JP6455584B1 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの半暖機時に燃焼安定性を損なうことなく良好な燃費性能を確保する。
【解決手段】本発明の制御装置は、吸気通路30と、吸気通路30に設けられた電動過給機51と、電動過給機51よりも下流側の吸気通路30に開閉可能に設けられた吸気絞り弁32とを備えたエンジンに適用される。この制御装置は、ピストンの温度から気筒の壁面温度を差し引いた温度差が所定値以上になる半暖機状態であるか、半暖機状態のときよりも気筒の壁面温度が高くかつ前記温度差が所定値未満となる暖機状態であるかを判定し、半暖機状態にあると判定した場合には、電動過給機51を駆動して吸気を過給するとともに、エンジンが暖機状態にあった場合に比して吸気絞り弁32の開度を低下させる。
【選択図】図6

Description

本発明は、吸気通路に電動過給機および吸気絞り弁が設けられたエンジンを制御する装置に関する。
低温状態にあるエンジンが始動された直後、つまり冷間始動の直後は、エンジン本体の温度が低く、燃料の着火性が低いため、着火性を確保しながらエンジンの暖機を促進する必要がある。
例えば、下記特許文献1には、吸気通路に設けられた吸気絞り弁と、排気ガスのエネルギーにより駆動されるターボ過給機と、ターボ過給機のタービンよりも上流側の排気ガスの流れを絞るVGT(可変ノズル機構)とを備えたディーゼルエンジンの冷間始動時に、VGTを閉じて吸気絞り弁を開く制御(以下、第1の制御という)を所定期間実行した後、VGTを開いて吸気絞り弁を閉じる制御(以下、第2の制御という)を実行することが開示されている。
上記特許文献1のディーゼルエンジンによれば、VGTを閉じる第1の制御により気筒の温度を上昇させて着火性を改善した上で、吸気絞り弁を閉じる第2の制御により触媒を加熱してその活性化を促進することができる。すなわち、第1の制御によってVGTが閉じられると、排気ガスの流通抵抗(排気抵抗)が増大し、高温の既燃ガスが気筒内に残留する(いわば内部EGRが行われる)ので、気筒の温度が急速に上昇し、燃料の着火性が改善する。そして、その状態で実行される第2の制御により吸気絞り弁が閉じられると、吸気量が減少して空燃比がリッチ化するとともに、排気ガスと共に排出される燃料の未燃成分が増大するので、排気ガスの温度が上昇して触媒の活性化が促進される。
特許第4453145号公報
ここで、エンジンが冷間始動された後、ピストンの温度は燃焼熱を受けて急激に上昇するものの、主に冷却水の温度に影響される気筒の壁面(以下、シリンダ壁という)の温度は徐々にしか上昇しない。このため、冷間始動からしばらく経過した時点で、ピストンの温度がシリンダ壁の温度よりも大幅に高くなる状態が生じる。この状態(以下、半暖機状態という)は、エンジンの暖機がほぼ完了してシリンダ壁の温度が十分に上昇するまで継続する。
半暖機状態では、ピストンの膨張量(特にそのスカート部の径方向の膨張量)がシリンダ壁の膨張量に比べて大きくなるので、ピストンが摺動する際に受ける機械的な摩擦力や圧縮反力(気筒内で圧縮された吸気がピストンを押し戻す力)が増大する。すなわち、相対的に大きく膨張したピストンの外周がシリンダ壁に接近し、両者の接触面積が増大することにより、ピストンの機械的な摩擦力が増大する。また、圧縮行程中にピストン周りの隙間(特にピストンリングとシリンダ壁との隙間)を通じて漏れ出る吸気の量が減少し、これによって気筒内で実際に圧縮される吸気の量が増大することにより、ピストンにかかる圧縮反力が増大する。以下では、ピストンが摺動する際に受けるこれらの抵抗力(摩擦力や圧縮反力など)を総称してピストンの摺動抵抗という。
このように、ピストンの摺動抵抗が増大する半暖機状態では、同等のピストンスピード(もしくは出力トルク)を確保するために燃料の噴射量を増やす必要が生じるので、燃費性能が悪化し易いという問題がある。
これに対し、上記特許文献1の発明は、エンジンの冷間始動時にエンジンおよび触媒の暖機を促進することを目的とした発明であり、半暖機時の燃費性能に関する問題やそのための対策については特に言及されていない。
なお、上記特許文献1において、仮に半暖機に比較的近い状態でエンジンが始動された場合には、上述した第1の制御および第2の制御のいずれかが半暖機状態の期間と重なる可能性がある。しかしながら、半暖機状態で第1の制御および第2の制御のいずれが実行されたとしても、エンジンの燃費性能は悪化することになる。
すなわち、上記第1の制御では、高温の既燃ガスを気筒内に残留させるためにVGTが閉じられるので、排気抵抗ひいてはポンピングロスが大幅に増大し、燃費性能の悪化を招く。また、上記第2の制御では、触媒を活性化させるために空燃比が大幅に(λ<1まで)リッチ化されて排気通路に未燃燃料が供給されるので、エンジン出力に寄与しない燃料の量が増大し、やはり燃費性能の悪化を招く。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンの半暖機時に燃焼安定性を損なうことなく良好な燃費性能を確保することが可能なエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、燃焼が行われる気筒と、気筒内を往復動するピストンと、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、吸気通路に設けられ、電気エネルギーにより駆動される電動過給機と、電動過給機よりも下流側の吸気通路に開閉可能に設けられた吸気絞り弁とを備えたエンジンを制御する装置であって、前記ピストンの温度から前記気筒の壁面温度を差し引いた温度差が所定値以上になる半暖機状態であるか、当該半暖機状態のときよりも前記気筒の壁面温度が高くかつ前記温度差が所定値未満となる暖機状態であるかを判定する判定部と、前記判定部によりエンジンが半暖機状態にあると判定された場合に、前記電動過給機を駆動して吸気を過給するとともに、エンジンが暖機状態にあった場合に比して前記吸気絞り弁の開度を低下させる制御部とを備えた、ことを特徴とするものである(請求項1)。
エンジンが半暖機状態にあるときは、気筒の壁面よりもかなり高温になったピストンが相対的に大きく膨張することに起因して、ピストンの摺動抵抗が増大するとともに、ピストンの周囲隙間を通じた漏れ損失が減少する。このため、吸気絞り弁の開度を仮に暖機状態のときと同一に設定した場合には、ピストンによって実際に圧縮される吸気の量が増大する等により、ピストンの摺動抵抗がますます増大してしまう。このことは、ピストンの上昇スピードを同等に維持するために必要な燃料の噴射量が増大し、燃費性能が悪化することにつながる。これに対し、本発明では、エンジンが半暖機状態にあるときに、吸気絞り弁の開度低下によって気筒への吸気充填量が減らされるので、ピストンの摺動抵抗を低減することができ、燃費性能を良好に維持することができる。
ただし、単に気筒への吸気充填量を減らしただけでは、気筒の圧縮端温度(圧縮上死点における筒内温度)が低下して燃料の着火性が悪化するので、燃焼が不安定化したり、最悪の場合は失火を招くおそれがある。これに対し、本発明では、吸気絞り弁の開度が低下した状態で電動過給機が駆動されるので、電動過給機により吸気が圧縮されることによる昇温効果と、低開度の吸気絞り弁の周囲の隙間を吸気が通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーとにより、吸気の温度を迅速に上昇させることができる。これにより、気筒内を高温化して燃料の着火性を改善することができ、燃焼安定性を良好に確保することができる。
好ましくは、前記電動過給機をバイパスするバイパス通路が前記吸気通路に設けられ、前記制御部は、エンジンが前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記吸気絞り弁の開度を、前記電動過給機で過給された吸気の一部が前記バイパス通路を通じて電動過給機に戻される吸気循環流が形成される開度まで低下させる(請求項2)。
このように、バイパス通路を利用して吸気循環流を形成するようにした場合には、電動過給機により吸気を繰り返し圧縮できるので、ごく短時間で大幅に吸気の温度を高めることができ、前述した着火性の改善効果をより高めることができる。
前記構成において、より好ましくは、前記バイパス通路に開閉可能なバイパス弁が設けられ、前記制御部は、エンジンが前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記バイパス弁の開度を、当該バイパス弁の前後の圧力差が実質的になくなる流量飽和点の開度よりも低くかつ前記吸気絞り弁の開度よりも高い所定開度まで低下させる(請求項3)。
この構成によれば、バイパス通路を逆流する吸気がバイパス弁により堰き止められない(吸気循環流が消滅しない)範囲でバイパス弁を閉じることができ、この逆流する吸気が低開度のバイパス弁の周囲の隙間を通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーにより吸気の温度をさらに上昇させることができる。これにより、燃料の着火性をより効果的に改善することができる。
好ましくは、前記判定部は、少なくともエンジンの始動時に、前記半暖機状態か暖機状態かの判定を行い、前記制御部は、エンジンの始動時に前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記電動過給機を駆動して吸気を過給するとともに、前記暖機状態でのエンジン始動時に比して前記吸気絞り弁の開度を低下させる(請求項4)。
この構成によれば、半暖機状態でのエンジンの始動時に、燃焼安定性を損なうことなく良好な燃費性能を確保することができる。
より好ましくは、前記制御装置は、始動時にエンジンをクランクキングする始動モータと、エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサとをさらに備え、前記判定部は、前記冷却水の温度が所定の閾値以上である状態でのエンジンの始動時に、前記始動モータの作動電流が所定の基準電流よりも高いという第1の要件と、前記水温センサにより検出される前記冷却水の温度が前記閾値よりも高く設定された基準温度よりも低いという第2の要件とのいずれかが成立した場合に、エンジンが半暖機状態にあると判定し、前記第1および第2の要件の双方が非成立であった場合に、エンジンが暖機状態にある判定する(請求項5)。
この構成によれば、エンジンの実際の温度と始動モータの作動電流言い換えるとエンジンをクランキングするための所要トルク)との双方に基づいて、エンジンが半暖機状態にあること、つまり気筒の壁面とピストンとの温度差が大きくピストンの摺動抵抗が増大し易い状態にあることを、エンジンの暖機状態と区別して適正に判定することができる。
本発明の制御装置が適用されるエンジンは特にその種類を問わないが、例えば、幾何学的圧縮比が14以上の圧縮着火式エンジンは、半暖機時のピストンの摺動抵抗が特に大きくなり易いと言える。このため、本発明は、幾何学的圧縮比が14以上の圧縮着火式エンジンに好適である(請求項6)。
エンジンが前記のような圧縮着火式エンジンである場合、半暖機以外の状態でのエンジン始動時は、ポンピングロスの低減および着火性の確保のために、十分な量の吸気を気筒に導入することが好ましい。すなわち、前記制御部は、前記暖機状態でのエンジン始動時、および、前記暖機状態でも半暖機状態でもない冷機状態でのエンジン始動時に、前記吸気絞り弁の開度を、当該吸気絞り弁の前後の圧力差が実質的になくなる流量飽和点の開度以上に設定することが好ましい(請求項7)。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御装置によれば、エンジンの半暖機時に燃焼安定性を損なうことなく良好な燃費性能を確保することができる。
本発明の制御装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示すシステム図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 自動停止したエンジンを再始動させる再始動制御の詳細を示すフローチャートである。 低温状態にあるエンジンがキー始動された後のピストンおよびシリンダ壁の各温度の時間変化を示すグラフである。 図4の温度変化に伴って変化するピストンの摺動抵抗と漏れ損失とをそれぞれ示すグラフである。 図3のステップS4の制御(吸気加熱制御)が行われたときの吸気の流れを説明するため図である。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の制御装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示すシステム図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載された4サイクルのディーゼルエンジンであり、エンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出された排気ガスが流通する排気通路40と、吸気通路30を流通する吸気を圧縮しつつエンジン本体1に送り出す過給装置50と、排気通路40を流通する排気ガスの一部を吸気通路30に還流するEGR装置70とを備えている。
エンジン本体1は、列状に並ぶ複数の気筒2(図1にはそのうちの1つの気筒のみが示される)を有する直列多気筒型のものであり、当該複数の気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、各気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、各気筒2にそれぞれ往復動可能に挿入された複数のピストン5とを有している。なお、各気筒2の構造は同一であるため、以下では基本的に1つの気筒2のみに着目して説明を進める。
ピストン5の上方には燃焼室6が画成されている。この燃焼室6には、後述する燃料噴射弁15からの噴射により、軽油を主成分とする燃料が供給される。そして、供給された燃料が圧縮着火により燃焼(拡散燃焼)し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。
ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
気筒2の幾何学的圧縮比、つまりピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が下死点にあるときの燃焼室の容積との比は、14以上20以下に設定されている。
シリンダブロック3には、クランク軸7の角度(クランク角)およびクランク軸7の回転速度(エンジン回転速度)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。また、シリンダヘッド4には、エンジン本体1(シリンダブロック3およびシリンダヘッド4)の内部を流通する冷却水の温度(エンジン水温)を検出する水温センサSN2が設けられている。
クランク軸7は、電気式の始動モータ20と係脱可能に連結されている。始動モータ20は、エンジンの始動時にクランク軸7と係合してこれを強制回転(クランキング)させる。また、始動モータ20には、その作動電流を検出する電流センサSN5(図2)が内蔵されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に開口する吸気ポート9および排気ポート10と、吸気ポート9を開閉する吸気弁11と、排気ポート10を開閉する排気弁12と、吸気弁11および排気弁12をクランク軸7の回転に連動して開閉駆動する動弁機構13,14とが設けられている。
シリンダヘッド4には、さらに、燃焼室6に燃料(軽油)を噴射する燃料噴射弁15が設けられている。燃料噴射弁15は、例えば、燃焼室6の天井面中央から放射状に燃料を噴射する多噴孔型の噴射弁である。なお、図示を省略するが、ピストン5の冠面には、燃料噴射弁15から噴射された燃料を受け入れるための凹部(キャビティ)が形成されている。
吸気通路30は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。この吸気通路30には、吸気中の異物を除去するエアクリーナ31と、吸気の流量を調整する開閉可能な吸気絞り弁32と、過給装置50により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ33と、サージタンク34とが、吸気通路30の上流側(エンジン本体1から遠い側)からこの順に設けられている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31よりも下流側の部分には、吸気通路30を通じてエンジン本体1に導入される空気(新気)の流量を検出するエアフローセンサSN3が設けられている。また、サージタンク34には、その内部の吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN4が設けられている。
排気通路40は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。この排気通路40には、排気ガスに含まれる各種の有害成分を浄化するための触媒41aを内蔵した触媒コンバータ41が設けられている。触媒41aとしては、例えば、排気ガス中のCOおよびHCを酸化して無害化する酸化触媒、および排気ガス中のNOxを還元して無害化するNOx触媒のいずれかもしくは両方が用いられる。なお、図示を省略するが、排気通路40には、排気ガス中のスート(煤)を捕集するためのDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)が別途設けられている。
過給装置50は、いわゆる2ステージ型の過給装置であり、直列に配置された2つの過給機51,52を有している。過給機51は、電気エネルギーにより駆動される電動過給機(以下、電動過給機51という)であり、過給機52は、排気ガスのエネルギーにより駆動されるターボ過給機(以下、ターボ過給機52という)である。
電動過給機51は、電力の供給を受けて作動するモータ62と、モータ62により回転駆動されることで吸気を圧縮するコンプレッサ61とを有している。コンプレッサ61は、吸気通路30におけるエアクリーナ31と吸気絞り弁32との間に形成された主通路63に配置されている。吸気通路30には、コンプレッサ61をバイパスするためのバイパス通路64が主通路63と並行して設けられており、このバイパス通路64には開閉可能なバイパス弁65が設けられている。
ターボ過給機52は、排気通路40を流通する排気ガスにより回転駆動されるタービン67と、タービン67と連動して回転可能に設けられ、吸気通路30を流通する吸気を圧縮するコンプレッサ66とを有している。コンプレッサ66は、吸気通路30における電動過給機51(コンプレッサ61)よりも上流側の部分に配置され、タービン67は、排気通路40における触媒コンバータ41よりも上流側の部分に配置されている。排気通路40には、タービン67をバイパスするためのバイパス通路68が設けられており、このバイパス通路68には開閉可能なウェストゲート弁69が設けられている。
EGR装置70は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路71と、EGR通路71を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラ72と、EGRガスの流量を調整する開閉可能なEGR弁73とを有している。
なお、当実施形態におけるEGR装置70は、タービン67よりも上流側を流れる排気ガスの一部をコンプレッサ61よりも下流側の吸気通路30に還流するように設けられているが、このEGR装置70とは別に、タービン67よりも下流側を流れる排気ガスの一部をコンプレッサ66よりも上流側の吸気通路30に還流するEGR装置をさらに設けてもよい。
(2)制御系統
図2は、当実施形態のエンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
ECU100には各種センサによる検出情報が入力される。具体的に、ECU100は、上述したクランク角センサSN1、水温センサSN2、エアフローセンサSN3、吸気圧センサSN4、および電流センサSN5と電気的に接続されており、これらのセンサによって検出された各種情報、例えばクランク角、エンジン回転速度、エンジン水温、吸気流量、吸気圧(過給圧)、始動モータ20の作動電流等の情報が、それぞれECU100に逐次入力される。
また、車両には、当該車両の走行速度(以下、車速という)を検出する車速センサSN6と、車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度(以下、アクセル開度という)を検出するアクセルセンサSN7と、同じくドライバーにより操作されるブレーキペダルのオン/オフ状態を検出するブレーキセンサSN8とが設けられており、これら車速センサSN6、アクセルセンサSN7、およびブレーキセンサSN8による検出情報もECU100に逐次入力される。
ECU100は、上記各センサSN1〜SN8からの入力情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、ECU100は、燃料噴射弁15、始動モータ20、吸気絞り弁32、電動過給機51用のモータ62、バイパス弁65、ウェストゲート弁69、およびEGR弁73等と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。このようなECU100は、請求項にいう「判定部」および「制御部」に相当する。
例えば、ECU50は、アクセルセンサSN7により検出されるアクセル開度および車速センサSN6により検出される車速等に基づいてエンジンの負荷(要求トルク)を算出し、算出した負荷と、クランク角センサSN1により検出されるエンジン回転速度とに基づいて、気筒2に噴射すべき燃料の量(目標噴射量)を決定し、決定した目標噴射量に一致する量の燃料が気筒2に噴射されるように燃料噴射弁15を制御する。
また、ECU100は、上記エンジン回転速度/負荷等に基づいて目標過給圧を設定するとともに、吸気圧センサSN4により検出される吸気圧(過給圧)がこの目標過給圧に一致するように、バイパス弁65およびウェストゲート弁69の各開度や、電動過給機51用のモータ62の回転等を制御する。
さらに、当実施形態のエンジンにはいわゆるアイドリングストップ機能が付加されている。すなわち、ECU100は、予め定められた特定の条件下でエンジンを自動的に停止させ、または再始動させる機能を有している。
例えば、ECU100は、エンジンが冷機状態にないこと、車速がほぼゼロであること、アクセルペダルがオフ状態(アクセル開度がゼロ)であること、ブレーキペダルがオン状態であること、といった複数の要件の成否を水温センサSN2、車速センサSN6、アクセルセンサSN7、およびブレーキセンサSN8等の各検出値に基づいて都度判定し、これら各要件が全て満足されたことが確認された場合に、エンジンの自動停止条件が成立したと判定する。自動停止条件が成立すると、ECU100は、燃料噴射弁15からの燃料供給をカットしてエンジンを自動的に停止させる。なお、エンジンが冷機状態にあるか否かの判定は、水温センサSN2により検出されるエンジン水温と予め定められた閾値との比較に基づいて行われる。具体的に、この判定で用いられる温度の閾値は、暖機完了時のエンジン水温よりも十分に低くかつ外気温よりも高い所定の温度(例えば40℃)に設定される。そして、エンジン水温が当該閾値よりも低ければエンジンが冷機状態にあり、閾値以上であれば冷機状態ではない(つまり後述する半暖機状態または暖機状態のいずれかである)と判定される。
また、ECU100は、エンジンの自動停止後、ブレーキペダルがオン状態からオフ状態に切り替わったこと、自動停止後の経過時間(自動停止の継続時間)が所定時間に達したこと、といった複数の要件の成否を上記ブレーキセンサSN8の検出値や内蔵されたタイマーのカウント値に基づいて都度判定し、これら各要件のいずれかが満足されたことが確認された場合に、エンジンの再始動条件が成立したと判定する。再始動条件が成立すると、ECU100は、始動モータ20を駆動してエンジン本体1をクランキングしつつ燃料噴射弁15からの燃料供給を再開することにより、エンジンを再始動させる。
(3)エンジン再始動時の温度状態に応じた制御
次に、自動停止したエンジンを再始動させる制御の詳細について説明する。図3は、エンジン再始動時の制御手順を示すフローチャートである。エンジンが自動停止されてこのフローチャートに示す制御がスタートすると、ECU100は、ステップS1において、再始動条件が成立したか否かを判定する。この再始動条件の詳細は既に説明したとおりであり、その成否は、例えばブレーキセンサSN8の検出値やタイマーのカウント値に基づいて判定される。
上記ステップS1でYESと判定されて再始動条件が成立したことが確認された場合、ECU100は、ステップS2に移行して、始動モータ20を駆動してクランク軸7を強制回転させる制御、つまりエンジンのクランキングを開始する。
上記クランキングの開始後、ECU100は、ステップS3に移行して、電流センサSN5により検出される始動モータ20の作動電流と、水温センサSN2により検出されるエンジン水温とに基づいて、エンジンが半暖機状態にあるか暖機状態にあるかを判定する。半暖機状態とは、冷機状態でも暖機状態でもない暖機半ばの状態のことであり、例えば、乗員のイグニッション・オン操作によるエンジン始動が行われてからの経過時間、つまりエンジンの運転継続時間が比較的短いときに生じ易い。この半暖機状態では、気筒2の壁面2a(以下、シリンダ壁という)の温度に比べてピストン5の温度が大幅に高くなる。
すなわち、乗員のイグニッション・オフ操作によりエンジンが停止された後、あまり時間を空けずに再びイグニッション・オン操作が行われるような場合を除いて、イグニッション・オン操作によるエンジン始動時(以下、これをキー始動という)は、ピストン5の温度もシリンダ壁2aの温度も、外気温と同程度の十分に低い値となっている。図4は、このような一般的なキー始動が行われた場合におけるピストン5の温度とシリンダ壁2aの温度との時間変化をそれぞれ示している。この図4に示すように、時点t0でエンジンがキー始動されると、その直後からピストン5の温度は急激に上昇する。これは、燃焼室6で生じる燃焼熱が直接的にピストン5に作用するからである。一方、エンジンのキー始動後、シリンダ壁2aの温度は徐々にしか上昇しない。これは、シリンダ壁2aの温度は主にエンジンの冷却水の温度に影響されるものであり、しかも当該冷却水の温度はその性質上(シリンダブロック3およびシリンダヘッド4という大質量の部材の内部を循環している性質上)徐々にしか上昇しないからである。なお、図4にはエンジンの冷却水の温度も併せて示しており、この冷却水の温度は、シリンダ壁2aの温度と同様の傾向で上昇している。このことからも、シリンダ壁2aの温度が主に冷却水の温度に影響されていることが分かる。
上記のようなピストン5とシリンダ壁2aとの昇温スピードの相違により、エンジンのキー始動から少し経過した時点t1において、ピストン5の温度からシリンダ壁2aの温度を差し引いた温度差が所定値ΔTxまで拡大している。そして、時点t1からしばらく経過した時点t2まで、温度差は所定値ΔTx以上の範囲で推移する。すなわち、キー始動後の時点t1からt2までの間、ピストン5の温度がシリンダ壁2aの温度よりも所定値ΔTx以上高くなる状態が継続されている。この期間(t1〜t2)が半暖機状態の期間である。
半暖機状態の前後の期間において、エンジンは冷機状態または暖機状態にある。すなわち、エンジンが半暖機状態になる前の期間(時点t0〜t1)は冷機状態の期間であり、この冷機状態のときは、ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差が所定値ΔTx未満になり、かつシリンダ壁2aの温度が半暖機状態のときよりも低くなる。また、半暖機状態を過ぎた期間(時点t2〜)は暖機状態の期間であり、この暖機状態のときは、ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差が所定値ΔTx未満になり、かつシリンダ壁2aの温度が半暖機状態のときよりも高くなる。
半暖機状態から暖機状態に移行した時点t2以降、上記温度差はΔTxから漸減し、シリンダ壁2aの温度はピストン5の温度にどんどん近づいていく。暖機完了とみなされる時点t3では、上記温度差が十分に縮小し、シリンダ壁2aおよびピストン5の双方が十分に暖められた状態となる。
図5は、図4の温度変化に伴って変化するピストン5の摺動抵抗と漏れ損失とをそれぞれ示している。ピストン5の摺動抵抗とは、ピストン5が気筒2内を往復動する際に受ける抵抗力のことであり、機械的な摩擦力や圧縮反力(燃焼室6内で圧縮された吸気がピストン5を押し戻す力)などが複合された抵抗力のことである。また、漏れ損失とは、ピストン5(特にその外周に設けられるピストンリング)とシリンダ壁2aとの間の隙間を通じて燃焼室6から外部に漏れ出るガスの量(圧縮された吸気や既燃ガスの漏れ量)のことである。図5に示すように、時点t1〜t2の半暖機状態の期間は、それ以外の期間、つまり時点t0〜t1の冷機状態の期間や時点t2以降の暖機状態の期間と比べて、ピストン5の摺動抵抗が増大するとともに、漏れ損失が減少する。これは、ΔTx以上に拡大した大きな温度差に起因するものである。
すなわち、半暖機状態(時点t1〜t2)では、ピストン5の温度がシリンダ壁2aの温度よりも大幅に高いため、ピストン5の膨張量がシリンダ壁2aの膨張量に比べて十分に大きくなり、その結果、ピストン5(主にそのスカート部)の周面のうちシリンダ壁2aと接触する部分の面積が増大する。この接触面積の増大は、ピストン5の機械的な摩擦力を増大させる。一方、ピストン5の周面とシリンダ壁2aとの隙間は縮小するので、当該隙間を通じた漏れ損失が減少し、燃焼室6内で実際に圧縮される吸気の量が増大する。このことは、圧縮された吸気からピストン5に加わる圧縮反力の増大を招く。このように、エンジンの半暖機状態では、ピストン5の機械的な摩擦力および圧縮反力の双方が増大するので、これらが複合された抵抗力つまりピストン5の摺動抵抗も当然に増大する。
なお、半暖機状態のときに見られる上記のような現象、つまりピストンの摺動抵抗の増大は、ピストン5とシリンダ壁2aとの熱膨張係数の差が大きいほど顕著になる。例えば、ピストン5がアルミ合金製で、シリンダ壁2aが鋳鉄製である場合、ピストン5の熱膨張係数がシリンダ壁2aのそれよりも大幅に大きくなるので、半暖機状態におけるピストン5の摺動抵抗はより大きくなる。
上記のように、半暖機状態では、ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差がΔTx以上に拡大する、言い換えるとシリンダ壁2aの温度がピストン5の温度に比べて十分に低くなる上に、ピストン5の摺動抵抗が大きくなる。上記ステップS3での半暖機状態の判定において、水温センサSN2および電流センサSN5の各検出値を用いるのは、このような現象の有無を確認するためである。
すなわち、水温センサSN2より検出されるエンジン冷却水の温度(エンジン水温)が予め定められた基準温度よりも低い場合には、ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差が十分に大きいとみなすことができる(なお、エンジンが自動停止される前の運転によってピストン5は既に十分に加熱されているはずなので、エンジン水温が低いことをもって上記温度差が大きいとみなすことができる)。また、電流センサSN5により検出される始動モータ20の作動電流が予め定められた基準電流よりも高い場合には、エンジンのクランキングに要する始動モータ20の発生トルクが大きく、ピストン5の摺動抵抗が十分に大きいとみなすことができる。なお、ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差が大きいことを確認するための上記基準温度は、自動停止の可否を判定するためのエンジン水温の閾値、つまりエンジンが冷機状態にあるか否かを判定するため閾値(例えば40℃)よりも所定量高い値(例えば70℃)に設定される。
上記ステップS3において、ECU100は、上述した2つの要件のいずれかが成立した場合、つまり、エンジン水温が基準温度よりも低いという要件と、始動モータ20の作動電流が基準電流よりも高いという要件のいずれかが成立した場合に、エンジンが半暖機状態にあると判定する。逆に、これら2つの要件がいずれも非成立であった場合、エンジンは暖機状態にあるといえる。つまり、エンジンが自動停止される前提として、エンジンは少なくとも冷機状態にはないはずなので、上記2要件の非成立は、エンジンが冷機状態でも半暖機状態でないこと、つまり暖機状態にあることを意味する。なお、ステップS3での判定は、通常、圧縮行程で停止していた気筒2のピストン5が最初の圧縮上死点に到達する前には完了する。
上記ステップS3でNOと判定されてエンジンが暖機状態にあることが確認された場合、ECU100は、ステップS7に移行して、通常の再始動制御によりエンジンを再始動させる。具体的には、吸気絞り弁32およびバイパス弁65を後述するステップS4(吸気加熱制御)のときよりも高い開度まで開き、かつ電動過給機51を駆動しない状態で、エンジンの各気筒2に燃料噴射弁15から順次燃料を噴射、燃焼させる。この通常のエンジン再始動では、例えば、吸気絞り弁32およびバイパス弁65の開度が流量飽和点以上の開度に設定される。なお、流量飽和点とは、吸気絞り弁32(またはバイパス弁65)の上流側と下流側の圧力差がなくなる開度であって、開度をそれ以上増大させても吸気流量が増大しない開度のことである。流量飽和点の開度はエンジンの運転条件により異なるが、上記ステップS7の制御が実行されるような運転条件下では、流量飽和点の開度は例えば30%程度となる。この場合、吸気絞り弁32およびバイパス弁65の各開度はそれぞれ約30%以上とされる。
一方、上記ステップS3でYESと判定されてエンジンが半暖機状態にあることが確認された場合、ECU100は、ステップS4に移行して、電動過給機51により過給された吸気を再び電動過給機51に戻す吸気の循環流を形成する吸気加熱制御を実行する。具体的に、この吸気加熱制御では、吸気絞り弁32の開度が上記流量飽和点の開度よりも十分に低い(換言すれば吸気絞り弁32の上流側の圧力よりも下流側の圧力が十分に低くなる)所定の低開度(例えば10〜20%)に設定されるとともに、バイパス弁65の開度が吸気絞り弁32の開度よりも高くかつ流量飽和点の開度よりも低い開度(例えば20〜30%)に設定される。さらに、この状態で電動過給機51のモータ62が駆動されて、コンプレッサ61による過給が行われる。
上記ステップS4の制御により、吸気通路30には、図6に示すように、電動過給機51(コンプレッサ61)で圧縮されて主通路63から排出された吸気の一部がバイパス通路64を逆流して再び電動過給機51に導入されるような流れ、つまり吸気の循環流が形成される(図6の矢印X1参照)。すなわち、吸気絞り弁32の開度がバイパス弁65の開度よりも低くされた状態でコンプレッサ61が回転駆動されることにより、吸気絞り弁32からバイパス弁65へと向かう(つまりバイパス通路64を逆流する)吸気の流れが形成されるとともに、バイパス通路64を逆流してきた吸気を再びコンプレッサ61へと引き戻す流れが形成される。
上記のような吸気循環流が形成されると、その循環経路(主通路63およびバイパス通路64)上の吸気の温度は、電動過給機51により吸気が繰り返し圧縮されることによる昇温効果と、バイパス通路64を逆流する吸気が低開度のバイパス弁65の周囲の隙間を通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーとにより、外気温よりも十分に高い温度(例えば80〜100℃程度)までごく短時間で高められる。また、このような高温の循環流から一部の吸気が分流して吸気絞り弁32を通過することにより、吸気絞り弁32の下流側の吸気通路30を通じてエンジン本体1へと向かう吸気の流れが形成される(矢印X2参照)。このとき、バイパス弁65よりもさらに低開度とされた吸気絞り弁32の周囲の隙間を吸気が通過することにより、当該通過時の抵抗から生じる熱エネルギーを受けて吸気の温度はさらに上昇する。
上記のような吸気循環流の形成(ステップS4)により吸気を加熱した後、ECU100は、次のステップS5において、加熱された吸気がエンジン本体1に到達するような適宜のタイミングで、燃料噴射弁15から燃料を噴射させる。この燃料噴射は、加熱吸気の到達後に最も早く圧縮行程を迎える気筒2に対し最初に行われる。噴射された燃料は、当該気筒2の燃焼室6で自着火、燃焼し、ピストン5を押し下げる。これにより、エンジン本体1の自律回転が開始され、エンジン回転速度が急上昇する。
次いで、ECU100は、最初に燃焼が行われた気筒(初爆気筒)の次に圧縮行程を迎える気筒、さらにその次に圧縮行程を迎える気筒‥‥という順に、同様に燃料噴射弁15から燃料を噴射、燃焼させる。そして、全ての気筒2で燃焼が行われてエンジンが完爆したか否かを判定し(ステップS6)、完爆した時点でエンジンの再始動制御を終了する。再始動制御の終了後は、アクセル開度や車速等に応じて燃料の噴射量を調整するといった通常の制御に移行する。
(4)作用効果等
以上説明したように、当実施形態では、自動停止後に再始動されるエンジンが半暖機状態(ピストン5とシリンダ壁2aとの温度差が所定値ΔTx以上になる状態)にある場合に、電動過給機51が駆動されて吸気が過給されるとともに、エンジンが暖機状態にあった場合に比して吸気絞り弁32の開度が低減されることにより、過給された吸気の一部がバイパス通路64を通じて電動過給機51に戻される吸気循環流が形成される。このような構成によれば、半暖機状態でのエンジン再始動時に、燃焼安定性を損なうことなく良好な燃費性能を確保できるという利点がある。
すなわち、エンジンが半暖機状態にあるときは、シリンダ壁2aよりもかなり高温になったピストン5が相対的に大きく膨張することに起因して、ピストン5の摺動抵抗が増大するとともに、ピストン5の周囲隙間を通じた漏れ損失が減少する(図5参照)。このため、吸気絞り弁32の開度を仮に暖機状態のときと同一に設定した場合には、ピストン5によって実際に圧縮される吸気の量が増大する上に、圧縮中に生じる大きな圧力によってピストンリングが拡径するので、ピストン5に加わる圧縮反力やピストン5の機械的な摩擦力が増大し、ピストン5の摺動抵抗がますます増大してしまう。このことは、ピストン5の上昇スピードを同等に維持するために必要な燃料の噴射量が増大し、燃費性能が悪化することにつながる。これに対し、上記実施形態では、半暖機状態でのエンジン再始動時に、吸気絞り弁32の開度低下によって燃焼室6への吸気充填量が減らされるので、ピストン5の摺動抵抗を低減することができ、燃費性能を良好に維持することができる。
ただし、単に燃焼室6への吸気充填量を減らしただけでは、燃焼室6の圧縮端温度(圧縮上死点における燃焼室6の内部温度)が低下して燃料の着火性が悪化するので、燃焼が不安定化したり、最悪の場合は失火を招くおそれがある。これに対し、上記実施形態では、電動過給機51が駆動されて吸気が過給されるとともに、過給された吸気の一部がバイパス通路64を通じて電動過給機51に戻される(吸気循環流が形成される)ように吸気絞り弁32が十分に低い開度まで閉じられるので、電動過給機51により吸気が繰り返し圧縮されることによる昇温効果と、低開度の吸気絞り弁32の周囲の隙間を吸気が通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーとにより、吸気の温度を迅速かつ大幅に上昇させることができる。これにより、燃焼室6を高温化して燃料の着火性を改善することができ、燃焼安定性を良好に確保することができる。
しかも、燃焼室6への吸気充填量が減った状態で燃料が安定的に燃焼するので、燃焼室6から排出される排気ガスの温度を十分に高めることができ、この高温の排気ガスにより触媒41aを加熱してその活性化を促進することができる。
ここで、半暖機時にピストン5の摺動抵抗を低減するには、ピストン5の膨張(漏れ損失の減少)により増加した分の吸気量を大きく上回る量の吸気を減らす必要がある。これに対し、上記実施形態では、半暖機状態でのエンジン再始動時に、吸気絞り弁32の開度が、暖機状態のときに行われる通常のエンジン再始動時に設定される開度(例えば30%以上)よりも十分に小さい開度(例えば10〜20%)まで低減されるので、燃焼室6への吸気充填量を十分に減らすことができ、ピストン5の摺動抵抗を効果的に低減することができる。
また、上記実施形態では、同じく半暖機状態でのエンジン再始動時に、バイパス弁65の開度が、吸気絞り弁32の開度よりも高くかつ流量飽和点の開度(バイパス弁65の前後の圧力差が実質的になくなる開度)よりも低い所定開度まで低減されるので、バイパス通路64を逆流する吸気がバイパス弁65により堰き止められない(吸気循環流が消滅しない)範囲でバイパス弁65を閉じることができ、この逆流する吸気が低開度のバイパス弁65の周囲の隙間を通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーにより吸気の温度をさらに上昇させることができる。これにより、燃料の着火性をより効果的に改善することができる。
また、上記実施形態では、自動停止したエンジンを再始動させる際に、水温センサSN2により検出されるエンジン水温(エンジン冷却水の温度)と、電流センサSN5により検出される始動モータ20の作動電流とに基づいて、エンジンが半暖機状態にあるか否かが判定される、言い換えると、エンジンの実際の温度と始動モータ20の発生トルク(つまりエンジンをクランキングするための所要トルク)とに基づいて半暖機状態が判定されるので、シリンダ壁2aとピストン5との温度差が大きくピストン5の摺動抵抗が大きくなっている場合に、これを半暖機状態として確実に認識することができる。
なお、上記実施形態では、自動停止したエンジンの再始動時にエンジンが半暖機状態にあるか暖機状態にあるかを判定し、半暖機状態にあると判定した場合に、電動過給機51を駆動しつつ吸気絞り弁32を閉じる制御(図3のステップS4に示す吸気加熱制御)を実行するようにしたが、この吸気加熱制御と同様の制御を、乗員のイグニッション・オン操作に基づくエンジンのキー始動時に実行してもよいし、あるいはエンジンのアイドリング運転中に実行してもよい。すなわち、キー始動時やアイドリング運転中にエンジンが半暖機状態にある場合でも、ピストンの摺動抵抗が大きく燃費性能が悪化し易いという事情は同じなので、その対策のために上記吸気加熱制御と同様の制御を実行してもよい。
また、上記実施形態では、自動停止したエンジンの再始動時にエンジンが暖機状態にある場合に、図3のステップS7に示した通常の再始動制御を実行し、その一環として、電動過給機51の駆動を停止しつつ吸気絞り弁32を流量飽和点(弁の前後の圧力差が実質的になくなる開度)以上の開度にまで開く制御を実行するようにしたが、これと同様の制御は、暖機状態でのエンジン再始動時だけでなく、暖機状態でのエンジンのキー始動時に実行することも当然に可能である。また、エンジンが冷機状態にあるときも、半暖機状態と比べればピストンの摺動抵抗は小さいので、上記ステップS7と同様の制御(電動過給機51の駆動を停止しつつ吸気絞り弁32を流量飽和点以上の開度にまで開く制御)を、冷機状態でのエンジンのキー始動時に実行してもよい。
また、上記実施形態では、電動過給機51(コンプレッサ61)をバイパスするバイパス通路64と同通路を開閉するバイパス弁65とを設け、上記吸気加熱制御の実行時には、バイパス弁65の開度を吸気絞り弁32の開度よりも高く設定することにより、電動過給機51で過給された吸気の一部をバイパス通路64を通じて電動過給機51に戻す(つまり吸気循環流を形成する)ようにしたが、例えばバイパス弁65を完全に閉じる等により、この吸気循環流の形成を停止する(言い換えると電動過給機51からエンジン本体1へと一方向に流れる吸気の流れを形成する)ようにしてもよい。この場合でも、電動過給機51により吸気が圧縮されることによる昇温効果と、低開度の吸気絞り弁32の周囲の隙間を吸気が通過する際の抵抗から生じる熱エネルギーとにより、吸気の温度をある程度上昇させることができる。
ただし、上記方法による場合、全ての吸気が電動過給機51を1回しか通過しないので、吸気を循環させつつ電動過給機51で繰り返し圧縮する上記実施形態による方法と比べて、吸気の昇温幅は小さくならざるを得ない。このため、インタークーラ33を通過した後に燃焼室6に導入される吸気の温度が、吸気加熱制御の非実行時と大差ない温度に留まる可能性がある。そこで、このような場合の対策として、インタークーラ33が配設されるインタークーラ配設通路とは別に、インタークーラ33をバイパスするインタークーラバイパス通路を設けるとともに、これらインタークーラ配設通路およびインタークーラバイパス通路のいずれかに選択的に吸気を導入するための切替弁を設け、吸気加熱制御の実行時には、インタークーラバイパス通路に吸気が導入されるように上記切替弁を制御することが考えられる。このようにすれば、仮に吸気循環流を形成しなかった場合でも、着火性を改善できる程度に十分に吸気を加熱することが可能になる。
また、上記実施形態では、始動モータ20の作動電流を検出する電流センサSN5を設けるとともに、エンジンの再始動時にこの電流センサSN5の検出値に基づいて始動モータ20の発生トルクを特定するようにしたが、始動モータ20の発生トルクは、当該トルクと相関する何らかのパラメータを検出することで特定可能であり、作動電流以外の適宜のパラメータ(例えば電圧等)を検出し、その検出値に基づいて始動モータ20の発生トルクを特定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、軽油を主成分とする燃料を圧着着火させるディーゼルエンジンに本発明の制御装置を適用した例について説明したが、本発明を適用可能なエンジンはこれに限らず、例えばガソリンを主成分とする燃料をリーンな空燃比下で燃焼させるリーンバーンガソリンエンジンに本発明を適用してもよい。
2 気筒
2a シリンダ壁(気筒の壁面)
5 ピストン
20 始動モータ
30 吸気通路
32 吸気絞り弁
51 電動過給機
64 バイパス通路
65 バイパス弁
100 ECU(判定部、制御部)
SN2 水温センサ
ΔTx (温度差の)所定値

Claims (7)

  1. 燃焼が行われる気筒と、気筒内を往復動するピストンと、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、吸気通路に設けられ、電気エネルギーにより駆動される電動過給機と、電動過給機よりも下流側の吸気通路に開閉可能に設けられた吸気絞り弁とを備えたエンジンを制御する装置であって、
    前記ピストンの温度から前記気筒の壁面温度を差し引いた温度差が所定値以上になる半暖機状態であるか、当該半暖機状態のときよりも前記気筒の壁面温度が高くかつ前記温度差が所定値未満となる暖機状態であるかを判定する判定部と、
    前記判定部によりエンジンが半暖機状態にあると判定された場合に、前記電動過給機を駆動して吸気を過給するとともに、エンジンが暖機状態にあった場合に比して前記吸気絞り弁の開度を低下させる制御部とを備えた、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
    前記電動過給機をバイパスするバイパス通路が前記吸気通路に設けられ、
    前記制御部は、エンジンが前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記吸気絞り弁の開度を、前記電動過給機で過給された吸気の一部が前記バイパス通路を通じて電動過給機に戻される吸気循環流が形成される開度まで低下させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 請求項2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記バイパス通路に開閉可能なバイパス弁が設けられ、
    前記制御部は、エンジンが前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記バイパス弁の開度を、当該バイパス弁の前後の圧力差が実質的になくなる流量飽和点の開度よりも低くかつ前記吸気絞り弁の開度よりも高い所定開度まで低下させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記判定部は、少なくともエンジンの始動時に、前記半暖機状態か暖機状態かの判定を行い、
    前記制御部は、エンジンの始動時に前記半暖機状態にあると判定された場合に、前記電動過給機を駆動して吸気を過給するとともに、前記暖機状態でのエンジン始動時に比して前記吸気絞り弁の開度を低下させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  5. 請求項4に記載のエンジンの制御装置において、
    始動時にエンジンをクランクキングする始動モータと、
    エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサとをさらに備え、
    前記判定部は、前記冷却水の温度が所定の閾値以上である状態でのエンジンの始動時に、前記始動モータの作動電流が所定の基準電流よりも高いという第1の要件と、前記水温センサにより検出される前記冷却水の温度が前記閾値よりも高く設定された基準温度よりも低いという第2の要件とのいずれかが成立した場合に、エンジンが半暖機状態にあると判定し、前記第1および第2の要件の双方が非成立であった場合に、エンジンが暖機状態にある判定する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記エンジンは、幾何学的圧縮比が14以上の圧縮着火式エンジンである、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  7. 請求項6に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御部は、前記暖機状態でのエンジン始動時、および、前記暖機状態でも半暖機状態でもない冷機状態でのエンジン始動時に、前記吸気絞り弁の開度を、当該吸気絞り弁の前後の圧力差が実質的になくなる流量飽和点の開度以上に設定することを特徴とするエン
    ジンの制御装置。
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