JP6445403B2 - 外燃機用燃料油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ボイラや温風暖房機などの外燃機に使用される外燃機用燃料油組成物に関するものであり、詳しくは、JIS K 2205の1種1号重油(硫黄分0.5質量%以下のA重油)に相当する燃料油組成物のうち、単位体積当りの発熱量が改善され、かつ、寒冷地の厳寒期においても低温流動性に優れた外燃機用燃料油組成物に関するものである。
ボイラや温風暖房機、工業炉などの外燃機用の燃料油組成物として、主に、灯油(JIS K 2203)、A重油(JIS K 2205の1種重油)およびC重油(JIS K 2205の3種重油)が使用されている。
灯油は、硫黄分、窒素分、残留炭素分の含有率が極めて低く、燃焼による環境負荷が小さく、低温流動性に優れた外燃機用の燃料油組成物である。しかし、単位体積当りの発熱量が低いという欠点を有している。加えて、冬季の寒冷地においては、室内暖房などの灯油需要が多く、安定供給に特段の配慮が必要である。
A重油は、一般に供給安定性に優れており、かつ、灯油に比較して発熱量が高い長所を有する。しかし、A重油には、さらに高い発熱量が要求される傾向がある。また、A重油には、寒冷地の厳寒期において、ワックスの析出によるフィルター閉塞防止のために、設備対応などの配慮が必要になることがある。
C重油は、A重油より高い発熱量を有する。しかし、高粘度であるため、使用時に加熱設備が必要であるなど、取り扱いが不便である。また、C重油は、硫黄分、窒素分および残留炭素分が高く、環境負荷が大きいという欠点を有している。
より高い発熱量を要求されるA重油について、本発明者らは、これまでに下記の種々の提案を行っている(特許文献1〜4参照)。
特許第3817182号公報 特許第3874596号公報 特許第3874601号公報 特許第3949501号公報
しかしながら、A重油の発熱量は高くなったものの、厳寒期の寒冷地においては、A重油の油温低下に伴い析出したワックスにより、フィルター目詰まりが発生することがあり、配管保温などの設備対策が必要となることがあった。このため、A重油には、高い発熱量に加え、配管保温などの設備対応を不要とするために、厳寒期の寒冷地においても低温流動性に優れていることが要求されている。
このような状況下で、本発明は、A重油(JIS K 2205の1種1号重油;硫黄分0.5質量%以下)に相当する燃料油組成物のうち、従来品のA重油より単位体積当りの発熱量が改善され、厳寒期の寒冷地においても低温流動性に優れており、配管保温などの設備対応が不要である外燃機用燃料油組成物を提供するものである。とくに、本発明は、油圧噴霧式バーナを搭載した、定格燃焼量100L/時間以下の外燃機において好適に使用することができる外燃機用燃料油組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、特定の組成および性状を有する外燃機用燃料油組成物が上記課題を解決することができることを見出した。
本発明は、以下の通りである。
[1]下記(1)〜(7)をいずれも満足する外燃機用燃料油組成物。
(1)密度(15℃)が0.880g/cm以上
(2)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.0mm/s以下
(3)セタン指数が35.0以上
(4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
(5)硫黄分含有率が前記外燃機用燃料油組成物全質量に対して0.30質量%以下
(6)25℃から−20℃に前記外燃機用燃料油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量が2.50J/g以下
(7)曇り点が−10℃以下
[2]下記(a)〜(f)をいずれも満足する分解軽油(LCO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して35容量%以上55容量%以下含有し、下記(g)〜(l)をいずれも満足する直脱軽油(DSGO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して30容量%以上55容量%以下含有する上記[1]に記載の外燃機用燃料油組成物。
(a)密度(15℃)が0.9235g/cm以上0.9500g/cm以下
(b)硫黄分含有率がLCO全質量に対して0.11質量%以上0.50質量%以下
(c)50℃における動粘度が1.8mm/s以上2.6mm/s以下
(d)流動点が−20℃以下
(e)曇り点が−5℃以下
(f)90%留出温度が360℃以下
(g)密度(15℃)が0.850g/cm以上0.880g/cm以下
(h)硫黄分含有率がDSGO全質量に対して0.10質量%以下
(i)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.0mm/s以下
(j)流動点が−12.5℃以下
(k)曇り点が−10℃以下
(l)90%留出温度が340℃以下
[3]灯油留分(KERO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して10容量%以上18容量%以下さらに含有する上記[2]に記載の外燃機用燃料油組成物。
[4]油圧噴霧式バーナを搭載している外燃機用燃料油組成物である上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の外燃機用燃料油組成物。
本発明によれば、A重油(JIS K 2205の1種1号重油;硫黄分0.5質量%以下)に相当する燃料油組成物のうち、低温流動性に優れ、単位体積当りの発熱量が高く、燃焼性も優れた外燃機用燃料油組成物を提供することができる。
また、本発明の外燃機用燃料油組成物の優れた低温流動性、高い発熱量および良好な燃焼性により、冬季の寒冷地において需要が多い灯油および灯油留分の含有率を低く抑えることが可能となり、冬季の寒冷地において灯油の安定供給に資することが可能となる。
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明は、下記(1)〜(7)で規定する組成、性状をいずれも満足する外燃機用燃料油組成物(以下、「本発明の油組成物」ということがある)に関する。
本発明の油組成物
(1)密度(15℃)が0.880g/cm以上
(2)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.0mm/s以下
(3)セタン指数が35.0以上
(4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
(5)硫黄分含有率が本発明の油組成物全質量に対して0.30質量%以下
(6)25℃から−20℃に本発明の油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量が2.50J/g以下
(7)曇り点が−10℃以下
[外燃機用燃料油組成物]
(外燃機用燃料油組成物の性状、組成)
本発明の外燃機用燃料油組成物は、以下の(1)〜(7)で規定された組成、性状をいずれも満足する。
(1)密度
本発明の油組成物の密度は、本発明の油組成物の発熱量改善効果を確保する観点から、15℃で0.880g/cm以上、好ましくは0.882g/cm以上である。本発明の油組成物の密度の上限値は、とくに限定されないが、たとえば、油圧噴霧式バーナでの燃焼性維持、とくに定格燃焼量100L/時間以下の油圧噴霧式バーナを搭載した小型外燃機での燃焼性維持の観点から、好ましくは0.900g/cmである。
本発明の油組成物の密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準じて測定することができる。
(2)動粘度
本発明の油組成物の動粘度は、50℃で1.8mm/s以上3.0mm/s以下である。油組成物の動粘度が50℃で1.8mm/s未満であると、A重油用のポンプおよび流量計の仕様範囲に油組成物が適合しない場合がある。また、一部の油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機に油組成物を使用すると、燃料油組成物の動粘度低下により燃料油の時間当りの噴霧量が減少し、燃焼空気量の調整が必要となる場合がある。油組成物の動粘度が50℃で3.0mm/sよりも大きいと、一部の油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機では、動粘度上昇により燃焼性が悪化し、一酸化炭素や煤が発生したり着火性が悪くなったりする場合があり、とくに定格燃焼量100L/時間以下の油圧噴霧式バーナを搭載した小型外燃機では、燃焼性が悪くなる場合がある。
A重油用のポンプおよび流量計の仕様範囲の観点から、本発明の油組成物の動粘度は、好ましくは50℃で1.9mm/s以上であり、より好ましくは50℃で2.0mm/s以上である。
油圧噴霧式バーナの燃焼性の観点から、本発明の油組成物の動粘度は、好ましくは50℃で2.8mm/s以下であり、より好ましくは50℃で2.6mm/s以下である。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
(3)セタン指数
本発明の油組成物のセタン指数は、35.0以上であり、好ましくは36.0以上である。油組成物のセタン指数が35.0未満であると、油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機、とくに定格燃焼量100L/時間以下の油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機の燃焼性が悪くなる場合がある。
本発明の油組成物のセタン指数の上限値はとくに限定されないが、たとえば、燃料油組成物の発熱量改善効果を確保するという観点から、本発明の油組成物のセタン指数の上限値は、好ましくは40.0である。
上記セタン指数は、JIS K 2204−1992に準じて測定することができる。
(4)10%残油の残留炭素分
本発明の油組成物における10%残油の残留炭素分は、油組成物の燃焼性維持、特に燃焼不良による煤発生の抑制、貯蔵安定性の維持(長期間貯蔵時のスラッジ生成の抑制)の観点から、0.60質量%以下、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下である。なお、税法上の観点から、その値は上記値以下、かつ0.2質量%超であることが好ましい。
上記10%残油の残留炭素分は、JIS K 2270(原油及び石油製品−残留炭素分試験方法−)に準じて測定することができる。
(5)硫黄分含有率
本発明の油組成物中の硫黄分含有率は、排ガス中の硫黄酸化物による環境負荷を低減し、排ガスの酸露点低下抑制による煙道腐食を抑制する観点から、本発明の油組成物全質量に対して0.30質量%以下、好ましくは0.25質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
(6)25℃から−20℃に本発明の油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量
25℃から−20℃に本発明の油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量は、寒冷地の厳寒期においても、低温流動性を確保し、保温などの設備対応をせずに、析出したワックスによるフィルター目詰まりを抑制するという観点から、2.50J/g以下であり、好ましくは2.20J/g以下であり、より好ましくは2.00J/g以下である。
上記、25℃から−20℃に本発明の油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量は示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。たとえば、パーキンエルマー社製DSC(ダイヤモンドDSC)を用いて、10mg±0.5mgの試料量の試料を3℃/分の冷却速度で、25℃より−50℃まで冷却し、25℃から−20℃までの発熱量を測定することができる。なお、発熱量は、25℃から−20℃までの発生する、ワックスの析出に伴う発熱ピークとDCS曲線のベースラインとにより囲まれる範囲の面積から算出される。
(7)曇り点
本発明の油組成物における曇り点は、寒冷地の厳寒期においても、低温流動性を確保し、保温などの設備対応をせずに、析出したワックスによるフィルター目詰まりを抑制するという観点から、−10℃以下であり、好ましくは−12℃以下であり、より好ましくは−13℃以下である。
上記曇り点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点ならびに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
本発明の油組成物は、上記(1)〜(7)で規定された組成、性状をいずれも満足することが必要であるが、さらに以下の(8)〜(15)で規定された組成、性状の少なくとも一つを満足することが好ましい。
(8)引火点
本発明の油組成物の引火点は、取り扱い上の安全性確保の観点から、60℃以上であることが好ましい。
上記引火点は、JIS K 2265(原油及び石油製品−引火点試験方法−)に準じて測定することができる。
(9)反応試験
本発明の油組成物は、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジンおよび装備しているポンプなどの補機の腐食を防止する観点から、JIS K 2252による石油製品反応試験の結果が中性であることが好ましい。
(10)流動点
本発明の油組成物の流動点は、厳寒期の寒冷地での使用における本発明の油組成物の配管内の流動性を維持する観点から、好ましくは−35℃以下である。
本発明の油組成物の流動点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(11)水分含有率
本発明の油組成物中における水分含有率は、貯蔵安定性の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)、燃料油の発熱量の低下抑制(水分蒸発のよる発熱量低下抑制)、および氷結によるフィルター閉塞防止の観点から、本発明の油組成物全容量に対して0.01容量%以下であることが好ましい。
本発明の油組成物中における水分含有率は、JIS K 2275(原油及び石油製品−水分試験方法−)に準じて測定することができる。
(12)灰分量
本発明の油組成物中の灰分量としては、バーナチップの摩耗を抑制し、燃焼室内、伝熱面への灰分付着による腐食や伝熱不良を抑制するという観点から、本発明の油組成物全質量に対して0.001質量%以下であることが好ましい。
本発明の油組成物中の灰分は、JIS K 2272(原油及び石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法)に準じて測定することができる。
(13)ドライスラッジ量
本発明の油組成物中におけるドライスラッジの量は、本発明の油組成物のフィルター通油性を維持する観点から、本発明の油組成物全量に対して好ましくは2.0mg/100mL以下、より好ましくは1.0mg/100mL以下である。
上記ドライスラッジ量は、全漁連A重油ドライスラッジ測定法(海洋水産エンジニアリング2013年7月号p.105記載の方法)に準じて測定することができる。
(14)容器当りの総発熱量
本発明の油組成物の容器当りの総発熱量は、本発明の効果を有効に奏する観点、すなわち、本発明の油組成物中の灯油留分の混合比率低減効果を維持する観点から、容器当りの総発熱量で、好ましくは39,500J/cm以上、より好ましくは39,650J/cm以上である。
本発明の油組成物の容器当りの総発熱量は、JIS K 2279(原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法−)に準じて測定、評価することができる。
(15)90%留出温度
本発明の油組成物中における90%留出温度は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下である。
上記90%留出温度は、JIS K 2254(石油および石油製品−蒸留試験方法−)に準じて測定することができる。
[基材]
本発明の油組成物は、上記(1)〜(7)で規定する組成、性状を満足すればよいが、好ましくは、以下の(a)〜(f)に規定する組成、性状をいずれも有する分解軽油(LCO)および以下の(g)〜(l)に規定する組成、性状をいずれも有する直脱軽油(DSGO)を含有する。なお、LCOとは、常圧蒸留残渣油および/または減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油である。また、DSGOとは、常圧蒸留残渣油および/または減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油である。
(LCOの性状、組成)
(a)密度
本発明の油組成物に使用するLCOの密度は、本発明の油組成物の発熱量の改善効果を維持する観点から、15℃で、好ましくは0.9235g/cm以上0.9500g/cm以下、より好ましくは0.9240g/cm以上0.9450g/cm以下、さらに好ましくは0.9250cm以上0.9400g/cm以下である。
上記密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準じて測定することができる。
(b)硫黄分含有率
本発明の油組成物に使用するLCOの硫黄分含有率は、本発明の油組成物中の硫黄分含有率を維持する観点から、LCO全質量に対して、好ましくは0.11質量%以上0.50質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
(c)動粘度
本発明の油組成物に使用するLCOの動粘度は、本発明の油組成物の動粘度を維持し、灯油や灯油留分の代替として本発明の油組成物中の灯油、灯油留分の混合比率の低減効果を維持する観点から、50℃で好ましくは1.8mm/s以上2.6mm/s以下である。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
(d)流動点
本発明の油組成物に使用するLCOの流動点は、本発明の油組成物の流動点を維持する観点から、好ましくは−20℃以下である。
上記流動点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(e)曇り点
本発明の油組成物に使用するLCOの曇り点は、本発明の油組成物の曇り点を維持する観点から、好ましくは−5℃以下である。
上記曇り点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点ならびに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(f)90%留出温度
本発明の油組成物に使用するLCOの90%留出温度は、本発明の油組成物の90%留出温度を維持する観点から、好ましくは360℃以下である。
上記90%留出温度は、JIS K 2254(石油および石油製品−蒸留試験方法−)に準じて測定することができる。
(LCOの含有量)
本発明の油組成物におけるLCOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは35容量%以上であり、より好ましくは40容量%以上である。
また、本発明の油組成物におけるLCOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは55容量%以下であり、より好ましくは50容量%以下である。
さらに、本発明の油組成物におけるLCOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは35容量%以上55容量%以下であり、より好ましくは40容量%以上50容量%以下である。
(DSGOの性状、組成)
(g)密度
本発明の油組成物に使用するDSGOの密度は、本発明の油組成物の発熱量の改善効果を維持する観点から、15℃で、好ましくは0.850g/cm以上0.880g/cm以下である。
上記密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準じて測定することができる。
(h)硫黄分含有率
本発明の油組成物に使用するDSGOの硫黄分含有率は、本発明の油組成物中の硫黄分含有率を維持する観点から、DSGO全質量に対して、好ましくは0.10質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
(i)動粘度
本発明の油組成物に使用するDSGOの動粘度は、本発明の油組成物の動粘度を維持し、灯油や灯油留分の代替として本発明の油組成物中の灯油、灯油留分の混合比率の低減効果を維持する観点から、50℃で好ましくは1.8mm/s以上3.0mm/s以下である。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
(j)流動点
本発明の油組成物に使用するDSGOの流動点は、本発明の油組成物の流動点を維持する観点から、好ましくは−12.5℃以下である。
上記流動点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(k)曇り点
本発明の油組成物に使用するDSGOの曇り点は、本発明の油組成物の曇り点を維持する観点から、好ましくは−10℃以下である。
上記曇り点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点ならびに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(l)90%留出温度
本発明の油組成物に使用するDSGOの90%留出温度は、本発明の油組成物の90%留出温度を維持する観点から、好ましくは340℃以下であり、より好ましくは330℃以下である。
上記90%留出温度は、JIS K 2254(石油及び石油製品−蒸留試験方法−)に準じて測定することができる。
(DSGOの含有量)
本発明の油組成物におけるDSGOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは30容量%以上であり、より好ましくは35容量%以上である。
また、本発明の油組成物におけるDSGOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは55容量%以下であり、より好ましくは50容量%以下である。
さらに、本発明の油組成物におけるDSGOの含有量は、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは30容量%以上55容量%以下であり、より好ましくは35容量%以上50容量%以下である。
[その他の基材]
前述の通り、本発明の油組成物は、LCOおよびDSGOを含有するが、本発明の油組成物の上記組成、性状を満たしていれば、LCOおよびDSGO以外の基材を含有してもよい。含有しえるその他の基材としては、以下の基材(A)〜(C)を挙げることができ、これらの基材を上記組成、性状を満足するよう適宜配合して本発明の油組成物を調製することができる。
(A)灯油留分(KERO)
・直留灯油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる灯油留分)
・脱硫灯油留分(直留灯油留分を脱硫して得られる灯油留分)
・水素化分解灯油留分(直留軽油留分および/または減圧軽油留分を水素化分解して得られる灯油留分)
灯油留分の含有量は、本発明の油組成物全量中の、好ましくは20容量%以下であり、より好ましくは10容量%以上18容量%以下である。
(B)軽油留分
・直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油留分(直留軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
本発明の油組成物の上記組成、性状を満足するように、上記軽油留分を、任意の含有量で含有させることができる。
(C)残留炭素源
本発明の油組成物においては、軽油引取税の観点より、10%残油の残留炭素分が0.2質量%超となるように、さらに本発明の油組成物の上記組成、性状を満足するように、下記の残留炭素源を単独で、もしくは数種類混合して、任意の含有量で含有させることができる。
・常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
・減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
・直脱重油(常圧蒸留残渣油および/または減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油)
・分解重油(直脱重油を流動接触分解して得られる重油分)
・エキストラクト(潤滑油精製装置から副生される成分)
[その他の添加剤]
本発明の油組成物には、上述の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、酸化防止剤、防カビ剤などの各種添加剤を適宜選択して配合することができる。また、軽油引取税の観点よりクマリンを配合してもよい。
[本発明の油組成物を好適に使用できる燃焼機例]
本発明の油組成物は、低温流動性に加え、燃焼性にも優れているため、下記の燃焼機において好適に使用することができる。
(好ましい燃焼機)
油圧噴霧式バーナを搭載した定格燃焼量が100L/時間以下の小型貫流ボイラ、温風暖房機および温水ボイラなどの外燃機
(より好ましい燃焼機)
油圧噴霧式バーナを搭載した定格燃焼量が50L/時間以下の小型貫流ボイラ、温風暖房機および温水ボイラなどの外燃機
(さらに好ましい燃焼機)
油圧噴霧式バーナを搭載した定格燃焼量が20L/時間以下の小型貫流ボイラ、温風暖房機および温水ボイラなどの外燃機
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、各基材の性状は、前述の通り、下記の方法に従って求めた。
〔基材の性状と組成の評価〕
(1)蒸留性状:JIS K 2254により測定した。
(2)硫黄分含有率:JIS K 2541に準拠して測定した。
(3)動粘度(50℃):JIS K 2283に準拠して測定した。
(4)密度:JIS K 2249に準拠して測定した。
(5)引火点:JIS K 2265に準拠して測定した。
(6)10%残油の残留炭素分:JIS K 2270に準拠して測定した。
(7)残留炭素分:JIS K 2270に準拠して測定した。
(8)流動点:JIS K 2269に準拠して測定した。
(9)曇り点:JIS K 2269に準拠して測定した。
(10)水分量:JIS K 2275に準拠して測定した。
〔油組成物の性状と組成の評価〕
下記以外の性状、組成は上記の基材の評価と同様の方法で行った。
(11)セタン指数:JIS K 2204−1992に準拠して測定した。
(12)25℃から−20℃に油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量:示差走査熱量測定(DSC)により測定した。具体的には、パーキンエルマー社製DSC(ダイヤモンドDSC)を用いて、10mg±0.5mgの試料量の試料を3℃/分の冷却速度で、25℃より−50℃まで冷却し、25℃から−20℃までの発熱量を測定した。
(13)反応試験:JIS K 2252に準拠して測定した。
(14)流動点:JIS K 2269に準拠して測定した。
(15)灰分量:JIS K 2272に準拠して測定した。
(16)ドライスラッジ量:全漁連A重油ドライスラッジ測定法(海洋水産エンジニアリング2013年7月号p.105記載の方法)に準じて測定した。
(17)総発熱量:JIS K 2279に準拠して測定した。
(16)低温流動性:いずれもJIS K 2536−2に準拠して測定した。
実施例1〜3および比較例1の油組成物の製造
下記表1〜4に示す性状、組成を有する基材を表5に示す割合で混合し、表5に示す性状の油組成物を作製した。
得られた各油組成物について、低温流動性、総発熱量および燃焼性を下記基準で評価した。結果を表5に示す。
Figure 0006445403
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[性能の評価基準]
1.低温流動性
(1)評価方法
油組成物の低温流動性試験方法基準「実機シミュレーター法(JPI−5S−47−96)」に準じて評価した。
なお、上記の油組成物の低温流動性試験方法基準では、油組成物9.5L通油時に、ゲージ圧が−33kPa未満をフェール(閉塞する可能性大)、−33kPa以上でパス(閉塞する可能性小)と判定した。
(2)評価基準;
◎;油温度−16℃において、200L通油時に、ゲージ圧が−33kPa以上
○;油温度−16℃において、100L通油時に、ゲージ圧が−33kPa以上
△;油温度−16℃において、100L通油時に、ゲージ圧が−33kPa未満
なお、上記評価基準は、油組成物が小型タンクおよび配管内の滞留し、冷却された状態を再現している。
2.総発熱量
◎;39,650J/cm以上
○;39,500J/cm以上39,650J/cm未満
△;39,500J/cm未満
3.燃焼性評価
(外燃機の燃焼性評価)
(1)評価機種、条件
・評価機種;ネポン社製ハウスカオンキHK−2027(A重油の定格燃焼量6.3L/時間、オンオフ制御)
・燃料噴霧圧;1.03MPa(油圧噴霧式バーナ)
・バンドシャッター開度;排ガス酸素濃度を5.0±0.2%になるように調整
・燃料加熱用バーナ前ヒーター;オフ
・評価室温および油温;5.0±2.0℃
(2)評価項目
・着火性;目視で着火遅れがないこと
・燃焼性;着火後、継続して5分間燃焼した後、バッカラッカスモークテスターで排ガス中の煤濃度(バッカラッカスモークナンバー;SN)を計測
(3)評価基準
◎;着火遅れがなく、SNが2.0以下
○;着火遅れが無く、SNが2.0超、3.0以下
△;上記以外
表5より明らかなように、本発明の油組成物に包含される実施例1〜3の組成物はいずれも低温流動性が良好であり、発熱量が高く、燃焼性も優れていた。一方、25℃から−20℃に油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量が2.5J/gより大きい油組成物である比較例1は、発熱量が高く、燃焼性も優れていたものの、低温流動性が不十分であった。
本発明の油組成物は、従来のA重油よりも低温流動性および単位体積当りの発熱量が改善され、かつ燃焼性に優れたものであることから、外燃機用燃料油組成物として冬季の寒冷地において使用され、需要が多い灯油および灯油留分の含有率を低く抑えることが可能となり、冬季の寒冷地において灯油の安定供給に資することが可能となる。また、この外燃機油組成物を使用することにより、燃料油組成物の消費量の低減が可能となる。

Claims (3)

  1. 下記(1)〜(7)をいずれも満足する外燃機用燃料油組成物であって、
    下記(a)〜(f)をいずれも満足する分解軽油(LCO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して35容量%以上55容量%以下含有し、
    下記(g)〜(l)をいずれも満足する直脱軽油(DSGO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して30容量%以上55容量%以下含有する外燃機用燃料油組成物。
    (1)密度(15℃)が0.880g/cm以上
    (2)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.0mm/s以下
    (3)セタン指数が35.0以上
    (4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
    (5)硫黄分含有率が前記外燃機用燃料油組成物全質量に対して0.30質量%以下
    (6)25℃から−20℃に前記外燃機用燃料油組成物を冷却したときのワックスの析出に伴う発熱量が2.50J/g以下
    (7)曇り点が−10℃以下
    (a)密度(15℃)が0.9235g/cm 以上0.9500g/cm 以下
    (b)硫黄分含有率がLCO全質量に対して0.11質量%以上0.50質量%以下
    (c)50℃における動粘度が1.8mm /s以上2.6mm /s以下
    (d)流動点が−20℃以下
    (e)曇り点が−5℃以下
    (f)90%留出温度が360℃以下
    (g)密度(15℃)が0.850g/cm 以上0.880g/cm 以下
    (h)硫黄分含有率がDSGO全質量に対して0.10質量%以下
    (i)50℃における動粘度が1.8mm /s以上3.0mm /s以下
    (j)流動点が−12.5℃以下
    (k)曇り点が−10℃以下
    (l)90%留出温度が340℃以下
  2. 灯油留分(KERO)を外燃機用燃料油組成物全容量に対して10容量%以上18容量%以下さらに含有する請求項に記載の外燃機用燃料油組成物。
  3. 油圧噴霧式バーナを搭載している外燃機用燃料油組成物である請求項1または2に記載の外燃機用燃料油組成物。
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