以下、液体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、液体噴射装置11は、略矩形箱状をなす本体ケース12を備えている。この本体ケース12内の前方下部には、媒体Mを支持する支持部材13が主走査方向Xとなる本体ケース12の長手方向(図1において左右方向)に沿って設けられている。
本体ケース12内において支持部材13の後部上方には、主走査方向Xに延びるガイド軸14が設けられている。このガイド軸14は、主走査方向Xに往復移動するキャリッジ15を支持している。また、本体ケース12内の後方側面においてガイド軸14の両端のうち、一端(図中右端)と対応する位置には駆動プーリー16が回転自在に支持され、他端(図中左端)と対応する位置には従動プーリー17が回転自在に支持されている。
駆動プーリー16には、キャリッジモーター18が連結されている。また、駆動プーリー16及び従動プーリー17の間には、無端状のタイミングベルト19が掛装されている。そして、キャリッジモーター18の駆動力がタイミングベルト19を通じてキャリッジ15に伝達されることにより、キャリッジ15が主走査方向Xに往復移動する。
キャリッジ15の下面側には、液体の一例としてのインクを噴射する複数のノズル(不図示)を有する液体噴射部21が取り付けられている。また、主走査方向Xにおけるキャリッジ15の移動範囲内には、液体噴射部21の退避位置となるホームポジションHPが設けられている。ホームポジションHPの下方には、各種のメンテナンス処理を実施するメンテナンス装置22が設けられている。
また、図1に示すように、キャリッジ15には、液体噴射部21に供給するインクの圧力を調整するバルブユニット23が設けられている。バルブユニット23には、液体収容部30に収容されているインクが供給流路24を通じて供給される。
また、液体噴射装置11は、液体収容部30が一定の姿勢で装着される装着部25を備えている。装着部25は、装着された液体収容部30に設けられた基板と電気的に接続し、同液体収容部30のインクの種類やインク残量等といった情報を読み取る。
ここで、図1には、第1のインクを収容する第1の液体収容部301、第1の液体収容部301が装着される第1の装着部251及び第1のバルブユニット231に第1のインクを供給する第1の供給流路241についてのみ図示している。他のインク用の液体収容部、装着部及び供給流路については、第1のインク用の各構成と同一構成であるため、図示及び説明を省略するものとする。
そして、液体噴射装置11は、主走査方向Xに往復移動するキャリッジ15に支持された液体噴射部21から媒体Mに向かってインクを噴射させることで、同媒体Mに文字や画像を印刷する「印刷動作」を行う。なお、本実施形態では、この印刷動作がインクを噴射する「噴射動作」の一例に相当する。また、印刷動作は、例えば、液体噴射装置11と有線・無線を介して接続された不図示のコンピューター等からの印刷指示によって、印刷ジョブが発生した場合に実行される。
次に、図1及び図2を参照して、液体収容部30について説明する。
図1に示すように、液体収容部30は、箱状をなすケース部材31と、ケース部材31に格納された液体収容袋40と、液体収容袋40を圧縮する第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33と、を備えている。
図2に示すように、液体収容袋40は、2枚の略長方形状のフィルムを重ね合わせた状態で、その4辺の縁を熱溶着することで袋状に形成されている。こうして、液体収容袋40には、液体を貯留可能な貯留部41が形成されている。
さらに、液体収容袋40には、同液体収容袋40の長手方向の略中央を短手方向に向かって熱溶着することで仕切部42が設けられている。仕切部42は、液体収容袋40の貯留部41を第1の貯留部411及び第2の貯留部412に区画している。ここで、第1の貯留部411及び第2の貯留部412は、その一部が連通部43を介して互いに連通している。すなわち、液体収容袋40の短手方向において、仕切部42の長さ寸法は、液体収容袋40の長さ寸法よりも短くなっている。
液体収容袋40の一辺には、第1の貯留部411と連通する供給口44が設けられている。供給口44は、液体収容部30を装着部25に装着した際に供給流路24と接続される。また、液体収容袋40には、第1の貯留部411及び第2の貯留部412の容量を累計した全容量よりも少量のインクが注入される。このため、インクを収容した状態でも、液体収容袋40は外力に応じてその外形が変形可能になっている。
また、本実施形態において、液体収容部30に収容されるインクは、顔料粒子や樹脂等の粒子(固体物質)がインク溶媒中に分散した液体である。このため、インク中の粒子は、液体収容部30の液体収容袋40の鉛直下方に沈降する場合がある。以降の説明では、インク中の粒子の沈降度合を「沈降度」とも言う。すなわち、沈降度が大きいほど、液体収容袋40(液体収容部30)において、多くの粒子が沈降していることを意味する。
また、沈降度は、単純に液体収容袋40内において沈降した粒子の質量を言うのではなく、液体収容袋40内に収容されるインクに含まれる粒子のうちどれだけの粒子が沈降しているかの割合を言うものとする。すなわち、液体収容袋40におけるインク残量が少ない場合であっても、同インク残量が多い場合よりも、沈降度が大きくなる場合があるものとする。
図1に示すように、第1の圧縮機構32は、液体収容袋40の第1の貯留部411の厚み方向における両側において、第1の貯留部411を圧縮可能な圧縮板34を有している。また、第2の圧縮機構33は、液体収容袋40の第2の貯留部412の厚み方向における両側において、第2の貯留部412を圧縮可能な圧縮板35を有している。
こうして、第1の圧縮機構32が第1の貯留部411を圧縮したり、第2の圧縮機構33が第2の貯留部412を圧縮したり、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33が第1の貯留部411及び第2の貯留部412を圧縮したりすることで、液体収容袋40に収容されたインクがバルブユニット23に向かって加圧供給される。
また、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33は、第1の貯留部411の圧縮と第2の貯留部412の圧縮とを交互に繰り返すことで、第1の貯留部411及び第2の貯留部412の間でインクを流動させて、液体収容袋40内における沈降度を改善する「撹拌動作」を行う。こうした点で、本実施形態では、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構が液体収容部30に収容されるインクを撹拌する「撹拌部」の一例に相当する。
詳しくは、第1の圧縮機構32が第1の貯留部411を圧縮することで、連通部43を介して、第1の貯留部411に貯留されたインクを第2の貯留部412に流動させる。続いて、第2の圧縮機構33が第2の貯留部412を圧縮することで、連通部43を介して、第2の貯留部412に貯留されたインクを第1の貯留部411に流動させる。これを繰り返すことで、液体収容袋40における粒子の沈降が解消される。なお、以降の説明では、一方の圧縮機構が駆動した後、他方の圧縮機構が駆動することで、「1回」の撹拌動作が実行されたものとして取り扱う。
次に、図3を参照して、液体噴射装置11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、液体噴射装置11は、装置を統括的に制御する制御部50を備えている。制御部50の入力側インターフェースには装着部25が接続され、制御部50の出力側インターフェースには液体噴射部21、キャリッジモーター18、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33が接続されている。
そして、制御部50は、液体噴射部21及びキャリッジモーター18の駆動を制御することで印刷動作を実行させる。また、制御部50は、装着部25に装着された液体収容部30の情報や他の情報に基づいて、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33の駆動を制御することで、液体収容部30の撹拌動作を実行させる。
また、本実施形態では、制御部50は、液体収容部30に関する各種の情報に基づいて、液体収容部30の沈降度を判定(演算)する。すなわち、本実施形態では、制御部50が、液体収容部30の沈降度を判定する「判定部」の一例である。また、以降の説明では、「沈降度」に符号「Sd」を付すか否かによって、制御部50が判定した沈降度であるか否かを区別する。すなわち、制御部50が判定する沈降度を「沈降度Sd」とする。
以下、本実施形態における沈降度Sdの判定方法について説明する。
まず、液体収容部30において、撹拌動作を実行しない場合には、時間の経過に伴って、液体収容部30の鉛直下方に沈降する粒子が多くなる。したがって、本実施形態において、制御部50は、撹拌動作を実行していない期間が長い場合には同期間が短い場合よりも、沈降度Sdを大きく判定することとした。
なお、ここで言う撹拌動作を実行していない期間は、撹拌動作を前回実行してからの経過時間である。また、撹拌動作を実行していない期間には、液体収容部30の製造後経過時間及び液体収容部30の装着部25に対する装着後経過時間等を含んでもよい。
また、液体収容部30において、液体収容袋40に収容されるインクの溶媒の粘度が高い程インク中の粒子が沈降し難くなる。また、インク中の粒子の粒径(大きさ)が小さいほど同粒子が沈降し難くなる。こうして、インクの種類によっては、経過時間が等しい場合であっても、沈降度が異なる態様で変化する場合がある。
このため、本実施形態において、制御部50は、液体収容袋40に収容されるインクの種類に基づいて沈降度Sdを判定することとした。例えば、制御部50は、インクの溶媒の粘度が低い場合には同粘度が高い場合よりも、沈降度Sdを大きく判定する。また、制御部50は、インクに含まれる粒子の粒径が大きい場合には同粒径が小さい場合よりも、沈降度Sdを大きく判定する。
また、液体収容部30は、その保管時の姿勢や環境によっては、粒子の沈降箇所が異なったり、同沈降箇所に沈降する粒子の量が異なったりすることがある。すなわち、装着部25に装着直後の液体収容部30は、その装着前の保管状態に応じて沈降度に差異が生じていることがある。
このため、本実施形態では、制御部50は、液体収容部30の交換後において、交換後の液体収容部30の撹拌動作を実行させていない場合には、同液体収容部30の撹拌動作を実行させた場合よりも、沈降度Sdを大きく判定することとした。すなわち、液体収容部30を交換した場合には、同液体収容部30を交換していない場合よりも、液体収容部30の沈降度Sdが大きく判定される。
こうして、本実施形態では、直近の撹拌動作を実行してからの経過時間、液体収容部30に収容されるインクの種類及び液体収容部30の交換後に撹拌動作が実行されているか否かに応じて、沈降度Sdが判定される。詳しくは、撹拌動作を実行してからの経過時間に応じた沈降度Sdの変化を示すマップ等を実験によって予め求めておき、同マップ等を参照することで沈降度Sdを判定してもよい。
また、インクの種類については、インク毎に沈降度Sdの変化し易さを係数として求めておき、撹拌動作を実行してからの経過時間に応じて演算された沈降度Sdに、同係数を乗じることで考慮してもよい。上記係数の一例としては、インク中の粒子が沈降し易いインクについては「1.2」とする一方、インク中の粒子が沈降し難いインクについては「0.8」としてもよい。
さらに、液体収容部30の交換後に撹拌動作を実行したか否かについては、撹拌動作を実行していない場合の方が撹拌動作を実行した場合よりも大きくなるような係数を用意して、撹拌動作を実行してからの経過時間に応じて演算された沈降度Sdに、その係数を乗じることで考慮してもよい。上記係数の一例としては、液体収容部30の交換後に撹拌動作を実行しなかった場合については「1.2」とする一方、液体収容部30の交換後に撹拌動作を実行した場合については「1.0」としてもよい。
そして、沈降度が大きい場合、すなわち、液体収容袋40において、インクに含まれる粒子のうち沈降している粒子の割合が大きい場合には、印刷動作の実行により良好な印刷品質を得ることができないおそれがある。これは、沈降度が大きい場合には、液体噴射部21から噴射されるインク中の顔料粒子や樹脂の含有率が低下することで、媒体M上に着弾したインクの発色が悪く(薄く)なるためである。以降の説明では、このようにインクの発色が悪くなることを「印刷品質の低下」とも言う。
そこで、本実施形態では、沈降度Sdに応じて、印刷動作及び撹拌動作のうち一方の動作を実行することとした。すなわち、沈降度Sdが第1の閾値(以下「第1の閾値Th1」ともいう。)以上である場合に撹拌動作を実行させる一方、沈降度Sdが第1の閾値Th1よりも大きな第2の閾値(以下「第2の閾値Th2」ともいう。)未満である場合に印刷動作を実行させることとした。さらに、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であって第2の閾値Th2未満である場合には、撹拌動作よりも印刷動作を優先して実行させることとした。
ここで、第1の閾値Th1とは、印刷動作を実行しても印刷品質に影響を与えない程度に粒子が沈降しているときの沈降度であり、第2の閾値Th2とは、印刷動作を実行すると印刷品質に影響を与える程度に粒子が沈降しているときの沈降度である。言い換えれば、第1の閾値Th1は軽微な沈降状態を示す閾値であり、第2の閾値Th2は重度な沈降状態を示す閾値である。なお、第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2は、予め各種の条件で印刷動作を実行し、各種の条件における沈降度Sdと、各種の条件における印刷物の印刷品質の評価結果とを関係付けることで決定すればよい。
また、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満である場合には撹拌動作を実行する必要がなく、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であって第2の閾値Th2未満である場合には撹拌動作を実行することが望ましく、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合には撹拌動作を実行する必要があるといえる。また、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合には印刷動作が実行可能であり、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合には印刷動作が実行不能であるといえる。
こうして、本実施形態では、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であって第2の閾値Th2未満の場合、言い換えれば撹拌動作を実行することが望ましい場合であっても、印刷ジョブが発生している場合には印刷動作の実行が可能となる。
また、沈降度Sdが大きい場合には、沈降度Sdが小さい場合よりも、インクに含まれる粒子のうち沈降している粒子の割合が多い分、液体収容部30の沈降度Sdを第1の閾値Th1未満に改善させるためには、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33の撹拌動作における撹拌回数を多くすることが望ましい。そこで、本実施形態では、制御部50は、沈降度Sdが大きい場合には、同沈降度Sdが小さい場合よりも、撹拌動作における撹拌回数(撹拌強度)を多くすることとした。
ここで、撹拌強度とは、液体収容部30の内部におけるインクをどれだけ流動させるかを意味する。すなわち、「撹拌強度が高い」とは液体収容部30の内部においてインクが強く(多く)流動することを言う。このため、本実施形態であれば、撹拌強度は、第1の圧縮機構32及び第2の圧縮機構33の撹拌動作における撹拌回数に比例する。
次に、図4〜図6に示すフローチャートを参照して、液体噴射装置11の制御部50が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、予め設定されている制御サイクル毎に繰り返し実行される処理ルーチンである。
図4に示すように、制御部50は、沈降度Sdを取得する(ステップS11)。ここで、沈降度Sdは、上述したように、前回の撹拌動作を実行してからの経過時間等、液体収容部30に関する各種の情報に基づいて判定される。続いて、制御部50は、第1の閾値Th1を取得し(ステップS12)、第2の閾値Th2を取得する(ステップS13)。
そして、制御部50は、印刷動作の実行中であるか否かを判定し(ステップS14)、印刷動作の実行中である場合(ステップS14:YES)、第1の処理ルーチンを実行する(ステップS15)。ここで、第1の処理ルーチンとは、印刷動作の実行中に撹拌動作を割込実行させるか否かを確認するためのサブルーチンである。第1の処理ルーチンを実行後、制御部50は、その処理を一旦終了する。
一方、ステップS14において、印刷動作の実行中でない場合(ステップS14:NO)、制御部50は、撹拌動作の実行中であるか否かを判定する(ステップS16)。そして、撹拌動作の実行中である場合(ステップS16:YES)、第2の処理ルーチンを実行する(ステップS17)。ここで、第2の処理ルーチンとは、撹拌動作の実行中に印刷動作を割込実行させるか否かを確認するためのサブルーチンである。第2の処理ルーチンを実行後、制御部50は、その処理を一旦終了する。
一方、ステップS16において、撹拌動作の実行中でない場合(ステップS16:NO)、制御部50は、印刷ジョブがあるか否かを判定する(ステップS18)。印刷ジョブがある場合(ステップS18:YES)、制御部50は、ステップS11で取得した沈降度SdがステップS13で取得した第2の閾値Th2未満であるか否かを判定する(ステップS19)。
沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合(ステップS19:YES)、すなわち、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdである場合、制御部50は、印刷ジョブに係る印刷動作の実行を開始させる(ステップS20)。その後、制御部50は、その処理を一旦終了する。
一方、ステップS18において、印刷ジョブがない場合(ステップS18:NO)、制御部50は、沈降度SdがステップS12で取得した第1の閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップS21)。また、ステップS19において、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合(ステップS19:NO)、すなわち、印刷ジョブがあるが液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できない沈降度Sdである場合、制御部50は、沈降度Sdが取得した第1の閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップS21)。
沈降度Sdが第1の閾値Th1未満である場合(ステップS21:NO)、すなわち、撹拌動作を実行させる必要がない場合、制御部50は、その処理を一旦終了する。一方、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上である場合(ステップS21:YES)、すなわち、撹拌動作を実行させる必要がある場合、制御部50は、沈降度Sdに応じた撹拌強度を決定し(ステップS22)、その撹拌強度で撹拌動作の実行を開始させる(ステップS23)。その後、制御部50は、その処理を一旦終了する。
こうして、図4に示すフローチャートにおいて、印刷動作を実行可能であるか否かの判定(ステップS19)を、撹拌動作を実行する必要があるか否かの判定(ステップS21)よりも、先に行うことで、印刷動作の実行が撹拌動作の実行よりも優先される。
また、上記処理ルーチンは、少なくともステップS21が否定判定となるまで繰り返し実行されるため、上記処理ルーチンにおいて、印刷動作中であれば第1の処理が繰り返し実行され、撹拌動作中であれば第2の処理が繰り返し実行されることとなる。
次に、図5を参照して、印刷動作の実行中に撹拌動作を割込実行させるか否かを確認する第1の処理ルーチンを説明する。
図5に示すように、制御部50は、ステップS11で取得した沈降度SdがステップS13で取得した第2の閾値Th2以上であるか否かを判定し(ステップS31)、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合(ステップS31:NO)、その処理を一旦終了する。すなわち、この場合(ステップS31:NO)とは、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdである場合であって、撹拌動作を割込実行させる必要がないと判断される場合である。
一方、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合(ステップS31:YES)、すなわち、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できない沈降度Sdである場合、制御部50は、印刷動作を中断させ(ステップS32)、沈降度Sdに応じた撹拌強度を決定する(ステップS33)。続いて、制御部50は、決定した撹拌強度で撹拌動作の実行を開始させる(ステップS34)。そして、制御部50は、沈降度Sdを再度取得し(ステップS35)、その沈降度Sdが第2の閾値Th2未満であるか否かを判定する(ステップS36)。
沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合(ステップS36:NO)、すなわち液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できない沈降度Sdである場合、制御部50は、その処理を先のステップS35に移行する。こうして、沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdとなるまで、ステップS35及びステップS36の処理が再帰的に実行される。
沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合(ステップS36:YES)、すなわち液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdとなった場合、制御部50は、割込実行させていた撹拌動作を停止(終了)させ(ステップS37)、印刷動作の実行を再開させる(ステップS38)。その後、制御部50は、その処理を終了させる。
因みに、ステップS36では、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合を、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdとなった場合としているが、実際には、印刷動作の実行の再開直後に沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となることで、撹拌動作が再度割込実行されないことが望ましい。このため、ステップS36では、第2の閾値Th2未満であって第1の閾値Th1以上である第3の閾値Th3未満であるか否かを判定することが望ましい。なお、後述するステップS42においても同様である。
次に、図6を参照して、撹拌動作の実行中に印刷動作を割込実行させるか否かを確認する第2の処理ルーチンを説明する。
図6に示すように、制御部50は、印刷ジョブがあるか否かを判定する(ステップS41)。印刷ジョブがない場合(ステップS41:NO)、撹拌動作の実行を継続させるために、制御部50は、その処理を一旦終了する。
一方、印刷ジョブがある場合(ステップS41:YES)、制御部50は、ステップS11で取得した沈降度SdがステップS13で取得した第2の閾値Th2未満であるか否かを判定する(ステップS42)。
沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合(ステップS42:NO)、すなわち、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できない沈降度Sdである場合、撹拌動作の実行を継続させるために、制御部50は、その処理を一旦終了する。
一方、ステップS42において、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合(ステップS42:YES)、すなわち、液体収容部30の沈降度Sdが印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdである場合、制御部50は、撹拌動作を中断させ(ステップS43)、印刷動作の実行を開始させる(ステップS44)。
続いて、制御部50は、沈降度Sdを再度取得し(ステップS45)、その沈降度Sdが第2の閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS46)。沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合(ステップS46:YES)、制御部50は、ステップS44で開始させた印刷動作を中断させて、その処理を後述するステップS48に移行する。なお、この場合(ステップS46:YES)とは、印刷動作の実行を継続することで、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上に大きくなる場合であって、印刷動作の実行の継続が不可能となる場合である。
一方、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合(ステップS46:NO)、制御部50は、印刷動作の実行が終了したか否かを判定し(ステップS47)、印刷動作が終了していない場合(ステップS47:NO)、その処理をステップS45に移行させる。すなわち、印刷動作の実行が終了するまで、ステップS45〜S47の処理が繰り返し実行される。
ステップS47において、印刷動作の実行が終了した場合(ステップS47:YES)、制御部50は、撹拌強度を再決定し(ステップS48)、再決定された撹拌強度で撹拌動作の実行を再開させる(ステップS49)。
ここで、印刷動作を割込実行させるために、印刷動作の実行を中断させた場合には、ステップS22で決定された撹拌回数(撹拌強度)の撹拌が全て行われておらず、液体収容部30の沈降度Sdを改善させる余地がある。そこで、本実施形態では、印刷動作を実行するために撹拌動作の実行を中断した場合、印刷動作の実行が終了した後に撹拌動作の実行が再開される。
また、印刷動作が割込実行されるまでは、撹拌動作が実行されていることから、実行が再開される撹拌動作の撹拌強度は、中断された撹拌動作の撹拌強度よりも弱くしてもよい。このため、本実施形態では、再開した撹拌動作における撹拌強度を中断した撹拌動作の実行内容に応じて変更することとした。
例えば、ステップS22において決定した撹拌回数(撹拌強度)を「目標回数Nt」とし、印刷動作が割込実行されるまでに行った撹拌回数を「実行回数Nr」とし、再開した撹拌動作における撹拌回数を「残余回数Nd」としたとする。この場合、ステップS48で再決定される撹拌強度に相当する残余回数Ndは、目標回数Ntから実行回数Nrを差し引いた差とすればよい。
また、印刷動作が実行されると、印刷動作に使用されるインクが液体収容部30から流出することで、液体収容袋40内でインクが流動する。すなわち、印刷動作の実行が、液体収容部30の沈降度に影響を与える場合がある。
例えば、印刷動作の実行に伴う液体収容袋40内のインクの流動量が大きい場合には、インクの撹拌効果が大きく、印刷動作の実行を継続することによって沈降度Sdが次第に低くなる場合がある。一方、印刷動作の実行に伴う液体収容袋40内のインクの流動量が小さい場合には、インクの撹拌効果が小さく、印刷動作の実行を継続することによって沈降度Sdが次第に高くなる場合がある。
そこで、本実施形態では、再開した撹拌動作における撹拌強度を、印刷動作の実行内容に応じて変更することとした。具体的には、印刷動作を継続して実行した場合の印刷品質の推移を比較することで、印刷動作を実行することが、液体収容部30の沈降度の改善に寄与するか否かを予め判断しておき、それに基づいて撹拌強度を変更すればよい。
そして、印刷動作の実行によって沈降度Sdが小さくなる場合には、上記残余回数Ndから、印刷動作の実行が継続される期間に応じた回数を減算した回数を、再開時の撹拌動作における撹拌回数とすればよい。一方、印刷動作の実行によって沈降度Sdが大きくなる場合には、上記残余回数Ndに、印刷動作の実行が継続される期間に応じた回数を加算した回数を、再開時の撹拌動作における撹拌回数とすればよい。
そして、撹拌動作の実行再開後、制御部50は、その処理を一旦終了させる。
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態の液体噴射装置11の作用について説明する。
まず、図7を参照して、撹拌動作の実行中に印刷ジョブが発生した場合に、印刷動作及び撹拌動作の何れの動作を実行するか否かについて説明する。なお、図7に示すタイミングチャートにおいて、印刷ジョブが発生するタイミングは、第1のタイミングt11である。また、図7に示すタイミングチャートにおいては、説明理解の容易のために、印刷動作の実行を継続することで、沈降度が大きくならないものとした。
また、図7には、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満である場合に限り印刷動作を実行する一方、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上である場合に限り撹拌動作を実行するプリターを比較例として併記した。
図7(a),(b),(c)に破線で示すように、比較例の場合、第1のタイミングt11では、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上となっているため、印刷動作の実行が制限され、撹拌動作の実行が開始される。そして、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満となる第3のタイミングt13において、撹拌動作の実行が終了し、印刷動作の実行が開始される。続いて、第3のタイミングt13の次の第4のタイミングt14において、印刷動作の実行が終了する。
これに対し、図7(a),(b),(c)に実線で示すように、本実施形態の場合、第1のタイミングt11では、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となっているため、印刷動作の実行が制限され(ステップS19:NO)、撹拌動作の実行が開始される(ステップS23)。ここで、第1のタイミングt11から実行が開始される撹拌動作の撹拌強度は、第1のタイミングt11の沈降度Sdに応じて決定される(ステップS22)。
そして、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満となる第2のタイミングt12において、撹拌動作の実行が中断され(ステップS42:YES,ステップS43)、印刷動作の実行が開始される(ステップS44)。こうして、印刷動作の実行を許容できる沈降度Sdとなったタイミングで印刷動作の実行を開始できるため、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満となるまで撹拌動作の実行終了を待機する必要がなくなる。すなわち、印刷ジョブが発生しているにも関わらず、印刷動作を実行することができない期間(ダウンタイム)が短くなる。
続いて、第3のタイミングt13において、印刷動作の実行が終了すると(ステップS47:YES)、第2のタイミングt12で実行が中断された撹拌動作が再開される(ステップS49)。ここで、第3のタイミングt13において、実行が再開される撹拌動作の撹拌強度は、第1のタイミングt11から第2のタイミングt12までの期間における撹拌動作の実行内容や、第2のタイミングt12から第3のタイミングt13までの期間における印刷動作の実行内容に基づいて決定される(ステップS48)。
例えば、第1のタイミングt11で撹拌動作の撹拌回数(撹拌強度)が「20回」と決定され、第2のタイミングt12までに「8回」の撹拌動作が実行された場合には、第3のタイミングt13において、再開後の撹拌動作における撹拌回数が「12回(20回−8回)」に決定される。また、第2のタイミングt12から第3のタイミングt13までの印刷動作の実行によって、「2回」分の撹拌動作に相当するインクの流動が液体収容袋40内に生じていた場合、再開後の撹拌動作における撹拌回数が「10回(12回−2回)」に決定される。こうして、過剰な撹拌回数で撹拌動作の実行が再開されることが抑制される。
そして、第4のタイミングt14において、撹拌動作の実行が終了する。また、第4のタイミングt14では、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満となり、液体収容部30の沈降度Sdが改善された状態となる。
こうして、本実施形態と比較例とを比べると、本実施形態の方が早いタイミング(第2のタイミングt12)から印刷動作の実行を開始することができる。このため、印刷ジョブが発生してから早期に、同印刷ジョブに係る印刷を終了させることができる。
次に、図8を参照して、撹拌動作の実行中に印刷ジョブが発生した場合に、印刷動作及び撹拌動作の何れの動作を実行するか否かについて説明する。なお、図8に示すタイミングチャートにおいて、印刷ジョブが発生するタイミングは、第1のタイミングt21である。また、図8に示すタイミングチャートにおいては、説明理解の容易のために、印刷動作の実行を継続することで、沈降度が大きくなるものとした。
図8(a),(b),(c)に示すように、本実施形態の場合、第1のタイミングt21では、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満となっているため(ステップS19:YES)、印刷動作が実行される(ステップS20)。そして、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となる第2のタイミングt22において、印刷動作の実行が中断され(ステップS31:YES,ステップS32)、所定の撹拌強度で撹拌動作の実行が開始される(ステップS33,S34)。こうして、印刷動作の実行中であっても、印刷動作の実行を許容できない沈降度Sdとなった場合には、印刷品質の低下を抑制するために、印刷動作の実行が中断される。
そして、撹拌動作の実行によって、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満(第3の閾値Th3未満)となる第3のタイミングt23になると(ステップS36:YES)、撹拌動作の実行が終了し(ステップS37)、印刷動作の実行が再開される(ステップS38)。ここで、沈降度Sdが第3の閾値Th3未満となるタイミングで、印刷動作の実行が再開される。このため、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満となるタイミングで、印刷動作の実行を再開する場合において、印刷動作の実行の再開直後に沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となることで、印刷動作の実行がすぐに中断される事態を抑制することができる。
続いて、印刷動作の実行が終了する第4のタイミングt24では、次の印刷ジョブが発生しておらず(ステップS18:NO)、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であるため(ステップS21:YES)、所定の撹拌強度で撹拌動作が実行される(ステップS22,S23)。そして、撹拌動作の実行によって、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満となる第5のタイミングt25において、撹拌動作の実行が終了する。
こうして、本実施形態では、印刷動作の実行中に沈降度Sdが第2の閾値Th2以上になる場合には、撹拌動作を割込実行させることで沈降度Sdを改善させて、その後に、印刷動作の実行が再開される。また、印刷動作の実行が再開されるのは、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満になる前、詳しくは第3の閾値Th3未満になるタイミングである。このため、印刷ジョブが発生しているのにも関わらず、割込実行された撹拌動作によって沈降度Sdが第1の閾値Th1未満になるまで、印刷動作を実行することができないという事態が解消される。すなわち、印刷動作のダウンタイムが低減される。
なお、図7及び図8に示すタイミングチャートにおける印刷動作の実行時間と撹拌動作の実行時間とが似たような間隔になっているが、実際には印刷動作の実行時間に比較して、撹拌動作の実行時間は非常に短い時間となる。
以上説明した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であって第2の閾値Th2未満である場合には、撹拌動作よりも印刷動作が優先して実行されるようにした。このため、沈降度Sdが第1の閾値Th1以上であって第2の閾値Th2未満である場合において、印刷動作を実行する必要がある場合(印刷ジョブが発生している場合)には、撹拌動作の実行を待つことなく印刷動作を実行することができる。したがって、インクの撹拌動作の実行に伴うインクの印刷動作のダウンタイムの低減を図ることができる。
(2)沈降度Sdが第2の閾値Th2以上であって印刷動作をすぐに実行できない場合には、まず撹拌動作が実行される。そして、撹拌動作の実行に伴い沈降度Sdが第2の閾値Th2未満となったタイミングで、撹拌動作の実行が中断されるとともに印刷動作を実行される。このため、沈降度Sdが第1の閾値Th1未満になるまで待機することなく、印刷動作を実行することができるため、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上である場合においても、印刷動作のダウンタイムを低減することができる。
(3)印刷動作が液体収容部30の沈降度に与える影響を踏まえて、中断した撹拌動作を再開するときの撹拌強度を変更することとした。このため、撹拌動作中に印刷動作を割込実行する場合であっても、再開させた撹拌動作を必要以上の撹拌強度で行ったり、再開させた撹拌動作を実行しても液体収容部30の沈降度を改善できなかったりすることを抑制することができる。
(4)中断した撹拌動作の実行内容に応じて、中断した撹拌動作を再開するときの撹拌強度を変更することとした。このため、撹拌動作中に印刷動作を割込実行する場合であっても、再開させた撹拌動作を必要以上の撹拌強度で行ったり、再開させた撹拌動作を実行しても液体収容部30の沈降度を改善できなかったりすることを抑制することができる。
(5)印刷動作中であっても、撹拌動作を割込実行させることで、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となっている状態で、印刷動作の実行が継続されることを抑制することができる。このため、液体収容部30において液体の噴射に適さない程度に粒子が沈降している状態で印刷動作を実行することを抑制することができる。
(6)インクの溶媒の粘度やインク中の粒子の大きさ等といったインクの種類の差異が、沈降度の変化の態様に影響を与える場合があるため、そうしたインクの種類に基づいて沈降度Sdを判定することとした。これによれば、液体噴射装置11が種類の異なるインクを収容する液体収容部30を複数備えている場合であっても、それぞれの液体収容部30に対して適切なタイミングで撹拌動作を実行することができる。
(7)撹拌動作を実行していない期間が長いほど沈降度Sdを大きく判定することとした。このため、撹拌動作を実行していない期間が長い場合には、同期間が短い場合よりも、沈降度Sdが第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2よりも大きくなり易く、撹拌動作が実行され易くなる。したがって、液体収容部30において液体の噴射に適さない程度に粒子が沈降している状態で印刷動作を実行することを抑制することができる。
(8)液体収容部30の交換後において、一度も撹拌動作を実行していない場合には、一度でも撹拌動作を実行した場合よりも、沈降度Sdを大きく判定することとした。このため、液体収容部30の交換直後のように、同液体収容部30の保管状態によって沈降度Sdが大きくなっている可能性がある場合には、撹拌動作が実行され易くなる。したがって、液体収容部30の保管状態に起因して、液体収容部30において液体の噴射に適さない程度に粒子が沈降している状態で印刷動作を実行することを抑制することができる。
(9)沈降度Sdに応じて撹拌動作における撹拌強度が決定されるため、沈降度Sdに応じた適切な撹拌強度で撹拌動作を実行することができる。
なお、上記実施形態は、以下に示すように変更してもよい。
・液体収容部30の液体残量が多い場合には、例えば、「10回」の撹拌動作を実行しても、液体収容部30の沈降度が改善しない場合がある。一方、液体収容部30の液体残量が少ない場合には、例えば、「5回」の撹拌動作を実行するだけで、液体収容部30の沈降度が改善する場合がある。すなわち、液体収容部30の沈降度を改善するためには、液体収容部30の液体残量が多い程、液体収容部30内でインクを強く流動させる必要がある。
そこで、液体収容部30に収容されるインクの残量が多い場合には同残量が少ない場合よりも、撹拌動作における撹拌強度を強くしてもよい。これによれば、液体収容部30の残量に応じた撹拌強度で撹拌動作が実行されるため、インク残量に影響を受けることなく沈降度を改善することができる。
・文字やグラフを印刷する場合には、液体収容部30の沈降度の変化が印刷品質(印刷物の見た目等)に与える影響が小さくなり易く、画像を印刷する場合には、液体収容部30の沈降度の変化が印刷品質に与える影響が大きくなり易い。このように、印刷内容によっては、沈降度の変化に対する印刷品質への影響が小さい場合がある。そこで、制御部50は、媒体Mに対する印刷内容に基づいて第2の閾値Th2を変更してもよい。
これによれば、沈降度が印刷品質に影響し難い印刷内容であれば、第2の閾値Th2が高くなることで撹拌動作が実行され難くなり、撹拌動作の実行による印刷動作のダウンタイムの低減を図ることができる。また、沈降度が印刷品質に影響し易い印刷内容であれば、第2の閾値Th2が低くなることで撹拌動作がされ易くなり、印刷動作の実行による印刷品質の低下を抑制することができる。
・明度の高いインク(例えば、イエローインク)を用いた印刷を行う場合には、液体収容部30の沈降度の変化が印刷品質に与える影響が小さくなり易く、明度の低いインク(例えば、黒インク)を用いた印刷を行う場合には、液体収容部30の沈降度の変化が印刷品質に与える影響が大きくなり易い。これは、明度が高いインクは、沈降度が低い場合から既に明度が高く、沈降度が大きくなることでさらに明度が高くなったとしても、その差異を認識し難いためである。そこで、最初から明度の高いインクは明度の低いインクよりも、第2の閾値Th2を大きく設定しておいても良いし、明度の高いインクを用いた印刷を行う場合には、明度の低いインクを用いた印刷を行う場合よりも、第2の閾値Th2を大きくしてもよい。これによれば、インクの明度に応じて、ダウンタイムの低減と印刷品質の低下の抑制を図ることができる。
・また、モノクロ印刷のように、印刷に使用しないインクがある場合、そのインクについては第1の閾値Th1および第2の閾値Th2と、沈降度Sdとの比較をしないようにしてもよい。これによれば、ダウンタイムの低減を図ることができる。
・印刷動作を実行する場合には、印刷動作に使用されるインク量に相当する量のインクが液体収容部30から液体噴射部21に供給されることに伴って、液体収容袋40内でインクが流動する。そこで、直近の撹拌動作を実行してから、印刷動作を実行した場合には、何らの動作も実行しなかった場合よりも、第2の閾値Th2を大きくしてもよい。これによれば、印刷動作の実行の有無に応じて、ダウンタイムの低減と印刷品質の低下の抑制を図ることができる。
・また、印刷動作に使用されるインク量が多いほど、第2の閾値Th2を大きくしてもよい。例えば、インクを噴射するノズルが複数形成されている場合において、インクを噴射するノズル数が多い場合には、同ノズル数が少ない場合よりも、第2の閾値Th2を大きくしてもよい。具体的には、印刷パス毎に同種のインクを噴射した回数を加算して、その加算した数に応じて、第2の閾値Th2を変更すればよい。
・液体噴射部21のノズルから印刷とは無関係にインクを排出させるクリーニングを行う場合には、クリーニングで排出されるインク量に相当する量のインクが液体収容部30から液体噴射部21に供給されることに伴って、液体収容袋40内でインクが流動する。そこで、直近の撹拌動作を実行してから、クリーニングを行った場合には、クリーニングを行わなかった場合よりも、第2の閾値Th2を大きくしてもよい。これによれば、クリーニングの実行の有無に応じて、ダウンタイムの低減と印刷品質の低下の抑制を図ることができる。
・なお、上述した第2の閾値Th2の大きさを変更する場合には、第2の閾値Th2を変更する代わりに、撹拌動作における撹拌強度を変更してもよい。一例として、直近の撹拌動作を実行してから、クリーニングを行った場合には、クリーニングを行わなかった場合よりも、次回の撹拌動作における撹拌強度を弱くしてもよい。言い換えれば、次回の撹拌動作における撹拌回数を少なくしてもよい。
・撹拌強度は、撹拌動作を実行する時間を制御することで変更してもよい。この場合、撹拌動作の実行時間が長いほど撹拌強度が強くなる。
・撹拌動作は、液体収容袋40を押し潰す態様以外の撹拌動作であってもよい。例えば、液体収容袋40の内部に撹拌子(回転子)を内蔵させて、同撹拌子を回転させることで撹拌動作を行ってもよい。この場合、撹拌子の回転速度及び撹拌子の回転時間が、撹拌強度に影響する。
・また、キャリッジ15上に液体収容部30が搭載される液体噴射装置11においては、主走査方向Xにキャリッジ15を往復移動させることで、撹拌動作を行ってもよい。この場合、キャリッジ15の移動速度、キャリッジ15の移動回数及びキャリッジ15の移動距離が、撹拌強度に影響する。
・液体収容部30の沈降度は、他の方法によって判定してもよい。例えば、液体収容部30に収容されるインクの明度(濃度)を検出することで判定してもよい。この場合、制御部50が各種の情報に基づいて沈降度Sdを判定しなくてもよいため、沈降度の判定精度の向上を図ることができる。また、この場合には、インクの明度(濃度)を検出するセンサーが判定部の一例に相当することとなる。
・撹拌動作の実行中に印刷動作を実行させる場合において、沈降度Sdが第2の閾値Th2未満である場合に印刷動作を割込実行させなくてもよい。
・中断させた撹拌動作の実行を再開させる場合において、割込実行させた印刷動作の実行内容に応じて、再開させた撹拌動作における撹拌強度を変更しなくてもよい。
・中断させた撹拌動作の実行を再開させる場合において、その中断させた撹拌動作の実行内容に応じて、再開させた撹拌動作における撹拌強度を変更しなくてもよい。
・印刷動作の実行中に、沈降度Sdが第2の閾値Th2以上となった場合に、印刷動作の実行を継続してもよい。
・液体収容部30に収容される液体の種類に応じて、沈降度Sdの判定に差を設けなくてもよい。
・撹拌動作を実行していない期間に応じて、沈降度Sdの判定に差を設けなくてもよい。
・液体収容部30を交換してから、撹拌動作を実行した場合と撹拌動作を実行していない場合とで、沈降度Sdの判定に差を設けなくてもよい。
・インク中の粒子として、顔料粒子や樹脂以外の粒子を考慮してもよい。
・沈降度を判定する際に、例えば、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、可塑剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤のうち、沈降し得る物質又は沈降状態を変化させる物質を考慮してもよい。
・液体噴射装置11は、液体噴射部21が媒体Mの幅方向に往復移動しつつインクを噴射するシリアルプリンターであってもよいし、液体噴射部21が媒体Mの幅全体と対応した長さを有し固定配置された状態でインクを噴射するラインプリンターとしてもよい。
・液体噴射部21が噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体等であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造等に用いられる電極材や色材(画素材料)等の材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
・媒体Mは用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材等でもよいし、捺染装置等に用いられる布帛であってもよい。