JP3732561B2 - 電気炉における合金鉄製造及び焼却灰の溶融処理の同時実施方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物、下水道スラッジ、シュレッダーダスト、その他の廃棄物の焼却灰を溶融により、減容化、無害化する方法に関する。更に詳しく述べれば、本発明は、電気炉において、金属(合金も含む)を精錬するとともに、併せて焼却灰を処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一般廃棄物、産業廃棄物、下水道スラッジ、シュレッダーダスト等の各種廃棄物は、焼却処理され、その灰(焼却灰)は多くの場合、埋立地に廃棄処分されている。しかしながら、埋立地の確保が年々難しくなっており、その埋立地の延命化が必要である。また、焼却灰には、重金属等の各種有害物質が含まれているため、廃棄処分した場合に、雨水によりそのような有害物質が流出したり、地下水に溶出する等の問題が生じ得る。このため、従来から、焼却灰の容積を小さくする、いわゆる減容化処理や、重金属等の有害物質の流出や地下水への溶出等を防止するための焼却灰の無害化処理が検討されている。更に、一歩進んで、焼却灰の資源化による再利用や、リサイクル技術の開発が待望されている。ところで、灰やスラッジ等を電気抵抗炉において処理し、これらの灰やスラッジ等から、重金属類を無害化した人工鉱物と金属とを製造する方法が提案されている(特公昭60-56963号公報)。しかしながら、この方法では、金属の精錬を伴う技術ではなく、単に焼却灰の電気抵抗熱により溶融する技術であるため、焼却灰又はその溶融物の電気抵抗の調整が困難であったり、有害成分のスラグへの固定のため、珪酸分や、石灰分を加えて、成分調整をする必要がある。その結果、成分調整に加えられる珪酸分や、石灰分により、せっかくの焼却灰の減容の効果が減ぜられるという問題点があった。一般的に、焼却灰の成分や、性状は様々であり、変動も大きいので、得られるスラグ及び金属成分並びにその性状の調整が難しく、再利用の用途が少ないという問題もあった。更に、未燃焼残渣の炭素分が多く含まれる廃棄物を処理すると、炉上、炉外にて燃焼する必要があり、そのためガス発生量が多くなるため、操業の安定化が図れず、重金属等の有害物質の揮散が生じたり、あるいは排出燃焼ガス処理のための大がかりな設備を必要とするなど問題となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、金属の精錬を行いながら、焼却灰の溶融による無害化及び減容化を達成する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、焼却灰の成分調整を特に考慮することなく、再利用可能なスラグを生成し、金属分の回収を行い、未燃焼残渣(燃残)としての炭素分を金属成分の還元に利用し、発生する一酸化炭素や水素を含むガスを燃料として発電等に利用し、もって、エネルギーの有効利用を図れる方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成する方法について鋭意検討した結果、電気炉において金属の精錬を行う際に、金属精錬用の原料の一部として焼却灰を使用することにより、上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明において処理される焼却灰は、一般廃棄物、産業廃棄物、下水道スラッジ、シュレッダーダスト、その他の廃棄物の焼却灰である。例えば、都市ゴミからの焼却灰は、通常以下の組成からなっている。
【0006】
【表1】
表1 焼却灰化学分析値
本発明において使用される金属精錬用の電気炉としては、金属(合金を含む)を精錬するのに使用されるものであれば、特に制限なく各種の電気炉を使用することができる。このような電気炉としては、一般に、発熱方式の相違に従って、抵抗によって発熱させる抵抗炉、アークの発熱を利用するアーク炉、誘導加熱を利用する誘導炉等が挙げられる。熱効率及び重金属等の有害物質の飛散防止の観点から、好ましくは、抵抗炉が挙げられる。
電気炉として使用される典型的な例の断面図を図1に概略する。
この電気炉1は、密閉型で、ほぼ円筒状の容器の形態をしている。電気炉1には、上壁を通して3本の電極2と、3本以上の原料装入装置3とが設けられている。電極2は、それぞれ、精錬工程中、精錬金属層9の上に生成するスラグ層8の上に装入されているコークス層11内に先端が嵌入した状態で保持される。一方、原料装入装置3は、精錬工程中に、コークス層11上に順次原料12を装入するように、上端に設けられたホッパー3aと、その下に設けられたシュート3bとから形成されている。また、図1において、電気炉1の側壁4aの下部に金属取出し口5が設けられ、その反対側の側壁には、金属取出し口5よりも高い位置にスラグ取出し口6が設けられている。更に、電気炉1の上壁端部には、精錬工程で生成した気体を取り出すためのガス取出し口7が設けられている。
【0007】
本発明において、精錬される金属の種類は、特に限定されるものではない。純度の高い金属を精錬する場合であっても、添加する焼却灰の量を調整することによって、不純金属の量を抑制することができるので、通常問題は生じない。また、精錬される金属には、合金が含まれる。典型的には、金属としては、例えば、銑鉄が挙げられる。また、合金としては、典型的には、鉄との合金、例えば、シリコマンガン等が挙げられる。
金属の精錬においては、通常、精錬する金属に応じて各種の原料の組合せが存在する。例えば、合金鉄、銑鉄の精錬における原料は、鉄鉱石、マンガン鉱石、クロム鉱石ニッケル鉱石等の原料鉱石、スラグ塩基度調整用の石灰石や珪石と、還元材料としてのコークスや石炭等を用いる。
本発明においては、焼却灰は、金属の精錬用の原料の一部として使用する。具体的には、精錬すべき金属に応じて変動するが、通常使用する原料全体に対して20重量%以下、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは2〜5重量%の量で使用すれば、精錬金属中の不純物の量を大きく変動させることなく、また焼却灰の減容化を達成するに充分である。焼却灰に含まれる珪酸分、CaO、MgOの塩基成分、未燃残の炭素分は原料として作用するため、焼却灰に含まれる珪酸分、塩基成分、炭素分相当の原料を減少することができる。また、精錬する金属に応じて、その金属を比較的多く含む焼却灰を選択し、原料の一部として使用すれば、精錬金属の収量を改善するのにも有効である。
【0008】
焼却灰は、金属精錬用の原料に予め添加しておいてもよいし、精錬作業中に溶融金属又はその上のスラグ上に添加してもよい。
本発明においては、合金鉄、銑鉄精錬でのスラグ溶湯温度は1400〜1500℃と極めて高温であり、焼却灰の完全溶融がなされ、そして重金属等の有害成分はスラグ中の珪酸(SiO2)の網目構造中に移行し、固化後は安定なガラス質となるため、雨による流出や、地下水への溶出等の二次的公害の防止が図られる。また、焼却灰中の鉄、その他の金属成分は、合金鉄、銑鉄として回収され、未燃残の炭素分はその還元材として利用され、発生する一酸化炭素及び水素を含むガスは発電用の燃料として利用される。更に、生成したスラグも、従来と同様に道路基盤、建設材料として使用することができ、すでに規格化されている合金鉄、スラグと同一のものとなり、使用用途等の汎用性に優れたものである。
【0009】
【実施例】
以下、実施例を参照しながら、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
以下に、本発明のシリコマンガン製造電気炉での溶融処理の実施例を説明する。
この実施例は、基本的に図1に示す構造を有する3相潜弧式密閉電気炉を使用し、シリコマンガンを製造した例である。この電気炉の製造能力は、65,000t/年であり、主要部の仕様はトランス容量は、50,000KVA(最大負荷、28,000kw)、炉直径、15m、炉高、6m 電極径、1.7mであった。なお、この実施例では、予め、上記表1で示す組成を有する焼却灰を精錬用原料中に配合しておいたものを使用した。
精錬用原料は、以下の通りであった。
次いで、精錬作業を行った。精錬作業の条件は、以下の通りであった。
電気炉負荷 5000〜28000KW
電圧 100〜200V
抵抗 500〜600MΩ
精錬工程によって得られたシリコマンガン及びスラグの品質を調べ、通常の精錬によって得られた製品と比較した。その結果を、以下の表2及び表3に示す。
【0010】
【表2】
表2:シリコマンガンにおける成分品質の変化
【0011】
【表3】
表3:スラグにおける成分品質の変化
上記表2及び表3から分かるように、実施例1で製造したシリコマンガン及びスラグの成分組成には、実質的に変化はなかった。焼却灰には、AsやHg等の有害な成分が含まれているが、もともと含まれている量が少ないので、精錬金属に悪影響を与えることはない。
一方、スラグ中に有害成分が固定化され、溶出等の問題がないか否かの試験を行うために、溶出試験を実施した。溶出操作は、環境庁告示第13号(昭和48年)に従い、また、分析は、JIS K0102に従って行った。分析結果を、以下の表4に示す。
【0012】
【表4】
表4:スラグの溶出試験
上記表4から、生成したスラグ中には、有害物質が封じ込められ、溶出等の問題が生じるおそれが実質上ないことが分かる。従って、焼却灰を配合してシリコマンガンを精錬した場合に、得られるスラグは、通常のシリコマンガンスラグと同様に、路盤材、ケーソン材、コンクリート骨材等の建設資材として使用することができる。従来の単なる焼却灰のみによる溶融処理では、減容化効果はある程度期待されるものの、焼却灰中の成分が有効に利用されることがなく、更に、成分調整のために、塩基成分や珪酸成分の添加が必要とされる場合が多い。このため、減量の効果は実際上ほとんど期待できない。これに対して、本発明の方法では、焼却灰中の珪酸成分や塩基成分が精錬用の原料としても利用されるので、減量化効果が生じる。しかも、その減容化率は、単なる焼却灰の溶融処理では、被処理焼却灰の容積に対して、20〜30%程度であるのに対して、本発明の方法では、生成スラグ量から見て、減容化率で70%程度、減量化率で60%となる。
【0013】
【発明の効果】
電気炉において金属の精錬を行うと同時に、焼却灰を処理することにより、生成する金属の成分に実質的に影響を与えることなく、焼却灰の減容化並びに減量化が達成できるとともに、焼却灰に含まれる有害物質が有効に無害化できる。また、焼却灰に含まれる成分を資源として有効に利用することができ、精錬工程の操業性、運転費用等の経済性の点で優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用できる電気炉の概略断面図である。
【符号の説明】
1:電気炉
2:電極
3:原料装入装置
5:金属取出し口
6:スラグ取出し口
7:ガス取出し口
Claims (1)
- 電気炉において、銑鉄又は合金鉄の精錬を行うと同時に、焼却灰を処理する方法であって、前記銑鉄又は合金鉄の精錬に使用する原料の1〜20重量%の量で、前記焼却灰を使用することを特徴とする方法。
Priority Applications (1)
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JP25226795A JP3732561B2 (ja) | 1995-09-29 | 1995-09-29 | 電気炉における合金鉄製造及び焼却灰の溶融処理の同時実施方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP25226795A JP3732561B2 (ja) | 1995-09-29 | 1995-09-29 | 電気炉における合金鉄製造及び焼却灰の溶融処理の同時実施方法 |
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JPH0987728A JPH0987728A (ja) | 1997-03-31 |
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1995
- 1995-09-29 JP JP25226795A patent/JP3732561B2/ja not_active Expired - Lifetime
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