以下に、本発明の実施の形態にかかる数値制御装置および表示方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる数値制御装置1aの機能構成を示す図である。数値制御装置1aは、数値制御プログラムを読み込んで実行することで、図示しない機械を制御する。数値制御装置1aが機械を制御することで、機械に取り付けられた工具の位置および姿勢が変化し、加工対象物を工具で加工することができる。工具の姿勢とは、加工対象物に対して工具が向いている角度を示す。数値制御プログラムには、加工対象物を加工する工具または加工対象物を移動させる動作指令、動作指令の基準となる座標系を指定する座標系指令、加工条件の設定値などが記述されている。
数値制御プログラムを作成するとき、作業者は、動作指令の記述が容易になるような座標系、例えば、指令位置が切りのよい数値となるような座標系を設定し、この座標系に基づいた数値を使用して動作指令を記述する。数値制御装置1aは、数値制御プログラムの中で複数の座標系を使用することができる。複数の工程に分かれた加工を実行する数値制御プログラムで、工程毎に異なる座標系を使用する場合、複数の座標系が利用される。また異なる位置に取り付けられた複数の加工対象物のそれぞれに連続して同様の加工を行う場合、複数の加工対象物のそれぞれに合わせて座標系を設定する場合にも、複数の座標系が利用される。
数値制御プログラムを実行する前に、作業者は、機械に取り付けた加工対象物の位置を計測して、加工対象物に対して適切な加工位置となるように、座標空間を実空間に対応付ける座標系の設定を行う。数値制御装置1aは、複数の座標系を設定する場合に、座標系の設定を支援する機能を有する。以下、数値制御装置1aの機能のうち、座標系の設定を支援する機能に関する部分を主に示す。
数値制御装置1aは、座標系表示部11aと、関係表示部12aと、表示部13aと、プログラム記憶部14aと、加工経路情報作成部20aと、座標系設定記憶部21aとを有する。
座標系設定記憶部21aは、数値制御装置1aが有する複数の座標系に対して作業者が設定画面などを介して入力した設定情報を記憶する。座標系表示部11aは、動作指令の基準となる複数の座標系を表示するための座標系表示データを作成し、作成した座標系表示データを表示部13aに出力する。
関係表示部12aは、座標系表示部11aが作成した座標系表示データに含まれる複数の座標系の間の関係を示す情報である関係情報を表示するための関係表示データを作成し、作成した関係表示データを表示部13aに出力する。表示部13aは、座標系表示部11aが出力する座標系表示データと、関係表示部12aが出力する関係表示データとを合成した合成表示データを表示する。関係表示部12aは、座標系表示部が表示する複数の座標系が第1の座標系と第1の座標系を基準に設定される第2の座標系とを含む場合、第2の座標系が第1の座標系を基準に設定されていることを示す情報である関係情報を表示する。
プログラム記憶部14aは、数値制御装置1aの外部から入力される数値制御プログラムを記憶する。数値制御プログラムの記述形式は特に限定されない。以下、数値制御プログラムの記述形式は、EIA(Electronic Industries Alliance Standard)フォーマット、ISO(International Organization for Standardization)フォーマットなど、Gコードおよびマクロ文などの文字列を使用した記述形式とする。
図2は、図1に示す数値制御装置1aが利用する座標系に関する代表的なGコードを示す図である。G92のGコードには対応する座標系があり、ここではG92のGコードに対応する座標系をG92座標系と呼ぶ。G92のGコードは、G92座標系の位置の設定に利用される。G54からG59のGコードには、それぞれ対応する座標系がある。ここではG54のGコードに対応する座標系をG54ワーク座標系と称し、G55からG59についても同様に、対応する座標系をG55ワーク座標系からG59ワーク座標系と称する。G54からG59のGコードは、上述の座標系指令であり、動作指令の指令位置の基準となる座標系を選択する機能を有する。数値制御装置1aは、例えば、G55のGコードを実行した後に動作指令を実行するとき、その動作指令の指令位置は、G55ワーク座標系を基準にした位置であると解釈して、制御対象の機械を動作させる。
G54ワーク座標系からG59ワーク座標系は、G92座標を基準として設定される。この場合、G92座標を再設定すると、G54ワーク座標系からG59ワーク座標系は、再設定されたG92座標の位置を基準とした新たな位置に変化する。
なお、一般的な数値制御装置では、G92座標とG54ワーク座標系からG59ワーク座標系とを使用することが多いが、以下では図を簡単にするために、G57ワーク座標系、G58ワーク座標系およびG59ワーク座標系を省略する。
図1の説明に戻る。加工経路情報作成部20aは、プログラム記憶部14aが記憶する数値制御プログラムと、座標系設定記憶部21aが記憶する座標系設定情報とに基づいて、制御対象の機械を動作させるための加工経路情報を作成する。
図3は、図1に示す数値制御装置1aを使用して加工を行うときに作業者が行う作業の流れを示すフローチャートである。作業者は、加工動作を記述した数値制御プログラムを作成する(ステップS901)。このとき作業者は、動作指令の記述が容易になるような、例えば指令位置が切りのよい数値となる座標系を設定し、設定した座標系に基づいた数値を使って動作指令を記述する。複数の工程を含む数値制御プログラムでは、工程毎に異なる座標系を設定してもよい。
作業者は、加工対象物を数値制御装置1aが制御する工作機械に取り付ける(ステップS902)。作業者は、機械に取り付けた加工対象物の位置を計測するなどして、数値制御プログラムに記述された加工位置が加工対象物に対して適切な加工位置になるように、数値制御装置1aの座標系を設定する(ステップS903)。数値制御装置1aは、座標系を設定するための画面を表示する。作業者は、表示される画面に数値を入力することで、座標系の設定を行う。
作業者は、現在の座標系設定を表示する画面を見て、座標系設定に問題がないかを確認する(ステップS904)。座標系設定を表示する画面は、座標系を設定するための画面とは異なる画面である。座標系設定におけるミス、例えば桁間違いのようなミスは、不正確な加工結果を招くだけでなく、工具と治具との間で衝突を引き起こすと、機械の故障を招く場合もあるため、十分な確認が重要となる。
作業者は、現在の座標系設定が適切であるか否かを判断する(ステップS905)。座標系設定が適切でない場合(ステップS905:No)、作業者は、ステップS903に戻って座標系設定をやり直す。座標系設定が適切である場合(ステップS905:Yes)、作業者は、数値制御装置1aに数値制御プログラムを実行させて、実際に加工を行う(ステップS906)。数値制御装置1aは、数値制御プログラムと座標系設定などの設定とに基づいて制御対象の機械を動かす。数値制御プログラムの実行が終了すると加工は終了となる。
なお、図3に示す流れは概略を示したものであり、実際には、ステップS901の前に使用する工具に関する検討および準備が必要であり、ステップS906の後には、加工対象物の取外しおよび清掃などの作業が必要である。また実際に加工を行う前には、座標系設定以外にも、工具の設定、数値制御プログラム自体の確認も必要である。
以下、ステップS904で座標系設定の確認を行う際に、数値制御装置1aが座標系設定を表示するときの処理を説明する。図4は、図1に示す数値制御装置1aが座標系設定を表示するときの動作を示すフローチャートである。
座標系表示部11aは、座標系設定記憶部21aが記憶する座標系の設定値を利用して、数値制御装置1aの設定する複数の座標系に対して、それぞれの設定値に従って表示位置を計算し、座標系表示データを作成する(ステップS101)。
図5は、図1に示す数値制御装置1aが作成する座標系表示データを示す図である。図5に示す座標系表示データは、G92座標系、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系、G56ワーク座標系、機械座標系および外部ワーク座標系が含まれている。機械座標系は、制御対象の機械に合わせて固定された基本となる座標系である。外部ワーク座標系は、機械座標系を基準として設定される座標系であり、図5ではEXTと表記されている。外部ワーク座標系の設定値は(40,20)であり、外部ワーク座標系の原点は、機械座標系の原点からx方向に40、y方向に20移動した位置である。
G92座標系は、外部ワーク座標系を基準として設定される座標系である。G92座標系は、外部ワーク座標系の原点からx方向に20、y方向に30移動した位置である。上記の通り、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系およびG56ワーク座標系は、G92座標系を基準として設定される。G54ワーク座標系は、G92座標系の原点からx方向に−20、y方向に50移動した位置である。G55ワーク座標系は、G92座標系の原点からx方向に80、y方向に10移動した位置である。G56ワーク座標系は、G92座標系の原点からx方向に30、y方向に60移動した位置である。
ステップS101において座標系表示データを作成する際に座標系表示部11aが行う処理の具体例を示す。座標系表示部11aは、各座標系の原点を表示する位置を機械座標で計算する。座標系表示部11aは、G92座標系の原点を表示する位置を、外部ワーク座標にG92座標の設定値を加算して計算することができる。
外部ワーク座標系EXTは、機械座標系を基準として設定されているため、設定値がそのまま機械座標系の原点からの位置になる。座標系表示部11aは、G92座標系の機械座標系の原点からの位置を、外部ワーク座標系EXTの設定値とG92座標系の設定値とを使用して、x方向に40+20=60、y方向に20+30=50移動した位置と計算することができる。座標系表示部11aは、G54ワーク座標系の機械座標系の原点からの位置を、外部ワーク座標系EXTの設定値とG92座標系の設定値とG54ワーク座標系の設定値とを使用して、x方向に40+20−20=40、y方向に20+30+50=100移動した位置と計算することができる。
座標系表示部11aは、G55ワーク座標系の機械座標系の原点からの位置を、外部ワーク座標系EXTの設定値とG92座標系の設定値とG55ワーク座標系の設定値とを使用して、x方向に40+20+80=140、y方向に20+30+10=60移動した位置と計算することができる。座標系表示部11aは、G56ワーク座標系の機械座標系の原点からの位置を、外部ワーク座標系EXTの設定値とG92座標系の設定値とG56ワーク座標系の設定値とを使用して、x方向に40+20+30=90、y方向に20+30+60=110移動した位置と計算することができる。続いて、座標系表示部11aは、計算した各座標系の表示位置を基準にして、各座標系の座標系名、座標軸および座標軸名を配置して座標系表示データを作成する。
上記の通り、外部ワーク座標系は、機械座標系を基準として設定され、G92座標系は、外部ワーク座標系を基準として設定され、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系およびG56ワーク座標系は、G92座標系を基準として設定される。G92座標系、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系およびG56ワーク座標系は、間接的に機械座標系と関係している。しかしながら、座標系表示データだけでは、これら座標系の間の関係性を把握することはできない。
図4の説明に戻る。関係表示部12aは、関係表示データを作成し、作成した関係表示データを表示部13aに出力する(ステップS102)。関係表示データは、複数の座標系の間の関係性を示す関係情報を含む。複数の座標系のうち第2の座標系が第1の座標系を基準に設定される場合、関係情報は、第2の座標系が第1の座標系を基準に設定されていることを示す情報である。なお、第1の座標系、第2の座標系は、任意の2つの座標系の関係性について使用する用語であり、特定の座標系を指し示すものではない。例えば、機械座標系と外部ワーク座標系との間の関係について言う場合、機械座標系は第1の座標系であり、外部ワーク座標系は第2の座標系である。外部ワーク座標系とG92座標系との間の関係について言う場合、外部ワーク座標系は第1の座標系であり、G92座標系は第2の座標系である。
関係表示部12aは、座標系設定記憶部21aが記憶する座標系の設定値を利用して、座標系表示部11aと同様にそれぞれの座標系の表示位置を計算する。続いて、関係表示部12aは、機械座標系を除く5つの座標系について、それぞれの座標系の設定の基準となる座標系の原点から、自身の原点に向けた破線の矢印を、関係情報の表示データとして作成する。さらに関係表示部12aは、この破線矢印の表示位置を基準として対応する設定値を配置した関係表示データを作成する。設定値を表示する際に、破線矢印を表示する位置と設定値を表示する位置とが離れてしまう場合、関係表示部12aは、破線矢印と設定値とが対応するデータであることを示す補助線を関係表示データに含めてもよい。
表示部13aは、座標系表示部11aが作成した座標系表示データと、関係表示部12aが作成した関係表示データとを合成して、合成表示データを数値制御装置1aの表示設定に従って表示する(ステップS103)。表示設定は、表示中心、表示尺度、表示向きなどであり、作業者の操作に従って変更される。表示中心は、作業者が表示位置を移動させる操作を行うと、変更される。表示尺度は、作業者が表示の拡大操作または縮小操作を行うと、変更される。表示向きは、作業者が表示を回転させる操作を行うと、変更される。
図6は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第1の例を示す図である。外部ワーク座標系は、機械座標系を基準として設定される座標系であり、機械座標系の原点からの相対位置は、x方向に40、y方向に20である。このため、合成表示データは、機械座標系および外部ワーク座標系を相対位置に基づいた位置に表示している。また、合成表示データは、機械座標系の原点から外部ワーク座標系の原点に向かう破線の矢印を含んでおり、破線の矢印に対応して、矢印の始点に対する終点の相対位置を示す(40,20)を含んでいる。同様に、G92座標系、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系およびG56ワーク座標系のそれぞれは、基準となる座標系の原点からの相対位置に対応する位置に表示される。
図6に示す合成表示データは、外部ワーク座標系の原点からG92座標系の原点に向かう破線の矢印と、G92座標系の原点からG54ワーク座標系、G55ワーク座標系およびG56ワーク座標系の原点のそれぞれに向かう破線の矢印とを含む。合成表示データは、破線の矢印のそれぞれに対応して、矢印の始点に対する終点の相対位置を示す数値を含む。この数値は、第2の座標系の設定値になる。設定値と矢印との対応関係は、設定値を表示する位置によって示される。設定値を表示する位置が矢印から離れてしまう場合、複数の設定値が表示されており、表示する位置だけでは設定値と矢印との対応関係が分かり難い場合などは、設定値から矢印に向けて伸びる補助線を用いて、設定値と矢印との対応関係を示すこともできる。図6の例では、機械座標系の原点に対する外部ワーク座標系の設定値が補助線を使用して示されている。
図6に示す合成表示データでは、座標系の間の関係性を破線の矢印と、相対位置とを使用して示しているが、複数の座標系が一致している場合、矢印を表示することができない。また複数の座標系の間の類似度が高い場合、表示部13aの表示装置の解像度では、矢印を認識可能な状態で表現することが困難である。この場合、作業者は、座標系の表示から、複数の座標系が一致しているのか、またはわずかな差が存在しているのかを見分けることが困難になる。このため、関係表示部12aは、複数の座標系の間の類似度に基づいて、関係情報の表現方法を変化させる。具体的には、関係表示部12aは、類似度が閾値未満である場合、図6に示すように、第1の座標系から第2の座標系に向かって座標系の原点の間をつなぐ破線の矢印で関係情報を示し、類似度が閾値以上である場合、以下に示すように、類似度が閾値未満の場合と異なる表現方法を使用する。なお、類似度は、図6に示す例では複数の座標系の近さを示す。後述するように、座標系の姿勢を変化させることができる場合、類似度は、複数の座標系の位置および姿勢の少なくとも1つの近さを示す。座標系の姿勢とは、座標系に含まれる座標軸の向きである。
図7は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第2の例を示す図である。図7には、機械座標系と外部ワーク座標系とが一致する場合の表現方法の一例を示している。ある座標系の設定値が全てゼロである場合、その座標系と基準の座標系とは一致する。2つの座標系が一致する場合、関係情報は、2つの座標系の名称を示す文字列と、2つの座標系の間の関係性を示す記号とを含む。図7の例では、記号「=」を使用して、機械座標系と外部ワーク座標系とが一致していることが示されており、丸括弧を使用して、複数の座標系の間で基準の座標系がどちらであるかを示している。具体的には、丸括弧の中に記載される座標系が丸括弧の外に記載される座標系を基準として設定されていることが示されている。
図8は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第3の例を示す図である。図8には、機械座標系と外部ワーク座標系との類似度が閾値以上である場合の表現方法の一例を示している。2つの座標系の類似度が閾値以上である場合、大なり記号「>」を使用して、2つの座標系の間にはわずかな違いがあることと、記号の右側の座標系が記号の左側の座標系を基準として設定されていることとを示している。
図9は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第4の例を示す図である。図9には、3つの座標系が一致する場合の表現方法の一例を示している。図9に示す例では、機械座標系と、外部ワーク座標系と、G92座標系とが一致している。この場合、「=」記号と、丸括弧とを繰り返し使用することで、図7の例と同様に、関係情報を示すことができる。4つ以上の座標系の関係性を示す場合も同様である。
図10は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第5の例を示す図である。図10には、3つの座標系の間の類似度が閾値以上である場合の表現方法の一例を示している。3つの座標系の類似度が閾値以上である場合、大なり記号「>」を繰り返し使用することで、3つの座標系の関係性を示すことができる。図10の例では、機械座標系、外部ワーク座標系およびG92座標系が互いに一致しておらず、類似度が閾値以上である。「>」を使用して、3つの座標系の名称が示されており、「>」との位置関係を使用して、外部ワーク座標系が機械座標系を基準として設定されており、G92座標系が外部ワーク座標系を基準として設定されていることを示している。4つ以上の座標系の関係性を示す場合も同様に、「>」を繰り返し使用すればよい。
以上、図7から図10に示したように、座標系同士の類似度に基づいて、関係表示部12aが作成する表示データを変化させることで、2つの座標系の位置が一致していたり、ほぼ同じであったりしても、座標系の関係情報を示すことができる。また、2つの座標系が一致している場合、2つの座標系の類似度が閾値以上でありかつ2つの座標系が一致していない場合と区別して関係情報が表示される。このため、2つの座標系の位置が一致するように設定しているのか、それとも、わずかに違いがあるように設定しているのかを誤認してしまうようなミスを抑制することが可能になる。
なお、図7から図10では、複数の座標系の間の類似度が閾値以上である部分のみを示したが、図6に示す破線の矢印を使用した関係情報の表現方法と、図7から図10に示す記号を使用した関係情報の表現方法とは、合わせて使用することが可能である。
図11は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第6の例を示す図である。関係情報を表示する画面は、座標系の設定値を変更する設定画面とすることもできる。座標系の設定値を選択する操作をすると、選択された設定値が編集可能な状態になる。図11の例は、G55ワーク座標系のx方向の設定値「80」が編集可能になっている状態を示している。
数値制御装置1aは、座標系の設定値を表示しなくてもよい。または数値制御装置1aを操作すると、座標系の設定値の表示の有効と無効とを切り替えられるようにしてもよい。
座標系の設定値と座標系の関係情報とを表示する方法は、上記の例に限られない。図12は、図1に示す表示部13aが表示する合成表示データの第7の例を示す図である。図12に示す例では、図6と同一の関係を有する複数の座標系を、ツリー構造と表とを使用して示している。図12では、複数の座標系の間の関係情報をツリー構造で示している。また図12の表は、機械座標系以外の各座標系の設定値と、機械座標系の原点からの位置とを数値で示している。設定値の列の値を編集することで、設定値を変更することができる。
また座標系の関係情報の表現方法は、破線の矢印以外にも、座標軸など他の表示内容と区別することができる表現方法であればよく、破線以外の線種を使用してもよいし、線の種類以外の表示効果、例えば、線の太さ、色、点滅などを使用した矢印を使用してもよい。或いは、形状についても、矢印以外に細長い三角形などの図形を使用してもよい。
上記では、座標系の設定がx方向およびy方向の2次元としたが、座標系の設定は3次元で表されてもよい。図13は、座標系の設定が3次元である場合に、図1に示す表示部13aが表示する画面の一例を示す図である。図13に示す例では、座標系がx方向、y方向およびz方向の3つの数値で示されており、外部ワーク座標系の原点が、機械座標系の原点からx方向に70、y方向に10、z方向に−12の位置であることを示している。
また上記では、複数の座標系の軸は互いに平行であることとしたが、座標系の姿勢を変化させる設定を行うことが可能であってもよい。図14は、座標系の姿勢を変化させる場合に、図1に示す表示部13aが表示する画面の一例を示す図である。この場合、座標系の設定は、原点位置を設定する数値と、座標系の姿勢を示す回転角度とを含む。回転角度は、座標軸の向きを示し、基準となる状態からの回転角度である。図14の例では、外部ワーク座標系の原点は、機械座標系の原点からx方向に80、y方向に20移動した位置であって、外部ワーク座標系の軸は、機械座標系の軸と30度の角度をなす姿勢である。数値制御装置1aの座標系表示部11aは、位置に加えて姿勢も反映させた座標系の表示データを作成し、関係表示部12aは、位置の設定値に加えて姿勢の設定値を含む表示データを作成する。
なお、上記では簡単のため、座標系および関係情報の表示に限定して表示データの説明をしたが、数値制御装置1aは、座標系および関係情報と共に、様々な情報を表示することもできる。座標系および関係情報と共に表示される情報としては、制御対象の機械に取り付けられた工具、タッチプローブなどの部品の現在位置、加工対象物を載置するテーブルの現在位置など制御対象の機械の一部分の現在位置が挙げられる。機械に取り付けられた部品の現在位置または機械の一部分の現在位置は、CADデータなどを使用して正確な形状を表示してもよいし、工具先端の点、テーブル上面の四角形など代表的な点または幾何形状などを表示することができる。
機械に取り付けられた部品の現在位置および機械の一部分の現在位置の少なくともいずれかを表示することで、設定する座標系の位置が実際の機械などの位置とどのように対応しているかが分かりやすくなる効果がある。タッチプローブのように座標系を設定する際の計測に用いる道具の現在位置を表示すると、座標系の設定を容易にする場合がある。例えば、加工対象物上に多数存在する穴の中から、ほぼ一直線に並んでいる穴の位置を計測して、それぞれの穴に対応する座標系を設定するような場合、タッチプローブの現在位置を表示すると、座標系の設定が容易になる。設定しようとしている複数の座標系の間で、相対的な位置関係がだいたい決まっているような場合、既に設定が終わっている座標系の位置から、次の計測のためにタッチプローブを移動させる大まかな位置の予想がつく。タッチプローブの先端点の現在位置が画面に表示されていると、設定が既に終わっている座標系とタッチプローブの先端点の現在位置とを表示画面上で見比べることで、タッチプローブが次の計測位置付近に適切に移動できているかを確認することができる。
工具の現在位置を表示することで、数値制御プログラムの確認を容易にする効果もある。座標系の設定が終わった後、数値制御プログラムを1ステップごとにテスト実行して問題がないかを確認する場合、各ステップで、動作指令の基準となる座標系の位置と工具位置とを見比べることができる。したがって、各ステップの実行前では、そのステップを実行するとどのように機械が動作するかの予測をすることが容易になる。また各ステップの実行後では、意図したとおりの動作が行われたか、つまりそのステップの記述が正しかったかの確認が容易になる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1では、複数の座標系が第1の座標系と第1の座標系を基準に設定される第2の座標系とを含む場合、第2の座標系が第1の座標系を基準に設定されていることを示す情報である関係情報が複数の座標系と共に表示される。このため、どの座標系がどの座標系を基準に設定されているかを、マニュアルなどで確認する必要がなくなる。また個々の座標系の設定状況と、複数の座標系の間の関係とが1つの図表にまとめて表示される。したがって、座標系の設定にかかる時間を短縮することが可能である。
さらに、関係情報が表示されることで、関連する座標系が誤って設定された場合、誤って設定されていることに気が付きやすくなり、誤った設定に起因する不具合を抑制することが可能である。したがって、設定の誤りに起因する加工の失敗、機械の故障といったトラブルを未然に防ぐことが可能になり、加工のやり直し、機械の修理などによる時間の浪費を抑制して、加工が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能になる。
なお、上記の実施の形態1において、フローチャートに示した各ステップの実行順は、必ずしも図示した通りでなくてもよい。例えば図4のステップS101の処理とステップS102の処理とは、順序を入れ替えて実行してもよい。
実施の形態2.
図15は、本発明の実施の形態2にかかる数値制御装置1bの機能構成を示す図である。数値制御装置1bは、座標系表示部11bと、関係表示部12bと、表示部13bと、プログラム記憶部14bと、プログラム解析部15bと、経路表示部16bと、可動範囲表示部17bと、加工経路情報作成部20bと、座標系設定記憶部21bとを有する。
プログラム記憶部14bはプログラム記憶部14aと同様の機能を有し、加工経路情報作成部20bは加工経路情報作成部20aと同様の機能を有し、座標系設定記憶部21bは座標系設定記憶部21aと同様の機能を有するため、ここでは説明を省略する。
プログラム解析部15bは、プログラム記憶部14bが記憶する数値制御プログラムを解析し、数値制御プログラムが利用する座標系を抽出する。またプログラム解析部15bは、数値制御プログラムに記述された動作指令と、座標系設定記憶部21bが記憶する座標系の設定情報とに基づいて、工具の移動経路である工具経路を計算する。プログラム解析部15bは、工具経路を計算するときに、それぞれの動作指令と動作指令が使用している座標系との対応に基づいて、工具経路の部分ごとに対応する座標系の情報を付与する。プログラム解析部15bは、解析結果を座標系表示部11b、関係表示部12bおよび経路表示部16bのそれぞれに出力する。
座標系表示部11bは、座標系設定記憶部21bが記憶するそれぞれの設定値に従って、プログラム解析部15bが抽出した座標系を表示するための座標系表示データを作成し、作成した座標系表示データを表示部13bに出力する。ここで、数値制御装置1bが定義している複数の座標系のうち、数値制御プログラムが使用していない座標系がある場合、座標系表示データには、数値制御プログラムが使用していない座標系は含まれず、数値制御プログラムが使用している座標系のみを選択的に含むことになる。
座標系表示部11bは、それぞれの座標系に対して予め定められた表示効果を用いて、座標系表示データを作成する。表示効果は、線の種類、線の太さ、色、影付け、網掛け、表示の透明度などである。座標系表示部11bは、時間による変化を利用した表示効果を用いて、座標系表示データを作成してもよい。時間による変化を利用した表示効果は、一定の時間間隔で点滅する表示効果、経時的に色が変わる表示効果などである。また座標系ごとに対応づけられた複数の表示効果を用いる例に限らず、複数の座標系のうちの1つに表示効果を用いて表示して、その他の座標系と区別がつくようにし、表示効果を利用する座標系を、時間または作業者の操作内容にしたがって変化させてもよい。例えば、複数の座標系のうちの1つをピントが合った状態のように鮮明に表示し、他の座標系をピントが外れた状態のようにぼけて表示する表示効果を使用することができる。この場合、ピントが合った状態の座標系が、時間または作業者の操作内容にしたがって変化する。
関係表示部12bは、座標系設定記憶部21bが記憶する座標系の設定情報を使用して、プログラム解析部15bが抽出した複数の座標系の間の関係を示す関係表示データを作成し、作成した関係表示データを表示部13bに出力する。
経路表示部16bは、プログラム解析部15bが計算した工具経路を表示するための経路表示データを作成し、作成した経路表示データを表示部13bに出力する。経路表示部16bは、工具経路の部分ごとに、対応する座標系に対して座標系表示部11bが使用した表示効果と共通する表示効果を使用して、経路表示データを作成する。
可動範囲表示部17bは、数値制御装置1bが制御する対象の機械の可動範囲の情報と、座標系設定記憶部21bが記憶する座標系の設定情報とを用いて、機械の稼働範囲を示す可動範囲表示データを作成し、作成した可動範囲表示データを表示部13bに出力する。このとき可動範囲表示部17bは、可動範囲の基準となる座標系に対して座標系表示部11bが使用した表示効果と共通する表示効果を使用して、可動範囲表示データを作成する。
表示部13bは、座標系表示部11bが作成する座標系表示データと、関係表示部12bが作成する関係表示データと、経路表示部16bが作成する経路表示データと、可動範囲表示部17bが作成する可動範囲表示データとを合成して合成表示データを表示する。
図16は、図15に示す数値制御装置1bの動作を示すフローチャートである。図17は、図15に示す数値制御装置1bが表示する座標系表示画面の一例を示す図である。以下、図17に示す座標系表示画面を表示する際の数値制御装置1bの動作について説明する。
数値制御装置1bの外部から数値制御プログラムが入力されると、プログラム記憶部14bは、入力された数値制御プログラムを記憶する(ステップS201)。プログラム解析部15bは、プログラム記憶部14bが記憶する数値制御プログラムを解析する(ステップS202)。具体的には、プログラム解析部15bは、数値制御プログラムが直接的または間接的に利用する座標系を特定し、数値制御プログラムに記述された動作指令に基づいて工具の移動経路である工具経路を計算する。このときプログラム解析部15bは、工具経路と、工具経路を計算するときに使用した座標系とを対応づける情報を付与する。
図17の例では、数値制御プログラムは、G54ワーク座標系およびG55ワーク座標系を用いて動作指令を記述している。この場合、数値制御プログラムが直接的に利用する座標系は、G54ワーク座標系およびG55ワーク座標系である。またG54ワーク座標系およびG55ワーク座標系は、それぞれG92座標系を基準として設定され、G92座標系は外部ワーク座標系を基準として設定され、外部ワーク座標系は機械座標系を基準として設定される。このため、数値制御プログラムは、間接的にG92座標系、外部ワーク座標系および機械座標系を利用することになる。したがってプログラム解析部15bは、これら5つの座標系を数値制御プログラムが直接的または間接的に利用する座標系として特定する。
座標系表示部11bは、ステップS202で特定した5つの座標系に対して、それぞれの設定値に従って表示位置を計算し、座標系の表示データを作成する(ステップS203)。このとき座標系表示部11bは、それぞれの座標系に対して定められた表示効果を使用して、座標系表示データを作成する。図17の例では、表示効果として表示色を用いている。なお図17では、表示色を文字列で示しているが、実際にはこの文字列は表示されず、文字列で示した表示色で各要素が表示される。
具体的には、座標系表示部11bは、機械座標系には緑色、外部ワーク座標系には紫色、G92座標系には藍色、G54ワーク座標系には橙色、G55ワーク座標系には水色を用いる。
関係表示部12bは、ステップS202で特定された5つの座標系の間の関係を示す関係情報を含む関係表示データを作成する(ステップS204)。ステップS202で特定した座標系に限定して関係情報を表示すること以外は、実施の形態1と同様である。
経路表示部16bは、プログラム解析部15bが計算した工具経路の表示データである経路表示データを作成する(ステップS205)。このとき経路表示部16bは、工具経路の部分ごとに、対応する座標系に対して、座標系表示部11bが用いた表示効果と共通する表示効果を用いて経路表示データを作成する。
可動範囲表示部17bは、座標系設定記憶部21bが記憶する座標系の設定情報を用いて、機械の可動範囲の基準となる座標系の位置を計算し、さらに数値制御装置1bが有する機械の可動範囲の情報を使用して、可動範囲を示す可動範囲表示データを作成する(ステップS206)。このとき可動範囲表示部17bは、可動範囲の基準となる座標系である機械座標に対して座標系表示部11bが用いた表示色である緑色を用いて、可動範囲表示データを作成する。また、実線で示される工具経路と区別するために、可動範囲表示部17bは、工具経路と異なる表示効果である点線を用いて可動範囲表示データを作成する。
表示部13bは、座標系表示部11bが作成する座標系表示データと、関係表示部12bが作成する関係表示データと、経路表示部16bが作成する経路表示データと、可動範囲表示部17bが作成する可動範囲表示データとを合成して合成表示データを作成する。そして表示部13bは、数値制御装置1bの表示範囲設定に従って、作成した合成表示データを表示する(ステップS207)。表示範囲設定に関しては、実施の形態1と同様である。
ステップS207の後、数値制御装置1bは座標系設定の表示動作を終了する。なお、ステップS203からステップS206までの表示データの作成処理は、順序を入れ替えて実行してもよい。
上記では、数値制御プログラムがG54ワーク座標系およびG55ワーク座標系を利用している場合について説明したが、本実施の形態はかかる例に限定されない。数値制御装置1bは、G54ワーク座標系、G55ワーク座標系などのワーク座標系を基準として設定されるローカル座標系、フィーチャ座標系などの座標系を処理対象に加えてもよい。これらの座標系とその関係情報とこれらの座標系に対応する工具経路とを同じ表示画面上に表示することで、ローカル座標系やフィーチャ座標系などの設定と、これらの座標系を利用した動作指令の作成を容易にするという効果が得られる。
図18は、図17に示す表示画面の比較例1を示す図である。図18では、凡例を使用して、工具経路と座標系の対応関係、および可動範囲と座標系の対応関係を示している。具体的には、図18の例では、G54ワーク座標系に基づく工具経路と、G55ワーク座標系に基づく工具経路と、機械座標系に基づく可動範囲とを、それぞれ異なる線種で示している。凡例には、各線種が示す工具経路または可動範囲と、座標系との対応関係が示されている。
図19は、図17に示す表示画面の比較例2を示す図である。図19では、吹き出しを使用して、工具経路と座標系との対応関係、および可動範囲と座標系との対応関係を示している。図19では、対応する座標系を示す文字列が、工具経路および可動範囲のそれぞれに、吹き出しを使用して付与されている。
図18に示す表示画面でも、凡例と図表とを見比べることで、工具経路または可動範囲と座標系との対応関係を把握することはできる。また図19に示す表示画面でも、吹き出しと各座標系の名称とを見比べることで、工具経路または可動範囲と座標系との対応関係を把握することはできる。しかしながら、本実施の形態のように表示効果を使用することで、凡例や吹き出しを見なくても、一目で直感的に工具経路または可動範囲と座標系との対応関係を把握することができるという効果がある。
以上説明したように、本発明の実施の形態2にかかる数値制御装置1bは、数値制御プログラムを解析して、数値制御プログラムが使用している座標系と、使用している座標系を設定するために用いられている座標系とを、記憶されている座標系の中から抽出する。そして数値制御装置1bは、記憶されている座標系のうち、抽出された座標系のみを表示して、抽出されなかった座標系は表示しない。このように構成することで、数値制御装置1bが使用することのできる座標系の数が多い場合であっても、表示される座標系を、数値制御プログラムに関係する座標系に絞ることができる。このため、座標系の表示が見やすくなり、数値制御プログラムに関係する座標系の設定と関係性とを作業者が確認するためにかかる時間を短縮することができる。
なお、上記の実施の形態2では、表示部13bは、プログラム解析部15bが抽出した座標系のみを表示することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。表示部13bは、プログラム解析部15bが抽出した座標系を、他の座標系と区別して表示してもよい。
また、数値制御装置1bは、数値制御装置1bが制御する対象の機械の可動範囲と、工具経路とを、座標系および関係情報と共に表示する。このため、作業者は、工具経路が表示された可動範囲から出ていないか確認することで、現在の座標系の設定で数値制御プログラムを実行したときに可動範囲を出てしまう問題のある動作がないかを、数値制御プログラムを実行する前に確認することができる。
数値制御装置1bは、工具経路と、工具経路に対応する座標系とに共通する表示効果を使用する。このため、作業者は、数値制御プログラム自体を読んだり、操作を行わなくても、工具経路から対応する座標系を特定したり、座標系から対応する工具経路を特定したりすることが、容易にできる。
数値制御装置1bは、可動範囲と、可動範囲に対応する座標系とに共通する表示効果を使用する。このため、作業者は、マニュアルを参照したりしなくても、可動範囲から対応する座標系を特定することができる。
工具経路が可動範囲からはみ出している場合、作業者は、工具経路と共通する表示効果を使用して表示された座標系の設定を修正すればよいことをすぐに理解することができる。このとき、修正対象の座標系が他の座標系を基準として設定されている場合には、関係情報を参照することで、作業者は、設定を修正する際に、基準となる座標系の設定も考慮しなければならないことを把握することができる。
具体的には、図17に示す表示画面を参照すると、作業者は、可動範囲が緑色で示された破線の矩形であり、水色で示された工具経路が、可動範囲をはみ出していることが分かる。この場合、作業者は、可動範囲からはみ出している工具経路と共通の水色で示された座標系であるG55ワーク座標系を修正すればよいことが分かる。図17に示す表示画面を参照すると、作業者は、G54ワーク座標系および修正対象のG55ワーク座標系は、G92座標系を基準として設定されていることを把握することができる。この場合、G92座標系の設定を変更すると、G54ワーク座標系およびG55ワーク座標系の両方を連動して移動させることができることが分かる。このため、作業者は、G54ワーク座標系に対応する工具経路を示す橙色の角が丸い矩形と、G55ワーク座標系に対応する工具経路を示す水色の矩形の位置を確認して、水色の矩形の位置だけがずれている場合、G55ワーク座標系の設定を修正すればよい。水色の矩形と橙色の矩形の両方の位置がずれている場合、作業者は、G92座標系の設定を変更すればよいことが分かる。
以上説明したように、数値制御装置1bは、工具経路と、工具経路に対応する座標系とを対応づけて表示し、可動範囲と、可動範囲に対応する座標系とを対応づけて表示し、座標系および関係情報を表示する。このため、数値制御装置1bが表示する情報から、作業者は、工具経路が可動範囲からはみ出している場合、どの座標系の設定を修正するとよいかをすぐに把握することができる。
また、数値制御装置1bは、上記に説明した技術的特徴の全てを備えてもよいし、上記に説明した技術的特徴の一部を備えてもよい。例えば数値制御装置1bは、可動範囲を、可動範囲に対応する座標系と対応づけて表示するという技術的特徴を備えておらず、座標系および関係情報と共に、工具経路と、工具経路に対応する座標系とを対応づけて表示してもよい。このような構成であっても、ある座標系の設定を変更したときに、その座標系と関係する複数の座標系に対応する工具経路がどのように移動するかを理解することが容易になる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3にかかる数値制御装置1cは、工具の姿勢が変化した場合であっても、数値制御プログラムに従った動作が可動範囲の中に収まっているか否かを確認することができる。数値制御装置1cの機能構成は、実施の形態2と同様であるため、以下、図15に示す符号を使用して、数値制御装置1cについての説明を行う。
図20は、実施の形態3にかかる数値制御装置1cが制御する機械に取り付けられる工具の姿勢と可動範囲の関係の一例を示す図である。数値制御装置1cの制御対象の機械は、2つの直動機構によって上下左右に並進移動する並進部分C1と、並進部分C1に取り付けられており、回転機構によって、並進部分C1に対して回転する回転部分C2とを備える。回転部分C2には工具C3が取り付けられている。
図20には、並進部分C1が左上に移動することができる限界の位置P1と、右上に移動することができる限界の位置P2と、左下に移動することができる限界の位置P3と、右下に移動することができる限界の位置P4とが示されている。工具C3が垂直下向きの姿勢になるQ1の位置にあるときの工具先端の可動範囲はR1となる。これに対して、回転部分C2を回転させて、工具C3の先端が斜め左下向きの姿勢になるQ2の位置にあるときの工具先端の可動範囲はR2となる。
このように、制御対象の機械に工具C3の姿勢を変化させる回転部分C2がある場合、この回転部分C2を利用して工具C3の姿勢を変化させると、回転部分C2の根元側にある並進部分C1の可動範囲に変化がなくても、回転部分C2を利用して工具C3の先端位置が変化した分だけ、可動範囲は変化してしまう。回転部分C2を有する工作機械を制御する場合、工具C3の姿勢を加工の各工程に適した姿勢にするため、数値制御プログラムの途中で回転部分C2を回転させて工具C3の姿勢を変化させることがある。工具C3の姿勢が途中で変化する数値制御プログラムの場合、工具C3の姿勢を考慮せず固定された範囲の中に工具経路が収まっているか否かで、工具経路に対応する一連の動作が機械の可動範囲内で実行することができるか否かを判定することができない。
そこで、本実施の形態3では、工具C3の先端点とは別に、表示された可動範囲の中にあるか否かで機械の位置が可動範囲内にあるか否かを判定するための点である基準点を定義する。そして、基準点の移動経路である基準点経路を表示することで、工具C3の姿勢が変化する場合であっても、設定された座標系に基づいて動作指令を実行した場合の動作が、機械の可動範囲内にあるか否かを判定することを可能にする。
数値制御装置1cは、数値制御装置1bと比較して、プログラム解析部15bおよび経路表示部16bの動作が主に異なる。以下、実施の形態2と同様の機能を有する構成要素については説明を省略し、実施の形態2と異なる部分を主に説明する。
プログラム解析部15bは、プログラム記憶部14bが記憶する数値制御プログラムを解析する。数値制御プログラムが利用する座標系を特定する処理、数値制御プログラムに記述された動作指令に基づいて工具経路を計算する処理、および、工具経路の部分ごとに対応する座標系の情報を付与する処理は、実施の形態2と同様である。これらの処理に加えて、プログラム解析部15bは、可動範囲の基準点に関する以下に示す処理を行う。
可動範囲の基準点の機械における位置は、数値制御装置1bに予め設定されているものとする。プログラム解析部15bは、工具経路を計算するときと同様に、基準点経路を計算する際に、それぞれの動作指令がどの座標系を使用しているかに従って、基準点経路の部分ごとに対応する座標系を示す情報を付与する。
さらにプログラム解析部15bは、動作指令に基づいて工具経路と基準点経路とを計算するときに、その動作指令によって工具指令が変化するか否かの情報を、その動作指令に対応するそれぞれの経路の部分に付与する。プログラム解析部15bは、動作指令に基づいて工具経路と基準点経路とを計算するとき、それぞれの動作指令の開始地点、終了地点などの代表的な点を使って、工具経路上の点と基準点経路上の点との対応関係を計算する。
経路表示部16bは、プログラム解析部15bが計算した工具経路および基準点経路の表示データである経路表示データを作成する。このとき経路表示部16bは、工具経路と基準点経路の両方で、部分ごとに、対応する座標系に対して座標系表示部11bが使用した表示効果と共通の表示効果を用いて経路表示データを作成する。経路表示部16bは、工具経路および基準点経路の両方の経路で、工具姿勢が変化する経路の部分と工具姿勢が変化しない経路の部分とを区別して、異なる表示効果を用いて表示するための経路表示データを作成する。経路表示部16bは、さらに、プログラム解析部15bが計算した工具経路上の点と基準点経路上の点との対応関係を示す表示データを作成する。
実施の形態3にかかる数値制御装置1cの動作は、実施の形態2と同様であるため、図16を使用して、実施の形態3の動作を説明する。実施の形態2と実施の形態3とは、ステップS202で行われる具体的な処理と、ステップS205で行われる具体的な処理内容とが主に異なる。
ここで数値制御装置1cの動作を説明するに当たって、図21および図22に示す具体例を用いる。図21は、実施の形態3にかかる数値制御装置1cが表示する座標系を設定する画面の一例を示す図である。図22は、図21に示す画面に対応する機械の動きを説明するための図である。
図21に示す例では、図22に示す工具の先端点A1の移動経路を工具経路としており、回転部分C2の回転中心点A2を可動範囲の基準点としている。工具経路は、工具の先端点A1に限らず、切削点、ボールエンドミルのボール中心点などであってもよい。図21に示す経路に対応する数値制御プログラムは、図22に示す加工対象物OBの右の斜面を加工する動作を行うためのプログラムである。この数値制御プログラムは、並進部分C1を位置P11から位置P12、位置P13、位置P14の順に移動させる。また数値制御プログラムは、並進部分C1を位置P12に移動させた後に、回転部分C2を回転させて、回転部分C2に取り付けられた工具の姿勢を先端が垂直下向きの姿勢から、先端が斜め左下向きの姿勢に変更する。上記の一連の動作をしたときの工具経路D1と、基準点経路D2が図21および図22に示されている。
図21には、基準点である回転中心点A2の可動範囲R3が示されている。基準点経路D2と可動範囲R3とに着目すると、図21の例では、並進部分C1が位置P13から位置P14に移動する途中で、基準点経路D2が可動範囲R3から出てしまっている。このため、数値制御プログラムはこのまま実行することはできず、加工対象物OBの取り付け位置を変更したり、取り付け位置の変更に伴う数値制御プログラムの修正が必要であることが分かる。
図16の説明に戻る。プログラム記憶部14bは、数値制御装置1cの外部から入力されると、入力された数値制御プログラムを記憶する(ステップS201)。プログラム解析部15bは、プログラム記憶部14bが記憶する数値制御プログラムを解析する(ステップS202)。具体的には、プログラム解析部15bは、数値制御プログラムが直接的または間接的に利用する座標系を特定し、数値制御プログラムに記述された動作指令に基づいて工具経路、基準点経路および工具経路上の点と基準点経路上の点との対応関係を計算する。
図21の例では、数値制御プログラムは、G54ワーク座標系のみを使用して動作指令を記述しているため、数値制御プログラムが直接的に利用する座標系はG54ワーク座標系の1つである。G54ワーク座標系はG92座標系を基準として設定され、G92座標系は外部ワーク座標系を基準として設定され、外部ワーク座標系は機械座標系を基準として設定される。このため、数値制御プログラムが間接的に利用する座標系は、G92座標系、外部ワーク座標系および機械座標系の3つである。したがってプログラム解析部15bは、これら4つの座標系を数値制御プログラムが直接的または間接的に利用する座標系として特定する。
プログラム解析部15bは、工具経路および基準点経路のそれぞれを計算し、計算した工具経路および基準点経路のそれぞれに、G54ワーク座標系を対応づける情報を付与する。さらにプログラム解析部15bは、回転中心点A2を中心に工具を傾ける動作に対応する工具経路の部分B1に対してのみ、工具姿勢が変化していることを示す情報を付与する。プログラム解析部15bは、工具経路のうち、部分B1以外には、工具姿勢が変化しないことを示す情報を付与する。
プログラム解析部15bは、数値制御プログラム全体の開始地点および終了地点と、工具姿勢を変化させる動作の開始地点および終了地点とについて、工具経路上の点と基準点経路上の点との対応関係を計算する。
図16の説明に戻る。座標系表示部11bは、ステップS202で特定した4つの座標系に対して、それぞれの設定値に従って表示位置を計算し、座標系表示データを作成する(ステップS203)。このとき、図21の例では、それぞれの座標系に対して定められた表示効果として、表示色を用いる。具体的には、座標系表示部11bは、機械座標系には緑色、外部ワーク座標系には紫色、G92座標系には藍色、G54ワーク座標系には橙色を使用して、座標系を表示する。
関係表示部12bは、ステップS202で特定された4つの座標系のそれぞれの組み合わせについて、座標系の間の関係を示す関係表示データを作成する(ステップS204)。
経路表示部16bは、プログラム解析部15bが計算した経路と経路上の点の対応関係とを示す表示データである経路表示データを作成する(ステップS205)。このとき図21の例では、経路表示部16bは、工具経路および基準点経路の両方に対して、工具経路および基準点経路の基準となるG54ワーク座標系の表示色と同じ橙色を用いて表示データを作成する。また経路表示部16bは、工具経路を示す線と基準点経路を示す線とで使用する線の太さを変えて、工具経路と基準点経路を区別することができるようにする。
また経路表示部16bは、工具姿勢に基づいて、表示効果を変えている。具体的には経路表示部16bは、工具姿勢が変化する経路の部分B1に対しては破線を使用し、部分B1以外の経路では実線を使用することで、工具姿勢の変化の有無を区別することができるようにしている。
さらに経路表示部16bは、図21の例では、プログラム解析部15bが計算した工具経路上の点と、基準点経路上の点との対応関係を示す情報に基づく経路表示データを作成する。具体的には、経路表示データは、数値制御プログラム全体の開始地点の工具位置と基準点位置とを結ぶ線E1と、数値制御プログラム全体の終了地点の工具位置と基準点位置とを結ぶ線E2とを含む。さらに経路表示データは、工具姿勢を変化させる動作の開始地点の工具位置と基準点位置とを結ぶ線E3と、終了地点の工具位置と基準点位置とを結ぶ線E4とを含む。
可動範囲表示部17bは、数値制御装置1cが制御する対象の機械の可動範囲の情報と座標系設定記憶部21bが記憶する座標系設定の情報とから、可動範囲の基準点である回転中心点A2の可動範囲R3を表す可動範囲表示データを作成する(ステップS206)。可動範囲が基準点の可動範囲である点以外、具体的な表示データの作成方法は実施の形態2と同様である。またステップS207の処理内容は実施の形態2と同様である。
図23は、実施の形態3にかかる数値制御装置1cに工具姿勢の変化しない数値制御プログラムが入力された場合の表示画面の一例を示す図である。図24は、図23に示す画面に対応する機械の動きを説明するための図である。工具姿勢を変化させない場合、可動範囲の基準点と工具の先端点A1との相対位置は変わらないため、基準点経路と工具経路とは平行となる。
なお、図23および図24に示す例においても、図21および図22に示す例と同様に、工具経路は工具の先端点A1の移動経路であり、基準点は、回転部分C2の回転中心点A2である。図24に示す加工対象物OBは図22に示す加工対象物OBと同じである。
図23および図24に示す例では、加工対象物OBの上面を加工する。この数値制御プログラムは、並進部分C1を位置P21から位置P22、位置P23の順番で移動させる。移動の間、数値制御プログラムは、回転部分C2を回転させることはしないため、工具は垂直下向きの姿勢のままである。上記の一連の動作をしたときの工具経路D3と基準点経路D4とが図23および図24に示されている。また図23には、可動範囲の基準点である回転中心点A2の可動範囲R3が示されている。
図23で基準点経路D4と可動範囲R3とに注目すると、並進部分C1が位置P22から位置P23に移動する途中で基準点経路D4が可動範囲R3から出てしまっている。このため、この数値制御プログラムはこのままでは実行することができず、加工対象物OBの取り付け位置を変更したり、取り付け位置の変更に合わせた数値制御プログラムの修正が必要であることが分かる。
図23および図24に示す例では、工具姿勢が変化しないため、経路を表す線には全て実線が使用されている。また基準点と工具の先端点A1とは平行に移動するため、基準点が水平方向で可動範囲の外に出た地点で、工具の先端点A1も可動範囲の外に出る。これに対して、図21および図22に示す例では、基準点が可動範囲の外に出た地点でも、工具の先端点A1は可動範囲の中にとどまっている。このように、図21と図23とを比較することで、工具の姿勢が変化する場合に、基準点と基準点経路とを利用することが効果的であることが分かる。
以上説明した本発明の実施の形態3は一例である。上記の実施の形態では、プログラム解析部15bは、工具経路上の点と基準点経路上の点との対応関係を4つの地点で計算することとしたが、本実施の形態はかかる例に限定されない。プログラム解析部15bは、4つ未満または5つ以上の地点で、例えば動作指令ごとに、これらの対応関係を計算してもよい。また複数の対応関係を表示すると表示画面が見づらくなる場合、表示部13bは、表示尺度などに応じて、対応関係を示す線を間引いて表示してもよい。
以上説明したように、本発明の実施の形態3にかかる数値制御装置1cは、工具の姿勢が変化したとしても機械の位置が可動範囲内であるか否かを判定するための基準点の移動経路である基準点経路を表示する。したがって、工具経路では機械の位置が可動範囲にあるか否かを判定できない場合であっても、基準点経路を見ることで、数値制御プログラムを実行することが可能であるか否かを判定することが可能になる。
また、数値制御装置1cは、基準点経路上の点と工具経路上の点との対応関係を表示するため、基準点経路の部分と工具経路の部分との対応関係を特定することが容易になる。したがって、可動範囲から出ている基準点経路部分での工具の動きを確認したり、工具が特定の動きをしているときに可動範囲に対する余裕がどの程度あるかを確認したりすることが容易になる。
また数値制御装置1cは、上記の対応関係を、対応する基準点と工具の先端位置とを結ぶ線で示す。この線は、その地点における工具の垂直方向に対する傾きと一致する。このため、対応関係を基準点と基準点と対応する工具の先端位置とを結ぶ線で示すことで、工具の姿勢を示す効果がある。さらに、図21に示す例では、線E3と線E4とを参照すると、工具の姿勢は、線E3が示す傾きから線E4が示す傾きに変化することが分かる。このように、対応関係を基準点と基準点と対応する工具の先端位置とを結ぶ線で示すことで、経路上のある地点における工具の姿勢や、工具の姿勢の連続的な変化について理解を助ける効果がある。
また、数値制御装置1cは、工具姿勢が変化する部分の経路を、工具姿勢が変化していない部分の経路と区別して表示する。このため、工具姿勢が変化していない部分の経路を把握することが可能である。工具姿勢が変化していない部分では、工具の先端と基準点とは平行移動する。このため、工具姿勢が変化していない部分に着目することによって、工具経路と基準点経路との対応関係を把握することが容易になる。
実施の形態4.
図25は、本発明の実施の形態4にかかる数値制御装置1dの機能構成を示す図である。数値制御装置1dは、座標系表示部11dと、関係表示部12dと、表示部13dと、プログラム記憶部14dと、比較対象選択部18dと、比較表示部19dと、加工経路情報作成部20dと、座標系設定記憶部21dとを有する。
プログラム記憶部14dは実施の形態1のプログラム記憶部14aと同様の機能を有し、加工経路情報作成部20dは加工経路情報作成部20aと同様の機能を有し、座標系設定記憶部21dは、座標系設定記憶部21aと同様の機能を有するため、ここでは説明を省略する。
比較対象選択部18dは、座標系設定の比較を行う対象の設定情報を2つ受け付ける。座標系表示部11dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象について、それぞれ座標系表示データを作成する。それぞれの座標系表示データは、実施の形態1と同様である。関係表示部12dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象について、それぞれ関係表示データを作成する。それぞれの関係表示データは、実施の形態1と同様である。
比較表示部19dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象を比較し、設定が異なる部分を強調表示する比較表示データを作成する。比較対象の一方が、数値制御装置1dに対して行われている現在の座標系設定である場合、比較表示部19dは、座標系設定記憶部21dが記憶する座標系設定を参照する。
表示部13dは、座標系表示部11dが作成する座標系表示データと、関係表示部12dが作成する関係表示データと、比較表示部19dが作成する比較表示データとを合成して合成表示データを作成し、合成表示データを表示する。
図26は、図25に示す数値制御装置1dの動作を示すフローチャートである。図27は、図25に示す数値制御装置1dが表示する表示画面の一例を示す図である。数値制御装置1dの比較対象選択部18dは、座標系設定の比較を行う対象を2つ受け付ける(ステップS401)。選択することができる比較対象は、過去に保存した座標系の設定情報、または、数値制御装置1dに設定されている現在の座標系の設定情報である。図27の例では、ABCという名称で保存された座標系設定の保存データと、現在の座標系設定とが選択されている。
座標系表示部11dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象について、それぞれ座標系表示データを作成する(ステップS402)。それぞれの座標系表示データの作成の方法は、実施の形態1と同様である。したがって図27に示す例では、座標系表示部11dは、保存データABCの座標系設定に対してと、現在の座標系設定に対しての合計2回、実施の形態1と同様の座標系表示データの作成処理を実行する。
関係表示部12dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象について、それぞれ関係表示データを作成する(ステップS403)。それぞれの関係表示データの作成の方法は、実施の形態1と同様である。関係表示部12dは、座標系設定を変えて合計2回、関係表示データの作成処理を実行する。
比較表示部19dは、比較対象選択部18dが受け付けた2つの対象を比較して、設定が異なる部分を区別して表示するための比較表示データを作成する(ステップS404)。図27の例では、G55ワーク座標系のy座標の設定値が、保存データABCでは「20」であり、現在の設定では「10」である。比較表示部19dは、保存データABCのG55ワーク座標系のy座標値である「20」と、G55ワーク座標系を示す「G55」という文字列とに下線を表示する比較表示データを作成する。比較表示部19dは、現在の設定のG55ワーク座標系のy座標値である「10」と、G55ワーク座標系を示す「G55」という文字列とに下線を表示する比較表示データを作成する。
表示部13dは、座標系表示部11dが作成する座標系表示データと、関係表示部12dが作成する関係表示データと、比較表示部19dが作成する比較表示データとを合成して合成表示データを作成し、合成表示データを表示する(ステップS405)。表示範囲の設定に関しては、実施の形態1と同様である。
なお、ステップS404で座標系設定の違いを区別して表示する方法は、下線を表示する表示効果に限らない。比較表示部19dは、実施の形態2で表示効果の例として挙げた、線の種類、線の太さ、色、影付け、網掛け、表示の透明度、経時的な表示効果の変化などを利用して、比較表示データを作成することができる。また、比較を行う対象のそれぞれで、実施の形態2または実施の形態3で示したように、経路を表示してもよいし、さらに経路の違いがある部分を区別して表示してもよい。
以上説明したように、本発明の実施の形態4にかかる数値制御装置1dは、2つの座標系設定のデータの間で、違いがある部分を区別して表示する。このため、2つの座標系設定の間で同じ部分と違う部分とを容易に確認することが可能になる。したがって、過去に実行したことのある加工を再度行うときに、過去に実行したときの座標系設定の保存データと、現在の座標系設定との間で、同じにしたい部分が同じになっていることを容易に確認することができる。また、素材の設置誤差に合わせるために、過去の座標系設定とは異なる設定をしたい場合には、過去に実行したときと異なる設定をした部分が、確実に異なる設定となっていることを容易に確認することができる。したがって、保存した座標系設定を参考に現在の座標系設定を行う場合に、設定の誤りを抑制し、作業時間を短縮することができる。
図28は、本発明の実施の形態1〜4にかかる数値制御装置1a〜1dのハードウェア構成を示す図である。数値制御装置1a〜1dの各構成要素は、メモリ101と、プロセッサ102と、表示装置103とを用いて実現することができる。
メモリ101は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)などである。
プロセッサ102は、CPU(Central Processing Unit)であり、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などとも呼ばれる。表示装置103は、表示画面を出力する出力装置である。
座標系表示部11a,11b,11dと、関係表示部12a,12b,12dと、プログラム解析部15bと、経路表示部16bと、可動範囲表示部17bと、比較対象選択部18dと、比較表示部19dと、加工経路情報作成部20a,20b,20dと、座標系設定記憶部21a,21b,21dと、プログラム記憶部14a,14b,14dとは、プロセッサ102がメモリ101に記憶されたコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより実現される。なお、表示部13a,13b,13dの機能は、プロセッサ102が、メモリ101に記憶されたコンピュータプログラムを読み込んで実行する際に、表示装置103を用いることで実現される。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。