JP6446275B2 - 対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ - Google Patents
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Description
尚、本明細書及び特許請求の範囲で、軸方向、周方向、径方向とは、特に断らない限り、ロータの軸方向、周方向、径方向を言う。又、回入側とは、特に断らない限り、前進時の状態で車輪と共に回転するロータが、インナ、アウタ両ボディ同士の間に入り込む側を言い、回出側とは、このロータがインナ、アウタ両ボディ同士の間から抜け出す側を言う。
(1) 冷却性(放熱性)の向上
制動時には、ロータの側面とインナ、アウタ両パッドのライニングとの摩擦により熱が発生するが、これらロータ及びインナ、アウタ両パッドを十分に冷却できないと、摩擦係数の低下を招き、制動力が低下する可能性がある。又、キャリパには、トルク受部を通じてインナ、アウタ各パッドから熱が伝わるが、このキャリパの温度が高温になると、キャリパ内部に存在するブレーキ液の温度上昇を招き、やはり制動力を低下させる可能性がある。
(2) 剛性の確保
制動時には、インナ、アウタ各ピストンにより、インナ、アウタ両パッドをロータの両側面に押し付ける反作用として、インナ、アウタ両ボディ部に、互いに離れる方向の力が加わる。この為、キャリパの剛性が十分でないと、これらインナ、アウタ両ボディ部同士が互いに離れる方向に弾性変形し、所期の制動力が得られなくなる可能性がある。又、剛性が十分でない場合には、制動時に、前記アウタボディ部が前記インナボディ部に対してロータの回転方向に変位する様に弾性変形し、振動や騒音を発生させる可能性がある。
例えば、前記図15〜17に示した従来構造のキャリパ1の場合、回入側、回出側両連結部4、5のうち、開口部7の周方向端縁を仕切る内端縁が、回入側、回出側両トルク受部15、16よりも、周方向に関して内側(中央側)に張り出している為、これら回入側、回出側両トルク受部15、16を効率良く冷却する面からは不利になる。そこで、冷却性の向上を図る為に、前記回入側、回出側両連結部4、5の内端縁の位置を、図示の位置よりも周方向外側にそれぞれ移動させて、前記開口部7の面積を広くする事が考えられる。この様な構成を採用すれば、ロータ6及びインナ、アウタ両パッド10の冷却性を向上できると共に、前記回入側、回出側両トルク受部15、16を冷却し易くできる。しかしながら、この様な構成を採用した場合には、前記回入側、回出側両連結部4、5の周方向幅寸法が小さくなる為、前記キャリパ1の剛性を確保する事が難しくなる。この様に、対向ピストン型ディスクブレーキ用のキャリパに関して、冷却性の向上と剛性の確保とを両立させる事は困難である。
このうちのインナボディ部は、車輪と共に回転するロータのインナ側面に対向する状態で設けられるもので、このインナ側面に向けて開口する1乃至複数個(例えば2個又は3個)のインナシリンダを有する。
又、前記アウタボディ部は、前記ロータのアウタ側面に対向する状態で設けられるもので、このアウタ側面に向けて開口する1乃至複数個(例えば2個又は3個)のアウタシリンダを有する。
又、前記回入側、回出側両連結部は、前記ロータの外周縁よりも径方向外側に設けられて、前記インナボディ部の周方向両端部と前記アウタボディ部の周方向両端部とを互いに連結する。
又、前記回入側、回出側両トルク受部は、前記ロータを挟んだ状態で軸方向の変位を可能に支持された1対のパッドに、制動時に作用するトルクを支承する部分である。
更に、前記開口部は、前記インナ、アウタ両ボディ部と前記回入側、回出側両連結部とにより四周を囲まれた部分に、径方向に貫通する状態で設けられている。
更に、前記開口部のうちで、前記各補強ブリッジ部により他の部分と分割された隅角開口部を通じて、前記回入側、回出側両トルク受部のうち、周方向に関して前記一方の連結部側に位置している一方のトルク受部を径方向外方に露出させている。
前記隅角開口部を通じて径方向外方に露出した前記一方のトルク受部を、前記インナボディ部のアウタ側面から軸方向に張り出す様に前記インナボディ部と一体に設けられたインナ側張出壁部の周方向内側面、及び、前記アウタボディ部のインナ側面から軸方向に張り出す様に前記アウタボディ部と一体に設けられたアウタ側張出壁部の周方向内側面により構成している。
尚、本発明を実施する場合に、前記各補強ブリッジ部は、軸方向に対して傾斜していれば、直線状であって良いし、湾曲していても(例えば円弧状でも)良い。又、インナ、アウタ各シリンダをそれぞれ1つずつ設ける場合には、当該インナ、アウタ各シリンダが、特許請求の範囲に記載した一方の連結部側に存在するインナシリンダ及びアウタシリンダに相当する。
尚、この様な請求項4に記載した発明は、例えばインナシリンダ及びアウタシリンダをそれぞれ3個以上有する構造に好ましく実施できる。
更に、上述した様な請求項4に記載した発明を実施する場合には、例えば請求項5に記載した発明の様に、前記中央ブリッジ部の径方向厚さ寸法を、回出側部分よりも回入側部分で厚くする。
又、この様な請求項5に記載した発明を実施する場合には、例えば、前記中央ブリッジ部の径方向外側面のうちの回入側部分に、径方向外方に突出したリブ部を設ける事により、前記中央ブリッジ部の径方向厚さ寸法を、回出側部分よりも回入側部分で厚くする事ができる。
更に、本発明を実施する場合には、例えば請求項8に記載した発明の様に、前記隅角開口部を、径方向だけでなく、周方向にも開口させる事ができる。
即ち、本発明の場合には、回入側、回出側両連結部の少なくとも一方の連結部のうち、開口部の周方向端部を仕切る内端縁の軸方向中間部と、インナボディ部及びアウタボディ部との間部分にそれぞれ、補強ブリッジ部を架け渡す様に設けている。この為、この様な補強ブリッジ部を設けない場合に比べて、キャリパの剛性を向上させられる。
特に本発明の場合には、前記各補強ブリッジ部の周方向内端部(中央側端部)を、前記インナ、アウタ両ボディ部のうち、周方向に関して前記一方の連結部側に存在するインナシリンダ及びアウタシリンダと整合する部分にそれぞれ接続している為、前記インナ、アウタ両ボディ部同士が互いに軸方向に離れる方向に変位する事に対する剛性を効果的に向上できる。更に、前記各補強ブリッジ部を、軸方向に対して傾斜させている為、前記アウタボディ部が前記インナボディ部に対してロータの回転方向に弾性変形する事に対する剛性も効果的に向上できる。
そして、本発明の場合には、この様に剛性を向上させられる分、前記一方の連結部の周方向に関する幅寸法を短くして(開口部の周方向に関する幅寸法を長くして)、前記開口部のうちで、前記各補強ブリッジ部により他の部分と分割された隅角開口部を通じて、トルク受部を径方向外方に露出させている。従って、本発明によれば、前記開口部のうちの隅角開口部を通じて、前記トルク受部を直接冷却する(冷却風を直接導く)事が可能になり、キャリパ及びブレーキ液の温度上昇を効果的に抑える事ができる。
この結果、本発明によれば、冷却性の向上と剛性の確保とを両立させる事ができる。
又、請求項2に記載した発明の様に、前記各補強ブリッジ部の周方向外端部を中継部を介して前記一方の連結部に接続すれば、前記隅角開口部のうちで、軸方向に関してロータ側(キャリパの中央側)に存在する部分の周方向長さ寸法を、中継部を設けない場合に比べて大きくできる。この為、前記隅角開口部を通じて前記トルク受部を加工する際に、このトルク受部のうちで、軸方向に関してロータ側に存在する部分の加工性を向上する事ができる。
更に、請求項6に記載した発明によれば、中央ブリッジ部のうちの回入側部分の剛性を高める事ができる。この為、制動時に、インナ、アウタ両パッドの回入側部分が径方向外方に浮き上がる様に変位する力を、前記中央ブリッジ部の径方向内側面のうちの回入側部分で、有害な変形等を生じる事なく支承できる。従って、前記インナ、アウタ両パッドの挙動を安定させる事ができる。
これに対し、請求項8に記載した発明の場合にも、冷却風を、径方向だけでなく、周方向から、ロータやインナ、アウタ両パッド、更にはトルク受部に導く事が可能になる為、冷却性の更なる向上を図る事が可能になる。
本発明の実施の形態の1例に就いて、図1〜14を参照しつつ説明する。本例の対向ピストン型ディスクブレーキは、大別して、キャリパ1aと、1対のパッド17、18(インナパッド17、アウタパッド18)と、1対のパッドクリップ19a、19bとを備えている。
尚、ディスクブレーキを組み立てた状態で、前記インナ側張出壁部23a、23bと前記アウタ側張出壁部29a、29bとの互いに対向する軸方向側面同士の間に、前記ロータ6の外周縁部が入り込む。
即ち、本例の場合には、回入側、回出側両連結部4a、5aのうち、開口部7aの周方向端部を仕切る内端縁の軸方向中央部と、インナボディ部2a及びアウタボディ部3aとの間部分にそれぞれ、回入側、回出側各補強ブリッジ部20a、20b、21a、21bを架け渡す様に設けている。この為、この様な回入側、回出側各補強ブリッジ部20a、20b、21a、21bを設けない場合に比べて、前記キャリパ1aの剛性を向上させられる。特に本例の場合には、前記回入側補強ブリッジ部20a、20bの周方向内端部を、前記インナ、アウタ両ボディ部2a、3aのうち、回入側に存在するインナシリンダ22a及びアウタシリンダ28aと整合する部分にそれぞれ接続すると共に、前記回出側補強ブリッジ部21a、21bの周方向内端部を、前記インナ、アウタ両ボディ部2a、3aのうち、回出側に存在するインナシリンダ22c及びアウタシリンダ28cと整合する部分にそれぞれ接続している。この為、インナ、アウタ両ボディ部2a、3a同士が互いに軸方向に離れる方向に変位する事に対する剛性を効果的に向上できる。加えて、本例の場合には、前記開口部7aの周方向中央部分で、前記インナ、アウタ両ボディ部2a、3aの周方向中間部同士を、前記中央ブリッジ部8aにより連結している為、前記インナボディ部2aと前記アウタボディ部3aとが、互いに離れる方向に弾性変形するのをより有効に防止できる。更に、前記回入側、回出側各補強ブリッジ部20a、20b、21a、21bを、軸方向に対して傾斜させている為、前記アウタボディ部3aが前記インナボディ部2aに対してロータ6の回転方向に弾性変形する事に対する剛性も効果的に向上できる。
又、インナ、アウタ各シリンダの数は、実施の形態で説明した様な3個に限定されず、1個でも良いし、2個、更には、4個以上でも良い。又、実施の形態では、3個のインナ、アウタ各シリンダの内径を、回入側、中央、回出側の順に大きくした場合を例に説明したが、右車輪用のキャリパと左車輪用のキャリパとで部品の共通化を図る為に、全てのシリンダ径を同じにしても良いし、又は、鋳造により加工されるシリンダ部の外観形状を、右車輪用と左車輪用とで共通化し、シリンダ内部の加工を異ならせる事で、シリンダ径を周方向位置によって異ならせても良い。更に、本発明を実施する場合に、回入側、回出側各トルク受部の形状は、前記実施の形態の形状に限定されず、従来から知られた各種形状(例えば張出壁部の周方向内側面の径方向中間部が凹んだ形状等)を採用する事ができる。
2、2a インナボディ部
3、3a アウタボディ部
4、4a 回入側連結部
5、5a 回出側連結部
6 ロータ
7、7a 開口部
8、8a 中央ブリッジ部
9 インナシリンダ
10 インナパッド
11 張出壁部
12 支持金具
13 ボルト
14 係合突片
15 回入側トルク受部
16 回出側トルク受部
17 インナパッド
17a プレッシャプレート
17b ライニング
18 アウタパッド
18a プレッシャプレート
18b ライニング
19a、19b パッドクリップ
20a、20b 回入側補強ブリッジ部
21a、21b 回出側補強ブリッジ部
22a、22b、22c インナシリンダ
23a、23b インナ側張出壁部
24a、24b インナ側係合凸部
25a、25b 回入側トルク受部
26a、26b 回出側トルク受部
27 取付孔
28a、28b、28c アウタシリンダ
29a、29b アウタ側張出壁部
30a、30b アウタ側係合凸部
31 リブ部
32 回入側中継部
33 回出側中継部
34a、34b、34c、34d 隅角開口部
35 脚部
36 連結部
37 支持腕部
38 基板部
39 折れ曲がり部
40 通孔
Claims (8)
- 車輪と共に回転するロータのインナ側面に対向する状態で設けられ、このインナ側面に向けて開口するインナシリンダを有するインナボディ部と、前記ロータのアウタ側面に対向する状態で設けられ、このアウタ側面に向けて開口するアウタシリンダを有するアウタボディ部と、前記ロータよりも径方向外側に設けられ、前記インナボディ部の周方向両端部と前記アウタボディ部の周方向両端部とを互いに連結する、回入側、回出側両連結部と、前記ロータを挟んだ状態で軸方向の変位を可能に支持された1対のパッドに制動時に作用するトルクを支承する、回入側、回出側両トルク受部と、前記インナ、アウタ両ボディ部と前記回入側、回出側両連結部とにより囲まれた部分に、径方向に貫通する状態で設けられた開口部と、を備えた対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパであって、
前記回入側、回出側両連結部の少なくとも一方の連結部のうち、前記開口部の周方向端部を仕切る内端縁の軸方向中間部と、前記インナボディ部のうち周方向に関して前記一方の連結部側に存在するインナシリンダと整合する部分、及び、前記アウタボディ部のうち周方向に関して前記一方の連結部側に存在する前記アウタシリンダと整合する部分との間部分にそれぞれ、周方向両側面が軸方向に対してそれぞれ同方向に傾斜した補強ブリッジ部が前記ロータよりも径方向外側に架け渡す様に設けられており、前記開口部のうちで、これら各補強ブリッジ部により他の部分と分割された隅角開口部を通じて、前記回入側、回出側両トルク受部のうち、周方向に関して前記一方の連結部側に位置している一方のトルク受部を径方向外方に露出させており、前記一方のトルク受部は、前記インナボディ部のアウタ側面から軸方向に張り出す様に前記インナボディ部と一体に設けられたインナ側張出壁部の周方向内側面、及び、前記アウタボディ部のインナ側面から軸方向に張り出す様に前記アウタボディ部と一体に設けられたアウタ側張出壁部の周方向内側面により構成されている、事を特徴とする対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。 - 前記各補強ブリッジ部の周方向外端部と、前記一方の連結部の内端縁の軸方向中間部とが、周方向に伸長した中継部を介して接続されている、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記回入側、回出側両連結部に、それぞれ前記各補強ブリッジ部が架け渡す様に設けられている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記インナボディ部の周方向中間部と前記アウタボディ部の周方向中間部とを、前記ロータよりも径方向外側に設けられた中央ブリッジ部により互いに連結している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記中央ブリッジ部の径方向厚さ寸法が、回出側部分よりも回入側部分で厚くなっている、請求項4に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記回入側、回出側両トルク受部が、前記インナボディ部及び前記アウタボディ部にそれぞれ一体的に設けられている、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記隅角開口部が、径方向だけでなく、軸方向にも開口している、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
- 前記隅角開口部が、径方向だけでなく、周方向にも開口している、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
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