JP6446655B2 - 大豆の低温粉砕方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大豆の低温粉砕方法に関するものである。
例えば大豆から飲料用の豆乳を製造するには、大豆を粉砕して温水中に投入し、大豆タンパク等の栄養分を溶出させている。豆乳飲料から粉っぽさやざらつき感を無くすためには、大豆を所定粒度以下に微粉砕することが必要である。
従来から大豆その他の穀類の粉砕には、ピンミル、ハンマーミル、軸流ミル等が一般的に使用されてきた。しかしこれらの粉砕機によっては、粗粉の少ないシャープな粒度分布の粉砕物を得ることは難しかった。またこれらの粉砕機によって、生大豆のような脂質を多く含有する原料を微粉砕することはほとんど不可能であった。
粒子を微細化する装置としては、高圧の圧縮空気や蒸気を利用したジェットミル等の気流粉砕機(例えば特許文献1)が開発されている。ジェットミルでは高圧の空気や蒸気を利用して粒子を衝突させることによって微細化させている。このような気流粉砕機は、医薬品やトナーの微細化に活用されている。しかしながら、高圧の空気等が大量に必要となるため、大型高圧コンプレッサー等の設備が必要となり、しかも粉砕能力が小さいので粉砕コストが相対的に高くなる。従って医薬品のような高額品の粉砕には適しているが、一般的な食品原料の粉砕には不向きである。
そこで食品原料の粉砕に適した粉砕機として、高速回転する2枚の回転翼をケーシングの内部に設けた気流粉砕機(例えば特許文献2)が開発されている。この構造の気流粉砕機は、2枚の回転翼の間で強い遠心気流を発生させ、この気流によって粉砕物どうしを激しく衝突させて微粉砕を行ない、粉砕物をケーシングの前端から吸引して取り出すようになっている。
しかし豆乳のざらつき感を無くすために、平均粒径が20〜40μm、100μm95%パス(目開き100μmの篩を95%が通過)程度まで大豆を微粉砕するには、回転翼の回転速度を高めてかなり激しく粒子どうしを衝突させる必要がある。このため衝突による摩擦熱が発生し、粉砕温度が上昇することが避けられない。特に大豆のような脂質の多い穀類を微粉末化しようとする場合には、温度上昇によって脂質の滲みが生じて粉砕が困難になるとともにタンパク質の溶解性が低下し、粘度が上がって粉っぽい風味になってしまうなどの問題があった。
なお、生大豆などは脂質の外に水分を含有しているため、粉砕時に水分が蒸発し、蒸発潜熱によってケーシング内部が冷却される。しかし大豆の含水率や、粉砕時の気温・湿度によって蒸発潜熱も大きく変動するため、粉砕物の品質を安定させることは容易ではなかった。
また、大豆などは品種によって成分が異なるうえ、同一の品種であっても粒の大きさや含有成分のばらつきがある。特に脂質や糖質のばらつきは破砕条件に大きく影響するため、安定した粒度分布となるように微粉砕することは非常に困難であった。
特開平1−124361号公報 特開2011−206621号公報
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、大豆を熱変性を生じさせることなく所定粒度に微粉砕することができる大豆の低温粉砕方法を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、円筒状本体とテーパ状前蓋とからなるケーシングの内部に、高速回転する2枚の回転翼を設けた気流粉砕機と、円筒状本体の背面側から原料を連続的に供給する原料供給機と、テーパ状前蓋の前部から粉砕物を吸引回収する吸引ダクトとを備えた気流粉砕設備を用いた大豆の低温粉砕方法であって、気流粉砕機の動力モータの電流値をパラメータとして原料供給機からの大豆の供給量をフィードバック制御するとともに、前記ケーシングを冷却し、かつケーシングの内面への付着物を間欠的に除去することにより、粉砕温度を55℃以下に抑制しつつ大豆を粉砕することを特徴とするものである。
また請求項2の低温粉砕方法は、大豆とともに冷風または除湿空気を供給しつつ粉砕することを特徴とするものである。また請求項3に記載したように、吸引ダクトの吸引風量が一定となるようにフィードバック制御を行なうことが好ましい。
本発明の大豆の低温粉砕方法は、気流粉砕機の動力モータの電流値をパラメータとして原料供給機からの大豆の供給量をフィードバック制御するとともに、前記ケーシングを冷却し、かつケーシングの内面への付着物を間欠的に除去することにより、粉砕温度を55℃以下に抑制しつつ大豆を粉砕するので、大豆を熱変性を生じさせることなく所定粒度に微粉砕することができる。特にケーシングのジャケットに、10℃以下の冷却水や不凍液を循環させることにより、熱変性を効果的に抑制することができる。
また本発明の大豆の低温粉砕方法は、粉砕時の摩擦熱の発生量を抑制し、熱変性をより効果的に抑制することができるとともに、最適量の原料を供給することによって粉砕効率を向上させることができる。
また請求項2のように、原料とともに冷風または除湿空気を供給しつつ粉砕を行なうことによって、外気温の影響を受けることなく原料を低温粉砕することが可能である。何れの場合にも、吸引ダクトの吸引風量が一定となるようにフィードバック制御を行なうことにより、粉砕粒度を一定とすることができる。
本発明の第1の実施形態を示す全体図である。 気流粉砕機の水平断面図である。 本発明の参考形態を示す全体図である。 本発明の他の実施形態を示す全体図である。
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態の説明図であり、1は原料ホッパー、2は原料供給機、3は気流粉砕機、4は吸引ダクト、5は粉砕物回収ホッパーである。なお各実施形態で用いた原料は大豆である。
原料である大豆は原料ホッパー1からその下方に設置された原料供給機2に投入され、さらに気流粉砕機3に供給される。原料供給機2は振動式の定量供給装置であり、後述するようにその原料供給量は制御装置6によって制御されている。
図2に気流粉砕機3の詳細を示す。この気流粉砕機3は、円筒状本体7とテーパ状前蓋8とからなるケーシング9を備えている。ケーシング9の内部には片持ち構造の回転軸10が設けられており、その端部にはプーリー11が固定されている。12は動力モータであり、その出力軸に固定された駆動プーリー13とプーリー11との間にベルト14を巻き掛けることによって、回転軸10を駆動している。
この回転軸10には、2枚の回転翼が取付けられている。第1の回転翼15はケーシング9の円筒状本体7の内部に配置され、第2の回転翼16はケーシング9のテーパ状前蓋8の内部に配置されている。図2に示すように円筒状本体7の端部はテーパ状前蓋8の反対方向のテーパ部17となっており、第1の回転翼15の先端面はこのテーパ部17と同一角度の傾斜面とされている。同様に、第2の回転翼16の先端面はテーパ状前蓋8のテーパ部18と同一角度の傾斜面とされている。なおこれらの回転翼15,16は何れも先端側が周方向に分割された分割羽根であり、その分割数は3〜8が好ましい。
円筒状本体7の側壁には原料供給口19が形成されており、原料供給機2の出側に配置された小ホッパー20から原料がケーシング9の内部に供給される。原料は3000〜8000rpmで高速回転する第1の回転翼15によって粗粉砕され、第1の回転翼15と第2の回転翼16とに挟まれた空間21に入る。この空間21には強い遠心気流が形成されており、粗粉砕された粒子は互いに激しく衝突して気流粉砕が行われる。その結果粒子は微粉末となり、第2の回転翼16とテーパ状前蓋8との間隙からテーパ状前蓋8の内部に移動する。図1に示すように、テーパ状前蓋8の先端には吸引ダクト4が接続されており、微粉末は吸引ダクト4を通じて吸引され、粉砕物回収ホッパー5に回収される。
なお、この実施形態の気流粉砕機3においては、テーパ状前蓋8がヒンジ22を中心として開閉可能となっている。ヒンジ22の反対側にはロックねじ23が設けられており、テーパ状前蓋8を閉鎖状態で固定できる構造となっている。なおテーパ状前蓋8はスライドピン24を介して円筒状本体7に接続され、軸線方向に小距離を移動可能となっている。またヒンジ22も軸線方向にスライド可能となっている。このため、テーパ状前蓋8と円筒状本体7との間にスペーサ25を介在させることによって、テーパ状前蓋8の固定位置を円筒状本体7に対して僅かに軸線方向に動かすことができる。この結果、第2の回転翼16とテーパ状前蓋8の内周面との間隙を変え、分級性能を調整することが可能となる。
以上に説明した気流粉砕機3の構造は、特許文献2に開示されたものと基本的に同一である。しかし本発明では低温粉砕を行なうために、以下の工夫が加えられている。
先ず、ケーシング9は粉砕温度を55℃以下に抑制できる冷却手段を備えている。すなわち、円筒状本体7の外周部には冷却ジャケット26が形成され、テーパ状前蓋8の外周部にも冷却ジャケット27が形成されている。これらの冷却ジャケット26、27の内部にはそれぞれ冷却液が循環される。冷却液は10℃以下の水を用いることができるが、冷却液の温度を0℃以下としたい場合には不凍液を用いるものとする。このような構成とすることによって、ケーシング9内の粉砕温度を55℃以下に維持する。この温度が55℃を超えると大豆の熱変性が開始されるので好ましくない。ケーシング9の内部温度は温度センサ30によって測定され、冷却液の循環量をフィードバック制御している。
なお、冷却ジャケット26、27による抜熱はケーシング9の壁面を通じて行われるため、壁面の熱伝導率及び熱伝達率が冷却効果に影響を与える。このため冷却ジャケット26、27の近傍のケーシング9を熱伝導率の大きい金属で形成することができる。また、ケーシング9の内面に粉砕された微粉末が付着して断熱層を形成することを避けるため、定期的に振動やエアジェットなどを加えて付着物を除去することもできる。また所定時間運転したときには運転を停止してテーパ状前蓋8を開き、その内面の付着物を箆などで掻き取ることが好ましい。
図1に示す第1の実施形態においては、気流粉砕機3の動力モータ12の電流値を制御盤28から取出し、制御装置6はこの電流値をパラメータとして原料供給機2の供給量をフィードバック制御している。すなわち、原料の成分、水分含有率、粉砕温度などの変動は粉砕の負荷変動となり、この負荷変動は動力モータ12の電流値の変動として表われる。このため、上記のようにケーシング9内の粉砕温度を55℃以下に維持するのみならず、電流値が増加したときには原料供給機2の供給量を減少させて粉砕の負荷を減少させる制御を行なうことにより、安定した低温粉砕が可能となる。
図3に示す参考形態では、温度センサ30によって測定されたケーシング9の内部温度をパラメータとして原料供給機2の供給量をフィードバック制御している。すなわち、温度センサ30によって測定されたケーシング9の内部温度が設定値を超えたときには、冷却液の循環量をフィードバック制御するのみならず、原料供給機2の供給量もフィードバック制御することにより、原料供給量を最適量となるようにしている。この第2の実施形態は第1の実施形態と組み合わせて実施することができる。
図4に示すように、原料とともに冷風または除湿空気を気流粉砕機3に供給しつつ粉砕を行なうこともできる。図4では冷風発生器29から供給された冷風または除湿空気を原料ホッパー1と原料供給機2に供給しているが、原料供給機2の出側に配置された小ホッパー20から供給することもできる。これによって低温雰囲気中での粉砕が可能となる。この第3の実施形態も、第1の実施形態や第2の実施形態と組み合わせて実施することができる。なお、冷風としては気流粉砕機3が設置された室内の温度よりも10℃以上低温の空気を用いることが好ましい。また冷風に替えて除湿された空気を用いることも可能である。除湿された空気をケーシング9の内部に供給すれば、蒸発潜熱による冷却効果を安定させることができる。
なお、気流粉砕機3の分級性能は吸引ダクト4の吸引条件によって左右される。このため何れの実施形態においても、図4に示したように粉砕物回収ホッパー5に接続された吸引用ブロワ31の手前に風量計または風圧計32を配置して風量の変動を検知し、風量制御器33によって吸引風量が一定となるように吸引用ブロワ31をフィードバック制御することが好ましい。なお図4では粉砕物回収ホッパー5の内部にバグフィルタ34が設置されており、その上側室と吸引用ブロワ31とを結ぶダクト35の内部に風量計または風圧計32を配置してある。このような配置とすれば、風量計やダクト35内に微粉が付着することもなく、粉砕された微粉末を下方の容器36に回収することができる。
以上に説明した本発明の気流粉砕設備及びこれを用いた低温粉砕方法によれば、大豆のような穀物を熱変性を生じさせることなく所定粒度に微粉砕することができる。具体的には、例えば生大豆をメディアン径が20〜40μm、粒径が100μm以下の割合が95%以上となるように、効率よく微粉砕することができる。
1 原料ホッパー
2 原料供給機
3 気流粉砕機
4 吸引ダクト
5 粉砕物回収ホッパー
6 制御装置
7 円筒状本体
8 テーパ状前蓋
9 ケーシング
10 回転軸
11 プーリー
12 動力モータ
13 駆動プーリー
14 ベルト
15 第1の回転翼
16 第2の回転翼
17 テーパ部
18 テーパ部
19 原料供給口
20 小ホッパー
21 空間
22 ヒンジ
23 ロックねじ
24 スライドピン
25 スペーサ
26 冷却ジャケット
27 冷却ジャケット
28 制御盤
29 冷風発生器
30 温度センサ
31 吸引用ブロワ
32 風量計または風圧計
33 風量制御器
34 バグフィルタ
35 ダクト
36 容器

Claims (3)

  1. 円筒状本体とテーパ状前蓋とからなるケーシングの内部に、高速回転する2枚の回転翼を設けた気流粉砕機と、円筒状本体の背面側から原料を連続的に供給する原料供給機と、テーパ状前蓋の前部から粉砕物を吸引回収する吸引ダクトとを備えた気流粉砕設備を用いた大豆の低温粉砕方法であって、
    気流粉砕機の動力モータの電流値をパラメータとして原料供給機からの大豆の供給量をフィードバック制御するとともに、前記ケーシングを冷却し、かつケーシングの内面への付着物を間欠的に除去することにより、粉砕温度を55℃以下に抑制しつつ大豆を粉砕することを特徴とする大豆の低温粉砕方法。
  2. 大豆とともに冷風または除湿空気を供給しつつ大豆を粉砕することを特徴とする請求項1記載の大豆の低温粉砕方法。
  3. 吸引ダクトの吸引風量が一定となるようにフィードバック制御を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の大豆の低温粉砕方法。
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