JP3835351B2 - 溝掘削方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に止水、基礎用ソイルセメント壁等の連続壁を形成する溝掘削方法および溝掘削機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地中連続溝施工に用いられる溝掘削機の一般的な構成を図5に示す。
【0003】
同図において、溝掘削機50は、地上を走行するためのクローラを装着した下部走行体51と、この下部走行体51上に搭載される上部旋回体に門型フレーム52を備えている。この門型フレーム52には、図示しない一対の横行上シリンダおよび横行下シリンダが上下に配置されており、リーダ53を地面と平行な横方向にスライドさせるようになっている。
【0004】
リーダ53にはカッターポスト54が垂下され、このカッターポスト54をガイドとしてチェーン式カッター55が回転するようになっている。なお、リーダ53は図示しない昇降シリンダによって昇降させることができるようになっている。
【0005】
上記カッターポスト54は、連結された長尺の箱形フレームで構成されており、その上端部に設けられた回転駆動装置によって駆動輪54aが回転する。この駆動輪54aとカッターポスト54の下端部に設けられた遊動輪54bとの間に上記チェーン式カッター55のエンドレスチェーン56が掛け渡されており、このチェーン56の外周側に多数の掘削ビット57が配列されている。
【0006】
上記チェーン式カッター55を矢印A方向に回転させつつ地中でカッターポスト54を横方向に移動させることにより、その進行方向に溝を掘削する。
【0007】
図6は、掘削ビット57と地盤との関係を示したものである。
【0008】
同図において、エンドレスチェーン56の外周側に固定されたビットプレート57aに掘削ビット57が固定されており、この掘削ビット57はビットプレート57aから突設されるビット本体57bと、このビット本体57bの先端部に設けられる耐摩耗性に優れた超硬チップ57cとから構成されている。なお、超硬チップ57cは、ビット本体57bの先端部において上下両側に取り付けられている。また、58は掘削ビット57によって掘削される地山端面を示している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来、超硬チップ57cのサイズ、特に奥行き長さLについては、主としてビット本体57bに対して確実に接着できることを目的として決定されている。
【0010】
本来、奥行長さLは、切込深さSに応じて決定することが好ましいが、その切込深さSはチェーン式カッター56の回転速度やカッターポストの移動速度等の条件等によって変化する。したがって、現状では奥行長さLに余裕を持たせた超硬チップ57cを使用しているが、掘削に供せられない部分が生じてコスト高となっていた。
【0011】
一方、市販の超硬チップ57cをビット本体57bに取り付けて使用する場合には、その超硬チップ57cによる掘削能力がフルに発揮できるように、チェーン56上に配列される掘削ビット57の配置を決定する必要がある。
【0012】
また、既存の溝掘削機であって超硬チップ57cや掘削ビット57の条件について変更する余地がないものでは、最適な掘削が得られるようにチェーン式カッターの回転速度やカッターポストの移動速度を決定する必要がある。
【0013】
このように、効率の良い溝掘削を行う上で超硬チップのサイズ、掘削ビットの配列、運転条件等を理論的に決定する必要性が求められている。
【0014】
本発明は以上のような従来の溝掘削機における課題を考慮してなされたものであり、効率の良い溝掘削を行うための溝掘削方法および溝掘削機を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の溝掘削方法は、カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、1つの掘削ビット当たりの切込み深さをtpx,掘削速度をV,チェーンの接線速度をV,掘削ビット列における1パターン長さをLとする4つの掘削条件についての下記関係式
【0016】
Figure 0003835351
【0017】
に既知数t px ,V ,V を代入することにより未知数として1パターン長さL を求め、この1パターン長さL に基づいて掘削ビットを配置してなるチェーンを周回させ溝掘削を行うことを要旨とする。
【0019】
また、カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、1つの掘削ビット当たりの切込み深さをt px ,掘削速度をV ,チェーンの接線速度をV ,掘削ビット列における1パターン長さをL とする4つの掘削条件についての下記関係式
Figure 0003835351
既知数tpx,V,Vを代入することにより未知数として1パターン長さLを求めれば、チェーン上に掘削ビットを最適配置することができる。
【0020】
また、カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、1つの掘削ビット当たりの切込み深さをt px ,掘削速度をV ,チェーンの接線速度をV ,掘削ビット列における1パターン長さをL とする4つの掘削条件についての下記関係式
Figure 0003835351
既知数tpx,V,Lを代入することによりチェーンの接線速度Vを求めれば、例えば工期が決められているとき、すなわち掘削速度Vが決められているときに必要とされるチェーンの回転速度を求めることができる。
【0021】
また、カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、1つの掘削ビット当たりの切込み深さをt px ,掘削速度をV ,チェーンの接線速度をV ,掘削ビット列における1パターン長さをL とする4つの掘削条件についての下記関係式
Figure 0003835351
既知数tpx,V,Lを代入することにより掘削速度Vを求め、この掘削速度Vが得られるように例えばカッターポストを移動させれば、効率の良い溝掘削を行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した一実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0026】
図1は溝掘削機1の構成を示したものであり、(a)は側面図、(b)は正面図を示している。
【0027】
この溝掘削機1は地上面を移動可能なクローラ2を装着した下部走行体3と、この下部走行体3上に搭載された上部旋回体4と、この上部旋回体4に昇降自在に設けられたリーダ5と、このリーダ5から垂下されたカッターポスト6を有している。
【0028】
このカッターポスト6は複数のエレメントが上下に連結されたものであり、その上部には駆動輪7aを備えた回転駆動装置7が、下部には遊動輪8が設けられ、駆動輪7aと遊動輪8にチェーン式カッター9が掛け渡されている。
【0029】
チェーン式カッター9は、エンドレスのチェーン9aと、そのチェーン9aの外周側に配列された多数の掘削ビット9bとから主として構成されており、駆動輪7aにはそのチェーン9aのテンションを調整するためのテンション調整機構が備えられている。
【0030】
上部旋回体4には門型フレーム10が取り付けられており、この門型フレーム10の上部に横行上シリンダ11が、下部に横行下シリンダ12がそれぞれ平行に配置されている。
【0031】
上記横行下シリンダ12の推力によって、カッターポスト6を地山に押し付けることができるようになっており、このとき横行上シリンダ11は、横行下シリンダ12の押圧方向と逆方向のシリンダ保持力を発生させるようになっている。
【0032】
13,14は、リーダ5を支持している一対のバックステイ(手前側のみ図示)である。なお、15は上部旋回体4に搭載されているキャビンである。
【0033】
図2は、上記構成を有する掘削機による掘削モデルを示したものである。
【0034】
同図において、掘削機1は、地中に挿入されたカッターポスト6を水平方向(X方向)に押圧しつつチェーン式カッターの掘削ビットを略垂直方向に移動させ、カンナで削る原理によって1パターン毎に掘削を行う。
【0035】
横行下シリンダ12の推力Fによって、カッターポスト6が地盤に押し付けられ、横行上シリンダ11は、横行下シリンダ12の押圧方向と逆方向のシリンダ保持力Rを発生するようになっている。
【0036】
また、図3は掘削ビットの拡大図であり、図2に示す矢印B方向から見たものである。
【0037】
図3は4枚のビットプレート9dに対し、超硬チップ9cを順番にずらせて配置した掘削ビット群Gを1パターンとしており、この掘削ビット群Gによって全幅Wを掘削するものである。この場合、掘削ビット列における1パターン長さLp とは、次の掘削ビット群の先頭までの距離を示すことになる。
【0038】
ここに、チェーンの接線速度をVb mm/min,掘削速度をVe mm/Hr,掘削ビット列における1パターン長さをLp mm,1パターン当たりの切込み深さをtpx
mmとするとき、Lp,tpx,Vb,Veの間には以下の関係がある。
【0039】
p : tpx=Vb : Ve ……(1)
従って、切込み深さtpxは下記式
【0040】
Figure 0003835351
【0041】
から求められる。
【0042】
そこで、上記(2)式に、掘削条件としてVb,Ve,Lpを代入することにより切込み深さtpxを求める。
【0043】
この切込み深さtpxを求めるには、例えばキャビン15内に配置した掘削条件算出手段としてのマイコンを使用することができる。
【0044】
この値を、超硬チップと地盤との関係を示した図3において、掘削ビット9bの先端部に設けられる超硬チップ9cの掘削方向長さの下限値Lminとして決定すれば、掘削条件としてチェーンの接線速度Vb,掘削速度Ve,全断面掘削1パターン長Lpがそれぞれ与えられているとき、地盤16を掘削する範囲については常に超硬チップ9bを存在させることができるため、チップ支持体としてのビット本体9eを摩耗から防ぎつつ超硬チップ9cを有効に地山掘削に作用させることができる。それにより、掘削対象となる地盤16は常に超硬チップ9bによって効率良く掘削されることになる。
【0045】
なお、超硬チップ9cの掘削方向長さLは、Lmax>L>Lminであればよく、Lmaxは、Lminに安全率としての所定長さを加えた値とすればよい。
【0046】
次に、上記(2)式に、掘削条件としてtpx,Ve,Vbを代入すれば掘削ビット9bの1パターン長さLpを求めることができる。
【0047】
所定の掘削速度Veが与えられ切込み深さtpxが一定であるとすると、1パターン長さLpを大きくすれば、チェーンの接線速度Vbを速くする必要があり、その逆に、1パターン長さLpを小さくすれば、チェーンの接線速度Vbを遅くした状態で溝掘削を行うことができる。
【0048】
なお、超硬チップ9cが例えば市販品であって掘削方向長さLが予め与えられているような場合についても、掘削ビット9bの1パターン長さLpを上記式(2)から求めることができる。
【0049】
ただし、この場合は掘削方向長さLをtpxとみなし、掘削条件としてそのtpx,Ve,Vbを代入することにより掘削ビット9bの1パターン長さLpを求めることになる。
【0050】
また、上記式(2)に、掘削条件としてtpx,Ve,Lpを代入することによりチェーンの接線速度Vbを求め、この接線速度Vbが得られるように回転駆動装置7(図1参照)の回転数を制御すれば、効率の良い溝掘削が行える。
【0051】
詳しくは、例えば超硬チップ9cが配列されている既存のチェーン式カッター9を使用して掘削を行う場合であって、決められた工期内に溝掘削を完了させる必要があるとき、1日あたりに掘削しなければならない溝の距離が求められ、それにより掘削速度Veが既知となる。したがって、この場合は既知数tpx,Ve,Lpを式(2)に代入して接線速度Vbを求め、その接線速度Vbに基づいて回転駆動装置7の回転数を制御すれば、工期内に確実に溝掘削を完了させることができる。
【0052】
また、上記式(2)に、掘削条件としてtpx,Vb,Lpを代入することにより掘削速度Veを求め、この掘削速度Veが得られるようにカッターポスト6の移動速度を制御することによっても、効率の良い溝掘削が行える。
【0053】
カッターポスト6は掘削方向に押圧力を発生する横行下シリンダ12およびその押圧方向と逆方向のシリンダ保持力を発生する横行上シリンダ11の協働によって地山に押し付けられる。
【0054】
したがって掘削速度Veが得られるように上記横行上シリンダ11と横行下シリンダ12に供給する圧油の流量を制御すれば、最適の掘削速度Veが得られる。
【0055】
なお、本実施形態では、横行シリンダ11,12を作動させてカッターポスト6を移動させる構成であったが、これに限らず、固定式のカッターポストを下部走行体3を掘削方向に走行させることにより溝掘削を行う溝掘削機では、最適な掘削速度Veが得られるように下部走行体2の走行速度を制御することになる。
【0056】
また、上記実施形態の掘削ビットは、超硬チップを備えたビット本体と、ビットプレートが一体に構成されているもので説明したが、これに限らず、ビット本体が取り外し可能に構成されているものであってもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1の本発明によれば、1つの掘削ビット当たりの切込み深さをtpx,掘削速度をV,チェーンの接線速度をV,掘削ビット列における1パターン長さをLとする4つの掘削条件の関係式を求め、一つを未知数、その他を既知数として関係式から未知数を求め、溝掘削を行うようにしたため、経験に頼らずに効率の良い溝掘削を行うことが可能になる。そして、未知数として求められた1パターン長さL にしたがってチェーン上に掘削ビットを最適配置することができる。
【0060】
請求項の本発明によれば、未知数としてチェーンの接線速度Vを求めることができ、例えば工期が決められているときに最適なチェーンの回転速度を求めることができる。
【0061】
請求項の本発明によれば、未知数としての掘削速度Vを求め、この掘削速度Vが得られるように例えばカッターポストを移動させることにより、効率の良い溝掘削を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明に係る溝掘削機の全体構成を示す側面図、(b)はその正面図である。
【図2】図1の溝掘削機による掘削モデルを示した模式図である。
【図3】図1の掘削ビットの構成を示す拡大図である。
【図4】掘削モデルにおいて超硬チップと地盤との関係を示す拡大図である。
【図5】従来の溝掘削機の構成を示す説明図である。
【図6】従来の掘削モデルにおいて超硬チップと地盤との関係を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 溝掘削機
2 クローラ
3 下部走行体
4 上部旋回体
5 リーダ
6 カッターポスト
7 回転駆動装置
9 チェーン式カッター
9a チェーン
9b 掘削ビット
9c 超硬チップ
9e ビット本体
10 門型フレーム
11 横行上シリンダ
12 横行下シリンダ
16 地盤

Claims (3)

  1. カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、
    1つの掘削ビット当たりの切込み深さをtpx,掘削速度をV,チェーンの接線速度をV,掘削ビット列における1パターン長さをLとする4つの掘削条件についての下記関係式
    Figure 0003835351
    既知数tpx,V,Vを代入することにより1パターン長さLを求め、この1パターン長さLに基づいて掘削ビットを配置してなるチェーンを周回させ溝掘削を行うことを特徴とする溝掘削方法。
  2. カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、
    1つの掘削ビット当たりの切込み深さをt px ,掘削速度をV ,チェーンの接線速度をV ,掘削ビット列における1パターン長さをL とする4つの掘削条件についての下記関係式
    Figure 0003835351
    既知数tpx,V,Lを代入することによりチェーンの接線速度Vを求め、この接線速度Vが得られるようにチェーン回転駆動装置の回転数を制御することを特徴とする溝掘削方法。
  3. カッターポストをガイドとして周回するチェーンの外周側に、掘削ビットを突設した状態で配列し、溝掘削を行う溝掘削方法において、
    1つの掘削ビット当たりの切込み深さをt px ,掘削速度をV ,チェーンの接線速度をV ,掘削ビット列における1パターン長さをL とする4つの掘削条件についての下記関係式
    Figure 0003835351
    既知数tpx,V,Lを代入することにより掘削速度Vを求め、この掘削速度Vが得られるようにカッターポストの移動速度を制御することを特徴とする溝掘削方法。
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