以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る溝掘削機1(掘削装置)の側面図であり、図2は、溝掘削機1の正面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本発明に係る溝掘削機1の構造および掘削方法を説明するために便宜上示すものであり、溝掘削機1の使用態様などを限定するものではない。
この溝掘削機1は、地上面を移動可能なクローラ2を装着した下部走行体3と、この下部走行体3上に搭載された上部旋回体4(装置本体)と、この上部旋回体4に昇降自在に設けられたリーダー5と、このリーダー5から垂下され、地中に配置されるカッターポスト6(支持体)と、回転駆動装置7(チェーン駆動部)と、移動機構13Sと、を有している。図3は、本実施形態に係る溝掘削機1のカッターポスト6およびチェーン式カッター10の構造を示す模式的な側面図である。
カッターポスト6は、直方体形状からなる箱材であり、複数のカッターポスト6が上下に連結されている。回転駆動装置7は、油圧で駆動する駆動ローラー8と、アイドラローラー9(図3)と、を備えている。駆動ローラー8は、連結されたカッターポスト6の上端部に配置され、アイドラローラー9は、連結されたカッターポスト6の下端部に配置されている。駆動ローラー8とアイドラローラー9との間にチェーン式カッター10が周回移動可能なように掛け渡されている。回転駆動装置7は、チェーン11を周回方向DA(図3)に沿って周回移動させる。パワーユニット1Pは、回転駆動装置7に対して油圧源供給を行う。
図3に示すように、チェーン式カッター10は、エンドレス(無端状)のチェーン11と、そのチェーン11の外周側に配列された複数のカッタービットプレート50とを備えている。チェーン11は、カッターポスト6の外周上を所定の周回面に沿って所定の周回方向に移動可能なように、カッターポスト6に支持されている。なお、チェーン11の周回面とは、図3の紙面と平行な面であり、チェーン11の一方の側縁が周回時に描く軌跡を含む面である。また、周回移動するチェーン11の周回方向は、図3において矢印DA、DBで示されている。また、チェーン11の幅方向とは、チェーン11の周回面および周回方向とそれぞれ直交する方向であり、図3の紙面と直交する方向(図3の左右方向)に相当する。
カッタービットプレート50は、チェーン11の周回方向に沿って間隔をおいてチェーン11の外周面に固定された、複数の板状部材である。カッタービットプレート50は、複数の掘削ビット12(図2)(掘削刃)を備えている。掘削ビット12は、少なくともカッタービットプレート50の幅方向の両端部に配置され、地中の地山に対向する。掘削ビット12は、超硬チップからなる。カッタービットプレート50は、チェーン11と一体的に周回移動されることで地山を掘削する。
駆動ローラー8には、そのチェーン11のテンションを調整するためのテンション調整機構が備えられている。図3において、チェーン式カッター10は、駆動ローラー8の回転駆動力をうけて、カッターポスト6の前側部分では矢印DA方向(鉛直下方向)に移動し、カッターポスト6の後側部分では矢印DB方向(鉛直上方向)に移動するように、周回移動される。なお、アイドラローラー9はチェーン式カッター10のチェーン11に従動して回転する。また、図3に示すように、駆動ローラー8は駆動ローラー軸8Aを備え、アイドラローラー9はアイドラローラー軸9Aを備えている。
上部旋回体4には門型フレーム13(図2)が取り付けられており、この門型フレーム13に移動機構13S(支持体駆動部)が配置されている。移動機構13Sは、門型フレーム13の上部に配置された横行上シリンダ14と、門型フレーム13の下部に配置された横行下シリンダ15と、を備える。横行上シリンダ14と横行下シリンダ15とはそれぞれ平行に配置されている。
横行下シリンダ15の推力FPLによって、カッターポスト6を所定の進行方向(前方向)に沿って移動させ、地山に押し付けることができるようになっており、このとき横行上シリンダ14は、横行下シリンダ15の押圧方向と逆方向のシリンダ保持力を発生させるようになっている。
図1の16,17は、リーダー5を支持している一対のバックステイ(手前側のみ図示)である。なお、作業者が搭乗するキャビン18は上部旋回体4に搭載されている。
溝掘削機1は、地中に挿入されたカッターポスト6を水平方向に押圧しつつチェーン式カッター10の掘削ビット12を略垂直方向に移動させ、カンナで削る原理によって1パターン毎に掘削を行う。なお、ここでいう1パターンとは、チェーン式カッター10において周回方向に沿って設けられた掘削ビット12の1群によって掘削される領域を意味する。
なお、上記の横行下シリンダ15の推力FPLが不足すると、掘削横行速度が低下し地盤の掘削ができなくなる。また、一例として、本実施形態に示す溝掘削機1の横行下シリンダ15の定格推力FPLは539kNである。
ここにVb:接線速度(mm/sec)、Ve:掘削速度(mm/Hr)、Lp:全断面掘削1パターン長(mm)、tpx:1パターン当たりの切込み深さ(mm)とするとき、
Lp:tpx=Vb:Ve・・・(式1)
の関係が満たされる。式1から下記の式2が導かれる。
tpx=Ve×Lp/Vb・・・(式2)
したがって、式2から1パターン当たりの切込み深さtpxが求められる。
図4は、本実施形態に係る溝掘削機1のチェーン式カッター10の一部(10A)を示す正面図であり、図5は、チェーン式カッター10の一部(10A)を示す上面図である。図6は、溝掘削機1のチェーン式カッター10の一部(10B)を示す正面図であり、図7は、チェーン式カッター10の一部(10B)を示す側面図であり、図8は、チェーン式カッター10の一部(10B)を示す上面図である。
本実施形態に係るチェーン式カッター10は、図4に示す第1カッターユニット10Aと、図6に示す第2カッターユニット10Bとが、チェーン式カッター10の周回方向に沿って、交互に連結されることで構成されている。なお、第1カッターユニット10Aおよび第2カッターユニット10Bの連結態様はこれに限定されるものではなく、2つの第1カッターユニット10Aが連続的に連結されるとともに、その次に第2カッターユニット10Bが連結されるなどの態様でもよい。本実施形態では、第1カッターユニット10Aおよび第2カッターユニット10Bが、前述の掘削ビット12の1群を構成する。
第1カッターユニット10Aおよび第2カッターユニット10Bを構成するチェーン11は、チェーン11の幅方向に間隔をおいて配置された一対のリンク110Aまたはハーフリンク110Bが周回方向に沿って複数配置され、互いに連結されることで形成されている(図7参照)。本実施形態では、17個のリンク110A群の間に、1つのハーフリンク110Bが介在するように配置されている。隣接するリンク110Aまたはハーフリンク110Bは、固定ピン150(図7)によって互いに連結されている。このようなチェーン11について換言すれば、チェーン11は、幅方向に間隔をおいて配置される一対の無端状の帯体11A、11B(図6)と、帯体同士の間隔を一定に保持するように一対の帯体11A、11Bを互いに連結する固定ピン150と、を備えている。帯体11A、11Bの外周面が、チェーン11の外周面に相当する。帯体11A、11Bは、それぞれ周回方向に沿って隣接して配置された複数のリンク110A(ハーフリンク110B)と、隣接するリンク110A同士を結合する固定ピン150と、を備える。すなわち、固定ピン150は、幅方向に沿って隣接する帯体11A、11B同士を連結するとともに、周回方向に沿って隣接するリンク110A同士を連結する。
第1カッターユニット10Aは、チェーン式カッター10が地山Mを掘削する掘削幅W(図9参照)のうち、幅方向内側の領域を掘削する機能を備えている。第1カッターユニット10Aは、前述のチェーン11上に固定された、複数の第1カッタービットプレート50Aを備えている。本実施形態では、1つの第1カッターユニット10Aに対して、8つの第1カッタービットプレート50Aが配置されている。第1カッタービットプレート50Aは、カッタービットプレート50の一態様である。第1カッタービットプレート50Aは、チェーン11のリンク110A上に、複数(4つ)のシューボルトS1および不図示のナットによって固定されている(図4)。第1カッターユニット10Aの複数の第1カッタービットプレート50Aの幅方向の長さは、互いに異なるように設定されている。なお、一部の第1カッタービットプレート50A同士の幅は、同じ値に設定されてもよい。
第1カッタービットプレート50A上には、第1掘削ビット12Aが固定されている。本実施形態では、第1カッターユニット10Aの第1掘削ビット12Aの最大幅K(図4、図5)は、850mmに設定されている。図5に示すように、複数の第1カッタービットプレート50Aを周回方向DAに沿って見た場合、各第1カッタービットプレート50Aに備えられた第1掘削ビット12Aは、最大幅Kの幅方向全体に亘って連続的に配置されている。この結果、地山Mの掘削幅Wのうち、最大幅Kに対応した領域が、第1カッターユニット10Aによって掘削される。
図6〜図8を参照して、第2カッターユニット10Bは、チェーン式カッター10が地山Mを掘削する掘削幅W(図9参照)のうち、幅方向外側の領域を掘削する機能を備えている。
第2カッターユニット10Bは、前述のチェーン11上に固定された、複数の第2カッタービットプレート50Bを備えている。第2カッタービットプレート50Bは、カッタービットプレート50の一態様である。本実施形態では、1つの第2カッターユニット10Bが、3つの第2カッタービットプレート50Bを備えている。なお、図6の両端部に現れているカッタービットプレートは、隣接する第1カッターユニット10Aの第1カッタービットプレート50A(図4)である。第2カッタービットプレート50Bは、チェーン11のリンク110A上に、複数のシューボルトS1および不図示のナットによって固定される(図7)。
複数の第2カッタービットプレート50Bの幅方向の長さは、第1カッタービットプレート50Aの幅方向の長さとは僅かに異なるように設定されている。第2カッタービットプレート50B上には、第2掘削ビット12Bが固定されている。本実施形態では、第2掘削ビット12Bの最大幅L(図6、図8)は、1000mmに設定されている。図8に示すように、複数の第2カッタービットプレート50Bを周回方向DAに沿って見た場合、各第2カッタービットプレート50Bに備えられた第2掘削ビット12Bが、最大幅Lの幅方向の両端部に集約して配置されている。この結果、地山の掘削幅Wのうち、最大幅Lの両端部に対応した領域が、第2カッターユニット10Bによって掘削される。
更に、第2カッターユニット10Bは、スクラムプレート115を備えている。図6、図7に示すように、1つの第2カッタービットプレート50Bの周回方向DAの上下流側に、一対のスクラムプレート115が配置されている。スクラムプレート115は、複数(4つ)のシューボルトS1およびナットによってリンク110Aに固定されている。一対のスクラムプレート115は、第2カッタービットプレート50Bを挟むように配置され、スクラムプレート115の側縁と第2カッタービットプレート50Bの側縁とは互いに接している。
図9は、本発明の一実施形態に係る溝掘削機1のカッターポスト6および第2カッターユニット10Bの構造を示す模式的な断面図である。図10〜図13は、それぞれ、本実施形態に係る第2カッターユニット10Bの構造をより詳細に示す上面図、背面図、正面図および側面図である。なお、図11〜図13は、図10の第2カッターユニット10Bを、それぞれ矢印D101、D102およびD103に沿って見た図に相当する。
図9乃至図13を参照して、カッターポスト6は、一対の側壁60と、一対の側壁60を接続する一対の支持壁61と、各支持壁61にそれぞれ配置された一対の対向壁62(図9)と、一対のチェーン摺動部61S(図10)と、を備えている。
一対の支持壁61は、カッターポスト6のうち、第2カッターユニット10B(チェーン式カッター10)を周回移動可能に支持する壁面である。このため、支持壁61は、第2カッターユニット10Bのプレート本体501に対向して配置され左右方向(チェーン11の幅方向)に沿って延びている。一対の側壁60は、一対の支持壁61と直交する方向(前後方向)に沿って延びている。一対の側壁60は、一対の支持壁61の幅方向の両端側に配置され、後記の規制面6Hを備えている。一対の対向壁62(図9)は、支持壁61の左右方向の両端部から前方に突出するように配置された壁部である。一対の対向壁62の間に、チェーン11が収容されている。なお、図10では、対向壁62の図示を省略している。
一対のチェーン摺動部61Sは、一対の対向壁62の内側において、支持壁61に固定された板状部材である。チェーン摺動部61Sには、摩擦抵抗の少ない、摺動性の高い部材が用いられている。また、チェーン摺動部61Sには、硬質樹脂や耐摩耗金属等が用いられてもよい。なお、対向壁62およびチェーン摺動部61Sは、カッターポスト6の上下方向の全体に亘って長く延びており、チェーン11の周回運動をガイドする機能を備えている。
更に、カッターポスト6は、ガイド部65を備える。図9に示すように、ガイド部65は、左右一対の側壁60に前後方向に間隔をおいて2つずつ配置されている。なお、他の実施形態において、一方の側壁60に配置された2つのガイド部65は、一つの部材からなるものでもよい。ガイド部65は、第2カッターユニット10Bに備えられた後記の規制プレート502に当接するとともに第2カッターユニット10Bの周回移動をガイドする機能を備えている。なお、図9では、ガイド部65の外周面の形状を誇張して示している。すなわち、ガイド部65の外周面は、規制プレート502に向かって凸状の円弧形状からなる。この円弧形状が緩やかなものであり、実際のガイド部65の断面形状は、図10に示すように見るとほぼ矩形形状からなる。なお、ガイド部65にも、チェーン摺動部61Sと同様に、摩擦抵抗の少ない、摺動性の高い部材が用いられている。また、ガイド部65には、硬質樹脂や耐摩耗金属等が用いられてもよい。なお、ガイド部65について換言すれば、カッターポスト6は、互いに幅方向に間隔をおいて配置され、チェーン11の周回方向に沿って連続的に延びる一対の規制面6Hを備えている。本実施形態では、規制面6Hは、ガイド部65の外側面によって構成され、それぞれチェーン11の幅方向の外側(左右方向の外側)に面するように配置されている。
なお、本実施形態の側壁60について換言すれば、側壁60は、ベース面と、前記ベース面から幅方向外側に突出し、周回方向に沿って延びるとともに、規制面6Hを含むガイド部65(突出部)と、を備えている。図9および図10を参照して、チェーン11に固定される第2カッタービットプレート50Bは、プレート本体501と、一対の規制プレート502(規制部材)と、複数の補強リブ503(倒れ規制部材)と、前述の第2掘削ビット12Bと、を備える。
プレート本体501は、チェーン11の幅方向(左右方向)においてチェーン11よりも長く延びる板状部分であり、地山Mに対向する表面と、表面とは反対側の裏面とを備える。プレート本体501の表面の両端部には、第2掘削ビット12Bが固定されている。図10では、第2掘削ビット12Bの先端部に超鋼材料からなるビットチップ12B1が現れている。図13に示すように、ビットチップ12B1は、周回方向(上下方向)に間隔をおいて複数配置されている。プレート本体501の裏面(図10の後側面)は、チェーン11の外周面に当接し、支持される。プレート本体501には、4つのボルト穴STが開口されており、これらのボルト穴STに挿通されたシューボルトS1(図7)および不図示のナットによって、第2カッターユニット10Bがチェーン11に締結される。
一対の規制プレート502は、左右方向(幅方向)においてチェーン11を挟んでその両側の位置に配置されプレート本体501の裏面から延びている。規制プレート502は、チェーン11および第2カッターユニット10Bの周回移動時に、カッターポスト6のガイド部65に当接または摺接することで、第2カッターユニット10Bが周回方向(図9および図10では紙面と直交する上下方向)に沿って延びる軸線回りに回転することを規制する。本実施形態では、一対の規制プレート502は、左右方向においてカッターポスト6を挟むように配置され、左右方向に沿ってガイド部65に当接する。このため、規制プレート502は、チェーン11の周回方向の任意の位置においてカッターポスト6の規制面6Hに当接可能な被規制面502Hをそれぞれ含む。当該被規制面502Hは、それぞれ規制面6Hに対して幅方向の外側に対向して配置されている(図9)。なお、図3に示すように、上端側および下端側のカッターポスト6には、駆動ローラー8およびアイドラローラー9が配置されている。このため、チェーン式カッター10の周回に伴って、規制プレート502と駆動ローラー8の駆動ローラー軸8Aおよびアイドラローラー9のアイドラローラー軸9Aとの干渉を防止するために、規制プレート502の先端部は、駆動ローラー軸8Aおよびアイドラローラー軸9Aに対して所定の間隔をおいて配置されている(図9)。この結果、図9の間隔hは、駆動ローラー軸8Aおよびアイドラローラー軸9Aの軸径よりも大きくなる。
複数の補強リブ503は、規制プレート502の基端部に配置され、チェーン11の周回方向と直交する断面における、プレート本体501に対する規制プレート502の倒れを規制する。なお、図9では、1つの規制プレート502の基端部において、左右2つの側面にそれぞれ補強リブ503が配置されているが、図10に示すように、規制プレート502の左右の側面のうちの一方に、補強リブ503が配置されてもよい。この場合、図11に示すように、上下方向に間隔をおいて複数の補強リブ503が配置されることが望ましい。補強リブ503の数は、これらに限定されるものではない。また、補強リブ503は、規制プレート502と一体または別体からなるものでもよい。
本実施形態では、第2カッターユニット10Bの第2カッタービットプレート50Bが、図9〜図13に示すような構造を備えている。一方、第1カッターユニット10Aの第1カッタービットプレート50Aは、図9、図10のうち、規制プレート502および補強リブ503を備えていない。すなわち、第1カッタービットプレート50Aの裏面は、左右方向に沿って平坦な形状を備えている。この場合も、上記と同様に、4本のシューボルトS1およびナットによって、第1カッタービットプレート50Aがチェーン11に固定される。
図20は、本実施形態に係る溝掘削機1と比較される他の溝掘削機のカッターポスト6Zおよびカッターユニット10Zの上面図である。当該溝掘削機は、本実施形態に係る第2カッターユニット10B(図9)の規制プレート502、補強リブ503およびカッターポスト6(図9)のガイド部65を取り外した構成に相当する。以下に、図20に示される溝掘削機の課題について説明する。なお、図20では、本実施形態に係るカッターポスト6および第2カッターユニット10Bと同じ機能、構造を備える部材については、図9と同じ符号を付している。
カッターユニット10Zは、本実施形態に係る第2カッターユニット10Bと同様に、地山Mの掘削幅W(図20)のうち、幅方向外側の領域を掘削する機能を備えている。従来、地中に止水、基礎用ソイルセメント壁等の連続壁を形成するためなどに用いられる掘削装置では、掘削幅Wは850mm以内に設定されることが多かった。一方、近年、このような連続壁を土止め用壁、基礎用壁に加え、本壁としての採用することが期待されており、掘削幅Wの拡大が求められている。
図20に示すように、カッターポスト6Zの幅dが固定されたまま、掘削幅Wが増大されると、カッターユニット10Zの第2カッタービットプレート50Bの姿勢が不安定となりやすい。第2カッタービットプレート50Bの一対の第2掘削ビット12Bが地山Mから受ける反力Rに差があると、第2カッタービットプレート50Bには、図20の矢印DSで示すような回転モーメント(チェーン式カッター10の周回移動方向と直交する断面において第2カッタービットプレート50Bが回転するようなモーメント)が付与される。また、第2カッタービットプレート50Bがチェーン11とともにカッターポスト6Zの周囲を移動すると、第2掘削ビット12Bが地山Mに接触する接触抵抗によって、第2カッタービットプレート50Bには、図6の矢印DTで示すような回転モーメント(チェーン式カッター10Zの周回移動方向およびチェーン11の幅方向を含む平面において第2カッタービットプレート50Bが回転するようなモーメント)が付与される。このような回転モーメントが第2カッタービットプレート50Bに付与されると、第2カッタービットプレート50Bとチェーン11とを固定しているシューボルトS1(図7)に大きなせん断力が掛かり、シューボルトS1の緩み、外れ、破断などが発生しやすくなる。なお、このような回転モーメントは、第1カッタービットプレート50A(図4)よりも幅方向の長さが大きく設定された第2カッタービットプレート50B(図6)において顕著に発生する。
一方、図20において、第2カッタービットプレート50Bの姿勢を安定させるために、カッターポスト6の幅dを拡大し、カッターポスト6を図20の二点鎖線で示すような形状とすることが考えられる。しかしながら、この場合、第2掘削ビット12Bの裏側(第2カッタービットプレート50Bの両端部の裏側)にカッターポスト6が配置されることとなる。この場合、第2掘削ビット12Bによって掘削された地山の土砂が、矢印DJで示すように流動することが妨げられる。この結果、第2カッタービットプレート50Bの周囲に大きな圧力がかかってしまい、チェーン式カッター10の周回移動や前方への進行が困難となる。換言すれば、図20に示すように、カッターポスト6の幅dに対して、第2カッタービットプレート50Bの第2掘削ビット12Bの最大幅が大きく設定されている場合には、掘削された土砂の流動(矢印DJ)が円滑となり、広幅の掘削幅Wにおける掘削作業は円滑に実行可能とされる。なお、本発明者は、複数の実験を重ねた結果、第2カッタービットプレート50Bの一対の第2掘削ビット12B同士の最大幅L(図6)が1000mm以上の場合、L≧d×2.5の関係が満たされていることによって、上記の効果が大きく発現されることを知見した。一方、このような構造が採用された場合には、前述のように、第2カッタービットプレート50Bに係る回転モーメントおよびシューボルトS1へのせん断力が問題となる。
このような問題を解決するために、本実施形態では、第2カッタービットプレート50Bが図9〜図13に示すような構造を備えている。そして、地山Mの掘削中に、第2掘削ビット12Bが地山から受ける反力R(図20)によって、第2カッタービットプレート50Bが周回方向(図9の紙面と直交する方向)に沿って延びる軸線回りに回転するようなモーメント(図20の矢印DS)が発生する場合であっても、一対の規制プレート502がカッターポスト6のガイド部65に当接することによって、第2カッタービットプレート50Bの回転が規制される。このため、第2カッタービットプレート50Bとチェーン11とを固定するシューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。この結果、シューボルトS1の緩み、外れおよび破損などを抑止することができる。
また、図9において、一対の規制プレート502およびガイド部65は、それぞれチェーン11の周回方向に沿って長く延びるような形状を備えている。このため、地山Mの掘削中に、第2カッタービットプレート50Bがプレート本体501と平行な面内において回転するようなモーメント(図6の矢印DT)が発生した場合であっても、規制プレート502とガイド部65との接触によって、カッタービットプレート50の回転が規制される。このため、カッタービットプレート50を固定するシューボルトS1にかかるせん断力を更に小さくすることが可能となる。
また、本実施形態では、硬質樹脂や耐摩耗金属などからなるガイド部65によって、第2カッタービットプレート50Bの回転規制および周回移動が安定して実現される。また、ガイド部65がカッターポスト6の支持壁61側に配置される場合と比較して、溝掘削機1のチェーン11の周辺の構造が複雑になることがない。このため、掘削された地山Mの土砂がチェーン11の周辺で滞留し、チェーン11および第2カッタービットプレート50B(カッタービットプレート50)の周回移動が妨げられることが抑止される。
また、図9のように、一対の規制プレート502は、幅方向においてカッターポスト6を挟むように配置され、幅方向に沿ってガイド部65に当接する。この場合、第2掘削ビット12Bが地山Mから受ける反力Rと交差する方向に沿って、規制プレート502がガイド部65に当接する。このため、第2カッタービットプレート50Bにかかる負荷を低減しながら、第2カッタービットプレート50Bの回転を規制することができる。また、上記の構成では、規制プレート502とカッターポスト6との当接部を地山Mの掘削部分から離れた位置に配置することができる。特に、図9では、地山Mの土砂が規制プレート502とガイド部65との当接部に進入する(図20の矢印DJ参照)ことを、規制プレート502自身が抑止する形状を備えている。このため、当接部に高圧の土砂が介在し回転規制機能、ガイド機能が妨げられることが抑止される。
また、本実施形態では、図6、図7で示すように、各第2カッタービットプレート50Bが、一対のスクラムプレート115によって密着され挟まれるように配置されている。このため、第2カッタービットプレート50Bに対して、図6の矢印DTで示すような回転モーメントが更に発生しにくい。
また、本実施形態では、図9に示すように、ガイド部65の外周面が緩やかな円弧形状(円弧面、半球面)を備えている。このため、規制プレート502とガイド部65との当接部において平面同士が接触する場合と比較して、規制プレート502とガイド部65との摺動抵抗が小さくなる。このため、規制プレート502がガイド部65に当接しながら、チェーン11の周回移動がスムーズに実現される。なお、ガイド部65の外周面は、円弧形状に限定されるものではなく、他の曲線形状であってもよい。
更に、本実施形態では、規制プレート502の基端部に補強リブ503が配置されている。このため、プレート本体501に対する規制プレート502の倒れが抑止されるため、規制プレート502とカッターポスト6との接触部が安定して維持される。この結果、周回方向に沿って延びる軸線回りに第2カッタービットプレート50Bが回転することが安定して規制される。
更に、図6の第2掘削ビット12Bの最大幅Lと、図20のカッターポスト6の幅dとの間に、L≧d×2.5の関係が満たされていることによって、地中において広幅の領域を掘削する場合でも、チェーン11の周回移動およびカッターポスト6の進行を安定して実行しながら、周回方向に沿って延びる軸線回りに第2カッタービットプレート50Bが回転することが規制される。
また、本実施形態に係る掘削方法は、所定のカッターポスト6の外周面において、所定の周回面に沿って所定の周回方向に移動可能なように、カッターポスト6に支持される無端状のチェーン11と、表面と裏面とを含むプレート本体501と、前記周回面および前記周回方向とそれぞれ直行するチェーン11の幅方向において少なくともプレート本体501の表面の両端部に配置され地中の地山Mに対向する複数の第1掘削ビット12Aおよび第2掘削ビット12Bと、をそれぞれ備え、チェーン11の表面に周回方向に沿って間隔をおいて固定された複数の第1カッターユニット10Aおよび第2カッターユニット10Bと、を、一体的に周回移動させることで、地中に連続溝を形成する掘削方法である。当該掘削方法では、チェーン11の幅方向においてチェーン11を挟んでその両側の位置に配置されプレート本体501の裏面から延びる一対の規制プレート502が、チェーン11およびカッタービットプレート50の周回移動に伴ってカッターポスト6に当接することで、第2カッターユニット10Bが周回方向に沿って延びる軸線回りに回転することを規制しながら、第2掘削ビット12Bによって地山Mを掘削する。
更に、上記の掘削方法では、規制プレート502の基端部に配置され規制プレート502とプレート本体501とを接続する補強リブ503によって、周回方向と直交する断面におけるプレート本体501に対する規制プレート502の倒れを規制しながら、第2掘削ビット12Bによって地山Mを掘削する。
このような掘削方法によれば、周回方向に沿って延びる軸線回りに第2カッタービットプレート50Bが回転することが規制される。このため、第2カッタービットプレート50Bを固定するシューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。
また、当該掘削方法では、幅方向におけるカッターポスト6の幅をd、第2カッタービットプレート50Bの両端部に配置された第2掘削ビット12B同士の間の幅方向における間隔をLとした場合、L≧d×2.5の関係が満たされるように、カッターポスト6および第2カッタービットプレート50Bのそれぞれの幅と、第2掘削ビット12Bの配置とが設定されている。
このような掘削方法によれば、地山に対して広幅の領域を掘削する場合でも、チェーン11の周回移動およびカッターポスト6の進行を安定して実行しながら、シューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。
次に、本発明の第2実施形態に係る溝掘削機およびこれを用いた地山の掘削方法について説明する。なお、本実施形態は、先の第1実施形態と比較して第2カッタービットプレート50Bの構造において主に相違するため、当該相違点を中心に説明し、その他の共通する点の説明を省略する。また、以下の説明では、先の第1実施形態に係る部材と同じ構造および機能を備える部材については同じ符号を付して説明する。
図14は、本実施形態に係る溝掘削機1のカッターポスト6およびチェーン11の断面図である。図15は、溝掘削機1のチェーン11の一部を拡大した正面図であり、図16は、溝掘削機1のチェーン11の一部を拡大した側面図である。図17は、溝掘削機1のチェーン11および第2カッタービットプレート50Bの断面図である。
図14を参照して、カッターポスト6は、一対の側壁60と、一対の側壁60を接続する一対の支持壁61と、一対の対向壁62と、摺動部63と、カッターポスト凸部64と、を備える。なお、図14では、カッターポスト6の前端側の端部を拡大して示しているが、カッターポスト6の後端側にも、図14と同様の支持壁61、対向壁62、摺動部63およびカッターポスト凸部64が配置されている。
支持壁61は、カッターポスト6のうち、チェーン式カッター10を支持する壁面である。一対の対向壁62は、支持壁61の左右方向の両端部から前方に突出するように配置された壁部である。一対の対向壁62の間に、チェーン11が収容されている。一対の摺動部63は、一対の対向壁62の内側において、支持壁61に固定された板状部材である。摺動部63には、摩擦抵抗の少ない、摺動性の高い部材が用いられている。カッターポスト凸部64は、一対の摺動部63の間において支持壁61から突出した突起部である。カッターポスト凸部64は、一対のリンク110Aの間に配置されている。なお、対向壁62、摺動部63およびカッターポスト凸部64は、カッターポスト6の上下方向の全体に亘って長く延びており、チェーン11の周回運動をガイドする機能を備えている。
図14および図17に示すように、チェーン11の周回移動方向と直交する断面で見た場合、一対のリンク110Aおよび固定ピン150は、略H型形状を備えている。一対のリンク110Aは、それぞれ、リンク凸部110Sと、リンク摺動面110Tと、を備えている。リンク凸部110Sは、リンク110Aのうち対向壁62よりも高く突出した領域である。リンク凸部110Sの先端面(外周面)には、プレート支持面Xが形成されている。プレート支持面Xは、カッタービットプレート50を支持する機能を備えている。リンク摺動面110Tは、リンク110Aの基端面であり、チェーン11の周回移動に伴って、摺動部63と摺動する。
図15、図16では、チェーン11のうち、1つのハーフリンク110Bの両側にリンク110Aが配置された領域が拡大して示されている。前述のように、リンク110Aおよびハーフリンク110Bは、互いに、固定ピン150によって連結されている。このため、リンク110Aおよびハーフリンク110Bの両端部には、それぞれ、固定ピン150が挿入されるピン挿入部SPが形成されている(図16)。更に、リンク110Aは、前述のプレート支持面Xと、リンク穴部SKと、シューボルト用穴部SHと、を備える。リンク穴部SKは、チェーン11の周回方向において一対のピン挿入部SPの間に開口されている。シューボルト用穴部SHは、リンク穴部SKからプレート支持面Xまで延びる、ボルト締結用の穴部である。
一方、図17を参照して、チェーン11に固定される第2カッタービットプレート50Bは、プレート本体501と、プレート中央凸部505(内側突起部)と、プレートサイド凸部506(外側突起部)と、前述の第2掘削ビット12Bと、を備える。
プレート本体501は、チェーン11の幅方向(左右方向)においてチェーン11よりも長く延びる板状部分であり、地山に対向する表面と、表面とは反対側の裏面とを備える。プレート本体501の表面の両端部には、第2掘削ビット12Bが固定されている。プレート本体501の裏面(図17の後側面)には、被支持面Yが形成されている。被支持面Yは、左右方向に延びる平面であって、チェーン11のプレート支持面X(外周面)に当接し、支持される。プレート中央凸部505は、被支持面Yの左右方向の中央部から突出した突起部である。プレートサイド凸部506は、チェーン11の幅方向(左右方向)においてプレート中央凸部505に対向するように被支持面Xから突出した一対の突起部である。一対のプレートサイド凸部506は、それぞれ、プレート中央凸部505に対して所定の間隔をおいて配置されている。プレートサイド凸部506は、プレート中央凸部505との間で一対のリンク110Aを幅方向において挟むように配置されている。
図15を参照して、ハーフリンク110Bよりも上側の一対のリンク110Aの周囲には、第2カッタービットプレート50Bの装着位置が、一点鎖線で示されている。第2カッタービットプレート50Bがチェーン11に装着されるにあたって、プレート中央凸部505は、一対のリンク110Aの間の空間に挿入される。この際、プレート中央凸部505の外側面505Aは、一対のリンク110Aの周回方向に沿って延びる内側面に対して幅方向に向かって面接触する。一方、一対のプレートサイド凸部506は、プレート中央凸部505とともに一対のリンク110Aを幅方向(左右方向)に沿って挟持するとともに、一対のプレートサイド凸部506の内側面506Aが、一対のリンク110Aの周回方向に沿って延びる外側面に対してそれぞれ幅方向に向かって面接触する。この結果、チェーン11の幅方向(左右方向)に沿って、一対のプレートサイド凸部506と、一対のリンク110Aと、プレート中央凸部505とが、密接するように配置される。更に、図17に示すように、第2カッタービットプレート50Bの被支持面Yが、チェーン11のプレート支持面Xによって支持される。
一対のリンク110Aに第2カッタービットプレート50Bが装着されると、図17に示すように、カッタービットプレート50のボルト穴STにシューボルトS1が挿通される。シューボルトS1の先端は、チェーン11のシューボルト用穴部SHを貫通して、リンク穴部SKに露出する。作業者によってチェーン11の側方からリンク穴部SKに挿入されたナットS2が、シューボルトS1の先端部に装着、固定されることで、第2カッタービットプレート50Bがチェーン11に固定される。前述のように、第2カッタービットプレート50Bは、それぞれ4本のシューボルトS1およびナットS2によってチェーン11に固定される(図15)。このとき、シューボルトS1およびナットS2は、チェーン11(帯体11A、11B)の外周面とプレート本体501の裏面とが互いに圧接するように、チェーン11と第2カッタービットプレート50Bとをチェーン11の周回面と平行かつチェーン11の幅方向と直交する方向(前後方向)に沿って締結する。
なお、本実施形態では、第2カッターユニット10Bの第2カッタービットプレート50Bが、図17に示すような構造をもってチェーン11に固定される。一方、第1カッターユニット10Aの第1カッタービットプレート50Aは、図17のうち、プレート中央凸部505およびプレートサイド凸部506を備えていない。すなわち、第1カッタービットプレート50Aの裏側には、左右方向に沿って平坦な被支持面Yが形成されている。この場合も、上記と同様に、4本のシューボルトS1およびナットS2によって、第1カッタービットプレート50Aがチェーン11に固定される。この際、チェーン11のプレート支持面Xによって、第1カッタービットプレート50Aの被支持面Yが支持される。
先の第1実施形態において図20を用いて説明したように、カッターポスト6の幅dに対して、第2カッタービットプレート50Bの第2掘削ビット12Bの最大幅が大きく設定されている場合には、掘削された土砂の流動(矢印DJ)が円滑となり、広幅の掘削幅Wにおける掘削作業は円滑に実行可能とされる。そして、第2カッタービットプレート50Bの一対の第2掘削ビット12B同士の最大幅L(図6)が1000mm以上の場合、L≧d×2.5の関係が満たされていることによって、上記の効果が大きく発現される。一方、このような構造が採用された場合には、前述のように、第2カッタービットプレート50Bに係る回転モーメントおよびシューボルトS1へのせん断力が問題となる。
このような問題を解決するために、本実施形態では、第1実施形態において説明した規制プレート502(図9)の構造に加え、第2カッタービットプレート50Bが図15〜図17に示すような構造を備えている。すなわち、第2カッタービットプレート50Bが、地山Mを掘削しながら、チェーン11とともにカッターポスト6の周囲を周回する際に、プレート中央凸部505の外側面505Aがリンク110Aの内側面に密着している。更に、一対のプレートサイド凸部506の内側面506Aが、リンク110Aの外側面に密着している。地山の掘削中に、第2掘削ビット12Bが地山から受ける反力Rによって、第2カッタービットプレート50Bがプレート本体501と平行な面内において回転するようなモーメント(図6の矢印DT)が発生しやすい場合であっても、プレート中央凸部505の外側面505Aとリンク110A(一対の帯体11A、11B)の内側面との接触によって、カッタービットプレート50の回転が規制される。このため、カッタービットプレート50を固定するシューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。この結果、シューボルトS1の緩み、外れおよび破損などを抑止することができる。換言すれば、本実施形態では、チェーン式カッター10の周回移動方向と直交する断面において第2カッタービットプレート50Bの回転を抑止するように、プレート中央凸部505の外側面505Aがリンク110Aの内側面に密着し、一対のプレートサイド凸部506の内側面が、リンク110Aの外側面に密着している。
なお、本実施形態においても、図6、図7で示すように、各第2カッタービットプレート50Bが、一対のスクラムプレート115によって密着され挟まれるように配置されている。このため、第2カッタービットプレート50Bに対して、図6の矢印DTで示すような回転モーメントが更に発生しにくい。
また、本実施形態では、図17に示すように、プレート中央凸部505とリンク110Aとの当接部、ならびにプレートサイド凸部506とリンク110Aとの当接部が、それぞれ、前後方向および上下方向に所定の長さをもって面状に設定されている(面接触)。このため、第2カッタービットプレート50Bに対して、図20の矢印DSで示すような回転モーメントが発生しにくい。この結果、シューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となり、シューボルトS1の緩み、外れ、破断などの発生が更に抑止される。
また、図15で示すように、第2カッタービットプレート50Bのプレート中央凸部505は、一対のリンク110Aの間の空間に嵌りこむ形状に設定されている。このため、作業者は第2カッタービットプレート50Bをチェーン11の所定の位置に容易に装着することができる。また、プレート中央凸部505がチェーン11のリンク110A同士の間の空間に嵌りこみ、一対のプレートサイド凸部506が一対のリンク110Aの外側に嵌りこむため、チェーン11の形状が規制されチェーン11の緩みが抑止される。この際、プレート中央凸部505のうち一対の外側面505Aと直交する端面は、固定ピン150に対向して配置される(図15)。
更に、本実施形態では、掘削ビット12を備えるカッタービットプレート50が、チェーン11に直接装着される。このため、カッタービットプレート50とチェーン11との間に、他の位置決め部材が配置される場合と比較して、チェーン式カッター10の重量を小さくすることが可能となり、周回移動中にチェーン11にかかる負荷を低減することができる。
更に、本実施形態においても、図6の第2掘削ビット12Bの最大幅Lと、図13のカッターポスト6の幅dとの間に、L≧d×2.5の関係が満たされていることによって、地中において広幅の領域を掘削する場合でも、チェーン11の周回移動およびカッターポスト6の進行を安定して実行しながら、シューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。
なお、上記のように、本実施形態に係る第2カッタービットプレート50Bは、所定の幅方向に間隔をおいて配置される一対の無端状の帯体11A、11Bと、帯体11A、11B同士の間隔を一定に保持するように一対の帯体11A、11Bを互いに連結する固定ピン150と、を備え、所定のカッターポスト6の外周上を所定の周回面に沿って所定の周回方向に移動可能なようにカッターポスト6に支持される無端状のチェーン11の外周面に固定される。そして、第2カッタービットプレート50Bは、チェーン11の周回面およびチェーン11の周回方向とそれぞれ直交するチェーンの幅方向に沿ってチェーン11よりも長く延び、表面と裏面とを含むプレート本体501と、プレート本体501の表面において少なくとも幅方向の両端部に配置され地中の地山に対向する複数の第2掘削ビット12Bと、プレート本体501の裏面から突出し一対の帯体11A、11Bの間の空間に挿入される突起部であって、一対の帯体11A、11Bの周回方向に沿って延びる内側面にそれぞれ面接触する一対の外側面505Aを含むプレート中央凸部505と、を備えている。そして、複数のシューボルトS1、ナットS2によってチェーン11の周回面と平行かつチェーン11の幅方向と直交する方向に沿って、第2カッタービットプレート50Bがチェーン11に締結される。この結果、チェーン11の外周面とプレート本体501の裏面とが互いに圧接する。
更に、本実施形態に係る第2カッタービットプレート50Bは、プレート中央凸部505との間で一対の帯体11A、11Bをチェーン11の幅方向において挟むようにプレート本体501の裏面から突出した一対の突起部であって、一対の帯体11A、11Bの周回方向に沿って延びる外側面に面接触する内側面506Aをそれぞれ含む一対のプレートサイド凸部506を更に備える。
また、本実施形態に係る掘削方法は、所定の幅方向に間隔をおいて配置される一対の無端状の帯体11A、11Bと、帯体同士の間隔を一定に保持するように一対の帯体11A、11Bを互いに連結する固定ピン150と、を備え、上記幅方向と直交する所定の周回面に沿って所定の周回方向に移動する無端状のチェーン11と、表面と裏面とを含むプレート本体501と、少なくともプレート本体501の表面の両端部に配置され地中の地山に対向する複数の第2掘削ビット12Bと、をそれぞれ備え、チェーン11の外周面にチェーンの周回方向に沿って間隔をおいて固定された複数の第2カッタービットプレート50Bと、を所定のカッターポスト6回りに一体的に周回移動させることで、地中に連続溝を形成する掘削方法である。当該掘削方法は、準備工程と、掘削工程とを含む。準備工程では、第2カッタービットプレート50Bのプレート本体501の裏面から突出するプレート中央凸部505が一対の帯体11A、11Bの間の空間に進入し、プレート中央凸部505の周回方向に沿って延びる一対の外側面505Aが一対の帯体11A、11Bの周回方向に沿って延びる内側面にそれぞれ面接触するように、第2カッタービットプレート50Bをチェーン11に嵌め込み、一対の帯体11A、11Bの外周面とプレート本体501の裏面とが互いに圧接するように、チェーン11と第2カッタービットプレート50Bとを周回面と平行かつ幅方向と直交する方向に沿って複数のシューボルトS1およびナットS2によって締結する。掘削工程では、チェーン11をカッターポスト6回りに周回移動させるとともに、カッターポスト6を所定の進行方向に沿って移動させ、第2掘削ビット12Bが地山から受ける反力Rによって第2カッタービットプレート50Bがプレート本体501と平行な面内で回転することを、プレート中央凸部505の外側面505Aと一対の帯体11A、11Bの内側面との接触によって規制しながら、第2掘削ビット12Bによって地山を掘削する。
更に、上記の準備工程では、プレート中央凸部505に対して幅方向の両側に間隔をおいてプレート本体501の裏面から突出する一対のプレートサイド凸部506が、プレート中央凸部505との間で一対の帯体11A、11Bを幅方向において挟み、かつ、一対のプレート中央凸部505の周回方向に沿って延びる内側面505Aが一対の帯体の周回方向に沿って延びる外側面にそれぞれ面接触するように、第2カッタービットプレート50Bをチェーン11に嵌め込み、チェーン11と第2カッタービットプレート50Bとを複数のシューボルトS1によって締結する。また、掘削工程では、第2掘削ビット12Bが地山から受ける反力Rによって第2カッタービットプレート50Bがプレート本体501と平行な面内で回転することを、プレートサイド凸部506の一対の内側面506Aと一対の帯体11A、11Bの外側面との接触によって更に規制しながら、第2掘削ビット12Bによって地山を掘削する。
このような掘削方法によれば、地山の掘削中に第2カッタービットプレート50Bに付与されるモーメントであって、第2カッタービットプレート50Bがチェーン11の周回方向およびチェーン11の幅方向を含む平面において回転するようなモーメントを小さくすることができる。このため、第2カッタービットプレート50Bを固定するシューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。
また、当該掘削方法では、幅方向におけるカッターポスト6の幅をd、第2カッタービットプレート50Bの両端部に配置された第2掘削ビット12B同士の間の幅方向における間隔をLとした場合、L≧d×2.5の関係が満たされるように、カッターポスト6および第2カッタービットプレート50Bのそれぞれの幅と、第2掘削ビット12Bの配置とを設定することを特徴とする。
このような掘削方法によれば、地山に対して広幅の領域を掘削する場合でも、チェーン11の周回移動およびカッターポスト6の進行を安定して実行しながら、シューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となる。
以上、本発明の各実施形態に係る溝掘削機1およびこれを用いた地山の掘削方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の第1実施形態では、図9に示すように、ガイド部65の外周面が円弧形状(曲線形状)からなる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ガイド部65の外周面が平坦面からなり、ガイド部65と接触する規制プレート502の側面に上記のような円弧形状が形成される態様でもよい。また、ガイド部65と同様の形状を備えた突起部が、規制プレート502側に配置され、当該突起部がカッターポスト6の側壁60に直接当接する態様でもよい。すなわち、第2カッタービットプレート50Bの規制プレート502とカッターポスト6とが当接する当接部において、規制プレート502およびカッターポスト6のうちの少なくとも一方が、他方に向かって凸状の曲線形状(円弧形状)を備えていることが望ましい。
また、図18は、本発明の変形実施形態に係る溝掘削機のカッターポスト6Mおよびチェーン式カッター10Mの断面図である。図18に示すように、本変形実施形態では、プレート本体501の裏面から一対の規制プレート507が延びている。一対の規制プレート507は、チェーンを挟むように配置される。規制プレート507の先端部は、半球形状を備えている。また、規制プレート507の基端部には、複数の補強リブ508が配置されている。規制プレート507は、被規制面507Hを備えている。
一方、カッターポスト6Mは、側壁60に配置された一対のガイド部66(突出部)を備えている。ガイド部66は、規制面66Hを備えている。なお、図18では、周回移動における往路と復路とが示されているため、ガイド部66は二対現れている。チェーン式カッター10Mに対向する一対のガイド部66は、それぞれ一対の側壁60からチェーン11の幅方向に沿って延びるように配置されている。ガイド部66は、規制面66Hを備えている。そして、規制プレート507の被規制面507Hは、チェーン11の周回面と平行であってチェーン11の幅方向と直交する方向(前後方向)に沿ってガイド部66の規制面66Hに当接する。
このような構成では、カッタービットプレート50Mが地山Mから受ける反力R(図20)の方向と、ガイド部66に対する規制プレート507の当接方向とが略平行に設定される。このため、周回方向に沿って延びる軸線回りにカッタービットプレート50Mが回転することがより安定して規制される。
(2)また、上記の各実施形態では、第1カッタービットプレート50Aが、第2カッタービットプレート50Bのような規制プレート502、補強リブ503を備えていない態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1カッタービットプレート50Aにおいても、規制プレート502、補強リブ503のような形状を備えることで、第1カッタービットプレート50Aの回転を規制することができる。
(3)また、上記の第2実施形態では、第2カッタービットプレート50Bが、プレート中央凸部505およびプレートサイド凸部506を備える態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第2カッタービットプレート50Bは、プレート中央凸部505のみを備えるものでもよく、一対のプレートサイド凸部506のみを備えるものでもよい。また、図19は、本発明の変形実施形態に係るカッタービットプレート50Mがチェーン11に固定された様子を示す断面図である。本変形実施形態では、先の実施形態の第2カッタービットプレート50Bと比較して、プレート中央凸部505の代わりに、一対のプレート内側凸部509(内側突起部)が配置されている点で相違する。このような場合も、一対のプレート内側凸部509の外側面が、リンク110Aの内側面に対してチェーン11の周回方向に沿って当接(面接触)する。このため、カッタービットプレート50Mに対して、図6の矢印DTで示すような回転モーメントが発生しにくい。このため、シューボルトS1にかかるせん断力を小さくすることが可能となり、シューボルトS1の緩み、外れ、破断などの発生が抑止される。