以下、第1の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る車両の電動アシスト制御システムを自転車に適用した例について説明するが、適用対象となる車両は特に限定されるものではない。例えば、本発明に係る車両の電動アシスト制御システムを、車椅子や台車を含む任意のタイプの車両に適用することができる。また、本実施の形態に係る車両の電動アシスト制御システムは、自転車のペダル踏力をアシストするものとする。
第1の実施の形態に係る車両の電動アシスト制御システムは、加速度センサからの出力に基づいてアシスト力を決定するように構成されている。これにより、車両の走行環境(速度、姿勢、発進停止、路面状況等)を推定し、車両の走行環境に応じてアシスト力を調整するものである。
以下、第1の実施の形態に係る電動アシスト制御システムの構成について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る車両の電動アシスト制御システム(以下、「電動アシスト制御システム」という)50のシステム構成図である。なお、図1においては、第1の実施の形態に係る電動アシスト制御システム50の構成例を示したものであり、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
図1に示すように、電動アシスト制御システム50は、システム全体を総括的に制御する制御手段51と、これに接続された加速度センサ52、バッテリ54、モータ55、コントローラ56、表示手段57とを含んで構成される。
加速度センサ52は、重力加速度を測定することにより、電動アシスト制御システム50が搭載される車両の走行路の傾斜角を検出する。また、加速度センサ52は、傾斜角に加え、発進時、停止時や走行時に生じる車両の加速度、走行時の振動等を検出する。加速度センサ52によって検出された加速度値は、制御手段51に出力される。なお、加速度センサ52の構成は後述する。
バッテリ54は、制御手段51(インバータユニット)に電力を供給すると共に、制御手段51を介してモータ55に電力を供給する。モータ55は、例えば、電動機の内部に搭載される電動モータで構成される。モータ55は、自転車のペダル踏力をアシストするものであり、制御手段51によるアシスト制御の指令に基づいて、例えば、自転車の後輪(不図示)にアシスト力を供給する。
コントローラ56は、車両に対する運転者から入力される指示を受け付ける。例えば、コントローラ56は、電動アシスト機能のオン/オフ等の各種調整指示を受け付けることができる。なお、コントローラ56は、このような運転車からの指示を受け付けるために必要なボタンや、タッチパネル等の入力画面を備えることが好ましい。
表示手段57は、車両に関する情報を含む任意の情報を表示する。例えば、表示手段57は、車両の速度やバッテリ残量、コントローラ56を介して運転者から入力された入力情報や制御手段51の状態情報、並びに、加速度センサ52が検出した走行路の傾斜角等の情報を表示することができる。また、表示手段57は、気温や時刻などの情報を表示するようにしてもよい。
制御手段51は、例えば、インバータユニットの制御回路で構成される。制御手段51は、上記した加速度センサ52等の各構成要素を制御する他、加速度センサ52や速度センサ53が検出した加速度値及び速度値に基づいて車両のアシスト力を制御する。このアシスト制御を実現するため、制御手段51は、車両のアシスト力を決定するための各種情報を記憶する記憶部51aを有している。記憶部51aは、各種情報として、加速度や速度値に基づいて車両のアシスト力を決定する際の閾値及びアシスト力の制御パターンが記憶されている。閾値及びアシストパターンについては後述する。例えば、制御手段51は、各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成することができる。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。
次に、図2を参照して加速度センサの原理について説明する。図2は、一般的な加速度センサの模式図である。
図2に示すように、加速度センサ52は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサで構成される。加速度センサ52は、平面視正方形状の基台52aの中央に平面視正方形状の可動部52bを有している。可動部52bの各辺には、基台52aと可動部52bとを連結する可撓性の連結部52cが設けられている。連結部52cは、可動部52bの各辺から基台52aの外周に向かって放射状に延びており、一端が可動部52bの各辺に連結される一方、他端が基台52aに固定されている。
このように構成される加速度センサ52において、可動部52bは、重力加速度等の加速度を受けることで任意の方向に変位することができる。加速度センサ52は、可動部52bの変位を取得することにより、加速度を検出することができる。可動部52bの変位を取得する方式としては、静電容量式、ピエゾ抵抗式等が挙げられる。なお、加速度センサ52は、可動部52bの変位から加速度を検出する構成に限らず、例えば、熱検知式のMEMSセンサ、可動コイルを動かしてフィードバック電流によって可動コイルを元に戻すサーボ式、又は加速度によって生じる歪を歪ゲージによって測定する歪ゲージ式等により構成されてもよい。
上記したように、加速度センサ52は、重力加速度から対象物の傾斜角を検出することができる。しかしながら、このような加速度センサ52を単純に車両に適用した場合、加速度センサ52は、重力加速度だけでなく、車両の発進停止時や走行中の加速度、さらには、悪路等を走行中の振動等の複数のデータを、それぞれのデータが混在した状態で検出してしまう。よって、走行中の傾斜角等、必要な情報だけを検出したい場合、加速度センサ52では、必要なデータだけでなく複数のデータが重なって検出されるため、必要な情報以外のデータがノイズとなって正確な測定ができないという問題がある。このノイズを除去するために、出力値の移動平均をとることも考えられるが、例えば、加速の出力値は数秒間にわたって検出されるため、ノイズを適切に除去するまでには至らない。
そこで、第1の実施の形態では、所定時間内における加速度センサ52の出力値から2つの加速度値を選出し、それぞれの加速度値と閾値とを比較した2つの比較結果の組合せによって、坂道の傾斜、発進停止時の加減速、悪路走行中の振動等、車両の走行環境を推定している。そして、2つの比較結果の組合せに基づいてアシスト力を調整することにより、車両の走行環境に応じた電動アシスト制御を実現することができる。なお、悪路とは、路面状態の悪い道、例えば、凸凹道や未舗装道路を示すものとする。
ここで、図3及び図4を参照して第1の実施の形態に係ると閾値と加速度値との関係、及びアシストパターンについて説明する。図3は、車両の発進から停止までの一連の動作における加速度センサの出力の一例を示すグラフである。図4は、第1の実施の形態に係るアシストパターンとモータパワーとを示す表である。
図3に示すグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は加速度センサの出力を表している。グラフ上の曲線Cは、加速度センサ52(図1参照)の出力値(加速度値)を表し、
時間軸に平行な3つの直線(図3では一点鎖線、二点鎖線及び破線で示している)は、加速度値からアシスト力を決定するための閾値を表している。第1の実施の形態においては、閾値が値の異なる3つの閾値S1、S2、S3によって構成され、閾値S1を一点鎖線で示し、閾値S2を二点鎖線で示し、閾値S3を破線で示している。ここで、閾値S1(第1の閾値)は3つの閾値の中で最も大きく、閾値S2(第2の閾値)は閾値S1より小さく、閾値S3(第3の閾値)は閾値S2より小さく設定されている。また、グラフにおいて、閾値S2より大きく閾値S1より小さい範囲をR1とし、閾値S1以上の範囲をR2とし、閾値S3より大きく閾値S2以下の範囲をR3とし、閾値S3以下の範囲をR4として定義する。
出力の一例について説明する。加速度センサ52から検出される加速度値は、曲線Cが示すように、通常は、R1内で一定の値(基準値)に落ち着いている。例えば、車両が発進されると一時的に加速度値が低下する。平坦な道を走行している場合は、R1内で一定の値(基準値)に落ち着いている。下り坂に進入すると、加速度値は徐々に大きくなり、R2内でセンサ出力の限界値に留まる。下り坂が終わり再び平坦な道に進入すると、加速度値は徐々に低下し、やがてR1内で一定の値(基準値)に落ち着く。一方、上り坂に進入した場合、加速度値は徐々に小さくなり、R4内でセンサ出力の限界値に留まる。上り坂が終わり、再び平坦な道に進入すると、加速度値は徐々に大きくなり、やがてR1内で一定の値(基準値)に落ち着く。そして、車両が停止されると、一時的に加速度値が上昇し、車両が完全に停止した後、加速度値は、R1内で一定の値(基準値)に落ち着く。このように、加速度センサ52から検出される加速度値は、車両の走行環境に応じて変化する。第1の実施の形態では、この加速度値から車両の走行状態を推定し、アシスト力の調整を実施する。
次に、加速度値と閾値との比較について説明する。制御手段51(図1参照)は、加速度センサ52が検出した加速度値から、所定時間T(例えば2秒)内で2つの加速度値を選出する。なお、所定時間Tは適宜変更が可能である。第1の実施の形態では、2つの加速度値として最大値MAX(第1の加速度値)、最小値MIN(第2の加速度値)が選出される。そして、最大値MAXと閾値とが比較され、最大値が上記した範囲(R1からR4)のうち、どの範囲に属するかが決定される。その結果を第1の比較結果とする。一方、最小値MINについても同様に閾値と比較され、最小値が上記した範囲(R1からR4)のうち、どの範囲に属するかが決定される。その結果を第2の比較結果とする。第1の実施の形態では、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せによって、車両の走行環境を推定し、その組合せに応じたアシストパターンを決定する。
アシストパターンは、図4に示すように、停止、弱、通常、強1、強2の5パターンで構成されており、この順番で、モータ55(図1参照)のパワーが大きくなるように設定されている。なお、第1の実施の形態では、5つのアシストパターンでアシスト力が調整される構成としたが、この構成に限定されず、パターン数は適宜変更が可能である。
次に、図5から図13を参照して、加速度センサの出力パターンと車両の走行状態との関係について説明する。図5から図13は、それぞれ加速度センサの出力の一例を示すグラフであり、加速度センサが検出する加速度値のバリエーションを表している。
図5に示すように、平地を走行している場合(グラフ5a)、加速度センサの出力は、一定の値になっている。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR1に属し、最小値MINはR1に属している。ここで、説明の便宜上、第1の比較結果として最大値MAXがR1に属していることをMAX(R1)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR1に属していることをMIN(R1)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R1)、MIN(R1)のとき、車両は平地を走行していると推定することができる。
図6に示すように、緩い上り坂(上り坂(小))を走行している場合(グラフ6a)や、発進動作の場合(グラフ6b)には、加速度センサの出力は、一時的に低下する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR1に属し、最小値MINはR3に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR1に属していることをMAX(R1)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR3に属していることをMIN(R3)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R1)、MIN(R3)のとき、車両は緩い上り坂を走行している、又は発進したと推定することができる。
図7に示すように、悪路の上り坂を走行している場合(グラフ7a)、加速度センサの出力は、急激に変化し、振動が検出される。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR1に属し、最小値MINはR4に属している。また、急発進動作の場合(グラフ7b)も同様に、急激に出力が変化する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR1に属し、最小値MINはR4に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR1に属していることをMAX(R1)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR4に属していることをMIN(R4)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R1)、MIN(R4)のとき、車両は悪路の上り坂を走行している、又は急発進していると推定することができる。
図8に示すように、緩い下り坂(下り坂(小))を走行している場合(グラフ8a)、停止動作の場合(グラフ8b)、加速度センサの出力は一時的に大きくなる。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR1に属している。また、下り坂を走行中に加速している場合(グラフ8c)は、出力が高い状態から一時的に低下することがある。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR1に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR2に属していることをMAX(R2)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR1に属していることをMIN(R1)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R2)、MIN(R1)のとき、車両は緩い下り坂を走行している、又は停止動作、又は下り坂を走行中に加速していると推定することができる。
図9に示すように、急な下り坂(下り坂(大))を走行している場合(グラフ9a)、加速度センサの出力は、高い状態で維持される。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR2に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR2に属していることをMAX(R2)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR2に属していることをMIN(R2)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R2)、MIN(R2)のとき、車両は急な下り坂を走行していると推定することができる。
図10に示すように、悪路を走行している場合(グラフ10a)、加速度センサの出力は、振動する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR3に属している。また、小刻みな発進停止動作が繰り返される場合(グラフ10b)、又は上り坂を走行中に停止した場合(グラフ10c)、加速度センサの出力は一時的に上下する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR3に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR2に属していることをMAX(R2)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR3に属していることをMIN(R3)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R2)、MIN(R3)のとき、車両は悪路を走行している、又は小刻みな発進停止動作が繰り返されている、又は上り坂を走行中に停止したと推定することができる。なお、小刻みな発進停止が行われる状況としては、歩行者が多い道など混雑した道路状況が考えられる。
図11に示すように、路面の凸凹が大きい悪路(悪路(大))を走行している場合(グラフ11a)、加速度センサの出力は、大きく上下に振動する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR4に属している。また、小刻みな急発進急停止動作が繰り返される場合(グラフ11b)、加速度センサの出力は一時的に大きく上下する。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR2に属し、最小値MINはR4に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR2に属していることをMAX(R2)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR4に属していることをMIN(R4)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R2)、MIN(R4)のとき、車両はより路面状況の悪い悪路を走行している、又は小刻みな急発進急停止動作が繰り返されていると推定することができる。
図12に示すように、上り坂(中)を走行している場合(グラフ12a)、加速度センサの出力は、低い状態で維持される。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR3に属し、最小値MINはR3に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR3に属していることをMAX(R3)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR3に属していることをMIN(R3)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R3)、MIN(R3)のとき、車両は上り坂を走行していると推定することができる。
図13に示すように、急な上り坂(上り坂(大))を走行している場合(グラフ13a)、加速度センサの出力は、より低い状態で維持される。このとき、所定時間T内の加速度値の最大値MAXはR4に属し、最小値MINはR4に属している。ここで、第1の比較結果として最大値MAXがR4に属していることをMAX(R4)で表し、第2の比較結果として最小値MINがR4に属していることをMIN(R4)で表す。よって、2つの比較結果の組合せがMAX(R4)、MIN(R4)のとき、車両は急な上り坂を走行していると推定することができる。
図5から図13に示したように、制御手段51は、所定時間T内における加速度センサ52の出力値から2つの加速度値を抽出し、それぞれの加速度値と閾値とを比較した2つの比較結果の組合せから車両の走行環境(傾斜、路面の状態、発進停止等)を推定している。そして、2つの比較結果の組合せに基づいてアシスト力を調整することにより、車両の走行環境に応じた電動アシスト制御を実現することができる。
次に、図14から図16を参照して、第1の実施の形態に係るアシスト力の制御フローについて説明する。図14は、第1の実施の形態に係るアシスト制御フローを示す図である。図15、16は、第1の実施の形態に係るアシストパターン決定フローを示す図である。
図14に示すように、先ず、電動アシスト制御システム50(図1参照)上では、電源がオンされ(START)、制御手段51(図1参照)は、加速度センサ52(図1参照)が検出した加速度値を取得し(ステップST101)、その加速度値を保存する(ステップST102)。
次に、制御手段51は、所定時間内に加速度センサ52から取得した加速度値の保存数をカウントし、保存数が所定数nに達したか否かを判断する(ステップST103)。ここで、保存数は0からnまでの整数で表される。例えば、保存数がnの場合、所定時間内にn+1個の加速度値が保存されたことを示している。
保存数が所定数nに達していない場合(ステップST103:NO)、保存数に1を加えて(ステップST104)、コントローラ56(図1参照)のオンオフ状態を確認する(ステップST105)。コントローラ56がオフの場合(ステップST105:NO)、そのままアシスト制御を終了し、コントローラ56がオンの場合(ステップST105:YES)、ステップST101の処理に戻る。
所定時間内に加速度センサ52から取得した加速度値の保存数が所定数nに達した場合(ステップST103:YES)、保存された複数(n+1個)の加速度値のうち、最大値と最小値を選出して記憶し(ステップST106)、保存数を0にリセットする(ステップST107)。そして、後述するアシストパターン決定フローF200(図15、図16参照)で決定されるアシストパターンに基づいて、モータ55(図1参照)を駆動させる(ステップST108)。そして、ステップST105の処理に進む。
図15に示すように、アシストパターン決定フローF200では、先ず、所定時間内で検出された複数の加速度値から選出された最大値MAXと閾値S1、S2、S3とを比較する(ステップST201)。ここで、最大値MAXが閾値S2より大きく閾値S1より小さい(R1に属する)場合、比較結果(第1の比較結果)をMAX(R1)とし(ST202a)、最大値MAXが閾値S1以上(R2に属する)場合、第1の比較結果をMAX(R2)とし(ST202b)、最大値MAXが閾値S2以下(R3又はR4に属する)場合、第1の比較結果をMAX(R3)として(ST202c)、記憶する。
次に、最小値MINについても同様に、閾値S1、S2、S3とを比較する(ステップST203)。ここで、最小値MINが閾値S2より大きく閾値S1より小さい(R1に属する)場合、比較結果(第2の比較結果)をMIN(R1)とし(ステップST204a)、最小値MINが閾値S1以上(R2に属する)場合、第2の比較結果をMIN(R2)とし(ステップST204b)、最小値MINが閾値S3より大きく閾値S2以下(R3に属する)場合、第2の比較結果をMIN(R3)とし(ステップST204c)、最小値MINが閾値S3以下(R4に属する)場合、第2の比較結果をMIN(R4)として(ステップST204d)、記憶する。そして、次の処理へと進む(図16参照)。
そして、図16に示すように、第1の比較結果と第2の比較結果とを組合せ、その組合せに応じたアシストパターン(図4参照)を選択する(ステップST205)。例えば、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R1)、MIN(R1)のとき、車両は平地を走行していると推定され、アシストパターンは「通常」に設定される(ステップST206a)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R1)、MIN(R3)のとき、車両は緩い上り坂を走行している、又は発進したと推定され、アシストパターンは「通常」に設定される(ステップST206b)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R1)、MIN(R4)のとき、車両は悪路の上り坂を走行している、又は急発進していると推定され、アシストパターンは「通常」に設定される(ステップST206c)。
また、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R2)、MIN(R1)のとき、車両は緩い下り坂を走行している、又は停止動作、又は下り坂を走行中に加速していると推定され、アシストパターンは「停止」又は「弱」に設定される(ステップST206d)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R2)、MIN(R2)のとき、車両は急な下り坂を走行していると推定され、アシストパターンは「停止」に設定される(ステップST206e)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R2)、MIN(R3)のとき、車両は悪路を走行している、又は小刻みな発進停止動作が繰り返されている、又は上り坂を走行中に停止したと推定され、アシストパターンは「弱」に設定される(ステップST206f)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R2)、MIN(R4)のとき、車両はより路面状況の悪い悪路を走行している、又は小刻みな急発進急停止動作が繰り返されていると推定され、アシストパターンは「停止」に設定される(ステップST206g)。
さらに、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R3)、MIN(R3)のとき、車両は緩い上り坂を走行していると推定され、アシストパターンは「強1」に設定される(ステップST206h)。第1の比較結果と第2の比較結果との組合せがMAX(R3)、MIN(R4)のとき、車両は急な上り坂を走行していると推定され、アシストパターンは「強2」に設定される(ステップST206k)。
上記したように、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せに基づいて車両の走行環境に応じて様々なアシストパターンを選択することができる。アシストパターンが決定されると、そのアシストパターンを保存して(ステップST207)、アシストパターン決定フローF200を終了する。そして、図14に示すアシスト制御フローのステップST108に進む。
このように、第1の実施の形態に係る電動アシスト制御システム50によれば、所定時間内に加速度センサ52が検出した加速度値から最大値MAX、最小値MINを選出し、それぞれの加速度値と閾値とを比較した第1の比較結果と第2の比較結果との組合せから、車両の走行環境(速度、姿勢、発進停止、路面状況等)を推定することができる。そして、第1の比較結果と第2の比較結果との組合せに基づいて、車両の走行環境に応じた電動アシスト制御を実現することができる。また、加速度センサ52の出力のみで車両の走行環境に応じたアシスト力の調整が可能なため、ジャイロセンサやトルクセンサ等、他の検出手段を用いることなく、電動アシスト制御が実現される。よって、システム構成の簡略化を図ることができる。
また、所定時間内に加速度センサ52が検出した複数の加速度値のうち、第1、第2の加速度値として最大値、最小値を選出することにより、所定時間内における車両の加速度値の変化をより正確に検出することができる。また、3つの閾値S1、S2、S3と用いたことにより、第1の加速度と閾値との第1の比較結果のバリエーションと、第2の加速度値と閾値との第2の比較結果のバリエーションが増え、第1の比較結果と第2の比較結果との組み合わせの数を増やすことができる。よって、車両の走行環境をより多くのバリエーションで推定することができ、様々な場面に応じたアシスト制御が可能になる。
次に、図17から図19を参照して、第2の実施の形態について説明する。図17は、第2の実施の形態に係るアシスト制御フローを示す図である。図18は、第2の実施の形態に係るアシストパターン決定フローを示す図である。図19は、第2の実施の形態に係る車両の電動アシスト制御システムのシステム構成図である。なお、第2の実施の形態においては、システム構成は第1の実施の形態と同じである。第2の実施の形態は、加速度センサ52によって検出される加速度値に加え、さらに速度センサ53によって検出される速度値を用いてアシスト力を調整する点で、第1の実施の形態と相違する。
図19に示すように、第2の実施の形態に係る電動アシスト制御システム150は、システム全体を総括的に制御する制御手段51と、これに接続された加速度センサ52、速度センサ53、バッテリ54、モータ55、コントローラ56、表示手段57とを含んで構成される。ここで、速度センサ53以外の構成については第1の実施の形態に係る電動アシスト制御システム50(図1参照)と同一であるため、説明を省略する。
速度センサ53は、例えば、磁気センサで構成され、車両の速度を検出する。速度センサ53は、車両の車輪(不図示)の回転数から速度を検出してもよいし、クランク(不図示)の回転数や後述するモータ55の回転数から速度を検出してもよい。速度センサ53で検出された速度値は、制御手段51に出力される。なお、速度センサ53は、磁気センサに限定されず、車両の速度を検出することができれば、どのようなセンサで構成されてもよい。
以下、第2の実施の形態に係るアシスト力の制御フローについて説明する。図17に示すように、先ず、電動アシスト制御システム150(図19参照)上では、電源がオンされ(START)、制御手段51(図19参照)は、速度センサ53(図19参照)が検出した速度値を取得し(ステップST301)、その速度値を保存する(ステップST302)。そして、その速度値が所定値未満であるか否かが判定される(ステップST303)。ここで、所定値は、例えば、速度3km/hに設定される。なお、所定値は、この値に限定されず、車両が停止中と判断できる値が設定される。
速度値が所定値未満でない場合(ステップST303:NO)、制御手段51は、加速度センサ52(図19参照)が検出した加速度値を取得し(ステップST304)、その加速度値を保存する(ステップST305)。次に、制御手段51は、所定時間内に加速度センサ52から取得した加速度値の保存数をカウントし、保存数が所定数nに達したか否かを判断する(ステップST306)。
保存数が所定数nに達していない場合(ステップST306:NO)、保存数に1を加えて(ステップST307)、コントローラ56(図19参照)のオンオフ状態を確認する(ステップST308)。コントローラ56がオフの場合(ステップST308:NO)、そのままアシスト制御を終了し、コントローラ56がオンの場合(ステップST308:YES)、ステップST301の処理に戻る。
所定時間内に加速度センサ52から取得した加速度値の保存数が所定数nに達した場合、(ステップST306:YES)、保存された複数(n+1個)の加速度値のうち、最大値と最小値を選出して記憶し(ステップST309)、保存数を0にリセットする(ステップST310)。そして、第1の実施の形態と同じアシストパターン決定フローF201(図15、図16参照)で決定されるアシストパターンに基づいて、モータ55(図19参照)を駆動させる(ステップST311)。そして、ステップST308の処理に進む。
速度値が所定値未満である場合(ステップST303:YES)、後述する第2の実施の形態に係るアシストパターン決定フローF400(図18参照)で決定されるアシストパターンに基づいて、モータを駆動させる(ステップST312)。そして、ステップST308の処理に進む。
図18に示すように、アシストパターン決定フローF400では、先ず、制御手段51が加速度センサ52から加速度値を取得し(ステップST401)、その加速度値を保存する(ステップST402)。そして、制御手段51は、その加速度値と閾値S1、S2、S3とを比較する(ステップST403)。ここで、加速度値が閾値S2より大きく閾値S1より小さい(R1に属する)場合、アシストパターン(図4参照)は「通常」に設定される(ステップST404a)。加速度値が閾値S1以上(R2に属する)場合、アシストパターンは「弱」に設定される(ステップST404b)。加速度値が閾値S2以下(R3又はR4に属する)場合、アシストパターンは「強1」に設定される(ステップST404c)。アシストパターンが決定されると、そのアシストパターンを保存して(ステップST405)、アシストパターン決定フローF400を終了する。そして、図17に示すアシスト制御フローのステップST312に進む。
このように、第2の実施の形態においても、所定時間内に加速度センサが検出した加速度値から最大値MAX、最小値MINを選出し、それぞれの加速度値と閾値とを比較した第1の比較結果と第2の比較結果との組合せから、車両の走行環境(速度、姿勢、発進停止、路面状況等)を推定することができる。第2の実施の形態では、加速度値に加え、速度センサ53からの速度値をアシスト力の調整に利用することで、車両の速度を考慮した車両の走行環境を推定することができ、様々な場面に応じたアシスト制御が可能になる。また、速度値が所定値より小さい場合に、加速度センサによって検出される加速度値に基づいてアシスト力を制御する構成にした。この場合、速度値から車両の発進停止を推定することができる。よって車両の発進時又は停止時に、好適なアシスト制御が可能になる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、所定時間内に加速度センサ52が検出した複数の加速度値から最大値及び最小値を選出する構成としたが、この構成に限定されない。所定時間内に検出された加速度値から2つの加速度を選出すれば、どのような値でもよい。
また、上記実施の形態においては、3つの閾値S1、S2、S3と加速度値とを比較する構成としたが、この構成に限定されない。閾値は、1つ又は2つでもよく、4つ以上で構成されてもよい。例えば、閾値を1つとした場合、加速度が閾値以上である場合と、加速度が閾値以下である場合とで比較結果が異なり、2つの加速度値で比較した結果を組合せることで、車両の走行状態を推定することができる。
また、上記実施の形態においては、所定時間内に所定数のデータを断続的に取得する構成としたが、この構成に限定されず、連続的にデータを取得する構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、所定時間内にn個の加速度値を取得する構成としたが、連続的に値を取得してもよい。