量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。多すぎる場合には、フィルムの形成工程や形成後の加熱処理時に酸化防止剤または酸化防止剤分散性向上剤が飛散し、熱寸法変化率が大きくなったり、フィルム製造装置や加熱処理装置を汚染したりするおそれがある。さらに、ノルボルネン化合物付加重合体に対して可塑剤として強く働き、成形品の耐熱性が著しく低下するおそれがある。
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものが挙げられるが、中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、特に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
〔樹脂フィルム支持体〕
樹脂フィルム支持体である樹脂フィルムの材質は、剛性が高く、また耐有機溶剤性が高いものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリサルホン系樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。中でもポリエチレンテレフタレート(PET)は安価でかつ加工性に優れ耐薬品性も高いことから利用しやすく特に好ましい材料である。
支持体として用いるフィルムの厚みは、10μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上200μm以下が好ましい。樹脂フィルム支持体フィルムが薄すぎると、樹脂溶液の重さに耐えられずたるみを起こし、作製されたフィルムの厚みムラの原因となる。一方で樹脂フィルム支持体フィルムが厚すぎると、生産コストが高くなったりする恐れがある。連続法で製造する場合の長尺樹脂フィルム支持体フィルムの長さは、生産性の観点から100m以上であることが好ましく、500m以上であることがより好ましい。樹脂フィルム支持体フィルムの幅は製造装置の大きさに依存するが、30〜200cmが適切である。
本発明においては、最大高低差で表される表面粗さ(PV)が一定の範囲に制御された樹脂フィルム支持体を用いる。PVは、走査型プローブ顕微鏡で測定する。具体的な測定条件は実施例の項に記載のとおりである。
光学特性を損なうことなく、滑り性が良好なフィルムを成形できる点で、樹脂フィルム支持体のPVは0.010〜0.300μmの範囲であり、0.020〜0.270μmの範囲であることが好ましく、0.030〜0.250μmの範囲であることがより好ましい。支持体のPVが0.010μm未満であると、成形されたフィルムの表面が非常に滑らかになり、フィルムとフィルム、またはフィルムと搬送ロールの間での摩擦が大きくなることで滑り性が悪くなり、フィルムが搬送ラインを安定して走行せず、巻き形状が悪くなったりする。また、PVが0.300μmを超えると、フィルム表面の荒れに起因してフィルムの光学特性が悪化してしまう。
ノルボルネン化合物付加重合体フィルムとの適切な密着性を保ちつつ、支持体の表面粗さを制御する方法としては、平滑な支持体に、コロナ処理、プラズマ処理、グロー処理、オゾン処理、火炎処理、サンドブラスト処理を施す;シリカ等の充填剤を練り込む等の方法が挙げられる。中でも、製造コストの観点から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
本発明では、PVに加えて、支持体と成形されたフィルムとの密着性を適切な範囲に制御することが、滑り性の良いノルボルネン付加重合体のフィルムを成形するために重要である。
支持体とフィルムとの密着性は、支持体の濡れ張力によって評価できる。濡れ張力は、表面エネルギーを評価する尺度であり、JIS K6768に開示されている方法で求める。
支持体の濡れ張力は50〜75mN/mである。55〜73mN/mであることが好ましく、59〜73mN/mであることがより好ましい。濡れ張力が50mN/mを下回ると、ノルボルネン付加重合体フィルムの濡れ張力(30〜40mN/m)との差が小さくなるために支持体との密着が弱くなり、流延後に溶媒を気化させる工程において、濃縮されたフィルムが支持体から弾かれて、支持体の凹凸が適切に転写されない。支持体の濡れ張力が75mN/mを超えると、ノルボルネン付加重合体フィルムと支持体との密着が強くなりすぎ、剥離する際にフィルムの表面が荒れてしまう。
因みに、表面加工を施していないポリエチレンテレフタラートの濡れ張力は40〜45mN/m程度であり、ノルボルネン付加重合体フィルムを成形する場合には密着性が弱い。
〔流延工程〕
樹脂溶液は、樹脂フィルム支持体上に流延する前に、フィルターを通して、異物を除去しておくことが好ましい。フィルターの種類は特に限定されない。充填剤など非溶解成分を含まないときのフィルターの目開きは1μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上10μm以下が好ましい。フィルターの目開きが大きすぎると、異物を十分に取り除くことができず、フィッシュアイの発生や、光学物性の低下につながる。一方フィルターの目開きが小さすぎると、ろ過圧力が上がり、フィルターが詰まる恐れがある。
樹脂溶液を樹脂フィルム支持体上に流延する手段は、特に限定されない。具体的には、コンマコーター、リップコーター、バーコーター、スリットダイ、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターブレード、ロールコート、ダイコート等を用いて樹脂フィルム支持体上に流延することができる。連続的に流延する場合、ロール状に巻き取られた支持体の長尺フィルムを繰り出し、樹脂溶液を連続的に塗工し、続いて連続的に乾燥(有機溶媒の乾燥)を行い、ロールに巻き取る。このとき、支持体の樹脂フィルムを剥離してから、キャストフィルムのみを巻き取ってもよい。
〔有機溶媒揮発(乾燥)とキャストフィルムの剥離工程〕
樹脂フィルム支持体の上に流延した樹脂溶液は、溶媒を揮発させた後に、自己支持性を有するキャストフィルムとして、樹脂フィルム支持体から剥離する。前記のような連続工程ではキャストフィルムはロール状に巻き取られる。
溶媒を揮発させる方法は、特に制限されない。具体的には、熱風乾燥、赤外線(IR)加熱、減圧乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法は、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
溶媒の揮発量は、特に制限されないが、剥離時のキャストフィルムの溶媒含有率が0.01〜20質量%とすることが好ましく、0.05〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。溶媒の乾燥が不十分だと、キャストフィルムが柔らかく、自己支持性を持たないために樹脂フィルム支持体からの剥離が困難になりやすい。逆に、溶媒を蒸発させすぎると、製造のためのエネルギーコストが上がりやすい。
連続的に流延する際の樹脂フィルム支持体の搬送速度は、特に制限されないが、1〜100m/minが好ましく、2〜50m/minがより好ましく、5〜30m/minが特に好ましい。搬送速度が0.1m/minを下回ると、製造コストが高くなりすぎ、搬送速度が100m/minを超えると、フィルムとフィルムの間、またはフィルムとロールの間に空気が入ってフィルムが浮き、搬送が安定しなくなりやすい。
支持体から剥離したキャストフィルムは、必要に応じて、さらに乾燥しても良い(二次乾燥)。乾燥させる方法は特に制限されないが、具体的には、熱風乾燥、赤外線(IR)加熱、減圧乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法は、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
二次乾燥に用いる装置での、フィルムの搬送方法は特に限定されない。具体的には、ロールサポート、エアフロート、クリップテンター、ピンテンターなどが挙げられる。
〔キャストフィルム〕
本発明のノルボルネン化合物付加重合体からなるキャストフィルムの厚みは、20〜500μmであることが好ましく、30〜300μmであることがさらに好ましく、40〜150μmであることが特に好ましい。厚みが20μmを下回ると、フィルムの剛性が弱いためにシワが出易くなるなどして、ロールでの搬送が困難になる。また、厚みが500μmを超えると、フィルムの重量が重くなるために搬送ライン中でたるむなどして、やはりロールでの搬送が困難になる。
本発明のキャストフィルムの最大高低差で表される表面粗さ(PV)は、0.010〜0.300μmである。これは製造に使用する樹脂フィルム支持体の表面粗さ(PV)が反転転写されるためである。PVは、0.020〜0.270μmの範囲であることが好ましく、0.030〜0.250μmの範囲であることがより好ましい。PVが0.010〜0.300μmの範囲内であると、フィルムとフィルム、またはフィルムと搬送ロールの間での摩擦が適切となり、滑り性が良好で、フィルムが搬送ラインを安定して走行するため、ロールの巻き形状が良好となる。さらに、フィルム表面の荒れに起因するフィルムの光学特性が悪化もなく、全光線透過率や全ヘーズ値も良好となる。
本発明のキャストフィルムは、全光線透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。さらに、全ヘーズが、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下であるので、光学用材料及び表示素子用部材として好適に使用することができる。
また、飽和吸水率が、好ましくは0.001〜0.1質量%、さらに好ましくは0.001〜0.05質量%であるので、各種光学特性、例えば透明性、位相差、位相差の均一性、及び寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離等が発生せず、また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。なお、上記飽和吸水率はJIS K7209に準拠し、23℃水中で24時間浸漬して増加質量を測定することにより求められる値である。
本発明の方法で得られたキャストフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
また、本発明の方法で得られたキャストフィルムは、積層フィルムや機能層との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理や、易接着処理等の表面を物理的に接着しやすくする処理を実施しても良い。
さらに、得られたフィルムには、その片面または両面に保護フィルムをラミネートしてもよい。保護フィルムは、ポリマーの塗布層や保護フィルムの積層物などとして適宜に形成できる。その形成には透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。その例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などが挙げられる。透明保護層は、微粒子の含有によりその表面が微細凹凸構造に形成されていてもよい。
なお、フィルムのスリット加工、保護フィルムのラミネート工程、及び表面処理工程はどのような順序で実施しても良く、特に限定されない。
〔光学部品〕
本発明のノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムは、カラーフィルター用基板の他、導光板、保護フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、透明電極基板、CD、MD、DVD等の光学記録基板、TFT用基板、液晶表示基板、有機EL表示基板等や光伝送用導波路、光学レンズ類、封止材等の光学部品として、好適に使用することができる。
中でも、表示素子用部材、具体的には、カラーフィルター用基板、導光板、保護フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、透明電極基板、TFT用基板、液晶表示基板、有機EL表示基板、有機EL用エンキャップ基材等に好適に用いることができる。
本発明のノルボルネン化合物付加重合体からなるフィルムは、光学部品の他、電気絶縁部品、電気・電子部品、電子部品封止剤、医療用器材、及び包装材料にも使用することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
実施例及び比較例中の試験及び評価は以下の方法で行った。
(1)重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
テトラヒドロフランまたはクロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定する。
(2)重合体の共重合比
1H−NMR測定により求める。
(3)PV
走査型プローブ顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、5μm×5μm範囲を測定する。測定は3回行い、その平均値を支持体のPVとする。カンチレバーは、SI−DF40P2を使用する。
(4)濡れ張力
JIS K6768に記載の方法により測定する。即ち、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、濡れ張力の異なる所定の試験用混合液を支持体用の樹脂フィルム上に滴下し、2秒後の液膜の濡れ方の状態から濡れ張力(mN/m)を決定する。
(5)全光線透過率
ヘーズメーターNDH2000(株式会社日本電色工業製)を用いて測定する。
(6)全ヘーズ
ヘーズメーターNDH2000(株式会社日本電色工業製)を用いて測定する。
(7)残留溶剤率
重量乾燥法を用い、得られたフィルムを180℃のオーブン中で30分乾燥し、下式;
(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/(乾燥前の重量)×100(%)
より算出する。
合成例1:ノルボルネン−2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン共重合体の合成
特開2012−77284に記載の方法に従い、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン、ノルボルネン(株式会社東京化成工業製)、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)(CH32NH][B(C654](ストレム社製)、及びトリイソプロピルホスフィン[P(i−C373](ストレム社製)を用いてトルエン中で重合反応し、ノルボルネン−2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン共重合体ポリマーを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=916,000、分子量分布はMw/Mn=2.12であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は20.4mol%であった。
製造例1:ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面処理
表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムであるルミラー(登録商標)T60(東レ株式会社製、幅50cmの長尺フィルム)に、春日電機株式会社製コロナ処理装置CT−0212を用い、電極フィルム間距離1.0mm、出力80W、処理速度1.0m/分でコロナ処理を行った。処理前のポリエチレンテレフタレートフィルムの濡れ張力は46mN/m、PVは0.008μmであったが、処理後の濡れ張力は60mN/m、PVは0.034μmであった。
製造例2:ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面処理
ルミラーT60に、春日電機株式会社製コロナ処理装置CT−0212を用い、電極フィルム間距離1.0mm、出力160W、処理速度0.5m/分でコロナ処理を行った。処理後の濡れ張力は72mN/m、PVは0.094μmであった。
製造例3:ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面処理
表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムであるE5000(東洋紡株式会社製、幅50cmの長尺フィルム)に、春日電機株式会社製コロナ処理装置CT−0212を用い、電極フィルム間距離1.0mm、出力60W、処理速度1.0m/分でコロナ処理を行った。処理前のポリエチレンテレフタレートフィルムの濡れ張力は46mN/m、PVは0.005μmであったが、処理後の濡れ張力は58mN/m、PVは0.006μmであった。
製造例4:ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面処理
E5000に、長辺長さ30μmの不定形シリカ粉を用い、処理速度5.0m/分でサンドブラスト処理を行った。サンドブラスト処理後は水洗浄と温風乾燥を行った。処理後の濡れ張力は48mN/m、PVは0.230μmであった。このフィルムに対し、さらに、春日電機株式会社製コロナ処理装置CT−0212を用い、電極フィルム間距離1.0mm、出力80W、処理速度1.0m/分でコロナ処理を行った。処理後の濡れ張力は60mN/m、PVは0.242μmであった。
製造例5:ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面処理
E5000に、長辺長さ50μmの不定形シリカ粉を用い、処理速度3.0m/分でサンドブラスト処理を行った。サンドブラスト処理後は水洗浄と温風乾燥を行った。処理後の濡れ張力は48mN/m、PVは0.441μmであった。このフィルムに対し、さらに、春日電機株式会社製コロナ処理装置CT−0212を用い、電極フィルム間距離1.0mm、出力80W、処理速度1.0m/分でコロナ処理を行った。処理後の濡れ張力は60mN/m、PVは0.452μmであった。
実施例1:
合成例1で製造したノルボルネン付加共重合体をトルエンに溶解して10質量%樹脂溶液をとした。製造例1で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として、スリットダイを用いて樹脂溶液を当該支持体上に連続的に流延、熱風乾燥を行った。乾燥室温度は60℃とし、滞留時間は10分とした。この工程により残留溶剤率10質量%まで乾燥し、ロール状に巻き取った。その後工程において、前記のロールからフィルムを巻き出しながら、ノルボルネン付加共重合体のキャストフィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを連続的に剥離し、キャストフィルムのロールへの巻き取りを行った。搬送速度0.5m/minから徐々に搬送速度を速めたが、2m/minにおいても安定走行し、長さ200mの巻き姿良好なロールフィルムを製造した。製造したフィルム(厚み50μm)の全光線透過率は91%、全ヘーズは0.4%、PVは31nmであった。
実施例2:
合成例1で製造したノルボルネン付加共重合体をジクロロメタンに溶解して10質量%樹脂溶液とした。製造例2で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体とし以外は、実施例1と同様にして、キャストフィルムの製造を行った。搬送速度0.5m/minから徐々に搬送速度を速めたが、5m/minにおいても安定走行し、長さ260mの巻き姿良好なロールフィルムを製造した。製造したフィルム(厚み50μm)の全光線透過率は91%、全ヘーズは0.5%、PVは0.083μmであった。
実施例3:
製造例4で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体に用いた以外は実施例1と同様にしてキャストフィルムを製造した。搬送速度0.5m/minから徐々に搬送速度を速めたが、20m/minにおいても安定走行し、長さ310mの巻き姿良好なロールフィルムを製造した。製造したフィルム(厚み50μm)の全光線透過率は90%、全ヘーズは0.7%、PVは0.229μmであった。
比較例1:
支持体を、処理していないT60(東レ株式会社製、幅50cmの長尺フィルム)に変えた他は、実施例1と同様にしてフィルムを製造したが、ノルボルネン付加共重合体が乾燥中に支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離してしまい、炉内で破断し、ロールフィルムを製造することができなかった。
比較例2:
支持体を、製造例3で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムに変えた他は、実施例1と同様にしてフィルムを製造したが、巻き取り機のフリーロール上で強い縦ジワが発生し、巻き姿良好なロールフィルムを製造することができなかった。
比較例3:
支持体を、製造例5で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムに変えた他は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。搬送速度20m/minにおいて、長さ330mの巻き姿良好なロールフィルムを製造することができたが、製造したフィルムの全光線透過率は89%、全ヘーズは1.6%、PVは0.410μmであった。
比較例4:
本発明に用いられるノルボルネン化合物付加重合体と同じシクロオレフィンポリマーに分類されるが、化学構造の異なるアートン(登録商標;JSR株式会社製、テトラシクロドデセン誘導体等のメタセシス開環重合体)をトルエンに溶解して10質量%樹脂溶液とし、製造例4で製造したポリエチレンテレフタレートフィルムにスリットダイを用いて連続的に流延し、連続熱風乾燥により残留溶剤率10%まで乾燥後に剥離して巻き取りを行ったが、乾燥中にキャストフィルムが支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離してしまい、乾燥装置内で破断し、ロールフィルムを製造することができなかった。実施例3との比較から、本発明の課題達成には、ノルボルネン系化合物重合体の構造を制御することが重要であることが分かる。
実施例1〜3及び比較例1〜4の結果をまとめて表1に示す。
Figure 0006457306
本発明の、機能性層を有するノルボルネン化合物付加(共)重合体からなるフィルムは、透明性及び光学特性の他、耐熱性及び一般溶剤への溶解性に優れ、さらに吸水率及び線膨張率が低いので、光学材料として有用であり、有機ELディスプレイの基板材料などに使用することができる。

Claims (8)

  1. 一般式(1)
    Figure 0006457306
    (式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2〜R4は、互いに結合して環を形成していてもよく、n1は0または1である。)
    で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン化合物付加重合体を有機溶媒に溶解した樹脂溶液を、樹脂フィルム支持体上に塗工して流延膜を形成し、有機溶媒を揮発させた後、樹脂フィルム支持体を剥離するキャストフィルムの製造方法であって、樹脂フィルム支持体表面の、最大高低差で表される表面粗さ(PV)が0.010〜0.300μmの範囲であり、濡れ張力が50〜75mN/mの範囲であることを特徴とするキャストフィルムの製造方法。
  2. ノルボルネン化合物付加重合体が、前記一般式(1)及び一般式(2)
    Figure 0006457306
    (式中、R5〜R8はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R5〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよく、n2は0または1である。)
    で示されるモノマーユニットを含む共重合体である請求項1に記載のキャストフィルムの製造方法。
  3. 一般式(1)で示されるユニットが、下記式(A)
    Figure 0006457306
    で示される請求項1または2に記載のキャストフィルムの製造方法。
  4. 一般式(2)で示されるユニットが、下記式(B)
    Figure 0006457306
    で示される請求項2または3に記載のキャストフィルムの製造方法。
  5. 樹脂フィルム支持体の最大高低差で表される表面粗さ(PV)が0.03〜0.250μmの範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
  6. 樹脂フィルム支持体の濡れ張力が59〜73mN/mの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の製膜方法。
  7. 樹脂フィルム支持体がポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
  8. 樹脂溶液の有機溶媒がトルエンまたはジクロロメタンである請求項1〜7のいずれかに記載のキャストフィルムの製造方法。
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