この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
図1は、播種育苗施設の平面レイアウト図である。この播種育苗施設は、2階が育苗箱置場となっており、その育苗箱置場の育苗箱Cが育苗箱供給装置101によって1階に設置した播種設備102に1枚ずつ順次供給される。播種設備102は図2に示す構成で、育苗箱Cを一定方向に搬送する育苗箱搬送コンベヤ103に沿って、育苗箱に床土を入れて鎮圧・均平する床土供給装置104、水稲用の灌水装置105、床土の上に種籾を播種する播種装置106、覆土を施す覆土供給装置107、野菜用の灌水装置108が設けられている。尚、床土供給装置104の育苗箱搬送下手側部分には、育苗箱に供給された床土を均平する均平部109を備えている。尚、野菜の種子を播種するときには、野菜用の灌水装置108を作動させ、覆土供給装置107により覆土した後に灌水するようになっている。播種設備102によって播種等を施された育苗箱は、段積設備110によってパレット又は台車111の上に所定段数ずつ段積みされる。そして、段積みされた育苗箱を出芽室112に搬入して出芽させる。出芽室112で出芽させた段積状の育苗箱は育苗箱積替装置113で緑化台車146に棚積みされ、該緑化台車146ごと温度管理された緑化室1200へ搬入して所定の大きさに苗が成育するまで育苗する。尚、前記出芽室112及び緑化室1200は、それぞれ3室設けられている。
また、床土供給装置104よりも育苗箱Cの搬送上手側の位置には、育苗箱Cの側面に各種の情報を特殊なマークで記した情報表記ラベルを貼り付けるラベル貼付装置401を設けている。尚、情報表記ラベルで情報を記す表記形態は、バーコード等の各種の表記形態を使用することができる。情報表記ラベルにより、播種に使用する種子の品種や、播種前の種子消毒状況や、床土や覆土の種類等の各種の情報を格納し、育苗時の品種の区別やトラブル時の対応等が円滑に行え、育苗作業の効率化が図れる。ラベル貼付装置401の上部には、上記各種の情報を作業者が入力する情報入力部を備えている。ラベル貼付装置401は、床土供給装置104、水稲用の灌水装置105、覆土供給装置107及び野菜用の灌水装置108等により育苗箱Cが汚れる前に情報表記ラベルを貼り付けることができ、水や土により情報表記ラベルを適正に貼り付けられないことを防止している。
播種設備102の播種装置106の貯留する種籾の減少に伴って、種籾コンテナ114から自動的に該播種装置106へ種籾を供給する種籾供給コンベア115を設けている。この播種育苗施設には浸種水槽116を複数個(5個)設けており、水を張った該浸種水槽116内へ種籾を収容した状態の種籾コンテナ114を沈めて浸種して種子の芽出しを促進した後、その種子を播種装置106へ供給するようになっている。浸種水槽116へ供給される水は電気分解により生成される電解水(消毒液)であり、この浸種行程において種子の消毒も行う。従って、浸種水槽116は、浸種設備並びに種子消毒設備を構成している。前記電解水として生成される強酸性水と強アルカリ水とは、所望の温度に維持するべく共通の緑化室1200に設けた酸性水タンク1201及びアルカリ水タンク1202に貯留されている。浸種水槽116へ供給する水は、前記タンク1201,1202内の貯留量等に応じて強酸性水か強アルカリ水か適宜選択することができるが、複数個備える浸種水槽116ごとに強酸性水と強アルカリ水とを振り分けて供給し、浸種行程が終わると各浸種水槽116内の強酸性水と強アルカリ水とを混合させて中和し、中和された水を排水するのが理想的である。尚、この播種育苗施設には種籾コンテナ114ごと収容できる催芽設備1204も備えており、種籾コンテナ114内で種子を催芽させることもできる。
次に、段積設備110について説明する。この段積設備110は、育苗箱搬送コンベヤ113の終端部に配置され、該育苗箱搬送コンベヤ113で搬送される育苗箱Cを下方から持ち上げて段積する段積装置117と、該段積装置117で段積された育苗箱Cを把持して横移動し積付ける積付装置118と、該積付装置118で育苗箱Cが積付けられる積付台150と、該積付台150に積み付けられた育苗箱Cを受け取る積付アーム119と、該積付アーム119を上下移動及び横移動させて所定位置に移載する移載機構120とを備えている。
育苗箱搬送コンベヤ103の搬送終端部には、搬送されてくる育苗箱Cを減速して停止させる空気圧式の衝撃吸収シリンダ156を設けている。搬送されてくる育苗箱Cが衝撃吸収シリンダ156のシリンダロッド156aに当たって該シリンダロッド156aが押し込まれながら搬送の衝撃が吸収されて育苗箱Cの搬送速度が徐々に低下し、シリンダロッド156aの作動ストローク終端で育苗箱Cが停止する。これにより、育苗箱C内の培土の土寄りを防止しながら育苗箱Cの搬送を停止できる。衝撃吸収シリンダ156の空気圧回路は、シリンダロッド156aと一体で作動するピストン156bの一方側と他方側のシリンダ室156cをエア配管157で繋いだ閉回路となっており、エア配管157には空気の流量を制限する流量絞り弁158を設けている。該流量絞り弁158による抵抗力を受けながら押し込まれたシリンダロッド156aは、別途設けた空気圧式の戻し用シリンダ159で作動する戻しロッド159aにより突出する初期状態に戻される。尚、コンプレッサ160からの空気圧が電磁式空気圧切替弁161を介して戻し用シリンダ159に供給されて戻しロッド159aが作動する。戻しロッド159aの先端に設けたU字型の戻し部材159bがシリンダロッド156aの先端部156dを押すことにより、強制的にシリンダロッド156aを戻す。戻しロッド159aは、シリンダロッド156aを戻せば直ぐに元の位置に戻り、育苗箱Cの搬送によるシリンダロッド156aの押込を阻害しない。従って、育苗箱搬送コンベヤ103で搬送される次の育苗箱Cを、シリンダロッド156aが受け止めることができる。衝撃吸収シリンダ156の空気圧回路は閉回路であるため、空気圧回路の圧抜き(大気開放)をしてシリンダロッド156aを初期位置に戻すのに比較して、空気圧回路又は衝撃吸収シリンダ156に空気中の水分が蓄積されにくくなるので、水分により衝撃吸収シリンダ156の作動不良が発生するのを抑え、衝撃吸収シリンダ156の耐久性を向上させながら、戻しロッド159aによりシリンダロッド156aを初期位置に戻すことができる。
また、育苗箱搬送コンベヤ103の搬送終端部には、搬送される育苗箱Cの側面に接触することにより該育苗箱Cに搬送抵抗を与える左右各々の複数(3個)の抵抗体151を設けている。この左右各々の複数の抵抗体151は、上下方向の軸心回りに回動自在のローラで構成され、前後方向に等間隔のピッチで配置されている。この抵抗体151により、衝撃吸収シリンダ156で育苗箱Cの搬送を停止する手前で、育苗箱Cの搬送を徐々に減速させることができ、搬送停止時の育苗箱Cへの衝撃を抑えながら、育苗箱搬送コンベヤ103の搬送速度自体を高速に設定することができるので、作業能率の向上が図れる。特に、抵抗体151は育苗箱Cの側面に作用するので、育苗箱Cの側面は平面状のものが殆どであるため、育苗箱Cの形状や構造等にあまり左右されずに的確に搬送抵抗を付与することができる。仮に、抵抗体151が育苗箱Cの底面に作用する構成とした場合、育苗箱Cの底面はリブ等の構造が育苗箱Cの種類によってまちまちであるから、育苗箱Cの種類によって搬送抵抗が異なる可能性がある。また、全ての抵抗体151は、衝撃吸収シリンダ156で搬送停止された状態の育苗箱Cに接触する構成となっている。従って、段積装置117が後述する偏心カム121によって育苗箱Cを持ち上げるときにも全ての抵抗体151が作用するので、育苗箱Cを上下にばたつかせずに安定して持ち上げることができ、育苗箱Cの段積の精度を向上させることができる。
段積装置117は、育苗箱搬送コンベヤ103で搬送され衝撃吸収シリンダ156で受け止められた育苗箱Cの底面に接触して該育苗箱Cを持ち上げる偏心カム121と、該偏心カム121で持ち上げられた育苗箱Cの縁部を支える支持板122とを備えている。偏心カム121は、偏心した回動軸123で駆動する円板であり、持ち上げる育苗箱Cの前後左右に計4個設けられている。4個の偏心カム121は、同じ移送で駆動回転し、同時に育苗箱Cを持ち上げる。支持板122は、左右に2枚設けられ、スプリングで左右外側に付勢され、偏心カム121の回動軸123と一体回転する駆動カム124の駆動により、駆動カム124の突部124aに押されて育苗箱C側(左右内側)へ向けて移動する。従って、支持板122は、左右外側から育苗箱C側(左右内側)へ向けて移動して育苗箱Cの縁部の下方に突出する構成となっている。
積付装置118は、所定の段積枚数(10枚)に段積された育苗箱Cをまとめて把持して移動する構成であり、一対の可動アーム126で育苗箱Cを把持する。積付装置118は、積付台150上又は積付アーム119上に、段積装置117の段積位置で前記段積枚数(10枚)に段積された育苗箱Cを、順に上側に重ねて複数回(計3回)繰り返して積付けることにより、育苗箱Cを所定の積付枚数(計30枚)に積付ける構成となっている。一対の可動アーム126は、育苗箱Cの長辺側となる側面と段積された育苗箱Cのうちの最下段の育苗箱Cの下面に接触する構成であり、前後に2組設けられている。可動アーム126は、上下移動用モータ127により上下動し、横移動用モータ128により駆動する積付用ラック129を介して横移動し、空気圧アクチュエータ162により上部の前後方向の回動軸126a回りに横方向に回動する構成となっている。
尚、育苗箱Cの前後左右計4箇所に、育苗箱Cの長辺側となる側面に接触して育苗箱Cの位置を規制する規制板である規制具125を別途設けてもよい。該規制具125は、前後方向において前後に2組設けられた可動アーム126の間に配置され、上下移動用モータ127、横移動用モータ128及び空気圧アクチュエータ162により、可動アーム126と共に上下動、横移動及び回動する構成とすればよい。更に、規制具125は、可動アーム126を介して取り付けた下動用空気圧シリンダ163により、下端が可動アーム126の先端よりも下位まで下動する構成とする。尚、下動用空気圧シリンダ163により下動しない状態では、可動アーム126の下端よりも規制具125の下端が若干上位となる。そして、積付アーム119上に既に積付けた育苗箱Cがある場合、すなわち積付アーム119上に複数回(計3回)繰り返して積付けるうちの1回目以外(2回目と3回目)の積み付けをする場合は、下動用空気圧シリンダ163により、規制具125の下端が積付アーム119上に既に積付けた最上の育苗箱Cの高さとなるまで該規制具125を下動させ、規制具125が前記最上の育苗箱Cの側面に接触することにより該最上の育苗箱Cを適正な位置に規制する。尚、積付アーム119上に複数回(計3回)繰り返して積付けるうちの1回目の積み付けをする場合は、下動用空気圧シリンダ163は作動せず規制具125は通常の上動位置のままである。
可動アーム126の先端部には、段積された育苗箱Cのうちの最下段の育苗箱Cの下面に接触して把持する育苗箱Cを下方から支え育苗箱C側に突出する下方支持部材164を備えている。下方支持部材164は、電動式の下方支持部材横移動用シリンダ165の作動により可動アーム126を基準に横方向に移動し、最下段の育苗箱Cの下方に突出する突出位置と最下段の育苗箱Cの下方から退避する退避位置とに切替できる構成となっている。下方支持部材164は、突出位置で育苗箱Cを下方から支える。尚、上下に延びる可動アーム126の本体部は、把持状態で育苗箱Cの長辺側となる側面に接触する。下方支持部材164は、横方向(水平方向)に沿う基部プレートの上面から上側に突出する複数(2本)の突条を備えて構成される。突条は、断面が三角形状でその三角形の頂点が上端となる形状であり、下方支持部材164が移動する方向に延びている。従って、育苗箱Cの下面が複数(2本)の突条の上端に各々直線状に接触する。また、育苗箱Cを支えた状態で下方支持部材164が退避位置へ移動するとき、突条が下方支持部材164が移動する方向に沿うので、育苗箱Cと下方支持部材164との摺動抵抗が少なくて下方支持部材164を円滑に移動させることができる。尚、上述では突条の断面形状を育苗箱Cとの接触面積を極力低減させるべく三角形状としたが、突条の断面形状を四角形状や円形状等の異なる形状としてもよい。また、基部プレートの両端に各々突条を配置すれば、突条どうしの間隔が広くなるので育苗箱Cを安定して支えることができる。また、突条に代えて、頂点を有する突起とすれば、突起が育苗箱Cの下面に点状に接触することになり、接触面積の低減が図れる。
可動アーム126は、先ず上下移動用モータ127により下動し、空気圧アクチュエータ162により内側に回動して段積された育苗箱Cを把持し、把持した育苗箱Cを上動して持ち上げる。このとき、下方支持部材164は、突出位置にある。また、横移動用モータ128により横移動して把持した育苗箱Cを積付台150上又は積付アーム119上へ移動する。その後、育苗箱Cを積付けるべき位置より若干上位まで可動アーム126を下動する。そして、下方支持部材横移動用シリンダ165の作動により下方支持部材164を退避位置に移動させ、把持していた育苗箱Cを積付アーム119上又は既に積付けた育苗箱C上に落下供給する。このとき、可動アーム126は、育苗箱Cの側面に接触したままであり、段積された育苗箱Cの横ずれを防止する。それから、可動アーム126を外側へ回動して育苗箱Cの把持を完全に解除する。その後、上下移動用モータ127により可動アーム126が上動し、可動アーム126が積付けられた育苗箱Cから上方に退避する。そして、横移動用モータ128により可動アーム126が横移動して段積された育苗箱Cを把持する把持位置に戻るが、この横移動中に下方支持部材164も突出位置に戻る。
積付台150は、前後2本の載置体で構成されている。そして、該前後2本の載置体の昇降を案内する上下方向に延びる昇降ガイドレールと、該昇降ガイドレールに沿って前後2本の載置体を昇降させる昇降モータとを設けている。そして、前後2本の載置体上に育苗箱Cがまたがるように、積付装置118が育苗箱Cを積付ける構成となっている。
積付アーム119は、前後2本のアーム体119aと、該アーム体119aの先端部に各々設けた載せ板119bとを備え、左右移動用モータ192により駆動する移載用ラック129を介して左右移動し、下方に設けたパンタグラフ機構130により上下移動する。尚、左右移動用モータ192、移載用ラック129及びパンタグラフ機構130等により、積付アーム119を移動させて該積付アーム119上の育苗箱Cを所定位置に移載する移載機構120が構成されている。また、パンタグラフ機構130により上下移動する前後2本のアーム体119a及び載せ板119bは、積付台150における前側の載置体よりも後側で且つ後側の載置体よりも前側に配置され、前後2本の載置体の前後間を通過し、積付台150の載置体、昇降ガイドレール及び昇降モータと干渉しない構成となっている。同様に、昇降モータの作動により昇降する積付台150の載置体は、前後のアーム体119a及び載せ板119bの前後外側を通過し、積付アーム119のアーム体119a、載せ板119b、左右移動用モータ192、移載用ラック129及びパンタグラフ機構130と干渉しない構成となっている。そして、積付台150の載置体の上面を載せ板119bの上面よりも下位まで下動させるか、又は載置体の上面よりも載せ板119bの上面が上位となるよう積付アーム119を上動させることにより、積付台150の載置体上に積付けられた育苗箱Cを、下方から載せ板119ひいては積付アーム119が受け取る構成となっている。
積付装置118は、複数回(計3回)の積付のうちの最初(1回目)の積付時、積付台150の載置体に段積された計10枚の育苗箱Cを積付ける。このとき、載置体は、育苗箱搬送コンベヤ103よりも若干高位に位置している。従って、可動アーム126は、段積装置117により段積位置にある計10枚に段積された育苗箱Cを前記段積位置である把持位置Jで把持し、上下移動用モータ127により載置体よりも上位まで上動し、横移動用モータ128により載置体の上方まで横移動し、上下移動用モータ127により下動し、積付位置で把持を解除して育苗箱Cを載置体上に載せる。その後、載置体は、計10枚に段積された育苗箱Cの上下幅と略同じ距離で且つ育苗箱搬送コンベヤ103よりも低位まで下降する。この載置体の下降中に、複数回(計3回)の積付のうちの次(2回目)の積付を行うため、可動アーム126は、前記積付位置から横移動して把持位置Jの上側に戻り、下動して育苗箱Cを把持位置Jで把持し、若干上動する。そして、可動アーム126は、載置体の上方まで横移動し、積付位置に下動して把持を解除することにより、把持していた育苗箱Cを先に載置体上に積付けた育苗箱Cの上に載せる。その後、載置体は、上面が後述する通常位置Hで待機する積付アーム119の載せ板119bの上面より低位となるまで更に若干量下降し、積付けられた計20枚の育苗箱Cを積付アーム119に移して該積付アーム119が受け取る。尚、この載置体の下降速度は、昇降モータの駆動を制御することにより、高速から低速に変化する構成となっている。これにより、計20枚の育苗箱Cを積付アーム119に移す瞬間は、載置体が低速で下降するようにし、積付アーム119への接触で育苗箱Cに衝撃が伝わらないようにでき、衝撃により育苗箱C内の土寄り又は土の飛散又は土割れ等の発生を防止できると共に、衝撃で計20枚の育苗箱Cの段積姿勢(積付姿勢)が崩れることを防止でき、積付精度の向上が図れる。
そして、この積付アーム119への育苗箱Cの受け渡しのための載置体の下降中に、複数回(計3回)の積付のうちの次(3回目、最後)の積付を行うため、可動アーム126は、前記積付位置から横移動して把持位置Jの上側に戻り、下動して育苗箱Cを把持位置Jで把持し、次の積付を行うために1回目及び2回目のときよりも大きく上動する。そして、可動アーム126は、載置体(積付アーム119)の上方まで横移動し、積付位置に下動して把持を解除することにより、把持していた育苗箱Cを先に積付けた積付アーム119上の育苗箱Cの上に載せる。その後、可動アーム126は、次の複数回(計3回)の積付のうちの最初(1回目)の積付を行うべく、積付位置から横移動して段積位置である把持位置Jの上側に戻る。以下、上述の動作を繰り返し、積付作業を行っていく。
また、積付装置118が複数回(計3回)に分けて上下に重ねて積付けた積付アーム119上の計30枚の育苗箱Cを、移載機構120の左右移動用モータ192の駆動により積付アーム119が往行程の横移動をして待機する台車111内まで移動し、パンタグラフ機構130により積付アーム119が下動して育苗箱Cを台車111の桟状の載台111aへ移し、台車111に移載する構成となっている。台車111は、前後左右計4箇所の載置位置に段積された育苗箱Cを載置する構成となっており、前記載置位置が積付アーム119に対向する位置にくるべく適宜移動する。従って、積付アーム119は、該積付アーム119からみて手前側の載置位置と奥側の載置位置とに育苗箱Cを積付ける。尚、台車111は、育苗箱搬送コンベヤ103に沿って並行に設けた台車走行レール131上を走行する構成となっている。
積付アーム119は、前記奥側の載置位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを奥側の載置位置の載台上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台上へ移載する。復行程の横移動の途中で奥側の載置位置の育苗箱Cから外れ且つ台車111内の位置に到達したことを検出する横移動センサ132を、積付アーム119の移動経路に沿う位置に設けている。復行程の横移動の途中で横移動センサ132が上述の位置に到達したことを検出すると、横移動しながらパンタグラフ機構130により上動して通常位置へ戻る。また、手前側の載置位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを手前側の載置位置の載台上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台上へ移載し、復行程の横移動で退避位置Iへ移動する。
台車111内の前記手前側の載置位置に積付けた後は、前記退避位置Iに積付アーム119がある状態で、積付装置118は、複数回(計3回)の積付のうちの最初(1回目)の積付を行うための動作を行っている。その後、積付装置118が複数回(計3回)の積付のうちの次(2回目)の積付を行う前に、積付アーム119が退避位置Iから通常位置Hへ上動する。従って、積付装置118が計3回の積付のうちの2回目及び3回目の積付を行うときは、積付アーム119は通常位置Hにある。
積付アーム119を通常位置Hに位置させて育苗箱Cを積付けるとき、積付アーム119に前記積付位置の下方から接触して該積付アーム119を支持する積付アーム支持部材166を設けている。この積付アーム支持部材166は、電動式のアクチュエータである積付アーム支持部材上下動用シリンダ167の作動により上動して積付アーム119に接触する。従って、積付アーム119を支持するパンタグラフ機構130の一方側に偏位する積付位置に多数の育苗箱Cが積付けられても、積付アーム支持部材166により積付アーム119が撓むことを防止する。積付アーム119に所定の積付枚数(計30枚)の育苗箱が積付けられると、積付アーム支持部材166が下動して積付アーム119から離れ、積付アーム119が横移動して育苗箱Cを台車111へ移載する。次工程の育苗箱Cの積付作業を行うべく積付アーム119が通常位置Hに戻ると、積付アーム支持部材166が上動して積付アーム119を支える。
尚、積付アーム支持部材166を回転ローラにより構成し、通常位置Hへ上動させた回転ローラを積付アーム119に接触させたままで積付アーム119を横移動させることもできる。これにより、積付アーム支持部材166が積付アーム119に接触していても、積付アーム119の上下移動及び横移動において支障にならず抵抗を与えない構成にでき、積付アーム支持部材166を下動させない分作業時間が短縮でき作業能率の向上が図れる。尚、台車111内の前記手前側及び前記奥側の何れの載置位置に積付けた後でも、積付アーム119が横移動しながら上動して通常位置Hへ戻る構成とすれば、積付アーム支持部材上下動用シリンダ167を廃止して積付アーム支持部材166を上下動させない構成とすることができ、積付アーム支持部材上下動用シリンダ167の廃止によりコストダウンが図れる。
積付アーム119により育苗箱Cを移載する所定位置へ台車111を後方から押して搬送する搬送押出具168を、前後に設けている。尚、本段落を含め、台車111の搬送に関する説明は、台車111の搬送下手側を前側とし、台車111の搬送上手側を後側として説明する。前後の搬送押出具168は、各々搬送用モータ169の駆動が伝動チェーン等の伝動機構を介して伝動されることにより、前後方向に延びる前後各々の案内レール170に沿って前後に移動する。前側の搬送押出具168が台車111を前記所定位置へ搬送する構成となっており、前側の搬送押出具168により搬送される台車111に前側から接触して該台車111を前記所定位置へ保持する台車ストッパ171を、前後に設けている。すなわち、後側の台車ストッパ171により台車111が保持されるときは、台車111の前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置へ積付アーム119が育苗箱Cを積み付ける状態となり、前側の台車ストッパ171により台車111が保持されるときは、台車111の前後左右計4箇所の載置位置のうちの後側2箇所の載置位置へ積付アーム119が育苗箱Cを積み付ける状態となる。台車ストッパ171は、プレートに固着した取付ボルト171aの頭部に台車111の前端部が接触して台車111の位置を保持する構成であり、前記プレートが上下方向のストッパ回動軸171b回りに回動して前後に移動自在に構成され、ダンパーである台車付勢具171cにより台車111側となる後側へ回動付勢されている。前記取付ボルト171aの近くの前記プレート部分には、台車111が取付ボルト171aに接触したことを検出するための磁気式の近接スイッチである台車検出具171dを設けている。後側の搬送押出具168は、前側の搬送押出具168が台車111を育苗箱Cを移載する所定位置よりも前側にまで搬送して前記所定位置に台車111が存在しないとき、次の台車111を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送する。
すなわち、後側の搬送押出具168が台車111を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送すると、前側の搬送押出具168が台車111を引き継いで搬送し、制御装置により後側の台車ストッパ171に台車111の前端が接触したことを台車検出具171dが検出してから所定時間後まで前側の搬送押出具168の搬送動作を継続してから該搬送動作を停止する。これにより、台車111が後側の台車ストッパ171を前側に押しながら移送され、ダンパーである台車付勢具171cが伸長して後側の台車ストッパ171が台車111を後側へ付勢する状態となり、従って、後側の台車ストッパ171と前側の搬送押出具168で台車111を加圧して挟んだ状態となり、台車111を所望の位置で確実に保持できる。そして、積付アーム119により前記所定位置への育苗箱Cの移載が終わると、前側の搬送押出具168で台車111を搬送する。すると、後側の台車ストッパ171が前側に回動しながら台車111の搬送経路から退避し、更に搬送していくと前側の台車ストッパ171に台車111の前端が到達する。制御装置により前側の台車ストッパ171に台車111の前端が接触したことを台車検出具171dが検出してから所定時間後まで前側の搬送押出具168の搬送動作を継続してから該搬送動作を停止する。これにより、台車111が前側の台車ストッパ171を前側に押しながら移送され、ダンパーである台車付勢具171cが伸長して前側の台車ストッパ171が台車111を後側へ付勢する状態となり、従って、前側の台車ストッパ171と前側の搬送押出具168で台車111を加圧して挟んだ状態となり、台車111を所望の位置で確実に保持できる。そして、積付アーム119により前記所定位置への育苗箱Cの移載が終わると、前側の搬送押出具168で台車111を前記所定位置から完全に抜け出すまで搬送する。すると、前側の搬送押出具168が台車111を育苗箱Cを移載する所定位置よりも前側にまで搬送して前記所定位置に台車111が存在しない状態となるから、後側の搬送押出具168が次の台車111を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送する。以下、上述した搬送行程を繰り返して、台車111を順次搬送していく。尚、搬送押出具168の作動における前記所定時間は、制御装置に入力される調節スイッチにより調節できる構成となっている。
尚、前後の搬送押出具168は互いに干渉しないように上下位置を異ならせてあり、前後の案内レール170も互いに上下位置を異ならせてある。前後の案内レール170は、前後の搬送押出具168が引き継いで台車111を搬送できるよう、一部の前後方向における位置が重なり合う。台車ストッパ171は、搬送される台車111に押されて台車111の搬送経路から退避する構成であるが、搬送押出具168も同様に上下方向の押出具回動軸回りに前側へ回動可能に設けられ、台車搬送後の搬送押出具168が後側へ戻り動作するときに搬送経路上にある次の台車111に干渉することになるが、搬送押出具168が前側へ回動することで前記搬送経路から退避する構成となっている。
以上により、段積設備102は、育苗箱搬送コンベヤ(103)で搬送される育苗箱(C)を下方から持ち上げて段積する段積装置(117)と、該段積装置(117)で段積された育苗箱(C)を把持して横移動し積付ける積付装置(118)と、該積付装置(118)で育苗箱(C)が積付けられる積付台(150)と、積付台(150)に積み付けられた育苗箱(C)を受け取る積付アーム(119)と、該積付アーム(119)を横移動させて該積付アーム(119)上の育苗箱(C)を所定位置に移載する移載機構(120)を設け、積付装置(118)は、段積された育苗箱(C)を複数回に分けて順次上側に重ねて積付けることにより、育苗箱(C)を所定の積付位置で所定の積付枚数に積付ける複数回の積付を行う構成とした段積設備において、前記複数回の積付のうちの最初の積付を行うときは、育苗箱(C)を積付台(150)に積付け、その後、積付台(150)を下動させるか又は積付アーム(119)を上動させることにより積付台(150)に積付けられた育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取り、育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取った後で、更に積付アーム(119)上の育苗箱(C)の上側に積付装置(118)が育苗箱(C)を重ねて積付ける構成とした。
よって、前記複数回の積付のうちの最初の積付を行うときは、育苗箱(C)を積付台(150)に積付けるので、移載機構(120)により、積付アーム(119)が横移動して育苗箱(C)を所定位置に移載し積付位置に戻るまでの間に、積付装置(118)により育苗箱(C)を積付台(150)に積付けることができ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。また、前記複数回の積付のうちの最後の積付を行った後は、積付アーム(119)を横移動させて積付アーム(119)上に段積された育苗箱(C)をそのまま所定位置に移載することができ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。
また、積付台(150)を下動させることにより積付台(150)に積付けられた育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取る構成とした。
よって、前記最初の積付を行った後、積付台(150)を下動させるので、前記最初の積付時に、段積装置(117)により育苗箱(C)を段積する段積位置に積付台(150)の上下高さを近付けることにより、積付装置(118)の積付動作による育苗箱(C)の移動距離を短くでき、積付動作に要する時間の短縮化が図れ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。その後、積付台(150)を下動させることにより積付台(150)に積付けられた育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取るので、積付アーム(119)上が受け取った育苗箱(C)の高さは、育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取る前の積付台(150)上の育苗箱(C)の高さよりも低位となり、その後の積付装置(118)による積付アーム(119)上の育苗箱(C)の上側への積付動作による育苗箱(C)の移動距離を短くでき、積付動作に要する時間の短縮化が図れ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。
また、前記最初の積付を行うときは、育苗箱(C)を積付台(150)に積付け、その後、積付台(150)を下動させて該積付台(150)上の育苗箱(C)の上側に積付装置(118)が育苗箱(C)を重ねて積付け、その後、積付台(150)を下動させるか又は積付アーム(119)を上動させることにより積付台(150)に積付けられた育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取り、育苗箱(C)を積付アーム(119)が受け取った後で、更に積付アーム(119)上の育苗箱(C)の上側に積付装置(118)
が育苗箱(C)を重ねて積付ける構成とした。
よって、前記最初の積付を行った後、積付台(150)を下動させるので、前記最初の積付時に、段積装置(117)により育苗箱(C)を段積する段積位置に積付台(150)の上下高さを近付けることにより、積付装置(118)の積付動作による育苗箱(C)の移動距離を短くでき、積付動作に要する時間の短縮化が図れ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。その後、積付台(150)を下動させることにより、積付台(150)上の育苗箱(C)の高さは低位となり、その後の積付装置(118)による前記積付台(150)上の育苗箱(C)の上側への積付動作による育苗箱(C)の移動距離を短くでき、積付動作に要する時間の短縮化が図れ、作業能率の向上、ひいては作業精度が向上する。
尚、前述では、育苗箱Cの複数回(計3回)の積付のうちの最初(1回目)の積付及び次(2回目)の積付を積付台150に行い、積付台150に積付けられた育苗箱Cを積付アーム119が受け取った後、最後(3回目)の積付を積付アーム119に行う構成としたが、これに代えて、最初(1回目)の積付のみを積付台150に行い、積付台150に積付けられた育苗箱Cを積付アーム119が受け取った後、次(2回目)の積付及び最後(3回目)の積付を積付アーム119に行う構成としてもよい。このとき、積付装置118の可動アーム126の移動距離の短縮化のため、次(2回目)の積付時よりも最後(3回目)の積付時の積付アーム119が低位に下動する構成としてもよい。
また、前述では、積付装置118が育苗箱Cを3回に分けて積付ける構成としたが、積付装置118が育苗箱Cを4回以上に分けて積付ける構成としてもよい。このとき、積付装置118が積付台150に積付ける回数と積付アーム119に積付ける回数とを、共に複数回となるよう設定する等、任意の回数に適宜設定することができる。
また、積付台150を下動させることにより、積付台150に積付けられた育苗箱Cを積付アーム119が受け取る構成としたが、育苗箱Cを積付アーム119が受け取るに際しては、積付台150よりも積付アーム119が上位となれば可能であるので、積付アーム119を上動させることにより、積付台150に積付けられた育苗箱Cを積付アーム119が受け取る構成としてもよい。また、積付台150を下動させると共に積付アーム119を上動させる構成としてもよい。あるいは、積付台150及び積付アーム119を共に下動させると共に、積付アーム119の下動速度よりも積付台150の下動速度を速くして、積付台150よりも積付アーム119が上位となる構成とすることもできる。これにより、育苗箱Cが積付アーム119に移るときの積付台150と積付アーム119との相対速度を小さくできるので、育苗箱Cへの衝撃を抑えることができる。
尚、積付アーム119を、基部側に設けた回動支点を中心に上下方向に回動可能に設け、上下回動アクチュエータの作動により上下に回動可能に構成してもよい。そして、育苗箱Cを積付アーム119から台車111内の載置位置へ移載するとき、積付アーム119を下側に回動させて移載する構成とすれば、作業時間の短縮が図れる。この構成によると、積付アーム119を台車111内の前記手前側及び前記奥側の何れの載置位置から積付位置に移動させるときでも、積付アーム119を横移動させながら上側へ回動させて元の姿勢に戻すことができ、更なる作業時間の短縮が図れ、作業能率が向上する。更に、台車111内の載置位置へ移載するときの積付アーム119の下側への回動角度に合わせて、積付アーム119を下側へ回動させたときに該積付アーム119の先端部の底面が水平に近い角度となるよう該底面に切欠きを設けた構成とすれば、積付アーム119を下側へ回動させた状態で横移動させるとき、積付アーム119が台車111の構造物に干渉することを回避できる。
尚、積付装置118に、育苗箱Cを上方から押さえる育苗箱押さえ具を設けてもよい。この育苗箱押さえ具は、積付装置118が段積位置に位置するとき、段積装置117の段積位置の育苗箱Cの上方に配置され、平面視で該育苗箱Cと略同じ大きさの長方形状の板体で構成されている。また、育苗箱押さえ具は、上下にスライド自在に支持され、段積装置117で段積される最上の育苗箱Cの上面に接触し、自重により該育苗箱Cを上方から押さえる。通常は前記最上の育苗箱Cは上方から押さえられていないので振動で上下にばたつき易くなるが、育苗箱押さえ具により、段積装置117の作動による最上の育苗箱Cの振動を抑えることができ、最上の育苗箱C内の土寄りを防止できる。そして、育苗箱押さえ具は、積付装置118が段積された育苗箱Cを積付位置へ移動する際にも最上の育苗箱Cの上面に接触した状態を維持し、最上の育苗箱Cを安定して保持する。積付装置118が育苗箱Cを積付台150又は積付アーム119に積み付けると、押さえ具上下ロック機構により育苗箱押さえ具の上下位置が固定され、積付装置118が積付位置から段積位置へ戻るまでの間、育苗箱押さえ具が自重で下降しないようにしている。その後、積付装置118が段積位置へ到達すると、押さえ具上下ロック機構が解除されて育苗箱押さえ具が上下動自在となるので、育苗箱押さえ具は、自重により段積位置の最上の育苗箱Cの上面まで下降する。
播種育苗施設で野菜苗を育苗したとき、育苗された野菜苗は接ぎ木に使用することがある。よって、播種育苗施設に接木苗製造装置1を装備することが望ましい。次に、この接木苗製造装置1について説明する。
接木苗製造装置1は、台木と穂木を接ぎ木する接木ロボット本体laを中心にその左側に台木取込部(取込部)2、同右側に穂木取込部(取込部)が配置され、接木ロボット本体laには、その前面の左右に台木取込部または穂木取込部から台木、穂木としての苗をそれぞれ受ける台木前処理部(前処理部)3、穂木前処理部(前処理部)4、中央には、台木前処理部3または穂木前処理部4から受けた台木と穂木を接着する接着処理部7、この接着された接木苗を下方から送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成し、穂木取込部の手前側には操作パネルlpを設けたものである。
台木前処理部3は、空気圧で作動する台木側のロータリーアクチュエータ60の駆動により回転作動する台木搬送アーム61を備え、該台木搬送アーム61により台木取込部からの台木苗を把持し、台木搬送アーム61が90度回転して台木苗を切断位置62に搬送し、その後台木搬送アーム61が更に90度回転して台木苗を接合位置63に搬送する。切断位置で台木切断装置64により台木苗を切断し、双子葉の片葉(双子葉のうちの一方の子葉)を切り落とす。
穂木前処理部4は、空気圧で作動する穂木側のロータリーアクチュエータ67の駆動により回転作動する穂木搬送アーム68を備え、該穂木搬送アーム68により穂木取込部からの穂木苗を把持し、穂木搬送アーム68が90度回転して穂木苗を切断位置69に搬送し、その後穂木搬送アーム68が更に90度回転して穂木苗を接合位置63に搬送する。切断位置69で穂木切断装置70により穂木苗を切断し、胚軸の下側部を切り落とす。
接着処理部7は、接木苗の接合用のクリップ201を一つずつ繰り出すクリップフィーダ73と、台木苗及び穂木苗が接合位置63に到達した状態で該クリップフィーダ73で繰り出されるクリップ201を一つずつ供給して台木苗及び穂木苗を固定するクリップ供給装置74を備えている。尚、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が接合位置63に到達したとき、台木苗と穂木苗の各々の切断面が合致して苗を接合した状態となる。
尚、クリップフィーダ73とクリップ供給装置74とは、別個に構成され、各々上下高さを調整可能な構成となっている。これにより、クリップフィーダ73とクリップ供給装置74とを相対的に高さ調節でき、クリップフィーダ73からクリップ供給装置74へのクリップ移送における移送不良(クリップの詰まり等)を防止できる。また、クリップフィーダ73とクリップ供給装置74とを別々にして輸送することができるので、輸送の容易化が図れる。
クリップ201は、左右一対の把持部202と左右一対の開閉部203とを備え、この把持部202と開閉部203とが左右各々で一体となった左右のクリップ片を構成し、左右のクリップ片が把持部202と開閉部203との間で互いに接触して回動支点を構成し、左右の開閉部203を閉じると左右の把持部202が開く構成となっている。左右の把持部202は、スプリング204により閉じる側に付勢されており、外力がない状態では閉じる構成となっている。
クリップ供給装置74にはクリップ201の移送経路となるガイドレール205を備えており、振動式供給装置であるクリップフィーダ73によるクリップ201の繰り出し作用により把持部202が移送上手側となる所望の向きでクリップ201が一つずつガイドレール10へ供給され、ガイドレール205の移送始端部に設けた振動式移送装置46によりガイドレール205を振動させ、該ガイドレール205内で把持部202が移送上手側となる姿勢で連続的にクリップ201が移送される。ガイドレール205の終端部は後述する左右の狭窄ガイド214により左右幅が狭くなっており、ガイドレール205の終端部へクリップ201が移送されると該クリップ201が左右の開閉部203を閉じて左右の把持部202を開く。そして、ガイドレール205の終端からクリップ201を受け継ぐクリップ開閉装置206の左右の開閉操作部材207が開くことで左右の開閉部203を開いて左右の把持部202を閉じる構成となっている。また、ガイドレール205の終端部に設けたクリップ押出装置208により、接合位置63へ順次クリップ201を供給する構成である。
ガイドレール205の終端部には、左右中央にある通過溝215と、通過溝215の左右両側にある左右各々の案内台216と、左右の案内台216の外側にある左右各々の狭窄ガイド214と、左右の案内台216上にある左右各々の後部規制体217とを設けている。上下に厚みのあるクリップ201の把持部202が前記通過溝215を通過し、クリップ201の閉じ状態で把持部202よりも左右外側に位置し且つ把持部202よりも上下の厚みが小さい開閉部203が前記案内台216上に載置され、クリップ201が前後水平な姿勢を保つ。また、後部規制体217は、平面視で台形状に構成され、外側の端面により開閉部203がクリップ搬送経路の左右中央側に移動するのを規制している。そして、クリップ201が搬送されることにより、左右の狭窄ガイド214で左右の開閉部203が左右内側に押されて閉じ把持部202が開く構成となっている。ところで、クリップとしては、前述のようなスプリング204を設けず、樹脂による一体成形により構成した一体成形型クリップ218がある。この一体成形型クリップ218は、前述のクリップ204との相違点として、スプリング204がないことはもとより、左右の開閉部203の端部(後端部)どうしを連結する連結部219を設けたところにあり、該連結部219の弾性により把持部202を閉じる側に付勢する構成となっている。この一体成形型クリップ218においても、前述と同様に、通過溝215、案内台216、狭窄ガイド214及び後部規制体217により、適正に案内される。更に、後部規制体217の前端面により連結部219が後側へ移動するのを規制しており、一体成形型クリップ218が後側へ移動するのを規制し、クリップ押出装置208により該一体成形型クリップ218を的確に押し出して供給し得る構成としている。従来は、後部規制体217が、開閉部203がクリップ搬送経路の左右中央側に移動するのを確実に規制するために平面視で三角形状に構成されていたので、一体成形型クリップ218を搬送する場合には、連結部219が左右の後部規制体217に載り上がった状態となり、一体成形型クリップ218が前後に傾斜してしまうおそれがあった。
尚、左右の後部規制体217として、従来の平面視三角形状の左右の後部規制体217と平面視台形状の左右の後部規制体217とに交換可能に構成し、スプリング204を備えるクリップ201を搬送するときには平面視三角形状の左右の後部規制体217を装着し、一体成形型クリップ218を搬送するときには平面視台形状の左右の後部規制体217を装着するようにしてもよい。このとき、左右の後部規制体217を通過溝215及び左右の案内台216と一体で交換する構成としてもよい。尚、左右の後部規制体217の装着にあたっては、装着するための取付ボルト(取付ビス)の頭部がクリップの通過を阻害しないよう、装着状態で案内台216部分で案内台216の上面と同一か低位に前記頭部が位置するようにすればよい。
また、異なる形状のクリップを搬送するときは、クリップ押出装置208の作動ストロークを変更することが望ましい。特に、平面視台形状の左右の後部規制体217を装着したガイドレール205でスプリング204を備えるクリップ201を搬送するときには、後部規制体217によるクリップ201の後側への移動の規制を確実に行えず、クリップ201の前後位置にばらつきが生じ易いので、クリップ押出装置208の往復作動ストロークを若干大きめに設定し、クリップ201が後側寄りに位置していても確実にクリップ201を押し出せる構成とすることが理想的である。
ガイドレール205の移送終端部寄りの位置でクリップ押出装置208よりも移送上手側となる第一の所定位置には、クリップ201の有無を検出する光電式の第一クリップセンサ65を設けている。また、ガイドレール205の移送始端部寄りの位置で第一の所定位置よりも移送上手側となる第二の所定位置には、クリップ201の有無を検出する光電式の第二クリップセンサ66を設けている。そして、制御装置は、第一クリップセンサ65がクリップ201を検出しないとき、該第一クリップセンサ65からの入力に基づいて接木ロボット本体laの運転すなわち台木前処理部3、穂木前処理部4及び接着処理部7の運転を停止させると共に、後述する操作パネル1pの設定変更部54内に設けたランプを赤色で常時点灯させて警報する。これにより、クリップ201が接合位置63へ供給されない状態で接木作業を行って台木苗や穂木苗が無駄になることを防止でき、クリップフィーダ73へのクリップ201の補給を促す。また、第一クリップセンサ65がクリップ201を検出し且つ第二クリップセンサ66がクリップ201を検出しないことが第一クリップセンサ65及び第二クリップセンサ66から入力され、それから所定時間(10秒程度)経過すると、前記ランプを青色で点滅させて警報し、クリップフィーダ73内のクリップ201が無くなってクリップ201が減少したり、あるいはクリップフィーダ73の作動不良や移送経路上でクリップ201が詰まってクリップ201が適正に移送されなくなったことを知らせる。これにより、クリップフィーダ73へのクリップ201の補給あるいはクリップ201の詰まりの解消作業を促すことができ、接木作業を中断せずにクリップ201を補給でき、接木作業能率の向上が図れる。また、第二クリップセンサ66がクリップ201を検出するとき、該第二クリップセンサ66からの入力に基づいてクリップフィーダ73の作動を停止させる。これにより、クリップフィーダ73によりガイドレール205へ不必要にクリップ201が供給されず、無理に供給されることでガイドレール205内でクリップ201が破損することを防止できる。通常の運転状態では、第二クリップセンサ66がクリップ201を検出しない状態となる度に、クリップフィーダ73を作動させて前記第二の所定位置にクリップ201が供給され、第二クリップセンサがクリップ201を検出する状態となる。尚、前記ランプは、通常の運転状態では青色で常時点灯する。
ガイドレール205の延長上の位置には、規制部材209を配置している。この規制部材209は、透明で樹脂製の上下方向に沿うプレートで形成され、接合位置63においてクリップ開閉装置206で開閉するクリップ201の前端(把持部202の先端)が接触する位置に配置されている。従って、接合位置63に移送されるクリップ201は、左右の把持部202を開いた状態で前端が規制部材209に接触し、それ以上移送されないように規制される。規制部材209は、ロータリーアクチュエータからなる規制部材移動装置210により前後に回動する移動用アーム211の先端部に固着され、接合位置63のクリップ201に対向して接触する規制位置から、その下側で前側に移動して前記規制位置から退避する退避位置へ回動する構成となっている。
従って、まず、退避位置にある規制部材209が、規制部材移動装置210により規制位置へ前側から移動する。台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68の伸張により台木苗及び穂木苗が左右から接合位置63へ供給され、苗を接合状態とする。このとき、規制部材209により苗を接合位置63の適正な位置へ案内される。尚、規制部材209の左右端部は、円弧状もしくはテーパ状に構成され、苗を引っ掛けずに円滑に案内し得る構成となっている。そして、クリップ押出装置208により接合位置63へクリップ201が左右の把持部202を開いた状態で供給されるが、該クリップ201は規制部材209に接触して適正な位置に位置決めされる。このクリップ201の開いた左右の把持部202の間の空間が把持領域となるが、この把持領域内に、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68により搬送された台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部が位置する。つまり、台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部は、左右の把持部202と規制部材209とで囲まれた空間内に位置する。その後、クリップ開閉装置206の左右の開閉操作部材207が開くことで左右の開閉部203を開いて左右の把持部202を閉じ、台木苗及び穂木苗をクリップ201で挟持して固定するが、このときも規制部材209が規制位置にありクリップ201の飛び出しが規制されているので、左右の把持部を閉じる動作でクリップ201の姿勢や位置が不適正となるのを防止している。しかも、把持部202における所望の位置で苗を挟持することができる。左右の把持部202を閉じた後、規制部材209は規制部材移動装置210により退避位置に移動する。その後、クリップ押出装置208によりクリップ201が押し出されて当該クリップ201ごと接木苗が接木苗送出部8へ放出され、該接木苗送出部8により接木苗をコンテナへ搬送する。規制部材209は、透明であるので、邪魔にならずに作業者が苗の接合状況を容易に視認することができ、各部の調整等が不適正で発生する不良な接木苗の多量発生を防止する。ひいては、台木前処理部3、穂木前処理部4及び接着処理部7の各部の調整作業が容易に行え、調整作業時間の短縮化が図れる。
クリップ開閉装置206の左右の開閉操作部材207の下方には、接合位置63へ供給されるクリップ201を下側から支持する支持部材となる固定支持板221及び可動支持板222を設けている。固定支持板221は、ガイドレール205の延長上に配置され、接合位置63にある苗の胚軸の位置から左側にかけて設けられ、接合位置63から左右一方側となる台木前処理部側の部分を構成する。可動支持板222は、固定支持板221の前側(クリップ201の放出側)で接合位置63にある苗の胚軸の位置から右側にかけて設けられ、接合位置63から左右他方側となる穂木前処理部の部分を構成する。そして、固定支持板221の前端面221aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、固定支持板221は、前後方向において接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ201の移送上手側(後側)に位置し、固定支持板221の前端面221aが、接合位置63で接合される苗の胚軸にクリップ201の移送上手側で接する移送上手側の端面となる。また、可動支持板222の左端面222aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、可動支持板222は、接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ201の前後方向の移送下手側(前側)にまで至り、可動支持板222の左端面222aが、接合位置63で接合される苗の胚軸に穂木前処理部側で接する穂木前処理部側の端面となる。尚、可動支持板222は、固定支持板221の前端面221aよりも前側(クリップ201の放出側)へ台木苗の胚軸の軸径(3〜4mm)程度突出している。更に、可動支持板222は、長孔222bを介して左右位置調節可能に固定支持板221に取り付けられ、長孔222bに挿入する締結ボルト223を外せば取り外すこともできる。従って、可動支持板222の左右位置変更により可動支持板222の左端面222aの左右位置を変更できると共に、可動支持板222の取り外しにより可動支持板222の左端面222aを備えない状態に切替できる。
台木搬送アーム61による台木苗の切断位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の切断位置69への搬送作動は、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68がそれぞれの苗を共に把持するのに伴って同期して作動を開始するが、穂木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて穂木側のロータリーアクチュエータ67へのエア流量を少なくして穂木搬送アーム68の作動速度を台木搬送アーム61の作動速度よりも若干遅くして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングを台木搬送アーム61が切断位置62に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達したことを穂木側のローリングアクチュエータ67に設けた穂木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、台木切断装置64及び穂木切断装置70が切断動作を開始する。これにより、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が各々切断位置62,69に確実に到達した状態で各々の切断装置64,70を作動させることができ、適正に苗を切断することができると共に、台木側の切断位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、台木苗よりも軽い穂木苗をゆっくりと搬送させることにより、穂木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、穂木苗における切断位置が不適正になって接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。従来は、台木搬送アームと穂木搬送アームを同じ作動速度で作動させるようにしていたので、台木側と穂木側のエアホースの長さや屈曲度合や傷み具合の相違等により、台木搬送アームと穂木搬送アームの内の一方の作動速度が遅くなると、作動速度が速い側で切断位置に到達することを検出するようにしたとき、作動速度が遅い側が切断位置に到達する前に切断装置が作動して、苗の切断が不適正となるおそれがある。
同様に、台木搬送アーム61による台木苗の接合位置63への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の接合位置63への搬送作動は、台木切断装置64及び穂木切断装置70の切断動作の完了に伴って同期して作動を開始するが、台木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて台木側のロータリーアクチュエータ60へのエア流量を少なくして台木搬送アーム61の作動速度を穂木搬送アーム68の作動速度よりも若干遅くして、台木搬送アーム61が接合位置63に到達するタイミングを穂木搬送アーム68が接合位置63に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、台木搬送アーム61が接合位置63に到達したことを台木側のローリングアクチュエータ60に設けた台木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、クリップ供給装置74がクリップ供給動作を開始する。これにより、台木苗及び穂木苗が各々接合位置63に確実に到達した状態でクリップを供給することができ、台木苗と穂木苗を適正に固定することができて接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木側の接合位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、片葉切断した状態の台木苗をゆっくりと搬送させることにより、台木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。
台木切断装置64は、台木用の切断刃75と、切断する側の子葉の葉柄を支える葉柄支え具76と、残す側の子葉を上側から押さえる子葉押さえ具77を備える。台木用の切断刃75と葉柄支え具76は、空気圧で作動する台木用の前後移動用シリンダ78により移動して、切断位置62にある台木苗に近づき、葉柄支え具76が葉柄に接触して保持する(図16(2)参照)。尚、台木用の前後移動シリンダ78は台木苗側が高位となるよう傾斜しており、台木用の切断刃75と葉柄支え具76が下側寄りの位置から台木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。その後、空気圧で作動する子葉押さえ用ロータリーアクチュエータ79により子葉押さえ具77が下側に回動し、子葉押さえ具77の先端部に設けた子葉押さえローラ80により子葉を上側から押さえる(図16(3)参照)。その状態で、空気圧で作動する台木用の切断用シリンダ81により斜め上方向に切断軌跡となる直線移動軌跡で台木用の切断刃75を移動させ、台木苗の切除するべき部分となる胚軸及び片葉を切断する(図16(4)参照)。このとき、台木用の切断刃75は、苗の胚軸を通り抜けることなく切断箇所となる苗の切断面に接触して該切断面を覆う位置で停止し、台木苗の切除するべき部分と台木苗の残すべき部分を遮る遮断位置にある。そして、台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避させ、この台木用の切断刃75の移動により台木苗の切除するべき部分が台木苗の残すべき部分から離される(図16(5)参照)。その後、子葉押さえ具77を上側へ回動して元の位置に戻すと共に、台木用の切断用シリンダ81により台木用の切断刃75を斜め下方向に移動させて元の位置に戻す(図16(1)参照)。
よって、切断後の台木苗の切除するべき部分を、移動する台木用の切断刃75により台木苗の残すべき部分から離しながら移動させることができ、樹液がしみ出た台木苗の切断面に切除するべき部分が付着して残ることを防止でき、接木苗の接合精度が向上し、また台木用の切断刃75を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させてから退避移動させる必要がないので切断工程の作業時間短縮が図れ、作業能率が向上し、良好な接木苗を得ることができる。特に、従来のように、台木用の切断刃75を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させることで、切断後の台木苗の切除するべき部分を台木用の切断刃75が再度切断し、その切断で生じた切れ屑が切断面に付着することを防止できる。また、切断軌跡の短縮により、台木用の切断刃75により作業者が怪我をすることも抑制される。
また、台木用の切断刃75及び台木用の切断用シリンダ81で構成される部分は、台木切断装置64の基部(台木用の前後移動シリンダ78)に対して上下方向の切断刃回動軸228を中心に回動可能に構成され、前記切断刃回動軸228を中心とする回動角度を調節できる構成となっている。これにより、台木用の切断刃75の左右方向の傾斜角度を調節することができ、前後に傾いた上下方向の切断軌跡の方向と交差する方向(左右方向)に台木用の切断刃75を傾斜させることができる。尚、台木切断装置64の基部の2箇所に設けた角度調節用長孔229により、台木用の切断刃75の傾斜角度の調節範囲が規制されている。従って、台木苗の双子葉の間で且つ上から見て双子葉の方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)で胚軸の一方側にのみ存在する本葉を確実に切断することができ、残すべき子葉を傷付けることなく切除するべき一方の子葉と本葉とを的確に切断することができる。尚、台木用の切断刃75が本葉の付け根部分に作用せず本葉の中心部分や先端部分に作用すると、台木苗の本葉を円滑に切断できないばかりでなく台木用の切断刃75に本葉が押され、本葉を介して残すべき子葉が押されて台木苗が回転し、台木用の切断刃75により残すべき子葉をも傷付ける切断不良が発生することが考えられる。尚、未だ本葉が展開していない台木苗を切断するときには、台木用の切断刃75を左右方向に傾斜させずに左右水平姿勢とし、片葉のみを確実に切除すればよい。
尚、台木用の前後移動シリンダ78の作動ストローク位置を検出するストロークセンサ又は台木苗の切断刃75を直接検出する切断刃センサの検出により、台木苗の切断刃75が前記遮断位置に到達したことに基づいて台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。また、台木苗の切断刃75を停止させず、台木苗の切断刃75を直線移動軌跡上で移動させながら前記遮断位置に到達した時点から台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。
また、前後移動シリンダ78の作動による台木苗に対する切断刃75の接近度合(接近位置)を検出する光電式の接近センサ238を、台木切断装置64の前後移動シリンダ78で前後移動する部分に設けている。一方、台木搬送アーム61側の後述する子葉支え用ローラ支持アーム231には、前記接近センサ238の投光方向で対向し該接近センサ238からの光を反射する反射板239を設けている。従って、接近センサ238は、投光した光の前記反射板239による反射光を受光して接近度合(距離)を判定し、台木苗に対して切断刃75が所望の位置に到達したと判断すると、前後移動シリンダ78の前進の作動を停止して切断用シリンダ81の作動を開始し、台木苗の切断動作を行う。これにより、高精度で台木苗の所望の位置を切断することができ、接木精度の向上が図れる。尚、後述する操作パネル1pの設定変更部54に数値を入力することにより、台木苗に対する切断刃75の接近度合を設定して調節できる構成となっており、前記数値の入力に基づいて前後移動シリンダ78の前進作動を停止させる位置を制御する。これにより、苗の種類又は成育状態等の条件に対応して台木苗の切断位置を調節することができ、接木作業の汎用性が高まる。また、入力する前記数値を制限モードを操作パネル1pの設定変更部54の操作にて設定することができ、この制限モードにより、作業者が接木作業中に誤って極端に数値を変更設定してしまうことで苗を切り落とし過ぎることを防止し、接木に使用できなくなる苗の発生を防止できる。
台木搬送アーム61には、把持する台木苗の子葉展開基部を支える子葉支え部材となる子葉支え用ローラ250を設けている。この子葉支え用ローラ250により、台木切断装置64による苗切断時に切断刃75の反対側から子葉展開基部を支え、切断位置の適正化を図っている。この子葉支え用ローラ250の台木苗側の外面にはエア吹出口251を設けており、エア吹出口251からのエアにより、苗が子葉支え用ローラ250に貼り付くことを防止して、苗を接合した後の接木苗を台木搬送アーム61から良好に放して排出できる。尚、エア吹出口251からのエアの吹き出しを苗接合後の接木苗排出時のみとすることにより、前記エアが吹き出すことによる台木苗の切断不良や接合不良を防止しながら、接木苗を円滑に排出することができる。
子葉支え用ローラ250は、子葉支え用ロータリーアクチュエータ230の作動により回動する子葉支え用ローラ支持アーム231により前後方向に移動させながら昇降する構成である。そして、台木搬送アーム61が接合位置63に到達し、クリップ押出装置208により接合位置63へクリップ201を供給する前に、子葉支え用ロータリーアクチュエータ230を作動させて子葉支え用ローラ250を接合位置63の接木苗側に移動させながら上昇させ、子葉支え用ローラ250を接木苗の接合部分から離し、後に接木苗の接合部に供給されるクリップ201との干渉を回避すると共に、台木苗の残した側の子葉を外側(台木前処理部3側)から押して接木苗の接合を確実に行う構成となっている。接木苗がクリップ201で保持されて接合位置63から排出され、次の台木苗を把持するべく台木搬送アーム61が台木取込部2側へ回転作動して戻る工程中に、子葉支え用ロータリーアクチュエータ230の作動により子葉支え用ローラ250を元の位置(台木苗の子葉展開基部を支える状態の位置)に下降させる。
子葉支え用ローラ支持アーム231には、台木搬送アーム61に沿って子葉支え用ローラ250を進退させる電動式のローラ移動用シリンダ232と、台木搬送アーム61に対して子葉支え用ローラ250を昇降させる電動式のローラ昇降用シリンダ233とを設けている。また、後述する制御パネル55上にて、子葉支え用ローラ250の進退位置及び昇降位置を設定できる構成となっており、制御装置により、前記進退位置に基づいてローラ移動用シリンダ232を作動させ、前記昇降位置に基づいてローラ昇降用シリンダ233を作動させる構成となっている。また、制御パネル55上での数値入力により、ローラ移動用シリンダ232及びローラ昇降用シリンダ233の作動速度も調節することができ、子葉支え用ローラ250の位置の微調節も容易に行える構成となっている。これにより、作業者は、台木苗の子葉展開基部を支える状態の子葉支え用ローラ250の位置となる前記進退位置及び前記昇降位置の調節を容易に行える。
尚、子葉支え用ロータリーアクチュエータ230を廃止し、該子葉支え用ロータリーアクチュエータ230に代えてローラ昇降用シリンダ233の作動により接合位置63での接木苗の接合時に子葉支え用ローラ250を上昇させる構成とすることもできる。この構成により、子葉支え用ローラ250を残す側の子葉の真下から上昇させることができるので、子葉支え用ローラ250が残す側の子葉の上面を押さえて該子葉を巻き込むことを防止できる。特に、前記残す側の子葉が下側へ大きく垂れ下がっているとき、該子葉の上面側に子葉支え用ローラが作用して巻き込む可能性が高まると考えられる。更に、ローラ移動用シリンダ232により、切断位置62又は接合位置63で子葉支え用ローラ250を進出させて台木苗の子葉展開基部を支える構成としてもよい。このときは、ローラ移動用シリンダ232により子葉支え用ローラ250を進出した状態から、ローラ昇降用シリンダ233により子葉支え用ローラ250を上昇させる構成とすればよい。
また、子葉押さえ具77には、台木苗の片方の子葉を押さえた状態で下方に向けてエアを吐出し、切除する台木苗の他方の子葉を吹き飛ばす子葉除去用ノズル252を設けている。この子葉除去用ノズル252は、子葉押さえ具77が作動して子葉を押さえたとき(図16(3)のとき)から台木切断装置64が切断を完了したとき(図16(5)のとき)までの間、エアを吐出する。これにより、除去すべき子葉を確実に台木苗から離して除去することができ、除去すべき子葉が台木苗の切断面に付着することを防止し、以降の苗の接合の適正化が図れ、接合精度の向上が図れる。また、台木苗の切断時(図16(4)のとき)に子葉除去用ノズル252からのエアにより他方の子葉を押し下げることで子葉展開角度を大きくすることができ、切断の適正化が図れる。
穂木切断装置70は、穂木用の切断刃82と、切り落とす側(下側部)の胚軸を支える胚軸支え具83を備える。穂木用の切断刃82と胚軸支え具83は、空気圧で作動する穂木用の前後移動用シリンダ84により移動して、切断位置69にある穂木苗に近づき、胚軸支え具83が胚軸に接触して保持する(図17(2)参照)。尚、穂木用の前後移動シリンダ84は穂木苗側が高位となるよう傾斜しており、穂木用の切断刃82と胚軸支え具83が下側寄りの位置から穂木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。尚、穂木苗に近づいた状態で、穂木用の切断刃82は、子葉の裏側(下側)に位置する。そして、空気圧で作動する穂木用の切断用シリンダ85により斜め下方向に切断軌跡となる直線移動軌跡で穂木用の切断刃82を移動させ、穂木苗の切除するべき部分となる胚軸の下側部を切断する(図17(3)参照)。このとき、穂木用の切断刃82は、苗の胚軸を通り抜けることなく切断箇所となる苗の切断面に接触して該切断面を覆う位置で停止し、穂木苗の切除するべき部分と穂木苗の残すべき部分を遮る遮断位置にある。そして、穂木用の前後移動シリンダ84により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を斜め下方向に移動させて穂木苗から退避させ、この穂木用の切断刃82の移動により穂木苗の切除するべき部分が穂木苗の残すべき部分から離される(図17(4)参照)。その後、穂木用の切断用シリンダ85により穂木用の切断刃82を斜め上方向に移動させて元の位置に戻す(図17(1)参照)。尚、穂木用の切断用シリンダ85の取付角度を調節することにより、切断角度を容易に調節できる。
よって、切断後の穂木苗の切除するべき部分を、移動する穂木用の切断刃82により穂木苗の残すべき部分から離しながら移動させることができ、樹液がしみ出た穂木苗の切断面に切除するべき部分が付着して残ることを防止でき、接木苗の接合精度が向上し、また穂木用の切断刃82を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させてから退避移動させる必要がないので切断工程の作業時間短縮が図れ、作業能率が向上し、良好な接木苗を得ることができる。特に、従来のように、穂木用の切断刃82を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させることで、切断後の穂木苗の切除するべき部分を穂木用の切断刃82が再度切断し、その切断で生じた切れ屑が切断面に付着することを防止できる。また、切断軌跡の短縮により、穂木用の切断刃82により作業者が怪我をすることも抑制される。
尚、穂木用の前後移動シリンダ85の作動ストローク位置を検出するストロークセンサ又は穂木苗の切断刃82を直接検出する切断刃センサの検出により、穂木苗の切断刃82が前記遮断位置に到達したことに基づいて穂木用の前後移動シリンダ85により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を穂木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。また、穂木苗の切断刃82を停止させず、穂木苗の切断刃82を直線移動軌跡上で移動させながら前記遮断位置に到達した時点から穂木用の前後移動シリンダ85により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。
尚、台木切断装置64の台木用の切断刃75と穂木切断装置70の穂木用の切断刃82は、平面視で互いに接合位置63側ほど苗から離れるように斜めに配置され、切断する苗に対し前進角を有して移動して苗を切断する。これにより、苗の切断抵抗を抑えて苗の切断を円滑に行えると共に、接木苗を固定するクリップの把持部における先端側(接合位置における前側(切断位置側))から各々の苗を切断することになるので、切断時に苗の切断位置が位置ずれし易い切断終端がクリップの把持部における奥側(接合位置63における後側(切断位置62,69と反対側))となるが、クリップの把持部における奥側で苗の保持精度が高まるため、接木苗の接合率向上が図れる。
尚、前記台木取込部2及び穂木取込部は互いに左右対称で同様の構成であるので、以下は、穂木取込部について説明する。
穂木取込側については、穂木取込部は、接木ロボット本体laの側方で苗ポットに育成した多数の穂木苗(苗)Wを格子配列した苗トレイを順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wに対して進退機構12bにより進退動作可能に穂木苗Wを穂木として個々の把持しつつ胚軸をカットして把持動作する把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に横移動可能に支持する移送機構13と、その移送行程上に配した方向修正部材14等から構成する。また、穂木取込部と穂木前処理部4との間の穂木受渡し位置(受渡し位置)Rには、穂木取込部から移送された穂木苗Wを一時的に保持する保持機構となる受渡保持機構15を設ける。
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体laの側方に沿って移送動作するべルト式のコンベヤ253等により構成し、横一列の苗が取り出される度に苗トレイの配列ピッチで順次移送動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。移送機構13は、接木苗製造装置1の片側位置で搬入機構11を横断して受渡保持機構15までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能に構成し、苗トレイの横一列の苗において受渡保持機構15側から苗を取り出すべく、把持ハンド12が受渡保持機構15へ苗を供給した後に次に取り出す苗(苗があるセル)の左右位置に順次左右移動する構成となっている。この移送機構13による移送行程に干渉するように、棒状部材または回動抵抗を抑えた縦軸ローラによる方向修正部材14を下垂状に配置する。この方向修正部材14は、移送機構13の左右移送経路の終端の直前位置で、受渡保持機構15に対向する位置より若干搬入機構11側に配置されている。また、受渡保持機構15には、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを保持した際にその子葉展開方向を規制する整列部材16を設ける。これら受渡保持機構15と整列部材16とにより整列保持手段を形成する。
次に、穂木取込部の把持ハンド12について詳細に説明する。把持ハンド12は、穂木苗Wの胚軸Aの上段部と中段部を把持する上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびその下方に開閉動作により穂木苗Wの胚軸Aの下段部を切断するカッタ機構23を三段重ねに進退機構12bにより一体に進退動作可能に配置し、その側方に独立して上下動作可能に持上げ具24を備えて構成する。上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23からなる上下三段の各ハンドの上下間隔を調節可能に設けており、苗の胚軸の長さに応じて各ハンドの上下間隔を変更して、徒長苗や苗の品種に対応して苗を適正に把持できる構成としている。
上段のハンド機構21は、図24(a)に示す通り、左右の開閉アーム21aの先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく左右方向の切欠Bを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成し、その隙間限度設定用の調節ボルト21bを設ける。中段のハンド機構22は、図24(b)に示す通り、左右の開閉アーム22a,22aのその先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく前後方向の切欠Cを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成する。上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22により、穂木苗の把持位置精度を確保しつつ、穂木苗がその胚軸線で回動可能に把持する。
カッタ機構23は、基部234に左右方向へ回動する切断アーム23aを設け、切断アーム23aの先端部には苗(穂木苗)の胚軸Aを切断する刃23bを片持ち状態で取り付け、切断アーム23a及び刃23bと対向する位置には左右方向へ平行移動(スライド移動)する規制具235を設けている。尚、切断アーム235は、カッタ機構23の基部234に設けた切断用回転アクチュエータにより上下方向の軸心を中心として左右方向へ回動する構成となっている。尚、規制具235は、上下鉛直方向に沿う板状部材で形成され、カッタ機構23の基部234に固定した切断用左右移動シリンダ236の作動により前記基部234に対して左右に移動する構成となっている。また、刃23bとして、厚みが極めて薄い市販の剃刀刃を使用している。刃23bは、規制具235の下端よりも若干低位に配置されている。切断アーム23a及び刃23bを接木ロボット本体la側に配置し、規制具235を接木ロボット本体laとは左右反対側に配置している。従って、カッタ機構23は、台木取込部と穂木取込部とで左右対称な構造となっている。これにより、台木取込部及び穂木取込部は、共に搬入機構11により苗取出位置へ搬送された苗トレイの横一列の苗を、接木ロボット本体la側の苗から一株ずつ順次取り出す構成であるが、苗を取り出す際に接木ロボット本体la側に隣接する苗は既に取り出されており切断アーム23a及び刃23bが前記隣接する苗と干渉するおそれがないので、回動する切断アーム23a及び刃23bの回動量を大きく設定することができ、平面視で苗トレイのセルの中心に対して苗の胚軸が接木ロボット本体la側に偏位していても、確実に前記胚軸を刃23bで切断する構成とすることができる。一方、苗を取り出す際に接木ロボット本体laとは左右反対側に隣接する苗は存在するが、規制具235は、左右方向へ平行移動する構成であるので、前記隣接する苗に干渉せずに取り出す苗のセルの端部に沿って位置させることができ、平面視で苗トレイのセルの中心に対して取り出す苗の胚軸が接木ロボット本体laと左右反対側に偏位していても、確実に前記胚軸を規制具235で受け止めて胚軸を確実に切断する構成とすることができる。
そして、刃23bの上側には、刃23bの上面に接触して該刃23bが上側へ撓むことを規制する撓み規制体237を設けている。この撓み規制体237は、平面視で刃23bの刃先よりも左右方向外側(胚軸とは左右反対側)に配置され、切断アーム23aの先端部に固定して取り付けられている。これにより、後述するカッタの閉じ動作により切断アーム23a及び刃23bを回動させて胚軸を切断するとき、平面視で苗トレイのセルの中心に対して取り出す苗の胚軸の位置が接木ロボット本体la側(刃23b側)に偏位していることで、規制具235で胚軸を受けないまま刃23bが撓みながら胚軸を切断できずに傾かせてしまい最終的に切断不良となることを防止できる。
尚、胚軸Aがカッタ機構23aの基部234側に入り込むのを規制する規制ガイドを別途設けてもよい。この規制ガイドにより、胚軸Aの位置ずれを防止して刃23bで円滑に切断することができる。尚、規制ガイドは、刃23bの上方に配置され、刃23b側へ胚軸Aを案内するべく刃23b側ほど基部234側に位置する構成とすることが望ましい。
上段のハンド機構21、中段のハンド機構22及びカッタ機構23は、穂木苗を穂木としてその根側を切断しつつその胚軸を回動可能に緩く把持する遊嵌把持機構を形成する。
前記持上げ具24は、第一の持上げ具41と第二の持上げ具42とを備えて構成される。前記第一の持上げ具41は、穂木苗Wの根元位置まで前下がりに傾斜するとともに、受渡保持機構15側すなわち苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動してくる側となる同穂木苗Wの側方から背後に達するように先端部41tを屈曲したロッドにより形成される。先端部41tとその基部に屈曲して延びる側部41sを略直角に設定することにより、図29の起立動作の正面図に示すように、持上げ具41の上行動作により倒れた胚軸Aを起立することができる。持上げ具41の支持部41bは、穂木苗に対する位置関係に合わせて前後位置と高さ位置を調節可能に構成する。
また、苗Wに対して前記第一の持上げ具41と左右反対側に第二の持上げ具42を設けている。この第二の持上げ具42は、受渡保持機構15とは反対側で苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動する側となる苗の側方に位置するべく屈曲したロッドにより形成され、前後移動シリンダ43により進退動作可能に設けられている。苗の側方に位置する第二の持上げ具42の先端部42aは、前記第一の持上げ具41の先端部41tと同様に水平で、第一の持上げ具41の先端部41tより若干高位で且つ前後移動シリンダ43により突出させた状態で平面視で交差するように設けられている。従って、第一の持上げ具41の上行動作で第二の持上げ具42が共に上動し、苗の左右両側方及び後方の三方から苗を持ち上げて直立させることができ、把持ハンド12による穂木苗の把持を適正に行える。特に、セルのピッチが狭い苗トレイにおいて、第二の持上げ具42により把持ハンド12が左右移動した側の隣接苗側に苗が傾いたまま把持ハンド12で把持して移送するようなことを防止でき、苗が隣接苗と絡んだまま把持ハンド12で移送されて苗の把持姿勢が不適正になるようなことを防止できる。また、一方の持上げ具41の上下動機構で他方の持上げ具42も上下動させる構成としたので、この上下動機構の簡素化が図れる。また、第二の持上げ具42を平面視で中途部が把持ハンド12側(隣接苗から離れる側)に突出するように屈曲させた構成としているので、該第二の持上げ具42に干渉しないように把持ハンド12の開閉量を所定に維持できると共に、第二の持上げ具42が隣接苗と干渉しにくくなり、苗取り出しの円滑化が図れる。尚、第二の持上げ具42は、図31に示すように、平面視で斜めの部分を設けて構成している。
上記の持上げ具24では三方から苗を持ち上げる構成であるので、残りの一方側(把持ハンド12側)に倒れる苗を直立させることはできない。そこで、搬入機構11の苗トレイ上には、該苗トレイの左右幅にわたる倒れ規制具44を設けている。この倒れ規制具44は、セル内の培土を荒らしたり搬入機構11による苗トレイの搬送抵抗になったりしないように回転自在のローラで構成され、把持ハンド12で取り出す苗の把持ハンド12側で適確に作用するようにセルの上方に位置する。
また、把持ハンド12の上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22に各々において、左右一対の開閉アーム21a,22aのうち受渡保持機構15側(右側)に位置する一方の開閉アーム21a,22aには、受渡保持機構15と左右反対側(左側、他方の開閉アーム21a,22a側)に延びる苗分離具45を固着して設けている。この苗分離具45は、棒材で構成され、左右方向(左側)に延びる基部45aと該基部45aから前側に屈曲して延びる先端部45bとを備え、開閉アーム21a,22aより若干上位に配置されている。苗分離具45の先端部45bは、一対の開閉アーム21a,22aが開いた状態では、前記他方の開閉アーム21a,22aの上方に位置し、略前後真直方向で若干把持方向内側に向かって延び左右の開閉アーム21a,22aの角度に対して把持方向内側に向く角度となる。一方、一対の開閉アーム21a,22aが閉じた状態では、他方の開閉アーム21a,22aより把持方向外側(左側)に位置し、先端へいくほど把持方向外側となる外向きの角度となる。従って、苗トレイの苗を把持するべく進退機構12bにより把持ハンド12が前進するときは、一対の開閉アーム21a,22aが開き、苗分離具45の先端部45bは把持しようとする苗に干渉しないように当該苗と隣接苗との間に挿入される。そして、一対の開閉アーム21a,22aを閉じると、苗分離具45の先端部45bは隣接苗側(左側)に回動して移動し、把持する苗と隣接苗とを離して苗の絡みを解くようになっている。
上記構成の把持ハンド12による穂木苗の取込動作は、図32の動作手順図に従って行う。まず、図33(a)の準備状態の動作平面図に示すように、後退位置で上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23を閉状態に準備(S1)した上で、接木苗製造装置1の外側方向への移送機構13の横移動により、搬入機構11上の穂木苗Wの側方から第一の持上げ具41の先端部41tを穂木苗Wの背面位置に挿し入れ、その後前後移動シリンダ43を伸長し第二の持上げ具42を前側に突出させて平面視で先端部が苗の側方に位置させると共に第一の持上げ具41の先端部41tと交差させ、第一の持上げ具41及び第二の持上げ具42の上行動作(S2)により穂木苗Wの倒れを修正する。
尚、カッタ機構23の閉状態とは、切断用回転アクチュエータ及び切断用左右移動シリンダ236の作動により切断アーム23aと規制具235とが互いに近づく側に移動した状態であり、平面視で刃23bと規制具235とが重複した状態となる(図25(c)参照)。このとき、刃23bは規制具235の下端よりも若干低位に配置されているので、平面視で刃23bと規制具235とを重複させることができる。
従って、把持ハンド12は、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23が閉状態で横移動するので、横移動の際に苗トレイの苗に干渉しにくく、また横移動で取り出す苗とは別の苗を懐に収めてしまうようなことを防止でき、苗の取出不良を防止できる。尚、第二の持上げ具42と第一の持上げ具41の先端部41tとを平面視で交差させた状態で、移送機構13により把持ハンド12を若干(10mm程度)接木ロボット本体1a側(隣接苗とは反対側)に移動させてから上段のハンド機構21、中段のハンド機構22及びカッタ機構23を閉じる構成とすれば、把持ハンド12により隣接苗を一緒に把持したり切断したりする不具合を防止できる。この把持ハンド12を若干接木ロボット本体1a側に移動させる工程を、第一の持上げ具41及び第二の持上げ具42の上行動作(S2)と同時に行う構成とすれば、作業時間を短縮でき作業能率向上が図れる。
尚、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22は、前記横移動の上手側を曲面状に形成しており、横移動で苗と干渉しにくいように且つ苗を傷めないようにしている。尚、持上げ具24は、上行動作(S2)前において、カッタ機構23と略同じ高さに位置する。これにより、カッタ機構23をセルの上面に近づけることができて該カッタ機構23が苗の根元を切断でき、冬期に育苗されるような胚軸が短い苗でも上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22で苗を適正に取り出すことができる。
次いで、図33(b)の把持状態の動作平面図に示すように、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23を開き(図25(a)参照)、その後、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23を前進させ(S3、図25(b)参照)、その後、上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22を閉じる(S4)ことにより上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22の先端の切欠B、Cに穂木苗Wの胚軸Aが遊嵌保持される。その後、カッタ機構23を閉じ(S5、図25(c)参照)、切断用左右移動シリンダ236の作動により規制具235を切断アーム23a及び刃23bとは左右反対側へ移動し(図25(d)参照)、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22及びカッタ機構23を後退する(S6、図25(e)参照)。
尚、上述の規制具235を切断アーム23a及び刃23bとは左右反対側へ移動した状態(図25(d)の状態)で、規制具235は、後述するカッタ機構23を開いた状態のときと同じ位置に移動する。上述の規制具235を切断アーム23(a)及び刃23bとは左右反対側へ移動した状態(図25(d)の状態)でも、平面視で刃23bの先端側の一部と規制具235の先端側の一部とが重複した状態となっており、規制具235により穂木苗Wの胚軸の下端部を規制して胚軸がカッタ機構23から脱落することを防止している。これにより、カッタ機構23を閉じた状態で刃23bと規制具235とで胚軸Aが挟まれて曲げられた状態にあるときに、その曲げられた状態を緩和してから刃23bを後退させることにより胚軸Aを切断でき、カッタ機構23の閉じ作動で胚軸の切断が不十分であるときに、刃23bと規制具235とで胚軸Aを強く挟持したまま後退することで苗床部(根鉢)ごと苗を引き抜くことを防止でき、後工程で苗床部が干渉することによるメカロックや苗搬送精度の低下を防止でき、接木作業の精度を向上させることができる。また、胚軸Aが切断されて穂木苗Wの下端が刃23bの上面に載った状態で穂木苗Wが胚軸Aを中心に回動可能にカッタ機構23により支持されることになる。ここで、接木苗製造装置1の中心方向に横移動(S7)することにより、搬入機構11から穂木苗を個別に取込むことができる。尚、S6における上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の後退距離すなわち進退機構12bによる進退作動ストロークは、S6の行程により苗トレイから取り出すべく把持する苗が隣接苗と完全に干渉しない長さに設定されている。
尚、カッタ機構23を開いた状態(開状態)とは、切断用回転アクチュエータ及び切断用左右移動シリンダ236の作動により切断アーム23aと規制具235とが互いに離れる側に移動した状態であり、平面視で刃23bと規制具235とが離れており、カッタ機構23が前進したとき、平面視で取り出す苗のセルsよりも刃23bと規制具235とが外側に位置する状態である(図25(b)参照)。
尚、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22の間、中段のハンド機構22とカッタ機構23の間には、各々苗ガイド212を設けている。この苗ガイド212は、苗ガイド用シリンダ213により、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の前進に先立って前進し、これから取り出そうとする穂木苗Wが直立姿勢となるよう修正し、苗の取出し不良を防止するものである。苗ガイド212は、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の後退と同時に後退する。
また、移送機構13による移送行程においては、図35の方向修正動作の平面図に示すように、穂木苗を把持した把持ハンド12が把持位置Bから受渡し位置Cまで横移動する際に、その移送行程に干渉するように配置した方向修正部材14の近傍を通過することにより、穂木苗Wの子葉展開方向が移送方向に対して大きく傾斜していると子葉が方向修正部材14と干渉することにより子葉展開方向が略移送方向に揃うように穂木苗が回動される。
前記移送機構13は、コンプレッサからの空気圧により摺動するエアシリンダにより把持ハンド12を横移動させる構成であり、前記シリンダに備えるストロークセンサにより把持ハンド12が搬入機構11及び該搬入機構11上の苗トレイの上方から離れて方向修正部材14の直前位置まで到達したことを検出すると、シリンダへ供給するエアの流量が少なく制御されて移送速度が減速され、移送終端部での移送速度が低速となる構成となっている。この移送速度が減速される位置は、取り出す苗(苗があるセル)の左右位置となる移送始端位置に拘らず同じ位置に設定されている。尚、把持ハンド12が次の苗を把持するべく受渡保持機構15の受渡し位置から搬入機構11上の苗トレイ側へ移動する戻り行程では、通常の速い移送速度で把持ハンド12が横移動する。持上げ具24は、移送機構13の移送速度が移送終端部で減速されるまでの間、持上げ状態に上昇したままであり、苗の移送で他の苗と干渉する等して該苗の姿勢が悪化するようなことを防止している。尚、移送機構13の移送速度が減速するのと同時にカッタ機構23よりも下位に下降し、苗受渡し行程において邪魔にならないようにしている。
尚、把持ハンド12が苗を取り出して上昇した状態で異常停止やオペレータによる中断操作等の停止状態となった後、リセット操作をすると、把持ハンド12が移送機構13により元の原点位置である受渡し位置Rに戻ろうとするが、把持ハンド12が上昇している状態であるので受渡し保持機構15に干渉することになってしまう。そこで、把持ハンド12が下降位置にあることを検出するセンサを設けており、リセット操作をしたときに、該センサにより把持ハンド12が下降位置にあることを検出したときのみ、移送機構13により把持ハンド12を受渡し位置Rに横移動させる構成となっている。
次に、受渡し位置Rに構成される受渡保持機構15と整列部材16とによる整列保持手段について説明する。
受渡保持機構15は把持ハンド12の進出位置で穂木苗を受けるべく、進出動作する把持ハンド12に対向して配置される。その構成は、受けた穂木苗の胚軸Aの上部を把持する上段ハンド機構31と、上段ハンド機構31の直ぐ下側で一方側(接合位置63側)に苗の胚軸Aを寄せて胚軸の位置を位置決めする位置決めハンド機構71と、その下方で胚軸Aの上下中間部を把持する中段ハンド機構32と、上段ハンド機構31及び位置決めハンド機構71の下側且つ中段ハンド機構32の上側で胚軸Aの過大な進入を規制するストッパ33と、これらを一体に高さ位置を調節する昇降機構34を受渡し位置Rに備える。
上段ハンド機構31の把持空間は、苗の胚軸の断面よりも大きい構成となっている。従って、上段ハンド機構31は、苗の胚軸の上部を前記把持空間である所定の融通空間内で移動可能に緩く把持する。位置決めハンド機構71は、前記融通空間内で融通する苗の胚軸Aを寄せて胚軸の位置を位置決めする。中段ハンド機構32は、把持空間が苗の胚軸の断面と略合致し、苗の胚軸を挟持して把持する。そして、先ず上段ハンド機構31が苗の胚軸の上部を緩く把持し、次に中段ハンド機構32が苗の胚軸の上下中間部を把持し、その後に位置決めハンド機構71が苗の胚軸を寄せて位置決めするべく、制御装置により上段ハンド機構31、位置決めハンド機構71及び中段ハンド機構32が所定のタイムラグで把持するべく作動する構成となっている。その後、苗の胚軸を把持した状態で中段ハンド機構32が所定量下動し、把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで下側へ引き下げる構成となっている。尚、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32は、位置決めハンド機構71と左右方向で同じ側に可動式のハンドを備え、位置決めハンド機構71とは左右反対側に固定式のハンドを備え、可動式のハンドを作動させて固定式のハンドと可動式のハンドとの間で苗の胚軸を保持する構成となっている。
受渡保持機構15の上方で穂木苗の子葉を受ける位置に整列部材16を配置する。整列部材16は、双葉状の子葉展開方向を規制する平板状の部材であり、その中心位置に上下に延びる突条によるガイド部35を形成する。このガイド部35は受けた穂木苗の子葉を左右に振り分けるために、断面形状が山形でその表面を平滑に低摩擦に形成する。
整列保持手段における受渡し動作は、把持ハンド12の進出動作によって受渡保持機構15に穂木苗Wを渡す際に、穂木苗Wの子葉L,Lが整列部材16に押し付けられるとともに、ガイド部35により子葉L,Lが左右に振り分けられて子葉展開軸線が整列部材16に沿うように整列される。
受渡保持機構15への受渡し動作を詳細に説明すると、搬入機構11から穂木苗を取込み、その胚軸を把持した把持ハンド12を受渡保持機構15の正面に位置を合わせた後、まず、図39に示すように、カッタ機構23を含めて把持ハンド12を閉じた状態、すなわち、胚軸Aの下端をカッタ機構23上に受けつつ上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22が苗の胚軸を緩く把持した状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで一往復することにより、整列部材16を介して子葉展開方向が修正される。次いで、カッタ機構23を開くことにより把持ハンド12の上段のハンド機構21に子葉L,Lを受けて穂木苗Wの高さ位置を合わせる。この状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで再度複数回(2回)往復することにより、整列部材16に子葉が当たって子葉展開方向が整列される。この整列動作の後、把持ハンド12を受渡保持機構15まで進出した上でカッタ機構23を閉じることにより、胚軸Aが所定位置で切断されて長さが揃えられる。
胚軸Aの切断の後にカッタ機構23を開くと共に、受渡保持機構15の上段ハンド機構31、位置決めハンド機構71及び中段ハンド機構32が穂木苗Wを把持し、次いで把持ハンド12による苗の胚軸の把持を解除して把持ハンド12を後退させ、受渡保持機構15の中段ハンド機構32の下動により苗を引き下げる。
このようにして受渡しの終了後に、把持ハンド12を搬入機構11側に戻すことにより、次の穂木苗についての取込みが可能となる。この一連の動作の繰返しにより、搬入機構11から穂木苗を順次取込んで接木ロボット本体1aにより接木処理することができる。尚、苗受渡し行程において、持上げ具24は、苗の受け渡しの邪魔にならないようにカッタ機構23よりも下位に下降している。
受渡保持機構15には、供給された苗を検出する苗検出センサ224と、苗を受渡保持機構15へ供給する位置から退避した通常位置にある把持ハンド12を検出する把持ハンド検出センサ225を設けている。苗検出センサ224は、上段ハンド機構31と中段ハンド機構32の間に配置され、側方から把持位置に供給された苗の胚軸を検出する光電式のセンサである。把持ハンド検出センサ225は、上方から把持ハンド12を検出する光電式のセンサである。
また、受渡保持機構15の直ぐ上側には、ハンド機構3232が苗の胚軸を把持するのに連動して点灯する報知装置となる把持完了ランプ226と、ハンド機構3232による苗の把持を解除するための把持解除操作具となる把持解除スイッチ227を設けている。
そして、台木取込部又は穂木取込部を使用して受渡保持機構15へ苗を自動的に供給する全自動接木作業をするときには、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ224が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ225が把持ハンド12を検出し且つ把持完了ランプ226が点灯した状態で把持解除スイッチ227が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。また、台木取込部又は穂木取込部を使用せず、人手により受渡保持機構15へ苗を供給する半自動接木作業をするときには、受渡保持機構15の周辺を検出するべく把持ハンド検出センサ225の向きを変更調節すると共に、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ224が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ225が何も検出せず(作業者の手を検出せず)且つ把持完了ランプ226が点灯した状態で把持解除スイッチ227が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。この全自動接木作業と半自動接木作業の切替は、モードスイッチ49の操作に連動して切り替えられる。尚、全自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ225の検出性能を高分解能の高精度で検出する状態に切り替えて定位置にある把持ハンド12を正確に検出し、半自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ225の検出性能を低分解能の広範囲で検出する状態に切り替えて周辺に作業者の手がないことを判断する構成としている。この把持ハンド検出センサ225の検出性能の切替は、制御装置内に設けた増幅装置により行う。
尚、把持完了ランプ226が点灯した状態で把持解除スイッチ227が操作されると、操作された側のハンド機構3232の把持を解除すると共に台木前処理部3及び穂木前処理部4による苗の搬送を中止する。
尚、作業者は、全自動接木作業と半自動接木作業の何れでも、中段ハンド機構32の苗の引き下げが不十分であるとき、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32が作動した後、中段ハンド機構32の下側の胚軸部分をつかんで更に苗を引き下げることができる。つまり、中段ハンド機構32内で滑らせながら把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで下側へ引き下げ、苗の上下位置が所定位置となるように位置決めする。尚、中段ハンド機構32の把持面は、ゴムやスポンジ等の弾性体で構成してもよい。これにより、太い胚軸Aでは把持面の面積が大きくなり細い胚軸Aでは把持面の面積が小さくなるため、苗の大きさ(胚軸Aの太さ)に応じて中段ハンド機構32の把持力を異ならせて調節でき、苗の把持力を適度に得ながら苗の引き下げを適正に行える。
従って、先ず上段ハンド機構31が苗の胚軸の上部を緩く把持した後、中段ハンド機構32が苗を把持する前に子葉展開基部が上段ハンド機構31に近づくまで自重により苗が下降し、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32で把持された苗を、作業者が胚軸を把持して引き下げることにより、苗の子葉展開基部を上段ハンド機構31に揃えて苗の上下位置を調整できる。そして、位置決めハンド機構71が苗の胚軸を寄せて該胚軸を位置決めハンド機構71に対向する固定ガイドに押し付け、胚軸の端部を固定ガイドに接触させて横方向の位置決めをする構成となっている。尚、この横方向の位置決めをしたとき、位置決めハンド機構71は、コンプレッサからの空気圧により作動する構成であり、苗の胚軸を固定ガイドに所定の押付力で押し付け、該胚軸の把持力が所定の把持力に到達する位置まで動作することになる。尚、位置決めハンド機構71が苗の位置決めをした後、作業者が苗を引き下げてもよい。
また、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32も、コンプレッサからの空気圧により作動する構成である。従って、中段ハンド機構32は、苗の胚軸を把持するとき、所定の把持力に到達する位置まで動作することになる。そこで、中段ハンド機構32の開閉位置を検出するハンド開閉位置検出装置を設け、ハンド開閉位置検出装置は、中段ハンド機構32の左右一対のハンドどうしが接触して完全に閉じた状態であることを検出する完全閉状態検出スイッチと、中段ハンド機構32の左右一対のハンドどうしの間隔が苗の胚軸の軸径に相当する程度の所定範囲内であることを検出する中間閉状態検出スイッチとを備える。尚、完全閉状態検出スイッチ及び中間閉状態検出スイッチは、マグネット式のスイッチである。制御装置は、中段ハンド機構32が閉じ動作して苗を把持したときに、完全閉状態検出スイッチが検出状態であると、中段ハンド機構32が苗を把持していないと判断して、制御パネル55上に苗の把持不良の異常状態であることを表示し且つブザー音を発して報知すると共に、装置全体の作動を停止させて台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68への苗の引き継ぎを行わない構成となっている。また、中段ハンド機構32が閉じ動作して苗を把持したときに、完全閉状態検出スイッチが検出状態で且つ中間閉状態検出スイッチが検出状態であると、ハンド開閉位置検出装置が異常状態であることを表示し且つブザー音を発して報知すると共に、装置全体の作動を停止させる。また、中段ハンド機構32が閉じ動作して苗を把持したときに、完全閉状態検出スイッチが非検出状態で且つ中間閉状態検出スイッチが非検出状態であると、中段ハンド機構32の作動不良の異常状態であることを表示し且つブザー音を発して報知すると共に、装置全体の作動を停止させる。そして、中段ハンド機構32が閉じ動作して苗を把持したときに、完全閉状態検出スイッチが非検出状態で且つ中間閉状態検出スイッチが検出状態で且つ苗検出装置となる苗検出センサ224が検出状態(受渡保持機構15に苗を検出する状態)であると、装置の作動を継続して通常の台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68への苗の引き継ぎ動作を行わせる構成となっている。また、中段ハンド機構32が閉じ動作して苗を把持したときに、完全閉状態検出スイッチが非検出状態で且つ中間閉状態検出スイッチが検出状態であるが、苗検出センサ224が非検出状態(受渡保持機構15に苗を検出しない状態)であると、ハンド開閉位置検出装置の検出を優先して中段ハンド機構32が苗を把持している可能性が高いと判断し、装置の作動を継続して通常の台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68への苗の引き継ぎ動作を行わせるが、苗検出センサ224が異常状態であるとして表示し且つブザー音を発して報知する。なぜならば、苗検出センサ224は、光電式のセンサであるので、外光や検出面の汚れ等の影響で誤検出する傾向が高く、検出を適正にするべく季節や時間経過等により感知感度を調整しなければならないセンサであるからである。この苗検出センサ224の異常状態が、受渡保持機構15に苗が供給される度に連続して所定回数(例えば2回)繰り返されると、装置の作動を停止して台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68への苗の引き継ぎ動作を行わせない構成となっている。
よって、苗の把持不良の異常状態又はハンド開閉位置検出装置の異常状態のときは、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68への苗の引き継ぎ動作を行わせないので、台木苗及び穂木苗のうちの一方が接合位置63へ供給されなかったり不適切な状態で供給されたりする不具合を防止でき、台木苗及び穂木苗のうちの他方の苗が無駄になることを防止できる。また、苗検出センサ224の異常状態のときは、苗検出センサ224が誤検出していると判断して苗の引き継ぎ搬送を継続することができ、無闇に苗の搬送を中断させずに接木作業能率を維持することができる。このとき、苗検出センサ224の異常状態であることをブザー音を発して報知するので、作業者へ注意を促すことができ、作業者は苗の搬送状態を確認することができ、適正に苗が搬送されていないときは手動操作にて装置の作動を停止させることができ、無駄な苗の発生を防止できる。
尚、台木取込部2側の受渡保持機構15は、穂木取込部側の受渡保持機構15と左右対称な構造となっており、穂木取込部側の受渡保持機構15と同様に、位置決めハンド機構71が機体の左右中央側となる接着処理部7側へ苗の胚軸を寄せて該胚軸の横方向の位置決めを行う。従って、台木苗を引き継いで搬送する台木搬送アーム61では、台木苗の胚軸の台木搬送アーム61の回動中心側となる端面の位置が揃い、該端面に台木搬送アーム61の一部分が接触して該端面の位置を固定する構成となっている。すなわち、台木苗の切断位置62において、台木苗の胚軸の太さに拘らず、台木切断装置64が切断する子葉とは反対側の胚軸の端面が切断軌跡の方向(前後方向)における所定の位置となる。よって、台木苗の双子葉のうちの切断しない残す側(胚軸の前記端面側)となる他方の子葉の位置が揃えられ、台木苗の胚軸の太さに拘らず前記他方の子葉と切断軌跡との位置関係を所望に維持できるから、残す側の子葉(前記他方の子葉)を的確に切断せずに残すことができる。つまり、台木切断装置64により残す側の子葉を傷付けることを防止でき、接木用に不適切な苗の発生を防止して苗の無駄を防止できる。
尚、作業者が後述する制御パネル55上に調整数値等を入力して、台木切断装置64の台木用の切断刃75を台木苗に近づけたとき(図16(2)のとき)の台木用の切断刃75の前後位置すなわち切断軌跡の前後位置を入力して調節できる構成としてもよい。つまり、制御装置は、制御パネル55で設定された設定値に基づいて、台木用の切断刃75を台木苗に近づけるときの前後移動シリンダ78の出力目標を制御する構成となる。これにより、苗の胚軸の太さに拘らず、葉柄支え具76が胚軸を押して台木苗の残す側の子葉を的確に子葉支え用ローラ250に接触させることができ、片葉の切断を良好に行える。
尚、苗の位置決めをしたときの位置決めハンド機構71の位置を検出する位置決めハンド検出装置を設けてもよい。この位置決めハンド検出装置は、位置決めハンド機構71が左右方向に平行移動(スライド移動)する構成であるので、リニアゲージ等で構成すれば良い。これにより、胚軸の把持動作をしたときの位置決めハンド機構71の位置を位置決めハンド検出装置で検出することにより、胚軸の太さを検出することができ、前記位置検出装置が苗の胚軸の太さを検出する胚軸太さ検出装置となる。そして、制御装置により、苗の位置決めをしたときの位置決めハンド検出装置の検出に基づいて、当該苗が切断位置62に到達して台木切断装置64の台木用の切断刃75を台木苗に近づけるとき(図16(2)のとき)の前後移動シリンダ78の出力目標を補正し、該出力目標にて前後移動シリンダ78へ出力する。つまり、切断位置62に順次供給される各苗の胚軸の太さに応じて、台木用の切断刃75の前後位置すなわち切断軌跡の前後位置を変更させて制御する。このときは、前後移動シリンダ78が、位置決めハンド検出装置の検出に基づいて切断刃(75)の位置を変更する切断刃位置変更機構となる。これにより、上述と同様に、苗の胚軸の太さに応じて、葉柄支え具76が胚軸を押して台木苗の残す側の子葉を的確に子葉支え用ローラ250に接触させることができ、片葉の切断を良好に行える。
尚、上述の位置決めハンド検出装置に代えて、苗の胚軸の軸径(太さ)を直接検出する軸径センサを設けてもよい。この軸径センサは、台木搬送アーム61の子葉支え用ローラ250の近傍に設けたレーザセンサにより構成することができる。該レーザセンサは、発光部からの光を受光部が受光する構成とし、受光部の受光結果により光が胚軸で遮られた領域の大きさを判断し、胚軸の軸径を検出する構成とすることができる。尚、子葉支え用ローラ250の近傍に設ける前記軸径センサを含めて、残す側の子葉が的確に子葉支え用ローラ250に接触しているか否かを判別する接触判別センサを設け、残す側の子葉が的確に子葉支え用ローラ250に接触するまで前後移動シリンダ78を作動させる構成としてもよい。
ところで、苗取込部2の作動を制御する操作パネル1pには、苗取込部2の電源の入切を行う電源スイッチ48と、作動モードを設定するモードスイッチ49と、搬入機構11で搬入する苗トレイの種類を設定するトレイ選択スイッチ50と、作動を開始させるスタートスイッチ51と、作動を停止させるストップスイッチ52と、各作動部を初期状態に復帰させるリセットスイッチ53と、苗トレイ上の苗位置及び苗トレイの苗列の数を任意に設定できる設定変更部54とを設けている。前記モードスイッチ49は、前記スタートスイッチ51の操作での作動域を選択する作動域選択手段であり、ストップスイッチ52を操作するまで連続的に順次苗を前処理部3へ供給するべく作動する自動位置と、1株の苗を前処理部3へ供給するまで作動するか又は接木ロボット本体laのみを作動する手動位置と、各作動行程ごとに作動するステップ位置とに切替操作できる。前記トレイ選択スイッチ50は、把持ハンド12が苗を取り出す左右方向の位置及び搬入機構11の搬送ピッチを切り替えて設定する設定切替手段であり、72穴苗トレイ用の72穴位置と、228穴苗トレイ用の228穴位置と、前記設定変更部54により任意に設定する手動設定位置(MS)とに切替操作できる。尚、前記72穴苗トレイとはセルが縦12列、横6列設けられた苗トレイであり、前記228穴苗トレイとはセルが縦16列、横8列設けられた苗トレイである。従って、これらの苗トレイの種類によってセルの配列ピッチが異なるため、各苗トレイに応じて前記トレイ選択スイッチ50により切り替える構成となっている。把持ハンド12は苗トレイの横一列の苗を受渡保持機構15側から順次取り出すが、この苗取出回数を操作パネル1p内の制御装置でカウントし、トレイ選択スイッチ50の設定に基づく横一列の回数になると、搬入機構11により苗トレイを搬送する。これにより、横一列の苗を全て取り出したことを判断するために、把持ハンド12が取り出す苗の左右位置を確認するべく、制御装置(PLC)から移送機構13のエアシリンダへ左右位置の確認命令出力を行って該エアシリンダからの入力で判断するのに比較して、制御のスピードが向上し、作業能率の向上が図れる。
また、接木ロボット本体laには、該接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部からなる接木苗製造装置1の全体を一括で制御する制御装置を備える制御パネル55を設けている。この制御パネル55に、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部の作動の入切を行える切替スイッチ等の作動切替手段を設けている。この作動切替手段により、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部のうち、全部を作動させたり一部を作動させたりすることができ、様々な作業形態で接木苗製造作業が行える。例えば、胚軸長が短い場合に苗接合のための切断位置の精度を要する台木を人手で台木前処理部3へ精度良く供給したいとき、接木ロボット本体la及び穂木取込部を作動させて台木取込部の作動を停止させることができる。あるいは、苗を苗トレイで育苗しなかった場合にその苗の取込部2を停止させて人手で苗供給したり、苗の接合を人手で行いたいときに取込部2を作動させて接木ロボット本体laの作動を停止させたりできる。尚、台木、穂木共に人手で供給したいときは、接木ロボット本体laのみを作動させればよい。
この接木苗製造装置1において、各苗を1株づつ供給する苗供給装置となる取込部2は、受けた苗の根側を切断しつつ苗の胚軸を回動可能に緩く保持可能な把持ハンド12による遊嵌保持機構と、この遊嵌保持機構を支持して横方向に移送動作する移送機構13と、この移送機構13における移送終端部で苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材14を設け、前記移送機構13は、移送終端部での移送速度が低速となるよう前記方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で移送速度が減速される構成としている。
従って、前記遊嵌把持機構は、双葉状の展開子葉を有する苗を受けると、これを穂木または台木としてその根側を切断しつつ胚軸を回動可能に緩く把持し、この苗は遊嵌把持機構を支持する移送機構13により移送されるが、この移送速度は方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で減速されて移送行程の終端部で低速となり、該移送行程の終端部で方向修正部材14が苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向が移送方向に揃えられる。
尚、台木側及び穂木側のうち、一方は把持ハンド12で受渡保持機構15へ苗を自動供給し、他方は人手により受渡保持機構15へ苗を供給するときは、一方で把持ハンド検出センサ225が把持ハンド12を検出し、且つ他方で把持ハンド検出センサ225が何も検出しないことを条件に、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成とすればよい。
また、把持ハンド検出センサ225に代えて受渡保持機構15の苗を上方から検出する苗検出センサを設け、全自動接木作業では苗検出センサが苗を検出したことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、半自動接木作業では苗検出センサが作業者の手を検出しないことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成としてもよい。このときも、苗検出センサの検出性能を切り替える構成とすればよい。
搬入機構11は、苗を一株ずつ収容するセルを多数格子状に配列した苗トレイを搬入するためのコンベヤ253で構成される。該コンベヤ253は、接木ロボット本体1aの側方に配置され、高さ調節用のパンタグラフ形状の昇降機構254を介して支持される。
コンベヤ253は、手前側へ向けて(クリップフィーダ73側から接着処理部7側へ向けて)苗を収容する苗トレイを搬送する構成である。パンタグラフ形状の昇降機構254は、機体の外側方から操作するべく、昇降用駆動軸255をコンベヤ253の苗搬送方向と平面視で直交させ、且つ搬入機構11上の苗取出し位置よりもコンベヤ253の搬送上手側の位置に配置される。
また、昇降機構254を作動させる電動式の昇降モータ256を設けている。この昇降モータ256は、操作装置257の操作により作動する。操作装置257は、複数の操作スイッチ258を備えた操作ボックスにより構成され、台木取込部2及び穂木取込部の各々のコンベヤ253を個別に上下調節できる構成となっている。そして、接木ロボット本体1aの左右中央位置よりも台木取込部側となる上面には、操作装置257を保持する保持体259を固着して設けている。保持体259に保持された操作装置257は、操作スイッチ258等を配置する操作面が手前側(接着処理部7側、クリップフィーダ73とは反対側)に向いた状態となり、作業者は保持体259に保持されたままで操作装置257を操作することができる。また、操作装置257は、十分な長さを有する信号送信用のケーブルを介して制御装置に接続されており、保持体259から外して台木取込部及び穂木取込部の外側方(コンベヤ253の左右方向外側)に移動させることができる。これにより、作業者はコンベヤ253の側方で且つ前記苗取出し位置の高さを視認しながらコンベヤ253の高さ調節が行え、把持ハンド12との相対的な高さを調節できる。
位置変更機構となる昇降機構254は、コンベヤ253の搬送始端寄りの位置に配置され、コンベヤ253を駆動する電動式の駆動モータ260がコンベヤ253の搬送始端部に配置されるのに対応して、駆動モータ260及びコンベヤ253の昇降部分全体の重心近くで昇降させる構成となっている。また、昇降機構254からコンベヤ253の搬送終端側を長く突出させて構成できるので、コンベヤ253の終端側部分を把持ハンド12の下方へ容易に挿入することができる。
また、搬入機構11上の苗取出し位置から接木ロボット本体1a側にかけて、持上げ具41の位置を規制するガイドプレート261を、左右方向に延ばして設けている。持上げ具41と一体で上下動するガイドローラを設け、該ガイドローラがガイドプレート261上に載ることにより、持上げ具41が下動することを規制する。ガイドプレート261の接木ロボット本体1a側部分は、搬入機構11(コンベヤ253)側へいくにつれて高くなる傾斜面で構成され、ガイドプレート261のコンベヤ253上方部分(接木ロボット本体1aとは反対側の部分)は、略左右水平な平面で構成され、コンベヤ253上の苗トレイの上面よりも高位に配置されている。従って、持上げ具41は、接木ロボット本体1a側から搬入機構11側への移動でガイドプレート261に案内されることにより苗トレイの上方に至り、苗トレイの側面に干渉して苗トレイを破損させることが防止される。尚、持上げ具41を上動させるアクチュエータは、持上げ具41を上動させるとき以外はフリーとなる。従って、持上げ具41は、上動するとき以外はガイドプレート261に規制されるか、把持ハンド12が接木ロボット本体1a側へ移動してガイドローラがガイドプレート261上から外れた状態では、上下動範囲の最下位に位置する。
また、第一の持上げ具41と一体で上下動する板ばねで構成された苗押さえ具262を、上段のハンド機構21の上方に設けている。従って、苗押さえ具262は、搬入機構11上から苗を取り出すときはガイドプレート261により下動が規制されており、持上げ具41の上動に伴って上動し、把持ハンド12が接木ロボット本体1a側へ横移動するときは再度ガイドプレート261により下動が規制され、更に把持ハンド12が接木ロボット本体1a側へ移動してガイドローラがガイドプレート261上から外れると、把持ハンド12が把持する苗を上方から押し下げる。これにより、苗丈が異なっても、受渡し位置Rでの苗の受渡し時には把持ハンド12に対して苗の子葉の位置を所望の高さにすることができ、苗適応性が向上し、接木苗の接合精度の向上が図れる。
上述では、昇降機構82により位置変更機構を構成した例について説明したが、搬入機構11の搬送始端部側に左右方向の回動支点軸を設け、該回動支点軸を中心に搬入機構11を上下に回動させる構成とすることにより、搬入機構11上の搬送終端部側にある苗取出し位置の上下高さを変更する位置変更機構を採用することもできる。この構成でも、電動式のモータにより搬入機構11を上下に回動させる構成とすればよい。
また、搬入機構11上の苗取出し位置から苗トレイ1枚の長さ分搬送始端側までの領域の苗を検出する苗センサを設ける。この苗センサは、苗を検出する光電式のセンサであり、所望の苗の高さよりも高位に配置され、前記領域に一株でも苗丈の高い苗があることに基づいて、苗が不適正な高さにあると検出する。
また、苗センサを、苗取出し位置の次列(苗取出し位置の搬送始端側に隣接する横一列)の苗を検出する構成とし、横一列の苗に一株でも苗丈の高い苗があることに基づいて、苗が不適正な高さにあると検出する構成とすることができる。
これらの苗センサの検出に基づいて、制御装置が警報を発し、作業者へ位置変更機構を操作することを促す。または、制御装置により位置変更機構を自動的に作動させて制御することができる。位置変更機構を自動的に作動させるときは、苗取出し位置にある横一列の苗の全てを取り出した後に位置変更機構を作動させる構成とすることができる。
また、把持ハンド12で緩く把持した苗を、進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで一往復させ、苗の子葉を整列部材16に二度接触させて子葉展開方向を修正する構成としているが、往復による進退動作の回数ひいては整列部材(16)に苗の子葉を接触させる接触回数を調節する整列調節手段となる整列調節ダイヤルを設けることができる。この整列調節ダイヤルの操作により、接触回数を多い側に設定するにつれて把持ハンド12の進退動作における移動速度も遅く設定される。尚、把持ハンド12の前記移動速度は、整列部材16側への押出時の押出移動速度が、整列部材16とは反対側への戻り時の戻り移動速度よりも遅くなるように設定し、整列部材16への子葉を接触させる整列動作を適正に行うと共に作業時間短縮による作業能率を図ることができる。具体的な一例としては、整列調節ダイヤルを「少」位置、「中」位置及び「多」位置の3位置に順に操作できる構成とし、「少」位置では前記接触回数が2回、前記押出移動速度が300mm/秒及び前記戻り移動速度が550mm/秒となり、「中」位置では前記接触回数が2回、前記押出移動速度が200mm/秒及び前記戻り移動速度が400mm/秒となり、「多」位置では前記接触回数が2回、前記押出移動速度が200mm/秒及び前記戻り移動速度が400mm/秒となる構成とすることができる。
また、上例に加えて、把持ハンド12に、苗の子葉の展開角度を検出する子葉展開角度センサ又は苗の子葉の長さを検出する子葉長さセンサを設け、制御装置により、子葉展開角度センサの検出に基づく子葉の展開角度が小さいほど又は子葉長さセンサの検出に基づく子葉の長さが短いほど、前記接触回数を大きい側に自動的に設定すると共に前記移動速度を遅い側に自動的に設定する構成としてもよい。尚、子葉長さセンサは、実際の子葉の長さを検出してもよく、真上から見た見かけ子葉長を検出してもよい。
搬入機構11上の苗の高さの相違に対応するべく、前述では昇降機構82により搬入機構11の高さを変更する構成について説明したが、把持ハンド12を昇降駆動させる把持ハンド昇降アクチュエータを設け、搬入機構11上の苗の高さに対応して該苗を取り出すときの把持ハンド12の高さを変更する構成とすることもできる。苗を取り出すときの把持ハンド12の高さを、搬入機構11上の苗との高さの関係を確認しながら操作パネル1p内で設定できる構成とすればよい。把持ハンド12の作動は、先ず苗の高さに対応する低位の設定高さに下降し、この設定高さのまま左右移動して取り出す苗の位置まで移動し、把持ハンド12が苗を切断して把持した後に受渡保持機構15へ苗を受け渡すときの高さまで上昇し、受渡保持機構15の位置まで左右移動する。これにより、大がかりな搬入機構11を高さ調節する必要が無いので、調節作業が容易になる。
尚、取り出す苗が高いときには、苗トレイの上面に近い苗トレイ近傍の高さまで下降し、この苗トレイ近傍の高さのまま左右移動して取り出す苗の位置まで移動し、把持ハンド12を前進させて苗の根元付近に進入させた後、苗の高さに対応する設定高さまで上昇してから苗を切断して把持し、更に受渡保持機構15へ苗を受け渡すときの高さまで上昇し、受渡保持機構15の位置まで左右移動する構成とすることができる。このとき、苗トレイ近傍の高さも、搬入機構11との高さの関係を確認しながら操作パネル1p内で設定できる構成とすればよい。これにより、把持ハンド12及び持上げ具41を苗の根元付近に進入させることができるので、苗の胚軸が曲がっている等の要因により把持ハンド12が誤って隣接する別の苗を把持することが防止される。
尚、取り出す苗の高さが受渡保持機構15へ苗を受け渡すときの高さよりも高いときは、苗を取り出した後の受渡保持機構15の位置への左右移動の途中で、把持ハンド12を下降させる必要がある。尚、前述では受渡保持機構15へ苗を受け渡すときの高さまで上昇してから把持ハンド12を左右移動させる構成について説明したが、苗を取り出した後の受渡保持機構15の位置への左右移動過程で、把持ハンド12を左右移動させながら下降させる構成とすれば、苗搬送時間の短縮が図れ、作業能率が向上する。
以上により、この接木苗製造装置1の把持ハンド12におけるカッタ機構23は、苗の胚軸の左右一方側から移動して該胚軸を切断する刃(23b)と、苗の胚軸の左右他方側から該胚軸が切断時に移動することを規制する規制具(235)とを設け、先ず刃(23b)が前記左右一方側から胚軸へ向けて移動し、次に規制具(235)が左右他方側へ移動し、次に刃(23b)が前後方向に移動して胚軸を切断する構成としている。
よって、先ず刃(23b)が左右一方側から苗の胚軸へ向けて移動し、次に規制具(235)が左右他方側へ移動して胚軸の左右一方側への規制を緩め、この胚軸の左右一方側への規制を緩めた状態で刃(23b)が前後方向に移動して胚軸を切断するので、刃(23b)と規制具(235)とで胚軸が挟まれて曲げられた状態にあるときに、その曲げられた状態を緩和してから刃(23b)の前後方向の移動で胚軸を切断でき、例えば苗の胚軸の硬さや胚軸の位置にばらつきがあるとき等でも、胚軸の切断を確実に且つ良好に行える。
また、先ず刃(23b)が前記左右一方側から胚軸へ向けて移動するとき、刃(23b)は規制具(235)の胚軸側の端面よりも前記左右他方側まで移動し、次に規制具(235)が前記左右他方側へ移動したときでも、刃(23b)の少なくとも一部が規制具(235)の胚軸側の端面よりも前記左右他方側に位置する構成としている。
よって、刃(23b)の左右一方側から胚軸へ移動する左右方向の移動及びその後の前後方向の移動による切断工程において、規制具(235)により苗の胚軸を確実に規制することができ、胚軸の切断を良好に行える。
また、左右方向へ移動する切断アーム(23a)の先端部に、刃(23b)を片持ち状態で取り付け、切断アーム(23a)を移動させて刃(23b)を移動させる構成とし、刃(23b)の上側には、該刃(23b)が上側へ撓むことを規制する撓み規制体(237)を設けている。
よって、切断アーム(23a)の先端部に刃(23b)を片持ち状態で支持し、刃(23b)の下方に前記切断アーム等の構成部品を設けない構成とすることができるので、刃(23b)を苗床部の上面に近付けて極力低位に配置することができ、切断により取り出す苗の胚軸の長さを確保することができ、取り出した苗を接木用苗として使用するときには、接木作業性の向上が図れる。しかも、撓み規制体(237)により刃(23b)が上側へ撓むことを規制するので、例えば苗の胚軸が硬さや胚軸の位置にばらつきがあるとき等でも、胚軸を適正な位置で良好に切断することができる。
また、台木切断装置64は、把持した台木苗の胚軸に対して傾斜する移動軌跡で移動して台木苗の双子葉のうちの一方の子葉のみを切断する台木用の切断刃(75)を、台木苗の胚軸に対して前記移動軌跡の方向と交差する方向に傾斜させて設け、双子葉の間で且つ上から見て双子葉の方向と交差する方向にある本葉を切断する構成としている。
よって、台木用の切断刃(75)により、台木苗の双子葉のうちの一方の子葉のみを切断すると共に本葉を切断することができ、その後の穂木苗との接合を良好に行え、接木苗の接合精度を向上させることができる。
また、把持した台木苗の胚軸に対して傾斜する移動軌跡で移動して台木苗の双子葉のうちの一方の子葉のみを切断する台木用の切断刃(75)を設け、台木苗の胚軸の太さに拘らず、切断する子葉とは反対側の胚軸の端面が前記移動軌跡の方向における所定の位置となるよう胚軸を固定して切断する構成としている。
よって、切断する子葉とは反対側の胚軸の端面が前記移動軌跡の方向における所定の位置となるよう胚軸を固定して切断する構成としたので、台木苗の双子葉のうちの切断しない残す側となる他方の子葉の位置を基準に台木用の切断刃(75)の移動軌跡が設定され、台木苗の胚軸の太さに拘らず、残す側の子葉(前記他方の子葉)を的確に切断せずに残すことができ、胚軸の太さの相違に対応させながら接木の接合精度の向上が図れ、ひいては残す側の子葉を切断してしまうことによる苗の無駄を防止することができる。
また、把持した台木苗の胚軸に対して傾斜する移動軌跡で移動して台木苗の双子葉のうちの一方の子葉のみを切断する台木用の切断刃(75)と、台木苗の胚軸の太さを検出する胚軸太さ検出装置とを設け、胚軸太さ検出装置の検出に基づいて切断刃(75)の位置を変更する切断刃位置変更機構(78)を設けている。
よって、胚軸太さ検出装置の検出に基づいて切断刃(75)の位置を変更する切断刃位置変更機構(78)を設けたので、台木苗の胚軸の太さに応じて、確実に一方の子葉を切除して他方の子葉を残す位置で切断することができ、接木の接合精度の向上が図れ、ひいては残す側の子葉を切断してしまうことによる苗の無駄を防止することができる。
また、接木苗製造装置1は、苗を把持して受渡し位置(R)へ搬送する把持ハンド(12)と、受渡し位置(R)で開閉して苗を所定の把持力で把持するハンド機構(32)と、ハンド機構(32)から苗を引き継いで把持し搬送する搬送アーム(61,68)と、把持ハンド(12)の受渡し位置(R)への苗の搬送作動に起因してハンド機構(32)に苗の把持動作を行わせる制御装置とを備え、ハンド機構(32)が苗を把持した状態の開閉位置であるか否かを検出するハンド開閉位置検出装置と、ハンド機構(22)の把持位置にある苗を検出する苗検出装置(224)とを設け、苗検出装置(224)によりハンド機構(22)の把持位置の苗を検出し、且つハンド開閉位置検出装置によりハンド機構(32)が苗の胚軸を把持した状態の開閉位置であることを検出することに起因して、搬送アーム(61,68)を作動させてハンド機構(32)から搬送アーム(61,68)へ苗を引き継いで搬送する構成とし、ハンド機構(32)が苗の胚軸を把持した状態の開閉位置であることをハンド開閉位置検出装置が検出しているにも拘らず、苗検出装置(224)がハンド機構(22)の把持位置で苗を検出しないときは、搬送アーム(61,68)を作動させてハンド機構(32)から搬送アーム(61,68)へ苗を引き継いで搬送すると共に、異常状態であることを報知する構成としている。
よって、苗検出装置(224)とハンド開閉位置検出装置との双方の検出に基づいて苗を引き継いで搬送する構成としたので、検出装置の誤検出により搬送作動を継続することで、実際は苗が供給されなかったり苗が不適正な状態で搬送されたりする不具合を防止でき、苗の無駄を防止できる。しかも、ハンド開閉位置検出装置が苗を検出するにも拘らず苗検出装置(224)が苗を検出しない状態は、苗検出装置(224)が誤検出していると判断して苗の引き継ぎ搬送を継続することができ、無闇に苗の搬送を中断させずに作業能率を維持することができる。同時に、異常状態であることを報知するので、作業者へ注意を促すことができ、作業者は苗の搬送状態を確認することができると共に、装置のメンテナンスの必要性を認識できる。
尚、台木苗及び穂木苗は、苗トレイに縦横に配列されたセルにより一株ずつ育苗される。苗トレイの各セルに播種し、温度及び湿度が管理された発芽室内に苗トレイを棚積し、発芽室内で発芽させて育苗する構成であるが、苗トレイを載せる棚には、セルの床土部から発芽して苗の胚軸が所定の高さまで伸長したことを検出する光電式の発芽検出センサを設けている。そして、発芽検出センサにより苗の胚軸が所定の高さに伸長したことを検出してから所定時間の間、発芽室内の照明を点灯して育苗を行う。これにより、苗の胚軸を接木に適した所望の長さにすることができる。尚、発芽検出センサを、撮影装置等により、苗トレイ上の複数のセルのうち、苗の胚軸が所定の高さに伸長したセルが所定割合に達したことを検出できる構成とし、この検出に基づいて照明を点灯する構成としてもよい。