以下、添付図面を参照して、本願の開示する電圧検出装置、電圧検出方法および組電池システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.組電池システムの構成>
図1は、実施形態に係る組電池システム100の構成例を示す図である。図1に示す組電池システム100は、組電池1と、組電池1の電圧を検出する電圧検出装置として動作する監視装置2とを備える。
組電池1は、接続部材L10−m(m=1〜N−1、N:自然数、以下、接続部材L10とも称する)を介して直列に接続される複数の電池スタックB1−n(n=1〜N、N:自然数、以下、電池スタックB1とも称する)を有する。複数の電池スタックB1−nは、直列に接続される複数の電池セルを有する。図1の例では、直列接続される7個の電池セルを有する2個の電池スタックB1−1、B1−2が接続部材L10を介して直列接続される。
監視装置2は、キャパシタCを用いて電池スタックB1の電圧をいわゆるフライングキャパシタ方式で検出する装置であって、フライングキャパシタ部10、検出部20及び制御部30を備える。このように監視装置2は、電池スタックB1の電圧を検出する電圧検出装置としても動作する。
フライングキャパシタ部10は、キャパシタCと、電池スタックB1との間に設けられる第1切替部11と、キャパシタCと検出部20との間に設けられる第2切替部12とを備える。また、フライングキャパシタ部10は、電池スタックB1とキャパシタCとの間で、第1切替部11と直列に接続される抵抗R11、R12、R21、R22を備え、第2切替部12と検出部20との間に設けられる抵抗R3、R4を備える。なお、図1に示す抵抗R3およびR4のライン上の位置は一例であり、第2切替部12の後段のライン上であれば、他の位置に設けてもよい。また設ける抵抗の数を変更してもよい。
第1切替部11は、一端が電池スタックB1の負極端子に接続され、他端がキャパシタCの一端に接続される複数の第1スイッチS1−1、S1−2(以下、第1スイッチS1とも称する)と、一端が電池スタックB1の正極端子に接続され、他端がキャパシタCの他端に接続される複数の第2スイッチS2−1、S2−2(以下、第2スイッチS2とも称する)とを有する。第1切替部11は、制御部30からの指示に応じて第1スイッチS1及び第2スイッチS2のオン状態及びオフ状態を切り替える。このように、第1切替部11は、電池スタックB1とキャパシタCとの間の接続状態を切り替える第1切替手段として動作する。
第2切替部12は、一端がキャパシタCの一端に接続され、他端が検出部20に接続される第3スイッチS3と、一端がキャパシタCの一端に接続され、他端が検出部20に接続される第4スイッチS4とを有する。第2切替部12は、制御部30からの指示に応じて第3、第4スイッチS3、S4のオン状態及びオフ状態を切り替える。このように、第2切替部12は、キャパシタCと検出部20との間の接続状態を切り替える第2切替手段として動作する。なお、上述した第1〜第4スイッチS1〜S4として、例えばリレーを用いてもよい。
キャパシタCは、第2切替部12によって検出部20から切り離された状態で、第1切替部11を介して電池スタックB1−1、B1−2のいずれか1つと並列に接続される。これにより、キャパシタCは並列に接続された電池スタックB1によって充電される。また、キャパシタCは、第1切替部11によって電池スタックB1から切り離された状態で、第2切替部12を介して検出部20に接続される。これにより、検出部20は、キャパシタCの両端の電圧を電池スタックB1の電圧として検出する。このように、監視装置2は、キャパシタCを用いたフライングキャパシタ方式によって電池スタックB1の電圧を検出する。なお、差動増幅回路を第2切替部12と検出部20との間に設け、検出部20がその差動増幅回路の出力に基づき、キャパシタCの電圧を検出するようにしてもよい。
また、キャパシタCは、第2切替部12によって検出部20から切り離された状態で、第1切替部11を介して接続部材10に接続される。あるいは、第1切替部11によって電池スタックB1から切り離された状態で、第2切替部12を介して抵抗R3、R4に接続される。これにより、放電経路(図3の第1放電経路P2、図4の第2放電経路P3参照)に電流が流れ、キャパシタCは放電される。
抵抗R11、R12は、第1スイッチS1と電池スタックB1−1、B1−2との間で、第1スイッチS1と直列に接続される。また、抵抗R21、R22は、第2スイッチS2と電池スタックB1−1、B1−2との間で第2スイッチS2と直列に接続される。抵抗R11、R12、R21、R22は、電池スタックB1からフライングキャパシタ部10へ流れる電流を制限する電流制限抵抗として動作する。
また、抵抗R11、R12、R21、R22は、第1切替部11を介してキャパシタCと接続されることで、キャパシタCに電荷を充電する充電抵抗として、および、キャパシタCの電荷を放電する放電抵抗として動作する。なお、電池スタックの電圧検出時間を短くするためには、充電時間を短くする、すなわち充電時定数を小さくすることが望ましいため、抵抗R11、R12、R21、R22は比較的小さな抵抗値としている。従って、抵抗R11、R12、R21、R22を含む放電経路(図3の第1放電経路P2)で放電する場合も、放電時定数が小さくなり、放電時間も短くなる。
なお、図1では、抵抗R11、R12、R21、R22が電池スタックB1と第1切替部11との間に設けられているが、例えば第1切替部11とキャパシタCとの間に設けてもよい。
抵抗R3は、一端が第3スイッチS3に接続し、他端が検出部20に接続するとともにグランドに接地する。抵抗R4は、一端が第4スイッチS4に接続し、他端が検出部20に接続するとともにグランドに接地する。抵抗R3、R4は、キャパシタCから検出部20へ流れる電流を制限する電流制限抵抗として動作するとともに、第2切替部12を介してキャパシタCと接続されることで、キャパシタCの電荷を放電する放電抵抗として動作する放電回路である。
検出部20は、キャパシタCの両端の電圧を検出する。具体的には、検出部20は、A/D変換部21を有し、かかるA/D変換部21を用いてキャパシタCの両端の電圧をアナログ値からデジタル値に変換し、制御部30に出力する。検出部20は、制御部30の指示に応じて、充電後のキャパシタCの電圧(以下、充電電圧と称する)を電池スタックB1の電圧として検出する。また、検出部20は、制御部30の指示に応じて放電後のキャパシタCの電圧(以下、放電電圧と称する)を検出する。
なお、キャパシタCの両端の電圧を検出部20で検出するには、第3、第4スイッチS3、S4をオンにする必要がある。両スイッチS3、S4をオンにした瞬間から抵抗R3、R4を介する放電経路(図4の第2放電経路P3)が形成され放電を開始するため、電池スタックB1の電圧を正確に検出するには、スイッチS3、S4をオンにした瞬間のキャパシタCの両端の電圧をAD変換すると共に、放電による低下を極力なくすため放電時定数を大きくすることが望ましい。そのため、抵抗R3、R4は、抵抗R11〜R22に比べ比較的大きな抵抗値としている。
制御部30は、第1切替部11及び第2切替部12を制御する。制御部30は、充電経路選択部31、放電経路選択部32及び判定部33を備える。充電経路選択部31は、キャパシタCを充電する場合に、電圧を検出する電池スタックB1及びキャパシタCを含む充電経路P1を選択する。放電経路選択部32は、キャパシタCを放電する場合に、キャパシタCと接続部材L10を含む第1放電経路P2あるいは抵抗R3、R4を含む第2放電経路P3を選択する。また、放電経路選択部32はキャパシタCの両端の電圧を検出する場合に、抵抗R3、R4を含む第2放電経路P3を選択する。充電経路P1及び第1、第2放電経路P2、P3の詳細については後述する。
判定部33は、キャパシタCの充電電圧または放電電圧の少なくとも一方に応じて組電池1および第1、第2スイッチS1、S2の異常を判定する。判定部33による異常判定の詳細は後述する。
制御部30は、キャパシタCの充電時に充電経路P1が選択されるように、第1切替部11及び第2切替部12を制御する。制御部30は、キャパシタCの充電電圧又は放電電圧を検出するように検出部20を制御するとともに、第2放電経路P3を選択しキャパシタCと検出部20が接続されるように第1切替部11及び第2切替部12を制御する。また制御部30は、キャパシタCの電圧の検出後に放電する場合、第1放電経路P2または第2放電経路P3を選択する。また、制御部30は、検出部20が検出した電池スタックB1の電圧に基づいて電池スタックB1の充電状態を監視する。
<2.充電経路P1の選択>
続いて、図2を用いて、制御部30の充電経路選択部31が選択する充電経路P1の詳細について説明する。図2は、充電経路選択部31が選択する充電経路P1の一例を示す図である。なお、図2では、電池スタックB1−1の電圧を検出する場合について図示している。
まず、充電経路選択部31は、制御部30から電池スタックB1−1の充電経路P1を選択するよう指示を受けると、電池スタックB1−1とキャパシタCとが並列に接続される充電経路P1を選択する。
具体的には、図2に示すように、充電経路選択部31は、電池スタックB1−1、抵抗R11、R21、第1スイッチS1−1、第2スイッチS2−1及びキャパシタCを含む充電経路P1を選択する。
すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に充電経路P1の閉回路が形成されるよう、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、電池スタックB1−1と接続する第1、第2スイッチS1−1、S2−1がオン状態となり、それ以外のスイッチS1−2、S2−2、S3、S4がオフ状態となるよう制御する。
これにより、フライングキャパシタ部10には、図2の矢印で示す方向に電流が流れ、上述したように充電時定数が小さいことから比較的短時間でキャパシタCが充電される。
なお、ここでは、電圧の検出対象となる電池スタックB1−1を制御部30が決定する場合について説明したが、充電経路選択部31が検出対象となる電池スタックB1を決定するようにしてもよい。
なお、電圧の検出対象として電池スタックB1−2を制御部30が決定する場合に、制御部30は、電池スタックB1−2と接続する第1、第2スイッチS1−2、S2−2がオン状態となり、それ以外のスイッチS1−1、S2−1、S3、S4がオフ状態となるよう制御する。
<3.放電経路の選択>
<3−1.第1放電経路P2の選択>
次に、図3を用いて、制御部30の放電経路選択部32が選択する第1放電経路P2の詳細について説明する。図3は、放電経路選択部32が選択する第1放電経路P2の一例を示す図である。
検出部20が第2放電経路P3により電子スタックB1の電圧を検出すると、制御部30は、第1放電経路P2に切替えるよう放電経路選択部32に指示する。放電経路選択部32は、制御部30からの指示を受けると、接続部材L10とキャパシタCとが接続される第1放電経路P2を選択する。具体的には、放電経路選択部32は、接続部材L10、抵抗R12、R21、第1スイッチS1−2、第2スイッチS2−1及びキャパシタCを含む第1放電経路P2を選択する。
すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に第1放電経路P2の閉回路が形成されるように、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1スイッチS1−2、第2スイッチS2−1がオン状態となり、第1スイッチS1−1、第2スイッチS2−2、第3、第4スイッチS3、S4がオフ状態となるよう制御する。
これにより、フライングキャパシタ部10には、図3の矢印で示す方向に電流が流れ、上述したように放電時定数が小さいことから比較的短時間でキャパシタCが放電する。
<3−2.第2放電経路P3の選択>
次に、図4を用いて、制御部30の放電経路選択部32が選択する第2放電経路P3の詳細について説明する。図4は、放電経路選択部32が選択する第2放電経路P3の一例を示す図である。
検出部20が電子スタックB1の電圧の検出する場合、あるいは後述するように第1放電経路P2でキャパシタCを放電できない場合に、制御部30は第2放電経路P3を選択するよう放電経路選択部32に指示する。放電経路選択部32は、制御部30からの指示を受けると、放電回路である抵抗R3、R4とキャパシタCとが接続される第2放電経路P3を選択する。具体的には、放電経路選択部32は、抵抗R3、R4、第3、第4スイッチS3、S4及びキャパシタCを含む第2放電経路P3を選択する。
すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に第2放電経路P3の閉回路が形成されるように、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1、第2スイッチS1、S2がオフ状態となり、第3、第4スイッチS3、S4がオン状態となるよう制御する。これにより、フライングキャパシタ部10には、図4の矢印で示す方向に電流が流れ、上述したように放電時定数が大きいことから比較的長時間でキャパシタCが放電する。
このように、放電経路選択部32が放電経路P2を選択することで、充電経路P1によりキャパシタCを充電した後に検出部20がキャパシタCの両端の電圧を電子スタックB1の電圧として検出する場合に、検出部20が電池スタックB1の電圧を正確に計測することができるようになる。以下、電池スタックB1の電圧、すなわちキャパシタCの電圧を正確に計測できる理由について説明する。
電池スタックB1の電圧を正確に計測するためには、スイッチS3、S4をオンして放電経路を形成した瞬間のキャパシタCの電圧をAD変換して計測する必要がある。放電経路の時定数が小さいとAD変換する時点でのキャパシタCの電圧低下量が大きくなり正確なスタック電圧を計測できなくなってしまう。それに対し、本実施形態の放電経路P2のように抵抗R3およびR4の抵抗値が比較的大きい、すなわち放電時定数が大きいと、A/D変換部21でAD変換する時点でのキャパシタCの電圧低下量が小さくなり、放電開始直後にキャパシタCの正確な電圧を検出できる。
また、第2放電経路P3を選択してキャパシタCの両端の電圧を検出部20で検出した後、第1放電経路P2に切り替え放電させる。これにより、短時間で放電させることができる。これは、上述したように第1放電経路P2に含まれる抵抗R12、R21の抵抗値が、第放電経路P3に含まれる抵抗R3、R4の抵抗値より小さく設定されている、すなわち、第1放電経路P2の放電時定数が第2放電経路P3の放電時定数より小さいためである。
また、第2放電経路P3は、第1放電経路P2に含まれる接続部材L10または第1、第2スイッチS1、S2に異常が発生し、キャパシタCを放電できないと制御部30が判定した場合にも選択される経路である。この異常時に制御部30が第2放電経路P3を選択する場合の詳細については後述する。
<4.判定部33による異常判定>
制御部30の判定部33による組電池1及び第1、第2スイッチS1、S2の異常判定の詳細について説明する。
組電池1に発生する異常として、接続部材L10が切断される、あるいは組電池1の組み立て時に接続部材L10を配置し忘れるといった理由により、電池スタックB1−1、B1−2間が開放状態になるオープン異常がある。
また、第1、第2スイッチS1、S2に発生する異常として、スイッチがオフ状態を維持し、オン状態に移行しないオープン異常がある。あるいは、スイッチがオン状態を維持し、オフ状態に移行しないショート異常がある。
これらの異常とキャパシタCの充電電圧及び放電電圧との関係について図面を参照しつつ判定部33による異常判定について説明する。以下、説明を簡単にするため、キャパシタCの過渡応答については考慮せず、また説明に使用しない構成の図示を省略することがある。また、電池スタックB1の電圧はいずれもV1とする。
<4−1.接続部材L10、第1、第2スイッチS1、S2が正常な場合>
図5を用いて、接続部材L10、第1、第2スイッチS1、S2に異常が発生しておらず正常に動作する場合について説明する。図5は、接続部材L10、第1、第2スイッチS1、S2が正常な場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
まず、制御部30は、電池スタックB1−1の電圧を検出する。制御部30は、電圧を検出する電池スタックB1−1とキャパシタCとを含む充電経路P1を選択する。これにより、キャパシタCは電池スタックB1−1により充電され、キャパシタCの電圧が電池スタックB1−1の電圧と等しいV1となる。
第2放電経路P3に切り替えて電池スタックB1−1の電圧を検出すると、制御部30はキャパシタCと接続部材L10を含む第1放電経路P2を選択し、キャパシタCを放電する。これにより、キャパシタCの電圧はゼロとなる。
次に、制御部30は、電池スタックB1−2とキャパシタCとを含む充電経路P1aを選択し、電池スタックB1−2の電圧を検出する。これにより、キャパシタCは電池スタックB1−2により充電され、キャパシタCの電圧が電池スタックB1−2の電圧と等しいV1となる。ここで、充電経路P1a(図示せず)の選択において、具体的には制御部30は、電池スタックB1−2と接続する第1、第2スイッチS1−2、S2−2がオン状態となり、それ以外のスイッチS1−1、S2−1、S3、S4がオフ状態となるよう制御する。
第2放電経路P3に切り替えて電池スタックB1−2の電圧を検出すると、制御部30はキャパシタCと接続部材L10を含む第1放電経路P2を選択し、キャパシタCを放電する。これにより、キャパシタCの電圧はゼロとなる。
このように、監視装置2が電池スタックB1−1、B1−2の順に繰り返し電圧を検出する場合、キャパシタCの電圧は、図5に示すように所定間隔でV1とゼロとを繰り返す電圧波形となる。
<4−2.第1スイッチS1−1にオープン異常が発生した場合>
図6を用いて、第1スイッチS1−1がオープン異常である場合について説明する。図6は、第1スイッチS1−1にオープン異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
まず、制御部30は、電池スタックB1−1の電圧を検出するために、電池スタックB1−1とキャパシタCとを含む充電経路P1を選択する(図2参照)。ところが、電池スタックB1−1に接続する第1スイッチS1−1にオープン異常が発生しているため、第1スイッチS1−1がオン状態とならず、フライングキャパシタ部10に充電経路P1の閉回路が形成されない。したがって、キャパシタCは電池スタックB1−1で充電されず、元の電圧を維持した状態となる。例えば、キャパシタCが放電されており電圧がゼロであった場合、制御部30が電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択したとしても、キャパシタCの電圧はゼロのままとなる。
一方、第1放電経路P2及び電池スタックB1−2を含む充電経路P1aに含まれる接続部材L10及び第1、第2スイッチS1−2、S2−1、S2−2には異常が発生していない。そのため、キャパシタCの放電及び電池スタックB1−2による充電は問題なく行われる。
したがって、この場合のキャパシタCの電圧は、図6に示すように、電池スタックB1−1による充電時及び放電時にゼロとなり、電池スタックB1−2による充電時にV1となる。
<4−3.第2スイッチS2−2にオープン異常が発生した場合>
図7は、第2スイッチS2−2にオープン異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
第1放電経路P2及び電池スタックB1−1を含む充電経路P1に含まれる接続部材L10及び第1、第2スイッチS1−1、S1−2、S2−1には異常が発生していない。そのため、キャパシタCの放電及び電池スタックB1−1による充電は問題なく行われる。
一方、電池スタックB1−2の電圧を検出する場合、電池スタックB1−2に接続される第2スイッチS2−2にオープン異常が発生しているため、フライングキャパシタ部10に電池スタックB1−2を含む充電経路P1aの閉回路が形成されない。したがって、キャパシタCは、電池スタックB1−2で充電されず、放電電圧を維持した状態となる。
したがって、この場合のキャパシタCの電圧は、図7に示すように、電池スタックB1−2による充電時及び放電時にゼロとなり、電池スタックB1−1による充電時にV1となる。
<4−4.判定部33によるオープン異常判定1>
このように、充電経路P1に含まれ、第1放電経路P2に含まれないスイッチにオープン異常が発生すると、第1放電経路P2によるキャパシタCの放電は行われるが充電経路P1による充電は行われなくなる。
そこで、判定部33は、充電電圧および放電電圧を検出して例えば電池スタックB1−1を含む充電経路P1による充電が行われておらず、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aによる充電および第1放電経路P2による放電が行われている場合に、電池スタックB1−1を含む充電経路P1に含まれ、第1放電経路P2に含まれない第1スイッチS1−1がオープン異常であると判定する。具体的には、充電電圧と所定の閾値Vthとを比較し、充電電圧が所定の閾値Vth以下である場合に充電が行われていないと判定し、充電経路P1に含まれる電池スタックB1−1に接続する第1、第2スイッチS1−1、S2−1のうち、第1放電経路P2に含まれない第1スイッチS1−1がオープン異常であると判定する。また、判定部33は、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aによる充電が行われていない場合も同様にして第2スイッチS2−2がオープン異常であると判定する。
なお、判定部33は、放電電圧と所定の閾値Vthとを比較し、放電電圧が所定の閾値Vth以下である場合に放電が行われていると判定する。所定の閾値Vthは、キャパシタCの過渡応答等に応じて決定される閾値であって、必ずしもゼロでなくともよい。なお、これまでの説明および以下の説明において、充電電圧や放電電圧を検出するときは、各充電期間や放電期間の終了時に一瞬第2放電経路P3を選択して充電電圧や放電電圧を読み取っていることに留意すべきである。
<4−5.第2スイッチS2−1にオープン異常が発生した場合>
まず、電池スタックB1−1の電圧を検出する場合、電池スタックB1−1に接続される第2スイッチS2−1にオープン異常が発生しているため、フライングキャパシタ部10に電池スタックB1−1を含む充電経路P1の閉回路が形成されない。したがって、キャパシタCは、電池スタックB1−1で充電されず、放電電圧を維持した状態となる。
また、第2スイッチS2−1は第1放電経路P2にも含まれる(図3参照)。したがって、フライングキャパシタ部10に第1放電経路P2の閉回路が形成されないため、キャパシタCは放電されず、充電電圧を維持した状態となる。
一方、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aに含まれる第1、第2スイッチS1−2、S2−2には異常が発生していない。そのため、キャパシタCは電池スタックB1−2によって充電される。
したがって、この場合のキャパシタCの電圧は、電池スタックB1−2によってキャパシタCが充電されるまで、キャパシタCの電圧はゼロとなる。また、電池スタックB1−2によってキャパシタCが充電されると、キャパシタCの電圧は、フライングキャパシタ部10に含まれる寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−2による充電電圧を維持した状態となる。
<4−6.第1スイッチS1−2にオープン異常が発生した場合>
電池スタックB1−1の電圧を検出する場合、電池スタックB1−1を含む充電経路P1に含まれる第1、第2スイッチS1−1、S2−1には異常が発生していない。そのため、キャパシタCは電池スタックB1−1によって充電される。
一方、電池スタックB1−2の電圧を検出する場合、電池スタックB1−2に接続される第1スイッチS1−2にオープン異常が発生しているため、フライングキャパシタ部10に電池スタックB1−2を含む充電経路P1aの閉回路が形成されない。したがって、キャパシタCは、電池スタックB1−2で充電されず、放電電圧を維持した状態となる。
また、第1スイッチS1−2は第1放電経路P2にも含まれる(図3参照)。したがって、フライングキャパシタ部10に第1放電経路P2の閉回路が形成されないため、キャパシタCは放電されず、充電電圧を維持した状態となる。
したがって、この場合のキャパシタCの電圧は、電池スタックB1−1によってキャパシタCが充電されると、フライングキャパシタ部10に含まれる寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−1による充電電圧を維持した状態となる。
<4−7.接続部材L10にオープン異常が発生した場合>
電池スタックB1の電圧を検出する場合、電池スタックB1を含む充電経路P1に含まれる第1、第2スイッチS1、S2には異常が発生していない。そのため、キャパシタCは電池スタックB1によって充電される。
一方、接続部材L10は第1放電経路P2に含まれる(図3参照)。したがって、フライングキャパシタ部10に第1放電経路P2の閉回路が形成されないため、キャパシタCは放電されず、充電電圧を維持した状態となる。
したがって、この場合のキャパシタCの電圧は、電池スタックB1によってキャパシタCが充電されると、キャパシタCの電圧は、フライングキャパシタ部10に含まれる寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1による充電電圧を維持した状態となる。
<4−8.判定部33によるオープン異常判定2>
このように、第1放電経路P2に含まれる接続部材L10、第1スイッチS1−2及び第2スイッチS2−1のいずれかがオープン異常である場合、キャパシタCの放電が行われない。したがって、いずれの場合もキャパシタCは、フライングキャパシタ部10に含まれる寄生抵抗等の影響により多少放電するものの電池スタックB1の電圧とほぼ等しい電圧V1を維持した状態となり、異常個所を特定しづらい。
そのため、充電経路P1による充電電圧または第1放電経路P2による放電電圧の少なくとも一方に応じて組電池1および第1、第2スイッチS1、S2の異常を判定すると、異常箇所を誤判定してしまう可能性がある。そこで、本実施形態の判定部33は、キャパシタCが第1放電経路P2で放電されていない場合、すなわち、接続部財L10、第1、第2スイッチS1、S2のいずれかがオープン異常であると判定した場合、引き続き、充電経路P1による充電電圧または第2放電経路P3による放電電圧の少なくとも一方に応じて異常個所を特定する。
具体的には、本実施形態の制御部30は、キャパシタCの放電電圧が規定範囲内である場合、キャパシタCが放電されていないと判定し、放電経路選択部32に第2放電経路P3を選択するよう指示する。このように、制御部30が第1放電経路P2とは異なる第2放電経路P3を選択することで、キャパシタCを放電することができる。なお、規定範囲は、電池スタックB1の電圧V1を含む所定の範囲であり、ここではV1±ΔVとする。
また、制御部30は、充電経路選択部31に第1放電経路P2に含まれる接続部材L10を介して接続する一方の電池スタックB1−1を含む充電経路P1と、他方の電池スタックB1−2を含む充電経路P1aとを選択するよう指示する。これにより、制御部30は、異常箇所を特定する。
以下、制御部30による異常箇所の特定について説明する。まず、第2スイッチS2−1にオープン異常が発生した場合の異常箇所の特定について説明する。図8は、第2スイッチS2−1にオープン異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
まず、電池スタックB1−1に接続される第2スイッチS2−1がオープン異常である場合、第2放電経路P3による放電及び電池スタックB1−2による充電は行われるが、第1放電経路P2による放電及び電池スタックB1−1による充電は行われない。
したがって、図8に示すように、電池スタックB1−2によってキャパシタCが充電された後、第1放電経路P2が選択されてもキャパシタCの電圧は寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−2による充電電圧を維持した状態となる。この場合、制御部30は、第1放電経路P2で放電されていないと判定し、第2放電経路P3を選択する。これによりキャパシタCは放電され、放電電圧がゼロとなる。
第2放電経路P3によってキャパシタCを放電すると、制御部30は、電池スタックB1−1でキャパシタCを充電するために充電経路P1を選択する。しかしながら、電池スタックB1−1に接続される第2スイッチS2−1がオープン異常であるため、キャパシタCは充電されず、キャパシタCの充電電圧はゼロとなる。次に制御部30は、キャパシタCを放電するために第1放電経路P2を選択する。この場合、キャパシタCは充電電圧を維持した状態となり、キャパシタCの電圧はゼロとなる。この場合、制御部30は第1放電経路P2を選択した後、第2放電経路P3は選択せず、電池スタックB1−2によってキャパシタCを充電するために、充電経路P1aを選択する。
そこで、判定部33は、第2放電経路P3で放電した後に、電池スタックB1−1を含む充電経路P1で充電したキャパシタCの充電電圧が、所定の閾値Vth以下である場合に、電池スタックB1−1を含む充電経路P1に含まれ、かつ第1放電経路P2に含まれる第2スイッチS2−1がオープン異常であると判定する。
次に、第1スイッチS1−2にオープン異常が発生した場合の異常箇所の特定について説明する。図9は、第1スイッチS1−2にオープン異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
電池スタックB1−2に接続される第1スイッチS1−2がオープン異常である場合、第2放電経路P3による放電及び電池スタックB1−1による充電は行われるが、第1放電経路P2による放電及び電池スタックB1−2による充電は行われない。
したがって、図9に示すように、電池スタックB1−1によってキャパシタCが充電された後、第1放電経路P2が選択されてもキャパシタCの電圧は寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−1による充電電圧を維持した状態となる。この場合、制御部30は、第1放電経路P2で放電されていないと判定し、第2放電経路P3を選択する。これによりキャパシタCは放電され、放電電圧がゼロとなる。
第2放電経路P3によってキャパシタCを放電すると、制御部30は、電池スタックB1−2でキャパシタCを充電するために充電経路P1aを選択する。しかしながら、電池スタックB1−2に接続される第1スイッチS1−2がオープン異常であるため、キャパシタCは充電されず、キャパシタCの充電電圧はゼロとなる。次に制御部30は、キャパシタCを放電するために第1放電経路P2を選択する。この場合、キャパシタCは充電電圧を維持した状態となり、キャパシタCの電圧はゼロとなる。この場合、制御部30は第1放電経路P2を選択した後、第2放電経路P3は選択せず、電池スタックB1−1によってキャパシタCを充電するために、充電経路P1を選択する。
そこで、判定部33は、第2放電経路P3で放電した後に、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aで充電したキャパシタCの充電電圧が、所定の閾値Vth以下である場合に、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aに含まれ、かつ第1放電経路P2に含まれる第1スイッチS1−2がオープン異常であると判定する。
続いて、接続部材L10にオープン異常が発生した場合の異常箇所の特定について説明する。図10は、接続部材L10にオープン異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
接続部材L10がオープン異常である場合、第2放電経路P3による放電及び電池スタックB1による充電が行われるが、第1放電経路P2による放電は行われない。
したがって、図10に示すように、電池スタックB1−1によってキャパシタCが充電された後、第1放電経路P2が選択されてもキャパシタCの電圧は寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−1による充電電圧を維持した状態となる。この場合、制御部30は、第1放電経路P2で放電されていないと判定し、第2放電経路P3を選択する。これによりキャパシタCは放電され、放電電圧がゼロとなる。
第2放電経路P3によってキャパシタCを放電すると、制御部30は、電池スタックB1−2でキャパシタCを充電するために充電経路P1aを選択する。キャパシタCは電池スタックB1−2により充電され、キャパシタCの充電電圧はV1となる。次に制御部30は、キャパシタCを放電するために第1放電経路P2を選択する。第1放電経路P2が選択されてもキャパシタCの電圧は寄生抵抗等の影響により多少放電するものの、電池スタックB1−1による充電電圧を維持した状態となる。この場合、制御部30は、第1放電経路P2で放電されていないと判定し、第2放電経路P3を選択する。これによりキャパシタCは放電され、放電電圧がゼロとなる。
そこで、判定部33は、第2放電経路P3で放電した後に電池スタックB1−1を含む充電経路P1で充電したキャパシタCの充電電圧が規定範囲内であり、第2放電経路P3で放電した後に電池スタックB1−2を含む充電経路P1aで充電したキャパシタCの充電電圧が規定範囲内である場合に、第1放電経路P2に含まれる接続部材L10がオープン異常であると判定する。
このように、第1放電経路P2に異常が発生し、キャパシタCの放電が行えない場合は、第1放電経路P2とは異なる第2放電経路P3を選択することで、キャパシタCの放電を行ってから、電池スタックB1の電圧を検出することができ、第1放電経路P2の異常箇所を特定することができる。
なお、第2放電経路P3は放電時定数が大きいため、放電に時間がかかる。そのため、検出部20によって第2放電経路P3による放電電圧を所定の間隔で検出することで、キャパシタCが放電されているか否かを制御部30が判定するようにしてもよい。制御部30は、キャパシタCが放電されていると判定した場合、キャパシタCの電荷がゼロになる前にキャパシタCの放電を終了し、電池スタックB1の電圧を検出するようにする。これにより、キャパシタCの放電時間の増加を抑制することができる。
また、上述した例では、第1放電経路P2で放電できなかった場合に、制御部30が第2放電経路P3を選択するようにしているが、制御部30が一度第1放電経路P2で放電できないと判定し第2放電経路P3を選択すると、次回から第1放電経路P2を選択することなく第2放電経路P3を選択するようにしてもよい。
<4−9.第1スイッチS1−1にショート異常が発生した場合>
続いて、第1スイッチS1−1がショート異常である場合について説明する。図11は電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択した場合にフライングキャパシタ部10に形成される閉回路P4を示す図である。また、図12は第1放電経路P2を選択した場合にフライングキャパシタ部10に形成される閉回路P5を示す図であり、図13は図12に示す閉回路P5の等価回路を示す図である。さらに、図14は第1スイッチS1−1にショート異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
電池スタックB1−1の電圧を検出する場合、制御部30は、電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択する(図2参照)。この場合、キャパシタCは電池スタックB1−1によって電圧V1に充電される。
一方、充電経路選択部31が電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択した場合、第1スイッチS1−1がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には図11に示す閉回路P4が形成される。この場合、閉回路P4の点A1における電圧は、電池スタックB1−1、B1−2の電圧の合計値である2×V1となる。
また、点A2における電圧は、抵抗R11、R12によって電池スタックB1−1の電圧が抵抗分圧された値となる。ここで、抵抗R11、R12の抵抗値が同じであるとすると、点A2における電圧は、電池スタックB1−1の電圧の半分である1/2×V1となる。
したがって、抵抗R22による電圧降下を考慮しない場合、キャパシタCの電圧は、2×V1−1/2×V1=3/2×V1となる。このように、充電経路選択部31が電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択した場合、キャパシタCの充電電圧は、電池スタックB1の電圧より大きい電圧V2(V2>V1、ここではV2=3/2×V1)となる。
また、放電経路選択部32が第1放電経路P2を選択した場合、第1スイッチS1−1がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には図12に示す閉回路P5が形成される。図13に、抵抗R21による電圧降下を考慮しない場合の閉回路P5の等価回路を示す。
図13に示すように、点A3における電圧は、電池スタックB1−1の電圧V1となる。また、点A2における電圧は、抵抗R12、R21によって電池スタックB1−1の電圧が抵抗分圧された値となる。ここで、抵抗R12、R21の抵抗値が同じであるとすると、点A2における電圧は、電池スタックB1−1の電圧の半分である1/2×V1となる。
そのため、抵抗R21による電圧降下を考慮しない場合、キャパシタCの電圧は、V1−1/2×V1=1/2×V1となる。このように、放電経路選択部32が第1放電経路P2を選択した場合、キャパシタCの放電電圧は、電池スタックB1の電圧より小さい電圧V3(V3<V1、ここではV3=1/2×V1)となる。
したがって、第1スイッチS1−1がショート異常である場合のキャパシタCの電圧は、図14に示すように、電池スタックB1−1による充電時にV1、放電時にV3=1/2×V1及び電池スタックB1−2による充電時にV2=3/2×V1となる。
<4−10.第2スイッチS2−2にショート異常が発生した場合>
第2スイッチS2−2がショート異常である場合について説明する。図15は、電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択した場合にフライングキャパシタ部10に形成される閉回路P6を示す図である。また、図16は第1放電経路P2を選択した場合にフライングキャパシタ部10に形成される閉回路P7を示す図であり、図17は図16に示す閉回路P7の等価回路を示す図である。さらに図18は第2スイッチS2−2にショート異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
電池スタックB1−2の電圧を検出する場合、制御部30は電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択する。この場合、キャパシタCは電池スタックB1−2によって電圧V1に充電される。
一方、充電経路選択部31が電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択した場合、第2スイッチS2−2がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には図15に示す閉回路P6が形成される。この場合、閉回路P6の点A4における電圧は、抵抗R21、R22によって電池スタックB1−2の電圧が抵抗分圧された値と電池スタックB1−1の電圧の合計値である3/2×V1となる。
点A2における電圧は、抵抗R11による電圧降下を考慮しない場合、グランドの電圧となる。したがって、キャパシタCの電圧は、V2=3/2×V1となる。このように、充電経路選択部31が電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択した場合、キャパシタCの充電電圧は、電池スタックB1の電圧より大きい電圧V2となる。
また、放電経路選択部32が第1放電経路P2を選択した場合、第2スイッチS2−2がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には図16に示す閉回路P7が形成される。図17に、抵抗R12による電圧降下を考慮しない場合の閉回路P7の等価回路を示す。
図17に示すように、点A1における電圧は、電池スタックB1−2の電圧V1となる。また、点A4における電圧は、抵抗R22、R21によって電池スタックB1−2の電圧が抵抗分圧された値となる。ここで、抵抗R22、R21の抵抗値が同じであるとすると、点A4における電圧は、電池スタックB1−2の電圧の半分である1/2×V1となる。
そのため、抵抗R12による電圧降下を考慮しない場合、キャパシタCの電圧は、V1−1/2×V1=1/2×V1となる。このように、放電経路選択部32が第1放電経路P2を選択した場合、キャパシタCの放電電圧は、電池スタックB1の電圧より小さい電圧V3となる。
したがって、第2スイッチS2−2がショート異常である場合のキャパシタCの電圧は、図18に示すように、電池スタックB1−1による充電時にV2=3/2×V1、放電時にV3=1/2×V1及び電池スタックB1−2による充電時にV1となる。
<4−11.判定部33によるショート異常判定1>
このように、電圧を検出する電池スタックB1−1に、隣接する電池スタックB1−2を介して接続する第2スイッチS2−2にショート異常が発生した場合、キャパシタCの充電電圧が、電池スタックB1の電圧より大きくなる。これは、隣接する電池スタックB1−2が充電経路P1に含まれてしまうためである。
そこで、判定部33は、キャパシタCの充電電圧が、上述した規定範囲より大きい第1範囲内である場合に、充電経路P1に含まれる電池スタックB1−1に隣接する電池スタックB1−2を介して接続する第2スイッチS2−2がショート異常であると判定する。なお、判定部33は、充電経路P1aに含まれる電池スタック、すなわち電圧を検出する電池スタックが電池スタックB1−2で有る場合も同様にして第1スイッチS1−1がショート異常であると判定する。
<4−12.第2スイッチS2−1にショート異常が発生した場合>
第2スイッチS2−1がショート異常である場合について説明する。図19は第2スイッチS2−1にショート異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
電池スタックB1−1の電圧を検出する場合、制御部30は電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択する(図2参照)。この場合、キャパシタCは電池スタックB1−1によって電圧V1に充電される。また、キャパシタCを放電する場合、制御部30は第1放電経路P2を選択する(図3参照)。この場合、キャパシタCは第1放電経路P2で放電され、放電電圧はゼロとなる。
一方、充電経路選択部31が電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択した場合、第2スイッチS2−1がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には閉回路P7が形成される(図16参照)。この場合、キャパシタCの電圧は、上述したように、電池スタックB1の電圧より小さい電圧V3(V3=1/2×V1)となる。
したがって、第2スイッチS2−1がショート異常である場合のキャパシタCの電圧は、図19に示すように、電池スタックB1−1による充電時にV1、放電時にゼロとなり、電池スタックB1−2による充電時にV3=1/2×V1となる。
<4−13.第1スイッチS1−2にショート異常が発生した場合>
第1スイッチS1−2がショート異常である場合について説明する。図20は第1スイッチS1−2にショート異常が発生した場合のキャパシタCの電圧を示す図である。
電池スタックB1−2の電圧を検出する場合、制御部30は電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択する。この場合、キャパシタCは電池スタックB1−2によって電圧V1に充電される。また、キャパシタCを放電する場合、制御部30は第1放電経路P2を選択する(図3参照)。この場合、キャパシタCは第1放電経路P2で放電され、放電電圧はゼロとなる。
一方、充電経路選択部31が電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択した場合、第1スイッチS1−2がオン状態を維持しているため、フライングキャパシタ部10には閉回路P5が形成される(図12参照)。この場合、キャパシタCの電圧は、上述したように、電池スタックB1の電圧より小さい電圧V3(V3=1/2×V1)となる。
したがって、第1スイッチS1−2がショート異常である場合のキャパシタCの電圧は、図20に示すように、電池スタックB1−1による充電時にV3=1/2×V1、放電時にゼロとなり、電池スタックB1−2による充電時にV1となる。
<4−14.判定部33によるショート異常判定2>
このように、電圧を検出する電池スタックB1−2に、接続部材L10を介して接続する第1スイッチS1−2にショート異常が発生した場合、キャパシタCの充電電圧が、電池スタックB1の電圧より小さくなる。これは、キャパシタCの一端が、抵抗R12を介して電池スタックB1−1の正極端子と接続するとともに、抵抗R21を介して電池スタックB1−2の負極端子とも接続されてしまうためである。
そこで、判定部33は、電池スタックB1−2による充電電圧が、上述した規定範囲より小さく所定の閾値Vthより大きい第2範囲内である場合に、充電経路P1aに含まれる電池スタックB1−2に、接続部材L10を介して接続する第2スイッチS2−1がショート異常であると判定する。なお、判定部33は、充電経路P1に含まれる電池スタック、電圧を検出する電池スタックが電池スタックB1−1で有る場合も同様にして第1スイッチS1−2がショート異常であると判定する。
<5.電圧検出処理>
続いて、図21を用いて、制御部30が実行する電圧検出処理について説明する。図21は、電圧検出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、制御部30が電池スタックB1−1、B1−2の各電圧を検出するとともに異常判定を行う場合について説明する。
まず、制御部30は、電圧を検出する電池スタックとして電池スタックB1−1を選択し、電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択する(ステップS101)。次に制御部30は、第1、第2切替部11、12を制御し、電池スタックB1−1でキャパシタCを充電する(ステップS102)。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1−1、S2−1がオン状態となり、第1切替部11の第1、第2スイッチS1−2、S2−2及び第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオフ状態となるように制御する。これにより、電池スタックB1−1の電圧がキャパシタCに充電される。
制御部30は、ステップS105で第1、第2切替部11、12を制御した後、キャパシタCの充電が完了するのに要するであろう予め定めた所定期間T1が経過するのを待つ。この所定期間T1の経過後に第2放電経路P3の閉回路を形成してキャパシタCの充電電圧を電池スタックB1−1の電圧として検出するよう第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1、S2がオフ状態となり、第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオン状態となるように制御する。これにより、検出部20がキャパシタCと接続され、接続された瞬間のキャパシタCの両端の電圧を検出する。
制御部30は、検出部20によって検出されたキャパシタCの充電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS103)。比較の結果、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップS103のYes)、制御部30は、第1スイッチS1−1がオープン異常であると判定する(ステップS104)。
一方、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS103のNo)、制御部30は、充電電圧が第2範囲内であるか否か判定する(ステップS105)。充電電圧が第2範囲内である場合(ステップS105のYes)、制御部30は、第1スイッチS1−2がショート異常であると判定する(ステップS106)。
一方、キャパシタCの充電電圧が第2範囲外である場合(ステップS105のNo)、制御部30は、充電電圧が第1範囲内であるか否か判定する(ステップS107)。充電電圧が第1範囲内である場合(ステップS107のYes)、制御部30は、第2スイッチS2−2がショート異常であると判定する(ステップS108)。
一方、キャパシタCの充電電圧が第1範囲外である場合(ステップS107のNo)、制御部30は、接続部材L10を含む第1放電経路P2を選択し(ステップS109)、キャパシタCを放電する(ステップS110)。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1−2、S2−1がオン状態となり、第1切替部11の第1、第2スイッチS1−1、S2−2及び第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオフ状態となるように制御する。これにより、キャパシタCが放電する。
制御部30は、ステップS110で第1、第2切替部11、12を制御した後、キャパシタCの放電が完了するのに要するであろう予め定めた所定期間T2が経過するのを待つ。この所定期間T2の経過後に第2放電経路P3の閉回路を形成してキャパシタCの放電電圧を電池スタックB1−1の電圧として検出するよう第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1、S2がオフ状態となり、第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオン状態となるように制御する。これにより、検出部20がキャパシタCと接続され、接続された瞬間のキャパシタCの両端の電圧を検出する。このように、制御部30は、検出部20によってキャパシタCの充電電圧または放電電圧を検出する場合、上述したように第2放電経路P3を選択する。以下、制御部30は、同様にしてキャパシタCの充電電圧または放電電圧を検出するため説明を省略する。
次に、制御部30は、検出部20によって検出された放電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS111)。比較の結果、キャパシタCの放電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS111のNo)、制御部30は、異常特定処理を実行する(ステップS112)。異常特定処理については図22を用いて後述する。
キャパシタCの放電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップS111のYes)、制御部30は、次に電圧を検出する電池スタックとして電池スタックB1−2を選択し、電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択する(ステップS113)。
次に制御部30は、第1、第2切替部11、12を制御し、電池スタックB1−2でキャパシタCを充電する(ステップS114)。制御部30は、キャパシタCの充電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS115)。比較の結果、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップS115のYes)、制御部30は、第2スイッチS2−2がオープン異常であると判定する(ステップS116)。
一方、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS115のNo)、制御部30は、充電電圧が第2範囲内であるか否か判定する(ステップS117)。充電電圧が第2範囲内である場合(ステップS117のYes)、制御部30は、第2スイッチS2−1がショート異常であると判定する(ステップS118)。
一方、キャパシタCの充電電圧が第2範囲外である場合(ステップS117のNo)、制御部30は、充電電圧が第1範囲内であるか否か判定する(ステップS119)。充電電圧が第1範囲内である場合(ステップS119のYes)、制御部30は、第1スイッチS1−1がショート異常であると判定する(ステップS120)。
一方、キャパシタCの充電電圧が第1範囲外である場合(ステップS119のNo)、制御部30は、接続部材L10を含む第1放電経路P2を選択して(ステップS121)、キャパシタCを放電し(ステップS122)、処理を終了する。
<6.異常特定処理>
図22を用いて、制御部30が実行する異常特定処理について説明する。図22は、異常特定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部30は、抵抗R3、R4を含む第2放電経路P3を選択し、第2放電経路P3でキャパシタCを放電する(ステップS201)。次に、制御部30は、第1放電経路P2に含まれる接続部材L10を介して接続する一方の電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択し、電池スタックB1−1でキャパシタCを充電する(ステップS202)。
キャパシタCの充電後、制御部30は、充電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS203)。比較の結果、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップS203のYes)、制御部30は、第2スイッチS2−1がオープン異常であると判定する(ステップS204)。
一方、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS203のNo)、制御部30は、第1放電経路P2を選択し、第1放電経路P2でキャパシタCを放電する(ステップS205)。次に、制御部30は、放電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS206)。比較の結果、キャパシタCの放電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS206のNo)、制御部30は第2放電経路P3を選択し、第2放電経路P3でキャパシタCを放電する(ステップS207)。次に、制御部30は、第1放電経路P2に含まれる接続部材L10を介して接続する他方の電池スタックB1−2を含む充電経路P1aを選択し、電池スタックB1−2でキャパシタCを充電する(ステップS208)。一方、キャパシタCの放電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップS206のYes)、制御部30は、第2放電経路P3を選択せずにステップS208へ進む。
ステップS208でキャパシタCを充電した後、制御部30は、充電電圧と所定の閾値Vthとを比較する(ステップS209)。比較の結果、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vth以下の場合(ステップ209のYes)、制御部30は、第1スイッチS1−2がオープン異常であると判定する(ステップS210)。
一方、キャパシタCの充電電圧が所定の閾値Vthより大きい場合(ステップS209のNo)、制御部30は、接続部材L10がオープン異常であると判定する(ステップS211)。
<充放電システムへの適用例>
次に、図23を用いて、図1に示す組電池システム100を充放電システムST1に適用した場合について説明する。図23は、充放電システムST1の概要を示す図である。図23に示す、充放電システムST1は、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、及び、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両駆動用電源として用いられる。
充放電システムST1は、組電池1と、電池監視システムWS1と、車両制御装置200と、モータ300と、電圧変換器400と、リレー500とを含むシステムである。また、電池監視システムWS1は、モニタIC34等を備えた複数のサテライト基板3と、監視装置2とを含むシステムである。また、充放電システムST1に含まれる組電池1と監視装置2とが図1に示す組電池システム100に相当する。
図23の組電池1は、車体と絶縁された電池であり、複数のブロックにより構成されている。1つのブロックでは16の電池セルが互いに直列に接続され、これら16の電池セルが1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC34と電気的に接続されている。そのため、1つのブロックの各電池セルの電圧は、1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC34により計測される。
なお、1つのサテライト基板3には第1モニタIC34aと、第2モニタIC34bとの2つのモニタICが設けられており、第1モニタIC34a及び第2モニタIC34bが、1つのブロックの電池セルを二分して、8セルずつを1つのグループとして受け持つようになっている。なお、この8セルにより構成されるグループが図1の電池スタックB1に相当する。また、接続部材L10−mは、複数の電池スタックB1−nのうち隣接する電池スタックB1を電気的に接続する。
監視装置2は、複数の電池セルのそれぞれの個別電圧を監視すると共に、各電池スタックB1の電圧を監視する。つまり、組電池1の充電状態を監視する。具体的には、モニタIC34は、監視装置2から通信ラインL3を介して受信する電圧計測要求に基づいて複数の電池セルのそれぞれの個別電圧(以下、「セル電圧」とも称する)を計測し、通信ラインL3を介して計測結果を監視装置2に送信する。
監視装置2は、モニタIC34からセル電圧を受信すると共に、通信ラインL4を介してキャパシタC(図1参照)に電池スタックB1の電圧(以下、「スタック電圧」と称する)を充電することによりスタック電圧を直接測定して充電状態を監視する。このように、監視装置2は、組電池1の充電状態を監視する監視装置として動作すると共に、スタック電圧を検出する電圧検出装置としても動作する。
監視装置2は、モニタIC34が正常に動作しているか否かを判定する判定装置としても動作する。例えば、監視装置2は、モニタIC34から受信した各電池セルの個別電圧を加算することで算出したスタック電圧と直接検出したスタック電圧とを比較し、両者の差が許容値より大きい場合にモニタIC34が異常であると判定する。監視装置2は、モニタIC34が異常であると判断した場合には、フェールセーフ機能を実行する。
また、上述したように監視装置2は、組電池1のオープン異常を判定する異常判定装置としても動作する。監視装置2は、組電池1にオープン異常が発生したと判定した場合にも、フェールセーフ機能を実行する。例えば、監視装置2は、リレー500を切り離して、電池セルに対する充放電が行われないようにするフェールセーフ機能を実行する。
車両制御装置200は、組電池1の充電状態に応じて、組電池1に対する充放電を行う。具体的には、組電池1が過充電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて組電池1に充電された電圧を直流から交流の電圧に変換し、モータ300を駆動させる。その結果、組電池1の電圧は放電される。
また、組電池1が過放電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて回生制動によりモータ300が発電した電圧を交流から直流の電圧に変換する。その結果、組電池1には電圧が充電される。このように、車両制御装置200は、監視装置2から取得した組電池1の充電状態に基づいて組電池1の電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。
上述したように、本実施形態に係る監視装置2は、電圧を検出する電池スタックB1によるキャパシタCの充電電圧または接続部材L10を含む第1放電経路P2による放電電圧の少なくとも一方に応じて、接続部材L10及び第1、第2スイッチS1、S2の異常を判定する。これにより、異常を判定するための回路素子を別途設ける必要がなく、監視装置2の部品点数の増加を抑制することができる。すなわち、監視装置2の回路規模の増加を抑制することができ、製造コストの増加を抑制することができる。
また、本実施形態に係る監視装置2を、例えばハイブリッド自動車等の車両駆動用電源として用いられる充放電システムST1に適用することで、充放電システムST1の部品点数の増加を抑制することができる。
また、本実施形態に係る監視装置2とサテライト基板3とを別々の設ける以外に、一体として設けてもよい。
また、本実施形態において、複数の電池セルを備えたものを電池スタックとして説明したが、このように複数の電池セルを備える構成であれば電池ブロックなどと称してもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。