JP6454723B2 - アウターソール、シューズ、及びアウターソールの製造方法 - Google Patents
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Description
一般に、シューズには、路面に対するグリップ性が求められる。本明細書において、「グリップ性」は、滑り難い性質をいう。また、本明細書において、「路面」は、シューズを履いた人が歩行又は走る面をいい、歩道などの道路の表面、体育館などの建築物内の床面、未舗装の地面などの総称である。路面に接する部材であるアウターソールのグリップ性を向上させることによって、より滑り難いシューズが得られ得る。
グリップ性を向上させたアウターソールとして、従来、ガラス転移温度が比較的高い高分子材料を配合したアウターソールや、短繊維を配合したアウターソールなどが知られている(特許文献1)。
しかしながら、アウターソールのグリップ性は、未だ十分なものとは言えない。特に、濡れた路面とアウターソールの表面との間には、液体が介在するため、アウターソールの濡れた路面に対するグリップ性は、不十分である。なお、前記アウターソールの表面は、路面に接する側の面を指す。また、本明細書において、液体は、路面上に存在する水、油などである。
アウターソールの表面に、1μLのイオン交換水と、1μLのジヨードメタンとをそれぞれ滴下した後、10秒後にそれぞれの液滴の接触角を測定し、それらの接触角を元に、式(x1)及び(x2)の連立方程式を解き、その解γ d 及びγ p を、式(y)に代入することによって、表面自由エネルギーを求める。式(x1)、(x2)及び(y)において、γ d ,γ p 及びγ total は、それぞれ表面自由エネルギーにおける分散成分、極性成分及びこれらの和を示し、γ H2O 及びγ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの表面自由エネルギー、θ H2O 及びθ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの接触角を示し、水及びジヨードメタンの表面自由エネルギーは、文献値(D.H.Kaelble,The Journal of Adhesion,2,2 (1970) 66.)とする。
本発明の好ましいアウターソールは、前記熱可塑性エラストマーが、塩素化ポリエチレン系エラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びウレタン系エラストマーから選ばれる少なくとも1種を含む。
本発明の好ましいアウターソールは、前記熱可塑性エラストマーが、塩素化ポリエチレン系エラストマー及びクロロスルホン化ポリエチレン系エラストマーの少なくとも一方を含む。
本発明のシューズは、上記いずれかのアウターソールを備える。
本発明の別の局面によれば、アウターソールの製造方法が提供される。
本発明のアウターソールの製造方法は、グリップ性に優れたアウターソールの製造方法であって、上記測定方法によって測定される表面自由エネルギーが12mJ/m2以上の組成物であってポリマー全体を100質量部とした場合に熱可塑性エラストマーを20質量部以上含む組成物を成形することによってアウターソールを得る。
かかるアウターソールを備えるシューズは、乾いた路面のみならず、濡れた路面上を歩行する際に滑り難い。
本発明のアウターソールは、熱可塑性エラストマーを含む組成物から形成されており、12mJ/m2以上の表面自由エネルギーを有する。
かかる熱可塑性エラストマーを含み且つ表面自由エネルギーが12mJ/m2以上であるアウターソールを備えるシューズは、グリップ性に優れており、特に、濡れた路面に対するグリップ性に優れている。
一般に、濡れた路面上をシューズで歩行すると、アウターソールの表面と路面との間に液体が介在し、その液体が前記表面と路面の間に薄い膜となって介在する。前記液体からなる膜の介在によって、アウターソールの表面と路面の直接的な接触が妨げられるので、シューズが滑り易くなる。以下、アウターソールの表面と路面との間に介在する液体からなる膜を「液膜」という。本発明者は、この液膜の形成を抑制できるアウターソールが、路面に直接接触し易くなり、濡れた路面に対するグリップ性が向上すると推察した。そして、熱可塑性エラストマーを含み且つ表面自由エネルギーが12mJ/m2以上のアウターソールによれば、アウターソールの表面と路面との間に介在する液体が自発的にアウターソールの表面と路面の間から排出されることを見出した。かかる表面自由エネルギーが12mJ/m2以上のアウターソールは、路面に直接的に接触し易いのでグリップ性に優れており、特に、濡れた路面に対するグリップ性に優れている。本発明は、本発明者が行った予備的な知見に基づいている。以下、この知見について、まず説明する。
本発明者は、ゴム材料と床材との摩擦における表面自由エネルギーの影響を検討するため、同一ゴム材料に対し、表面自由エネルギーが異なる床材及び潤滑剤を用いた摩擦試験を行った。この[予備的な知見]の欄における「ゴム材料」は、本明細書のアウターソールに対応し、「床材」は、本明細書の路面に対応し、「潤滑剤」は、本明細書の液体に対応する。
床材として、Polytetrafluoroethylene(PTFE)、Polypropylene(PP)、大理石、Polymethylmethacrylate(PMMA)、Polyethyleneterephthalate (PET)の5種類を準備した。図5の参考表(A)に、ゴム材料及び各床材の算術平均粗さRa(表面粗さ)及び二乗平均粗さRqを示す。合成粗さσは、式(1)より導出した。
潤滑剤は、水、水とエタノールの混合物(エタノール濃度10、30、90 vol%)を使用した。図6の参考表(B)に各潤滑剤の粘度を示す。水はアドバンテック製REP343RBにて精製したイオン交換水を、エタノールは和光純薬(株)製1級試薬を使用した。前記各潤滑剤の粘度は、文献値(化学便覧 基礎編(改訂2版)、P.574(1975)丸善出版)を用いた。
一方、付着仕事Wは、図10の参考図(F)に示すように接触するゴム材料と床材を剥離する場合に必要な仕事に相当し、式(4)により算出される。ここで、γS及びγRは、それぞれ床材とゴム材料の表面自由エネルギーを示す。一般的に、固体間の界面、固体表面及び液体表面は、それぞれバルクと比較し熱力学的に不安定である。このため、付着仕事Wを算出することによって、ゴム材料と床材の剥離に要する仕事の把握が可能となる。
床材の表面自由エネルギーとゴム材料の静・動摩擦係数の関係を図12の参考図(H)に示す。ゴム材料の静・動摩擦係数は、床材の表面自由エネルギーの影響を受け変化することが確認できるが、床材の表面自由エネルギーとゴム材料の静・動摩擦係数の間に相関関係は認められなかった。
ゴム材料と床材間の界面自由エネルギーγRSとゴム材料の静・動摩擦係数の関係を図13の参考図(I)に示す。同図によれば、静・動摩擦係数は、界面自由エネルギーの影響を受け変化し、すべての潤滑剤において、ゴム材料と床材間の界面自由エネルギーが約8mJ/m2のときに、ゴム材料の静・動摩擦係数が最大値を示すことが確認できる。
拡張係数とゴム材料の静・動摩擦係数の関係を図15の参考図(K)に示す。床材が同一の場合においては、拡張係数の増大に伴い、ゴム材料の静・動摩擦係数は共に減少傾向を示す。特に、拡張係数がゼロ近傍では、ゴム材料の静・動摩擦係数が大きく減少したことが確認できる。上述したように液膜の形成状態は、拡張係数の正負によって変化し、拡張係数が負の場合に液膜の形成が抑制され、拡張係数が正の場合に液膜の形成が促進されることが考えられる。このことから、拡張係数がゼロ近傍では、潤滑状態が変化したため、ゴム材料の静・動摩擦係数が急激に変化したと推察される。また、図15の参考図(K)より、拡張係数が等しい場合において、床材の変化により、静・動摩擦係数が異なる値を示すことが確認できる。この結果より、ゴム材料の静・動摩擦係数は、拡張係数及び床材条件の影響を受けて変化することがわかる。
次に、本発明のアウターソールについて、具体的に説明する。
なお、本明細書において、「XXX〜YYY」という表記は、「XXX以上YYY以下」を意味する。
好ましくは、前記アウターソールの表面自由エネルギーは、15mJ/m2以上であり、より好ましくは20mJ/m2以上であり、さらに好ましくは25mJ/m2以上であり、特に好ましくは30mJ/m2以上である。前記アウターソールの表面自由エネルギーは、高いほど好ましく、その上限は特に限定されない。もっとも、熱可塑性エラストマーを含む組成物から形成されるアウターソールの現実的な上限は、例えば、73mJ/m2以下である。
具体的には、表面自由エネルギーは、測定対象のアウターソールの表面に、1μLのイオン交換水と、1μLのジヨードメタンとをそれぞれ滴下した後、その10秒後にそれぞれの液滴の接触角を測定する。それらの接触角を元に、下記式(x1)及び(x2)の連立方程式を解き、その解γd及びγpを、式(y)に代入することによって、アウターソールの表面自由エネルギーを求めることができる。
なお、ジヨードメタンは、和光純薬(株)製の1級試薬を用いることができ、接触角の測定装置は、接触角計(協和界面科学(株)製DM−510Hi)を用いることができる。
このような算術平均粗さRaを有するアウターソールを得る方法としては、(1)組成物を発泡させる、(2)表面に微細な凹凸を形成する、などの方法が挙げられる。
ここで、本明細書において、「熱可塑性エラストマー」は、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却するとゴム状弾性体に戻る性質を有するエラストマーをいう。
塩素化ポリエチレン系エラストマーは、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、昭和電工(株)製の商品名「エラスレン」などが挙げられる。
なお、本明細書における共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又は、グラフト共重合体の何れでもよい。
クロロスルホン化ポリエチレン系エラストマーは、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、東ソー(株)製の商品名「TOSO−CSM TS−530」、デュポン社製の商品名「ハイパロン」などが挙げられる。
ポリスチレン系エラストマーにおけるハードセグメントの占める割合は、特に限定されないが、それが余りに小さいと、ハードセグメントが凝集し難くなり、それが余りに大きいと、柔軟性及び弾力性が低下するおそれがある。かかる観点から、ポリスチレン系エラストマーにおけるハードセグメントの占める割合は、エラストマー全量中、10〜65質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
オレフィン系エラストマーとしては、代表的には、ポリプロピレン系エラストマー、α−オレフィン系エラストマーが挙げられる。
前記ポリプロピレン系エラストマーは、ポリプロピレン成分を含み、好ましくは、プロピレンとエチレンの共重合体を含む。ポリプロピレン系エラストマーは、プロピレン単独重合体から構成されていてもよく、或いは、ポリプロピレン成分と他の成分の共重合体から構成されていてもよい。ポリプロピレン系エラストマーとしては、例えば、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などが挙げられる。
前記α−オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上併用してもよい。
α−オレフィン系エラストマーは、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、三井化学(株)製の商品名「タフマー」などが挙げられる。
ウレタン系エラストマーとしては、例えば、ポリエーテル含有ポリウレタン、ポリエステル含有ポリウレタンなどが挙げられる。
前記アクリル系エラストマーは、1種または2種以上のアクリル系モノマーを含むアクリル系重合体である。
前記ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレン(CR)などの合成ゴム;天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などの共重合体ゴム;などが挙げられる。前記ゴムは、それぞれ1種単独で、又は2種以上を併用できる。
前記発泡剤は、本発明のアウターソールを発泡体とする場合に配合される。もっとも、発泡剤は、前記組成物を化学的発泡法によって発泡させる場合に配合されるものなので、前記組成物を物理的発泡法で発泡させる場合には、発泡剤を配合しないで発泡体を形成することも可能である。
前記発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)などが挙げられる。
また、発泡を促進するため、発泡剤と共に発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、尿素、尿素誘導体などが挙げられる。
前記発泡剤の配合量は、特に限定されず、適宜設計される。前記発泡剤の配合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、例えば、0.5質量部〜5質量部である。
補強剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウムなどが挙げられる。
低発泡でも比較的密度が小さく且つ高い機械的強度及び高い耐摩耗性を有するアウターソールを得ることができることから、補強剤としては含水シリカ(ホワイトカーボン)を用いることが好ましい。
補強剤の配合量は、特に限定されず、適宜設計される。前記補強剤の配合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、例えば、10質量部〜40質量部である。
架橋剤としては、例えば、硫黄を含む化合物、有機過酸化物などが挙げられる。前記硫黄を含む化合物としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどが挙げられる。架橋剤を配合することにより、熱可塑性エラストマーが架橋され、弾性に優れたアウターソールを形成できる。もっとも、架橋剤を含まない組成物を用いて、本発明のアウターソールを形成することも可能である。
さらに、熱可塑性エラストマーの架橋を促進するため、架橋剤に加えて、架橋促進剤をも配合してもよい。
前記架橋剤の量は、特に限定されず、適宜設計される。前記架橋剤の配合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、例えば、0.1質量部〜5質量部であり、好ましくは0.3質量部〜3質量部である。
なお、本発明のアウターソールを形成する組成物は、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、耐電防止剤、増粘剤、プロセスオイル、ステアリン酸などの他の添加剤を含んでいてもよい。
上記組成物を、靴裏の形状に成形する。
具体的には、前記熱可塑性エラストマー、並びに、必要に応じて熱可塑性エラストマー以外のポリマー、さらに、架橋剤などの各種の添加剤を所定量混合した組成物を調製する。この組成物を70℃〜150℃に加熱しながら、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などを用いて混練する。
十分に混練した組成物を、プレス金型内に充填し、例えば、150℃〜200℃に加熱しながら所定時間加圧して成形することにより、アウターソールを得ることができる。また、前記十分に混練した組成物を、射出成形機に導入し、射出成形することにより、アウターソールを得ることもできる。
なお、アウターソール形状に適合したプレス金型を用いた場合には、組成物を加熱加圧して得られた一次成形品をそのまま、アウターソールとして用いることができる。また、前記組成物を加熱加圧して一次成形品を得た後、その一次成形品をさらに二次加工した加工品を、本発明のアウターソールとしてもよい。
組成物を発泡させる場合、その発泡倍率は、特に限定されないが、例えば、1.05倍〜1.4倍であり、好ましくは、1.05倍〜1.2倍である。
また、アウターソールの密度は、特に限定されないが、軽量化の観点から、好ましくは0.6g/cm3以下であり、より好ましくは0.55g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.5g/cm3以下である。また、アウターソールの密度の下限は、出来るだけ小さいことが好ましいが、一般的には、アウターソールの密度は、0.2g/cm3以上であり、好ましくは0.3g/cm3以上である。前記密度は、JIS Z 8807に準拠して測定される。
本発明のアウターソールは、例えば、シューズのアウターソールとして使用され、シューズ本体の下面に設けられる。
本発明のアウターソールは、シューズ本体の下面の全体的に設けられる。また、前記アウターソールを、シューズ本体の下面の一部分に設けてもよい。
また、本発明のアウターソールは、例えば、シューズのシャンク部材のような補強部材として用いることも可能である。前記シャンク部材は、土踏まず部分に配置される底部材である。
前記アウターソールは、例えば、接着剤により、シューズ本体に固定的に取り付けられる。
接着剤としては、特に限定されず、従来公知の溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、レーザー接着剤、感熱接着剤などが挙げられる。前記溶剤型接着剤は、有機溶剤中にバインダー樹脂を溶解又は分散させた接着剤であり、前記エマルジョン型接着剤は、水中にバインダー樹脂を分散させた接着剤である。レーザー接着剤は、レーザー光の照射によって接着性を発現する接着剤である。感熱接着剤は、加熱することによって接着性を発現する接着剤である。
図1及び図2は、本発明のシューズの第1の実施形態を示す。
このシューズ1aは、シューズ本体2aと、シューズ本体2aの下面に設けられたミッドソール3aと、ミッドソール3aの下面に配置されたアウターソール5aと、を備えている。ミッドソール3aは、シューズ本体2aの下面形状とほぼ同じ形状に形成され、アウターソール5aは、ミッドソール3aの下面形状とほぼ同じ形状に形成されている。アウターソール5aは、ほぼ板状に形成されている。その板状のアウターソール5aの下面には、図2に示すように、所望の凹凸が形成されている。もっとも、アウターソール5aの下面が平滑状に形成されていてもよい(図示せず)。
このシューズ1bは、シューズ本体2bと、シューズ本体2bの下面に設けられたミッドソール3bと、ミッドソール3bの下面前方に配置された第1アウターソール51bと、ミッドソール3bの下面後方に配置された第2アウターソール52bと、を備えている。ミッドソール3bは、シューズ本体2bの下面形状とほぼ同じ形状に形成され、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bは、それぞれミッドソール3bの下面形状よりも小さな形状に形成されている。
前記シューズ1bの第1アウターソール51b及び/又は第2アウターソール52bとして、本発明のアウターソールが用いられる。
上記アウターソール5a、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bの各厚みは、特に限定されない。適切なクッション性をシューズに付与するために、アウターソール5a、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bの各厚みは、例えば、2mm以上であり、好ましくは2mm〜20mmである。
なお、本発明のシューズは、図示したように、シューズ本体が足の甲のほぼ全体を保護する構造に限られず、シューズ本体が足の甲の一部を保護するような構造(例えば、サンダルなど)でもよい。
本発明のアウターソールは、路面に対するグリップ性に優れている。本発明のアウターソールは、濡れた路面に対してもグリップ性に優れており、特に、平滑な路面であって濡れた路面に対してもグリップ性に優れている。
かかるアウターソールを備える本発明のシューズは、球技用シューズ、ランニング用シューズ、陸上競技用シューズ又はウォーキング用シューズとして好適である。
ただし、表1乃至表3の組成の欄において、各材料の数値の単位は、質量部である。
塩素化ポリエチレン系エラストマー:昭和電工(株)製の商品名「エラスレン 301A」。塩素含有量=約30質量%。
α−オレフィン系エラストマー:三井化学(株)製の商品名「タフマー DF810」。エチレンと1−ブテンとの共重合体。
スチレン系エラストマー(1):(株)クラレ製の商品名「セプトン V9461」。スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(略称SEEPS)。
スチレン系エラストマー(2):旭化成ケミカルズ(株)製の商品名「M1913」。マレイン酸で変性されたスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(略称MA変性SEBS)。
ポリアミド系エラストマー(1):DSM社製の商品名「1010C1」。ナイロン6の単独重合体。
ポリアミド系エラストマー(2):DSM社製の商品名「3010SR」。ナイロン66の単独重合体。
ウレタン系エラストマー:BASF社製の商品名「ET195」。ハードセグメントがポリウレタンで、ソフトセグメントがポリエステルである共重合体。
クロロスルホン化ポリエチレン系エラストマー:東ソー(株)製の商品名「TS−530」。塩素含有量=約35質量%。
ポリプロピレン系エラストマー:(株)プライムポリマー製の商品名「E−105−GM」。
イソプレンゴム:日本ゼオン(株)製の商品名「IR2200」。
オイル(1):プロセスオイル。出光興産(株)製の商品名「PW90」。
オイル(2):プロセスオイル。新日本理化(株)製の商品名「DOZ」。
オイル(3):プロセスオイル。JX日鉱日石エネルギー(株)製の商品名「P200」。
架橋剤(1):ジクミルパーオキサイド。日本油脂(株)製の商品名「パークミルD」。
架橋剤(2):2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン。日本油脂(株)製の商品名「パーヘキサ25B−40」。
架橋剤(3):硫黄。細井化学工業(株)の商品名「硫黄#200」。
架橋助剤(1):トリアリルイソシアヌレート。日本化成(株)製の商品名「TAIC M−60」。
架橋助剤(2):トリメチロールプロパントリメタクリレート。Sartomer社製の商品名「SR350」。
架橋助剤(3):大内新興化学工業(株)製の商品名「ノクセラー」。
発泡剤:アゾジカルボンアミド。永和化成工業(株)製の商品名「ビニホール AC#3C−K2」。
発泡助剤:酸化亜鉛。本荘ケミカル(株)製の商品名「活性亜鉛華No.2」。
シリカ:デグサジャパン社製の商品名「VN3」。
シランカップリング剤:デグサジャパン社製の商品名「Si−69」。
ステアリン酸:新日本理化(株)製の商品名「ステアリン酸50S」。
酸化亜鉛:本荘ケミカル(株)製の商品名「活性亜鉛華No.2」。
表1に示す割合で、上記[使用材料]で示す各材料を配合した。これらの各材料からなる組成物を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、これを縦150mm、横150mm、厚み5.5mmのプレス金型内に充填し、160℃に加熱しながら、油圧130〜150kgf/cm2で20分間加圧することにより、縦約170mm、横約170mm、厚み約10mmの直方体状の発泡体(発泡倍率は、約1.1倍)を作製した。
表1に示す割合で、各材料を配合したこと以外は、上記実施例1と同様にして、組成物を調製し、その組成物を用いて発泡体を作製した。
表2に示す割合で、上記[使用材料]で示す各材料を配合した。これらの各材料からなる組成物を、2軸押出機に供給して230℃〜270℃に加熱しながら混練することによって、動的架橋した。次に、その混練物を射出成形機に供給し、230℃〜270℃に加熱しながら成形型に射出することにより、縦約110mm、横約50mm、厚み約2mmの直方体状の非発泡体を作製した。
表3に示す割合で、上記[使用材料]で示す各材料を配合した。これらの各材料からなる組成物を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、これを縦125mm、横215mm、厚み2mmのプレス金型内に充填し、160℃に加熱しながら、油圧130〜150kgf/cm2で5分間加圧することにより、縦約125mm、横約215mm、厚み約2mmの直方体状の非発泡体を作製した。
表3に示す割合で、上記[使用材料]で示す各材料を配合した。これらの各材料からなる組成物を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、これを縦125mm、横215mm、厚み2mmのプレス金型内に充填し、160℃に加熱しながら、油圧130〜150kgf/cm2で30分間加圧することにより、縦約125mm、横約215mm、厚み約2mmの直方体状の非発泡体を作製した。
表3に示す割合で、上記[使用材料]で示す各材料を配合した。これらの各材料からなる組成物を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、それを縦125mm、横215mm、厚み2mmのプレス金型内に充填し、160℃に加熱しながら、油圧130〜150kgf/cm2で20分間加圧することにより、縦約125mm、横約215mm、厚み2mmの直方体状の非発泡体を作製した。
測定対象のアウターソールの表面に、1μLのイオン交換水を滴下した後、その10秒後にその液滴の接触角を測定した。同様に、アウターソールの表面に、1μLのジヨードメタンとを滴下した後、その10秒後にその液滴の接触角を測定した。それらの接触角を、上記式(x1)及び(x2)に代入し、式(x1)及び(x2)の連立方程式を解き、その解γd及びγpを、式(y)に代入することによって、アウターソールの表面自由エネルギーを求めた。
ジヨードメタンは、和光純薬(株)製の1級試薬を用い、接触角の測定装置は、接触角計(協和界面科学(株)製DM−510Hi)を用いた。また、式(x1)及び(x2)のγH2O及びγCH3I(水及びジヨードメタンの表面自由エネルギー)は、D.H.Kaelble,The Journal of Adhesion,2,2 (1970) 66.に記載された値を引用した。
各実施例及び比較例で作製した発泡体又は非発泡体(アウターソールに相当する)の算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準拠して測定した。具体的には、(株)キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて表面粗さ(算術平均粗さ)を測定した。その結果を表1乃至表3に示す。
各実施例及び比較例で作製した発泡体又は非発泡体(アウターソールに相当する)の静・動摩擦係数は、JIS T8101に準拠して測定した。
具体的には、アウターソールを有さない安全靴の靴底に、実施例及び比較例で作製した発泡体又は非発泡体を固定し、水で濡れたステンレス上において、垂直荷重500N、すべり速度0.22m/秒の条件で滑りを与えた際の静・動摩擦係数を測定した。その結果を表1乃至表3に示す。
なお、実施例1乃至5及び比較例1の静摩擦係数及び動摩擦係数の結果については、表だけでなく、図4にグラフで示している。
表1及び図4から、実施例1乃至5のアウターソールは、比較例1に比して、路面に対する静・動摩擦係数が高いことが判る。特に、塩素化ポリエチレン系エラストマーの含有量を大きくすることにより、静摩擦係数が顕著に増加することが判る。なお、摩擦係数の数値が高いほど滑りにくいと評価できる。
シューズの使用環境下では、アウターソールの静摩擦係数は、動作開始時の路面に対する摩擦に対応しており、その動摩擦係数は、動作停止時の路面に対する摩擦に対応している。前記動作開始時は、例えば、シューズを履いた者が走り又は歩き始めた時などが該当し、前記動作停止時は、例えば、シューズを履いた者が走っている途中でその向きを変える動作をした時などが該当する。
比較例2については、表面自由エネルギーが19.0mJ/m2であったが、熱可塑性エラストマーを含まないため、その静・動摩擦係数は低かった。
2a,2b シューズ本体
3a,3b ミッドソール
5a,51b,52b アウターソール
Claims (6)
- 熱可塑性エラストマーをポリマー全体を100質量部とした場合に20質量部以上含み且つ下記測定方法によって測定される表面自由エネルギーが12mJ/m2以上とされた組成物から形成されている、アウターソール。
アウターソールの表面に、1μLのイオン交換水と、1μLのジヨードメタンとをそれぞれ滴下した後、10秒後にそれぞれの液滴の接触角を測定し、それらの接触角を元に、式(x1)及び(x2)の連立方程式を解き、その解γ d 及びγ p を、式(y)に代入することによって、表面自由エネルギーを求める。式(x1)、(x2)及び(y)において、γ d ,γ p 及びγ total は、それぞれ表面自由エネルギーにおける分散成分、極性成分及びこれらの和を示し、γ H2O 及びγ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの表面自由エネルギー、θ H2O 及びθ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの接触角を示し、水及びジヨードメタンの表面自由エネルギーは、文献値(D.H.Kaelble,The Journal of Adhesion,2,2 (1970) 66.)とする。
- 算術平均粗さRaが1000μm以下である、請求項1に記載のアウターソール。
- 前記熱可塑性エラストマーが、塩素化ポリエチレン系エラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びウレタン系エラストマーから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載のアウターソール。
- 前記熱可塑性エラストマーが、塩素化ポリエチレン系エラストマー及びクロロスルホン化ポリエチレン系エラストマーの少なくとも一方を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアウターソール。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアウターソールを備えるシューズ。
- グリップ性に優れたアウターソールの製造方法であって、下記測定方法によって測定される表面自由エネルギーが12mJ/m2以上の組成物であってポリマー全体を100質量部とした場合に熱可塑性エラストマーを20質量部以上含む組成物を成形することによってアウターソールを得る、アウターソールの製造方法。
アウターソールの表面に、1μLのイオン交換水と、1μLのジヨードメタンとをそれぞれ滴下した後、10秒後にそれぞれの液滴の接触角を測定し、それらの接触角を元に、式(x1)及び(x2)の連立方程式を解き、その解γ d 及びγ p を、式(y)に代入することによって、表面自由エネルギーを求める。式(x1)、(x2)及び(y)において、γ d ,γ p 及びγ total は、それぞれ表面自由エネルギーにおける分散成分、極性成分及びこれらの和を示し、γ H2O 及びγ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの表面自由エネルギー、θ H2O 及びθ CH3I は、それぞれ水及びジヨードメタンの接触角を示し、水及びジヨードメタンの表面自由エネルギーは、文献値(D.H.Kaelble,The Journal of Adhesion,2,2 (1970) 66.)とする。
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