JP3983536B2 - アスベストの無害化処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明はアスベストの無害化処理方法に関するものであり、さらに詳しく述べるならばスラグ化リサイクル溶融炉を利用したアスベストの無害化処理方法に関するものである。
【0002】
アスベストは、クリソタイル(Mg3Si8O5(OH)4)−融点1521℃―、クロシドライト(Na2Fe5Si8O22(OH)4)―融点1193℃―、及びアモサイト((FeMg)6Si8O22(OH)2)の総称である。クロシドライトは毒性が強いためにほとんど使用されていない。アスベストは発ガン性があるために、そのまま土中に埋めるのではなく、各種処理法が提案されている。
【0003】
【従来の技術】
特許第3085959号公報によると、SiO2 よりもCaOの含有量が多い水処理汚泥を塩基度調整剤兼バインダーとしてアスベストに混合して成形した混合物を、炭素系可燃物質を燃料とする高温炉床に供給して加熱溶融する方法が提案されている。アスベストを、例えば1080〜1140℃(表2)で溶融してスラグを生成している。
この提案ではCaO/SiO2比率を約1に調整すると、十分に融点が降下することを利用してスラグを生成している。
【0004】
特開平7−171536号公報は密閉型電気炉によりシュートを介して袋中に入れられたアスベストを溶解する方法を提案しており、アスベストは飛散せずに電気炉内に形成されたスラグ浴に潜投され一部が溶解され、残部は被覆層としてスラグ浴を覆っている。この方法では、スラグ浴の組成は特に説明されておらず、また被覆層のアスベストはそのままでは無害化されていないので、再処理が必要である。
【0005】
特許第3120308号はアスベストにCaF2源を加えて溶解し、ガラス質とする方法を提案している。ガラス質凝固物は破砕して路盤充填材、埋立て材として活用される。
【0006】
アスベストを1250℃の温度を有する銅製錬スラグ(ファイヤライト(Fe2SiO4)スラグ)に、スラグの顕熱のみで溶解させる研究が発表されている(資源素材学会1996年秋季大会講演集第50〜53頁)。この研究によると、クリソタイルは1200℃で6.5質量% まで、1300℃では 15質量%まで溶解する;クロシドライトは任意の割合で溶解するとの結果が得られている。溶解後は元のアスベストのX線回折ピークが認めらない。
【0007】
産業廃棄物の無害化及び銅二次原料からの有価物の回収は、例えば本願の図1に示す処理法で行われる。このフローに示されたとおり、汚泥、鉱さい、燃え殻、プリント基板(以下「汚泥等」と総称する)をリサイクルの対象としている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許第3085959号の方法ではアスベストそのものを処理する方法でなく、バインダーを利用する方法であるために、処理コストが嵩む。CaO/SiO2 ≒1とするためには、膨大な量のCaOが必要となるために、この熱的に不利である。
特開平7−171536号公報は、電気炉を利用するために、高価な電力を多量に必要とする。この公報はアスベストの融点以上の高温例えば1,500℃の高温を作り出すために膨大な電力を消費する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するものであり、汚泥、鉱滓、燃え殻、プリント基板、パット屑、廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダストなどの産業廃棄物を型炉に装入し、該炉に設けられたバーナーにより溶融し、湯溜り部に、8〜12質量%CaO、28〜35質量%SiO2、20〜35質量%FeOの三成分系を基本成分とし、残部Al2O3及びMgOを含有するスラグ浴を形成するとともに、スラグ浴にアスベストを投入して、スラグ浴に溶解することを特徴とするアスベストの無害化処理方法に関するものである。
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
反射炉で処理する産業廃棄物につき先ず説明する。
「汚泥」は脱水汚泥、めっき汚泥、研磨汚泥、下水汚泥などである。脱水汚泥はCa,Feを主成分とする。めっき汚泥は Cu,Fe,S, Caを主成分とする。
燃え殻は焼却残渣等である。
プリント基板はCuとプラスチックから構成される。
鉱滓はAl2O3粉等、パット屑はブレーキパッド等である。
廃ショットはショットブラスト用投射粒等の廃材である。
ダストは煤塵である。
被処理物が有価金属を含有する場合は硫化鉄を添加してマットを生成し、有価金属をマット中に捕捉することができる。
なお、上記汚泥等以外にもスラグとして再利用可能な産業廃棄物を処理することができる。
【0011】
次に横型炉例えば、反射炉のスラグについ説明する。
スラグの基本成分はCaO-SiO2-FeO3成分系であり、これに、MgO.Al2O3などが少量含有されている。汚泥等の組成は発生源により大きく変動する。例えば、汚泥等のCaOはほぼ0質量%から約70質量%、SiO2は約0から80質量%の範囲で変動する。実際の処理では数箇所の発生源からの汚泥等を調合して処理されるために、スラグ組成はおよそ8〜12質量%CaO−28〜35質量%SiO2 −20〜35質量%Feの範囲となる。
【0012】
上記した組成は非鉄製錬上最も基本的なFeOx-CaO-SiO2系であり、教科書、論文(例えば「講座・現代の金属学製錬編2「非鉄金属製錬」昭和57年7月10日発行第2刷、第62頁、資源と素材学会2001年秋季大会講演D4-21,D4-22」)などで解説されている。本発明者はこれら従来の知見を参照して当スラグが次の特長を持つことを考察した。
(イ)リサイクル炉スラグの酸素分圧P O2 は<10-10 atm程度であり、CaOの含有と上記低い酸素分圧に起因してCaO−Fe/SiO2系状態図(前掲講演D4-21の図5、本書に図2として引用、但し一部化合物名を付記)における液相面が拡大している。
(ロ)前記秋季大会講演D4-22,図10−本書に図3として引用、ただし一部化合物名付記−に示す通りFe/SiO2 は0.7 〜1.2,CaOは8〜12%であり、SiO2飽和側に近い。従ってアスベストの主成分であるMgOが入っても液相範囲は変わらず、MgOを多量に溶解することができる。MgOは自溶炉スラグほど有害ではない。
【0013】
以上の考察に基いて、反射炉内の温度を高めることなく,生成するスラグ中にアスベストをスラグ量に対して10〜20質量%まで溶解させることができることを見出した。
アスベストとともにFe及び/又はCaOを含有する産業廃棄物、例えば鉄共沈を行う排水中和滓、鉄研磨粉、廃石膏などを投入するとFe/SiO2が高く、CaOが高い領域に組成が移動するので、アスベスト使用量を増大させることができる。
【0014】
以上の考察に基き、横型炉例えば、反射炉においてアスベストを溶解する方法を提供するものである。
図4は反射炉の概念的断面図を示し、図中、1はバーナータイル、2は重油等を燃料として使用するバーナー、3a,3b,3c,3dは汚泥等10の投入口、4は溶融部、5は湯溜り部、6はスラグ浴、7はマット浴、8はアスベスト9の投入口である。
アスベスト9はスラグ浴6上方から投入することとする。アスベストは単に投入するだけでスラグに固定され、セメント原料として再利用できる。アスベスト9を汚泥10などと一緒にバーナー2で加熱すると飛散の惧れがあるために、バーナー2を反射炉の片側に設置し、スラグ浴6をバーナー設置位置とは反対側に形成することがこのましい。
【0015】
【実施例】
本出願人の工場に設置されたリサイクル用反射炉は、例えば国内の約60箇所の事業所からのスラッジ等を毎月約5000トン処理している。これは時間当り7トンの処理量に相当する。スラグの平均的組成はSiO2 :28〜 35質量%、 CaO8〜 12質量%、 Fe:20〜35質量%、 Al2O3 :9〜 13質量% である。この反射炉のスラグ浴上方に投入管を新たに貫通させ1時間当り250kgのクリソタイルを投入する実験を6時間実施した。このクリソタイルは建設事業者から廃棄物として処理を委託されたそのものであり、切断、乾燥などの一切の予備処理を行わなかった。この結果クリソタイルはスラグ中に全量溶解して固定された。また生成したスラグはセメントの原料としてリサイクルされた。
【0016】
【発明の効果】
(イ)アスベストを、バインダーや、CaF2などの補助剤を使用せずに無害化処理 できる。
(イ)電力を使用せずにスラグの顕熱のみでアスベストを溶解し、無害化処理することができる。
(イ)アスベストを溶解したスラグはセメントの原料として有効利用することができる。
(イ)アスベスト投入管を付設するのみで、既存の設備を利用してアスベストを無害化することができる。
(イ)スラグ量に対して10〜20質量%程度までアスベストを処理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リサイクル処理フローの一態様を示す図である。
【図2】 CaO-Fe/SiO2系状態図において酸素ポテンシャルと液相領域の関係を示す図である。
【図3】 CaO-Fe/SiO2系状態図においてMgO%と液相領域の関係を示す図である。
【図4】 反射炉の一態様を示す概念的断面図である。
【符号の説明】
1―バーナータイル
2―バーナー
3a,3b,3c,3d―汚泥等の投入口
4―溶融部
5―湯溜り部
6―スラグ浴
7―マット浴
8―アスベストの投入口
9−アスベスト
10−汚泥等

Claims (4)

  1. 汚泥、鉱滓、燃え殻、プリント基板、パット屑、廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダストなどの産業廃棄物を型炉に装入し、該炉に設けられたバーナーにより溶融し、湯溜り部に、8〜12質量%CaO、28〜35質量%SiO2、20〜35質量%FeOの三成分系を基本成分とし、残部Al2O3及びMgOを含有するスラグ浴を形成するとともに、アスベストをスラグ浴に投入して、スラグ浴に溶解することを特徴とするアスベストの無害化処理方法。
  2. スラグ量100重量部に対して10〜20質量部のアスベストを添加することを特徴とする請求項1記載のアスベストの無害化処理方法。
  3. 前記アスベストとともにFe及び/又はCaOを含有する廃棄物を投入することを特徴とする請求項1又は2記載のアスベストの無害化処理方法。
  4. 前記バーナーを型炉の片側に設置し、前記スラグ浴をバーナー設置位置とは反対側に形成する請求項1から3までの何れか1項記載のアスベストの無害化処理方法。
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