JP6456343B2 - 点火プラグ - Google Patents

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Description

本明細書は、内燃機関等において燃料ガスに点火するための点火プラグに関する。
内燃機関に用いられる点火プラグは、例えば、中心電極と接地電極との間に形成される間隙に火花放電を発生させて、内燃機関等において燃料ガスに点火する。これらの電極は、強度と、耐酸化性と、耐火花消耗性と、の全てを兼ね備えることが好ましい。例えば、強度の向上は、電極の小径化による点火プラグの着火性能の向上に貢献し、耐酸化性および耐火花消耗性の向上は、点火プラグの耐久性の向上に貢献する。このために、これらの特性を改善すべく、様々な電極用の材料が提案されている。
例えば、特許文献1には、電極材料として、チタン(Ti)とバナジウム(V)とニオブ(Nb)の少なくとも1種の元素と、希土類元素と、マンガン(Mn)と、を含むニッケル(Ni)合金が提案されている。この合金によれば、高い熱伝導性と、強度と、を維持できる、とされている。
また、特許文献2には、電極材料として、シリコン(Si)と、アルミニウム(Al)と、希土類元素(例えば、Y、Nd、Sm)と、を含むNi合金が提案されている。この合金によれば、耐高温酸化性と、耐火花消耗性と、を両立できる、とされている。
国際公開第2011/077619号 特開2004−206931号公報
しかしながら、さらなる性能向上やコスト低減などの観点から、点火プラグには、強度と耐酸化性と耐火花消耗性とのさらなる向上が求められている。
本明細書は、点火プラグの電極の強度と耐酸化性と耐火花消耗性とを向上することができる新たな技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
[形態]中心電極と、前記中心電極との間に間隙を形成する接地電極と、を備え、前記中心電極と前記接地電極とのうちの少なくとも一方の電極は、50重量%以上のニッケル(Ni)を含むNi合金を用いて形成されている点火プラグであって、
前記Ni合金は、アルミニウム(Al)と、クロム(Cr)と、ケイ素(Si)と、マンガン(Mn)と、から成る群から選択される1種以上の元素を合計で1質量%以上含有し、かつ、銀(Ag)を含有し、
前記電極のうち、前記Ni合金で形成された部分を、前記間隙の近傍で前記電極の長手方向と垂直に切断する断面において、
前記電極の表面からの深さ方向の距離が100μmの点を始点、180μmの点を終点とする80μm×80μmの測定領域の面積に対するAg析出物が占める面積の割合は、0.1%以上であり、
前記Ag析出物は、Agを主成分とする析出物であり、
前記Ni合金の平均粒径は、250μm以下である、点火プラグ。
[適用例1]中心電極と、前記中心電極との間に間隙を形成する接地電極と、を備え、前記中心電極と前記接地電極とのうちの少なくとも一方の電極は、50重量%以上のニッケル(Ni)を含むNi合金を用いて形成されている点火プラグであって、
前記Ni合金は、アルミニウム(Al)と、クロム(Cr)と、ケイ素(Si)と、マンガン(Mn)と、から成る群から選択される1種以上の元素を合計で1質量%以上含有し、かつ、銀(Ag)を含有し、
前記電極のうち、前記Ni合金で形成された部分を、前記間隙の近傍で前記電極の長手方向と垂直に切断する断面において、
前記電極の表面からの深さ方向の距離が100μmの点を始点、180μmの点を終点とする80μm×80μmの測定領域の面積に対するAgを含む析出物が占める面積の割合は、0.1%以上であり、
前記Ni合金の平均粒径は、250μm以下である、点火プラグ。
上記構成によれば、点火プラグの電極の強度と耐酸化性と耐火花消耗性とを向上することができる。
[適用例2]適用例1に記載の点火プラグであって、
前記電極の表面のうち前記間隙を形成する放電面において、Niが露出する面積の割合は、50%以上である、点火プラグ。
上記構成によれば、例えば、電極の耐火花消耗性をより向上することができる。
[適用例3]適用例1または2に記載の点火プラグであって、
前記Ni合金は、85重量%以上のNiを含む、点火プラグ。
上記構成によれば、さらに、電極の耐火花消耗性を向上できる。
[適用例4]適用例1〜3のいずれかに記載の点火プラグであって、
前記断面の全体の面積に対するAgを含む析出物が占める面積の割合は、0.1%以上である、点火プラグ。
上記構成によれば、さらに、電極の強度と耐火花消耗性とを向上できる。
[適用例5]適用例1〜4のいずれかに記載の点火プラグであって、
アルゴン雰囲気中に摂氏1000度で50時間保持した後に水冷により常温まで冷却した状態において、
前記断面の全体の面積に対するAgを含む析出物が占める面積の割合は、0.1%以上であり、
前記Ni合金の平均粒径は、250μm以下である、点火プラグ。
上記構成によれば、高温環境下での電極の耐火花消耗性を向上できる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、点火プラグや点火プラグを用いた点火装置、その点火プラグを搭載する内燃機関や、その点火プラグを用いた点火装置を搭載する内燃機関、点火プラグの電極、点火プラグの電極用の合金等の態様で実現することができる。
実施形態の点火プラグの一例の断面図である。 点火プラグ100の先端近傍の拡大断面図である。 接地電極30を間隙Gの近傍で接地電極30の長手方向と垂直に切断する断面CSを示す図である。 Ni−Agの2元系状態図である。 平均粒径Raveの測定法の説明図である。 第2実施形態の中心電極20を間隙Gの近傍で中心電極20の長手方向と垂直に切断する断面CS2を示す図である。 変形例の接地電極30bの断面CSを示す図である。
A.実施形態:
A−1.点火プラグの構成:
図1は、実施形態の点火プラグの一例の断面図である。図示された一点波線は、点火プラグ100の軸線COを示している。図示された断面は、軸線COを含む断面である。以下、軸線COと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。軸線COと平行な方向のうち、図1における下方向を先端方向LDと呼び、上方向を後端方向BDとも呼ぶ。先端方向LDは、後述する端子金具40から電極20、30に向かう方向である。また、軸線COを中心とし、軸線COと垂直な面上に位置する円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、当該円の円周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。先端方向LDの端を、単に、先端とも呼び、後端方向BDの端を、単に、後端とも呼ぶ。
点火プラグ100は、絶縁体10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、第1の導電性シール層60と、抵抗体70と、第2の導電性シール層80と、第1パッキン8と、タルク9と、第2パッキン6と、第3パッキン7と、を備えている。
絶縁体10は、軸線方向に沿って延びて絶縁体10を貫通する軸孔12を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁体10は、先端側から後端方向BDに向かって順番に並ぶ、脚部13と、縮外径部15と、第1胴部17と、鍔部19と、第2胴部18と、を有している。縮外径部15の外径は、先端方向LDに向かって、徐々に縮径している。絶縁体10の縮外径部15の近傍(図1の例では、第1胴部17)の内部には、先端方向LDに向かって内径が徐々に縮径している縮内径部16が形成されている。
中心電極20は、絶縁体10の軸孔12内の先端側に位置している。中心電極20は、軸線方向に沿って延びる棒状の部材である。中心電極20は、先端側から後端方向BDに向かって順番に並ぶ、脚部25と、鍔部24と、頭部23と、を有している。脚部25の先端側の部分は、絶縁体10の先端側で、軸孔12の外に露出している。中心電極20の他の部分は、軸孔12内に保持されている。鍔部24の先端側の面は、絶縁体10の縮内径部16によって、支持されている。
中心電極20は、例えば、ニッケル(Ni)またはニッケルを主成分として含む合金(例えば、NCF600、NCF601)を用いて形成されている。
端子金具40は、絶縁体10の軸孔12内の後端側に位置している。端子金具40は、軸線方向に沿って延びる棒状体であり、導電材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。端子金具40は、先端側から後端方向BDに向かって順番で並ぶ、脚部43と、鍔部42と、キャップ装着部41と、を有している。脚部43は、絶縁体10の軸孔12に挿入されている。キャップ装着部41は、絶縁体10の後端側で、軸孔12の外に露出している。
円柱状の抵抗体70は、絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間に、配置されている。抵抗体70は、火花発生時の電波ノイズを低減する機能を有している。抵抗体70は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料と、を含む組成物で形成されている。
第1の導電性シール層60は、中心電極20と抵抗体70との間に配置され、第2の導電性シール層80は、端子金具40と抵抗体70との間に配置されている。この結果、中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70と導電性シール層60、80とを介して、電気的に接続される。導電性シール層60、80は、例えば、B23−SiO2系等のガラス粒子と金属粒子(Cu、Feなど)とを含む組成物で形成されている。
主体金具50は、軸線COに沿って延びて主体金具50を貫通する挿入孔59を有する略円筒状の部材である。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50の挿入孔59には、絶縁体10が挿入されている。主体金具50は、絶縁体10の径方向の周囲に配置された状態で、絶縁体10を保持している。主体金具50の先端側では、絶縁体10の先端側の端部(本実施形態では、脚部13の先端側の部分)が、挿入孔59の外に露出している。主体金具50の後端側では、絶縁体10の後端側の端部(本実施形態では、第2胴部18の後端側の部分)が、挿入孔59の外に露出している。
主体金具50は、先端側から後端方向BDに向かって順番に並ぶ、ネジ部52と、座部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を有している。座部54とネジ部52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌め込まれている。
座部54は、鍔状の部分である。ネジ部52は、内燃機関の取付孔に螺合するためのネジが外周面に形成された略円筒状の部分である。
主体金具50は、変形部58よりも先端側に配置された、縮内径部56を有している。縮内径部56の内径は、後端側から先端方向LDに向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の縮外径部15と、の間には、第1パッキン8が挟まれている。第1パッキン8は、鉄製のOリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
工具係合部51の形状は、点火プラグレンチが係合する形状(例えば、六角柱)である。工具係合部51の後端側には、加締部53が設けられている。加締部53は、絶縁体10の鍔部19よりも後端側に配置され、主体金具50の後端側の端を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。
主体金具50の後端側では、主体金具50の内周面と、絶縁体10の外周面と、の間に、環状の空間SPが形成されている。本実施形態では、この空間SPは、主体金具50の加締部53および工具係合部51と、絶縁体10の鍔部19の後端部分および第2胴部18と、に囲まれた空間である。この空間SP内の後端側には、第2パッキン6が配置されている。この空間SP内の先端側には、第3パッキン7が配置されている。本実施形態では、これらのパッキン6、7は、鉄製のCリングである(他の材料も採用可能である)。空間SP内における2つのパッキン6、7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。
点火プラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が先端側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。第1パッキン8は、縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁体10との間を通って外に漏れることが、抑制される。また、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
接地電極30は、主体金具50と電気的に接続された棒状の部材である。接地電極30は、例えば、ニッケル(Ni)を主成分として含む合金を用いて形成されている。接地電極30を形成するニッケル合金の詳細については、後述する。
A−2.点火プラグの先端近傍の構成
図2を参照して、点火プラグ100の先端近傍の構成について、さらに、説明する。図2は、点火プラグ100の先端近傍の拡大断面図である。
絶縁体10の先端(すなわち、脚部13の先端)は、主体金具50の先端より、先端側に位置している。そして、中心電極20の先端は、絶縁体10の先端より先端側に位置している。
接地電極30の一端は、接地電極30と主体金具50とが電気的に導通するように、例えば、抵抗溶接によって、主体金具50の先端に接続されている接続端31である。接地電極30の他端は、自由端32である。接地電極30のうち、主体金具50に接続された接続端31側の部分である接続部33は、軸線COと平行に延びている。接地電極30のうち、自由端32側の部分である自由端部34は、軸線COと垂直に延びている。接地電極30のうち、接続部33と自由端部34との間の部分である曲部35は、約90度だけ曲げられている。
接地電極30の自由端部34の表面のうち、後端側の側面341は、中心電極20の先端面である第1放電面29と軸線方向に対向する第2放電面39を含む。中心電極20の第1放電面29と、接地電極30の第2放電面39とは、火花放電が発生する間隙G(火花ギャップとも呼ぶ)を形成している。
このように、本実施形態の点火プラグ100では、接地電極30の間隙Gを形成する部分に、イリジウムやパラジウムなどの貴金属や該貴金属を含む合金で形成された貴金属チップを備えていない。貴金属チップを備えないことによって、部品点数の削減、貴金属チップを接合する工程などの工程数の削減を実現することができる。これによって、接地電極30、ひいては、点火プラグ100の製造コストを低減できる。
図3は、接地電極30を、間隙Gの近傍で、接地電極30の長手方向と垂直に切断する断面CSを示す図である。この断面CSは、第2放電面39を通る断面であり、図2の例では、軸線COを含むA−A断面である。本実施形態では、断面CSは、略矩形を有している。図3の下側には、図3の上側の断面における表面の近傍の領域SAの拡大図が示されている。
A−3.接地電極30を形成する材料
接地電極30を形成する材料について説明する。接地電極30の太さ、すなわち、接地電極30の長手方向と垂直な断面積が小さいほど、接地電極30によって、火花や燃焼ガスの火炎の拡大が物理的に妨げられ難い。また、接地電極30の長手方向と垂直な断面積が小さいほど、接地電極30によって、火花や燃焼ガスの火炎の熱エネルギーが吸収される作用(消炎作用)によるエネルギーロスが小さくなる。このように、接地電極30の長手方向と垂直な断面積が小さいほど、点火プラグ100の着火性能が向上する。一方で、接地電極30の長手方向と垂直な断面積が小さいほど、接地電極30の物理的な強度が低下する。したがって、接地電極30を形成する材料自体の物理的な強度が高ければ、接地電極30の長手方向と垂直な断面積を小さくすることができ、点火プラグ100の着火性能を向上できる。このために、接地電極30を形成する材料は、物理的な強度が求められる。
また、接地電極30は、燃焼室内に最も突出している部分であるので、高温の燃焼ガスに曝される。このために、接地電極30を形成する材料には、点火プラグ100の寿命を確保する観点から、高い耐酸化性が求められる。耐酸化性が低いと、酸化消耗が大きくなるため、接地電極30の長手方向と垂直な断面積を小さくすることも困難になるので、着火性能の観点からも耐酸化性が高いことが好ましい。
さらに、本実施形態の点火プラグ100は、上述したように、間隙Gを形成する部分に貴金属チップを用いていない。このために、接地電極30を形成する材料には、点火プラグ100の寿命を確保する観点から、火花放電のエネルギーによる消耗に対する耐性(耐火花消耗性)が求められる。耐火花消耗性が低いと、火花による消耗が大きくなるため、接地電極30の長手方向と垂直な断面積を小さくすることも困難になるので、着火性能の観点からも耐火花消耗性が高いことが好ましい。
特に、近年は、内燃機関のエミッションの低減や燃費向上のために、内燃機関の燃焼室内の更なる高温化が進んでいることや、点火プラグ100の小型化が進んでいることから、接地電極30を形成する材料には、より高いレベルの耐酸化性、耐火花消耗性、強度が求められている。このために、本実施形態では、接地電極30の耐酸化性、耐火花消耗性、強度を向上するために、接地電極30を形成する材料に、工夫がなされている。以下に詳しく説明する。
接地電極30の材料は、ニッケル(Ni)を主成分とする合金(以下、単にNi合金とも呼ぶ)である。このNi合金(すなわち、本実施形態の接地電極30)は、以下の(1)〜(5)を満たしている。
(1)Ni合金は、50重量%以上のNiを含む。
(2)Ni合金は、添加物として、少なくともアルミニウム(Al)と、クロム(Cr)と、ケイ素(Si)と、マンガン(Mn)と、から成る群から選択される1種以上の元素を合計で1質量%以上含有している。
(3)Ni合金は、さらに、銀(Ag)を含み、断面CSにおける測定領域MA(図2)の面積に対する銀析出物OPが占める面積の割合(以下、表面近傍面積率SRとも呼ぶ)は、0.1%以上である。
(4)Ni合金の平均粒径Rave(母材MPの平均粒径)は、250μm以下である。
(5)第2放電面39において、Niが露出する面積の割合(以下、Ni露出率NRとも呼ぶ)は、50%以上である。
50重量%以上のNiを含むNi合金は、例えば、鉄(Fe)を50重量%以上含む合金と比較して、融点が高く、耐酸化性に優れている。例えば、仮に、Feを50重量%以上含む合金を採用すれば、ベースの合金の耐酸化性が不十分であるので、後述する添加物を制御したとしても、十分な耐酸化性を得られない。また、Ni合金において、Niの割合が小さくなると、他の元素の割合が相対的に増加し、熱伝導率が低下するので、接地電極30が高温になりやすくなる。この結果、Ni合金において、Niの含有率が小さくなると、接地電極30の耐火花消耗性が低下する。
本実施形態のNi合金は、上記(1)を満たすので、接地電極30の耐酸化性と耐火花消耗性とを向上することができる。
Al、Cr、Si、Mnと、から成る群から選択される1種以上の添加元素は、酸化物(例えば、Al、Cr、SiO、MnO)の被膜をNi合金の表面に形成するので、Ni合金の耐酸化性を向上することができる。
本実施形態のNi合金は、上記(2)を満たすので、接地電極30の耐酸化性を向上することができる。
本実施形態のNi合金(接地電極30)は、図3の下側の拡大図に示すように、母材MPと、母材MPの内部に分散して配置された銀析出物OPと、を含んでいる。銀析出物OPは、銀(Ag)を主成分(例えば、98重量%以上のAgを含む)とする析出物である。銀析出物OPは、図示しない母材MPの結晶粒の粒界に析出している。測定領域MAは、図3に示すように、接地電極30の表面から深さ方向の距離が100μmの点を始点、180μmの点を終点とする80μm×80μmの矩形の領域である。例えば、図3の例では、測定領域MAは、最も近い表面SFと平行な方向の幅が80μmであり、該表面SFと垂直な方向の幅が80μmである矩形の領域である。また、測定領域MAの表面SFと平行な2辺のうち、表面SFに近い側の辺NEと、表面SFと、の距離は、100μmである。測定領域MAの表面SFと平行な2辺のうち、表面SFから遠い側の辺FEと、表面SFと、の距離は、180μmである。
図4は、Ni−Agの2元系状態図である。この状態図から解るように、Niに対するAgの固溶量は非常に小さいため、Ni合金にある程度の量(例えば、0.1重量%以上)のAgを添加すると、母材MP内に、銀析出物OPが析出する。
銀析出物OPが発生することによって、母材MPのAgの含有率(固溶量)は、非常に小さくなるので、Agの添加による母材MPの熱伝導性の低下は、Niに固溶しやすい元素を添加する場合より小さい。同様に、Agの添加による母材MPの融点の低下もNiに固溶しやすい元素を添加する場合より小さい。したがって、Agの添加による母材MPの耐火花消耗性の低下は、非常に小さい。
そして、Agは、Niよりも熱伝導性が高い。また、図4の状態図から解るように、Agに対するNiの固溶量は極めて小さいため、銀析出物OPのAgの純度は、高いと考えられる。このことから、銀析出物OPの熱伝導性は、非常に良好であると考えられる。このために、銀析出物OPは、Ni合金の全体の熱伝導性を向上させるので、Ni合金の温度の上昇を抑制して、Ni合金の耐火花消耗性を向上させることができる。
本実施形態のNi合金は、上記(3)を満たすので、銀析出物OPの存在によって、接地電極30の表面近傍の熱伝導性を向上し、引いては、接地電極30の耐火花消耗性を向上することができる。
また、析出物による析出強化は、固溶した添加物による固溶強化と比較して、材料が強化される程度が大幅に大きい。このために、銀析出物OPは、Ni合金の強度を大幅に向上させる。強度不足によって発生する接地電極30の折損は、内燃機関の燃焼室内で受ける衝撃に起因する疲労破壊によるものがほとんどである。疲労破壊は、接地電極30の表面に発生したクラックが内部に進展することによって発生する。このため、接地電極30の表面(すなわち、Ni合金の表面)近傍の強度の向上が重要である。
本実施形態のNi合金は、上記(3)を満たすので、銀析出物OPの存在によって、接地電極30の表面近傍の強度を向上することができる。
Ni合金の平均粒径Raveが小さいほど、材料の強度が向上する。本実施形態のNi合金は、上記(4)を満たすので、接地電極30の強度、特に、低温(具体的には、摂氏約700度)での接地電極30の強度を向上することができる。
第2放電面39の表面の近傍は、火花のエネルギーを直接受ける部位であるので、耐火花消耗性が高いNiが露出する面積の割合が大きいほど、耐火花消耗性が向上する。本実施形態のNi合金は、上記(5)を満たすので、接地電極30の耐火花消耗性を向上することができる。
以上の説明から解るように、本実施形態では、上記の(1)〜(5)が満たされることによって、点火プラグ100の接地電極30の強度と耐酸化性と耐火花消耗性とを向上することができる。
また、耐酸化性は、酸化被膜を形成する添加元素(例えば、上述したAl、Cr、Si、Mn)を増やすことによっても向上し得るが、これらの添加元素を増やすことによって耐火花消耗性を向上することは困難である。酸化被膜とNi合金本体との間は、金属間結合や共有結合などと比較して結合力が弱い分子間力で結合されている。この結果、火花放電の衝撃によって、酸化被膜は比較的容易にNi合金本体から剥離するためである。したがって、耐火花消耗性を向上するためには、添加元素の量を抑えて、Niの含有率を増やすことによって、融点の低下や熱伝導率の低下を抑制することが有効である。このために、本実施形態のNi合金は、85重量%以上のNiを含むことが好ましい。こうすれば、接地電極30の耐火花消耗性を、さらに、向上することができる。
また、接地電極30の表面の近傍でなく、接地電極30の内部についても熱伝導率が高い方が、接地電極30の温度上昇を抑制できるので、接地電極30の耐火花消耗性が向上する。また、接地電極30の内部についても強度が高い方が、接地電極30の全体の強度を向上することができる。このために、本実施形態のNi合金は、断面CSの全体の面積に対する銀析出物OPが占める面積の割合(以下、全体面積率ARとも呼ぶ)は、0.1%以上であることが好ましい。こうすれば、接地電極30の強度と耐火花消耗性とを向上できる。
内燃機関では、高回転時には燃焼室内の温度が、摂氏900度以上の高温になるので、高温時において接地電極30内の構造が変化すると、接地電極30の強度や耐火花消耗性が低下するおそれがある。例えば、高温環境下で使用された場合に、銀析出物OPの消失や、Ni合金の平均粒径Raveの増大が起こると、接地電極30の強度や耐火花消耗性が低下し得る。このために、本実施例では、アルゴン雰囲気中に摂氏1000度で50時間保持した後に水冷により常温まで冷却する処理(以下、高温保持処理とも呼ぶ)後の状態において、銀析出物OPの全体面積率ARは、0.1%以上であり、Ni合金の平均粒径Raveは、250μm以下であることが好ましい。こうすれば、高温環境下での接地電極30の耐火花消耗性を向上できる。
A−4.接地電極30の製造方法
接地電極30は、溶解工程、冷却工程、加工工程を経て製造される。溶解工程では、通常の真空溶解炉を用いて、所望の成分組成を持った合金の溶湯が調製される。冷却工程では、真空溶解炉内にて、溶湯を冷却することによって、インゴットが得られる。加工工程では、インゴットを、例えば、熱間鍛造にて、所定の直径(例えば、1.6mm)の棒材に加工する。加工工程では、さらに、棒材に冷間で伸線加工を施すことによって、所定の断面寸法(例えば、1.5mm×2.8mmの矩形)を有する線材が得られる。線材を所定の長さ(例えば、10mm)に切断することによって、接地電極30が得られる。
得られた接地電極30は、主体金具50の先端に一端が接合され、その後に曲げ加工がなされる。これによって、接地電極30が完成する。
ここで、銀析出物OPの量、および、Ni合金の平均粒径Raveの調整は、例えば、溶解工程おいて調製されるNi合金の組成、溶解工程および冷却工程における熱処理の条件(保持温度や冷却速度など)、加工工程における加工条件(加工率や加工時の温度など)を工夫することによって実現される。
例えば、Ni合金の組成において、例えば、Agの含有率を高くするほど、銀析出物OPの量を増大させることができるので、銀析出物OPの表面近傍面積率SRおよび全体面積率ARを増大させることができる。また、熱処理の条件において、冷却速度を速くするほど、熱処理時間を長くするほど、銀析出物OPの量を増大させることができる。一方、Ni合金の組成において、性能に影響しない不純物の量を増やすほど、Ni合金の平均粒径Raveを小さくすることができる。また、熱処理の条件において、熱処理温度を低くするほど、Ni合金の平均粒径Raveを小さくすることができる。また、加工条件において、加工率を高くするほど、Ni合金の平均粒径Raveを小さくすることができる。
また、高温保持処理後の状態において、銀析出物OPの量の過度な低下を抑制することは、例えば、予めNi合金の組成において、例えば、Agの含有率を高くしておくことによって実現することができる。例えば、Ni合金全体におけるAgの含有率を1重量%以上とすれば、高温保持処理後においても、銀析出物OPの全体面積率ARを0.1%以上に維持することができる。
同様に、高温保持処理後の状態において、Ni合金の平均粒径Raveの過度な増大を抑制することは、例えば、高温保持処理前のNi合金の平均粒径Raveを小さくしておくことによって実現することができる。
B.評価試験
点火プラグのサンプルを用いて、耐火花消耗性と、耐酸化性と、強度と、を評価する評価試験が実行された。評価試験では、下の表1、2に示すように、23種類のサンプル1〜23が作成された。各サンプルにおいて、接地電極30を形成する材料(Ni合金)以外の構成は、共通である。
各サンプル間で共通な事項は以下の通りである。
主体金具50のネジ径:M14
主体金具50先端から絶縁体10先端までの長さ:2mm
主体金具50先端から中心電極20先端までの長さ:3mm
中心電極20先端の径(第1放電面29の径):0.6mm
曲げ加工前の接地電極30の断面の寸法:1.5mm×2.8mm
曲げ加工前の接地電極30の長手方向の長さ:10mm
間隙Gの長さ(第1放電面29と第2放電面39との間の距離):0.85mm
下の表1、2に示すように、各サンプルでは、接地電極30を形成する材料が互いに異なる。
Figure 0006456343
Figure 0006456343
これらのサンプルの接地電極30に用いられたNi合金は、表1、2に示すように、組成と、高温保持処理前の銀析出物OPの面積率(表面近傍面積率SRおよび全体面積率AR)と、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARと、Ni露出率NRと、Ni合金の平均粒径Raveと、の少なくとも一つが異なっている。
各種類のサンプルの接地電極30に用いられた合金は、表1に示す元素(Ni、Ag、Si、Cr、Al、Mn、その他)を、表1に示す含有率(単位は、重量%)だけ含んでいる。「その他」の元素は、サンプル16では、4重量%のFeと、残余のB、Mo、V、W、Co、Ti、C、および、不可避不純物である。サンプル6〜10、17〜23では、8重量%のFeと、残余のB、Mo、V、W、Co、Ti、C、および、不可避不純物である。サンプル5、11〜13、15では、16重量%のFeと、残余のB、Mo、V、W、Co、Ti、C、および、不可避不純物である。サンプル14では、40重量%のFeと、残余のB、Mo、V、W、Co、Ti、C、および不可避不純物である。サンプル1〜4では、45重量%のFeと、残余のB、Mo、V、W、Co、Ti、C、および、不可避不純物である。なお、各サンプルの接地電極30の成分の含有率は、接地電極30のうち、主体金具50と先端面から3mm離れた位置より先端側の部分について、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用いて測定された。
なお、各サンプルのSi、Cr、Al、Mnの合計の含有率は、0%、0.9%、1%、2%、3%、4%、9%、28%、29%、30%、32%、33%のいずれかであった。
表2には、各サンプルについて、高温保持処理前の表面近傍面積率SRおよび全体面積率ARと、高温保持処理後の全体面積率ARと、が示されている。表面近傍面積率SRは、以下のように測定された。まず、各サンプルの接地電極30の図3の断面CSの測定領域MA(図3)に対して、Ag成分のマッピング画像の撮影を行うことによって、測定領域MA内の銀析出物OPが検出された。マッピング画像の撮影には、FE−EPMA(Field Emission-Electron Probe Micro Analysis)、具体的には、日本電子株式会社製のJXA−8500Fに付属されたWDS(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)が用いられた。マッピング画像の撮影は、加速電圧20KV、カウント数15万以上で行われた。そして、Ag成分のマッピング画像を用いて、測定領域MAの面積に対する銀析出物OPの面積が、表面近傍面積率SRとして算出された。
全体面積率ARは、図3の断面CSの中心近傍の80μm×80μmの矩形の領域(図示省略)を測定領域として同様の分析を行うことによって測定された。
各サンプルの高温処理前の表面近傍面積率SRは、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.20%のいずれかであった。
各サンプルの高温処理前の全体面積率ARは、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.15%のいずれかであった。
各サンプルの高温処理後の全体面積率ARは、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.12%のいずれかであった。
表2には、各サンプルの第2放電面39のNi露出率NRが示されている。Ni露出率NRは、以下のように測定された。接地電極30の第2放電面39の中心近傍の200μm×200μmの矩形の領域(図示省略)を測定領域として、上述したFE−EPMAを用いたNi成分のマッピング画像の撮影が行われた。マッピング画像の撮影は、加速電圧20KV、カウント数15万以上で行われた。そして、Ni成分のマッピング画像を用いて、測定領域の面積に対するNiが検出された部分の面積が、Ni露出率NRとして算出された。
各サンプルのNi露出率NRは、40%、45%、50%、55%、80%のいずれかであった。
表2には、各サンプルの接地電極30のNi合金の高温保持処理前の平均粒径Raveと、高温保持処理後の平均粒径Raveが示されている。Ni合金の平均粒径Raveは、以下のように測定された。図5は、平均粒径Raveの測定法の説明図である。先ず、各サンプルの接地電極30の自由端32から2mm離れた位置を、長手方向と垂直に切断した断面(図3の断面CSと同様な形状を有する)を研磨して鏡面を得る。そして、該鏡面の拡大写真を、金属顕微鏡を用いて撮影する。該拡大写真において、該鏡面の中心に1mm×1mm(実寸値)の矩形領域SMA(図5)を特定する。そして、該矩形領域SMAを0.2mm×0.2mmの升目状に区切る縦方向の線L1、および、横方向の線L2を設定する(図5)。縦方向の線L1は、0.2mm間隔で並んでいる。縦方向の線L1の本数は、矩形領域SMAの外枠を形成する線を含めて、6本である。同様に、横方向の線L2は、0.2mm間隔で並んだ6本の線である。これらの12本の線L1、L2のそれぞれについて、当該線と、Ni合金の母材MPの結晶粒の粒界と、が交差する交差数を数える。そして、各線の交差数の合計をMcとする。この場合に、平均粒径Rave(単位はμm)は、図5に示すように、以下の式(1)を用いて算出される。
Rave=(1000×12)/(Mc−12) ...(1)
各サンプルの高温保持処理前の平均粒径Raveは、200μm、250μm、260μmのいずれかであった。各サンプルの高温保持処理後の平均粒径Raveは、250μm、260μmのいずれかであった。
これらのサンプル1〜23は、上述した製造方法で作製され、上述したNi合金の組成、熱処理の条件、加工条件の少なくとも1個をサンプルごとに変更することによって、作製された。
耐火花消耗性の評価試験では、低温域(摂氏約700度程度の温度域)での試験と、高温域(摂氏約900度の温度域)での試験と、が行われた。
低温域の試験では、200時間の実機運転が行われ、実機運転後の各サンプルの間隙G(火花ギャップ)の増加量が測定された。実機運転は、4気筒、排気量1.3L、自然吸気のガソリンエンジンに各サンプルを取り付けて、スロットル全開(WOT(Wide-Open Throttle))、回転速度3000rpmの条件で行われた。
高温域の試験では、回転速度が5000rpmに設定され、その他の条件は、低温域の試験と同様の条件で行われた。
間隙Gの増加量が0.3mm以上であるサンプルの評価を「D」とし、0.2mm以上0.3mm未満であるサンプルの評価を「C」とし、0.1mm以上0.2mm未満であるサンプルの評価を「B」とし、0.1mm未満であるサンプルの評価を「A」とした。
耐酸化性の試験では、200時間の実機運転が行われた。実機運転では、4気筒、排気量1.3L、自然吸気のガソリンエンジンに各サンプルを取り付けて、1分間のスロットル全開(WOT(Wide-Open Throttle))での運転の後に1分間のアイドリング運転を行うサイクルが、繰り返し行われた。スロットル全開の運転での回転速度は、3500rpmとされ、アイドリング運転での回転速度は、760rpmとされた。
実機運転後の各サンプルの接地電極30の図3の断面CSを観察し、後端方向BD側(燃焼室の中心側)の表面における酸化物の層の厚さが測定された。酸化物の層の厚さがが0.1mm以上であるサンプルの評価を「B」とし、0.1mm未満であるサンプルの評価を「A」とした。
強度の評価試験では、低温域での試験と、高温域での試験と、が行われた。
低温域の試験では、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて、各サンプルの接地電極30の材料について、JIS Z 2274に準拠した回転曲げ疲労試験が行われた。具体的な試験条件は、雰囲気:大気、試験温度:摂氏700度、繰り返し速度:3000rpm、加重波形:正弦波、応力比:−1(両振り)、繰り返し回数:10である。また、応力振幅は、100MP、150MPとの2種類を用いた。
高温域の試験では、試験温度が、摂氏900度に設定され、その他の条件は、低温域の試験と同様の条件で行われた。
応力振幅が100MPの試験で破断したサンプルの評価を「C」とし、応力振幅が100MPの試験で破断せず、応力振幅が150MPの試験で破断したサンプルの評価を「B」とし、応力振幅が150MPの試験で破断しなかったサンプルの評価を「A」とした。
評価結果は、以下の表3に示す通りである。
Figure 0006456343
サンプル1〜12は、比較のためのサンプルであり、上記実施形態が満たす上記(1)〜(5)の少なくとも1つを満たしていない。サンプル13〜23は、少なくとも上記(1)〜(5)を全て満たしている。
上記(2)を満たしていないサンプル1、2は、耐酸化性の評価は「B」であった。これに対して、上記(2)を満たしているサンプル3〜23の耐酸化性の評価は「A」であった。この結果から、上記(2)を満たすことによって、接地電極30の耐酸化性を確保できることが確認できた。
サンプル1〜10は、上記(1)、(3)、(5)のうちの少なくとも1個を満たしていない。例えば、サンプル1〜4は、(1)、(3)、(5)のいずれも満たしていない。サンプル5、6は、(1)を満たしているが、(3)、(5)を満たしていない。サンプル7、8は、(1)、(3)を満たしているが、(5)を満たしていない。サンプル9、10は、(1)、(5)を満たしているが、(3)を満たしていない。
上記(1)、(3)、(5)のうちの少なくとも1個を満たしていないサンプル1〜10の低温域での耐火花消耗性の評価は、「D」であった。これに対して、上記(1)、(3)、(5)を全て満たすサンプル11〜23の低温域での耐火花消耗性の評価は、「C」以上であった。この結果から、上記(1)、(3)、(5)を満たすことによって、接地電極30の低火花消耗性、特に低温域での耐火花消耗性を向上できることが確認できた。
上記(4)を満たしていないサンプル1〜12の低温域での強度の評価は、「C」であった。これに対して、上記(4)を満たすサンプル13〜23の低温域での強度の評価は、「B」以上であった。この結果から、上記(4)を満たすことによって、低温域での強度を向上できることが確認できた。
以上の説明から解るように、上記(1)〜(5)を全て満たすことによって、接地電極30の強度と耐酸化性と耐火花消耗性とを向上できることが確認できた。
さらに、上記(1)〜(5)を全て満たすサンプル13〜23について、さらに、説明する。これらのサンプル13〜23のうち、Niの含有率が85重量%未満であるサンプル13〜15の耐火花消耗性の評価は、高温域でも低温域でも「C」であった。これに対して、Niの含有率が85重量%以上であるサンプル16〜23の耐火花消耗性の評価は、高温域でも低温域でも「B」以上であった。この結果から、接地電極30を形成するNi合金は、85重量%以上のNiを含むことで、接地電極30の耐火花消耗性を、さらに、向上できることが確認できた。
さらに、Niの含有率が85重量%以上であるサンプル16〜23のうち、高温保持処理前の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%未満であるサンプル16、17の低温域での耐火花消耗性および強度の評価は、「B」であった。これに対して、サンプル16〜23のうち、高温保持処理前の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であるサンプル18〜23の低温域での耐火花消耗性および強度の評価は、「A」であった。この結果から、高温保持処理前の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であることで、接地電極30の低温域での耐火花消耗性および強度を、さらに、向上できることが確認できた。
また、サンプル16〜23のうち、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%未満であるサンプル16〜20の高温域での耐火花消耗性の評価は、「B」であった。これに対して、サンプル16〜23のうち、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であるサンプル21〜23の高温域での耐火花消耗性の評価は、「A」であった。この結果から、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であることで、接地電極30の高温域での耐火花消耗性を、さらに、向上できることが確認できた。
さらに、サンプル16〜23のうち、高温保持処理後のNi合金の平均粒径Raveが、250μmを超えている、または、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%未満であるサンプル16〜21の高温域での強度の評価は、「B」であった。これに対して、サンプル16〜23のうち、高温保持処理後のNi合金の平均粒径Raveが、250μm以下であり、かつ、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であるサンプル22、23の高温域での強度の評価は、「A」であった。この結果から、これに対して、高温保持処理後のNi合金の平均粒径Raveが、250μm以下であり、かつ、高温保持処理後の銀析出物OPの全体面積率ARが、0.10%以上であることで、接地電極30の高温域での強度をさらに向上できることが確認できた。
C.第2実施形態
上記第1実施形態の接地電極30の材料は、中心電極20の材料としても用いることができる。この例を第2実施形態として説明する。第2実施形態の中心電極20の材料を除く構成は、図1、図2に示す第1実施例の点火プラグ100の構成と同一である。
図6は、第2実施形態の中心電極20を、間隙Gの近傍で、中心電極20の長手方向と垂直に切断する断面CS2を示す図である。この断面CS2は、図2のB−B断面である。この断面CS2は、第1放電面29と平行で、第1放電面29との距離ΔHが、0.3mm以下である断面である。本実施形態では、断面CSは、円形を有している。図6の下側には、図6の上側の断面における表面の近傍の領域SAbの拡大図が示されている。
第2実施形態では、中心電極20の材料は、第1実施形態の接地電極30が満たす上記(1)〜(5)を満たしている。この結果、点火プラグの中心電極20の強度と耐酸化性と耐火花消耗性とを向上することができる。なお、第2実施形態においても、中心電極20を形成するNi合金は、85重量%以上のNiを含むことが好ましい。また、銀析出物OPの全体面積率ARは、0.1%以上であることが好ましい。さらには、高温保持処理後の状態において、銀析出物OPの全体面積率ARは、0.1%以上であり、Ni合金の平均粒径Raveは、250μm以下であることが好ましい。
ただし、第2実施形態では、第1実施形態において図3の断面CSにおいて測定された表面近傍面積率SRおよび全体面積率ARは、図6の断面CS2において測定される。具体的には、第2実施例の表面近傍面積率SRの測定領域MAbは、図6に示すように、中心電極20の表面(側面)から深さ方向の距離が100μmの点(図6の点P2)を始点、180μmの点(図6の点P1)を終点とする80μm×80μmの矩形の領域である。例えば、図6の例では、始点P2は、断面CS2の中心(図6では軸線COの位置)を通る直線L1上の点であって、線L1と中心電極20の表面との交点P3との距離が100μmである点である。また、終点P1は、線L1上の点であって、点P2との距離が80μmであり、点P3との距離が180μmである点である。測定領域MAbの4辺のうちの2辺は、線L1と平行であり、他の2辺は、線L1と垂直である。測定領域MAbの線L1と垂直な2辺のうち、表面に近い一辺の中心は、始点P2と一致し、表面から遠い他の一辺の中心は、終点P1と一致する。また、第2実施形態では、全体面積率ARは、図6の断面CS2の全体の面積に対する銀析出物OPが占める面積の割合である。
D.変形例1
(1)上記第1実施形態では、接地電極30は、全体がNi合金を用いて形成されている。図7は、変形例の接地電極30bの断面CSを示す図である。変形例の接地電極30bは、Ni合金で形成された外側部分301と、銅などのNi合金より熱伝導性が高い材料で形成された芯部302と、を備える2層構造を有している。この場合には、接地電極30のうち、Ni合金で形成された外側部分301が、上記(1)〜(5)を満たしていれば良い。
同様に、第2実施形態の中心電極20も、Ni合金で形成された外側部分と、熱伝導性が高い材料で形成された芯部と、を備える2層構造を有していても良い。この場合も、Ni合金で形成された外側部分が、上記(1)〜(5)を満たしていれば良い。
(2)上記第1実施例の接地電極30は、上述したように上記(1)〜(5)を満たしている。しかしながら、上記(5)の第2放電面39のNi露出率NRは、50%以上であることを満たしていたとしても、例えば、点火プラグの出荷の前に、実機運転等が行われる場合には、該実機運転で加熱されることによって、接地電極30の表面に、Al、Cr、Si、Mnなどの酸化皮膜が形成される。この結果、点火プラグの出荷時には、上記(5)は満たされないが、接地電極30の強度、耐火花消耗性、強度は、第1実施形態の点火プラグと同等である。このように、点火プラグの出荷時には、上記(5)は満たされていなくても良い。第2実施例の中心電極20についても同様である。
(3)図1、2の点火プラグ100の具体的構成は、一例であり、他の構成が採用され得る。例えば、点火プラグの発火部の構成は、様々な構成が採用され得る。例えば、点火プラグは、軸線と垂直な方向に接地電極30と中心電極20とが対向して、ギャップを形成するタイプの点火プラグでも良い。また、複数個の接地電極30と、1個の中心電極20と、を備え、複数個のギャップが形成されるタイプの点火プラグでも良い。
また、例えば、絶縁体10の材料や、端子金具40の材料は、上述の材料に限られない。例えば、絶縁体10は、アルミナ(Al)を主成分とするセラミックスに代えて、他の化合物(例えば、AlN、ZrO、SiC、TiO、Yなど)を主成分とするセラミックスを用いて形成されてもよい。
以上、本発明の実施形態および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
5...ガスケット、6...第2パッキン、7...第3パッキン、8...第1パッキン、9...タルク、10...絶縁体、12...軸孔、13...脚部、15...縮外径部、16...縮内径部、17...第1胴部、18...第2胴部、19...鍔部、20...中心電極、23...頭部、24...鍔部、25...脚部、29...第1放電面、30、30b...接地電極、31...接続端、32...自由端、33...接続部、34...自由端部、39...第2放電面、40...端子金具、41...キャップ装着部、42...鍔部、43...脚部、50...主体金具、51...工具係合部、52...ネジ部、53...加締部、54...座部、56...縮内径部、58...変形部、59...挿入孔、60...第1の導電性シール層、70...抵抗体、80...第2の導電性シール層、100...点火プラグ、MP...母材、OP...銀析出物、AR...全体面積率、SR...表面近傍面積率

Claims (5)

  1. 中心電極と、前記中心電極との間に間隙を形成する接地電極と、を備え、前記中心電極と前記接地電極とのうちの少なくとも一方の電極は、50重量%以上のニッケル(Ni)を含むNi合金を用いて形成されている点火プラグであって、
    前記Ni合金は、アルミニウム(Al)と、クロム(Cr)と、ケイ素(Si)と、マンガン(Mn)と、から成る群から選択される1種以上の元素を合計で1質量%以上含有し、かつ、銀(Ag)を含有し、
    前記電極のうち、前記Ni合金で形成された部分を、前記間隙の近傍で前記電極の長手方向と垂直に切断する断面において、
    前記電極の表面からの深さ方向の距離が100μmの点を始点、180μmの点を終点とする80μm×80μmの測定領域の面積に対するAg析出物が占める面積の割合は、0.1%以上であり、
    前記Ag析出物は、Agを主成分とする析出物であり、
    前記Ni合金の平均粒径は、250μm以下である、点火プラグ。
  2. 請求項1に記載の点火プラグであって、
    前記電極の表面のうち前記間隙を形成する放電面において、Niが露出する面積の割合は、50%以上である、点火プラグ。
  3. 請求項1または2に記載の点火プラグであって、
    前記Ni合金は、85重量%以上のNiを含む、点火プラグ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の点火プラグであって、
    前記断面の全体の面積に対する前記g析出物が占める面積の割合は、0.1%以上である、点火プラグ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の点火プラグであって、
    アルゴン雰囲気中に摂氏1000度で50時間保持した後に水冷により常温まで冷却した状態において、
    前記断面の全体の面積に対する前記g析出物が占める面積の割合は、0.1%以上であり、
    前記Ni合金の平均粒径は、250μm以下である、点火プラグ。
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