JP6453043B2 - 産業廃棄物の溶融処理方法 - Google Patents

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本発明は、産業廃棄物の溶融処理方法に関する。
産業廃棄物を溶融炉で処理し、高温で溶融スラグを生成し、廃棄物を無害化する技術が開発されている。産業廃棄物には、高融点の金属鉄も含まれる。この金属鉄は、溶融しなかった場合には、炉鉄となって操業を妨げる要因となっている。そこで、溶融炉に銅製錬スラグを投入する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−203154号公報
元来、産業廃棄物には、SiOが多く含まれる。近年、種々の産業廃棄物を処理するため、産業廃棄物のSiO濃度が高い場合もある。その場合、特許文献1の技術を用い、銅製錬スラグを投入することで炉鉄の生成を抑制することはできても、生成された溶融スラグ中のSiO濃度が必要以上に高くなり、スラグの粘度が高くなったり、スラグの溶融温度が高くなることで安定的に操業することが困難である場合があることがわかった。
一方、アスベストは、微細な繊維状の針状結晶で、人体に吸引されると呼吸器官に癌等の障害を発生させる原因となることが知られている。アスベストは、構成成分に酸化ケイ素を有していることから、融点以上では溶解して無害なスラグとなるため、産業廃棄物を溶融炉で処理して高温で溶融スラグを生成する際にアスベストを一緒に添加し、溶融処理することが有効である。しかしながら、アスベストは構成成分に酸化ケイ素を有していることから、溶融スラグ中のSiO濃度が高くなる。
本発明は上記の課題に鑑み、炉鉄の生成を抑制しつつ、溶融スラグ中のSiO濃度を適正な範囲にすることで安定的な操業を可能とする、産業廃棄物の溶融処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る産業廃棄物の溶融処理方法は、少なくとも金属鉄を含む産業廃棄物を溶融炉で溶融する産業廃棄物の溶融処理方法において、前記産業廃棄物に少なくとも銅製錬の転炉スラグを添加し、得られる溶融スラグにおけるFe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することを特徴とする。前記転炉スラグにおけるFe3+濃度は、15mass%〜30mass%としてもよい。前記溶融炉内にアスベストを投入することで、前記溶融スラグにおけるFe/SiO2(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整してもよい。前記アスベストの投入量:前記転炉スラグの投入量=1〜10:1としてもよい。前記溶融炉内における溶融前の溶融処理対象物の鉄品位を15mass%〜25mass%に調整してもよい。前記転炉スラグにおけるSiO濃度は、15mass%〜30mass%としてもよい。
本発明によれば、炉鉄の生成を抑制しつつ、溶融スラグ中のSiO濃度を適正な範囲にすることで安定的な操業が可能となる。
実施形態に係る産業廃棄物の溶融処理方法に用いる溶融炉の模式図である。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態において対象とする産業廃棄物は、少なくとも金属鉄を含み、焼却灰等、その他汚泥、鉱滓、プリント基板、パット屑、廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダスト等を含む。表1に焼却灰の成分の一例を示す。表1で示すように、焼却灰には、金属鉄が含まれている。また、SiOが多く含まれており、最近のものには30mass%を超えるものもある。
Figure 0006453043
図1は、本実施形態に係る産業廃棄物の溶融処理方法に用いる溶融炉の模式図である。溶融炉は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、一例として、反射炉型リサイクル炉を用いる。
図1に示すように、溶融炉100は、溶融部10と湯溜り部20とが連結された構造を有する。溶融部10のバーナータイル30には、重油等を燃料とするバーナー40が設けられている。また、溶融部10の天井部には、産業廃棄物などの溶融処理対象物50の投入口60が設けられている。バーナー40は、燃焼熱を用いて溶融処理対象物50を加熱する。例えば、バーナー40は、溶融部10内の温度を1300℃〜1400℃程度に保つ。それにより、溶融処理対象物50が溶融する。
溶融した溶融処理対象物50は、湯溜り部20に流れ込む。湯溜り部20では、溶融した溶融処理対象物50は、マット浴70とスラグ浴80とに2層分離する。スラグ浴80の比重はマット浴70の比重よりも小さいため、スラグ浴80はマット浴70上に浮く。湯溜り部20の天井には、アスベスト投入口70が設けられている。アスベストは、スラグ浴80に投入される。
本実施形態においては、溶融処理対象物50として、産業廃棄物に銅製錬の転炉スラグを添加する。転炉スラグは、酸化第二鉄(Fe3+)を多く含む。それにより、下記式(1)および下記式(2)に従って金属鉄をスラグ化することができる。
Fe+Fe→3FeO (1)
2FeO+SiO→2FeO・SiO (2)
SiOは上記式のように、スラグ形成には不可避なものであるが、多すぎるとスラグの粘度を高くし、スラグの流動性を悪くする。また、スラグの溶融温度も高くなる。一方、Fe3+が少ないと金属鉄を効果的に酸化しにくく、Fe3+が多すぎると酸化第二鉄量が多くなって溶融処理対象物50の融点が高くなってしまう。したがって、Fe/SiO(mass%比)を調整することが重量である。そこで、本実施形態においては、産業廃棄物に転炉スラグを添加し、得られる溶融スラグにおけるFe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整する。それにより、炉鉄の生成を抑制しつつ、溶融スラグ中のSiO濃度が適正な範囲となって、安定的な操業が可能となる。
ところで、銅製錬の転炉スラグには、SiOが15〜30mass%程度しか含まれていない。そこで、産業廃棄物のSiO濃度が高い場合には(例えば30mass%を超えるような場合には)、Fe3+が多く、SiOが少ない銅製錬の転炉スラグを鉄供給源として用いることが好ましい。例えば、15mass%〜30mass%のFe3+濃度の転炉スラグを用いることが好ましい。また、溶融前の溶融処理対象物50の全体の鉄品位を15mass%〜25mass%に調整することが好ましい。また、銅製錬の転炉スラグは、硫黄濃度が低いため、排ガス処理が容易となるという効果が得られる。転炉スラグにおける硫黄濃度は、0.1mass%以下であることが好ましい。
ここで、銅製錬の転炉スラグは、自溶炉に繰り返す転炉スラグと自溶炉に繰り返さない転炉スラグ(鉄精鉱)とに分けられる。自溶炉に繰り返す転炉スラグは、銅品位が高く銅の回収に適している。一方、自溶炉に繰り返さない転炉スラグ(鉄精鉱)は、銅品位が低いため、貯蔵等に回される。すなわち、自溶炉に繰り返さない転炉スラグは、有効利用することが困難なスラグである。本実施形態においては、銅製錬の自溶炉に繰り返さない転炉スラグを用いることが好ましい。銅品位が低いことによって酸化第二鉄濃度が高く、炉鉄のスラグ化に有利であるとともに、有効利用が可能となって貯蔵設備の必要性を抑制できるからである。
銅製錬の自溶炉スラグ、銅製錬の自溶炉に繰り返す転炉スラグ、銅製錬の自溶炉に繰り返さない転炉スラグの成分の一例を表2に示す。自溶炉スラグは、Fe3+濃度が低くなっている。自溶炉に繰り返す転炉スラグは、Fe3+を多く含んでいるが、自溶炉に繰り返さない転炉スラグの方がより多くのFe3+を含んでいる。以上のことから、自溶炉に繰り返さない転炉スラグを用いることが好ましい。ただし、自溶炉スラグ、自溶炉に繰り返す転炉スラグの使用を妨げることを意味するものではない。
Figure 0006453043
次に、アスベストの投入について説明する。アスベストは、クリソタイル(白石綿:MgSi(OH)、融点1521℃)、クロシドライト(青石綿:NaFeSi22(OH)、融点1193℃)、及びアモサイト(茶石綿:(FeMg)Si22(OH)、融点1399℃)の総称である。アスベストは、微細な繊維状の針状結晶で、人体に吸引されると呼吸器官に癌等の障害を発生させる原因となることが知られている。しかしながら、アスベストは、上述の通り構成成分に酸化ケイ素を有していることから、融点以上では溶解して無害なスラグとなる。したがって、できるだけ多くのアスベストを溶融処理できることが好ましい。
そこで、本実施形態においては、アスベストを湯溜り部20のスラグ浴80に投入する。アスベストはSiOを含むため、溶融処理する場合には、スラグ浴80中のSiO濃度が高くなる。したがって、アスベストを多く処理する場合には、銅製錬の転炉スラグを添加しつつ、Fe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することが重要である。これにより、溶融対象処理物50の金属鉄のスラグ化を図ることができる。例えば、アスベストの投入量:転炉スラグの投入量=1〜10:1とすることが好ましく、1〜3:1とすることがより好ましい。
本実施形態によれば、少なくとも金属鉄を含む産業廃棄物を溶融炉で溶融する産業廃棄物の溶融処理方法において、前記産業廃棄物に少なくとも銅製錬の転炉スラグを添加し、得られる溶融スラグにおけるFe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することで、炉鉄の生成を抑制しつつ、溶融スラグ中のSiO濃度を適正な範囲にすることで安定的な操業が可能となる。
(実施例)
上記実施形態に従って溶融処理対象物に対して溶融処理を行った。産業廃棄物として、SiOを32mass%、Feを8mass%含むものを用いた。転炉スラグとして、表2で示した濃度範囲の、自溶炉に繰り返さない転炉スラグを用いた。産業廃棄物に転炉スラグを添加することで、溶融処理対象物の全体の鉄品位を15mass%〜25mass%に調整した。その結果、溶融スラグにおけるFe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することができた。
得られたスラグの成分分析の結果を表3に示す。表3に示すように、産業廃棄物中の金属鉄をFeOとして回収できていることが確認された。
Figure 0006453043
(比較例)
転炉スラグの代わりに自溶炉スラグを用いた場合には、溶融スラグ中のSiO濃度が高くなり、粘度が高くなっていることが確認された。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 溶融部
20 湯溜り部
30 バーナータイル
40 バーナー
50 溶融処理対象物
60 投入口
70 マット浴
80 スラグ浴
100 溶融炉

Claims (6)

  1. 少なくとも金属鉄を含む産業廃棄物を溶融炉で溶融する産業廃棄物の溶融処理方法において、
    前記産業廃棄物に少なくとも銅製錬の転炉スラグを添加し、得られる溶融スラグにおけるFe/SiO(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することを特徴とする産業廃棄物の溶融処理方法。
  2. 前記転炉スラグにおけるFe3+濃度は、15mass%〜30mass%であることを特徴とする請求項1記載の産業廃棄物の溶融処理方法。
  3. 前記溶融炉内にアスベストを投入することで、前記溶融スラグにおけるFe/SiO2(mass%比)を0.4〜0.8の範囲に調整することを特徴とする請求項1または2記載の産業廃棄物の溶融処理方法。
  4. 前記アスベストの投入量:前記転炉スラグの投入量=1〜10:1とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の産業廃棄物の溶融処理方法。
  5. 前記溶融炉内における溶融前の溶融処理対象物の鉄品位を15mass%〜25mass%に調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の産業廃棄物の溶融処理方法。
  6. 前記転炉スラグにおけるSiO濃度は、15mass%〜30mass%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の産業廃棄物の溶融処理方法。
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